新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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023九花【ここのか】

 G.C.2019年8月17日 土曜日の昼

 

 

「本当に焼き鳥みたいね」

 

 

 ユニが串にかぶりつきながら言うと、「うん、美味しいね」とネプギアが答える。

 

ルフとロック鳥の肉で焼き鳥を作ったネプギア達は、美味しそうにそれを食べていた。

 

 

ピピピピ!

 

 

 

 食べてる最中にネプギアのNギアから呼び出し音が鳴る。

 

 

「なんだろう?」

 

 

 ネプギアが不思議そうに呼び出し音に応答すると、「ソチラニ、イッピキノイヌガ、ムカッテキテイマス」とネプギアンダムの声がする。

 

食事中の間、哨戒任務を与えたネプギアンダムからの通信だ。

 

 

「何かあったの?」

 

 

 ユニが真剣な顔で質問すると、「こっちに犬が一匹向かってきてるんだって」とネプギアが答える。

 

 

「いぬぅ? しかも一匹って……」

 

 

 ユニが脱力しながら答えると、「食べ物の匂いに釣られて来てるのかな?」とネプギアが首を傾げる。

 

 

「犬? 犬が来てるの?」

 

 

 ラムが興味津々に尋ねると、「かわいいかな(わんわん)」とロムも興味津々な顔で言う。

 

プラエは少し不安そうに、「かまれたりしないかな……」と身震いする。

 

 

「……とりあえず、様子見ましょ。凶暴そうなヤツだったら、アタシが追い払うわ」

 

 

 ユニはそう言うと再び焼き鳥の串にかぶりつく。

 

 

 

***

 

 

 

 暫くすると、ネプギア達のキャンプに一匹の白い犬が現れる。

 

 

「あれが、ネプギアンダムが言ってた犬だね」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「おっきいし、可愛いわ」とラムが嬉しそうに言う。

 

ラムの言う通り、その犬は愛嬌のある顔をしており、一般家庭で飼う大型犬ほどの大きさであった。

 

 

「ハッハッハッ……」

 

 

 犬は舌を出しながら、物欲しそうにネプギアの手に持った焼き鳥の串を眺める。

 

 

「これが欲しいの?」

 

 

 ネプギアが優しい声で尋ねると、「わん!」と犬が鳴く。

 

 

「じゃあ、あげるね」

 

 

 ネプギアはそう言うと、箸で串に刺さった肉を抜くと犬の目の前に落としてあげる。

 

すると、「がっがっがっがっ!」と犬は美味しそうにそれを食べる。

 

 

「うふふ……美味しい?」

 

 

 ネプギアが犬に尋ねるように言うと、「わん!」と犬は答えて、尻尾を左右に振る。

 

 

「人の言葉がわかってるみたーい!」

 

 

 ラムが楽しそうに言うと、「おりこうさんだね」とロムがそれに続く。

 

 

「よしよし、いい子いい子」

 

 

 ネプギアが優しく犬の頭を撫でると、犬は気持ち良さそうに目を細めた。

 

それを見たプラエは、「大人しい子みたいで、よかった」とホッと胸をなでおろす。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギア達が昼食を食べ終わると、犬は、「わんわん!」と鳴きながらどこかに行こうとする。

 

 

「ココ掘れ、わんわん?」

 

 

 ラムがそう言うと、「大判小判がざっくざく?」とロムが首を傾げる。

 

 

「ついて来いって言ってるのかも」

 

 

 ネプギアがあごに右手を当てながらそう言うと、「プラエもそう思う」とプラエが同意する。

 

 

「ついて行ってみる?」

 

 

 ユニがそう提案すると、「うん、行ってみようよ」とネプギアが言う。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギア達が犬について、ゲムドラジルの木の根の周囲を歩いて行くと、そこには一人の女性がいた。

 

身長はネプギアと同じくらいで、色鮮やかな和服を着て、黒くて長い髪をした二十歳前後に見える女性だ。

 

女性はネプギア達に気付くと、ゆっくりと歩み寄って来た。

 

 

「八房」

 

 

 女性が犬を呼ぶと、犬は尻尾を振って女性に駆け寄って行く。

 

 

「……飼い主さんかな」

 

 

 ネプギアが小声でユニに問いかける。

 

 

「そうみたいね。大分なついてるし」

 

 

 ユニがそう答えると、「八房が世話になったようですね。感謝します」と女性がネプギア達に話しかけてくる。

 

 

「私の名前は、伏姫【ふせひめ】。このゲムドラジルの守り人をしています」

 

 

 女性が名乗ると、「そなた達は女神ですね?」と続けて問いかけてくる。

 

ネプギアは伏姫の言葉に驚きつつも、「ネプギアです。こことは別の次元、超次元で女神候補生をしています」と名乗る。

 

 

「友達の病気を治す為に、世界樹の葉を譲って欲しくて、ここまで来ました」

 

 

 ネプギアが続けて自分達の目的を伝えると、「友達と言うのは、もしや、その金色の髪の子ですか?」と伏姫が質問する。

 

ネプギアは、「はい」と素直に答える。

 

すると、伏姫は悲しそうな顔をして、「……その子の病気は治さない方がよいでしょう」と言う。

 

 

「な、何でですか?!」

 

 

 ネプギアが驚きの表情を浮かべる。

 

 

「その子を救うことで、あなた達はとても辛い思いをするでしょう。それだけではなく、超次元だけでなく全てのゲイムギョウ界に悪い影響を与えます」

 

 

 伏姫がそう言うと、プラエは悲しそうな顔で、「……プラエ、生きていちゃいけないの」と呟く。

 

 

「ちょっとー! プラエをイジメたら許さないわよ!」

 

 

 ラムが両手を上げて抗議すると、「わたしも怒るよ(ぷんぷん)」とロムも抗議する。

 

ユニはそんな二人を手で制すると、「伏姫さん、あなたは何を知ってるんですか?」と質問をする。

 

 

「……話すことはできません。私が言えるのは何も知らないまま別れた方がいい、と言うことだけです」

 

 

 伏姫がそう言うと、「そんなことは出来ません。プラエちゃんは友達だし仲間なんです。それに私はプラエちゃんを護ると約束しました」とネプギアが訴えるように言う。

 

 

「……ネプギアお姉さん……」

 

 

 プラエは頬を赤く染めて熱っぽい視線をネプギアに送る。

 

それを聞いた伏姫は、「……そうですか……」と残念そうに呟く。

 

 

「……と、言うことは世界樹の葉は譲ってくれないってことですよね」

 

 

 ユニがそう言うと、「いえ、それとこれとは別問題です」と伏姫が言う。

 

ユニは意外そうな顔で、「え?」と言うと、「あなた達が仁義八行に選ばれた者であるのならば、世界樹の葉を譲りましょう」と伏姫は言った。

 

 

「仁義八行に選ばれる?」

 

 

 ネプギアが首を傾げると、「そう言えば、イストワールさんがそんなこと言っていたわね」とユニが言う。

 

 

「仁義八行って、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌のことだよね」

 

 

 ロムがそう言うと、「そうだよ。この前、あんみつさんが教えてくれた、八つの徳のことだよ」とネプギアが答える。

 

 

「あなた達には、これから試練を受けてもらいます」

 

 

 伏姫はそう言うと、両手を左右に広げる。

 

すると、野球ボール程の大きさの七つの珠が現れる。

 

珠には一つ一つ漢字で、仁・義・礼・忠・信・孝・悌と文字が彫られていた。

 

 

「これから、この仁義八行の文字の入った珠をゲムドラジルの周囲に隠しますので、それを三日以内に見つけて下さい。珠を一つでも見つけることが出来れば世界樹の葉を譲ります」

 

 

 伏姫がそう言うと、「一つ足りないわよ」とラムが言う。

 

すると、伏姫は、「智の珠は既に持ち主がいます」と答える。

 

 

「持ち主? その珠にはどんな意味があるんですか?」

 

 

 ネプギアが伏姫に尋ねると、「この珠に選ばれた持ち主は、世界の中庸を担う勇者となるのです」と伏姫が答える。

 

 

「「「ちゅーよー?」」」

 

 

 ロムとラムとプラエが揃って首を傾げる。

 

 

「かたよることなく、常に変わらないこと。過不足がなく調和がとれていることを言うのよ」

 

 

 ユニがそう言うと、「ちょうどいいバランスが取れているってことだよ」とネプギアが言う。

 

 

「選ばれた九人の勇者、九花【ここのか】が揃う時、世界は新しい周期を迎えます」

 

 

 伏姫がそう言うと、「世界の新しい周期?」とユニが尋ねる。

 

 

「九は一桁の数字で最大のものであり、それに至ることにより、究極を極めて、完結・完成を意味する、最高のものとなります」

 

 

 伏姫の言葉に、「よくわかんないけど、珠が八つなのに勇者が九人っておかしくない?」とラムが言う。

 

すると、「それは、あなた達が珠に選ばれれば自ずと分るでしょう」と伏姫が答える。

 

 

「でもさ、世界樹の葉が欲しいなら、智の珠の持ち主に頼んでもいいんじゃないかな」

 

 

 ファミ通がそう言うと、「おお、ファミ通賢い」と日本一が感心する。

 

 

「恐らく彼女なら快く譲ってくれるでしょう。しかし、彼女の居場所は誰にも分かりません。彼女は次元を自由に移動できるのですから」

 

 

 伏姫がそう言うと、「もしかして、大きいお姉ちゃん?」とネプギアが言う。

 

 

「知り合いですか?」

 

 

 伏姫が尋ねると、「あの、その人って私と似た髪の色をした、ネプテューヌって名前の人じゃありませんか?」とネプギアが言う。

 

 

「いいえ、違います」

 

 

 伏姫の言葉に、「……そうですか……」とガッカリするネプギア。

 

 

「質問が無いようなら試練を始めますよ」

 

 

 伏姫がそう言うと、「はい、お願いします」とネプギアが答える。

 

 

 

***

 

 

 

「見つかったー?」

 

 

 ラムが地面の草をかき分けながら言うと、「ううん、見つからない(ふるふる)」とロムが答える。

 

ロムもラムと同じように地面の草をかき分けながら、珠を探す。

 

 

「うーん……無いね」

 

 

 ネプギアが困ったような声を上げる。

 

 

「そう言えば、この辺に落ちてる葉っぱは世界樹の葉じゃないの?」

 

 

 日本一が、がすとに質問すると、「違いますの。がすともそれは思いましたけど不思議なことに、木の根元なのに一枚も落ちてませんの」とがすとが答える。

 

 

「そうそう上手くは行かないってことね」

 

 

 ユニが草をかき分けながら言う。

 

 

「どこにあるんだろう?」

 

 

 プラエが困ったように左右を見渡す。 

 

 

「三日以内って言ってたけど、見つかるかな……」

 

 

 ロムが不安そうに言うと、「大丈夫よ。わたし達なら見つかるわ」とラムが自信満々に言う。

 

 

「ここからは手分けして探した方が効率的ですの」

 

 

 がすとがそう言うと、「そうだね、私もそうした方がいいと思う」とファミ通が言う。

 

 

「それなら三手に分かれましょう」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「私は、ミクちゃんとプラエちゃんとネプギアンダムと一緒に探すから、ユニちゃんは日本一さんとがすとさん、ロムちゃんとラムちゃんはファミ通さんと一緒に探して」と続けて言う。

 

 

「了解。パーティのバランスもいいし、変身すれば相当な強敵が出てこない限り問題ないでしょ」

 

 

 ユニがそう言って納得すると、ネプギアはゲムドラジルの根元の地図が映っているNギアの画面を全員に見せて、「私達はここ、ユニちゃん達はここ、ロムちゃんとラムちゃん達は残ったこの辺り」と探す場所の分担をする。

 

 

「わかったわ。わたしとロムちゃんに任せておきなさい。行くわよ、ファミ通」

 

 

 ラムがそう言うと、「がんばる(ふんす)」とロムが、「二人のことは任せておいて」とファミ通が言って、三人は割り振られた場所に移動する。

 

 

「アタシ達も行くわよ」

 

 

 ユニの言葉に、「了解」と日本一が、「行きますの」とがすとが返事をして、三人は割り振られた場所に移動する。

 

 

「それじゃあ、私達も行こっか?」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「うん」とプラエが頷き、「わかったよ、ネギちゃん」とミクが言う。

 

 

***

 

 

 ネプギアとプラエとミクは共に珠を探していた。

 

ネプギアンダムは目から球状の物を察知するように設定したライトを地面に照らして探している。

 

しかし、珠はなかなか見つからず時間だけが過ぎて行った。

 

 

「ふぅふぅ……」

 

 

 プラエが呼吸を荒げながら、額の汗を拭く。

 

どうやら、大分疲れているようだった。

 

 

「プラエちゃん、ちょっと休憩にしよっか?」

 

 

 ネプギアが優しい声でプラエに提案する。

 

しかし、「みんな、プラエの為に頑張ってくれてるのに、休んでられないよ」とプラエが首を左右に振る。

 

 

「プラエちゃんが倒れちゃったら意味がないよ。無理しないで休も。ね?」

 

 

 ネプギアが更に優しい声でそう言うと、プラエは、「う、うん……」と頷いて、草をかき分ける手を止める。

 

 

「よかった。じゃあ、ちょっと休憩にしよう」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「私とネプギアンダムは疲れないから、まだまだ探せるよ」とミクが言う。

 

 

「ありがとう。それじゃあ、お願いね」

 

 

 ネプギアが少し申し訳なさそうに言うと、「任せて。ネギちゃんの役に立てるの凄く嬉しいから」と言ってミクが小さくガッツポーズをする。

 

ネプギアはNギアを操作してキャンプ道具を呼び出すとキャンプの用意を始める。

 

プラエは慌てて、「プラエも手伝う」と言うが、「プラエちゃんは休んでていいよ。私とミクちゃんだけで出来るから」とネプギアが言う。

 

 

「ミクちゃーん、テント張るの手伝ってー」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ミクは小走りに近寄って来てテントを張るのを手伝ってくれた。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギアはキャンプの用意を完了させると、「プラエちゃん、おいで」とプラエをテントの中に誘う。

 

プラエは素直にネプギアに従いテントに入ると、「ありがとう、ネプギアお姉さん」とお礼を言ってシートの上に座ろうとするが、「こっちこっち」とネプギアは自分の膝の上を、ポンポンと叩く。

 

少しためらいながらも、プラエはネプギアに膝枕されると、「えへへ……気持ちいい」と微笑んだ。

 

 

「プラエちゃん、少し元気ないみたいだけど、どうしたの?」

 

 

 ネプギアがプラエの頭を撫でながらそう言うと、「……伏姫さんの言ったことが気になるの……プラエはネプギアお姉さんと一緒にいない方がいいって……」とプラエが悲しそうに言う。

 

 

「そんなことないよ。プラエちゃんが居なくなったら、私悲しいし寂しいもん」

 

 

 ネプギアが心底寂しそうな声で言うと、「……ネプギアお姉さん」とプラエは頬を赤く染める。

 

 

「よしよし……」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、プラエの頭を撫で続ける。

 

すると、「すぅすぅ……」と安らかな寝息を立てて、プラエは眠ってしまう。

 

ネプギアは寝ているプラエを起こさないように、丁寧に膝から降ろすとテントを出ていく。

 

 

「ありがとう、ミクちゃん。眠りの歌が効いたみたい」

 

 

 ネプギアはミクにお礼を言う。

 

テントを張っている間に、ミクに眠りの歌を歌って貰うよう頼んだのだ。

 

 

「ネギちゃんとプラエちゃんの役に立ててよかった」

 

 

 ミクが嬉しそうに言うと、「プラエちゃんは頑張り屋さんだから、無理しちゃうだろうし。ミクちゃんが居てくれてよかった」とネプギアが言う。

 

 

「それじゃあ、もう少し探してみようか」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「うん、頑張ろうね、ネギちゃん」とミクが嬉しそうに言う。

 

ネプギア達は再び珠を探し始める。だが、珠は見つからずに日が暮れて行った。

 

 

「ソロソロ、ヒガクレマス、コレイジョウサガスヨリ、ショクジトスイミンヲトルホウガ、ヨイトオモイマス」

 

 

 ネプギアンダムがそう言うと、「そうだね。ユニちゃん達にも連絡して今日は休むようにしよっか」とネプギアは答える。

 

ネプギアは仲間達にNギアで連絡を入れると、各チームに、今日はもう食事の用意をして休むように伝える。

 

 

 

***

 

 

 

 暫くして周囲が暗くなる。

 

そんな中ネプギアが晩御飯の用意をしていると、テントからプラエが顔を出す。

 

 

「……ごめんなさい。その……プラエ眠っちゃって……」

 

 

 プラエが心底申し訳なさそうに言うと、「いいんだよ。それより、お腹空いたよね。お粥作ったから一緒に食べよ」とネプギアが微笑む。

 

すると、プラエは笑顔を浮かべて、「ネプギアお姉さんのお粥好き!」と言ってテントから出て来る。

 

 

「ありがとう」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、プラエのお椀にお粥をよそると、プラエはアツアツのお粥を、「はふはふ」と言いながら美味しそうに食べる。

 

そこに、「フセヒメサマガ、ソチラニムカッテイマス」とネプギアンダムからの通信が入る。

 

 

「伏姫さんが?」

 

 

 ネプギアが不思議そうに首を傾げると、「なんだろう?」とプラエも不思議そうに言う。

 

 

***

 

 

 暫くして、八房を連れた伏姫が現れる。

 

 

「夕餉の最中でしたか」

 

 

 伏姫がそう言うと、「まだまだありますから、よかったらどうですか?」とネプギアが微笑みながら言う。

 

 

「それでは、ご相伴にあずかりましょう」

 

 

 伏姫はそう言いながら、ネプギアの用意したキャンプ用の椅子に座る。

 

 

「ゆーげ? ごしょーばん?」

 

 

 プラエが不思議そうに首を傾げる。

 

いつもはラムがいの一番に質問するので、プラエから質問することはあまりないが、彼女も知らない言葉をネプギアに聞きたいようだ。

 

 

「夕餉は夕食のことで、ご相伴にあずかるは、食事とかを同席してご馳走になることを言うんだよ」

 

 

 ネプギアはプラエに説明しながら、伏姫にお粥を注いだお椀を差し出す。

 

 

「伏姫さんは、いつからこのゲムドラジルの守り人をしているんですか?」

 

 

 ネプギアが伏姫に尋ねる。

 

伏姫は少し考える素振りを見せると、「あなたの来た超次元の時間で言うと、二千年以上前になりますね」と答える。

 

 

「そんな昔から!?」

 

 

 ネプギアがそう言って驚くと、「ほわ~」と言ってプラエも驚く。

 

 

「このゲムドラジルで、九花が揃うことを待ち続けています」

 

 

 伏姫の言葉に、「九花って何なんですか? もう少し詳しく教えて下さい」とネプギアが続けて質問をする。

 

 

「あなたは花言葉はご存じですか?」

 

 

 伏姫がそう言うと、「名前だけなら……」とちょっと自信が無さそうにネプギアが答える。

 

 

「このゲムドラジルの周囲には春夏秋冬、様々な花が咲いています。そしてその花には不思議な力があります」

 

 

 伏姫の言葉に、「そう言えば、仁義八行の珠に夢中で気付かなかったけど、色々な花が咲いてましたね」とネプギアが思い出したように言う。

 

 

「それで、不思議な力って?」

 

 

 プラエが伏姫に質問すると、「一つ花を選び、その花と誓約を交わすことで力を得ることができるのです」と伏姫が答える。

 

 

「花と誓約……。それって花言葉を守るってことですか?」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「あなたは賢い子ね。その通りです。花言葉を守ることにより力を引き出すことが出来ますが、守ることの出来ない場合は力を失い、最悪死んでしまいます」と伏姫が言う。

 

 

「……その力で、不治の病を治すことは出来るでしょうか?」

 

 

 ネプギアが真剣な顔で質問を続ける。

 

すると、伏姫は優し顔をしてプラエの方を見ると、「この子の病気を治したいのですね。あなたは本当に優しい子ですね」と言う。

 

 

「ネプギアお姉さん……ありがとう」

 

 

 ネプギアの気持ちを嬉しく思ったプラエは頬を赤く染めてお礼を言った。

 

 

「結論から言えば治せます。あなた達が作ろうとしている世界樹の葉の薬で寿命を延ばして、その間に誓約を守り続けて力を蓄えれば可能でしょう。ですが、それも本人次第です。仮に病気が治っても花言葉に背く生き方をすれば死んでしまうのですから」

 

 

 伏姫の言葉に、プラエは俯いて黙ってしまう。花言葉を守る自信がないと言った顔だった。

 

ネプギアはそんなプラエの手に自分の手を重ねると、「プラエちゃん、やろう」と力強く言う。

 

 

「……ネプギアお姉さん」

 

 

 プラエがネプギアの顔を見上げながら呟く。

 

 

「座して死を待つよりは、出て活路を見出さん」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「諸葛亮孔明の言葉ですね」と伏姫が言う。

 

ネプギアは、「はい」と頷くと、プラエの目を見て、「何もしないで待つより、誓約を守って病気を治す方法を考えようよ」と言う。

 

 

「でも……自信が無いし怖いよ……」

 

 

 プラエはネプギアから目を逸らしてしまう。

 

すると、ネプギアはプラエの両手を強く握り、「私も一緒に誓約するから」と言う。

 

 

「え? そんな……ネプギアお姉さんまで……」

 

 

 プラエが驚きの声を上げながらネプギアの顔を見る。

 

ネプギアはジッとプラエと目を合わせながら、「一緒に頑張ろう。ね?」と微笑む。

 

すると、プラエは、「でも、本当にいいの? ネプギアお姉さんは女神なのにそんな危険な誓約を交わすなんて」と遠慮がちに言う。

 

 

「迷いなんてないよ。目の前の友達も救えないのに女神なんて名乗れないもん」

 

 

 ネプギアが真剣な顔でそう言うと、「……ありがとう、ネプギアお姉さん」とプラエが感謝の言葉を言う。

 

 

「分かりました。あなた達にその気があるのなら、花を一つ選んで、その花を摘んで私の元を訪れて下さい」

 

 

 伏姫はそう言うと、立ち上がり、「ご馳走様でした。美味しかったです」と言って八房と共に立ち去って行った。 

 

 

***

 

 

「もぅ! またそうやって一人で勝手に決めるんだから」

 

 

 ユニが不機嫌そうな声で言う。

 

ネプギアは、花言葉の誓約をすることを通信で仲間達に伝えたのだが、ゲハバーンの時に続いて危険なことを自分一人で決めてしまうネプギアにユニは憤りを感じているようだ。

 

 

「ネプギアお姉さんを責めないで、プラエがいけないの」

 

 

 プラエがそう言うと、「まぁ、いいわ」とユニは声色を普通に戻すと、「それで好きな花を選べばいいのよね」とネプギアに質問する。

 

 

「え? でも、私とプラエちゃんだけで……」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ユニは再び不機嫌そうに、「なによ、アンタは誓約が守れるけど、アタシは守れないって言うの?」と言う。

 

 

「そうは言ってないけど……」

 

 

 ネプギアが困った声で答えると、「わたしもやるわ」とラムが、「わたしも」とロムが話に加わって来る。

 

 

「そんな、ロムちゃんとラムちゃんまで……」

 

 

 ネプギアが驚きの声を上げると、「アンタ達は止めておきなさい。ブランさんにどう説明していいかわからないわ」とユニが言う。

 

 

「お姉ちゃんは関係ないわよ。わたし達が自分の意志でやるんだから」

 

 

 ラムがそう言うと、「うん、自分の意志だよ」とロムもそれに続く。

 

 

「……みんな、ありがとう」

 

 

 プラエがそう言うと、「と、言うことは探し物が増えるですの」とがすとが言い、「女神候補生のみんなは、お気に入りの花も探すんだね」とファミ通がそれに続く。

 

ネプギアは申し訳なさそうに、「余計な手間を増やして、ごめんなさい」と謝るが、「気にしないで、バッチリフォローするから」と日本一が笑顔で答える。

 

 

「それじゃあ、明日から朝一で花と珠を探すから、そろそろ寝るわ。おやすみなさい」

 

 

 ユニがそう言って通信を切ると、「「おやすみなさい」」とロムとラムも通信を切る。

 

 

「ふぅ……大変なことになっちゃったね」

 

 

 ネプギアが少し困ったように言うと、「本当にいいの? ネプギアお姉さん」とプラエが問いかけてくる。

 

 

「当然だよ。さ、寝よう。明日も朝早いだろうし」

 

 

 ネプギアは明るい声でそう言うと、テントの中に入って行く。

 

プラエはその背中を見ながら、「ありがとう、ネプギアお姉さん。プラエ、ネプギアお姉さん達に会えて本当によかったよ」と呟いた。

 

 

***

 

 

 翌日、G.C.2019年8月18日 日曜日

 

ネプギアはプラエとコンビで、ミクはネプギアンダムとコンビで、朝早くから珠と自分の誓約すべき花を探していた。

 

 

「あ、このお花かわいいかも」

 

 

 ネプギアが嬉しそうに花を眺める。

 

 

「でも、さっきの子も綺麗だったなー」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ネプギアお姉さん、大事なのは見た目より花言葉なんじゃないかな?」とプラエが質問する。

 

 

「でも、私、花言葉ってあんまり知らなくて……ゼフィランサスとかフィサリスとかデンドロビウムとか、黒百合とかなら知ってるんだけど……」

 

 

 ネプギアが申し訳なさそうに言うと、「見事にロボットアニメばっかりだね……」とプラエがやや呆れ顔で答える。

 

ネプギアの布教活動でロボットアニメに詳しくなってきたプラエ。

 

 

「けど、伏姫さんも気に入った花でいいって言うから、自分の直感で選んでもいいんじゃないかな?」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「そうだね。実はプラエも花言葉って知らないし」とプラエが言う。

 

 

「とにかく、珠を探しながら、気に入ったお花を探そうよ。時間も限られてるんだし」

 

 

 ネプギアの言葉に、「ネプギアお姉さんにしてはアバウトかも。でも、それしかないよね」とプラエは納得したようだ。

 

そうして、再び珠と花を探し始めるネプギアとプラエ。

 

 

 

***

 

 

 

 暫くすると、空が薄暗くなって曇ってくる。

 

 

「なんだろう? 雨かな?」

 

 

 ネプギアが空を眺めながら言うと、「……嫌な感じのする天気」とプラエが言う。

 

 

「あなた達、早く避難して」

 

 

 突然目の前に伏姫と八房が現れる。

 

 

「え!? 今のは!」

 

 

 驚きの声を上げるネプギア。

 

 

「テレポートです」

 

 

 伏姫が手短に答えると、「そんな高等魔法……」とネプギアが驚くが、「それより、これからゲムドラジルは戦場になります。今から言う場所に避難して」と伏姫が答える。

 

 

「戦場って……敵ですか?!」

 

 

 ネプギアが質問をするが、「後で説明します。早く避難を!」と伏姫が言う。

 

 

「待ってください。こう見えても私は女神です。戦いなら何かお手伝いできると思います」

 

 

 ネプギアが胸に右手を当てながら訴え出る。

 

 

「敵は、深きものと呼ばれる邪神の手下。危険よ」

 

 

 伏姫がそう言うと、「それなら超次元で戦ったことがあります。手強かったですけど、女神化すれば戦えます」とネプギアが言う。

 

 

「プラエも戦えるよ」

 

 

 更にプラエもそう言うと、「わかりました。それなら手伝って下さい。ただし、危ないと思ったら、この場所に逃げて」と伏姫が地図を渡してくる。

 

 

「わかりました。ユニちゃん達にも伝えますから、安心して下さい」

 

 

 ネプギアがそう言うと、伏姫は急いでいるのか、「では、頼みました」と短く言うと、魔法を唱えて消え去る。

 

 

「邪神……こんなところに何しに来るんだろう」

 

 

 プラエが呟くと、「プラエちゃん、ユニちゃん達に事情を説明して」とネプギアが指示を飛ばす。

 

続けて、「ネプギアンダム、戦闘になるからミクちゃんと一緒に戻って来て」とネプギアが通信でネプギアンダムに向けて言う。

 

 

「プロセッサユニット装着」

 

 

 深きものの力を知っているネプギアは戦闘前に女神化を済ませてしまう。

 

 

「ネプギアお姉さん、ユニお姉さん達とロムさんとラムさん達とも話ができたよ。OKだって」

 

 

 プラエがそう言うと、「ありがとう、プラエちゃん」とネプギアがお礼を言う。

 

 

「来るっ! プラエちゃん、ミクちゃん、下がって」

 

 

 ネプギアは深きものの気配を感じ取り、もうすぐ接敵することを予測するとプラエとミクに後列に下がるように伝える。

 

同時にポッポッと雨が降り始める。

 

 

「ぶじゅるらあああああ!」

 

 

 不気味な咆哮と共に、ネプギアの視界に深きものが五匹現れる。

 

女神化してパワーアップしたネプギアの視力はいち早く敵の接近を捉え、素早くレティクルの照準を合わせる。

 

 

「マルチプルビームランチャー! 最大出力!!」

 

 

 ネプギアの叫びと共に、M.P.B.Lからピンク色のビームの奔流があふれ出す。

 

 

「ぎゃしゃあああああ!!」

 

 

 射程外からのハイドアタックで深きもの全員に35000以上のダメージが当たる。

 

 

「やっぱり、一撃じゃ倒せない!」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「プラエちゃん、私の時間を速くして。ミクちゃんはスピードアップの歌を!」とプラエとミクに指示を飛ばす。

 

M.P.B.Lは最大出力で撃つと、次の射撃が可能になるまでエネルギーチャージが必要となるのだ。

 

 

「わかったよ」

 

 

 プラエがそう言って超能力をネプギアに掛けるが、ミクは歌えず、「……」と黙ってしまう。

 

 

「ミクちゃん?」

 

 

 ネプギアが心配そうにミクに声を掛けると、ミクは震えていた。

 

 

「……怖い……あの邪神って言う敵を見ると怖くて声が……」

 

 

 しゃがみ込んでガタガタと震えるミク。

 

前回は何とか歌えたようだが、今回は仲間が少ないので心細いのだ。

 

ボーカロイドとは言え、彼女は心を持っているのだ。

 

 

「ミクちゃん……」

 

 

 ネプギアはミクの頭に手を置いて優しく撫でる。

 

 

「ごめんね。無理行って、ミクちゃんは私が守るから安心して」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「ネプギアンダム、ミクちゃんとプラエちゃんをお願い」と言ってプロセッサユニットのバーニアを噴射させ空を飛ぶと、サブのバーニアも噴射させてUFOの如く慣性を無視したようなジグザグ軌道で敵に高速接近する。

 

 

「ぶるるるるわ!」

 

 

 ネプギアの強襲に驚き慄く深きものの群れは、ブレイクの魔法を使ったり、口から舌を出したりする。

 

 

「当たりません!」

 

 

 avoid。ネプギアはジグザグに動く回避運動で、全ての攻撃を華麗に避ける。

 

その間にネプギアは、ペンネルに魔方陣を描かせて、「……地よその獰猛な牙で敵を嚙み砕け……」と魔法を唱える。

 

 

「ジャギッド・ロック!」

 

 

 ネプギアが左手で魔法を発動させると、巨大で鋭い岩が深きものの一匹に向かって行き、13241のダメージを与えて戦闘不能にする。

 

更にネプギアはジャギッド・ロックを飛ばしている間に、もう一匹の深きものの懐に潜り込み、「シルヴァーティル!」と高速の連続突きをお見舞いする。

 

 

「げぶぅぅぅぅ!!」

 

 

 貫かれた深きものは、9781のダメージを受けて戦闘不能になる。

 

 

「うがああああ!」

 

 

 その隙にネプギアに殴り掛かる深きもの。

 

 

「はっ!」

 

 

 avoid。ネプギアは素早く身を屈めて深きもののパンチを避けると、素早い足払いで深きものを攻撃する。

 

 

「うがっ!」

 

 

 バランスを崩す深きもの。

 

ネプギアは、その深きもののあごに向けて、「龍昇拳!」とカエル飛びアッパーを食らわせる。

 

 

「はぎゃ!?」

 

 

 深きものは、10579のダメージを受けて戦闘不能になる。

 

 

「ぐわーーー!」

 

「くえーーーー!」

 

 

 残った二匹の深きものが、ネプギアの龍昇拳の着地を狙ってパンチで攻撃してくる。

 

 

「甘い!」

 

 

 しかし、ネプギアはプロセッサユニットのバーニアを吹かすと一気に急上昇する。

 

 

「「!?」」

 

 

 驚く深きものに対してネプギアは、チャージの終わったM.P.B.L素早く構えると、一匹の頭部に素早くレティクルの照準を合わせる。

 

 

「そこっ!」

 

 

 M.P.B.Lからピンク色のビームが発射されると同時に、深きものの頭部に命中し、ヘッドショットで15474のダメージが当たり戦闘不能になる。

 

 

「ハリケーンキーーーック!」

 

 

 同時に残った深きものには、ネプギアの急降下キックが顔面にめり込む。

 

深きものは、10036のダメージを受けると戦闘不能になる。

 

すると全滅した深きものの群れは水になって崩れ落ちる。

 

 

「ネギちゃん、強い!」

 

 

 ミクが思わず叫ぶ。

 

同時にプラエも、「流石、ネプギアお姉さん」と拍手をする。

 

 

「まだまだ来るよ。油断しないで!」

 

 

 ネプギアはそう言って、バーニアを前方に集中させてバックステップをする。

 

すると、先程までネプギアが居た場所にブレイクの魔法が何発も飛んでくる。

 

 

「こんなに数がいるなんて……」

 

 

 ネプギアの視界には十匹を超える深きものの姿が映っていた。

 

 

「それでも、負けるわけにはいきません!」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、深きものの群れに立ち向かっていく。

 

 

***

 

 

「うわわわっ! この数はキツイって!」

 

 

 日本一の視界には、先程ネプギアが見たように十匹を超える深きもののが映っていた。

 

ユニ達は、ネプギア達と同じく緒戦の五匹の深きものの群れを撃退したが、直ぐに増援が現れたのだ。

 

 

「日本一下がって! 早く!」

 

 

 ユニが叫ぶ。

 

 

「エクスマルチブラスター! モード、エンプレス!!!」

 

 

 ユニのX.M.Bから、強烈な赤いビームの奔流が発射される。

 

ビームは横一文字に深きものの群れを薙ぎ払う。

 

 

「「「「「ぐげええええええええええ!!!」」」」

 

 

 深きものの群れは、40000以上のダメージを受けて断末魔の叫びを上げて水になって崩れ落ちる。

 

 

「やりましたの?」

 

 

 がすとが、恐る恐る尋ねると、「チッ……まだ増援がくるわ」とユニが忌々しそうに言う。

 

ユニの視界には、再び十匹を超える深きものの姿が映っていた。

 

X.M.Bのモード、エンプレスも、M.P.B.Lの最大出力と同じく連射が出来ず、チャージ時間が必要になる。

 

 

「これじゃ、キリがないよー!」

 

 

 日本一が弱音を吐く。

 

 

「日本一とがすとは、プラエの指示した地点に逃げて。アタシだけでやるわ!」

 

 

 ユニがそう言うと、「そう言う訳にはいかないよ。仲間を見捨てるなんてヒーロー失格だし」と日本一が答えるが、「がすとは逃げたいですの……」とがすとが言う。

 

 

「がすと!」

 

 

 日本一が、がすとに向けて叫ぶ。

 

 

「冗談ですの。でも、この数はシャレになりませんの」

 

 

 がすとがそう言うと、「わかったわ。アタシも前に出る」とユニが言う。

 

 

「これだけ数がいると、ネプギア達が心配だよー」

 

 

 日本一が、不安そうに言う。

 

 

「そうね。特にロムとラムのところは、ファミ通しか前衛が居ないから……」

 

 

 ユニはそう言いながら心配そうに、ロムとラムの居る方向を見つめる。

 

 

 

***

 

 

 

「がはっ!」

 

 

 深きもののから顔面にパンチを受けたファミ通は、253のダメージを受けて崩れ落ちる。

 

 

「ファミ通さん!」

 

 

 ロムが叫ぶ。

 

同時に、「ロムちゃん、詠唱を解いちゃダメ!」とラムが言う。

 

 

「ごめんなさい!」

 

 

 慌てて詠唱に戻るロム。

 

 

「「……大地に眠る熱き炎よ……山となりて敵を焼き尽くせ……」」

 

 

 ロムとラムの詠唱に合わせてペンネルが書いた地面に魔方陣が輝く。

 

 

「「ヴォルガノン!!!」」

 

 

 ロムとラムが魔法を発動させると、深きものの群れが、地割れとそこから吹き出る溶岩に焼かれる。

 

深きものの群れ達は、50000近いダメージを受けて一瞬で蒸発する。

 

 

「これで終わりよね?」

 

 

 ラムが少し不安げにそう言うと、「ダメ……まだ来る」とロムが泣きそうな声で言う。

 

 

「ファミ通! 下がって回復するわ」

 

 

 ラムが叫ぶがファミ通は動かない。

 

 

「ごめん……ダメージが深くて、動けそうにないよ……」

 

 

 ファミ通が息も絶え絶えに言う。

 

ロムとラムも合体魔法のヴォルガノンは強烈で広範囲だが、詠唱が長く、その間タンクをしていたファミ通には深刻なダメージが溜まっていた。

 

 

「そんな!」

 

 

 ロムが悲痛な叫びを上げる。

 

 

「……二人だけでも逃げて……」

 

 

 ファミ通はそう言うが、「そんなこと出来るわけないでしょ。信者を捨てて逃げるなんて女神失格だもの!」とラムがファミ通の居る場所に飛んでいく。

 

同時に、「ファミ通さんを守るよ」とロムもラムの後を追う。

 

 

「無茶だよ。女神様だって言っても、二人は後衛の魔法職なんだから!」

 

 

 ファミ通が二人に向けて言うが、「こう見えても、四女神オンラインでは忍者と侍してたんだから」とラムが言い、「負けないよ」とロムが言う。

 

 

***

 

 

「くっ……数が多すぎる……こんなにいるなんて」

 

 

 ネプギアが唇を噛む。

 

既に彼女の倒した深きものは五十匹を超えていた。

 

 

(みんなは大丈夫なの? 私が戦えるなんて言い出さなきゃ……伏姫さんの言う通りにしておけば)

 

 

 ネプギアが後悔の念に駆られていると、突然、ネプギアの右足に深きもの舌が絡みつく。

 

 

「しまった!」

 

 

 ネプギアが慌てる隙もなく、ブレイクの魔法が連続で飛んでくる。

 

 

「きゃああああ!」

 

 

 ネプギアは悲鳴を上げる。

 

同時に左腕にも深きものの舌が絡みついてしまう。

 

 

「ぶるわあああああ!」

 

 

 更に深きもの達のパンチがネプギアの顔と腹を襲う。

 

 

「ぐうっ!?」

 

 

 集中攻撃を受けたネプギアは合計で、1500以上のダメージを受けて一気にHPゲージが残り三割になってしまう。

 

女神化していなかったら即戦闘不能だっただろう。

 

 

「ネプギアお姉さんを離して!」

 

 

 プラエが素早く鎖を伸ばして、ネプギアの左腕に絡みついた舌を切り裂く。

 

しかし、その間に別の深きものが素早くプラエに近づいて、プラエの顔を殴る。

 

 

「いやぁ!?」

 

 

 プラエは、303ダメージを受けるとHPゲージが残り一割になり同時に頭部への打撃攻撃効果で気絶してしまう。

 

ネプギアは慌てて、M.P.B.Lのブレード部分で右足に絡みついた舌を切り裂くと、「プラエちゃん!」とプラエの元に向かおうとする。

 

 

「「「うじゅううううう!」」」

 

 

 しかし、五匹以上の深きものがネプギアをブロックして、行く手を阻む。

 

その間に、別の深きもの達がプラエに近づく。

 

 

「テキ、ボウエイラインヲトッパ。コウゲキヲカイシシマス」

 

 

 ネプギアンダムが目からビームを放って攻撃する。

 

ダメージは1320と決して低くはないのだが、屈強な深きものには効果が薄い。

 

 

「どいてっ!」

 

 

 深きものの群れに対して悲痛な叫びを上げるネプギア。

 

 

「プラエちゃんに近づかないで!」

 

 

 ミクが勇気を振り絞ってネギセイバーを持って深きものに向かって行くが、「ぶるぁ!!」と深きものが叫びながら殴ると一発で吹き飛ばされてしまう。

 

 

「あうっ……」

 

 

 クリティカルヒットで435のダメージを受けたミクはそのまま戦闘不能になってしまう。

 

 

「ミクちゃん!?」

 

 

 ネプギアは叫びながらも、M.P.B.Lで敵と交戦を続けるが、倒しても倒しても敵が寄って来る。

 

深きものはミクには興味を示さず、そのままプラエの方に向かって行く。

 

 

「キンキュウジタイハッセイ。Kタイプニキンキュウカンソウシマス」

 

 

 ネプギアンダムがそう言うと、装備していたパーツをパージして別の装備に換装する。

 

新しい装備は背中と両手両足に盾のようなパーツがつけられているものだ。

 

【Kタイプ】とはキープタイプの意味で、防衛に特化した形態だ。

 

 

「プラエサマ、イマオタスケシマス」

 

 

 ネプギアンダムは怒涛の勢いでプラエの元に行くと、彼女を護るように覆いかぶさる。

 

 

「ネプギアンダム!」

 

 

 その行動にネプギア驚きの声を上げる。

 

 

「プラエサマハ、ワタシガイノチニカエテモマモリマス。ネプギアサマハテキノゲキハヲ」

 

 

 ネプギアンダムの言葉に、「でも、それじゃあ、ネプギアンダムは!?」とネプギアが叫ぶ。

 

その間にプラエを狙って集まった深きもの達が、ネプギアンダムをリンチするかのように足蹴にする。

 

 

「いやぁーーー! 私のネプギアンダムがーーーー!」

 

 

 悲痛な叫びを上げるネプギア。 

 

 

「オハヤク! Kタイプトイエドモチョウジカンハモチマセン」

 

 

 ネプギアンダムが叫びを上げる。

 

 

「くっ!」

 

 

 ネプギアはネプギアンダムの想いを無駄にしない為にも、目の前の深きもの達との戦闘に集中する。

 

しかし、倒しても倒しても数は減らず、ネプギアは深きもの達の囲みを突破できなかった。

 

 

(このままじゃ……私、誰も守れずに……そんなの嫌っ)

 

 

 その時、ネプギアの脳裏に一本の剣がよぎる。

 

 

(ゲハバーン! あの剣の力を少しでも引き出せれば……)

 

 

 ネプギアがそう思った瞬間、(その剣を使ってはいけない)と頭に声が響いてくる。

 

 

「誰!?」

 

 

 思わず声を上げるネプギア。

 

すると、(今のあなたにはその剣は使いこなせない。私と力を合わせて)と再び声が響いてくる。

 

 

「どこ? どこにいるの?」

 

 

 ネプギアは、深きもの達の攻撃を避けながら声の主を探す。

 

 

(あなたの目の前よ)

 

 

 頭に響いて来た声の通り正面を向くネプギアだが、そこには樹が一本あるだけだった。

 

 

「樹?」

 

 

 ネプギアは思わず首を傾げてしまう。

 

同時に、(その通りです。私はこのライラック樹の精霊)と言う言葉がネプギアの頭に響く。

 

 

(ネプギア、あなたは私と誓約を交わす勇気はありますか)

 

 

 再びネプギアの頭に声が響く。

 

そこまで聞いたネプギアは、「……誓約……伏姫さんが言っていた花言葉の誓約」と呟く。

 

よく見ると樹には紫とピンクと白の花が咲いていた。

 

 

(その通りです。私、ライラックの花言葉は、友情、謙虚、思い出、青春の喜び、愛の芽生え、優しく控えめな女性、無邪気、誇り、美。誓えますか?)

 

 

 ライラック精霊の声がネプギアに誓約を迫る。

 

 

「私には大それた言葉ばかり、でも! 誓います! 私は大切な友達とゲイムギョウ界を護るために、ライラックの花と誓約を交わします!」

 

 

 ネプギアがそう言うと、(いいでしょう。私もあなたを誓約者として認めます。さあ、私の根元にある珠を取りなさい)とライラックの精霊が答える。

 

それを聞いたネプギアは、深きもの達の追撃をかわし、ライラックの樹の根元に行くと、そこには光る珠があった。

 

 

「これは仁義八行の珠!?」

 

 

 ネプギアは驚きつつ、光る珠を拾うとその珠はネプギアの体内に吸い込まれるように消えて行く。

 

 

(その珠は、考の珠です。おもいはかること、工夫をめぐらすこと。親孝行すること。親や先祖を大切にする心。これらを忘れないで下さい)

 

 

 ライラックの精霊はそう言うと、(これであなたは九花の一人です。さあ、戦いなさい。大切な友達とゲイムギョウ界を護るために)と続けて言う。

 

ネプギアは、「はい!」と頷くと、「凄い! 力が溢れてくる! これなら!」と言って飛び掛かってくる深きもの達にM.P.B.Lを向ける。

 

 

「マルチプルビームランチャー、最大出力!」

 

 

 ネプギアの叫びと共に、M.P.B.Lからピンク色のビームの奔流があふれ出す。

 

そのビームは先程の最大出力より遥かに巨大だった。

 

ビームが深きもの達の群れを薙ぎ払うと、ハイドアタック無しにも関わらず、50000以上と先程の最大出力より大きなダメージが当たる。

 

ビームに薙ぎ払われた深きもの達は一撃で、水となって崩れ落ちる。

 

 

「これ以上、ネプギアンダムはやらせない!」

 

 

 ネプギアはバーニアを全開で噴射して、ネプギアンダムを足蹴にする深きもの達の群れに突撃する。

 

 

「ルミナ・アージェント!」

 

 

 バーニアの勢いに乗ったまま、M.P.B.Lの高速の突きを深きもの達にお見舞いするネプギア。

 

深きものは、40231ダメージを受けて戦闘不能になる。

 

続けて着地したネプギアは、「ギアナックル!」と言って、右手で深きものの顔面を殴りつける。

 

深きものは、40546のダメージを受けてノックバック効果で吹き飛んで戦闘不能になる。

 

ネプギアは最後の一体との間合いを詰めると、「ラジカルセイバーーーー!」とジャンプ斬りで深きものの頭を切り裂くと、42369のダメージが当たり、ネプギアンダムを足蹴にしていた深きものの達が全て水になって崩れ落ちる。

 

 

「ネプギアンダム! しっかりしてネプギアンダム!」

 

 

 ネプギアは必死にネプギアンダムに呼びかけるが、ネプギアンダムからの返事はない。

 

所々が凹み、ブレイクの魔法で焼きただれたネプギアンダムの姿は痛々しくあった。

 

 

「……ネプギアお姉さん……」

 

 

 途中で気が付いていたプラエが悲しそうに呟く。

 

 

「プラエちゃん、無事だった!」

 

 

 ネプギアがプラエにそう質問すると、「うん……ネプギアンダムが命がけで守ってくれたから」とプラエが言う。

 

 

「そうだ! ミクちゃんも!」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「……光と水の精霊よ……傷つき倒れた英霊を救いたまえ……」と魔法の詠唱を始める。

 

 

「リバイブ!」

 

 

 ネプギアが魔法を発動すると、「んんっ……」とミクが目を覚ます。

 

ミクは機械だがゲイムギョウ界では魔法で回復できる。

 

しかし、今のネプギアンダムほど壊れてしまうと効果が無い。

 

 

「……ごめんなさい。ネギちゃん……私」

 

 

 ミクが申し訳なさそうに言うと、「私の方こそ、ごめんね。守るって約束したのに」とネプギアが言う。

 

 

「あっ! ユニちゃんやロムちゃん達も助けにいかなきゃ!」

 

 

 ネプギアがそう言うと、(そちらは大丈夫です。彼女が間に合いました)とライラックの精霊の声がする。

 

 

「彼女?」

 

 

 ネプギアが首を傾げると、(あなたと同じ、智の珠を持つ九花です。彼女に任せておけば問題ないでしょう。それより、あなたはこの場所に留まって、深きものの進攻からゲムドラジルを護って下さい)とライラックの精霊が言う。

 

 

「わかりました」

 

 

 ネプギアは素直にライラックの精霊に従い、再び現れた深きもの達の群れに突撃していく。

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