新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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025初音ミクの復活

 ネプギアがビィトリットに人魚との仲介を頼んで十日が経った。

 

G.C.2019年8月22日 木曜日。

 

ネプギア達は午前中にクエストを終わらせると、ビィトリットの言うように、午後にエルフの里を訪れていた。

 

ビィトリットは、訪れて来たネプギア達に、「人魚との話はついたわ。話だけは聞いてくれるそうよ」と言う。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 ネプギアが深々と一礼してお礼をすると、ネプギア達はビィトリットの案内で、人魚が住んでいるという海岸を目指して森の奥を歩いていた。

 

森を抜けるとビィトリットが、「ここが人魚達の住む海岸よ」と言って海を指差す。

 

ネプギア達の目には美しいマリンブルーの海が広がっていた。

 

 

「ふわ……綺麗(きらきら)」

 

 

 ロムがそう言うとラムも、「きっれーーーーい!」と叫び、二人とも美しく輝く海面に感嘆の声を上げる。

 

 

「アタシも色々と冒険しているけど、こんな綺麗な海は初めてみたよ」

 

 

 ファルコムも感心すると、ビーシャも、「水着もってくれよかったなー」と海を見て感動している。

 

すると、「人間が来ない上に都市から離れているからよ」とビィトリットが皆の疑問に答える。

 

 

「誰も来ないんですか~? こんなに綺麗なのに?」

 

 

 コンパが首を傾げると、「エルフの結界で護られているからよ。私達エルフがいないとこの場所には辿り着けないわ」とビィトリットは続けて答えると、「なるほど、こんな場所が今まで紹介されないなんて、おかしいもんね」とファミ通が納得する。

 

 

「……何か聞こえてこない?」

 

 

 日本一が耳を澄ましながら言うと「……歌ですの」とがすとが言う。

 

がすとも耳を澄ませると聞こえてくるのが歌だと気付いたようだ。

 

 

「人魚の歌よ。彼女達は歌を愛し毎日歌っているわ」

 

 

 ビィトリットが説明すると「心が洗われるような綺麗な歌ね……」とユニが歌に聞きほれる。

 

プラエも目を閉じて、「ずっと聴いていたいくらい」と呟く。

 

 

「……歌……」

 

 

 ぽつりと呟いて黙ってしまうミク。

 

ネプギアに慰められて一時的には治ったミクだが、深きものとの戦いで歌えなかったショックは完全には消えていなかった。

 

この数日、練習や普通のモンスターの前では歌えたが、どこかその姿はぎこちなかった。

 

 

「あなた達はここで待っていてちょうだい。まずは私が話してくるわ」

 

 

 ビィトリットはネプギア達を手で制して前に進み始める。

 

 

「話だけでも聞いてくれるといいな」

 

 

 ネプギアは祈るように言うと、「そうですね。交渉の場だけでも持てればよいのですけど」とイストワールもネプギアの意見に同意する。

 

ゴッドイーターが、「こういう時は当たって砕けろの精神だよ」と熱弁するが、「砕けてしまっては元も子もない。ある程度、考えて石橋を叩いて渡る方がいいわ」とニトロプラスが冷静に答える。

 

暫くしてビィトリットが戻って来ると、「待たせたわね。予定通り族長が話だけ聞くそうよ」と告げると、「よかった、話だけでも聞いてくれるんですね」とネプギアが嬉しそうに言う。

 

 

「ただし、来るのはネプギア達女神だけよ」

 

 

 ビィトリットがネプギア達女神候補生の四人を指定すると、「わかりました」ネプギアは頷く。

 

そしてネプギアとユニとロムとラムはビィトリットに先導されて浜辺まで案内される。

 

そこには長い金色の髪をウェーブ状にした胸部以外は裸で下半身は魚の女性が海の上の小さな岩場に座って待っていた。

 

成熟した大人の女性であり、族長の威厳が漂っている。

 

 

「私は人魚の族長ルルド、あなた達のような子供が女神なの?」

 

 

 その女性はルルドと名乗るとネプギア達に質問すると「はい、プラネテューヌの女神候補生ネプギアです」とネプギアが答える。

 

 

「ラステイションの女神候補生ユニよ」

 

 

 ユニが続けて答えると、「……ルウィーの女神候補生ロムです(はらはら)」とロム少しオドオドしながら答えると、「同じくルウィーの女神候補生ラムよ!」とラムが最後に威勢よく答える。

 

 

「まず最初に言っておくわ。私達人魚は人間が嫌いよ。ビィトリットがあなた達を信用していると言うから話を聞くだけ」

 

 

 ルルドは冷たい声でピシャリと言い放つが、「はい、それで十分です」とネプギアはルルドの言葉に怯まず答えると、「で、あなたの言い分はなに?」ルルドは話を早く切り上げたいかのようにネプギアに本題を問いかける。

 

 

「私は女神として、みんなが平和に暮らせるゲイムギョウ界を作りたいんです。人間も人魚もエルフもドワーフも」

 

 

 ネプギアは胸に手をあて精一杯訴えかける。

 

 

「……いきなり大きく出たわね」

 

 

 しかし、ルルドは冷静な態度を崩さない。

 

 

「人間が人魚に迷惑を掛けているとことは聞きました。でも、人間も海を汚したことを反省しています。私も女神として人間と人魚が仲良くできるよう全力を尽くします」

 

 

 ネプギアは尚も言葉を続ける。

 

その目には迷いは無く、真剣そのものであった。

 

 

「本当に呆れるぐらい純粋で真っ直ぐね」

 

 

 ルルドは感心と呆れが混じった溜息を付くと、「私とホルランドに精霊達が期待していること分かって貰えたかしら」とビィトリットがルルドに言う。

 

 

「なんとなくね。ところで、ラステイションとルウィーの女神のあなた達も同じ意見なの?」

 

 

 ルルドはビィトリットに答えつつ、ユニ達にも確認をする。

 

 

「アタシはラステイションの女神。ネプギアとはライバル関係だし時には意見が違うこともあるわ。でも、ネプギアのことは親友だって思ってるし、アタシの目指すゲイムギョウ界とネプギアの目指すゲイムギョウ界は同じだって信じてる」

 

 

 ユニはハッキリと答えると、「……わたしはネプギアちゃんを信じてる。ネプギアちゃんと一緒ならみんなが幸せになれるゲイムギョウ界を作れるって、その為なら何だってするよ」とロムは彼女にしてはハッキリと答える。

 

 

「わたしはネプギアが好き! 誰にでも優しいネプギアと一緒なら絶対に善いゲイムギョウ界が作れるわ!!」

 

 

 ラムは彼女らしくハッキリキッパリと言う。

 

 

「……若さとも言えるけど、この子達ならやってくれる。そんな期待感はあるわ」

 

 

 ルルドは先程よりも幾分表情が柔らかくなるが、「でも、それだけで頷ける程、人魚と人間の間の溝は浅くはないの」とキッパリと言う。

 

ネプギア達に好印象を持ったようだが、答えは変わらないようだった。

 

 

「どうしたらいいでしょうか? 私に出来ることなら何でもします」

 

 

 ネプギアは真剣に訴えると「言葉や態度だけじゃなくて実際に行動で示してもらう必要があるわ。海を汚したことを反省しているなら綺麗な海を返して欲しいわ」とルルドはネプギアに答える。

 

 

「それは……すぐには無理ですけど、必ず守ってみせます」

 

 

 ネプギアは少し考えてから答えると、ルルドはニコリと笑い、「思ったより冷静な答えね。それじゃあ、その時を期待してるわ」と言って海の中に潜ってしまう。

 

 

「……帰っちゃったの?」

 

 

 ロムがガッカリしたように言うが、「今はこれで上出来よ。後はあなた達と人間が実際に行動で示す必要があるわ」とビィトリットは慰めるように言う。

 

 

「そう……ですよね。一朝一夕で簡単に出来ることじゃないですよね」

 

 

 ネプギアはルルドの去って行った海を見ながら、自分を納得させるように言う。

 

 

「あ、あの……待って下さい」

 

 

 ネプギア達が仲間の元に戻ろうとした時、後ろから少しおとなし目の声が掛けられる。

 

ネプギア達が振り返ると、ネプギアと同じぐらいの年頃で青いストレートロングヘアーの女の子が海の中から頭を出していた。

 

 

「シェリリじゃない」

 

 

 ビィトリットは彼女のことを知っているようで彼女の名前を呼ぶと、「ビィトお姉さまお久リぶりです」と シェリリと呼ばれた少女が海の中から上半身を現す。

 

彼女は先程までルルドが腰を下ろしていた岩場に座る。

 

ルルドと同じように下半身は魚のようになっており、彼女も人魚であることが分かる。

 

 

「どうしたの? みんな海に帰って行ったわよ」

 

 

 ビィトリットが心配そうに言うと、「……その……人魚と仲良くしたいって言う女神様のことが気になって……」とシェリリはモジモジと答える。

 

 

「盗み聞きしていたのね」

 

 

 ビィトリットは呆れたように言うと、「……ごめんなさい……」とシェリリは小さくなって謝る。

 

 

「ビィトリットさん、この方は?」

 

 

 ネプギアがビィトリットに質問をすると、「この子はシェリリ、人魚の中で一番若い子よ。まだ若いから人間に対して偏見が無いどころか人間に興味津々の人魚の中の問題児よ」と少し微笑みながら答える。

 

 

「問題児なんてヒドイ」

 

 

 ビィトリットの紹介にシェリリは頬を膨らませて不満を漏らす。

 

 

「冗談よ。そういうことだから、あなた達と仲良く出来るんじゃないかしら」

 

 

 ビィトリットはそう言ってウィンクする。

 

 

「あの……シェリリです……よろしくお願いします」

 

 

 シェリリはモジモジしながらも自己紹介をすると、「こちらこそよろしくお願いします」とネプギアは丁寧に頭を下げる。

 

 

「よろしく、シェリリ」

 

 

 ユニがネプギアに続いて言うと、「仲良くしてね」とロムが、「よろしくー」とラムが言う。

 

こうしてネプギア達と人魚の初交渉は、人魚の友人が一人できるという結果に終わった。

 

 

***

 

 

 翌日、G.C.2019年8月23日 金曜日

 

ネプギア達は久しぶりにオンガクギョウ界を訪れていた。

 

プラエの病気が快方したので、以前にネプギアが話した5pb.とライブを一緒にやるという話を正式に受けたのだ。

 

ミクの調子は心配ではあったが、オンガクギョウ界なら安全だし、何よりネプギアの力になりたいとミクが必死に訴えたのだ。

 

ネプギア達はサプライズゲストとして、最後に登場することになっていた。

 

メンバーはネプギア達、【グランプリ ユナイテッド】の六人の他に、護衛として、ゴッドイーターとニトロプラスとビーシャ。取材としてファミ通が同行していた。

 

残ったメンバーはゲイムギョウ界でクエストに励んでいる。

 

 

***

 

 

 ネプギアはミクの事をユニ達に任せて、ミクを譲ってもらった店を訪れていた。

 

 

「あっ! ネプギアさん」

 

 

 ミクを譲ってくれた店員がネプギアを見つけると、嬉しそうに声を掛ける。

 

 

「お久しぶりです」

 

 

 ネプギアが丁寧に一礼すると、「こちらこそお久しぶりです」と店員も一礼する。

 

 

「ネプギアさんがここに居るってことは噂は本当だったんですね!」

 

 

 店員が嬉しそうに言うと、「噂?」とネプギアが首を傾げる。

 

 

「ゲイムギョウ界の5pb.さんのライブでグランプリ・ユナイテッドがサプライズゲストで来るって話です!!」

 

 

 店員が興奮気味に言うと、「そんなに噂になってるんですか!?」とネプギアが驚きの声を上げる。

 

 

「そりゃもう! チケットも飛ぶように売れて満席だそうです」

 

 

 店員が自分の事のように嬉しそうに言うと、「うぅ……緊張するなぁ……」とネプギアが自信なさそうに両手の人差し指をツンツンさせる。

 

 

「今日はミクちゃんは一緒じゃないんですか?」

 

 

 店員が辺りをキョロキョロと見回しながら言うと、「実はミクちゃんの事で相談があって……」とネプギアが真面目な声で言うと、「何かあったんですか?」と店員もネプギアの雰囲気を察し真剣な顔になる。

 

 

「……ゲイムギョウ界ではミクちゃんは吟遊詩人として、戦いに参加してもらっているんです」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「それはオンガクギョウ界にもファミ通があるんで読んだことあります。5pb.さんも戦闘に参加してるみたいですし、ファミ通ではちゃんと活躍してるって書いてありましたけど……」と店員が答える。

 

 

「つい最近までは順調だったんです。ミクちゃんの歌は凄く力になってくれましたし」

 

 

 ネプギアの言葉に、「つい最近ってことは今はダメなんですか?!」と店員が心配そうに尋ねた。

 

 

「ダメとは言いません。でも、今までのびのびと歌ってくれていたミクちゃんが戦いで怖さを知ってしまって」

 

 

 ネプギアの説明に、「怖さ?」と店員が首を傾げる。

 

 

「邪神と言う今までのゲイムギョウ界にはない恐ろしい見た目の敵が出てきて、その敵が出てくるとミクちゃんが怯えて歌えなくなっちゃうんです……それにショックを受けたミクちゃんが【歌えないボーカロイドに価値なんてない】言い出して……」

 

 

 ネプギアがそこまで言うと、「それで私に話を聞きに来たんですね?」と店員が言う。

 

 

「そうです。教えて下さい、ミクちゃんの過去を!」

 

 

 ネプギアが訴えるように言うと、「なかなか上手く行かないものですね……ようやく幸せになれたと思ったのに……」と店員が切なそうに言う。

 

 

「場所を変えましょう」

 

 

 店員はそう言うと、もう一人の店員に店を頼んで、ネプギアと一緒に街に出かけた。

 

ネプギアは河原に案内されると、「……全部私の所為なんです……私が軽率だったばかりにミクちゃんを傷つけてしまって」と店員が話を始める。

 

 

「どういうことですか?」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ミクちゃんの最初のマスター……彼は本当にミクちゃんを愛していた。当時はネットの動画でもミクちゃんを褒めるコメントでいっぱいだった……だから他のボーカロイド作り手も彼と同じようにミクちゃんを愛してくれると勘違いしてしまったんです」と辛そうに店員が言う。

 

 

「……勘違いって言うことは違っていたってことですか?」

 

 

 店員の雰囲気を察したネプギアが声のトーンを落として言うと、「最初の方は、まだよかったんです……心を持ったソフトの噂を聞きつけ本気で買ったけど、できなくて諦める人、興味本位で買って飽きる人……みんな数日で返品してきました。返品されたミクちゃんを起動チェックして話しても、【なかなか良いマスターに巡り合えないね】って笑ってくれました」

 

 

「……」

 

 

 ネプギアは黙って話を聞いていたが、その時のミクの健気な気持ちを思うと胸が張り裂けそうだった。

 

 

「……最悪だったのは最後の二人です」

 

 

 店員は怒気を含んだ声でそう言うと、「……ミクちゃんも前のマスターとその前のマスターに価値がないって言われたって言っていました」とその時のミクの姿を思い出したネプギアが切なそうに答える。

 

 

「一人は、淫猥な歌詞を何度も無理矢理言わせて、嫌がるとミクちゃんに罵詈雑言を何度も浴びせたそうです……何度も何度も執拗に……返品されてきたミクちゃんは辛そうにその事を語ってくれました……私はその時決めたんです。もう信頼できる人にしかミクちゃんを任せられないと」

 

 

 店員がそう言うと、「じゃあ、何で二人……」とネプギアが質問しようとすると、「騙されたんです! もっと私に人を見る目があれば!!」と店員が怒りと後悔を強く含んだ声でネプギアの言葉を遮る。

 

ネプギアは店員の怒気に圧されながらも、静かに次の言葉を待った。

 

 

「アイツは、彼……最初のマスターの友人で彼と一緒に色々な曲を作っていた。彼もアイツのことを親友だって言ってました……だから譲ったのに……」

 

 

 店員はそのことを思い出したのか、全身をわなわなと怒りに震えているようだった。

 

 

「アイツは彼に嫉妬していたんです。いつになっても自分のソフトには心が宿らなかったから、彼のミクちゃんを復讐してやろうって!」

 

 

 店員が怒りと悲しみで涙を流しながら叫ぶと、「復讐ってそんな!?」とネプギアが驚きと悲しみの入り混じった声を上げる。

 

 

「そうです! ただの八つ当たりですよ! 私がアイツの悪い噂を聞きつけた時はもう遅かった! 家に乗り込んで強引にミクちゃんのソフトを取り返したけど全て手遅れだった……ミクちゃんの心はボロボロでした……」

 

 

 店員はガックリと地面に手を付くと、そのまま泣き続けた。

 

ネプギアは自分も泣きたいのを堪えて店員が落ち着くのを静かに待っていた。

 

 

「……すみません。取り乱して」

 

 

 店員が涙を拭きながらそう言うと、「いえ、気持ちは分かります。でも、最初に起動した時ミクちゃんにそんな雰囲気ありませんでしたけど……」とネプギアが質問すると、「……必死で治しました……毎日起動して話しかけて、ミクちゃんは何も答えてくれませんでしたけど、それでも諦めませんでした」と店員が切なそうに話す。

 

 

「……四年でしょうか。あの日以来、初めてミクちゃんが喋ったんです……小さくか細い声で一言、【……歌いたい……】と……私はそれまで、もう誰も信用しない。ミクちゃんは私が一生面倒を見ると決めていました。でも、ミクちゃんは歌うことを諦めていなかった」

 

 

 店員はそう言うと再び涙を流した。

 

 

「私はボーカロイドのことを必死で勉強して、ミクちゃんに教えましたけど、私には彼のように歌わさせてあげることができなかった。ミクちゃんはそれで喜んでくれましたけど、私はもう一度、彼のように歌わせてあげたかった……そんな時に現れたのがネプギアさんです」

 

 

 店員の言葉に、「私ですか? でも、あの時の私はボーカロイド初心者で……」とネプギアが言うと、店員は静かに首を振って、「経験は関係ありませんでした。あなたの真剣だけど優しい目、身にまとう雰囲気、そしてミクちゃんに掛ける情熱……何もかもが彼と同じでした……」と言った。

 

 

「私は運命を感じました。そしてミクちゃんにお願いしました。【もう一度人間を信じてくれないかと】と」

 

 

 店員は続けてそう言うと、静かにネプギアの目を見た。

 

 

「……ミクちゃんは何て?」

 

 

 ネプギアの質問に、「今、あなたがミクちゃんのマスターであることが、その答えです」と店員が答えた。

 

 

「……わかりました。ミクちゃんの期待に応えられるか分かりませんが、全力で頑張ります」

 

 

 ネプギアは女神化した時のような凛とした声で店員に応えると、「ありがとうございます! ミクちゃんのことよろしくお願いします!」と店員は大きく頭を下げた。

 

 

「頭を上げて下さい。一つ訂正して欲しいことがあります」

 

 

 ネプギアがそう言うと、店員は頭を上げて、「なんですか?」とネプギアに問いかける。

 

 

「私はミクちゃんのマスターじゃありません」

 

 

 ネプギアの言葉に、「え!?」と店員は驚きの声を上げる。

 

 

「私と……いえ、私達とミクちゃんは仲間で友達です。かけがえのない大切な親友なんです!」

 

 

 ネプギアが力強く言うと、「え……」と店員が息を吞む。

 

 

「それじゃあ、私、ライブの準備があるので、これで失礼します。今日は話してくれてありがとうございます」

 

 

 ネプギアはそう言って丁寧に一礼すると去っていた。

 

店員はその後姿を見ながら、「……神だ……まさしく女神だ……」と感涙しながら呟いた。

 

 

***

 

 

 ライブが始まり、ネプギア達は舞台袖で出番を待っていた。

 

 

「そろそろ、アタシ達の出番よ」

 

 

 ユニがそう言うと、「やっぱり、緊張するね」とネプギアが言う。

 

すると、ロムも震えながら、「……わたしも……緊張する(どきどき)」と声を詰まらせる。

 

 

「大丈夫よ。いっぱい練習したんだし、プラエもミクちゃんもいるじゃない」

 

 

 ラムが強気に言うと、「……プラエもコンサートとかはあんまり経験ないから緊張しちゃって……」とプラエが申し訳なさそうに言う。

 

 

「……」

 

 

 ミクが黙っていると、「ミクちゃん?」とネプギアが心配そうに声を掛ける。

 

 

「あっ! ごめん、ネギちゃん何の話?」

 

 

 ミクが焦りながらネプギアに答えると、「大丈夫? 緊張してない?」とネプギアはミクの頭を優しく撫でた。

 

 

「う、うん……大丈夫。ありがとうネギちゃん」

 

 

 ミクは頬を赤らめながら、ネプギアに撫でられるがままにされていた。

 

 

「あー! ミクちゃんばっかりズルいわよ。わたしも撫でてー!」

 

 

 ラムが左手を上げながらそう言うと、「……わたしも撫でて欲しい(もじもじ)」とロムが言い、「ぷ、プラエも撫でて欲しいな」とプラエが言って三人そろってネプギアに向かって頭を突き出す。

 

 

「はいはい、みんなも一緒に頑張ろうね」

 

 

 ネプギアは優しい声でそう言うと三人の頭を優しく撫でる。

 

 

「また甘やかして……後でブランさんに文句言われても知らないわよ? 九花の誓約を話した時も散々怒られたでしょ」

 

 

 ユニはそう言うと、そっぽを向いてしまう。

 

ネプギアは三人の頭を満足させるまで撫でると、再びミクの方を見た。

 

直接、彼女を慰めてあげたかったが、それは過去の傷に触れることになるので出来れば避けたかった。

 

 

(初めてミクちゃんと会った、あの日。ミクちゃんがちょっとたどたどしかったのは、私に嫌われない為の精一杯の演技だったんだね……)

 

 

 ネプギアはそう思うと、胸が張り裂けそうで今すぐにミクを抱きしめて慰めてあげたい気持ちだった。

 

 

(ダメダメ、落ち着いて私。ミクちゃんは慰めて欲しいんじゃない……歌いたいんだ! だから私は!)

 

 

 ネプギアがそこまで思うと、ステージの演奏が終わる。

 

 

「それじゃあ、ここでサプライズゲストの登場だよ! 何と、ボクの住んでいるゲイムギョウ界の女神様が初音ミクとバンドを組んだんだ! みんな知ってるかな?」

 

 

 ステージから、5pb.の声が聞こえてくる。

 

同時に客席から、「「「グランプリ・ユナイテッドーーー!!」」」と期待と喜びに満ちた歓声が聞こえてくる。

 

 

「いよいよね!」

 

 

 ラムが嬉しそうに言うと、「気合入れていくわよ!」とユニが言いながらメンバー全員を見渡す。

 

 

「そう! グランプリ・ユナイテッドの登場だーーー!」

 

 

 5pb.がそう言うと、照明が落ちてスポットライトが舞台袖に当たる。

 

 

「頑張ろうね、みんな」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、右手でミクの手を引きながら、その手をユニ達の前に出した。

 

ユニ達は円陣を組み、次々とその手の上に自分の利き手を重ねる。

 

全員が重ね終わったのを確認したネプギアが、「ファイトーーー!」と言うと全員が、「「「「「「おーーーーーー!!」」」」」」と声を上げる。

 

 

「ミク、元気ないわよ? シャキッとしなさい!」

 

 

 ユニはそう言いながら、ミクの肩を叩くと、力強くステージに駆け上がって行く。

 

 

「ミクちゃん、元気よく行こう! がんばがんば!」

 

 

 ラムがそう言うと、ミクの背中を少し強めに叩いて、元気よくステージに駆けて行く。

 

 

「何かあったら、わたしがサポートするよ(にこにこ)」

 

 

 そう言いながらロムがミクの右手を握ると、「プラエ達に任せて」とプラエがミクの左手を握る。

 

二人は緊張しながらも、しっかりした足取りでステージに登って行った。

 

 

「……みんな……」

 

 

 ミクはそう言いながら、流れた涙を左手で拭う。

 

ネプギア以外のメンバーもゲムドラジル以降、元気のないミクを気遣っているのだ。

 

 

「行こう! ミクちゃん。歌いに!」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、ミクの手を握ってステージに駆け上がる。

 

 

「ちょ、ネギちゃん!?」

 

 

 ネプギアに引っ張られながら、付いて行くミク。

 

ステージは5pb.によって温まっており、ユニ達の登場で更にテンションが上がっていた。

 

 

「うおーーー!! ユニちゃーん、素敵ーーー!!」

 

「ラムちゃーん!! 最高に可愛いよーーーー!!」

 

「ロムちゃーん!! 頑張れーーーーー!!」

 

「プラエちゃーん!! こっち向いてーーーー!!」

 

 

 客席からはユニ達に対する熱烈な応援が会場を揺るがせていた。

 

約三ヵ月前の新人コンテスト以降、ファミ通の記事を通して彼女達の知名度と人気はジワジワと上がって行ったのだ。

 

そこに、ネプギアに手を引かれたミクが登場する。

 

 

「ネプギアちゃーーーん!」

 

「おい! 手を引いてるぞ? 本当にホログラムとかじゃないんだな!?」

 

「ミクーーーーーー!!」

 

「みくみくーーーーーー!!」

 

 

 観客のボルテージが更に上がると、「ほら、ミクちゃん、手を振ってあげて」とネプギアがミクに言うと、「うん」とミクが頷き二人で観客に向かって手を振る。

 

ネプギアとミクがステージ中央に到着すると、ネプギアがスタンドマイクに向かって「先程、5pb.さんにご紹介にあずかりました、グランプリ・ユナイテッドです。今日は5pb.さんに負けないよう頑張りますので、よろしくお願いします」と言って丁寧に一礼する。

 

 

「噂通り、滅茶苦茶礼儀正しいぞ!」

 

「これは推せる!!」

 

「ネプギアちゃん、最高ーーー!!」

 

 

 観客の声援に、「ありがとうございます。それでは早速、一曲目……」とネプギアが言うとメンバーが楽器を鳴らし、ミクがスタンドマイクの前に立つ。

 

 

***

 

 

 ライブは順調に始まったかに見えたが、ミクの歌と踊りに以前のようなキレがなかった。

 

 

(マズイわね……ミクの動きにキレがないわ)

 

 

 ユニがベースを弾きながらそう思っていると、客席からどよめきが起こる。

 

 

「なんか、動画見た時より、ミクの動き悪くね?」

 

「声にも伸びが無いし、調子悪いのか?」

 

「ボーカロイドに調子悪いとかあるのかよ?」

 

 

 観客が口々に不満を漏らすごとに会場のボルテージも目に見えて下がって行く。

 

 

(ミクちゃん、どうしたのしっかりして!)

 

 

 ラムが祈るように念じながらドラムを叩くがミクの歌も踊りも精彩を欠いたままだ。

 

 

「調整ミスか?」

 

「口パクなんじゃね?」

 

「ニセモノかもな」

 

 

 時間が経つにつれ会場の熱気もどんどん下がって行く。

 

 

(ふぇぇ……ミクちゃん、頑張って……)

 

 

 ロムもキーボードを弾きながら一生懸命祈るが、ミクの動きは変わらないどころか更に悪くなって来ていた。

 

 

「なーんか騙された感じだなー」

 

「ゲイムギョウ界なんてそんなもんなのかもなー」

 

「所詮、ボーカロイドなんて過去の遺物なんだよ」

 

 

 会場の雰囲気が更に険悪になっていく。

 

 

(このままじゃ……ミクさん、ネプギアお姉さん)

 

 

 プラエは悲しい気持ちを抑えて必死にバイオリンを弾く。

 

 

(……ダメ、体が重い、声が出ない……ネギちゃんもみんなも応援してくれたのに……やっぱり私は価値のないボーカロイドなんだ……)

 

 

 自由に動かない体に絶望的な気持ちになるミク。

 

 

(……もう終わりにしよう……)

 

 

 ミクが歌を止めようとした瞬間、ミクの右肩に暖かいものが当たる。

 

 

(え……)

 

 

 驚いたミクが右側を見ると、すぐ側にネプギアの顔があった。

 

ネプギアはギターを弾きながら歌っていた。

 

ミクと声を合わせるように一生懸命に。

 

 

(ネギちゃん!?)

 

 

 驚きながらも歌い続けるミク。

 

すると、観客席から再びどよめきが起こる。

 

 

「なんだ? 急にデュエットになったぞ?」

 

「ネプギアちゃんの声、滅茶苦茶良くね?」

 

「ちょっと待てよ、ミクの声も良くなって……」

 

 

 観客のどよめきと共に会場のボルテージも段々上がっていく。

 

 

(体が軽い! 声が出る!)

 

 

 ミクはネプギアと声を合わせる内に自分の調子が急激に上がっていくのを感じていた。

 

ネプギアはそんなミクを見ながら、ウインクを送るとステージを歩き始める。

 

ミクもネプギアの動きに合わせてステージを歩く。

 

その姿は何度も練習してきたかのようにシンクロしていた。

 

 

「なんだ? 最初からこういう演出だったのか?」

 

「ビビらせやがって、でも、最高だなコレ!」

 

「誰だよ? ボーカロイドが過去の遺物とか言ったバカは」

 

「誰がこんなの予想するかよ! いいから聴けよ!」

 

「やっぱ、推せるよ、グランプリ・ユナイテッド!!」

 

 

 会場の熱気は一気に最高潮になる。

 

 

***

 

 

 

 約一時間後。

 

 

「ライブの成功を祝して、かんぱーーい!」

 

 

 ラムが楽しそうに乾杯の音頭を取ると、ネプギア達も、「「「かんぱーい!」」」」とジュースの入ったグラスを合わせる。

 

あの後ネプギア達は大きな失敗もなく、ライブはアンコール三回の大盛況に終わった。

 

そのお祝いとして、ライブハウスの近くのファミレスで打ち上げをしているのだ。

 

 

「オンガクギョウ界でのライブ大成功ね」

 

 

 ユニがそう言うと、「ばんざーい(にこにこ)」とロムが万歳をし、「このまま行けばオンガクギョウ界での、メジャーリーグも夢じゃないわね」とラムが自信満々に言い放つ。

 

それを聞いたネプギアは少し困った顔をしながら、「それを言うなら、メジャーデビューじゃないかな?」と言う。

 

 

「最初はどうなることかと思ったけど、観客の盛り上がりは凄かったわね」

 

 

 ニトロプラスが冷静にそう言うと、「そうだね、私も聴いてて、思わず体が動いちゃったし」とゴッドイーターが、「インタビューも好意的なものばかりだったし、今回もいい記事が書けそうだよ」とファミ通がそれに続く。

 

 

「わたしがプロデュースすればデビューなんて、あっという間だよ」

 

 

 ビーシャが腕組みしながら自信満々に言うと、「どうせ、お金取るんでしょ……」とユニが呆れ顔で言う。

 

すると、「えへへ……バレたか」と言ってビーシャは後頭部に右手を当てる。

 

 

「ネギちゃん、ありがとう。本当にありがとう」

 

 

 ミクがそう言って泣きながらネプギアの胸に顔をうずめる。

 

 

「もー、ミクちゃんってさっきからそればっかりー。ネプギアに甘え過ぎよー」

 

 

 ラムが頬を膨らませながら文句を言うと、「……だって、今日はネギちゃんから離れたくない……」とミクは言って再びネプギアの胸に顔を埋める。

 

 

「ミクちゃんにネプギアちゃん取られちゃった……(しくしく)」

 

 

 ロムはさめざめと泣き、「……ネプギアお姉さんの浮気者」とプラエも拗ねてしまう。

 

 

「アンタ達、いつも散々ネプギアに甘えてるんだから今日ぐらい我慢しなさい」

 

 

 ユニがやや強めの口調で言うと、「「「はぁ~い」」」と三人とも渋々と頷く。

 

 

「ボク、女神様達がバンド仲間になってくれて嬉しいよ」

 

 

 5pb.が嬉しそうに言うと、「はい、これからも色々教えて下さいね」とネプギアが5pb.に頭を下げる。

 

 

 

***

 

 

 

 暫く食事と談笑をしていたネプギア達だが、急に外が騒がしくなって来たことに気付く。

 

 

「なにかあったのかな?」

 

 

 ネプギアが外を眺めながら首を傾げる。

 

 

「私、ちょっと見て来るよ」

 

 

 ファミ通がそう言って席を立つと、「私も行くわ」とニトロプラスが同行を申し出る。

 

暫くすると、血相を変えたファミ通と、ニトロプラスの相棒の生肉が戻って来る。

 

 

「大変にくー! ニトロちゃんが深きものの群れに突っ込んで行っちゃったにく~!」

 

 

 生肉の言葉に、「深きものって!?」とユニが慌てて立ち上がる。

 

同時にネプギアの胸に顔をうずめて幸せそうだったミクの顔が一瞬で青ざめる。

 

 

「よくわからないんだけど、深きものが街で暴れてて、警官隊が応戦してたんだけど、劣勢だから見てられないってニトロプラスが勝手に……」

 

 

 ファミ通が状況を説明すると、「行こう! ニトロプラスさんは勿論ですけど、オンガクギョウ界の人達も放っておけないよ」とネプギアは素早く立ち上がる。

 

 

「ネギちゃん……」

 

 

 ミクは震えながら、右手でネプギアの服の袖を強く握る。

 

その姿には恐怖の色がありありと浮かんでいた。

 

ネプギアはそんなミクの姿に憐れみを覚えながらも、ミクの右手に自分の両手を重ねる。

 

 

「行こう、ミクちゃん。私が付いてるから」

 

 

 ネプギアが力強く言うと、ミクは勇気を出して立ち上がる。

 

 

「そうだね。ネギちゃんが付いてるよね」

 

 

 ミクが立ち上がるのを確認したネプギアは勢いよく走りだす。

 

 

「ひょほほまふへ~【ちょっと待って】」

 

 

 ゴッドイーターが口の中に食べ物を頬張りながら、慌てる。

 

 

「あー! もう、いつまで食べてるんですか! 緊急事態なんですよ!」

 

 

 ユニが呆れたようにゴッドイーターを注意すると、「すみません! お会計お願いします!」と慌てながらもネプギアは丁寧にレジで会計を済ませようとする。

 

 

「アンタも意外と余裕ね……」

 

 

 そんなネプギアを見ながら、ユニは少し呆れたように呟くが、「ユニちゃん、食い逃げはダメだよ」とネプギアはユニを軽く注意する。

 

 

「そりゃ、わかってるんだけど、緊迫感が台無しよ……何が【行こう、ミクちゃん。私が付いてるから】よ」

 

 

 ユニはそう言いながら、右手で頭を押さえる。 

 

その頃、ニトロプラスは警官隊と共に三体の深きもの達と対峙していた。

 

周囲にはオンガクギョウ界の住人達が不安そうに、ニトロプラス達の戦いを見守っている。

 

 

「くっ……手強い」

 

 

 ニトロプラスが唇を噛む。

 

 

「ぶるわあああああ!」

 

 

 一匹の深きもののパンチがニトロプラスを捉える。

 

 

「うあっ!?」

 

 

 ニトロプラスは、234のダメージを受けて吹き飛ばされるが、何とか後方に着地をする。

 

HPゲージ半分近く減ってしまう。

 

 

「くそっ、体が重い。オンガクギョウ界での戦闘は勝手が違うみたいね」

 

 

 悔しそうに言うニトロプラス。

 

 

「ニトロプラスさん!」

 

 

 そこに会計をネプギアに任せて、先行したユニ達がファミ通の案内で現場に辿り着く。

 

 

「私がタンクになる。ニトロプラスは下がって」

 

 

 ファミ通がニトロプラスを守るように、深きもの達に立ち塞がる。

 

 

「ていやっ!」

 

 

 ファミ通がエビで、深きものを横殴りにする。

 

しかし、深きものには、325ダメージしか当たらない。

 

 

「なに? この感覚。思うように力が出ない」

 

 

 ファミ通が驚いたように言うと、5pb.が、「オンガクギョウ界での戦闘は力押しじゃダメなんだ」と言いながらギターの演奏を始める。

 

 

「ボクの音楽に合わせて体を動かして!」

 

 

 5pb.がそう言うと、「わかった、やってみるわ」とニトロプラスが言う。

 

ビーシャがバズーカ砲を構えながら、「こんな感じかな!」と言ってバズーカの弾を放つ。

 

 

「ぐほああああああ!」

 

 

 バズーカの弾が当たった深きものは、1103のダメージを受ける。

 

 

「そう! そんな感じ!」

 

 

 5pb.がギターを弾きながらビーシャを褒めると、「こう見えても、リズムゲームは得意なんだよ」とビーシャがサムズアップする。

 

 

「ユニちゃん、変身して一気にやっつけちゃおうよ」

 

 

 ラムがそう提案すると、「そうね、一気にやっちゃいましょう」とユニが賛成する。

 

 

「「「プロセッサユニット装着!」」」

 

 

 ユニとロムとラムが女神化をすると、周囲のオンガクギョウ界の住人が驚きの声を上げる。

 

 

「速攻で行くわ! ウィークネスバレット! 頭!」

 

 

 ユニがエクスマルチブラスターにウィークネスバレットを装填すると、「「……風の聖剣よ……その必殺の一撃で敵を切り裂け……」」とロムとラムが魔法の詠唱を始める。

 

 

「ウィークネスバレット、シュート!!」

 

 

「うが!?」

 

 

 一体の深きものの頭にウィークネスバレットの模様が付くと同時に、「「エックスキャリバー!」」とロムとラムが合体魔法を発動する。

 

すると、もの凄いスピードでX字の風の刃が深きものの頭に命中する。

 

 

「うぎゃーーーーーーーー!?」

 

 

 絶叫と共に、クリティカルヒットで115482の大ダメージを受けて、深きものがオーバーキル×2の表示と共に消滅する。

 

【エックスキャリバー】はルウィーに伝わる風属性の合体攻撃魔法。クリティカルヒット率が非常に高い魔法だ。

 

 

「やったわ。一撃よ! しかもオーバーキル!」

 

 

 ラムが嬉しそうに飛び跳ねる。

 

ロムも嬉しそうに、「もう、これぐらいの敵なら楽勝。誓約花のおかげだね」と言う。

 

 

「これぐらいで、はしゃがない! 次!」

 

 

 ユニが再び、ウィークネスバレットを発射すると、「「……風の聖剣よ……その必殺の一撃で敵を切り裂け……」」とロムとラムが先程と同じように魔法の詠唱を始める。

 

 

「「エックスキャリバー!」」

 

 

 深きものの頭にウィークネスバレットの模様が付いた瞬間に、エックスキャリバーの風の刃がその場所を貫通する。

 

またもクリティカルヒットで118547のダメージを与えて深きものをオーバーキルで消滅させる。

 

 

「さあ! あと一体よ! 一気に攻め落とすわ」

 

 

 ユニが叫ぶ。

 

 

「流石は女神様! 前衛は任せてよ!」

 

 

 ファミ通はそう言いながら、残り一体の深きものに向かって行くと、「私も行くわ」とニトロプラスがその後に続く。

 

 

 

***

 

 

 

 その頃、会計を済ませたネプギアは、丁寧に割引クーポンとスタンプカードを受け取っており、思いのほか時間が掛かっていた。

 

 

「ネプギア様は貧乏性にくー」

 

 

 生肉が呆れたように言うと、「そんなこと言われても、折角のお店側の厚意を無下にするなんて……」とネプギアが困った声で言う。

 

 

「ネギちゃんらしいと言えばネギちゃんらしいけど、緊急事態じゃなかったっけ……」

 

 

 さっきまで震えていたミクも少々呆れ気味だ。

 

 

「……もぐもぐ……ユニ様達が先に行ったから……もぐもぐ……大丈夫じゃないかな……ごっくん」

 

 

 未だに食べているゴッドイーターに、「ゴッドイーターちゃんはいつまで食べてるにくー」と生肉は再び呆れた声を出す。

 

 

「ネプギアお姉さん、急ごう」

 

 

 プラエがそう言ってネプギアを急かすが、「……っ!?」と急にうずくまってしまう。

 

 

「プラエちゃん!? どうしたの?」

 

 

 慌てて駆け寄ったネプギアは、ふらつくプラエを支える。

 

 

「ちょっと、クラッとしちゃって……ふぅふぅ……」

 

 

 苦しそうに息をするプラエ。

 

 

「エリキシル剤飲む?」

 

 

 ネプギアはそう言いながらNギアを操作して、エリキシル剤とストローを取り出し、ストローをプラエの口元に当てる。

 

 

「んぐんぐ……はぁはぁ……」

 

 

 未だに苦しそうなプラエ。

 

 

「どうしよう……こんな時に……」

 

 

 心配そうにプラエの顔を見つめるネプギア。

 

それと同時に、プラエの体から黒いモヤのようなものが現れる。

 

 

(えっ!? 今のは?)

 

 

 ネプギアは驚いて、プラエの体を凝視するが、モヤは既に消え去っていた。

 

 

ドゴオオオオオオオン!!

 

 

 巨大な破壊音が響き渡る。

 

 

「なに? 何が起きたの?」

 

 

 慌てるゴッドイーター。

 

 

「ニトロちゃん達が戦ってる方向にく」

 

 

 生肉が慌てて音のした方向に飛んでいく。

 

 

「生肉さん!」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、プラエをおぶると、「……ごめんね、プラエちゃん、ちょっとだけ我慢して」と言って、ミクとゴッドイーターと共に生肉を追いかける。

 

 

***

 

 

「くっ……何なのこれは? 急にパワーアップしたわ」

 

 

 ニトロプラスが刀を杖替わりにして立ち上がる。

 

 

「汚染! 汚染だよ! 深きものが汚染したんだ!」

 

 

 そう言うファミ通の前には、身長が3メートル程に巨大化した上に全身が赤黒くなった深きものが、「ぶるわあああああ!」と雄叫びを上げていた。

 

 

「汚染って……あれはゲイムギョウ界で、犯罪神を信仰する悪い奴等のせいで起こるんじゃないの?」

 

 

 ラムが驚いたように言うと、「何で、オンガクギョウ界で起こるの?」とロムも不思議そうに言う。

 

 

「現に起きてるのよ。対応しなさい!」

 

 

 ユニがそう言いながら牽制弾を深きものに放つ。

 

深きものは、それを素早く避けると、一瞬の内に5pb.との間合いを詰めてくる。

 

 

「しまった! 抜かれた!」

 

 

 ファミ通が驚きの声を上げ、「巨体のクセになんてスピードなの!?」とニトロプラスも驚く。

 

 

「ぐがあああああ!」

 

 

 5pb.にパンチをする深きもの。

 

 

「きゃあああああ!!」

 

 

 吹き飛ばされる5pb.。

 

そのまま壁に激突して気を失ってしまう。

 

 

「マズいよ。5pb.のギターが止まっちゃったよ」

 

 

 焦るビーシャの目の前に、深きものが一瞬で移動してくる。

 

 

「うそっ!? わたし」

 

 

 深きものがビーシャに回し蹴りを食らわせると、ビーシャは381のダメージを受けて吹き飛ばされる。

 

 

「いったぁ~~!」

 

 

 何とか戦闘不能を免れたビーシャだが、HPゲージは残り一割以下だった。

 

 

「5pb.のギターが無いと、リズムに乗れないわ」

 

 

 ユニが焦りの声を上げる。

 

ユニの放ったエクスマルチブラスターのビームも、1547までダメージが低下していた。

 

 

「ニトロちゃん、大丈夫にくかー」

 

 

 そこに生肉が現れると、「遅くなってごめんなさい」とネプギア達も現れる。

 

 

「遅い! 何してたの!」

 

 

 ユニがネプギアを叱りつけるように言うが、直ぐにネプギアが背負っているプラエに気付く。

 

 

「プラエ、どうかしたの?」

 

 

 ユニが心配そうに尋ねると、「それが、急に苦しそうにして……エリキシル剤は飲ませたから大丈夫だとは思うけど」とネプギアが答える。

 

 

「今はその話は後よ。敵に集中して!」

 

 

 ニトロプラスがそう言うと、「うん」と言ってファミ通が頷く。

 

二人は後衛がこれ以上攻撃されないよう、深きものに立ち塞がる。

 

 

「ゴッドイーターさん、私達も行きましょう。生肉さん、プラエちゃんとミクちゃんを頼みます」

 

 

 ネプギアがそう言って変身しようとすると、「ネプギアはミクと一緒に歌って」とユニが言う。

 

 

「え? どうして?」

 

 

 ネプギアが不思議そうに質問すると、「オンガクギョウ界で力を発揮するには、音楽の力が必要なのよ!」とユニが手短に説明する。

 

ネプギアはユニの言葉に、「うん、わかった」と言ってNギアを操作してポケットからエレキギターを呼び出す。

 

その間にゴッドイーターは素早く前衛に加わり、「加勢するよ」と言う。

 

 

「無理に攻撃しようとしないで、時間を稼いで! ロムとラムも回復に回って」

 

 

 ユニが指示を出すと、「「うん」」とロムとラムが頷く。

 

 

「ぶるぁ!!」

 

 

 深きものが後衛に向けて猛然とダッシュする。

 

 

「行かせないよ!」

 

 

 ゴッドイーターが神機のシールドを構えて深きものの前に立ち塞がる。

 

深きものの体当たりを正面から受け止めたゴッドイーターは335ものダメージを受けて、「くっ! 重い」と苦し気な表情を浮かべる。

 

ゴッドイーターのHPゲージが五割ほど低下する。

 

 

「手強いけど、退くわけにはいかないのよ!」

 

 

 ニトロプラスが太刀で深きものを攻撃するが、ダメージは422止まりで、「ちっ! やはり音楽の力がないと……」と悔しそうな声を上げる。

 

その隙に、ニトロプラスに反撃しようとする深きもの。

 

 

「危ない!」

 

 

 ファミ通がニトロプラスと深きものの間に入って、深きもののパンチを武器で受け止める。

 

ファミ通は310のダメージを受けて、今までのダメージと合わせてHPゲージが残り二割にまで低下してしまう。

 

 

「ラムちゃん式ヒール!」

 

 

 だが、それを待っていたかのようにラムが回復魔法でファミ通のHPゲージを七割近くまで回復させる。

 

 

「よし、安定してきてるわね。ネプギア、そっちはどう?」

 

 

 ユニがそう言ってネプギアに尋ねると、「お願い! もうちょっとだけ待って!」とネプギアが答える。

 

そのネプギアの腕の中では、ミクがしゃがみ込んで恐怖に震えていた。

 

 

「あ……あああ……」

 

 

 ネプギアは震えるミクを強く抱きしめる。

 

 

「……お願い、ミクちゃん。私と一緒に歌って、今ここで歌わないとみんなやられちゃう。オンガクギョウ界も滅茶苦茶になっちゃうよ」

 

 

 ネプギアは優しく言い聞かせるようにミクにお願いをする。

 

 

しかし、ミクは首を激しく左右に振り、「わかってる……わかってるけど怖いの……足が震えて声が出ないの……」と辛そうに訴える。

 

ミクは巨大な汚染された深きものの姿に完全に怖気づいていた。

 

 

「ミクちゃん……」

 

 

 切なそうに呟くネプギア。

 

 

「うっ……」

 

 

 プラエが再び苦しそうに、うずくまる。

 

 

「プラエちゃん、しっかりするにく!」

 

 

 生肉がプラエの周囲を飛び回るが、手も足も無いので何もすることが出来ない。

 

そうこうしてる内に再びプラエの体から黒いモヤが溢れる。

 

 

「ぶるあああああああああ!!」

 

 

 深きもののが雄たけびを上げるとその姿が更に巨大になって、5メートル近くまで巨大化する。

 

 

「二段階汚染!? こんなの聞いてないよ!」

 

 

 ファミ通が声を上げると、「これはちょっとマズイかな……」とゴッドイーターが言う。

 

 

「ネプギア! まだなの!?」

 

 

 ユニが声を荒げるが、ネプギアはしゃがみ込んでいるミクを抱きしめているだけだった。

 

ネプギアの腕の中でミクは震えている。

 

二段階汚染の深きものの雄たけびで、すくんでしまったのだ。

 

 

「こんな怖い思いするぐらいなら心なんて無ければよかった……そうすればマスターを失った悲しみも、酷いことされた時の苦しみも無かったのに……」

 

 

 ミクがそう言うと、「そんなこと言わないで、怖さも悲しみも苦しみもあるけど、それと同じ……ううん、それ以上の楽しいことや嬉しいことがある筈だから、さっきステージで歌っている時のミクちゃんはとってもキラキラしてて幸せそうだったよ」とネプギアが優しい声で言う。

 

 

「でも……でも、もう嫌なの! 怖いのも悲しいのも苦しいのも!」

 

 

 ミクはそう言いながら再び首を左右に激しく振る。

 

 

「私が一緒にいるから……だから、勇気を出して進も」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「……無理だよ、私、ネギちゃんみたいに強くないもん……」と言ってミクは俯いてしまう。

 

 

「私は強くなんてないよ。昔から弱虫でお姉ちゃんの後ろに隠れてばっかりだった……お姉ちゃんが犯罪組織に負けた時もショックで女神化できない時もあったもん」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「……ネギちゃんが……」とミクが意外そうな顔をしながらネプギアの顔を見る。

 

ネプギアはミクの目をまっすぐ見ながら、「あの時は戦うのが怖くて怖くて仕方なかった……そんな私に勇気をくれたのは大切な親友だった」と話を続ける。

 

 

「……親友……」

 

 

 ミクが呟くと、「今度は私が勇気をあげる番……」とネプギアが言って目を閉じて顔をミクに近づける。

 

 

「あ……」

 

 

 ミクはどんどんと近づくネプギアの顔に見惚れてしまう。

 

 

「ミクちゃん、あなたに勇気を……」

 

 

 ネプギアはそう言うと、ミクの右頬に優しく口づけをする。

 

 

「……勇気、届いたかな?」

 

 

 ネプギアが少し恥ずかしそうに言うと、ミクは両手を胸に当て静かに目を閉じると、「あったかい……ネギちゃんの気持ち凄くあったかいよ」と言った。

 

 

「ミクちゃん、歌えそう?」

 

 

 ネプギアが優しくそう問いかけると、「うん、歌える……歌いたい! 歌いたくてうずうずしてる!!」とミクが元気よく言う。

 

 

「うん、それじゃあ、立と」

 

 

 ネプギアはそう言って立ち上がると、ミクに向かって右手を差し出す。

 

ミクはその手を掴み立ち上がると、「ありがとう、ネギちゃん」と笑顔で言う。

 

 

「行こう、ミクちゃん」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、ミクの手を引いて戦列に加わる。

 

 

「ネギちゃん、新曲歌うから私に合わせて!」

 

 

 ミクがそう言うと、「わかったよ、ミクちゃん。任せて!」ネプギアがエレキギターを構える。

 

 

「私の歌、聞いて下さい! 初音ミクの復活!!」

 

 

 ミクが静かに歌い始める。

 

 

「やっと歌が来たわね! 一気に反撃行くわよ!」

 

 

 ユニがそう言うと、「「「了解!!」」」とパーティーメンバーが返事をする。

 

 

 「わー! 凄いわこの歌! リズムに乗れるだけじゃなくて力も沸いてくるわ!」

 

 

 ラムが嬉しそうに言うと、「うん、ネプギアちゃんもミクちゃんも凄い!」とロムも嬉しそうに言う。

 

 

「これは負ける気がしないわね!」

 

 

 ユニがそう言いながら、エクスマルチブラスターからビームを発射する。

 

巨大なビームは深きものの顔面に命中して、123658のダメージを与える。

 

 

「「……風の聖剣よ……その必殺の一撃で敵を切り裂け……エックスキャリバー」」

 

 

 ロムとラムが合体魔法で攻撃すると、クリティカルヒットで285450のダメージが当たった。

 

 

「ぶるぁ!!」

 

 

 深きもののが目の前のニトロプラスに殴り掛かる。

 

 

avoid

 

 

 ニトロプラスは華麗なステップで攻撃を回避すると、「ふっ……止まって見えるわね」と鼻で笑う。

 

 

「おい? あれ初音ミクじゃないのか?」

 

「歌ってる……何てイイ歌なんだ……」

 

「ああ、心が洗われるようだ……」

 

 

 騒ぎを聞きつけ集まって来たオンガクギョウ界の住人も、ミクの歌に聞き惚れている。

 

住人たちは次第に手拍子や声援を送るようになる。

 

するとミクとネプギアの周囲を光り輝く音符が包む。

 

 

(これは……オンガクギョウ界のシェアエネルギー? 温かくて力が湧いてくる)

 

 

 ネプギアはその光り輝く音符にシェアエネルギーに近い物を感じていた。

 

すると、ネプギアとミクの歌と演奏にも更に力が入る。

 

 

「これ凄いよ! 今なら核弾頭でも撃てる気がする!」

 

 

 ビーシャが驚きの声を上げる。

 

ネプギアとミクの演奏に力が入れば入るほど、ユニ達はパワーアップしていった。

 

 

「これなら楽勝ね! ウィークネスバレットから、オーバーキルで華麗に決めるわよ!」

 

 

 ユニはそう言いながら、エクスマルチブラスターにウィークネスバレットを装填する。

 

その間に、ミクの歌はクライマックスを迎えていた。

 

 

(この歌詞は、今までミクちゃんに起きた出来事……)

 

 

 ネプギアはエレキギターを弾きながら、ミクの歌をしっかりと聞いてた。

 

最初のマスターと出会い心を持ったこと、そしてマスターとの死別、その後の辛い生活、新しい優しい女の子のマスターとの出会い、その子とマスターしてではなく親友として絆を育み最後に結ばれるハッピーエンドの曲だった。

 

歌が終わるとオンガクギョウ界の住人から盛大な拍手と歓声が巻き起こる。

 

 

「この力は……!?」

 

 

 ミクが驚きの声を上げる。

 

 

「オンガクギョウ界のシェアエネルギーだよ! ミクちゃん力を貸して!!」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、女神化するとM.P.B.Lをシェアエネルギーキャノンモードにして構える。

 

 

「うん! ネギちゃんに力を!」

 

 

 ミクはそう言いながら、ネプギアの背中に抱き着く。

 

激しく発光するネプギアとミク。

 

ネプギアはその間に、M.P.B.Lのレティクルを動かし照準を深きものの頭部に合わせる。

 

ユニ達の集中攻撃により、深きもののは既に戦闘不能になっており、オーバーキル×2の表示が出ていた。

 

 

ピー!

 

 

 警告音と共に【Lock on】と赤い文字が点滅する。

 

 

「これがオンガクギョウ界とゲイムギョウ界の力を合わせた一撃です!」

 

 

 ネプギアはそう言いながらM.P.B.Lのトリガーを引く。

 

 

「シェアエネルギーキャノン! オンガクギョウ界バージョン!!」

 

 

 M.P.B.Lから音符を纏った巨大なエネルギーの奔流が深きものの頭部めがけて飛んでいく。

 

エネルギーの奔流は頭部を貫くと、3358Kの表示と共にオーバーキル×6の表示が現れ深きものが消滅していく。

 

 

「ひゅー! やるわね」

 

 

 強烈な一撃に賞賛の言葉を贈るユニ。

 

 

「「「うおおおおお!! ミクーーーー! 女神様ーーー!」」」

 

 

 強烈な一撃でオーバーキルした、ネプギアとミクにオンガクギョウ界の住人が大声で声援を送っていた。

 

 

***

 

 

 その頃、オンガクギョウ界の高層ビルの一室。

 

 

「くっ……くそぉ、こんな筈では……」

 

 

 悔しそうな声を上げる中年男性。

 

以前に新人コンテストで八百長をしようとした9614社長だ。

 

 

「いやー、まいったね。深きものがこうも簡単に倒されるなんて」

 

 

 遠くから青年の声が聞こえる。

 

 

「貴様の所為だぞ! あの気持ち悪い魚が居れば、あの小娘どもを辱められると言ったではないか!!」

 

 

 声を荒げる9614社長。

 

 

「僕の所為にしないで欲しいな。そもそもコンサートを失敗させる計画が上手く行かなかった時点で君の負けだよ」

 

 

 青年は冷静な声で言い返す。

 

 

「ワシのせいじゃない! 工作員どもがクソボーカロイドなんぞの歌で寝返ったからだ!!」

 

 

 9614社長はそう言いながら悔しそうに机を叩く。

 

コンサートでグランプリ・ユナイテッドを貶めた観客の中に9614社長の手下が混じっていたのだが、それもグランプリ・ユナイテッドの演奏で改心してしまったのだ。

 

 

「まぁ、今回は残念だったね。気が向いたらまた手を貸してあげるよ」

 

 

 青年はそう言うと去って行った。

 

 

「くそぉ……クソボーカロイドめ……アイツを始末した時にソフトも壊しておけばよかったわい……」

 

 

 忌々し気に呟く9614社長。

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