新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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031不協和音

 ネプギアによって、キセイジョウ・レイが落ち着きを取り戻す。

 

 

「この子はあなたの子よ~。認知してってヤツかしら?」

 

 

 そこにプルルートがネプギアをからかうように話に割り込んでくる。

 

 

「プルルートさん?」

 

 

 ネプギアが意外そうな顔をする。

 

ダゴンをいたぶって愉しんでいた筈のプルルートが何故話に加わって来るのか分からないと言った表情だ。

 

 

「あはははは、安っぽい昼ドラねぇ。三文芝居にもならないわ。あなたもそう思わない?」

 

 

 プルルートが高笑いしながらそう言うと、「そうね。ベッタベタの昼ドラね」とアノネデスが同意する。

 

 

「そうでしょぉ~。ぎあちゃんみたいな青臭い小娘の綺麗事にコロっと騙されちゃって、面白くないわ」

 

 

 プルルートがそう言って、鼻を【フン】と鳴らすと、「でも、あの子とレイちゃんには陳腐で面白味のないハッピーエンドがお似合いなんじゃないかしら」とアノネデスが言う。

 

 

「……つまらない男ねぇ」

 

 

 プルルートが不機嫌そうに、アノネデスを睨みつける。

 

 

「それより、ぷるちゃんはどういうつもりなのかしら? 折角上手く話がまとまりそうだったのに」

 

 

 しかし、アノネデスは冷静にプルルートに説明を求める。

 

プルルートが、「何となく気に入らないのよ」と不機嫌そうに言うと、「相変わらずの女王様ぶりねぇ~。でも、具体的に言って貰わないとアタシも納得できないわ~」とアノネデスが変わらず冷静に質問をする。

 

 

「そうね、納得できない。それよ。あなた達はあたし達とピーシェちゃんにあれだけのことをしたんだから、罰として一生ピーシェちゃんの奴隷として面倒を見るのよ。家族なんておこがましいと思わないの?」

 

 

 プルルートが自信満々にそう言うと、「それは……」とレイが視線を落としてしまう。

 

 

「ピーシェちゃんの家族は、あたしとねぷちゃん、それにアイエフちゃんとコンパちゃんにいーすんよ。そして母親役はあたし。ぎあちゃんみたいな小間使いを母親役とかどんな勘違い?」

 

 

 プルルートが横柄な態度でそう宣言すると、「そんな……私はピーシェちゃんが夜泣きした時あやしたり、おむつを替えるたり、汚した洗濯物だって……母親役とまで言いませんが面倒は見てあげたつもりなのに……」とネプギアが悲しそうな声で言う。

 

 

「だから小間使いって言ってるでしょ~? 耳腐ってるの? 小間使いが女王様の子供の面倒見るのは当たり前じゃないの」

 

 

 プルルートはそんなネプギアに追い打ちをかけるような言葉を浴びせる。

 

 

「プルルートさん!」

 

 

 ユニが叫ぶ。

 

その手にはエクスマルチブラスターが握られていた。

 

しかし、「ほらほら、ユニちゃん、落ち着いて~。どうどう」と言いながらアノネデスがユニを手で制する。

 

 

「くっ……」

 

 

 悔しそうな表情のユニ。

 

 

「ねえ! ちょっと酷くない。いくら温厚なことに定評があるわたしでも怒っちゃうよ」

 

 

 しかし、大きいネプテューヌがプルルートに抗議する。

 

すると、プルルートはつまらなそうな顔で、「なーんだ。ねぷちゃんと似てるのは見た目だけなのね。ガッカリだわ。協力して損しちゃった」と言い放つ。

 

 

「なに? プルルートちゃん、感じ悪いわね~」

 

 

 ラムが頬を膨らませて、プルルートを睨むと、「わたしもちょっと怒ってる」と言ってロムもプルルートを睨む。

 

そして、ノワール、ブラン、ベールの三人の女神も不満そうな視線で、プルルートを睨んでいた。

 

 

「ちょ、みんなも落ち着いてよ。ぷるるん怒らせたら何が起こるか分からないんだよ」

 

 

 ネプテューヌも仲介に入るが焼け石に水のようだ。

 

 

「……そう……そうだ……」

 

 

 ピーシェが頭を抱えながら言う。

 

 

「ピーシェ?」

 

 

 ラムが呼びかけるが、ピーシェは答えずに、「……ママとパパが居なくて、夜がまっくらで怖くて悲しくて寂しくて泣いてる時、ねぷぎあが抱っこして慰めてくれたくれた……あいえふもこんぱにも同じようにしてくれた」と言い続ける。

 

 

「ピーシェちゃん?」

 

 

 ロムも心配そうに呼びかけるが、「……ねぷてぬとぷるるとがぴぃが夜泣くのがうるさいって言うから、ねぷぎあは冬で夜寒いのに外に出て、ぴぃだけは寒くないようにしてくれて……お星さまが綺麗だよって言ってくれた……。急に雨が降って来た時は、ぴぃが濡れないように風邪をひかないようにって、抱っこして雨から守ってくれた……。おねしょした時も怒らないで、頭を撫でて慰めてくれてお布団洗ってくれた……うんちでパンツ汚しちゃった時もそう……歯磨きもしてくれたし、パジャマも着せてくれた……そうだ! オムツも洗ってくれた!」とピーシェはうわ言のように呟く。

 

 

「ぷるちゃんの価値観では、あたしとレイちゃんは一生あの子のお世話役で罪を償えって言うのかしら?」

 

 

 アノネデスがプルルートにそう質問すると、「そうよ。たまにあたしのところに連れてきて家族団欒を楽しませて、面倒なことはあなた達が全部やりなさい」とプルルートが平然と言い放つ。

 

 

「ぷるちゃんがあたしとレイちゃんに何も言わないのはおかしいと思ったけど、そんなふうに考えてたのねぇ~。ショックだわ」

 

 

 しかし、アノネデスは、いつもの調子でそう言うと、右手で頭を抱えていかにもショックを受けているようなリアクションを取る。

 

 

「自覚が無かったの? オカマなんてやってると頭の働き鈍くなるのね」

 

 

 そんなアノネデスをなじるプルルート。

 

 

「それは違います!」

 

 

 そこにネプギアが訴えるように大声を出す。

 

 

「ネプギアさん?」

 

 

 顔を上げるキセイジョウ・レイ。

 

 

「ちょっと、ギアちゃん?」

 

 

 ネプギアの意外な言葉に驚きを隠せないアノネデス。

 

 

「あたしに口答えするの? ねぇ?」

 

 

 プルルートがもの凄く不機嫌な顔と声で、ネプギアを睨みつける。

 

しかし、ネプギアはその迫力に物怖じせずに、「一生許されない罪なんてありません。もし、あったとしても本気で償う気持ちがあるなら、女神はその機会を与え助けるべきです!」と大声で訴える。

 

 

「あたしは口答えするのって聞いてるのに、勝手にベラベラしゃべるんじゃないわよ! この駄馬がっ!」

 

 

 プルルートは乗馬用の鞭をネプギアに向けて振り上げる。

 

 

「ダメ! ねぷぎあぶっちゃダメ」

 

 

 しかし、ピーシェがプルルートを後ろから羽交い締めにする。 

 

 

「ピーシェちゃん? あたしの邪魔をするの?」 

 

 

 プルルートが、意外そうな声でピーシェに質問をする。

 

 

「ねぷぎあはママじゃないけどママだった。ぴぃがママのこと好きなのは少しねぷぎあに似てるところがあるからだって気付いた。少し頼りないけど、優しくてぶっても許してくれる。ねぷぎあみたいな人がママだったらいいなって思って時にママが来てくれて本当に嬉しかった。だから、ママは誰がなんて言われても、ぴぃのママなの」

 

 

 ピーシェが必死にプルルートに訴える。

 

 

「ピーシェちゃん……」

 

 

 ピーシェの必死の訴えに感動するネプギア。

 

 

「……ふん……つまらないこと思い出しちゃったみたいねぇ。余計な事思い出さないよう、あの時ぎあちゃんグッズ持って行かなかったのに」

 

 

 しかし、プルルートは余裕の表情でそう言い放つと、「え……じゃあ、あの時、私のだけなかったのは……」とネプギアが顔を青くする。

 

 

「だって、お姫様が小間使いに対して恩なんか感じる必要ないじゃない。折角忘れてるんだから都合の悪いことは忘れたままの方がいいでしょ?」

 

 

 プルルートが悪びれもなく、【しれっ】と言い放つと、「あら~、ぷるちゃんってば変身前は虫も殺さないような顔して考えることは腹黒いわね~。アタシ、ゾクゾクしちゃうわ」とアノネデスが茶々を入れてくる。

 

 

「ネプテューヌ……あなた、まさかあの女に共謀して、あんなふうにネプギアのこと貶めたの」

 

 

 ノワールがネプテューヌを白い目で見ると、「だとしたら、あなたとの付き合い方少し考えさせてもらいますわ」とベールが、「まるでシンデレラの姉と継母だな」とブランが言う。

 

 

「そ、そそそそそそんなことないって……あはは……」

 

 

 ネプテューヌは必死に両手を左右に振るが、冷や汗が止まらない。

 

 

「ちょっとみんな手伝ってよ~! キモイ魚が逃げちゃうよ」

 

 

 うずめが叫ぶ。

 

プルルートから解放されたダゴンが逃げようとしているのだ。

 

今はうずめが拡声器を使って必死に足止めをしていた。

 

 

「ごめんなさい、うずめさん」

 

 

 それに気付いたネプギアは謝ると同時にダゴンに向かって行く。

 

女神候補生達、四女神、キセイジョウ・レイとピーシェもその後に続く。

 

 

「人を呼んでおいて、べちゃくちゃと呑気に喋りおって」

 

 

 うずめと一緒にダゴンの足止めをしていた、マジェコンヌが呆れたようにそう言うと、「マジェコンヌさん……」とキセイジョウ・レイが嬉しそうに言う。

 

 

「マジェちゃんってば、本当に手伝ってくれるんだ」

 

 

 アノネデスが意外そうに言うと、「ナスを買う約束を反故にしては、ナス農家としての信用に関わる。それだけのことだ」と言ってマジェコンヌがそっぽを向く。

 

 

「深きものどもよ! 奴等を決して生かして返すな。特にあの鞭を持った女は絶対に捕らえろ!」

 

 

 ダゴンが逃げながらそう言うと、海面から深きもの達の群れが顔を出す。

 

 

「え! まだ援軍がいたの?」

 

 

 ラムが驚きの声を上げると、「くたばれぃ!!」とダゴンが口から鉄砲水を吐く。

 

 

「ぴぃ?」

 

 

 ダゴンの吐いた鉄砲水がピーシェに迫る。

 

 

「ピーシェちゃん!」

 

 

 鉄砲水が当たる瞬間に、キセイジョウ・レイがピーシェを庇う。

 

キセイジョウ・レイは1521のダメージを受けてHPゲージが三割ほど減少する。

 

 

「ママ!」

 

 

 ピーシェが心配そうな顔で、キセイジョウ・レイを見る。

 

 

「私はこの子のママになると決めたの。私のしたことは許されることではないかもしれないけど、この子がママだって呼んでくれるなら、私は命を捨ててでもこの子を守ります!」

 

 

 キセイジョウ・レイがそう言いきると、「ママ……」とピーシェが嬉しそう言う。

 

 

「くたばれ!! この魚が! 頭が高いのよ!! 私の娘に手を出すなんて万死に値するわ!」

 

 

 次の瞬間、キセイジョウ・レイは目を見開き、赤黒く巨大な弾をダゴンに向けて発射する。

 

 

「ぐおっ!?」

 

 

 弾の当たったダゴンは73254のダメージを受ける。

 

 

「あっ……つい、ごめんなさいごめんなさい! 勝手に攻撃しちゃダメですよね」

 

 

 ペコペコと頭を下げるキセイジョウ・レイ。

 

 

「あのー? レイさん」

 

 

 ネプギアは、そのあまりのギャップに困った顔を浮かべる。

 

 

「貴様ぁーーー」

 

 

 ダゴンが再び攻撃態勢を取るが、「だから頭が高いって言ってるのよ! この低能がぁ!」と再びキセイジョウ・レイは目を見開いて、赤黒く巨大な弾をダゴンに向けて発射する。

 

 

「うごあ!」

 

 

 73298のダメージを受けるダゴン。

 

 

「ああっ! また、ごめんなさいごめんなさい。私の攻撃なんて全然弱くて邪魔ですよね」

 

 

 そして再び、ペコペコと頭を下げるキセイジョウ・レイ。

 

そんなキセイジョウ・レイを見ながら、「きゃははは! やっぱりママ面白ーい」とピーシェが楽しそうに笑う。

 

 

「どうやら、攻撃する時だけ凶暴な性格になるみたいね」

 

 

 ユニがそう言うと、「めんどくさい性格ね。疲れないのかしら」とアノネデスが言う。

 

それを見たクロワールが、「これはこれでなかなか面白れーぜ。一応使いこなせたって言うのかもな」と楽しそうに笑う。

 

 

「キセイジョウ・レイが……あのタリの女神が、本当に私達に味方してくれるの?」

 

 

 ノワールが意外そうな声で呟くと、「色々思うところはありますけど、今はダゴンを倒しましょう」とベールが言う。

 

 

「そうだな、サッサと逃げなかったこと後悔させてやらぁ」

 

 

 ブランがそう言って意気込むと、「行くわよ、ネプテューヌ」とノワールが言う。

 

 

「え、ええ……ぷるるん?」

 

 

 女神化していたネプテューヌはやや躊躇いながらも、プルルートに声を掛ける。

 

しかし、「嫌よ。あたし行かないわ。今気分が悪いの」とプルルートは不満そうに顔を背ける。

 

 

「オイ! ネプテューヌ、そんな女ほっとけ!」

 

「まったく、レイとマジェコンヌの方が真面目に動いて、プルルートがあんなふうになるなんて、とんだ誤算ね」

 

「あのような方、頼るに値しませんわ」

 

 

 ブラン、ノワール、ベールの順でそう言うと、三人の女神はダゴンに向かって飛んでいく。

 

彼女達は、先程のネプギアとプルルートとの会話で、プルルートに嫌気がさしたようだった。

 

 

「こっちの女神ちゃんって感じ悪いわねぇ……」

 

 

 プルルートが不満そうに呟く。

 

 

「前の戦いだって、最強無敵のあたしとねぷちゃんが来なければ何ともならなかった雑魚のクセに」

 

 

 続けてプルルートがそう言うと、「言い過ぎよ、ぷるるん」と言ってネプテューヌが止める。

 

前の戦いとはキセイジョウ・レイと超次元で戦った時のことだ。

 

 

「本当のことじゃない。ねぷちゃんもあんな人達と暮らすくらいなら、こんな世界達放っておいて、今すぐあたしの世界に帰って一緒に暮らしましょうよ。その方がずっと楽しいわよ」

 

 

 プルルートはそう言うと、自分の右腕をネプテューヌの体に絡ませるように引き寄せる。

 

 

「考えておくわ」

 

 

 冷静に答えるネプテューヌ。

 

 

「うふっ、脈アリって思っていいのかしらぁ~。即答がもらえなかったのは残念だけど、今はこれで我慢しとくわ。楽しみは後にとっておいた方がいいし」

 

 

 そんな冷静なネプテューヌの態度で十分満足したのか、プルルートはそう言うと、上機嫌に微笑む。

 

 

「でも、本当に今日は散々ね。折角、ねぷちゃんにソックリな人に会えたのに、ぎあちゃんなんかの味方だし、ピーシェちゃんまで、余計なこと思い出して、ぎあちゃん達になびいちゃうんだもの。後でじっくり再教育してあげなきゃ」

 

 

 プルルートはお手上げのポーズで首を左右に振りながら【やれやれ】と言わんがばかりに言うと、「あーあ、こおゆぅの骨折り損のくたびれ儲けって言うのかしら? こんなことなら、お昼寝って言って来なければよかったわ」とつまらなそうに言う。

 

 

「ぷるるん、邪神はゲイムギョウ界全体の危機なのよ」

 

 

 そんなプルルートを真面目に説得しようとするネプテューヌ。

 

 

「あんなヤツ大したことないじゃない。あたしとねぷちゃんだけで瞬殺よ~」

 

 

 プルルートはそう言いながら更にネプテューヌと体を密着させようとする。

 

しかし、ネプテューヌは、「油断してはダメよ。あれでも体力だけは、もの凄いし。あれ以上に強いボスがいるのよ」と言ってプルルートの密着を右手で制する。

 

 

「それでも、あたし達が本気だせば楽勝よぉ」

 

 

 それでも、諦めずに身を寄せて来るプルルート。

 

 

「ぷるるん……」

 

 

 悲しそうに呟く、ネプテューヌ。

 

彼女としても、今日のプルルートは少し様子がおかしいとは思っていたが、それでも何とか説き伏せて皆と協力して欲しいと考えていた。

 

 

「ねぷちゃん、あたしをあんまり不愉快にしないでぇ~。あたし、怒ると何するか分からないわよぉ?」

 

 

 プルルートが脅し半分にそう言うが、「でもね、ぷるるん」とネプテューヌは説得を始めようとする。

 

しかし、それを察したプルルートは、「ねぷちゃん、こんなときはコレよ」と言って左手から、六角柱の黒紫色のクリスタルを呼び出す。

 

 

「これは?」

 

 

 ネプテューヌはそのクリスタルから放たれる禍々しい気に戸惑いながらも、プルルートに質問をする。

 

 

「ボークちゃんとイクスちゃんがプレゼントしてくれた、【カオスアニマ】って言うの。これを見てるとね、もの凄く気分が上がってくるのよ。ほら、ねぷちゃんも」

 

 

 プルルートはそう言いながら、左手のカオスアニマをネプテューヌの目の前に差し出す。

 

それを見たネプテューヌは、「…………そうね。ごめんなさい。少し慎重になり過ぎていたわ。わたしとぷるるんに敵う者なんていないわね」と考えを変えてしまったようだ。

 

 

「流石はねぷちゃん、解ってるわねぇ~。愚図でノロマのくせに綺麗事だけは一人前の妹とは大違い~」

 

 

 ネプテューヌの心変わりを嬉しそうに歓迎するプルルート。

 

 

「ネプギアには、あとでキツく言っておくわ」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、「ふふっ、流石はねぷちゃん、あたしの考えすぐにわかってくれるのね。おもいっきり折檻してあげてね」と嬉しそうに言うプルルート。

 

 

「「「キィィィィィィィ!」」」

 

 

 ダゴンに向かって飛んでいく三人の女神を、シャンタク鳥が阻む。

 

 

「シャンタク鳥? また」

 

 

 ノワールが驚いたように言う。

 

 

「くっ、ボスが逃げたのは仲間を呼びに行く為でしたのね。わたくしとしたことが迂闊でしたわ」

 

 

 ベールが悔しそうに唇を噛む。

 

 

「今はそんなこと言ってもしょうがねぇだろ。全部叩き潰すぞ」

 

 

 ブランがそう言って戦闘態勢を取ると、ノワールとベールもそれに続く。

 

 

「そうよ。ダゴンだってかなり弱ってるわ! ネプテューヌ! いつまでそんな女の機嫌取ってるの? 手伝いなさい!」

 

 

 ノワールがネプテューヌに向けて怒鳴ると、「ごめんなさい。ぷるるん、この埋め合わせは必ずするわ」と言ってネプテューヌもシャンタク鳥との戦いに加わった。

 

 

***

 

 

「よーし、ぴぃもママと一緒に戦う。必殺、地獄のピーチトレイン!」

 

 

 ピーシェはそう言いながら、強烈なヒップアタックをシャンタク鳥に食らわせる。

 

 

「キィィィ!?」

 

 

 シャンタク鳥は67,923のダメージを受けると光悦の表情で消滅する。

 

ピーシェは徒手空拳を得意とする接近戦特化の戦士だ。

 

ネプテューヌ並みのパワーとスピードを誇るが、リーチが短い上に射撃と魔法を苦手としている。

 

 

「そりゃ~! 次行くよー! 必殺、地獄のピーチトレイン、パート2!」

 

 

 ピーシェは、今度はフライングボディアタックを深きものに食らわせる。

 

 

「ぶげぇ~~」

 

 

 思いっきり胸部に顔を挟まれた深きものは、光悦の表情で70,231ダメージを受けると水になって消滅する。

 

 

「一体一体倒していてはキリがないわ!」

 

 

 ネプテューヌが叫ぶ。

 

彼女の言う通り、深きものとシャンタク鳥は次々と増援が到着しており、倒すスピードより増援の方が早くなってきていた。

 

 

「ねぷてぬ、ぴぃに任せて!」

 

 

 ピーシェが自信満々に腰に手を当てて言う。

 

すると、「ピー子が?」とネプテューヌが意外そうな顔をする。

 

ピーシェは一対一の戦いでは無類の強さを誇るが、先述したように射撃と魔法が不得意なので、広範囲の攻撃を持たない。

 

そのピーシェが名乗り出たのが不思議なのだろう。

 

 

「必殺! ぴぃ爆弾!!」

 

 

 ピーシェはそう言うと、アドバルーン程の大きさの巨大な黒い爆弾を呼び出す。

 

恐らく、ポーチに収納していたのだろう。

 

 

「ちょっ、そんな大きな爆弾が爆発したら、わたし達まで!」

 

 

 ネプテューヌは慌ててピーシェを止めようとするが、「そりゃ~~~」とピーシェは爆弾をおもむろに敵陣に投げつけてしまう。

 

 

「ちょっと! なによこれ!」

 

 

 不幸にも投げられた爆弾はノワールの元に飛んで行ってしまい、ノワールが慌ててそれを受け止める。

 

 

「冗談じゃないわよ!」

 

 

 ノワールが爆弾を慌てて放り投げるが、放り投げた先にはブランがおり、「オイ! フザけんな!」と言って爆弾を受け止めると、ノワールと同じように放り投げる。

 

しかし、今度はその先にベールがおり、「ちょっと、ブラン! わたくしに何か恨みがありますの?」と言いつつ爆弾を受け止める。

 

 

「恨みは山ほどあるが、今はカンケーねぇよ!」

 

 

 ブランがそう返すと、「それ、ネプテューヌ」と言いつつ、ベールはネプテューヌに爆弾をパスする。

 

 

「ちょ!? わたし!」

 

 

 慌てて爆弾をキャッチするネプテューヌ。

 

 

「きゃははは! 戻ってきちゃったね」

 

 

 そう言って笑うピーシェは本当に楽しそうだった。

 

 

「こういうのはノワールの役目でしょ!」

 

 

 ネプテューヌが再び爆弾をノワールの元に投げる。

 

そしてノワールはブランに、ブランはベールに、ベールはネプテューヌにと延々と爆弾のパスのしあいが始まってしまう。

 

 

「お前等、真面目にやらんか!」

 

 

 思わず叫んでしまうマジェコンヌ。

 

 

「ユニちゃん、導火線を撃ち抜いて!」

 

 

 ネプギアがユニに指示を出すと、「冴えてるわね、ネプギア」とユニがネプギアを称賛する。

 

するとネプギアは、「導火線をどうかせんと、だよ!」とドヤ顔で言い放つ。

 

 

「……ダジャレの方は冴えてないわね」

 

 

 ユニが呆れ顔でそう言うと、「えぇ~!? そんなぁー」とネプギアが不満そうに言う。

 

 

「大丈夫。ちゃんと面白かったわよ」

 

 

 ラムがそう言うと、「うん、面白かったよ」とロムがそれに続く。

 

 

「狙い撃つわ!」

 

 

 ユニの狙撃が爆弾の導火線を撃ち抜くと、「「「「ほっ……」」」」と安堵の溜息を吐く四女神。

 

 

「遊んでるなら、私は帰るぞ」

 

 

 不満そうに言うマジェコンヌに、「わわわっ!? 待って下さい」と慌てて止めるネプギア。

 

 

「本当に、あなたが協力してくれるなんてね」

 

 

 ネプテューヌが不思議そうに尋ねると、マジェコンヌは口角を上げて、「ふっふっふ、お前は自分の首を絞めることになったんだぞ」と笑う。

 

 

「どういうこと?」

 

 

 ネプテューヌが言葉の意味を問いかけると、「そこの妹に聞くがよい」とマジェコンヌが言い放つ。

 

 

「えっと、協力する代わりに、プラネテューヌでナスを1トン買う約束をして……」

 

 

 ネプギアが少し申し訳なさそうにネプテューヌにそう言うと、「ありえない独断専行だわ。ナスに関わる人はゴミだと教えたはずよ」とネプテューヌが怒りをあらわにする。

 

 

「それは流石にナスを作ったり売ったりしてる人に悪いんじゃないかな……」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「それのこれを機にお姉ちゃんのナス嫌いが直せればいいなーって」と続けて言うが、「ありがた迷惑よ。ナスなんてこの世に存在する必要がないわ」と言い放つ。

 

 

「オイ、ナスを愚弄することは私が許さんぞ」

 

 

 ナスを愛するマジェコンヌが話に割って入って来ると、「まぁまぁ、マジェコンヌさん、マジェコンヌさんの美味しいナスでお姉ちゃんのナス嫌いを直してみせますから」とネプギアがフォローをする。

 

すると、「ああ、お前は私のナスの素晴らしさを理解しているのだな」と自分のナスを褒められたマジェコンヌがウットリした表情で言う。

 

 

「はい、とっても精魂籠った美味しいナスだと思います」

 

 

 ネプギアが更にマジェコンヌのナスを褒めると、「うんうん、女神にしておくのが惜しいな」と言ってしきり頷くマジェコンヌ。

 

 

「ちょっと待て。ネプテューヌのナス嫌いが直ったら、困るのは私じゃないか?」

 

 

 マジェコンヌがふと思いついたふうに言うと、「そんなことは無いですよ。お姉ちゃんがナスを食べられるようになったら、それだけマジェコンヌさんのナスでが美味しいって証明になります」とにこやかに答えるネプギア。

 

 

「なるほど。私のナスの素晴らしさでネプテューヌを屈服させるのだな。待っていろネプテューヌ。貴様が食えるような最高級のナスを作ってやる」

 

 

 マジェコンヌはそう言いながら、右手でネプテューヌを指差しする。

 

 

「ネプギア、敵と戯れないで!」

 

 

 状況不利を悟ったネプテューヌはネプギアを叱るが、「今は味方だよ。それに更正しようとしている人を優しく見守って、そっと背中を押してあげるのも女神の役目だと思うよ」とネプギアが言う。

 

 

「正論で答えないでくれるかしら、対応に困るわ」

 

 

 ネプテューヌは右手で頭を抱えながら呆れた声で言う。

 

 

***

 

 

 ダゴンは深きものとシャンタク鳥を盾にしつつ、遠距離からの鉄砲水での攻撃で防衛に徹していた。

 

 

「くそっ……我としたことが、こんな下級神どもに苦戦するなど……」

 

 

 ダゴンが悔しそうに唸る。

 

 

「ハイドラはまだなのか? それにニャラルトホテプは見ているだけなのか?」

 

 

 ダゴンが呟く。

 

彼なりに勝算があって防衛をしているらしい。

 

しかし、事態は彼の思うようには進んではいないようだ。

 

 

「ダゴンのヤツ、さっさと逃げると思ったが……」

 

 

 ブランがそう言うと、「何か企んでいるかもしれませんわね。油断しないで下さいまし」とベールが言う。

 

 

「わかったわ」

 

 

 ネプテューヌが頷くと、「まずは目の前のコイツね」とノワールが言う。

 

四女神の眼前には、シャンタク鳥のボスと思われる巨大シャンタク鳥が立ち塞がっていた。

 

 

「先程は不覚をとりましたけど、今度はそうはいきませんわよ」

 

 

 ベールは槍をクルクルと回転させると、穂先を巨大シャンタク鳥に向けて構えを取る。

 

 

「皆さん、お姉ちゃん達が巨大シャンタク鳥の相手をしている間に、小型のシャンタク鳥と深きものを倒しましょう」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「出来るだけ、私達女神候補生の周囲に敵を誘い込んで下さい」と仲間達に指示を出す。

 

 

「分かったよ。任せて、ぎあっち」

 

 

 うずめが頷くと、「ぴぃもわかったー!」とピーシェが右手を上げる。

 

 

「わ、わかりました。頑張ります」

 

 

 キセイジョウ・レイが返事をすると、「ふん、仕方がない、従ってやろう」とマジェコンヌも返事をする。

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 ネプギアは丁寧にお礼を言うと、「みんな! コード、スペリオルアンジェラスゼロ!」と女神候補生達に声を掛ける。

 

すると、「「「了解」」」とユニとロムとラムが頷く。

 

 

「どうやら、ザコ共はスペリオルアンジェラスゼロで一網打尽にするみたいね」

 

 

 巨大シャンタク鳥と戦いながらノワールがそう言うと、「こういう広範囲殲滅はあいつ等の方が得意だからな」とブランが頷く。

 

スペリオルアンジェラスゼロは、以前のゴブリン戦で見せた大技だ。

 

 

「その間に、わたし達はこのデカブツを何とかするわよ」

 

 

 ネプテューヌが巨大シャンタク鳥に攻撃をしながらそう言うと、「わかってますわ」と言いながらベールも巨大シャンタク鳥を攻撃する。

 

 

「巨大なシャンタク鳥を倒すのは私達がスペリオルアンジェラスゼロを発動するのに合わせて下さい」

 

 

 ネプギアが四女神に通信を送る。

 

 

「わかったわ。何か考えがあるのね」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、「ギアシステムってヤツか、従っといた方が良さそうだな」とブランがそれに続く。

 

ベールは微笑みながら、「わたくしはいつでも、ネプギアちゃんのことを信じてますわ」と言う。

 

 

「でも、あんまりノロノロしてたら先倒すわよ」

 

 

 ノワールがそう言うと、「わかりました。頑張ります」と言ってネプギアは通信を切る。

 

 

「みんな、行くよ」

 

 

 ネプギアの言葉で、女神候補生達はゴブリン戦同様に背中合わせの円陣を作る。

 

 

「ねぷぎあ達はぴぃが守るよ!」

 

 

 ピーシェがそう言ってネプギアの前に立つと、「うずめも、ぎあっち達守るから、まじぇっちとれいっちは敵を誘い込んで」とうずめがその反対側に立つ。

 

 

「無理はしないでね、ピーシェちゃん」

 

 

 キセイジョウ・レイがそう言うと、「うん、ママ」とピーシェが嬉しそうに頷いた。

 

 

 

***

 

 

 

「お姉ちゃん、私達はいつでもいいよ」

 

 

 ネプギアがネプテューヌに通信を送る。

 

すると、「了解よ。みんな一気に決めるわ」とネプテューヌが三人の女神に言う。

 

 

「「「「ガーディアンフォース」」」」

 

「「「「スペリオルアンジェラスゼロ」」」」

 

 

 四女神の怒涛の連携攻撃が巨大シャンタク鳥を切り裂き、女神候補生達の放つ全属性の極大魔法が辺り一面を覆いつくす。

 

巨大シャンタク鳥は、ガーディアンフォースで合計55万ダメージを受けると消滅し、シャンタク鳥と深きものの群れは30万以上のダメージを受けてオーバーキルで次々と消滅していく。

 

 

「なにっ!?」

 

 

 一瞬で大量の戦力消失したダゴンが焦りの声を上げる。

 

 

「これでは、奴等に勝てん!」

 

 

 そう言い捨てて一目散に逃げようとするダゴン。

 

 

「ごめんね。そうは行かないんだよ」

 

 

 そんなダゴンの目の前に、ホウキに乗った大きいネプテューヌが立ちはだかる。

 

 

「貴様! いつの間に」

 

 

 驚愕の表情を浮かべるダゴン。

 

 

「ねぷねぷ流奥義、クロちゃんテレポート!」

 

 

 大きいネプテューヌが横ピースを決めながらドヤ顔で言うと、「おめーは何もしてねーだろ」と隣のクロワールが呆れた声を出す。

 

彼女は、ダゴンが逃げようとしたらテレポートで足止めするよう、ネプギアに頼まれていたのだ。

 

 

「と、言う訳で先手必勝。レイジングラッシュ!」

 

 

 大きいネプテューヌが両手に刀を呼び出すと、それを華麗に連続で振り下ろしダゴンの顔を攻撃する。

 

 

「ぐおっ!?」

 

 

 ダゴンは2351のダメージを受ける。

 

 

「まだまだー! エリアルショット!」

 

 

 今度は左足のホルスターに入った拳銃を使って、ダゴンの顔を連続で撃ち抜く。

 

 

「むわっ!」

 

 

 ダゴンは2264のダメージを受けると、痛みでネプテューヌから顔を背ける。

 

大きいネプテューヌは刀による二刀流と拳銃による射撃を得意とする。

 

 

「くそっ。この程度、女神でもない貴様一人に我の足止めなど!」

 

 

 ダゴンはそう言うと、気を取り直して、大きいネプテューヌに殴りかかる。

 

大きいネプテューヌはそれをホウキに乗って、【ひらり】とかわすと、「またまたごめんねー。一人じゃないんだよ」とウインクしながら言う。

 

 

「なに?」

 

 

 そう言うダゴンの視界には、一台のヘリコプターとその周囲を飛ぶホウキに乗ったアイエフ達。

 

更に海面には大量の人魚の群れが迫ってきており、ダゴンの退路を完全に塞いでいた。

 

 

「いやー。流石はネプギアだね」

 

 

 大きいネプテューヌが自慢気に言う。

 

ネプギアは予め、ヘリコプターと人魚にダゴンの退路を断つよう指示を出していたのだ。

 

 

「と、言うことで半魚人のオジサン、もう逃げ道はないよー。大人しく投降した方がいいんじゃないかな?」

 

 

 大きいネプテューヌがそう言うと、「そんな馬鹿な真似ができるかぁぁ!」とダゴンが叫ぶ。

 

しかし、次の瞬間に人魚の攻撃魔法やアイエフ達からの一斉攻撃が始まると、「止めろ、来るな!」と弱気な声を上げる。

 

既にダゴンのHPは3万以下になっており、このまま集中攻撃を受けたらひとたまりもないだろう。

 

 

「HPオバケも、こうなると哀れですわね」

 

 

 大きいネプテューヌが足止めしてる間にダゴンに追いついたベールが言う。

 

 

「げぇっ……女神」

 

 

 ダゴンが驚きの声を上げると、残りの女神達が追いついて来て、次々とダゴンを取り囲む。

 

 

「ムムムムムム………」

 

 

 悔しそうな唸り声を上げるダゴン。

 

 

「これ以上の抵抗は無意味です。大人しく投降して下さい」

 

 

 ネプギアが凛とした声で言うと、「神妙に爆発しろ!」とラムが言う。

 

 

「ば、爆発しちゃダメだよ!」

 

 

 慌てて、ラムを止めようとするネプギアだが、「それを言うなら【縛につけ】でしょ……」とユニが右手で頭を押さえながら言う。

 

 

「わ、わかった……」

 

 

 ダゴンがそう言って両腕を下す。

 

しかし、次の瞬間ダゴンが電撃に包まれる。

 

 

「ぐあああああああ!!」

 

 

 25000のダメージを受けて悶え苦しむダゴン。

 

 

「なに? 何が起きたの?」

 

 

 ロムが慌てて周りを見渡す。

 

すると、上空から、「うふふ……お仕置きタ~~イム」と言いながらプルルートが現れる。

 

女神の攻撃の割にはダメージが低かったのは彼女が威力を調整したからだ。

 

 

「プルルートさん!? なんてことを! 彼は既に投降の意志を示して……」

 

 

 ネプギアがそこまで言うと、プルルートの蛇腹剣がネプギアに襲い掛かる。

 

 

「っ!?」

 

 

 素早くサイドステップで避けるネプギア。

 

しかし、蛇腹剣はプルルートの腕の動きに合わせて、鞭のようにしなり何度もネプギアを襲う。

 

 

「そら、そらそら~」

 

 

 その隙にプルルートはダゴンに電撃の弾を何度も浴びせる。

 

 

「ぐががががが!?」

 

 

 苦しみ悶えるダゴン。

 

手加減をしているのでダメージは三桁だが、弱りに弱っている今のダゴンには耐え難い苦痛のようだ。

 

 

「止めて下さい。これ以上はやり過ぎです」

 

 

 プルルートの攻撃を避けつつ、抗議するネプギア。

 

すると、プルルートは鬱陶しそうに、「なにがやり過ぎなの? コイツは悪い邪神でしょ~」とネプギアの言葉に答える。

 

 

「確かに、この人は人魚達を困らせたし、お姉ちゃんが助けてくれなければ、私達も酷い目に遭っていたかもしれません」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「なら、徹底的に痛めつけたって誰も文句言わないわよ~」とプルルートが言う。

 

 

「でも、彼は既に力を失い、もう誰も傷付けることが出来ません。それに私達も人魚達もダゴン倒す以上のことは望んでいません」

 

 

 ネプギアの言葉に、「その通りだ。我々人魚もこれ以上は望んでいない」とルルドが言う。

 

 

「本当にそうなのかしら? 悪人が酷い目に遭うのを見るとスカッとしない?」

 

 

 プルルートがルルドに向けてそう言うが、「いいや、正直これ以上は気分が悪い。他の人魚は怖がって海に潜ってしまった」とルルドは毅然とした態度で言う。

 

 

「これ以上痛めつけても何も産み出しません。恨みと嫌悪感が残るだけです。アイエフさんだって心に傷を負ってしまったじゃないですか」

 

 

 ネプギアがプルルートに訴えかけるように言う。

 

しかし、プルルートは、「そんなことないわよ~。あたしのストレス解消になるわ」と言って取り合わない。

 

 

「悪い人だからと言って、ストレス解消の為に必要以上に傷付けるなんて間違っています。ストレス解消なら、ゲームなりスポーツなり他のことで発散した方がいいと思います」

 

 

 ネプギアはそれでも諦めずにプルルートを説得しようとするが、「あたしはこれが好きなのよ。これが一番のストレス解消法よ。ぎあちゃんもやってみてば分かるわ」とプルルートが言う。

 

 

「遠慮します」

 

 

 ネプギアがキッパリそう言って断ると、「あら、残念ね」とプルルートは淡白に答えた。

 

 

「過剰な暴力は人に嫌悪感を与えるだけでなく恐怖も植え付けます。一度その姿を見せてしまえば、人は女神を恐れてしまい忘れることができないでしょう。女神とあろう者が、一時の感情の為に、なぜ自分を貶めるんですか?」

 

 

 ネプギアはそう言いながらプルルートの蛇腹剣の軌道を見切ると、一瞬でプルルートとの距離を詰める。

 

そこは既に蛇腹剣が有効な中距離ではなく、M.P.B.Lのブレード部分の攻撃が有効な近距離だった。

 

 

「……っ」

 

 

 自慢の蛇腹剣が見切られたことに驚きを隠せないプルルートだが、直ぐに平静を取り戻して、「神が畏怖されてなんの不都合があるのかしら?」と質問する。

 

すると、「私達は守護女神です。人を護り導く存在です。畏怖ではなく公正さで国を治めるべきだと思います」とネプギアが答える。

 

 

「ねぇ、さっきから随分と反抗的じゃない? 人に助けを求めておいてその態度はないんじゃない」

 

 

 プルルートとはそう言ってネプギアを睨む。

 

 

「援軍には感謝します。でも、それとこれとは別問題です」

 

 

 ネプギアは負けずにプルルートと視線を合わせる。

 

 

「ふふん、今日は仲間がいっぱいいるから調子に乗っちゃってる? 群れてイキがるなんて、無力で意気地無しの半人前のぎあちゃんらしいわ~」

 

 

 プルルートがネプギアを嘲笑すると、「私は女神として……」と言ってネプギアはプルルートとの距離を詰めようとするが、その瞬間ネプギアの右肩が掴まれる。

 

 

「ネプギア、つまらない説教はそれぐらいにしなさい」

 

 

 掴んでいたのはネプテューヌであった。

 

 

「え……お姉ちゃん?」

 

 

 信じられないものを見るような目でネプテューヌを見るネプギア。

 

 

「ネプギア、ダゴンの境遇について、いつあなたに意見を求めたの?」

 

 

 ネプテューヌが厳しい声と顔でネプギアを責めるように言う。

 

ネプギアは思わず、「それは……」と言葉に詰まってしまう。

 

 

「いつ意見を求めたかと訊いているのよ」

 

 

 語気を強めるネプテューヌに、「……求められてないけど、でも!」とネプギアが答える。

 

しかし、ネプテューヌはそれを遮って、「あなたは、わたしが意見求めた時にだけ言えばいいのよ。それ以外の時は黙って、わたしに従いなさい」と冷たい声で言う。

 

 

「でも、お姉ちゃん、確かに邪神は悪くて危険な存在だけど、私達までこんなやり方してたら邪神と変わらなくなっちゃうよ」

 

 

 必死に訴えるネプギア。

 

しかし、ネプテューヌが、「ネプギア!」と叱りつけるように呼ぶと、「はい……」と素直に返事をする。

 

 

「あなたは、一体わたしのなんなの?」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、ネプギアは肩を落として、「私はお姉ちゃんの妹で女神候補生です」と答える。

 

 

「半人前の妹がわたし達のやることに口を挟まないでちょうだい」

 

 

 ネプテューヌが不愉快そうに言うと、「……ごめんなさい」とネプギアは素直に謝る。

 

 

「ふふっ、憧れのお姉ちゃんに叱られて、しょんぼりしてるぎあちゃん、そそるわぁ~。飼い主に叱られた犬みた~い」

 

 

 その横で、嬉しそうに笑うプルルート。

 

更に、「ぎあちゃんはねぷちゃんの金魚の糞なんだから、糞は糞らしく、肥溜で同じ姉の後ろについてまわる金魚の糞達と仲良くしてなさいよ」と追い打ちをかけて来る。

 

 

「それは……ユニちゃんの達のことですか……」

 

 

 しかし、それがネプギアの逆鱗に触れたようで、ネプギアは怒気を強めた声でプルルートを睨む。

 

 

「何よ? その反抗的な目。気に入らないわ……自分の立場分かってるの? さっき、ねぷちゃんに言われたでしょ、もう忘れたの? 三歩も歩かない内に忘れるなんて鶏以下ね」

 

 

 プルルートがそう言うと、ネプギアは、「私のことはいくら言って構いません。でもっ!!」と言ってプルルートとの距離を詰めようとする。

 

しかし、再びネプテューヌの右手がネプギアの右肩を掴む。

 

 

「よしなさい、ネプギア」

 

 

 冷たい声でネプギアを制するネプテューヌ。

 

ネプギアは、「お姉ちゃん!? 何で!離して!」とネプテューヌの手を振り払おうとする。

 

 

「ぷるるんを呼んだのはあなたでしょ」

 

 

 しかし、ネプテューヌはその手を離さない。

 

ネプギアは、「だから、それとこれとは……」と抗議しようとするが、「わたしの言うことが聞けないの!」とネプテューヌが強く言うと、「……っ!」と黙ってしまう。

 

 

「あっはははははは!!! いいわ! その信じてる者に裏切られた時の絶望の表情。ぎあちゃんの顔芸は芸術的ね」

 

 

 プルルートはそう言いながら、右手でネプギアの頬を【パシン】と叩くと、「ねぷちゃんに免じて今日はこれで許してあげるわ。あと、二度とあたしに指図しないでちょうだい」と言い放つ。

 

更に、「あたし、人に指図されるの大嫌いなの。特にぎあちゃんみたいなドジでノロマな愚図に指図されるなんて不愉快だわ。飼い犬に手を噛まれるってこういうことを言うのね」と続けて言う。

 

 

「くっ……」

 

 

 ユニが怒りに満ちた目でプルルートを睨むが、「落ち着きなさい」とノワールが冷静な声で制する。

 

更にロムとラムもプルルートを睨むが、「あなた達もよ」とブランが二人を手で制した。

 

 

「うずめも落ち着いて下さいな」

 

 

 ベールは今にも飛び出しそうな、うずめの肩に手を置いてそう言った。

 

満足そうにする、プルルートの隣でネプテューヌは少し苦しそうに右手で頭を抱えていた。

 

 

(……わたし、何でネプギアにあんな酷いことを……何か変……ぷるるんにカオスアニマってのを見せられてから……それにボークって確か……)

 

 

 ネプテューヌがそこまで考えると、プルルートがネプテューヌの腰に手を回す。

 

 

「嬉しいわぁ~、やっぱり、ねぷちゃんはあたしの味方なのね」

 

 

 プルルートはそう言いながら、ネプテューヌにカオスアニマを見せる。

 

 

(ダメ、ぷるるんそれを見せないで……わたしがわたしでなくなる……)

 

 

 必死に抵抗するネプテューヌだが彼女の意識はじわじわと闇に飲まれていく。

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