新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
翌日 G.C.2019年9月4日 水曜日の朝食後。
「今日は工事を中止して、オークとゴブリンの退治をします」
イストワールが広間に集まっている全員に説明する。
すると、ラムが左手を上げて、「はーい! わたしのカオスイレイサーで一網打尽よ!」と元気よく言う。
更に、「わたし達は光の軍勢! ライジングフォース!(ぐっ)」とロムも元気よく言うと、「プラエも頑張る!」とプラエが小さくガッツポーズをする。
「何だか凄く元気だね」
ゴッドイーターが素直な感想を言う。
「昨日寝る前に読んであげた絵本が、気に入ったみたいなんです」
ネプギアが答えると、「よーし! アタシ達も負けないよ! 行くよー! ビーシャ、がすと」と日本一が叫ぶ。
ビーシャは、「了解、ビーシャ行きまーす!」と元気よく返事をするが、がすとは、「付き合ってられませんの」とため息を吐く。
「オークとゴブリンか。邪神に比べれば取るに足らない敵だけど、油断は禁物ね」
ニトロプラスがそう言うと、「うん、そうだね。今はネプギア達が変身出来ないから慎重に行こう」とファルコムが答える。
「それじゃ、出発しましょ」
アイエフの言葉で、アイエフはバイク、コンパとファミ通は車の用意をする。
更に執事兼運転手のサンジェルマンも車を用意して、車で工事現地まで向かうネプギア達。
「おう、嬢ちゃん待っておったぞ」
「なかなか早かったわね」
工事現場にはビィトリットにホルランド、それに大勢のエルフとドワーフの兵士が居た。
「今回はエルフとドワーフの皆さんも協力してくれます」
イストワールが説明をすると、「オークとゴブリンはワシ等の敵でもあるからな」とホルランドが腕組みしながら答える。
「おいおい、何だこの女子供達は大丈夫なのか?」
ビィトリットの側にいた男性と言うか金色の人型の狼が言葉を発する。
「大丈夫よ、トール。彼女達が女神よ」
ビィトリットが人型の狼をトールと呼びネプギア達のことを簡潔に説明する。
「わー! 獣人だー!」
ラムがそう言ってトールに近づくと、「かっこいい(どきどき)」とロムまで無警戒で彼に近づく。
「おいおい、俺が怖くないのか?」
トールが二人に言う。
「怖くないわよ、本の中でザッハはそっけないけど優しかったもん」
「ツンデレさん(にこにこ)」
ロムとラムが昨晩のネプギアに読んで貰った本に出て来た獣人の英雄がお気に入りらしい。
「俺はトールだ、ザッハは俺の先祖だ」
トールは少し呆れながら言う。
「じゃあ、間違いなく、わたし達の光の軍勢よ」
「仲間(にこにこ)」
ロムとラムがニコニコしながら答える。
「やれやれ……人間にここまで歓迎されると思わなかったぜ」
トールは頭を掻きながら言う。
「嬢ちゃん達にそういう偏見はないわい。あるのは善いか悪いかじゃ」
ホルランドが我が子を自慢するように答える。
「じゃあ、こいつ等も大丈夫って言うのは本当なんだな」
トールがそう言うと、森の奥からフェアリーとアルラウネの群れが出てくる。
「あっ! ティータにエレナ!」
ラムが以前にシヘイ村で出会ったフェアリーのティータとアルラウネのエレナがいることを確認する。
「ゴブリンには私達も困ってるから協力するわ」
ティータが言と、「……私も悪いゴブリン達を追い払う」とエレナがそれに続く。
「ほうほう……これが女神様か。どうじゃ? ワシの愛人にならんか?」
老人のフェアリーがロムに話しかけると、同時にとんでもない誘いをする。
「……わたし、好きな人いるから。ごめんなさい」
ロムがあっさりと振ると、「ガーン……ワシ昔はめっちゃイケメンの神様だったんだぞい」と老人の妖精がショックを受ける。
「オーディン族長。なにやってるのよ」
ティータが老人の妖精をオーディンと呼んで叱る。
「おっとそうじゃ、おぬし達ダゴンを退治してくれたそうじゃな」
オーディンは話を変えてくると、「はい、確かに倒しました」とネプギアが素直に答える。
「例を言うぞ、あやつにはワシ等も迷惑しておった」
オーディンは丁寧にお礼を言う。
「昔のような神の力があったら楽勝じゃったんだが」
オーディンがそう言うと「神……ですか?」とネプギアが尋ねる。
「そうじゃ。ワシは、昔は神じゃったが、フェンリルに食われたらこんな姿になってしもうた」
オーディンが肩を落とすと、「フェンリルぐらいに倒されるなんて、大した神じゃないんじゃないの?」とユニが言うと、「ゲイムギョウ界のではない、現世のフェンリルじゃ」とオーディンが答える。
「はいはい、族長、妄言はそれぐらにして」
ティータはオーディンの服を掴むとどこかに連れて行ってしまう。
入れ替わりにアルラウネの少女エレナがネプギアに近づいて来る。
「……私達も森を守るために協力する」
エレナがそう言うと、「ありがとうございます。でも、無理はしないで下さいね」とネプギアが素直に感謝する。
「……私のこと怖くないの?」
エレナがネプギアに質問すると、「ロムちゃんとラムちゃんから友達になったって聞きました。だったら、私達も友達ですよ」とネプギアは明るく答える。
「まあ、女神様は寛大なのね」
エレナが嬉しそうに言う。
「他種族との共闘、少し心配だったけど上手く行きそうね」
ビィトリットが安心したように言うと、「嬢ちゃん達なら心配ないわい」とホルランドが笑いながら答える。
「……しかし、これだけの種族が集まるってことは、ゴブリンとオークって相当疎まれてるのね」
アイエフが腕組みしながら言う。
「悪役の代名詞みたいな奴等だからね」
日本一もそれに続く。
「臭い、汚い、乱暴、好かれる要素がどこにもありませんの」
がすとも同意見らしい。
「今回は遠慮なく剣を振れそうだね」
ファルコムもやる気満々なようだ。
「でも、前のゴブりんみたいな善いゴブリンがいるかもしれないです~」
コンパが話に割り込んで来るが、「……あれは善いって言うのかな……半分捕虜みたいなものだったし」とファミ通が渋い顔をしながら言う。
「それは興味深い話だね。是非聞かせてくれないかね」
運転手として同行していたサンジェルマンが話に加わって来る。
「ネプギアさんが、こともあろうにゴブリンを見逃し他の次元で更生させようと言うのです」
イストワールが溜息をつきながら言うと、「ほほう……流石は我が女神様、慈悲深い」とサンジェルマンは楽しそうに自分の髭を撫でる。
「みなさん、そろそろ作戦を開始します。詳細を説明するので集まって下さい」
イストワールが呼びかける。
「はい、今回の作戦はどうするのでしょうか?」
ネプギアがイストワールに質問する。
「今回は部隊を二つに分けます。第一部隊はエルフとドワーフの混成部隊」
イストワールが説明を始める。
「おう、やるぞビィトリット」
「ええ」
ホルランドとビィトリットが応える。
「残り方は第二部隊でお願いします」
イストワールが説明を続ける。
「わーい! トールと一緒だー」
ラムが左手を上げて喜ぶ。
「初対面でこんなに好かれるなんて、やれやれだ」
トールとは呆れているが、どことなく嬉しそうでもあった。
「よろしく、お嬢ちゃん」
オーディンがロムに近づいてくる。
「う、うん……(びくびく)」
先程、振ったばかりなのに懲りないオーディンに警戒気味のロム。
「ちょっと! ロムちゃんを困らせたら承知しないわよ」
ラムが間に割って入る。
「むむむっ、こっちのお嬢ちゃんも良いの~」
オーディンはラムに怯まず、ラムをまじまじと眺める。
「なにー! このおじいちゃん、目がいやらしい~」
ラムはオーディンの視線が嫌なようだ。
「……あれ本当に妖精の族長なの?」
ユニが呆れ顔でティータに尋ねる。
「あれでも頭も良いし魔法も強力なのよ。欠点なのは無類の女好きなところと虚言癖があるところね」
ティータがオーディンの説明をする。
「虚言癖?」
ネプギアが首を傾げる。
「何かにつけて、昔は神様だったって主張するのよ」
ティータが呆れながら言うと、「そう言えばさっきも言ってたわね」とユニが思い出したかのように言う。
「もしかしたら本当かも。転生したら妖精だった件……とか?」
ネプギアがフォローするように言うが、「まっさかぁ~、あんなスケベジジイが神様な訳ないじゃない」とティータは即否定をする。
「おい、トール、何でお主が好かれてワシが嫌われるんじゃい。ワシ、主神じゃぞ、なんとかせい」
オーディンがトールに文句を言うと、「そんな昔の話持ち出されてもねぇ……いい加減昔の話は止めようぜ」とトールが呆れたように答える。
「では作戦を開始します」
イストワールの声で、ネプギア達は二部隊に分かれて森の中を進んでいく。
ちなみにダゴン倒し、その後もクエストを続けて来たネプギア達のレベルは60になっていた。
「ガオオオオン!」
森の中にトールの咆哮が響く。
「ギギッ!」
それに合わせて、トールの爪で切り裂かれたゴブリンが2832のダメージを受けて戦闘不能になる。
「わー! トール、カッコいい!」
ラムが声援を送ると、「トールさん、強い」とプラエも声援を送る。
「そりゃあ~! ワシの必殺魔法じゃ~!」
オーディンの杖から光の弾が発射される。
「グォォォォ!」
光の弾に当たったゴブリンが3125のダメージを受けて戦闘不能になる。
「どうじゃ! お嬢ちゃん! ワシ、カッコいいじゃろ?」
オーディンはロムの周りを飛び回る。
「……うん……カッコいい……かも(おろおろ)」
ロムはオドオドしながらもオーディンを褒める。
すると、「そうじゃろそうじゃろ。ウシシシ! 好感度アップじゃ!」とオーディンは嬉しそうに笑う。
「……オーディンさん、ロムちゃんのこと気に入ったのかな?」
ネプギアが向かって来たゴブリンを切り払いながら言う。
ゴブリンは、2312のダメージを受けて怯むと、「変なのに好かれちゃったわね」とユニが言いながら、銃で同じゴブリンを撃ち2458のダメージを与えるとゴブリンが戦闘不能になる。
ネプギアとユニのコンビネーションは会話をしながらでも完璧であった。
「敵を捕らえました! 今です!」
エレナがそう言うと、ゴブリン達の足にアルラウネ達の生やした蔦が絡みついていた。
「いくわよ!」
アイエフが動けなくなったゴブリンに斬りかかる。
アイエフの攻撃で1876のダメージを受けるゴブリン。
「お注射します~」
続いてコンパが巨大注射器を突き刺す。
「ガアアア!」
951ダメージを受けて戦闘不能になるゴブリン。
「数は多いけど大したことはないね」
日本一がプリニーガンを撃ちながら言う。
プリニーガンの弾が当たったゴブリンは2154のダメージを受ける。
更に、「実力も統率もこっちが上だし、これならいけるかもね」とファミ通がエビでゴブリンを殴りながら言う。
ゴブリンは1658のダメージを受けて戦闘不能になる。
「この程度の相手造作もないわ」
ニトロプラスが冷静な声を上げながら、ゴブリンを太刀で切り裂くとゴブリンは2254のダメージを受ける。
更に、「そうそう、楽勝だよ」とビーシャがバズーカ砲を放つと、ゴブリンに弾が当たり2214のダメージが当たり、ゴブリンが戦闘不能になる。
「でも、数だけは多いですの」
がすとはウンザリしながらも、ゴブリンにフラムを投げつける。
フラムの当たったゴブリンが、1787ダメージを受けると、「これも工事現場の人達を守る為だよ! 頑張ろう!」とゴッドイーターが続けて斬り込んで、2057のダメージを与えてゴブリンを戦闘不能にする。
「でも、敵もそろそろ本気を出してくるみたいだね」
ファルコムがそう言うと、「そのようですね」とあんみつが続いて言う。
すると森の奥から豚の顔をした太った大男の集団が現れる。
「あれはオークですね」
イストワールが眉をひそめる。
オークはゴブリンよりも数は少ないが強力なモンスターである。
「フェアリーとアルラウネは下がってろ。あいつ等は俺がやる」
トールがオークの群れに突進しながら言う。
フェアリーとアルラウネの戦闘力ではオークの相手は厳しいので獣人である自分が引き受けようと言うのだ。
「私達も行こう!」
ネプギアが仲間達に声を掛けるとオークに向かって走り出す。
ネプギアの声に、「わかったわ」とユニが応えると、「うん」とロムが、「了解っ!」とラムが答える。
「イストワール、あたし達もオークに当たろう」
ファルコムがイストワールに声を掛ける。
「そうですね。残りの方は引き続きゴブリン達をお願いします」
ファルコムとイストワールがオークに向かう。
「むむっ! 邪悪な気配がビンビンするわい、お嬢ちゃん、ワシも力を貸すぞ」
フェアリーの長のオーディンもその後を追う。
「おおお! 女の匂いだあああ!」
オークの一人ががいやらしく笑いながら言う。
オークはゴブリンより知能が高く言葉を話すことが出来る。
ザシュッ! ザシュッ!
「がああああ!」
いやらしく笑うオークの顔が引き裂かれる。
「どこ見てるんだよ豚が!」
一瞬で距離を詰めたトールが爪でオークの顔を切り裂いたのだ。
顔を引き裂かれたオークは2854のダメージを受ける。
更に続けて、トールのボディブローが当たると、2951のダメージを受けて、オークが戦闘不能になる。
「この犬があ!」
オークの一人がトールに向けて棍棒を振り下ろす。
「危ない!」
ネプギアがビームソードで棍棒を受け止める。
「むはー! 女じゃー!」
オークはネプギアと鍔迫り合いをしながらも、ネプギアを見て興奮しているようだ。
「この変態! ネプギアを変な目で見るな!」
ズキューン!
「ぶひぃ!」
ユニの放った銃弾が競り合い中のオークの頭に当たると、2554のダメージが当たる。
「光の雨よ、邪悪な者を浄化せよ!! シャイニングレイン!」
続けてラムの光の魔法の雨がオークに降り注ぐ。
「むひょー!」
2357のダメージを受けて悲鳴を上げるオーク。
「えっ! これでも倒せないの?」
ネプギアが仲間の連続攻撃で消滅しないオークに驚く。
熟練の戦士であるトールは二発で倒したが、ネプギア達ではそうはいかないらしい。
「今度はこっちの番じゃ~!」
「あうっ!」
驚いて隙を見せたネプギアは、鍔迫り合いに負けて吹き飛ばされてしまう。
その隙にオークが襲い掛かる。
「くっ!」
急いで武器を構え直すネプギア。
「そうはいかないよ!」
ネプギアとオークの間にファルコムが割って入る。
ザシュ!
ファルコムのドラゴンスレイヤーがオークを縦に真っ二つに斬ると3158のダメージが当たる。
「おおお! まだ何もしてないのに~」
オークは無念の声を上げて戦闘不能になる。
「助かりました。流石はファルコムさんです」
ファルコムにお礼を言うネプギア。
ファルコムの強さは仲間の中でも抜き出ている。
ネプギア達が変身をしなければファルコムが一番の実力者であろう。
「ネプギアさん、オークは少し手強いようです。ファルコムさんとトールさんを中心に私達はバックアップに回りましょう」
イストワールがネプギアに声を掛けると、「わかりました」とネプギアは素直に頷く。
「ぐふふふ……女がいっぱいじゃ~」
「女を襲うことこそオークの本懐だぁ~」
「どの女から楽しもうか~」
「クンカクンカ!」
オーク達はネプギア達を見て興奮をしているようだった。
「やれやれ……女性を口説くときはTPOをわきまえるべきじゃぞ」
オーディンが本能丸出しのオークたちに苦言を言うが、「じいさん、あいつ等にそんなこと言っても無駄だよ」とトールが吐き捨てるように言う。
「女性の楽しみはアレだけじゃないんじゃがな……仕方ない。グングニル!」
オーディンがそう言うと、オーディンの目の前に巨大な槍が現れて一瞬でオークに向けて飛んで行く。
「グヒーーー!」
オークが二人串刺しになって、1万以上のダメージが出て消滅する。
「うっそー! おじいちゃん強い!?」
「……すごい……」
ロムとラムが驚きの眼差しでオーディンを見る。
「このじいさん、こう見えてもなかなかの実力者だぜ」
トールが言うと、「うーん、トールが言うなら信じるけどさー」とラムが、「うん、信じてみる」とロムが言う。
彼女達はトールが言うなら信じるようだ。
それまでに昨晩にネプギアに読んで貰った本に出て来る彼の祖先【ザッハ】の活躍は目覚ましかったのだった。
「なんじゃこの温度差は? ワシも獣人に転生すれば良かったの」
オーディン肩を落としながら言うと、「まあまあ、気を落とさないで下さい」とネプギアがフォローを入れる。
「ほら、遊んでないでファルコムをフォローして!」
その間にもファルコムは大勢のオーク相手に大立ち回りをしていて、それをユニが狙撃でフォローしていた。
「あっ、ごめん! ……炎の力よ我が意志に応えよ……行きます、フレア・トルネイド!」
ネプギアはユニに一言謝ると魔法を唱える。
するとオークの足元に炎の魔方陣が浮かび上がる。
「あちちち!」
足元を焼かれて慌てるオーク達。
【フレア・トルネイド】はゲームの四女神オンラインに出て来た魔法を、ネプギアが実戦向きに調整したものだ。
指定した地点にペンネルが炎の魔方陣を素早く描き、その地点を激しい炎で包む。
オーク達はフレア・トルネイドで2000以上のダメージを受ける。
「ナイスサポート!」
そこにファルコムがドラゴンスレイヤーで次々と攻撃すると3000以上のダメージを受けてオーク達が戦闘不能になる。
「俺も行くぜ!」
「ワシも頑張っちゃうぞ」
トールとオーディンがオークに向かって攻撃を仕掛けると、次々にオークが戦闘不能になってその数を減らして行く。
「わー! みんな強ーい!」
「すごい」
ファルコムとトールとオーディンの活躍に大喜びなロムとラム。
「これなら変身できなくてもなんとかなりそうだね」
「そうね」
ネプギアとユニも一息ついていた。
「お嬢ちゃん、油断はしちゃいかん。まだとてつもない邪悪な気が残っておる」
オーディンが厳しい顔で言う。
「邪悪な気ですか……」
イストワールが首を傾げる。
「Nギアのレーダーにもパターン赤になるようなボスモンスターはいないですよ」
ネプギアも怪訝な顔をする。
「いやいや! 間違いないぞい。しかもこの気……まさか奴が……」
オーディンの顔が更に厳しくなる。
「……おじいちゃん凄く真剣……」
ロムもその雰囲気に感化されたようだ。
「くるぞ!」
オーディンがそう言うと、森の奥から豪奢な装飾をした人影が姿を現す。
「おい! オーク共! しっかり働け、押されてるぞ!」
その人影は劣勢なオークたちを叱りつける。
「一体どんな敵が……」
ごくりと唾を飲むイストワール。
「すいません。ロキの旦那、こいつ等手強くて」
オークの一人がその人影を【ロキ】と呼ぶ。
「やはり貴様かロキ! ここで会ったが百年目じゃ! グングニルっ!」
オーディンがロキに向かってグングニルを飛ばす。
「おっと……」
人影は飛んできたグングニルを華麗に避ける。
「むむむ……グングニルを避けるとは間違いないわい!」
オーディンの顔が怒りに歪む。
「……まさかこの世界でもグングニルを見ることになるとは……貴様との悪縁は断ち切れないらしいなオーディン」
ロキの声も怒りで満ちていた。
「なんか凄いライバル関係みたいだね」
ネプギアが二人のやり取りを真剣に見つける。
「……うん……そうみたいなんだけどさ……」
ユニも真剣に見つけているが少し首を傾げている
「けど? どうしたの?」
ネプギアがユニに尋ねる。
「あのロキって奴……ゴブリンよね?」
ユニがロキを指差す。確かにロキは豪奢な装飾をしていたが、その姿は間違いなくゴブリンだった。
「なんでゴブリンがあんなに偉そうなの?」
「不思議……」
ロムとラムも首を傾げている。
「ぎゃははははは! ゴブリンとはまた醜い姿に転生したものだの!」
さっきまで真剣な表情だったオーディンが大笑いを始める。
「うるせぇ、ジジイ。貴様だってちっぽけな妖精なんぞになりやがって」
ロキも負けずにオーディンを罵るが、「ワシ、プリティじゃもん」とオーディンはロキを挑発するように可愛らしいポーズを取る。
「ちいっ! やっちまえ!」
ロキはモンスター達に指示を飛ばすと奥から更に百匹近い大量のゴブリンとオークが出てくる。
「えっ! まだこんなに? レーダには映ってなかったのに!」
敵の数に驚くネプギア。
「俺の魔法の前にはそんなものは役に立たん」
ロキが勝ち誇ったように断言する。
「相変わらず、汚い手に関しては天才的じゃな」
オーディンが苦虫を噛み潰したように言う。
大量のオークとゴブリンに囲まれるネプギア達。
「へへっ、これなら行けそうだぜ」
「流石はロキの旦那ちゅ」
ゴブリンとオークに紛れて見覚えのある顔が出てくる。
「下っ端?」
「それに悪者ネズミ」
ロムとラムが驚く。
「悪者同士気が合うってことかしらね」
ユニが鬱陶しそうに言う。
「ギギッ!!」
「うごー!」
「ぶひー!」
大勢のゴブリンとオークが一斉に襲い掛かる。
「くっ!」
「がるるるる!」
ファルコムとトールが懸命に応戦するが多勢に無勢で、ゴブリンとオークに囲まれた二人のHPゲージはジワジワと減少していた。
「攻撃しても攻撃しても数が減らないわ!」
ラムが焦りの声を上げると、「むぅっ! 劣勢じゃわい」とオーディンも焦っている。
「こんな時、変身出来れば……」
ネプギアが悔しそうに言う。
変身しようとしているのだが、体が反応しないのだ。
「とにかく、撃って撃って撃ちまくるのよ!」
ユニが叫ぶ。
彼女も変身できずに焦りが募っているようだ。
「ファルコムさん達を回復しなきゃ(おろおろ)」
ロムが慌てながら回復魔法を唱えようとするが、「そうはさせぬ!」とロキが右手から黒い光線を放つ。
「きゃっ!?」
光線の当たったロムは432のダメージを受けてHPゲージが七割減少してしまう。
更にロキは光線で執拗にロムを牽制して、回復魔法を唱える時間を与えない。
「やだ、来ないで……」
涙目で逃げ回るロム。
「ロムちゃん、今回復するよ!」
ネプギアは慌ててロムに回復魔法をかけてHPを全快させるが、その間にもファルコムとトールのHPゲージは減少し続けていった。
「よし! このまま数で圧して回復役と攻撃役を分断しろ!」
ロキがそう指示すると、「「「おおーーー!!」」」とオークとゴブリンがいきり立つ。
「いけません! 分断されたら、回復魔法が届かなくなります」
イストワールが、焦りの声を上げる。
「あの、ロキってヤツ、見た目はゴブリンなのに出来るわね」
ユニがそう言いながら舌打ちすると、「ロムちゃん、私が盾になるから、早くファルコムさん達に回復魔法を!」とネプギアがロムを守るように立つ。
「遅えんだよ!」
下っ端がそう言いながら、オークとゴブリンを率いてネプギアに集中攻撃を掛けて来る。
「あうっ!?」
下っ端の鉄パイプで殴られたネプギアは、358のダメージを受ける。
「むはーー! 女じゃー!」
オークの棍棒で殴られ、「ぐっ……」と呻き声を上げつつ312のダメージを受けるネプギア。
「ギギーーーーッ!」
ゴブリンの短刀で切り裂かれ、「きゃっ!」と悲鳴を上げて、254のダメージを受けたネプギアはあっという間にHPゲージが残り二割近くになってしまう。
「ネプギアちゃん! なおしてあげる!」
ロムは思わず、トールとファルコムの為に唱えていた回復魔法をネプギアに使ってしまう。
ネプギアのHPは最大値まで回復するが、ファルコム達の状況は悪化の一途を辿って行く。
「あーははははは! ザマぁねぇな!」
下っ端が勝ち誇った笑いを上げる。
(どうしよう、数が違い過ぎる。このままじゃ……)
ネプギアがそう思った時だった。
「ギイイイイイイイイ!」
ひと際大きいゴブリンの叫び声が聞こえる。
「まだ援軍が!?」
愕然とするネプギア。
「ぬ? なんだこの声は……」
しかし、ロキにもこの声は聞き覚えがないらしい。
「おい、どうしたゴブリン共、なんで止まる?」
ゴブリンの動きが急に止まりだす。
それを不審に思う下っ端。
「キュゥゥゥゥゥ!」
再びゴブリンの大声が聞こえる。
「戦闘停止だと、ふざけるな誰に命令をしている!」
ロキが焦ったように声を上げる。
どうやらゴブリンの大声が戦いを止めるように言っているらしい。
「今の内にファルコムさん達を!」
ネプギアがそう言うと、ネプギア達はオークの群れに苦戦しているファルコムとトールを救援して合流をすると、素早く回復魔法を使う。
「助かったよ!」
「すまん!」
お礼を言うファルコムとトール。
「一体何が起きたの?」
ユニが不思議そうな顔で尋ねると、「わからない」とネプギアが首を左右に振る。
「でも、助かったことは事実だよ」
ネプギアがそう言うと、「助かったのはいいけど、これから、どうする?」とユニがネプギアに質問する。
「少し様子をみよう。戦う意志のない相手と戦うなんて、女神としてしちゃいけないことだと思うから」
ネプギアがそう言うと、木々が【がさっ】と揺れる。
「誰!?」
ラムが叫ぶと、「ぎぎっ、ぎぎっ!」と鳴いて森の中から少し大きめなゴブリンと見覚えのある人物が現れる。
「待たせたな、ぎあっち」
「ヤッホー、ネプギア」
「うずめさん! それに大きいお姉ちゃん」
その人物は以前に零次元でゴブりんを預けた、天王星うずめと大きいネプテューヌ、それにクロワールであった。
「うずめの隣にいるってことは……そのゴブリン、あの時のゴブリンなの?」
ユニが不思議そうに言う。
「なんか顔つきが変わってるわ」
「優しい感じがする」
ロムとラムがゴブりんの顔を見て言う。
「ぎぎっ、ぎぎっ! ぎー、ぎー、ぎー!」
ゴブりんが敵のゴブリンに向かって何かを一生懸命訴えている。
「なんて言ってるの?」
ユニが首を傾げる。
「戦いを止めて零次元に来いって言ってるんだよ」
うずめが解説をする。
「わかるんですか?」
ネプギアは驚いたよう言う。
「いや、なんとなくそう言ってる気がするんだよ」
うずめはネプギアに答える。
「しかし、ゴブリンが争いを止めるなんて……」
イストワールが首を傾げる。
「ゴブリンだって好き好んで悪さをしてるんじゃないんだ。大昔から悪者ってレッテル貼られて、生きるために仕方なくやってるんだよ」
うすめがイストワールに説明をする。
「そうなの?」
「知らなかった」
ロムとラムが不思議そうに首を傾げる。
「俺はそう思うんだ。だから、住む場所や、やり直せる環境が無いなら零次元で面倒見てやるって毎日のように言ってやったんだ。そしたら今日になって急に超次元に飛び出して行って……追いかけたら、ぎあっちがゴブリン達と戦ってるって言うから、でっかいねぷっちの力で急いで駆け付けたんだ」
うずめがこれまでの経緯を説明すると、「ネプテューヌの力じゃなくて、俺の力だ。まったく人を便利に使いやがって」とクロワールが愚痴を言う。
「ぎー、ぎぎぎー、ぎー!」
その間にもゴブりんによる、敵のゴブリンの説得が続いていた。
「「「「ぎーーーーーー!」」」」」
すると大勢のゴブリンが雄叫びと共に武器を捨てる。
「説得が通じた?」
ユニが驚きの声を上げる。
「わ、ゴブりんって人望あるのかも」
ネプギアも驚いたようだ。
「貴様等! お前らの王は誰だと思っているんだ!」
ロキがゴブリン達を叱りつける。
「ききっききっききっ!」
しかし、ゴブリンはロキの言うことを無視してゴブりんの方に向かう。
「くそっ、雑兵など捨ててやるわ。行けオーク共!」
ロキは残ったオークに指示を出す。
「お、おらも零次元に行きたいだ!」
しかし、オークの一人が声を上げる。
「なにぃ! 貴様オークの誇りはどうした! 略奪、凌辱、暴力がオークの三美徳だぞ!」
それに対して残りのオークが怒り出す。
「オレも零次元に行く! 真面目に暮らしてぇ!」
続けて別のオークも叫ぶ。
「仲間を裏切るのかー!」
「もうお前達との悪縁はこりごりだ! 俺も生まれ変わりたい!」
ゴブリン語を理解したオークの中でも内乱が起きているようだった。
「ちぃぃぃ!」
唇を噛むロキ。
「勝負あったなロキ、貴様のやり方では人は付いてこない。お前はバルドルを謀殺してラグナロクを起こしても何も学ばなかったのか?」
オーディンがロキに諭すように言う。
「黙れ! 撤退だ!」
ロキはそう言って逃げ去る。
「おい! ちょっと待て、あたい達を置いて行くな」
「逃げるっちゅー」
下っ端とワレチュー、それに僅かなオークがロキに付いて行く。
「あれだけの威勢を誇ってたのに惨めなものね」
ユニがロキ達の後ろ姿を見て言うと、「何だか少し可哀想な気がするね」とネプギアがそれに続いて言う。
「あんな奴に情けを掛けるとはお嬢ちゃんは優しいのぉ」
オーディンが感心すると、「ネプギアはお人よしだから仕方ないのよ」とラムが微笑みながら言い、「……でも、そんなところが好き(ぽっ)」とロムが頬を赤く染める。
「……そうか……そう言われてみればお嬢ちゃんはバルドルに雰囲気が似ている気がするのぉ」
オーディンがネプギアを眺めながら言う。
「バルドル?」
ネプギアがそう言って首を傾げると、「神だった頃のワシの息子じゃ。光の神で美しのバルドル、善良のバルドルと呼ばれ、美しく聡明で誰からも愛されておった……」とオーディンが少し寂しそうに言う。
「そう言えば、さっきロキに謀殺されたって言ってたわね……」
話の流れを察したユニが同情するかのように悲しそうな声で言う。
「ワシの驕りのせいじゃ……」
オーディンはそう呟くと、そのまま黙ってしまう。
「とりあえず、これで工事を邪魔するオークとゴブリンは追い払えましたね」
イストワールにホッとしたように言う。
「うずめさんのおかげです。ありがとうございました」
ネプギアはうずめに丁寧にお辞儀をする。
「なーに、俺は大したことしてねぇよ。ゴブりんを助けたぎあっちと、その思いに応えてくれたゴブりんの成果だ」
うずめは手を腰に当てながら答える。
「でも、本当に善いゴブリンなんていたのね」
ユニが驚いたように言うと、「うん、やっぱりネプギアちゃんは凄い(こくこく)」とロムがしきりに頷き、「それに真面目なオークがいるなんてビックリよ」とラムが驚いた声を上げる。
「うずめさん、本当に彼等を零次元で面倒を見るのですか?」
イストワールが怪訝な顔をする。
「天王星うずめに二言はねぇ。ゴブリンやオークが超次元でやり直せねぇなら、零次元で面倒見てやる!」
うずめは迷いなく大声で言う。
ワァァァァァァァ!
その途端に説得に応じたゴブリンとオークから歓声が沸き起こる。
「うずめさん、すっかり人気者ですね」
ネプギアが感心をすると、「あはは……なんか照れるな。サンキューな、ぎあっち」とうずめは頭を掻きながらネプギアにお礼を言う。
「私、お礼を言われるようなことはしてないですよ」
ネプギアは、うずめに手のひらを向けると左右に振って謙遜する。
「ぎあっちのお陰でコイツ等と出会えた。海男やスライヌやひよこ虫達も大事な仲間だけど、やっぱ人型って言うのは便利だよな、農作業とか捗るし。零次元も賑やかになるぜ」
うずめは嬉しそうに言う。
「それは良かったです。うずめさんも零次元の復興頑張って下さいね」
ネプギアは嬉しそうに答える。
「じゃ、俺はコイツ等を連れて零次元に帰るから、ここでな」
うずめはそう言うとクロワールの作ったワープゲートの中に入って行く。
「またねー、うずめ!」
「ばいばい」
ロムとラムが、うずめに向けて手を振る。
「うずめも頑張ってるのね。アタシ達も頑張らなきゃ」
「そうだね」
ユニの言葉に応えるネプギア。
「これは流石の私もゴブリン達に対する認識を改めざるを得ないですね」
イストワールがネプギアを眺めながら言う。
その後、逆方向で戦っていたエルフとドワーフと合流して作戦は無事に成功したのであった。