新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
ロキ達を追い払ってから約一週間後。
G.C.2019年9月11日 水曜日。
ネプギア達女神候補生とファミ通はルートビルド計画をイストワールを中心とした仲間に任せて、月一度の神次元への訪問に来ていた。
前日に書類の決裁を済ませて、今日の討伐クエストも完了していた。
「むー! やっぱり納得いかなーい! 何でボークが無罪放免なのよー!」
ラムが頬を膨らませながら両手を上げて不満を露わにすると、「納得できない(ぷんぷん)」とロムもそれに続く。
「現行犯逮捕での真っ黒なのに無罪なんてね……正直なところ公表して世論に問いたいところだよ」
ファミ通も納得が行かないような不満気な表情で言う。
「でも、そうすると超次元の人達が神次元の人達に悪印象を抱いてしまいます」
ネプギアの言う通りボークはネプテューヌに超次元のノワール、ブラン、ベールの悪口をネットで言わせた罪、不敬罪の幇助で投獄されていた。
そのボークが無罪放免となると悪口を言われた三人の女神とその信者が黙っていないだろう。
「あんな奴、とっとと死刑にでもしておけばよかったのよ」
そう言ってユニが憤ると、「ユニ様の気持ちは分かるけど、今は中世じゃないんだ。不敬罪だけで死刑にしたら、市民に不安が広がるよ」とファミ通が答える。
「申し訳ございません。全ては私どもの力不足です」
アレスター家のレイがネプギアの前で跪いて頭を下げる。
レイは神次元のプラネテューヌの女神候補生派の最高責任者であり、神次元のイストワールに次ぐ権力者なのだ。
彼はボークの無罪放免を止められなかったことを非常に悔いていた。
「頭を上げて下さい。レイさんは精一杯やってくれました」
ネプギアは女神の威厳と優しさを併せ持った凛とした声で、右手をレイの右肩に乗せる。
「ありがたき、お言葉! しかし、ボークの所為で女神様達のお手を煩わせてしまいました」
レイがそう言うと、「ウンザリするぐらい無茶苦茶な案件が大量にあったけど、アレ全部ボークの仕業よね」とユニが文字通りウンザリした声で言う。
ユニの言う通り、昨日の書類の決裁では無理難題な案件が山のようにあったのである。
勿論、全部否認にしたのだが。
「……ボークは人への嫌がらせは得意ですから」
レイの妻のユリィが疲れた声で言う。
その姿はボークの行動に辟易しているようだ。
娘のエレノアはそんな両親の姿を見ると、「ネプギア様、少しだけお時間よろしいですか?」とネプギアに声を掛ける。
「いいけど、どうしたの? エレノアちゃん」
ネプギアはそう言うと、エレノアの後に付いて廊下に出て行く。
廊下に出たネプギアとエレノア。
エレノアはネプギアの胸に飛び込んでくる。
「エレノアちゃん?」
ネプギアは驚きながらも優しくエレノアを抱きしめる。
エレノアは泣いていた。
「……先生……助けて下さい。ボークとイクスとプルルートの所為で、お父さんもお母さんもイストワール様もボロボロなんです……」
エレノアが嗚咽を漏らしながらネプギアに懇願していた。
「エレノアちゃん……分かったよ、私が……」
ネプギアがそこまで言うと、「なーにをするつもりなのかなー?」とネプギアをからかうような声が聞こえてくる。
同時に空間がぐにゃりと歪むと、黒紫色の鳥が現れる。
「イクス!!」
エレノアが怒りを込めた声で叫ぶ。
「イクス? あれが……」
ネプギアはイクスを見ると、「よー、今回は初めましてだよな。ネプギアちゃん」とイクスと呼ばれた鳥が喋る。
「あたしの名前はイクス。趣味はネプギアちゃんを苦しめること、ってことで今後ともよろしく!」
イクスが軽いノリでそう言うと「おのれ、不埒な。今日こそは!」とエレノアが剣を抜いてイクスに斬りかかる。
イクスはそれをひらりと避けると、「おっと、危ない危ない。これはお返しだよ」と言ってエレノアに黒い弾を飛ばす。
「きゃっ!?」
黒い弾に当たった衝撃で吹き飛ばされるエレノア。
壁に衝突して倒れてしまう。
「エレノアちゃん!」
ネプギアがエレノアを助け起こすと同時に、「何事だ!」とレイが廊下に出てくる。
レイに続いて他のメンバーも次々と廊下に出てくる。
「おーおー、団体様っすなあ」
イクスがおどけたように言うと、「イクス! あなたの目的は何ですか!?」とネプギアがイクスを睨みつける。
「質問を質問で返すのは感心しないな、優等生のネプギアちゃん。先にあたしが何をするつもりなのかなーって質問したんだろ?」
イクスが余裕の表情で言うと、「プルルートさんと直接話しをします。あなたやボークに惑わされないでと」とネプギアが答える。
「おーおー、まずは話し合いって奴ですか? 本当に優等生っすなあ~。でも、話し合いってのは対等な力関係じゃないと成り立たないんだよ~ん」
イクスがネプギアをからかうように言うと、「なによコイツ! 何様なの!」とユニが怒りを露わにする。
「奴がボークを解放した主犯のイクスです!」
ユリィの言葉に、「コイツがっ!」とユニがイクスに銃を向ける。
「おー、怖い怖い。でも、あたしに手を出したら、プルルートちゃんが黙ってないよー」
イクスがおどけたように言うと、「だから、プルルートさんに……」とネプギアが言うと、「おいおい、あたしの話聞いてた? 話し合いってのは対等な力関係じゃないと成り立たないんだよ。女神化できない今のお前が行っても、プルルートちゃんのオモチャになるだけだって、まぁ、それはそれで面白そうだけどな」とイクスがネプギアの言葉を遮る。
「くっ……」
悔しそうに唇を噛むネプギア。
「いいねいいね、その表情。最高の気分だ! ご褒美にあたしの目的を教えてやるよ」
イクスはそう言うと今までのおどけた態度から一変して殺意の籠った目でネプギアを睨む。
「あたしの目的はネプギア! テメェを苦しめに苦しめて殺すことだ。テメェに最高のバッドエンドをプレゼントしてやるぜ!」
イクスがそう言うと、「私を苦しめたいなら、直接私を攻撃して下さい! 関係ない人に手を出すのは止めて下さい!」とネプギアが叫ぶ。
「いーやだね。テメェみたいなタイプは直接苦しめるよりも、周りの人間を苦しめた方が効果的なんだ」
イクスがそう言うと、「最っ低ねアンタ!」とユニが憎しみを込めた声で言う。
緊迫した空気に、「ちょっとー、イクスー? どこ行ったの?」と陽気な声が聞こえて来る。
「お姉ちゃん?」
ネプギアが声でネプテューヌだと気付くと、その通りネプテューヌが廊下の向こうからやって来て、「あれ? ネプギア?」と不思議そうな顔で首を傾げる。
「やー、ネプテューヌちゃ~ん、ネプギアちゃんがあたしのことイジメるのー。もう辛かったわー」
イクスはさめざめとした声で言うと、ネプテューヌの胸に飛び込む。
「もー、ダメだよ、ネプギア。イジメはカッコ悪いよ」
ネプテューヌがイクスを大切そうに抱きしめながらそう言うと、「お姉ちゃん! 何で!?」とネプギアが驚きと悲しみの入り混じった声を上げる。
「いいねいいね、その反応。信じて送り出した姉が敵側に寝返ってましたーってか」
イクスが楽しそうにそう言うと、ネプテューヌはイクスを置いてネプギアに近づく。
「お姉ちゃん……ウソだよね……」
愕然とネプギアに近づくネプテューヌ。
ネプテューヌはネプギアの側まで来ると、そっとネプギアに、「ごめん、ネプギア。わたしでも今のぷるるんは止められなかったよ」と耳打ちする。
「えっ?」
驚きの声を上げるネプギア。
「イクスにも言われたんじゃないかな? 話し合いってのは対等な力関係じゃないと成り立たないとか……だから、ネプギアが変身出来るようになるまで、わたしがぷるるんとイクスを監視するよ」
「お姉ち……」
ネプギアがそこまで言いかけると、「そう言うことだから、ネプギアはわたしの言うこと聞いてればいんだよ!」とネプテューヌが大声で遮る。
「話はついたかなー? ってことだから、あたし達のことは、アンタッチャブルってことでヨロシク! せいぜいこの街の税金吸い上げてよ、あたし達の為に」
イクスが嬉しそうに言うと、「……わかりました」とネプギアが言う。
「ネプギア!?」
ユニが驚きの声を上げるが、「お願いユニちゃん、私を信じて……」とネプギアが辛そうな声で言う。
「……わかったわ。ロム、ラム行きましょう」
ユニがそう言うと、ラムはイクスの方を向いて、「なによー! アンポンタンブルだかゴーヤチャンプルだか知らないけど、アンタなんて大っ嫌いよー!」と憤慨し、「ゴーヤは苦いから嫌(ふるふる)」とロムが言う。
「アンタッチャブルよ。アンタッチャブルって言うのは、【手出しできない】って意味よ」
ユニの説明に、「うーー! くーやーしーい!」とラムが地団駄を踏むと、「ラムちゃん、ネプギアちゃんを信じようよ」とロムが言う。
「今日はラッキーだなー。ネプギアちゃんの辛そうな顔も見れたし。と、言うわけでさよならー」
イクスはそう言うとネプテューヌと一緒に去っていく。
「ごめんね、エレノアちゃん、私に力が無いばっかりに……」
ネプギアがそう言うと、「私の方こそ申し訳ございません。イクスの言う通りです、ネプギア様達が再び変身できるようになってプルルートと対等に話せるようになるまで、私達がプラネテューヌを守ります」とエレノアがかしづきながら言う。
続いて、レイとユリィもかしづくと、「プラネテューヌは私共にお任せ下さい」とレイが、「ネプギア様は力を蓄えることを第一にお考え下さい」とユリィが言う。
「ありがとうございます。その言葉に甘えさえていただきます」
ネプギアはアレスター家の三人にそう言うと、(……待っててね、お姉ちゃん。私が絶対に助けてあげるから)と心の中で誓った。
***
その頃、ネプテューヌとイクスは悠々と廊下を歩いていた。
「いやー、いい演技だったよ、ネプテューヌちゃん」
イクスが嬉しそうにそう言うと、「いいっていいって。イクスにはお世話になってるからね」とネプテューヌが陽気に答える。
「くくく……待ってろよ、ネプギア。今日の事なんて前菜にもならないってことを教えてやる」
イクスはそう言うと楽しそうに笑った。
***
翌日。G.C.2019年9月12日 木曜日。
クエストと配給を終わらせたネプギア達は妖精の里を訪れていた。
「ロムちゃんや、この子が言っていることがわかるかね?」
オーディンが小さな花を指差す。
「……うん、【いつもお世話してくれてありがとう】って感謝してる」
ロムは真っ直ぐな瞳でオーディンに答える。
「よしよし……、次はラムちゃんじゃ。この子はなんと言ってるかね?」
オーディンがてんとう虫を指差す。
「はーい! 【お腹空いた】って言ってるー!」
ラムも純粋な瞳でオーディンに答える。
「うんうん、二人とも完全にマスターしてるの」
自分の質問に答えたロムとラムに嬉しそうにするオーディン。
「本当に昆虫や植物の言っていることが分かるの?」
少し離れた場所でユニが怪訝な顔をする。
「今更疑っても仕方ないよ。現にロムちゃんとラムちゃんも分かるって言ってるんだから」
その隣のネプギアがユニの疑問に答える。
「オーディン族長ってああ見えてもかなりの勉強家なのよ。九日間飲まず食わずで勉強したりするし」
その横のティータがネプギア達に言う。
「……私に言葉を教えてくれたのもオーディン様」
エレナがオーディンに感謝の言葉を言う。
「ルーン文字の秘密を解いたワシにかかれば、植物言うことも昆虫の言うことも、まる分かりじゃ」
ネプギア達の会話が聞こえたオーディンが答える。
「しかし、ワシの教えを一週間でマスターするとはな。まったく、幼女は最高じゃな!」
オーディンはロムとラムを見ながら興奮して言う。
「あれでロリコンの女好きじゃなければねー……」
ティータが残念なものを見る目でオーディンを見る。
「残念なイケオジってところね」
ユニもそれに共感する。
「えーと……誰にでも欠点の一つや二つあるものだし……」
ネプギアがフォローしてるんだか、してないだか分からない台詞を言う。
「ロムちゃん、ラムちゃん、卒業の記念にこれをやろう」
オーディンがロムとラムに野球ボールのような玉を渡す。
「なにこれ?」
「まんまる」
ロムとラムはそのボールをしげしげと観察する。
「ロムちゃんに渡したのが植物の力を持つ珠。ラムちゃんに渡したのが昆虫の力を持つ珠じゃ。その玉に魔力を注ぐと巨大化した植物と昆虫が力貸してくれるぞい」
オーディンが説明をする。
「へー、ポシェモンみたい! わたしは虫タイプね」
「面白そう。わたしは草タイプだね」
ロムとラムが嬉しそうに目を輝かせる。
ちなみに【ポシェモン】では、ポシェモンボールというボールの中にポシェモンを飼っているのだ。
「面白半分に使ってはいかんぞ。植物と昆虫の心を理解できたロムちゃんとラムちゃんじゃから渡すんじゃ」
オーディンは少し真面目な顔でロムとラムに言う。
「はーい!」
「約束する(ぐっ)」
ロムとラムは素直に約束をする。
「じゃあ、指切りげんまんしようかのぉ……はぁはぁ……」
オーディンが興奮気味に左手の小指を差し出す。
「はーい、そこまでー」
ユニがオーディンの服を背後から猫掴みする。
小さい妖精のオーディンは正に子猫のようである。
「オーディン族長、ご高論ありがとうございましたー」
ティータが感情のこもっていない声で抗議の終了を宣言する。
「先っちょ、先っちょだけでいいんじゃ~」
オーディンは見苦しくジタバタする。
「はい、アウトー」
ティータがどこからか取り出したロープでオーディンを簀巻きにする。
「わー、おじいちゃんグルグル巻きー」
「すまき」
ロムとラムは何かの遊びと勘違いしてオーディンを楽しそうに見る。
「ところで、あれからロキは現れておらんかの?」
オーディンは猫掴みで、簀巻きになりながら話を変えてくる。
「いえ、あれ以来オークもゴブリンも大人しくて、下っ端達も見かけた情報がありません」
ネプギアが素直にオーディンの質問に答える。
「ふぅむ……」
オーディンは何か考え込んでいるようだ。
「仲間に見捨てられたゴブリンなんて気にすることないんじゃないですか?」
ティータがオーディンに言う。
「おぬしはロキの邪悪さと狡猾さを知らんのだ。あ奴のことじゃ、今もどこかでダークドラゴンを復活させる悪だくみをしているのだろう」
オーディンは考え込みながら言う。
「ダークドラゴンが復活しても、わたし達が倒しちゃうわよ」
「うん、わたし達なら大丈夫」
ロムとラムは自信満々に答える。
「主神のワシに出来ないことはない……そんなふうに考えていた時期がワシにもありました。しかし、その慢心がロキの暗躍を許しラグナロクを招いたのじゃ」
オーディンは悲しそうに言う。
「オーディンさんに何があったかは知りませんが、私達がゲイムギョウ界を護る為に全力を尽くします」
ネプギアが真っ直ぐな瞳でオーディンを見る。
「……今出来ることに全力で取り込むか……若さとは素晴らしいのぉ……」
オーディンはネプギアの言葉に少し元気を取り戻したようだった。
「私はまだ未熟で頼りないかもしれませんが、ユニちゃんもロムちゃんとラムちゃんも居ます。それにいざとなったらお姉ちゃん達もいますから」
ネプギアはオーディンを安心させるように話を続ける。
「うむうむ……優しくて真面目、ネプギアちゃんは本当にバルドルに似ておる」
オーディンは懐かしい者を見るような目でネプギアを見つめる。
「オーディンさんが安心してくれたみたいで良かったです」
ネプギアが嬉しそうに言う。
「ところでワシ、ネプギアちゃんにも惚れちゃったみたいじゃ。ここらで世界を護るという指切りげんまんをしてくれんかの」
オーディンは簀巻きになりながらも根性で縄の隙間から小指を出す。
「え、えーと……」
困惑するネプギア。
「先っちょ、先っちょだけでいいんじゃ!」
懸命に訴えるオーディン。
「あ、手が滑った」
オーディンを猫掴みしていたユニが無情にもオーディンを地面に叩き落とす。
べしゃっ!
「あべし」
簀巻きで受け身も取れないオーディンはなんとも言えない悲鳴を上げる。
「足も滑った」
ぐしゃっ!
続けざまに右足でオーディンを踏み潰すユニ。
「たわば!」
更に悲鳴を上げるオーディン。
「さ、帰りましょ」
ユニは踵を返し妖精の里の出口に向かう。
「ユニちゃん待ってー! あっ、今日もお世話になりました」
ユニを追いかけながらも一礼を忘れないネプギア。
「またねー!」
「ばいばい」
ロムとラムもそれに続く。
「やれやれ……こりゃラグナロクより酷いわい……」
オーディンはぐってりしながら愚痴をこぼす。
「族長が悪いんですよ」
ティータは怒ってそのまま去って行ってしまう。
「すまんがエレナ、縄を解いてくれんかの?」
オーディンはエレナに懇願する。
「はい、少し反省した方が良いですよ」
エレナは素直に縄を解く。
「そうじゃの。同じ過ちを繰り返さんようにせんと」
オーディンはしみじみとそう言う。