新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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004女神候補生と楽器

 サクラナミキのクエストの翌日。

 

G.C.2019年4月8日土曜日。

 

 ネプギアによりサクラナミキの桜が満開になり、その活躍はプラネテューヌを熱狂させた。

 

人々はネプギアの活躍に感謝し、お花見を楽しんだ。

 

ネプギアの元にもファミ通以外の取材の依頼も沢山来たが、ネプギアはそれを広報担当に全て任せて、ネプテューヌとイストワールと共にプラネタワーの開発室に籠っていた。

 

 

「ねーねー、ネプギアぁー。お姉ちゃん言ったよね? 活躍した時はビシッとアピールした方が良いって」

 

 

 ネプテューヌが不満そうに椅子に座ってくるくる回りながら、ネプギアにお説教するように言う。

 

それに対してネプギアは真剣にパソコンに向かってデータを打ち込んでいる。

 

 

「それに、プラエちゃんだって寂しそうだったよ? こういう時はプリンジョッキ持ってお花見するのが筋じゃない」

 

 

 ネプテューヌが言うように、ネプギアはプラエの『お花見に行きたい』ってお願いを丁重に断ったのだ。

その代わりにネプギアンダムにプラエの面倒を見て貰っている。

 

 

「ネプギアって、飲みニケーションが出来ない子? ダメだよー、人との親睦はプリンで深めるものなんだから」

 

 

 ネプテューヌがオジサン臭い言葉を使うと、イストワールが、「ネプテューヌさん、少し黙っていて下さい。国家機密に関わる大事な話なんです」と眉を吊り上げながら言う。

 

 

「そんなこと言われても、こういう時はパーッと騒いで……」

 

 

 ネプテューヌがそこまで言うと、開発室の自動ドアが開く。

 

ネプテューヌが開いたドアを見ると二人の女性が立っていた。

 

 

「あれ? ビーシャ」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、金髪で黄色い服を着た、短めのツインテールの少女が、「やっほー、ねぷねぷ。久しぶりぃ」と軽い感じで挨拶をする。

 

ビーシャは天王星うずめの事件で知り合った、ゴールドサァドのメンバーで守護女神達と共に世界を救った勇者として尊敬されている。

 

 

「もう一人は誰子ちゃん?」

 

 

 ネプテューヌはそう言いながら首を捻る。茶髪をポニーテールにして甲冑を着た寡黙そうな女性だ。

 

 

「ビーシャさん、エフーシャさん、お待ちしていました」

 

 

 ネプギアがそう言いながら席を立って一礼すると、「ちょっとー! ネプギア、お姉ちゃんのお説教はスルーでビーシャ達に挨拶ってどういうこと!? お姉ちゃん、ネプギアをそんな子に育てた覚えはないよー!」とネプテューヌが口を尖らせて猛抗議する。

 

「彼女は機械のことに集中すると周りの声が聞こえないことが多々ある。姉のお前なら、それぐらい知ってるんじゃないか?」

 

 

 エフーシャと呼ばれた女性がそう言うと、「それぐらい知ってるけどさ……」とネプテューヌが拗ねたように言う。

自分なりのジョークを冷静に返されたのが効いたようだ。

 

 

「あれ? もしかしてそれって今日はそれ系の話? わたし居る必要ある?」

 

 

 ネプテューヌはエフーシャの発言で今日は機械系の話をするのだと気付き露骨に嫌そうな顔をする。

ネプギアのする専門的な機械の話はネプテューヌには、ちんぷんかんぷんなのである。

 

 

「必要なんです! さっき説明しましたよね? プロセッサユニットに関する大事な話なんですよ!」

 

 

 イストワールが怒りながらそう言うと、「もうダメだ。プロセッサユニットの時点で分からない……」とネプテューヌが項垂れる。その姿は真っ白に燃え尽きたようだった。

 

 

「……お姉ちゃん、それぐらいは知っておいて欲しいかも……変身した時に周りに浮いてるアレだよ」

 

 

 ネプギアが脱力しながら、そう説明すると、「ああ、あの装備品ね」とネプテューヌが理解を示す。ゲームっぽく言えば何とか通じるのである。

 

 

「……ここの女神は本当に大丈夫なのか?」

 

 

 エフーシャが呆れたように言うと、「ねぷねぷは本気出せば凄いんだけどねー」とビーシャがフォローする。

 

 

「まぁいい。私は報酬分の仕事をするだけだ」

 

 

 エフーシャが冷めたように言うと、「流石はレイヴン。ドライだねー」とビーシャが茶化すように言うが、「でも、そこはわたしも同意見かな。金の切れ目が縁の切れ目って言うしね」とビーシャもエフーシャに同意する。

 

 

「ビーシャがお金にうるさいのは知ってるけど、その子も? あとレイヴンってなに?」

 

 

 ネプテューヌの質問に、「レイヴンって言うのは凄腕の傭兵さんのことだよ」とネプギア答えると「多額の報酬と引き換えにどんば依頼でも遂行する。と言う条件ですけどね」とイストワールが続く。

 

 

「ふっ……そんなに警戒しなくても、今のゲイムギョウ界で女神に牙をむくような馬鹿な真似はしないさ」

 

 

 エフーシャはそう言うと椅子に座り、「時間が惜しい。早速だが昨日はどうだった?」とエフーシャがネプギアに対して質問する。

 

 

「もの凄い力の高まりを感じました……今まで感じたことのないような凄さです」

 

 

 ネプギアが真剣な顔で答えると、「いや~ん。ネプギアってばお姉ちゃんの知らない間に、その子とそんな関係に?」とネプテューヌが身をくねらせながら茶々を入れる。

 

 

「何を想像しているんですかっ! プロセッサユニットの話に決まってるじゃないですか!」

 

 

 イストワールがネプテューヌにツッコミを入れると、「そうなの? でも、アレって性能しょっぱくない。パラメーター補正低いし、空を飛びたい時とかしか使わない感じ」とネプテューヌが答える。

 

 

「お姉ちゃん、あれはいーすんさんの作ったものなんだから……」

 

 

 ネプギアが小声でネプテューヌを忠告するが、「そっかー、ポンコツのいーすんが作ったんだから仕方ないよねー」とネプテューヌはネプギアの意図を全く理解していないような発言をする。

 

 

「それは、お前が機械の特性を理解せずに使っているからだろう」

 

 

 エフーシャがトゲのある言い方をすると、「そうなんだよねー。わたしって感覚派だから」とネプテューヌが照れたように言うが、「お姉ちゃん、褒められてない褒められてない」とネプギアにツッコミされる。

 

 

「そうか。やはり新作期で技術が進歩したか。ヘッドのFCSはどうだ?」

 

 

 エフーシャはネプテューヌを無視して話を進めようとすると、「ちょっとー! 主人公を無視とかありえなくない?」とネプテューヌが口を尖らせる。

 

 

「これ以上、お前が口を挟むなら追加の報酬をもらう」

 

 

 エフーシャが冷たく言い放つと、「ネプテューヌさん、少し静かにしていて下さい。話が進みません」とイストワールに言われてしまう。

 

 

「ガーン……」

 

 

 ネプテューヌがショックを受けていると、「悪いねー、ねぷねぷ。時は金なりって言うしさ」とビーシャが追い打ちをかけてくる。

ネプテューヌが静かになると、ネプギア、イストワール、エフーシャが専門的なプロセッサユニットの話を始める。

 

 

「まったく話に付いていけない、ネプ子さんに愛の手をー」

 

 

 ネプテューヌが寂しそうにそう言うと、「しょうがないなー、わたしがねぷねぷにも分かるように解説してあげよう」とビーシャが答える。

 

 

「おお! 流石はビーシャ。持つべきものは友達だね」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、「毎度、100クレジットね」とビーシャがサムズアップする。

 

 

「えー!? お金取るのー?」

 

 

 ネプテューヌが不満そうに言うと、「只より高い物はない。大人しく払っておいた方がいいよ」とビーシャが言う。

 

 

「しょうがない……はい、100クレジット」

 

 

 ネプテューヌが仕方なさそうに、Nギアのアプリで支払いをする。

 

 

「それじゃ、説明するね。プロセッサユニットには六つのパーツがあるのは知ってるよね?」

 

 

 ビーシャの説明に、「知らなーい」とネプテューヌが激しく首を左右に振る。

 

 

「あちゃ~、そこからか……ねぷねぷって本当に変身して戦ってる」

 

 

 ビーシャがそう言いながら頭を抱えると、「変身してる時のことってあんまりよく覚えてないんだよねー」とネプテューヌがあっけらかんと答える。

 

 

「まあいいや。それじゃ説明するね、プロセッサユニットは六つでコア、ヘッド、バック、ショルダー、ウエスト、レッグ。各分野の説明はこんな感じ」

 

 

コア:女神の中心になるパーツ。主に最大HPや防御力に関係

 

ヘッド:頭に付いているパーツ。FCSとレーダーが搭載されていて主に命中や索敵能力に関係

 

バック:背中に付いているパーツ。メインブースターが搭載されていて主にブースターを使用した最大速度に関係

 

ショルダー:肩に付いているパーツ。腕力の強化するパーツが搭載されていて、主に近接攻撃力や攻撃速度に関係

 

ウエスト:腰に付いているパーツ。バランサーとラジエーターが搭載されていて、主に回避率と冷却に関係。

 

レッグ:足に付いているパーツ。脚力や積載量に関係していて、主に足技の攻撃力や移動速度やジャンプ力に関係

 

 

「おお! なんかロボゲーみたい。これなら、わたしにもわかるかも」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、「以上、説明終わりー」とビーシャが答える。

 

 

「え? もう終わり?」

 

 

 ネプテューヌが不思議そうに言うと、「ま、100クレジットだしね」とビーシャが答える。

 

 

「それに、わたしの専門はプラモだから」

 

 

 ビーシャがそうに言うと、「そう言えば、ビーシャがネプギアの話に付いて行けるのってロボットアニメだけだよねー」とネプテューヌも納得してしまう。 

 

 

「ビーシャ、出番だ。ネプギアに説明してやれ」

 

 

 エフーシャがそう言うとネプギアがビーシャ向けて身を乗り出して、「額やお腹から高出力のビームが出せるようになるって本当ですか!?」と鼻息荒く質問してくる。

 

 

「もちろん、それぐらい朝飯前だよ。プラモの可能性は無限大だからね」」

 

 

 ビーシャがサムズアップしながら答えると、「ひゃ~、すごい! 感動の嵐! プラモってなんて素敵なんでしょ!」とネプギアが目を輝かせながら両手を合わせて感動する。

 

 

「積載量には気をつけろよ。動けなければただの的だ」

 

 

 エフーシャがそう忠告すると、「はい、カスタマイズは任せて下さい」とネプギア元気よく言う。

 

 

「ロボゲーのカスタマイズって言うなら、わたしにも付いて行けそうな話かな?」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、「ええ、難しい話は先ほど終わりました」とイストワールがネプテューヌに説明する。

 

 

「一流の戦士でありメカニックでもエンジニアでもあるネプギアの意見は非常に参考なる」

 

 

 エフーシャがそう言うと、「まるで某天パだよね」とビーシャも同意する。

 

 

「後ろにも目をつけるんだ!」

 

 

 ネプギアがノリノリでそう言うと、「お遊びはそこまでにして下さい」とイストワールがたしなめる。

 

 

「ビーシャのプラモみたいに、ゴテゴテに武装出来たら楽しそー」

 

 

 ネプテューヌの言葉に、「任せて。ア●ミックバズーカでもサテ●イトキャノンでも用意しちゃうよ」とビーシャがサムズアップする。

 

 

「今の状態のジェネレーターでは、そんな高出力な武器は使えないがな」

 

 

 エフーシャがそう言うと、「そう言えば、さっきのビーシャの説明にジェネレーターって無かったね」とネプテューヌが思いついたように言う。

 

 

「ジェネレーターは、シェアクリスタルだよ。私達は女神だからね」

 

 

 ネプギアの言葉に、「なるほどー」とネプテューヌが手をポンと鳴らす。

 

 

「これにより、今まで以上にシェアの差が女神様の力に直結していきます」

 

 

 イストワールがそう言うと、「それで改造の話はどうするつもりだ?」とエフーシャが質問をする。

 

 

「改造? シェアクリスタルを?」

 

 

 ネプテューヌが質問すると、「シェアクリスタルを含めたプロセッサユニット全部の話です」とイストワールが答える。

 

 

「無償でいいよね? お姉ちゃん」

 

 

 ネプギアが上目遣いにネプテューヌに向けてそう言うと、「え? わたし? しかも無償ってなに? 何か怪しい商売の匂いがするんですけど?」、と流石のネプテューヌも戸惑ってしまう。

 

 

「各国へのプロセッサユニット改造の技術協力の件です。現在、プロセッサユニットの改造が出来る国はプラネテューヌと言うより、ネプギアさんしか居ません」

 

 

 イストワールがそう言うと、「何でネプギアだけなの?」とネプテューヌが心底不思議そうな顔をする。

それを見たエフーシャが呆れた顔で、「姉の癖に何も知らないんだな。ネプギアの女神としての実力は詳しくはないが、彼女はメカニックとエンジニアに関して天才的な才能を持ちつつ努力を積み重ねている。そのネプギアが我々より17年も余計に努力しているんだ。誰も追いつけないのは無理もないだろう」とネプテューヌに向けて言う。

 

 

「17年って神次元のこと?」

 

 

 ネプテューヌの言葉に、「ネプテューヌさんがプルルートさん達と遊んでる最中、ネプギアさんはずっと勉強し続けていたんですよ」とイストワールがお説教っぽく言う。

 

 

「まさかネプギアのキャラ付けであるメカオタがこんな成長するとはー!?」

 

 

 ネプテューヌがショックを受けていると、「既にラステイション、ルウィー、リーンボックスの三国からネプギアさんへの協力要請が来ています。あとはこちらが条件を提示するだけです」とイストワールがネプテューヌに説明する。

 

 

「それで無償ってこと?」

 

 

 ネプテューヌがそう言って納得すると、「そうだよ。お姉ちゃんお願いっ!」とネプギアが祈るように両手を合わせてネプテューヌにお願いする。

 

 

「なるほどなるほど、オッケーオッケー。それじゃ無償で行こう」

 

 

 ネプテューヌが軽いノリで言うと、「正気か? 強力な外交カードだぞ?」とエフーシャが驚く。

 

 

「それは、ねぷねぷだからね」

 

 

 ビーシャがそう言うと、「ありがとう、お姉ちゃん。大好きっ!」とネプギアがネプテューヌに抱きつく。

 

 

「信じられないな……お前も同意見なのか? イストワール」

 

 

 エフーシャの問いに、「ネプギアさん、いえ、女神様がそうお望みなら、それを叶えるのが私の役目です」とイストワールが答える。

 

 

(今、明らかにネプギアのことを意識した……ネプテューヌがアレなのは分かるが、それとは違うなにかを感じる)

 

 

 エフーシャはイストワールの答えに違和感を感じながらも、「そうか、分かった。だが、善意だけで世界が回ると考えない方がいい」と忠告をする。

 

 

「ご忠告ありがとうございます。それでは改造の際の協力よろしくお願いします」

 

 

 イストワールの答えに、「ああ、報酬分は働くさ」とエフーシャが言い、「任せて任せて、その代わり報酬はがっつりお願いね」とビーシャが言う。

 

 

「それではこれで失礼する」

 

 

 エフーシャがそう言うと、「今日はありがとうございました」とネプギア一礼する。

 

 

「そう言えば、部屋の外でネプギアンダムと小さな女の子が待っていたぞ。お前に用なんじゃないか」

 

 

 エフーシャの言葉にネプギアは急いで開発室から出て行く、辺りを見渡すとネプギアンダムにだっこされたプラエが眠っていた。

 

 

「プラエちゃん?」

 

 

 ネプギアが駆け寄ると、「モウシワケアリマセン、マスター。プラエサマガドウシテモマチタイトイウノデ」とネプギアンダムが答える。プラエはその言葉と同時に目を覚まし、「あ、ネプギアお姉さん。お仕事終わったの?」とネプギアに尋ねる。  

 

 

「どうして……先にお花見しててくれても良かったのに」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ネプギアお姉さんを待っていたかったから。プラエが好きなネプギアお姉さんはお仕事もちゃんとする人だから待つことは全然大丈夫だよ」とプラエがほほ笑む。

 

 

「そっか……ありがとう、プラエちゃん」

 

 

 ネプギアはプラエの頭を優しく撫でながらそう言う。

 

 

「場所取りはあんみつにお願いしてるから、お花見行こ」

 

 

 プラエがそう言うと、「うん」とネプギアは頷いた。

 

 

 

***

 

 

 

 翌日、G.C.2019年4月7日 日曜日。

 

ネプギアとプラエ、そしてあんみつはユニの誘いにより、ラステイションを訪れていた。

 

ラステイションは重工業を主な産業とする国。居住地区を囲むように工業地区が広がっており、場所によっては鉄骨がむき出しになったような街並みもある。

 

他の三国と国境が接している為に、貿易の中枢も担っている。経済的にも発展しており、国民は活気に満ち溢れている。

 

 ゲイムギョウ界は、プラネテューヌ、ラステイション、ルウィーがあり、そして海を隔ててあるリーンボックスがある。

 

その中心にあるのが、ラステイションなのだ。

 

 

「ここがラステイション……黒くて重厚な感じがする街だね」

 

 

 送迎車の後部座席に乗ったプラエが物珍しそうにラステイションの街並みを眺める。

 

ラステイションの街は白と黒の建物が多く、プラエの言うように重厚な印象を受ける街だ。

 

 

「プラエちゃんはラステイションは初めて?」

 

 

 隣に座っているネプギアがプラエに尋ねると、「うん、プラエはずっとお屋敷に居たから、プラネテューヌも初めてだったの」とプラエが答える。

 

 

「そうなんだ。よくプラネテューヌまで一人で来れたね?」

 

 

 ネプギアがそう尋ねると、「姉さまが全部用意してくれてたの。プラエはその通りにしただけ」とプラエは答えた。

 

 

「それにしても、私にまでお誘いが来るとは……ユニ殿はなにを考えているのでしょうか?」

 

 

 助手席のあんみつが不思議そうに呟く。

 

彼女の言う通り、ネプギアはプラエとあんみつを連れてくるようにユニから言われているのだ。

 

 

「ユニちゃん、とにかく連れて来ての一点張りで……」

 

 

 ネプギアも詳細は知らないらしく、同じように首を傾げた。

 

 

「もうすぐ着きますから、ユニちゃん本人に聞いてみましょう」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「あっ! お城が見える!」とプラエが歓声を上げる。

 

そこには街と同じように重厚な機械で出来た城が見えていた。

 

 

「あれが、ラステイションの教会。ユニちゃんが住んでるところだよ」

 

 

 ネプギアがそう説明をすると、「へー、ここにユニお姉さんが住んでるんだー」とプラエは興味津々とラステイションの教会を眺めた。

 

 

 送迎車はラステイションの教会に入ると、メイド達がネプギア達を丁重に降ろして、教会内のユニの部屋まで案内する。

 

メイドが扉をノックをすると、「ユニ様、ネプギア様達がいらっしゃいました」とユニに声を掛ける。

 

 

「ご苦労様。入ってもらって。あなた達は下がっていいわ」

 

 

 部屋の中からユニの声がすると、メイド達はネプギア達に丁寧に頭を下げると去っていく。

 

 

「ユニちゃーん、入るよ」

 

 

 ネプギアはそう言うと、ユニの部屋の扉を開く。

 

 

パン! パパパパーン!!

 

 

 同時に乾いた破裂音が何度も響く。

 

 

「ひゃっ!」

 

 

 驚くプラエ。

 

 

「何事!」

 

 

 あんみつは戦闘態勢を取るが、「落ち着いて、あんみつ」と女性の声がすると、素直に戦闘態勢を解く。

 

 

「フィナンシェ……? これは一体?」

 

 

 あんみつが声の元の女性に問いかける。

 

そこには以前にプラネテューヌに来ていたルウィーのメイド、フィナンシェが居た。

 

 

「今日は、あんみつとプラエ様の歓迎会よ」

 

 

 フィナンシェがニッコリ笑いながら言うと、「いえーい! 驚いたー!」とラムが、「ドッキリ成功(にこにこ)」とロムがクラッカーを持って微笑んでいる。

 

先程の乾いた音の元はこのクラッカーだったようだ。

 

よく見れば、ネプギア達の頭に紙切れがいくつも乗っかっており、部屋の奥にはプラエとあんみつを歓迎する花輪付きの垂れ幕があった。

 

 

「なーんだ……。そういうことだったんだ」

 

 

 ネプギアが頭に付いた紙切れを落としながら言うと、「私にくらい教えてくれてもよかったのに、みんなの意地悪~」と拗ねた声を出す。

 

 

「アンタは素直すぎるから、言ったら絶対にバレるし」

 

 

 ユニが落ち着いた声で言うと、ネプギアは口を尖らせて、「む~! そんなことないもん。ユニちゃんのいぢわるぅ~」と更に拗ねた声で抗議する。

 

 

「さあ、ケーキもお菓子もいっぱいありますから、楽しんで行って下さいね」

 

 

 フィナンシェはそう言うと、机の上にあるケーキを切り分け始める。

 

ネプギア達は食事をとりながら、ワイワイと談笑を始める。

 

 

「ねーねー! プラエって何が得意なの?」

 

 

 ラムが興味津々とプラエに尋ねると、「わたしも知りたい(わくわく)」とロムも期待の眼差しでプラエを見る。

 

 

「わたし達はお絵描きが得意なのよ」

 

 

 ラムはそう言うと、「今度、プラエちゃんも描いてあげるね」とロムが言う。

 

 

「ありがとう!」

 

 

 プラエは嬉しそうに微笑むと、「プラエの得意な事ってなんだろう……」と考え込む。

 

そこにあんみつが近寄り、「あれがあるではありませんか」と耳打ちをする。

 

プラエは不安そうに、「あれは得意って言っていいのかな?」と尋ねると、あんみつはニコリと笑って、「とてもお上手ですよ」と言う。

 

 

「えっと……じゃあ、プラエはバイオリンが得意」

 

 

 プラエがそう言うと、「すごーい! バイオリンってあれよね。オーストラリアのやつ」とラムが言うが、「違うよラムちゃん、オーストリアだよ」とロムが言う。

 

 

「それを言うなら、オーケストラよ」

 

 

 ユニが右手で頭を抱えながら、呆れた声で言う。

 

ラムはユニの言葉に柏手を打つと、「それそれ、オーケストラ」と言ってうんうんと頷く。

 

 

「プラエちゃんのバイオリンか……聴いてみたいかも」

 

 

 ネプギアがあごに右手を当てながら言うと、「わたしも聞きたい(わくわく)」とロムが続き、「わたしもー!」とラムが左手を上げて、「アタシも興味あるわね」とユニが腕組みをする。

 

 

「え……ちょっと恥ずかしいよ……」

 

 

 プラエは恥ずかしそうに両手をほっぺたに当てるが、「大丈夫ですよ」とあんみつが言うと、「う、うん……なら頑張ってみる」と言ってNギアを操作してポケットからバイオリンを取り出す。

 

 

 

***

 

 

 

 その頃、ユニの部屋に一人の人物が近づいていた。

 

長い黒髪をツインテールにした女性だ。

 

髪型こそはツインテールと幼い少女のようだが、その雰囲気は大人びていた。

 

更にキッと凛々しく吊り上がった赤い瞳は非常に気の強そうな印象を受ける。

 

オフショルダーの黒いドレスを着ており、その装飾は豪奢で中世の貴族のようだ。

 

かなりスカート丈が短く、そこには自分を少しでも綺麗に見せたいという美意識が感じられる。

 

身長や体つきは、ネプギアやユニより一回り大きい大人の女性である。

 

ネプギアとユニの見た目が中学生なら彼女は高校生か大学生と言ったところだ。

 

 

「なにかしらこの音は……?」

 

 

 女性の耳に高級な弦楽器の音が聞こえて来ていた。

 

彼女は音源を探ってユニの部屋の前まで来る。

 

 

「ユニの部屋からね。あの子楽器なんて始めたのかしら?」

 

 

 女性はそう言うと、ユニの部屋の扉を僅かに開けて中を覗き込む。

 

普通なら声を掛けて扉を開けるところだが、楽器を演奏しているのなら邪魔をすべきではないとの判断からだ。

 

演奏が終わってから声を掛けてもよかったが、好奇心が先走り中を覗き込んだのだ。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギア達の前でプラエがバイオリンを奏でている。

 

曲は、【《四季》から〈春〉 第1楽章】。春を表現した音楽として、よく入学式や卒業式とかに流れる曲だ。

 

 

「わぁ……」

 

 

 ネプギアが右手を口に当てて感嘆の声を上げると、「へぇ……」とユニが腕組みしながら関心の声を漏らす。

 

 

「ほわあ……」

 

 

 ロムも呆然と音楽に聞き入る。

 

 

「すごっ……」

 

 

 ラムが大声で褒めようとしたが、「お静かに」とフィナンシェに口を塞がれ、「むぐぅ!」と黙らされてしまう。

 

 

「プラエ様の音は相変わらず癒されます」

 

 

 あんみつは目を閉じてプラエのバイオリンを聞いている。

 

優しく上品な音に皆が魅了されていた。

 

 

 約三分間の演奏が終わると、プラエはバイオリンから弦を離し丁寧に一礼をする。

 

 

パチパチパチパチ!!

 

 

 その場にいた全員が拍手をする。

 

 

「すごーい! すごーい! プラエ上手だよ!」

 

 

 フィナンシェから解放されたラムが両手を上げて大声でプラエを褒めると、「うん、とっても綺麗な音だった(こくこく)」とロムがしきりに頷く。

 

 

「やるじゃない。想像以上よ」

 

 

 ユニが嬉しそうに褒めると、「目を閉じると春の情景が見えて、小鳥の声が聞こえるみたいだったよ」とネプギアが続けて褒める。

 

 

「ありがとう。とっても嬉しい」

 

 

 プラエがバイオリンをNギアのポケットにしまうとニッコリと微笑む。

 

あんみつが、「よかったですね、プラエ様」と言うと、プラエは、「うん」と嬉しそうに頷く。

 

 

「あのー……ところで、ノワール様は何をされているんですか?」

 

 

 フィナンシェが、やや不審な目で扉から首だけを出している、黒髪ツインテールの女性に声を掛ける。

 

 

「あっ……」

 

 

 ノワールと呼ばれた黒髪ツインテールの女性はとても気まずそうな顔をする。

 

好奇心で覗き込んだものの、演奏に聞き入ってしまい気付けば首だけ部屋の中に入れてしまうと言う失態を犯してしまったらしい。

 

 

「お姉ちゃん!?」

 

 

 その姿を見たユニが驚きの声を上げる。

 

ユニが姉と呼ぶ彼女はラステイションの守護女神ノワール。

 

 

「ノワールさん、それなんの遊び? さらし首ごっこ?」

 

 

 ラムが興味津々と尋ねると、「楽しそう(うきうき)」とロムも楽しそうにノワールを見る。

 

ネプギアが困った顔で、「多分違うんじゃないかな……」と言うと、「ユニちゃん」と言ってユニの肩を軽く叩く。

 

 

「あっ……えっと、お姉ちゃん何か用? とりあえず中に入って」

 

 

 ネプギアの意図を察知したユニがノワールに助け舟を出す。

 

 

「そ、そうね。ちょっとだけお邪魔させてもらうわ」

 

 

 ノワールは一旦首を引っ込めた後に部屋の中に入ってくる。

 

そして今までの失態を誤魔化すように右手でツインテールをかき上げると、「素敵なクラシックが聞こえて来たから、つい聞き入ってしまったの」と涼し気な声で答える。

 

 

「え? どこかにぶつかった音なんてしたっけ?」

 

 

 ラムが不思議そうに首を傾げると、「ううん、プラエちゃんのバイオリンしか聞こえてこなかったよ」とロムが答える。

 

 

「それはクラッシュよ。クラシックよ、クラシック」

 

 

 ユニが呆れた声でツッコミを入れると、「クラシックって言うのは、【古典】とか【格式のある】って意味があって、さっきのプラエちゃんが弾いた西洋の芸術音楽のことを言うんだよ」とネプギアが説明をしてくれる。

 

 

「こほん……」

 

 

 ノワールは咳ばらいを一つすると、「プラエってことは、あなたがネプギアの預かった、お姉さんを探しているって子ね」とプラエに言う。

 

 

「は、はい……」

 

 

 プラエがやや緊張した声で返事をすると、「私の名前はノワール。ユニの姉であり、このラステイションで守護女神をしているわ。よろしくね」とノワールが簡潔に自己紹介をする。

 

 

「よろしく、お、お願いします」

 

 

 プラエはまだ緊張しているようで、声が硬い。

 

ノワールはプラエの態度を特に気に留めず、「プロテノールってあなたのお姉さんのことだけど、今のところラステイションにも情報はないわね」と言う。

 

 

「調べてくれたんですね。ありがとうございます」

 

 

 ネプギアが緊張しているプラエに代わってノワールに丁寧に頭を下げてお礼を言う。

 

するとノワールはウインクをして、「お礼ならユニに言いなさい。この子ったら、【ネプギアが探してるから】って言って……」と言うと、「わっ! わっ! わーーー! お姉ちゃん!それは秘密って言ったでしょ!」とユニが顔を真っ赤にして割り込んでくる。

 

 

「そうなんだ。ありがとう、ユニちゃん」

 

 

 ネプギアは満面の笑みを浮かべてお礼を言う。

 

ユニは腕組みしてそっぽを向くと、「アンタの為じゃないんだからね。プラエがかわいそうだからよ」と言い放つ。

 

 

「それでも嬉しいよ。本当にありがとうね、ユニちゃん」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ありがとう、ユニお姉さん」とプラエも頭を下げてお礼を言う。

 

 

「まぁ、今のところ何の情報もないんだけど、引き続き探させるわ」

 

 

 ユニがそう言うと、「わたし達だって探させてるわよ」とラムが自信満々に言い、「お姉ちゃんにお願いしたの(ぐっ)」とロムもやや自信ありげに小さくガッツポーズをする。

 

 

「本当。二人ともありがとう」

 

 

 ネプギアがロムとラムの頭を撫でながらお礼を言うと、「ロムさんもラムさんもありがとう」と先ほどと同じようにプラエも頭を下げてお礼を言う。

 

 

「プラエ様があんなに喜んで……プラエ様のあのような顔を見るのは久しぶりだ」

 

 

 あんみつがそう言うと、「ほら、あんみつ、ハンカチ。涙が出ていますよ」とフィナンシェがハンカチを差し出す。

 

あんみつは、「かたじけない」とハンカチを受け取ると、涙を拭う。

 

そこにプラエがやってくると、「あんみつ、プラエみんなにお礼がしたい。どうしたらいいかな?」と質問をする。

 

 

「それでは、先程と同じようにバイオリンを演奏してみてはいかがでしょうか?」

 

 

 あんみつがそう言うと、プラエは少し不安そうに、「それで大丈夫かな?」と言う。

 

フィナンシェが、「ロム様もラム様もとても喜んでましたし、きっと大丈夫ですよ」と言うと、「うん、ありがとうフィナンシェさん、プラエやってみる」とプラエが頷く。

 

プラエは再びNギアを操作して、ポケットからバイオリン取り出す。

 

 

「プラエ、バイオリンを弾いてみんなにお礼がしたい。どんな曲がいいかな?」

 

 

 プラエがそう言うと、ネプギアがすかさず右手を上げる。

 

 

「ネプギアお姉さん?」

 

 

 プラエはてっきりラムが最初に手を上げるものだと思っていたので少し意外そうにネプギアの名前を呼ぶ。

 

 

「曲のリクエストじゃないんだけど、迷惑じゃなかったら、私も一緒に弾いていいかな?」

 

 

 ネプギアの言葉にプラエは驚いた顔で、「ネプギアお姉さんもバイオリン出来るの?」と言う。

 

ネプギアはゆっくりと首を左右に振ると、「ううん、私が出来るのはエレキギターなんだけど、ダメかな?」と質問する。

 

プラエはもの凄い勢いで首を左右に振ると、「全然駄目じゃないよ。プラエ、ネプギアお姉さんと一緒に演奏したい!」と大声で言う。

 

 

「あなたギターなんて出来たの?」

 

 

 ノワールが意外そうにネプギアに尋ねると、「5pb.さんに習ったんです」とネプギアが答える。

 

5pb.【ファイブピービー】とはリーンボックスでアイドルをしている人物で、以前の犯罪組織との戦いではネプギア達に協力してくれた人物の一人でもある。

 

ノワールは少し呆れた顔で、「ファルコムからは剣を、がすとからは錬金術を教わってたみたいだし、あなたって誰からでも色んなことを習うわね」と言う。

 

 

「みんなスゴイ人だと思いますし、そのスゴイところを少しでも学べたらなって思って」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「……そういう素直なところ少し羨ましいわ」とノワールが誰にも聞こえないよう小さく呟く。

 

ネプギアが首を傾げて、「え? 何か言いましたか?」とノワールに質問すると、「何でもないわ。女神の仕事に支障が出ない程度にしておきなさい」とノワールは腕組みしてそっぽを向く。

 

 

「ネプギアお姉さん、早く早く」

 

 

 プラエが急かすように言うと、「うん、今準備するね」とNギアを操作して、ポケットからエレキギターを取り出す。

 

ユニがギターを見て、「意外と古いわね」と言うと、「5pb.さんのお古だから」とネプギアは言いながらギターのチューニングを始める。

 

 

「ねー! ねー! わたし、踊っちゃうぐらい元気の出る曲が聴きたい!」

 

 

 ラムが左手を上げてそう言うと、「わたしは落ち着く曲がいいな(もじもじ)」とロムもリクエストをしてくる。

 

ネプギアはチューニングを続けながら、「じゃあ、ラムちゃんには【ハンガリー舞曲の第5番】。ロムちゃんには【G線上のアリア】がいいと思うけど、どうかな?」とプラエに問いかける。

 

プラエはこくこくと頷き、「うん、プラエもそれでいいよ」とニッコリと笑う。

 

 

「ユニちゃんは何かある?」

 

 

 ネプギアがユニに尋ねると、「アタシは、【天国と地獄】がいいわ」と答える。

 

それを聞いたラムは嫌そうな顔で、「なにそれ、デスメンタルって怖いヤツ?」と言う。

 

ユニは呆れ顔で、「違うわよ。運動会に流れる、てーてけてけ、てーてーてけけ……って曲があるでしょあれよ。それと、デスメンタルじゃなくてデスメタルね」と丁寧に説明とツッコミをする。

 

 

「ノワールさんは何かありますか?」

 

 

 ネプギアが今度はノワールに尋ねる。

 

ノワールは右手をあごに当てて少し考えるそぶりをすると、「フェリックス・メンデルスゾーン。真夏の夜の夢、結婚行進曲がいいわ」と答える。

 

 

「あー! ノワールさん、インムミンだインムミン!」

 

 

 ラムが突然そう言うと、「ぶっ!?」とノワールが驚きのあまり吹き出してしまう。

 

更に、「ノワールさんは、インムミン」とロムもそれに続く。

 

ノワールは頭を抱えながら、「二人とも、意味分かって言ってるの?」と質問する。

 

ロムとラムは揃って首を左右に振り、「「知らなーい」」と声を揃えて言う。

 

 

「ただ、真夏の夜と言ったらインムミンだって、ネプテューヌちゃんとベールさんが言ってたから」

 

 

 ラムがそう言うと、「うん、言ってたからノワールさんはインムミン(こくこく)」とロムが頷く。

 

フィナンシェが大慌てで、「すみませんすみません!! お二人に悪気はないんです!」とノワールに向かってペコペコと頭を下げる。

 

ノワールは先程と同じように頭を抱えて、「わかってるわよ。後でネプテューヌとベールにはしっかりと問いたださないとね」と言う。

 

 

「えっと、フィナンシェさんとあんみつさんは何かありますか?」

 

 

 今のやり取りがイマイチ理解できなかったネプギアがフィナンシェとあんみつに尋ねる。

 

 

「私達もよいのですか?」

 

 

 あんみつが不思議そうに尋ねると、「いいよね、プラエちゃん」とネプギアがプラエに質問すると、プラエは笑顔で、「うん、いいよ」と答えた。

 

 

「それでは、私はトルコ行進曲で」

 

 

 フィナンシェがそう言うと、「私はベートーヴェン交響曲5番運命で」とあんみつがリクエストする。

 

 

「よしっ! それじゃあ、頑張って弾こうね」

 

 

 チューニングを終わらせたネプギアがプラエに微笑みかけると、「うんっ!」とプラエも満面の笑みで応える。

 

 

 

***

 

 

 

パチパチパチパチ!!

 

 

 ネプギアとプラエの演奏が終わると部屋中が拍手に包まれる。

 

 

「プラエも上手だけど、ネプギアも上手ーー!」

 

 

 ラムがバンザイしながら言うと、「ネプギアちゃんカッコよかった(めろめろ)」とロムがほっぺたに両手を当てる。

 

 

「ミスもなかったし、なかなかのものね」

 

 

 ノワールがそう言って感心すると、隣に座っていたユニが、「……アタシも何か楽器習おうかな」と呟く。

 

それを聞いたネプギアは、「本当に! 私、ユニちゃんと一緒に演奏出来たら嬉しいな」と本当に嬉しそうに言う。

 

 

「ま、まだ予定よ。本決まりじゃないんだから、あんまり期待しないでよ。楽器って高いでしょうし」

 

 

 ネプギアの喜びように若干引き気味のユニ。

 

ネプギアは申し訳なさそうに、「そうだよね。ごめんね早とちりしちゃって」と言う。

 

そこに、「えー! ユニちゃんやらないの? わたしはやるわよ」とラムがドヤ顔で言い放つ。

 

更に、「わたしもやりたい(ふんす)」とロムも彼女にしては意気込み激しく言う。

 

どうやら、二人ともネプギアとプラエの演奏に相当影響を受けたらしい。

 

 

「アンタ達、アタシの話聞いてた? 楽器って高いのよ。買った後に【飽きたー】とか【出来ない】なんて許されないんだから」

 

 

 ユニは子供に言い聞かせるように言い。

 

フィナンシェも、「そうですよ。ブラン様もそんな高いモノを簡単に買ってはくれませんよ」と言う。

 

 

「えー? ユニちゃんってば弱気ー。ネプギアに出来て、ユニちゃんは出来ないのー?」

 

 

 ラムが挑発するように言うと、「ユニちゃんの弱虫……」とロム続けて言う。

 

それを聞いたユニの表情が一瞬でこわばる。

 

 

「そんな訳ないでしょ! 出来るわよアタシだって! ネプギアに出来てアタシに出来ない訳ないわ」

 

 

 ユニはそう言うと、自分の携帯ゲーム機である【U.N.I】を操作し始める。

 

U.N.I【ユーエヌアイ】通称ユニと呼ばれラステイションで生産発売をしている携帯ゲーム機だ。

 

Nギアとほぼ同等の性能を持っており、携帯ゲーム機のシェアを争っている。

 

 

「クレジットはちゃんと貯めてある! 楽器でも何でも買ってやるわ」

 

 

 ユニが興奮気味に言うと、「ユニちゃん、ちょっと落ち着いて……」とネプギアが止めようとするが、その肩をノワールに掴まれてしまう。

 

ネプギアは不思議そうな顔で、「ノワールさん?」とノワールの方を向くと、「止めることは許さないわ。プラネテューヌの女神候補生のあなたに出来て、ユニに出来ない筈はないわ」とノワールもこわばった表情で言う。

 

 

(あうぅ……ノワールさんも何かスイッチ入っちゃってる。二人の前ではプラネテューヌに出来てラステイションには出来ないって言うのは禁句なのかな……)

 

 

 ネプギアがそんなことを考えてる内に、「よーし! それじゃあ、わたし達女神候補生とプラエでバント組むわよ」とラムが左手を突き上げて宣言すると、「おーー!」とロムも右手を上げてそれに続く。

 

 

「えっと、それを言うならバントじゃバンドね」

 

 

 ネプギアは丁寧にラムの言い間違いを訂正すると、「……じゃなくて、そんな思い付きで決めない方がいいと思うんだけど……」と付け加える。

 

 

「えー? ネプギアはわたし達とバンドしたくないのー?」

 

 

 ラムが不満そうに言い、「そんなー(しくしく)」とロムが悲しそうに言う。

 

ネプギアは慌てて両手を胸の前で左右に振って、「そんなことないよ。出来たら楽しいだろうなーとは思うけど……」と言う。

 

 

「じゃあ、決まりね。こーゆーのは、やるだけやってみた方がスッキリするわ」

 

 

 ラムが腕組みしながらそう言うと、「ラムちゃん……」とネプギアが感心したように呟く。

 

 

「玉砕覚悟! 当たって砕けろよ!」

 

 

 続けてラムがそう言うと、「く、砕けちゃダメだよ~!」と慌てて止めるネプギア。

 

 

「じゃあ、アレよ。【暗算より海が安いし】よ」

 

 

 ラムが左手を突き出して自信満々に言うが、「それを言うなら、案ずるより産むが易しだよー!」とネプギアにツッコミを受けてしまう。

 

 

「なんだか大変なことになっちゃった……」

 

 

 女神候補生達のやり取りに付いて行けないプラエが呆然と言うと、「良いではありませんか。ラム殿の言うように案ずるより産むが易しです」とあんみつが励ますように言う。

 

しかし、その横で、「はぁ……ブラン様に何とご説明すれば……」とフィナンシェが頭を抱えていた。

 

 

 

***

 

 

 

 

 サクラナミキのクエストから一週間後。

 

G.C.2019年4月12日 金曜日。

 

 

「ネプギアさん、またファミ通さんの記事でプラネテューヌのシェアが上がりましたよ」

 

 

 部屋で休憩中のネプギアに、イストワールがホクホク顔で週刊ファミ通を持ってくると、「わーい、本当ですか」と素直に喜びを表現するネプギア。

 

 

「どうぞご覧ください」

 

 

 イストワールはネプギアに週刊ファミ通を手渡す。

 

ネプギアは付箋の張ってあるページを黙々と読み始める。

 

そこには先週のサクラナミキでのネプギアの多彩な活躍と女神化した時の圧倒的な戦闘力。それに初心者のファミ通に対する気配りの他に、お弁当の椎茸おにぎりが美味しかったなどと細かいことまで書かれていた。

 

 

「いやー、自分の才能が怖いなー」

 

 

 ベッドから飛び起きて、腰に手を当てて誇らしげなポーズをとるネプテューヌ。

 

ネプギアとネプテューヌは相部屋なのでネプテューヌがいるも当然ではある。

 

 

「シェアが上がったのはネプギアさんのおかげです。何度も同じことを言わせないで下さい」

 

 

 鼻高々に腰に手を当てるネプテューヌにイストワールは冷たく言い放つ。

 

ちなみにネプテューヌの相変わらず遊んでばかりだった。

 

 

「いーすんのいけずー。繰り返しはギャグの基本じゃん」

 

 

 イストワールの態度に口を尖らせるネプテューヌだが、「私、ネプテューヌさんと漫才するつもりはありませんから」とイストワールの態度は変わらず冷静なものだった。

 

 

「もー、いーすんってば。私達は某派出所の主人公と部長のようなコンビじゃん」

 

「それ、あんまり仲が良くないようなコンビな気が……」

 

 

 ネプテューヌのボケにすかさずツッコミを入れるネプギア。

 

 

「それより、ネプテューヌさん体重は落ちたんですか?」

 

 

 イストワールが訝しげな視線をネプテューヌに向ける。

 

教祖として先日のネプテューヌの体重増加が気になるようだ。

 

 

「バッチリだよ。わたしの変身ダイエットはいつも完璧だよ」

 

 

 ネプテューヌはVサインを決めて堂々と言い放つ。

 

変身ダイエットとは変身しては戻り変身しては戻るを繰り返してカロリーを消費する方法である。

 

 

「……以前にも言いましたよね? 女神化はシェアエネルギーを消費すると……」

 

 

 イストワールは怒りに肩を震わせて静かに言う。

 

女神化で消費されるのはカロリーだけではない。国民から得たシェアエネルギーも消費するのだ。

 

女神化はゲイムギョウ界及びそこに住む人々を守る為に使う切り札であり、個人的なダイエットに使っていいものではない筈なのだ。

 

と、言うかこんなことするのはネプテューヌぐらいなので、こうしてる間に他国とのシェア差が更に開く一方だ。

 

 

「いやー! こんな簡単なダイエットが出来るなんて女神って得だね」

 

 

 ネプテューヌがイストワールの言うことなど聞いていないかのようにお気楽に言う。

 

 

「ですから! 女神化をダイエットなんかに使わないで下さい! ただでさえプラネテューヌのシェアは低いんです! そんなことに使っている余裕なんてないんです!」

 

 

 イストワールが激しくまくし立てて言う。

 

すかさずネプギアが間に入り、「えーと……お姉ちゃん、ダイエットなら一緒にクエストに行こうよ。カロリー消費するし、シェアも上がるよ。ね?」とネプテューヌに提案する。

 

 

「えー、ムリムリ。疲れるし、足の裏痛くなったり、筋肉痛になったりするし、それにわたしまだ積みゲーが山ほどあるし」

 

 

 ネプテューヌは面倒くさそうに手をひらひらと振りながらネプギアの提案を却下する。

 

イストワールは、「はああぁぁ……」と盛大に溜息を吐きながら、「こんなことでは本当にシェアエネルギーが尽きてしまいますよ」と呆れかえってしまう。

 

 

「大丈夫大丈夫。何があろうと、わたしの溢れだす主人公補正で切り抜けられるよ」

 

 

 ネプテューヌはあっけらかんと言い放つ。

 

彼女は主人公を自称しており、何かにつけて自分の主人公補正で何とかなると考えている。

 

ちなみに主人公補正とは、何が起ころうが最終的には主人公が勝つというご都合主義な展開である。

 

ネプテューヌはその主人公補正ありきで人生生きているのだ。

 

 

「よし! 決めた」

 

 

 イストワールとネプテューヌの会話をよそに一人ネプギアが決意を固めたように言う。

 

 

「決めたって……何をですか?」

 

 

 イストワールが不思議そうな顔でネプギアに問いかけると、「わたし、お姉ちゃんの為に脂肪吸引装置を作るよ!」とネプギアは力強く宣言する。

 

脂肪吸引とは皮下脂肪を特殊な吸引管で取り除く手術のことを言う。

 

 

「え……? それって【ブサッ】って管を刺すヤツだよね……」

 

 

 ネプテューヌは顔を青くしながら恐る恐る尋ねる。

 

彼女は子供のごとく注射や歯医者などの類が苦手である。

 

今、ネプテューヌの頭の中には巨大な注射器をお尻に刺される自分の姿が浮かんでいた。

 

 

「うん! 【グサッ】って刺して【ジュルルルルル】って脂肪を吸い出すんだよ」

 

 

 ネプギアはネプテューヌの青ざめた顔など気にせずに、効果は抜群と言わんがばかりに擬音の部分を強調する。

 

 

「じゅ、じゅるる……る?」

 

 

 ネプテューヌは生唾を飲み込みながらつぶやく。

 

想像は注射器から掃除機にランクアップした。

 

掃除機の太いホースを突き刺され、勢いよく脂肪を吸い出されてる様は想像を絶する痛みを連想させた。

 

 

「わ、わたし、痛いのはちょっと……」

 

 

 やる気満々のネプギアに対してネプテューヌは顔面蒼白で後ずさる。

 

 

「大丈夫! 麻酔とかちゃんとするから」

 

 

 ネプギアはネプテューヌの態度を気にもせずに自信満々に言う。

 

ネプギアは機械に詳しく色々な機械を作るのが大好きである。

 

また姉に対する強い想いと、女神としてこの事態を何とかしようという思いが重なって、このような少し暴走気味な結論に至ったようだ。

 

 

「いやいやいや! それ以前にネプギア医師免許とか持ってないよね? 危ないって危険だよ。デンジャーだよデンジャー!」

 

 

 流石のネプテューヌも本気のネプギアに危険を感じたのか慌てて止めようとする。

 

機械には詳しいが医者ではないネプギアには当然のように医師免許がない。

 

 

「大丈夫だよ! 世の中には医師免許はないけど、凄腕の闇医者とかいるし」

 

 

 ネプギアは両手で小さくガッツポーズをしながら自信満々に言う。

 

時間が惜しいようで医師免許を取ってからという選択肢はないようだ。

 

 

「それ漫画の話だよね!?」

 

 

 ネプテューヌは有名な闇医者の漫画を思い出して指摘をするが、ネプギアには聞き入れてもらえないようだ。

 

 

「そういえば、脂肪吸引には死亡事故のリスクがあると聞いたことがありますね」

 

 

 イストワールは慌てるネプテューヌを冷ややかに見つめながらそうつぶやく。

 

 

「脂肪吸引で死んじゃったー。これが本当の死亡吸引。てへっ」

 

 

 ネプテューヌは一転して横ピースしながらにこやかに笑うと、「もー、いーすんってばブラックジョークが上手いんだから」とイストワールに素早くツッコミを入れる。

 

 

「……って違う! ちょっと、いーすん! 見てないで止めてよ!!」

 

 

 ネプテューヌとしては精一杯のノリツッコミだったのだろう。

 

一瞬で顔を青くするとガタガタと震えながら、イストワールを非難する。

 

 

「大丈夫ですよ。何があろうとネプテューヌさんの溢れだす主人公補正で切り抜けられますよ」

 

 

 イストワールは先程ネプテューヌ自身が言った台詞を冷たく言い返す。

 

 

「それとこれとは話が別なんだよー! 痛いのイヤーーーーー!」

 

 

 部屋中にネプテューヌの絶叫が響き渡る。

 

その後、ネプテューヌはもう変身ダイエットはしないとの約束で何とかネプギアを静めたのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 イストワールはネプギアの気が静まったのを確認するとにこやかに微笑む。

 

そして、「ネプギアさん、ここ最近のご活躍は見事なものです。私から何かご褒美を差し上げたいのですが、欲しいものはありますか?」と優しげな声で話しかける。

 

イストワールは前回と今回のネプギアの活躍でシェアが上がったことに対してネプギアに何かしてあげたいようだ。

 

 

「そんな、ご褒美なんて……私は女神として当然のことをしただけです。それにシェアが上がって、いーすんさんやお姉ちゃん、そして国民のみなさんが喜んでくれればそれで充分です」

 

 

 遠慮もあるのか、ネプギアは丁寧に辞退する。

 

だが、「本当に欲しいものはないのですか? 何でも言ってみて下さい。前向きに善処しますよ」とイストワールは何か要求をして欲しかったので、考え直すよう勧める。

 

 

「ネプギア、遠慮せずに言いたいこと言っちゃいなよ」

 

 

 ネプテューヌもネプギアに好きなものを頼むよう勧めてくる。

 

ネプギアは少し考えた後に、「でしたら、プラネタワーをロボットに変形するように改造したいです!」と目を輝かせてとんでもない提案をする。

 

 

「そ、それは少しスケールが大きすぎて……」

 

 

 困り顔で冷や汗を流すイストワール。それほどにネプギアの目は純粋に輝いていた。

 

明らかに本気である。

 

許可しようものなら、今から着工してしまいそうな勢いだった。

 

 

「でたー! ネプギアの数少ない特徴の一つメカオタ属性!」

 

 

 ネプテューヌはネプギアの要望でハの字眉毛になって困り顔のイストワールが面白かったのか、茶々を入れてくる。

 

その属性のおかげで、先程大慌をしてネプギアを説得していたのは既に彼女の記憶には無いようだ。

 

 

「ダメですか……」

 

 

 本気で肩を落としてしょんぼりしてしまうネプギア。

 

イストワールはハンカチで顔の汗を拭いながら、「もっとスケールの小さいものでお願いします」とネプギアに再度お願いをする。

 

 

「じゃあ! 手! 手だけでもいいですから! 勿論ロケットパンチにしますから!」

 

「スケールが小さいと言うのはそういう意味では……」

 

 

 ネプギアの再度のお願いに、困り果ててしまうイストワール。

 

真面目で良識のあるネプギアだが、機械のことになるとタガが外れてしまうの悪い癖であった。

 

逆を言えば、それほどまでに機械のことが好きなのである。

 

 

「うーーん……でしたら、お母さんとして褒めて欲しいです」

 

 

 考え直した末のネプギアの要望は随分とスケールが小さくなっていた。

 

 

「それで良いのですか?」

 

 

 一気にスケールダウンした要望に疑問顔のイストワールに、「はい」とネプギアの迷いなく頷き以前のように頭を突き出す。

 

 

「ネプギアさんは本当に良い子ですね。お母さん嬉しいですよ」

 

 

 イストワールは要望通り母のような優しい微笑みでネプギアの頭を撫でると、ネプテューヌが、「おおー! いーすんがバブみを発動してる!」と二人の姿に茶々を入れる。

 

 

「バブみ? 入浴剤がどうかしたの?」

 

 

【バブみ】の意味が分からず首を傾げるネプギア。

 

 

「年下の女の子に母性を感じちゃう萌え要素だよ」

 

 

 ネプテューヌが簡単に説明するが、ネプギアは首を傾げると、「年下って……いーすんさんは年上だよ?」と言う。

 

遥か昔からプラネテューヌの歴史を見守ってきたイストワールはネプギアどころかネプテューヌよりも年上である。

 

 

「そっか、いーすんってロリババアだったよね」

 

 

 ネプテューヌは悪びれもなくイストワールに向かってそう言うと、「ババアは止めて下さい」とイストワールは顔をしかめてネプテューヌを注意する。

 

 

「ロリババアは褒め言葉だー! 永遠の幼女はロリコン紳士の夢! いーすんってばルウィーに行ったらモテモテだよ」

 

 

 ネプテューヌはイストワールをからかうように笑うが、「いーすんさんがルウィーに行ったら一番困るのはお姉ちゃんのような……」とネプギアはイストワールに撫でられながらもツッコミを入れる。

 

 

「それもそっか。それより、ネプギアは本当に甘えん坊さんだね」

 

 

 ネプテューヌは話を切り替えて、ネプギアの甘えぶりを呆れたように言う。

 

 

「だって……」

 

 

 自分でも自覚しているいネプギアは恥ずかしそうに両指をいじりながら俯いて黙ってしまう。

 

 

「ルウィーと言えば、ブランさんから抗議文が来ていました」

 

 

 イストワールが思い出したかのように言うと、「わたしの妹に余計なことを吹き込まないで欲しい。先週から楽器楽器ってうるさい……とのことです」と続けて言う。

 

 

「あはは……ロムちゃんもラムちゃんもおねだりしてるんだ……」

 

 

 ネプギアが少し責任を感じたように困った顔で言う。

 

ネプテューヌが不思議そうな顔で、「なにかあったの?」と尋ねてくると、ネプギアはネプテューヌとイストワールに日曜日の事を話す。

 

 

「ふーん。でも、楽器ならさ、カスタネットとかトライアングルでも良くない。それにルウィーの紳士はそっちの方が萌えると思うよ」

 

 

 ネプテューヌにしては気が利いたことを言うが、「それが、ネプギアさんとプラエさんが本格的な演奏をしたものですから、そういう小さい楽器じゃ満足しないそうなんです」とイストワールが答える。

 

 

「いーすんさん、お願い聞いて貰っていいですか?」

 

 

 ネプギアは少し控えめにイストワールに尋ねる。

 

イストワールは母親のような優しい微笑みで、「何でも言って下さい。お母さんにお任せですよ」とすこしおどけたふうに言う。

 

成り行きで認めた母親の真似だが、イストワール的にも気に入っているようだ。それだけ彼女もネプギアを我が子のように愛しているのだろう。

 

 

「えっと……ブランさんを何とか説得できないでしょうか? ロムちゃんもラムちゃんも私とバンドを組むって凄く楽しみにしてて……ユニちゃんも方向性は違うけど凄くやる気だし」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「実はそう言うと思っていまして、既にブランさんとノワールさんに話を通して、女神候補生でバンドを組む計画を発案しています」とイストワールが微笑みながら答える。

 

ネプギアは驚いた顔をすると、右手を口に当てて、「流石はいーすんさん、スゴイです!」と声を上げる。

 

 

「ネプギアさんはとても良い子ですから、お母さんついつい応援したくなってしまうんです」

 

 

 イストワールが優しく言う。

 

母親役もノリノリである。

 

 

「いーすんってば、ネプギアにばっかり優しいんだから~~!」

 

 

 ネプテューヌが不満そうに口を尖らせると、「わたしは長女だから我慢できたけど次女だったら我慢できなかったよ」と続けて言う。

 

 

「どちらかと言うと、我慢してるのは私の方なのですが……」

 

 

 イストワールが呆れたように言うと、「と、言うかネプギアさんの母には喜んでなりますが、ネプテューヌさんのような子の母親役はお断りです」と続けて言う。

 

 

「ひどっ!?」

 

 

 目をバッテンにして叫ぶネプテューヌ。

 

 

「と、言うことで楽器を見に行く日時を皆さんで決めて下さい。アドバイザーの5pb.さんも同行しますので」

 

 

 イストワールがネプテューヌを無視して話を進める。

 

 

「5pb.さんも来てくれるなら心強いです。いーすんさん、本当に何から何までありがとうございます」

 

 

 ネプギアが頭を下げてお礼を言うと、「実は以前からリーンボックスから似たような計画を提案されていたのです。女神候補生をアイドルとしてデビューさせたいと」とイストワールが答える。

 

 

「そうなんですか!?」

 

 

 ネプギアが両手を口に当てて驚くと、イストワールが少し困った顔をして、「以前にリーンボックスで行った女神候補生のライブが非常に好評で十年経った今でも再度開催して欲しいとの要望が絶えないだとか」と言う。

 

女神候補生のライブと言うのは、正確にはリーンボックスで行われたあるライブが大失敗に終わりそうだったところへ、ネプギアが他の女神候補生を連れて急遽ステージに立ったのだ。

 

踊りを踊っただけではあったが、その美しさに観客は魅了され、ライブの大失敗は回避され大成功に終わったのだ。

 

 

「うっわー……。ベールの下心が丸見えだよ。自分だけ妹がいないから、そういう形で接点を持とうなんて必死過ぎ~」

 

 

 ネプテューヌが呆れたふうに言う。

 

彼女の言う通り、リーンボックスだけ女神候補生がいない。

 

その上、リーンボックスの守護女神であるベールはお姉さんキャラで、年下の子を甘やかすのが好きなので、妹が欲しくて仕方ないのだ。

 

その為に、ことあるごとに女神候補生達に対して姉のように接している。ちなみに一番のお気に入りはネプギアのようだ。

 

 

「ベールさん個人の欲望があるのは否定しませんが……」

 

「否定しないんですか!?」

 

 

 イストワールの言葉にすかさずツッコミを入れるネプギア。

 

 

「ベールさんなりに、妹のいないハンデを埋めようと国策に奔走しているのですよ。ネプテューヌさんも少しは見習ったらどうですか?」

 

 

 イストワールが諭すようにネプテューヌに言うが、ネプテューヌは心底嫌そうな顔で、「ちぇー、ヤブヘビだったな~」と言うだけであった。

 

イストワールはネプテューヌの予想通りの反応に、「はぁ……」とため息を吐くと、ネプギアの方を向いて、「そういうことで、ネプギアさん達の頑張り次第では大規模なライブ等も開催される予定なので頑張って下さい」と励ますように言う。

 

 

「何だか大きな話になっちゃいましたね……」

 

 

 ネプギアは話がトントン拍子に進み過ぎて、やや呆然としているが、直ぐに表情を引き締めて、「でも、ゲイムギョウ界の人達が私達のライブを心待ちにしてると言うなら全力で頑張ります」と言って両手で小さくガッツポーズをした。

 

 

「頑張ってくださいね。音楽とゲームは密接な関係にあります。音楽を学ぶことは女神として決して無駄にはならないでしょう」

 

 

 イストワールが期待を込めた表情と声でそう言うと、「はいっ!」と元気よく頷くネプギア。

 

 

 コンコン……

 

 

部屋のドアがノックされる。

 

 

「はーい! どうぞー」

 

 

ネプギアがノックに対して返事をするとドアが開く。

 

ドアが開くと茶色のロングヘアーに緑色のリボンを付た、やや小柄でスレンダーな女性が入って来る。

 

瞳の色は緑色で、大きな青色のロングコートを着ていた。

 

身長はネプギアより低いが、落ち着いた大人の雰囲気があった。

 

 

「ネプギア、丁度良かった。休憩中のようね」

 

 

 ドアから入って来た女性がそう言うと、「あいちゃん」とネプテューヌが、「アイエフさん」とネプギアが嬉しそうに彼女の名前を呼ぶ。

 

彼女の名前はアイエフ。

 

プラネテューヌの諜報部員であり、ネプギアとネプテューヌの友人でもある。

 

 

 続けてクリーム色の髪をカールさせてカチューシャを付けた女性が、「ねぷねぷー、ぎあちゃん、元気ですかー」と言いながら部屋に入って来る。

 

瞳の色は茶色で、ピンクのセーターに赤いチェックのスカートをはいている。

 

スレンダーなアイエフと違い、全体的にふわふわしていて甘いお菓子のような雰囲気のする女性だった。

 

こちらはネプギアと同程度の身長だが女性としての部分がかなり育っていた。

 

 

「コンパさんもご一緒でしたか」

 

 

 今度はイストワールが彼女の名前を呼ぶ。

 

コンパはプラネテューヌの病院に勤務するナースである。

 

アイエフの友人であり、ネプギアとネプテューヌとも友人である。

 

彼女達はプラネテューヌに対する忠誠が篤く、信頼されている上にネプギアとネプテューヌの友人である為、顔パスで女神の部屋を訪れることが出来る。

 

 

「ネプギア、最近頑張ってるみたいじゃない」

 

 

 アイエフはそう言うと、週刊ファミ通を取り出してファミ通の書いた記事の載っている場所を開く。

 

コンパも、「ぎあちゃんは謙虚系技巧派女神ですー」と嬉しそうに言う。

 

コンパの言う通り、ファミ通の書いた記事には今までの派手でパワフルな女神とはひと味違うネプギアの謙虚さと多彩な技を巧みに扱う活躍が書かれていた。

 

その珍しさが好評を博したのか雑誌の売り上げは好調だった。

 

 

「友人としてもプラネテューヌの職員としても鼻が高いわ」

 

 

 アイエフは嬉しそうに微笑み、コンパは「良い子にはご褒美をあげるですー!」と言いながら、両手でケーキ箱を差し出す。

 

 

「わ! ケーキですか! ありがとうございます」

 

 

 両手を合わせて喜びを表現するネプギア。

 

ケーキの甘い香りがネプギアの鼻をくすぐる。

 

だが、「えー? あいちゃんとこんぱまでネプギア褒めに来たのー? わたしはー!」と立て続けに妹を褒められて、自分が蔑ろにされてると思ったネプテューヌが不満を露わにする。

 

 

「最近のネプ子を褒める要素がどこにあるのよ。まったく仕事してないんでしょ?」

 

 

 冷たく言い放つアイエフ。

 

プラネテューヌの諜報部員であるアイエフはネプテューヌの怠けぶりは重々承知なのだ。

 

 

「うぅ……あいちゃんまでいーすんみたいなことを言う~」

 

 

 ガックリするネプテユーヌ。

 

自業自得なのだが、彼女の辞書にはそのような文字は存在しない。

 

自分は主人公なのだから、主人公補正で怠けててもチヤホヤされるのが当然というのが彼女の思考である。

 

 

 以前にネプギア達がネプテューヌの夢を見る機会があったのだが、そこには住民に愛されているネプテューヌの姿があった。

 

確かに彼女はプラネテューヌの国民に愛されてはいるが、女神として日々の務めを果たさずに愛されたいとは少々都合のよい話ではないだろうか。

 

実際にイストワールを始めネプテューヌの仕事に関わる人物は彼女の放蕩癖には辟易している。

 

 

「ねぷねぷもちゃんとお仕事すれば褒めてあげるですよ」

 

 

 コンパはそんなネプテューヌを励ますように言葉を掛ける。

 

ちなみに【ネプ子】と【ねぷねぷ】はネプテューヌの愛称である。

 

 

「仕事をすれば……バリバリ働けば、みんな褒めてくれるの?」

 

 

 顔を上げ全員の顔を見ながら問いかけるネプテューヌ。

 

 

「勿論だよ、お姉ちゃん」

 

 

 ネプギアはネプテューヌはようやくやる気を出してくれたのかと嬉しそうに頷く。

 

 

「約束します」

 

 

 イストワールも僅かな期待を込めて返事をする。

 

 

「私も約束するわ」

 

 

 アイエフも真剣な顔で頷く。

 

 

「指切りげんまんですー」

 

 

 コンパは右手の小指を出して、指切りの仕草をする。

 

 

「だが断る!!!」

 

 

 しかし、ネプテューヌの答えはNOだった。

 

 

「えー! お姉ちゃん、みんなにここまで期待させておいてNOはないんじゃないかな?」

 

 

 ネプギアは目を丸くしてネプテューヌにツッコミを入れるが、「わたし、ネプテューヌの最も好きな言葉の一つは【働いたら負けかなと思ってる】だーーー!」とネプテューヌは声高々に宣言しながら、どこからか取り出した太鼓とラッパを鳴らす。

 

 

「わたしはいつでもフリーダム! 寝て食べて遊んで寝る! それがわたしの生きる道だーーーー!」

 

 

 ネプテューヌのポーズを決めながら力説を続ける。

 

 

「はぁ……」

 

 

 イストワールはやっぱり予想通りだったかと言わんがばかりに溜息を吐き、「少しでに期待した私がバカだったわ」と肩を落とすアイエフ。

 

 

「流石はねぷねぷですー」

 

 

 コンパだけが謎の拍手をネプテューヌに送っていた。

 

彼女はネプギアと同じくらいネプテューヌに甘い。

 

 

「ネプ子は放っておいて、ケーキ食べましょう」 

 

 

 クールなアイエフはネプテューヌのおふざけ付き合っていらないと言わんがばかりにネプテューヌのバカ騒ぎを無視する。

 

 

「私、お茶入れてきますね、食器も持ってきますので少し待っていて下さい」

 

 

 アイエフの言葉に、ネプギアはケーキを食べる準備をする為に部屋を出て行く。

 

 

「わたし、一番大きいやつー!」

 

 

 ネプテューヌは元気よく要求をする。

 

無視されたぐらいでめげる彼女じゃない。

 

 

「ネプ子の分があるわけないでしょ」

 

 

 そんなネプテューヌを冷たく突き放すアイエフ。

 

 

「ガーン!」

 

 

 これは流石のネプテューヌもショックを隠せない。

 

 

「ウソですよー。ねぷねぷの分もちゃんとあるですよー」

 

 

 コンパはそう言いながら箱の中を見せる。

 

中には五人でも十分過ぎる立派なホールケーキが入っていた。

 

 

「私は必要ないと思うんだけど、コンパがどうしてもって言うからね」

 

 

 アイエフは腕組みしながらチラリとネプテューヌの方を見ると、「もー! あいちゃんのツンデレー!」とネプテューヌはそんなアイエフの態度にニヤニヤしながら、彼女を肘で小突く。

 

 

「違うわよ!」

 

 

 アイエフはネプテューヌの発言を即座に否定する。

 

彼女にとってネプテューヌは友人ではあるが、それ以上ではなくデレる要素はまったくない。

 

どちらかと言うと、コンパの方に気がある。

 

 

「お待たせしましたー」

 

 

 そんなやり取りをしている間にネプギアが戻って来る。

 

ネプギアは手際よくお茶とお皿を並べる。

 

ちなみにイストワール用に小さいのもちゃんと用意してある。

 

 

「ネプギアー! わたしの一番大きくしてねー」

 

 

 持って来たナイフでケーキを切り分けようとするネプギアに、先程と同じ要望をするネプテューヌ。

 

ネプギアは、「うん、お姉ちゃん」と素直に頷くと一際大きく切ったケーキをネプテューヌに渡す。

 

 

「やったー! これ、わたしのだからね!」

 

 

 ネプテューヌはそう言いながら、【ねぷの】と書いた旗をケーキに突き刺す。

 

 

「子供かアンタは……」

 

 

 そんなネプテューヌの姿にアイエフは呆れ果てる。

 

その間にネプギアは切り分けたケーキを全員に配る。

 

 

「もぐもぐもぐもぐ……」

 

 

 一心不乱にケーキを頬張るネプテューヌ。

 

 

「ほら、お姉ちゃん、口元にクリーム付いてるよ」

 

 

 そんなネプテューヌの口元に付いていたクリームをネプギアがテッシュで拭う。

 

 

「いつものことながら、どっちが妹だか分からないわね……」

 

 

 それは今までの一連のやりとりを見たアイエフの素直な感想だった。

 

この姉妹を見た全員が思う感想であろう。

 

 

「ところでネプ子、そろそろちゃんと仕事しなさいよ」

 

 

 アイエフは気を取り直してケーキを頬張るネプテューヌに忠告する。

 

 

「ちゃんとしてるよー」

 

 

 ネプテューヌはケーキを飲み込むと心外と言わんがばかりに口を尖らす。

 

 

「どこが?」

 

 

 しかし、アイエフはネプテューヌの行動などお見通しなので真顔で聞き返す。

 

 

「ネプギアが」

 

 

 ネプテューヌはいけしゃあしゃあと答えると、「アンタがしなくちゃ意味ないでしょ!」とアイエフは至極当然なツッコミをする。

 

 

「あいちゃん、わかってないなー。わたしとネプギアは仲良し姉妹、一心同体みたいなものだよ」

 

 

 ネプテューヌがネプギアに擦り寄るように近づくと、「うん、お姉ちゃん」とネプテューヌの言葉に嬉しそうに答えるネプギア。

 

 

「ネプギアの手柄はわたしのもの、わたしの手柄はわたしのものだよ」

 

 

 ネプテューヌは一見いいことを言っているように聞こえるが、よく聞くと随分と勝手なことを言っていた。

 

 

「そうだね、お姉ちゃん」

 

 

 しかし、ネプギアは何の疑問もなく嬉しそうに頷く、「……いや、そこは違うでしょ……」と呆れながらツッコミをするアイエフ。

 

 

「でもさー、ぶっちゃけ、わたしが頑張ってもネプギアが頑張ってもプラネテューヌのシェアが上がるのは同じじゃん」

 

 

 ネプテューヌはケーキを食べながら話を続ける。

 

 

「だとしても、自分で頑張った時にシェアが上がると嬉しいものじゃないの? ねぇ、ネプギア」

 

 

 アイエフはネプギアに話を振ると、「そうですね。自分の頑張りが認められて、みんなが喜んでくれたんだなって実感できます」とネプギアは最近のファミ通記事によってシャアが上がった時の気持ちを思い出しながら嬉しそうに答える。

 

 

「えー? でもさ、【人の金で焼き肉が食べたい】って名言もあるし、やっぱり世の中他力本願だよねー」

 

 

 しかし、ネプテューヌには通じないようだった。

 

 

「はぁ……なんでこんなダメな子が女神なのかしら?」

 

 

 アイエフはガックリと肩を落とすと、「ダメな子ほど可愛いって言いますから~」 コンパは嬉しそうに答える。

 

コンパはこういうところも含めてネプテューヌが大好きなのである。

 

 

「それでも限度があるでしょ……」

 

 

 アイエフが頭を抱えてうなだれると、「すみません、アイエフさん。非番の日に時間を割いて来ていただいたのに……」とイストワールが申し訳なさそうに言う。

 

イストワールはアイエフが友人としてネプテューヌに忠告しに来たことに気付いていた。

 

 

「……ネプギアを褒めるついでだったからいいですよ」

 

 

 アイエフは苦笑いをしながら答える。

 

アイエフの話が終わったところで全員がケーキを食べながら談笑をする。

 

話の中心は勿論、ファミ通の記事に書かれたネプギアのことであった。

 

 

「はー!食べた食べた」

 

 

 ケーキを食べ終え満足そうにお腹をさするネプテューヌ。

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 

 ネプギアも食べ終え丁寧に一礼をする。

 

そして、「アイエフさん、コンパさん、ありがとうございました。明日からもお仕事頑張りますね」とアイエフとコンパにお礼を言う。

 

クールでドライなところが魅力なアイエフ。

 

優しく癒し系なコンパ。

 

ネプギアはネプテューヌとは違う意味で二人を姉のように慕っていた。

 

 

 以前の犯罪組織との戦いで捕まったネプギアを助け出したのもこの二人である。

 

それからも、一緒に犯罪組織と戦い続けた彼女達三人の絆は強いものであった。

 

特にネプギアはアイエフとコンパに可愛がられており、コンパは一時はネプギアが一番好きと言いアイエフにヤキモチを焼かせた程である。

 

 

「ねぷねぷも、お仕事頑張るですよ」

 

 

 コンパはネプギアの言葉に便乗してネプテューヌに仕事を勧めてくるが、「わたし、ネプテューヌの最も好きな言葉のもう一つは【食う寝る遊ぶ】だよー!」とネプテューヌは言いながら、伸びをして仰向けに倒れる。

 

 

「ネプテューヌさん、お行儀が悪いですよ。仮にも来客中です」

 

 

 イストワールが眉をひそめてネプテューヌを注意する。

 

しかし、「あ、そっか。せっかく、コンパが居るんだから膝枕してもらわないとね」とネプテューヌは注意をまったく逆方向に受け取ったようで、いそいそとコンパの膝に頭を乗せる。

 

 

「そういうことじゃありません!」

 

 

 イストワールがネプテューヌの態度に声を荒げる。

 

 

「親が死んでも食休みって言うじゃーん。と、言うことで、わたし寝るねー」

 

 

 イストワールのお説教もまるで効果なしの様子で、コンパの膝の上で寝息を立てるネプテューヌ。

 

 

「ねぷねぷは仕方ない子ですね~」

 

 

 コンパが優しくネプテューヌの頭を撫でる。

 

アイエフは頭を抱えて、「はぁ……」と溜息を付くと、「ネプ子は相変わらずね」と言いながらお手上げのジェスチャーをして首を左右に振る。

 

 

「お姉ちゃん、今は充電中ですから」

 

 

 すかさずフォローを入れるネプギア。

 

 

「過充電し過ぎじゃない? ネプ子を甘やかすのも程々にしなさい」

 

 

「ねぷねぷには、もう少しお仕事をさせた方がいいと思うです」

 

 

 しかし、そんなネプギアにアイエフとコンパがすかさず忠告してくする。

 

 

「ええっ! コンパさんまで……」

 

 

 厳しいアイエフからの反論は予想していたが、自分と同じぐらいネプテューヌに甘いコンパまで言ってくるとは思わなかったネプギアは驚きを隠せない。

 

 

「ねぷねぷのことは大好きですけど、ギアちゃんばっかりお仕事するのは不公平だと思うです。姉妹仲良く公平に。です」

 

 

 驚くネプギアに対してコンパは自分の意見を伝えてくる。

 

コンパは優しい上に甘々だが、言うべき時に言うべきことは言う子なのだ。

 

 

「私は、お姉ちゃんが喜んでくれてゲイムギョウ界が平和ならそれで幸せですから」

 

 

 コンパの気持ちは嬉しかったが、自分は不満が無い事を主張するネプギア。

 

彼女の願いは常に姉ネプテューヌの幸せとゲイムギョウ界の平和であった。

 

 

「まぁ、そう言うと思ったけどね……」

 

 

 アイエフは呆れて肩をすくめる。

 

付き合いの長いアイエフは、同じような台詞を何度もネプギアの口から聞いており、今回もそう言うだろうと予想していた。

 

 

「ギアちゃん良い子ですー」

 

 

 コンパはネプギアの頭を撫でてくれる。

 

ネプギアの台詞を予想していたのはコンパも同じであった。

 

 

「でも、少しでも不満に思ったら言いなさい。私がガツンと言ってあげるわ」

 

「わたしも、ねぷねぷに厳しく言ってあげるです」

 

 

 アイエフとコンパがネプギアを励ますように言う。

 

ネプギアは頭を下げて、「ありがとうございます」とお礼を言った。

 

ネプギアは自分の気持ちを尊重しつつ心配もしてくれる、アイエフとコンパの存在に心から感謝していた。

 

 

「……ネプギアさん」

 

 

 今まで話を聞くだけであったイストワールがネプギアに話しかける。

 

 

「どうしたんですか?神妙な顔をして……」

 

 

 ネプギアはイストワールの顔がいつにも増して真剣なことに気付く。

 

 

「ネプギアさんは、その幸せが相反するものだとしたらどうしますか?」

 

「相反?」

 

 

 イストワールの言葉に首を傾げるネプギア。

 

ネプギアにはイストワールの言っている意味がよくわからなかった。

 

 

「もし、国民のみなさんの為、ゲイムギョウ界の為にネプテューヌさんと対立しなくてはならないとしたら……ネプギアさん。あなたはどうしますか?」

 

 

 イストワールの言葉に、「えっ……な、なにを? 何を言っているんですか?」と慌てふためくネプギア。

 

予想できない質問にパニックになっているようだった。

 

 

「そんなことあるわけないですよ。お姉ちゃんとプラネテューヌの国民は一心同体なんですから。それにお姉ちゃんと対立することがゲイムギョウ界の為になるなんて絶対に無いです」

 

 

 ネプギアは力強く言う、その瞳には迷いはないようだった。

 

 

「すみません……変な質問をしてしまいましたね」

 

 

 イストワールは深く頭を下げる。

 

表情もいつも通りに戻っている。

 

 

「いえ、いいんです」

 

 

 ネプギアは特に気を悪くした様子もなかった。

 

 

「ただ、ネプギアさんがどんな選択をしようとも私はネプギアさんの味方です。それだけは憶えておいて下さい」

 

 

 イストワールの言葉に、「いーすんさん?」と言って首を傾げるネプギア。

 

ネプギアがイストワールの言葉の意味を理解するのは少し先のことであった。

 

「ところで、ネプテューヌさん宛で期限が今日のクエストがあるのですが……」

 

 

 イストワールが申し訳なさそうに口を開く。

 

ネプギアを褒めるついでにネプテューヌを連れ出す予定だったが、当のネプテューヌは安らかな寝息を立てていた。

 

 

「わかりました。私が行きます」

 

 

 ネプギアは迷うことなく自分がやることを名乗り出て立ち上がる。

 

 

「ネプ子のこと起こさなくていいの? 何なら私が叩き起こすけど」

 

 

 アイエフは右手をグーにして、スヤスヤと寝息を立てるネプテューヌに向ける。

 

 

「むにゃむにゃ……もう食べられない~」

 

 

 自分に迫る危機も知らずに、お約束の寝言を呟くネプテューヌ。

 

 

「ねぷねぷ可愛いですー」

 

 

 コンパはそんなネプテューヌを微笑みながら見守る。

 

 

「寝ているお姉ちゃん可愛いから、このまま起こさないであげて下さい。その分私が頑張りますから」

 

 

 ネプギアはやんわりとアイエフの提案を断る。

 

すると、「仕方ないわね。なら、私達も手伝ってあげるわ。行くわよコンパ」とアイエフが立ち上がる。

 

アイエフの言葉に、「はいです」とコンパは頷くとネプテューヌの頭を自分の膝から降ろし、スライヌ型のクッションに乗せる。

 

 

「いいんですか?」

 

 

 ネプギアは遠慮気味にアイエフとコンパの顔を見渡す。

 

 

「勿論よ。何の為に友達やってるのよ」

 

 

アイエフが腕組みをしながら言うと、「遠慮は無用ですー」とコンパも笑顔で快く頷いて答えてくれる。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 ネプギアはアイエフとコンパの友情に心から感謝した。

 

 

「私も行きます。それと、プラエさんとあんみつさんも呼びましょう」

 

 

 イストワールも同行を申し出る。

 

プラエとあんみつはネプギアの協力者ではあるが、まだ日が浅く、アイエフのように顔パスでネプギアの部屋を訪れることは出来ない。

 

今日はタワー内便を配り終えて、その後はクエストの予定がなかったので、ネプギアかイストワールから呼ばれるまで部屋で休憩しつつ待機をしているのだ。

 

 

「そうですね。私、プラエちゃんにメールしますね」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「あんみつさんでは無いのですか?」とイストワールが首を傾げる。

 

連絡するなら保護者役のあんみつの方が適任だと思ったのだろう。

 

 

「あんみつさんは、まだ上手くメールが開けなくて練習中なんです」

 

 

 ネプギアが真顔でそう説明すると、「そ、そうなんですか……」とイストワールが若干引き気味に答える。

 

 

***

 

 

 

 四人は部屋を出るとプラネタワーの駐車場に向かう。

 

ネプギア達は送迎車に乗る為。

 

アイエフは自分のバイク、コンパは車を持っているので、それに乗って現地に向かう為である。

 

プラエとあんみつともここで待ち合わせと言うことになっている。

 

 

「あれ? ネプギア様にイストワール様」

 

 

 駐車場に行くとそこにはファミ通が居た。

 

 

「ファミ通さん、どうしてここに?」

 

 

 今日は取材の予定がなかったので、この場にファミ通がいるのを不思議に思うネプギア。

 

 

「今日はプラネタワーの職員さんにネプギア様のことをインタビューして来たんだよ」

 

 

 ファミ通は自分がここに居る理由を手短に説明する。

 

事情を知ったネプギアは自分の評判が気になって、「えっ……そうなんですか。あの……どうでした?」とファミ通に尋ねてみる。

 

 

「心配しなくてもみんな好意的だったよ。真面目でしっかり者、ネプテューヌ様が仕事してくれない時によくフォローしてくれるって、今回も良い記事が書けそうだよ」

 

 

ファミ通が笑顔でネプギアの質問に答えると、「そうですかー、良かった」とホッと胸を撫でおろすネプギア。

 

 

「それでネプギア様はお仕事ですか?」

 

 

 今度はファミ通からの質問に、「はい、これからクエストに行くんです」とネプギアが素直に答える。

 

 

「そちらのお二人は?」

 

 

 ファミ通はアイエフとコンパを見ながらネプギアに尋ねる。

 

 

「アイエフさんとコンパさん、私の友達です。今日のクエストに協力してくれるんです」

 

 

 ネプギアがそう言うとファミ通の目がキラッと光る。

 

 

「友達! なら、いい話が聞けそうです! 是非インタビューに協力して下さい!」

 

 

 ファミ通はペンとメモを取り出し、アイエフとコンパに詰め寄る。

 

 

「協力したいのは山々だけど、私達これからクエストに行くのよ」

 

 

 アイエフはファミ通の剣幕に驚きながらもやんわりと断る。

 

しかし、「それなら同行します。私戦えますから邪魔になりませんよ」とファミ通は諦めずに食い下がる。

 

 

「いーすんさん、どうしましょう?」

 

 

 ネプギアはイストワールに相談してみる。

 

 

「私は良いと思いますよ。先日のサクラナミキでの戦いを見る限りでは十分戦力になると思いますし」

 

 

 イストワールはファミ通の同行に賛成のようだ。

 

 

「わかりました。アイエフさんとコンパさんもいいですか?」

 

 

 ネプギアはイストワールの意見を受けてファミ通の同行を承認する。

 

 

「いいわよ。あの記事書いた記者なら信用できるし」

 

 

 アイエフが快く了解すると、「わたしもいいですよー。でも、インタビューなんて緊張するですー」とコンパも快く了承する。

 

 

 暫くすると、あんみつに連れられたプラエが姿を現す。

 

そして、ネプギア達は送迎車に乗り、アイエフは緑色のバイク、コンパは赤いオープンカーに乗りクエストに向かう。

 

 

***

 

 

 プラネテューヌの東にある都市ハネダシティの駐車場に着いたネプギア達。

 

 

「葛切あんみつです。よろしくお願いします」

 

 

 アイエフ、コンパと顔を合わせたあんみつが彼女達に挨拶をすると、「プラエ=パピリオです……よろしくお願いします」とプラエも続けて挨拶をする。

 

 

「アイエフよ。よろしくね」

 

「コンパです~。よろしくお願いしますです」

 

 

 コンパとアイエフがほぼ同時に挨拶を返す。

 

アイエフが、「二人のことは、ファミ通の記事で知ってるわ。姉探しの件、私達も協力させてもらうわ」と言い、「わたしも協力するです」とコンパが言う。

 

 

「かたじけない」

 

「ありがとうございます」

 

 

 あんみつとプラエがお礼を言いながら軽く頭を下げる。

 

そして、「お二人のことはイストワール殿に伺っております。頼りにしています」とあんみつがアイエフとコンパに向かって言う。

 

 

「そう言えば、アイエフさん達はレベルいくつになりましたか? 私達は昨日10になったところです」

 

 

 イストワールは戦力を確認するためにアイエフ達にレベルを質問する。

 

イストワールはここ最近ネプギアの討伐クエストによく同行するのでレベルの上りもほぼ同じなのだ。

 

アイエフが、「私は10です」と言うと「わたしは9です~」とコンパが続く、その後にファミ通が「私も9だよ」と答える。

 

諜報部員のエリートであるアイエフは任務も確実にこなしているので、ネプギア達にも後れを取ることがないようだ。

 

コンパはネプテューヌやアイエフによく巻き込まれるので、ナースをしながらもVRトレーニングでレベルを上げている。

 

 

「この戦力なら問題は無さそうですね」

 

 

 イストワールがそう言いながらサクラナミキの時と同じようにホログラムを呼び出す。

 

 

「このハネダシティの郊外に植物型のモンスターが住み着いているので、それを排除するのが今回のクエストです」

 

 

ハネダシティのマップとモンスターの画像が現れるとイストワールがクエストの説明をする。

 

 

植物型のモンスターとは、チューリップやヒマワリの花の部分に顔があり根が足のようになって歩行するモンスターのことである。

 

根っこを鞭のように扱ったり、種を飛ばしたりして攻撃してくる。

 

 

「うわっ……植物系か~……私苦手なんだよ。VRジムでも苦戦しててさ」

 

 

 ファミ通が渋い顔をすると、「ツタがいやらしく絡まるので私も苦手です~」コンパもファミ通に同意する。

 

ツタがいやらしく絡まるのは美少女モノのお約束なので仕方ない。

 

 

「それもあるけどさ、私って打撃メインなんだよね。相性が悪くて」

 

 

 ファミ通は頭を掻きながらそう言う。

 

 

「植物系に打撃は効果が薄いからね」

 

 

アイエフはファミ通の言葉に頷きながら答える。

 

 

 攻撃属性にもそれぞれ相性がある。

 

植物のような、柔らかくしなって衝撃を吸収してしまう相手には打撃は相性が悪い。

 

 

「大丈夫です。私とあんみつさんが斬撃が得意だからフォローしますよ」

 

 

 ネプギアがファミ通の不安を払うように明るく言いあんみつも、「任せて下さい」それに合わせる。

 

 

 柔らかい植物系は打撃には強いが斬撃には弱い。

 

逆に硬い甲羅を持つ相手には打撃が強く斬撃は相性が悪い。

 

 

「よろしくお願いするよ。私はタンクに回るからさ」

 

 

 ファミ通がそう提案すると、「大丈夫ですか?」とネプギアが少し心配そうな声を出す。

 

ファミ通は、「うん」と頷くと、「VRジムでトレーニングもしたし、他の記者仲間にもアドバイス貰ったからさ」と答える。

 

 

「そうですか。それじゃあ、私と一緒に前衛でタンクをしましょう」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「一緒に居てくれると心強いよ。ありがとう、ネプギア様」とファミ通が笑顔で答えた。

 

 

「それじゃあ、前衛はネプギアとファミ通のタンク。中衛が私とあんみつとプラエでアタッカー。後衛はイストワール様がアタッカーでコンパがヒーラーね」

 

 

 アイエフは全員を見渡してパーティの編成と役割を確認する。

 

 

「はいです」

 

 

 コンパが了解の返事をするとイストワールが「わかりました。私は必要に応じて回復に回ります」と答える。

 

【ヒーラー】とは、ダメージを受けた味方を回復する癒やし役。

 

タンク、ヒーラー、アタッカーはパーティの三要素とも言われる重要な役割分担である。

 

 

「それではモンスターを退治しつつ、移動中に取材をさせて下さい」

 

 

 ファミ通は作戦がまとまったところで取材の話を切り出す。

 

アイエフが、「わかったわ」と頷き、「了解ですー」とコンパも同じように頷いた。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギア達が歩いてハネダシティの郊外まで移動するとそこには植物系のモンスターの群れが居た。

 

 

「いっぱい居るです~」

 

 

 十数体の群れの前に弱気な声を上げるコンパ。

 

プラエも、「うねうねして気持ち悪い……」と嫌そうな声を出す。

 

 

「大分街に近づいてるわね」

 

 

 対してアイエフは冷静に状況を分析していた。

 

あんみつも、「これ以上近づかれては街の者が危険ですね」と言う。

 

 

「ここで食い止めましょう」

 

 

 ネプギアがそう言いながら、ポーチからビームソードを呼び出し戦闘態勢に入る。

 

 

「ええ」

 

 

 アイエフの両手に木の葉状の刀身を持つ【カタール】が現れる。

 

これが彼女の武器である。

 

 

「がんばりますぅ!」

 

 

 コンパの両手には巨大な注射器が握られていた。

 

通常は医療品だが彼女はこれを武器として扱う。

 

 

「コンパは変わった武器を使うんだね」

 

 

 ファミ通はコンパの注射器を物珍しそうに見つめる。

 

 

「それ、アンタが言うの……って言うかそれ本当に武器?」

 

 

 アイエフはファミ通の背中に背負われた巨大なエビを見ながら言う。

 

 

「エビさんですぅ~」

 

 

 流石のコンパも驚きを隠せないようだ。

 

 

「ネプギアお姉さんの仲間の人は変わった武器ばっかり使うね」

 

 

 プラエが珍しそうな目で、アイエフ達を見る。

 

コンパやファミ通は勿論、プラエにはアイエフもカタールも珍しかった。

 

 

「プラエちゃんは、その鎖で大丈夫ですか~?」

 

 

 コンパが心配そうな顔でプラエに尋ねる。

 

プラエは、「大丈夫だよ」と明るい声で言うと、「これはクロックチェーンって言ってプラエの超能力で動くから、見た目より強いんだ」と続けて説明する。

 

彼女の言う通り、クロックチェーンは超能力で自由自在に動くので、飛び道具のように中衛から動かずに敵を狙い撃てるのだ。

 

 

「指ごとに攻撃属性が違って、近接の三属性と、魔法の九属性が使えるの」

 

 

 プラエはそう言うと、「それに、ネプギアお姉さんが守ってくれるから大丈夫」と続けて言う。

 

アイエフはネプギアを見ながら、「信頼されてるわね」と言うと、「守ってあげるって約束しましたから」とネプギアが答える。

 

 

「あと、あんみつが凄く強いから、全然怖くないよ」

 

 

 プラエの言葉に、「恐縮です」とあんみつが答える。

 

アイエフが、「ファミ通の記事にもあったけど、かなりの使い手みたいね」とあんみつに尋ねると、「まだまだ修行中の身です」とあんみつが答える。

 

 

「後で手合わせをお願いしたいわ」

 

 

 アイエフがそう言うと、「承知しました。まずは目の前の敵を倒しましょう」とあんみつが答える。

 

 

「キシャー!」

 

 

 一メートル程の大きさのチューリップの形をした植物系モンスターがネプギア達に気付いて威嚇の咆哮を上げる。

 

このモンスターの名前はそのままの【チューリップ】である。

 

 

「来ます!」

 

 

 イストワールが警告の声を上げる。

 

チューリップが根を足のように動かしてネプギア達に近づいてくる。

 

 

「まずはあの敵を倒しましょう」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「そうね。行くわよ、ネプギア」とアイエフが答える。

 

 

「はい!」

 

 

 ネプギアが返事をすると、二人同時にモンスターの近づいてきたチューリップを迎え撃つ。

 

 

「冥界に落ちなさい! クロスエッジ!」

 

 

 アイエフのカタールがモンスターを切り裂く。

 

【クロスエッジ】は斬属性の連続攻撃。

 

 

「ギギャー!」

 

 

 アイエフのクリティカルヒットで75ダメージを受けるチューリップ。

 

HPゲージも五割以上減少している。

 

 

「流石アイエフさん」

 

 

 ネプギアが感心の声を漏らす。

 

アイエフは技量が高くクリティカルヒットが出やすい。

 

 

「続けて行きます! フレイムエッジ!」

 

 

 立て続けにチューリップにネプギアの縦切りが命中する。

 

【フレイムエッジ】は魔法の火属性を付与した斬撃、魔法剣である。

 

チューリップの切り裂かれた箇所が燃え上がる。

 

 

「ガァァァ!」

 

 

 悲鳴を上げるチューリップ。

 

植物系のモンスターは斬撃も火属性も苦手なので68の大ダメージを受けてHPゲージがゼロになり戦闘不能になる。

 

 

「シャーッ!」

 

 

 アイエフの攻撃後の硬直を狙って、別のチューリップ型のモンスターが花びらをドリルように回転させ突撃してくる。

 

 

「悪くはないけど、私には当たらないわよ」

 

 

 avoid。

 

アイエフは素早くステップを踏み、紙一重で攻撃を避ける。

 

素早い回避もアイエフの特技である。

 

 

「その隙、見逃しません! フレイムエッジ!」

 

 

 アイエフに攻撃を避けられ隙だらけのチューリップに、ネプギアの横切りが命中すると70のダメージを与えてHPゲージを五割以上減らす。

 

 

「ナイスよ、ネプギア」

 

 

 アイエフが称賛すると、「はい、ありがとうございます」とネプギアがそれに応える。

 

次の瞬間、「助太刀いたす! 旋風烈剣」とあんみつが竜巻を飛ばし、「クロックチェーン、四時。敵を焼き尽くして!」とプラエが右薬指の鎖を伸ばす。

 

 

 

「クギャーーー!」

 

 

 

 チューリップに二つの攻撃が同時に当たり、104のダメージが当たるとチューリップはHPゲージがゼロになり戦闘不能になる。

 

 

「こいつらの攻撃には当たる気がしないわ。私がタンクをするわ」

 

 

 アイエフがそう言うと、「了解しました」とネプギアが答える。

 

そしてアイエフが囮になり、ネプギアとあんみつとプラエが攻撃するというコンビネーションで次々とチューリップを撃破していく。

 

アイエフのように攻撃を避けて囮をする役を【回避系タンク】と呼ぶ。

 

普通のタンクと違いダメージを受けないので、ヒーラーも攻撃に参加できるようになる。

 

 

「なんて息の合ったコンビネーション! 特にアイエフさんの回避に合わせたネプギア様の攻撃がスゴイ!」

 

 

 ファミ通がネプギアとアイエフの活躍をカメラに収める。

 

 

「犯罪組織との戦いでは、あいちゃんとギアちゃんはずうっと一緒に戦ってましたから」

 

 

 コンパが嬉しそうに解説をする。

 

更に、「それだけではありません。ネプギアさんが繋ぎとなって、アイエフさんからネプギアさん。ネプギアさんからプラエさんとあんみつさんに連携が繋がっています。これはネプギアさんの高い連携能力が成せる技ですよ」とイストワールがネプギアのアピールをする。

 

ファミ通はメモを取りつつ、「なるほどなるほど」としきりに頷いた。

 

イストワールはファミ通のメモが取り終わったのを確認すると、「ところでファミ通さん、取材もいいですが戦闘の方もお願いしますね」と落ち着いてファミ通に忠告する。

 

 

「そうでした! 私も戦闘に参加しないと!」

 

 

 慌てて戦闘に参加するファミ通。

 

ネプギアが、「ファミ通さん達は、はぐれている敵を攻撃してください」と言うと、「オッケー!」とファミ通が返事をする。

 

 

 ファミ通がはぐれているチューリップを見つけると、「いただきー!」と攻撃を仕掛ける。

 

チューリップに18のダメージが当たるがHPゲージは二割程度しか減らず、「やっぱり打撃は効かないなー」とファミ通が愚痴を漏らす。

 

 

「シャー!」

 

 

 チューリップが触手でファミ通に反撃をしてくる。

 

 

「うおっと!?」

 

 

 ファミ通が攻撃を受けると23のダメージを受けHPゲージが二割減少する。

 

 

「援護します! 炎の矢よ敵を撃て、ファイアーアロー!」

 

 

 イストワールがチューリップに向けてファイアーアローの魔法を放つ。

 

チューリップに75ダメージを受けてHPゲージが残り半分以下になる。

 

 

「私も頑張るですー」

 

 

 続けてコンパの注射器の針から、勢い良く液体が噴き出す。

 

 

「グワアアア!」

 

 

 当たったチューリップは苦しそうにしている。

 

何気に劇薬入り注射器なのである。

 

23ダメージを受けたチューリップはHPゲージが残り一割になる。

 

 

「よしっ! ここからなら!」

 

 

 再びチューリップに攻撃を仕掛けるファミ通。

 

20のダメージが当たると、HPゲージがゼロになりチューリップが戦闘不能になる。

 

ファミ通達はコンパがファミ通のHPを回復しつつ、指示通りはぐれているチューリップを協力して撃破していった。

 

 

「シャー!」

 

 

 チューリップの群れの後ろから今度は黄色い花のモンスターの群れが現れる。

 

ヒマワリ型のモンスター【ヒマワリン】である。

 

 

「援軍!?」

 

 

 アイエフが驚きの声を上げる。

 

それと同時に、数体のヒマワリンがヒマワリの種にあたる部分を機関銃のように飛ばしてアイエフに向けて一斉射撃してくる。

 

 

「はっ!」

 

 

 avoid。

 

素早い横ステップで弾を回避するアイエフ。

 

 

「シャー!」

 

 

 しかし、ヒマワリンの集団は次から次へと弾を連射してくる。

 

 

「このっ! しっこい……」

 

 

 左右に素早くステップして回避するアイエフ。

 

avoid、avoid、avoid、立て続けに回避をするアイエフ。

 

しかし、回避を連続するとスタミナを消費して次第に回避率が下がってしまう。

 

 

「……っ!」

 

 

 回避に優れたアイエフも例外ではなく、次第に動きが鈍くなってしまう。

 

執拗に続く射撃にを何とか宙返りで回避するが動きにキレが無くなってきて表情も険しい。

 

 

「ウシャーーー!」

 

 

 ヒマワリンの集団がここぞとばかりに弾幕を張って来る。

 

宙返りで回避したアイエフの着地地点にヒマワリンの弾が迫る。

 

 

(直撃!?)

 

 

「あぶない!」

 

 

 避けきれない、アイエフがそう思った瞬間に、ネプギアが間に入ってアイエフを庇う。

 

 

「くっ……」

 

 

 直撃を受けたネプギアは28ダメージを受けHPゲージが二割ほど減少する。

 

 

「大丈夫?」

 

 

 無事に着地したアイエフはネプギアを心配する。

 

 

「ぎあちゃん、今回復するです!」

 

 

 コンパの手から救急箱が現れる。

 

するとネプギアの体が緑色の光に包まれてHPゲージが満タンまで回復する。

 

ゲイムギョウ界の応急処置はすぐさま効果を発揮してHPを回復できるのだ。

 

コンパの持つポーチの中には武器の他に沢山の救急セットが入っているのでいつでも治療ができる。

 

 

「って、コンパがいるんだから心配する程のことじゃないわね」

 

 

 普段はおっとりしたコンパもネプギアとアイエフとは戦い慣れているので、絶妙なタイミングで回復をしてくれる。

 

 

「こいつ等とは少し相性が悪いわ。壁役をお願い出来る」

 

 

 回避に優れるアイエフだが、その分防御が弱い。

 

先ほどのように手数で攻めて来て回避が追い付かない相手は少々苦手である。

 

回避系タンクは通用する相手には滅法強いが、通じなくなると途端に脆くなる。

 

 

「はい! わかりました」

 

 

その為、今度はネプギアが盾になって前に出る。

 

 

「シャー!」

 

 

 先程と同じようにネプギアに弾幕を展開してくるヒマワリンの集団。

 

 

「フィールド展開!」

 

 

 ネプギアの左手に防御用の魔法陣が展開される。

 

通常は魔法使いが身を守ったり前衛をサポートするのに使う防御用魔法。

 

 

 ヒマワリンの弾がネプギアの魔法陣に弾かれる。

 

手数は多いが威力は低く防御力の高い上に防御の魔法陣を張ったネプギアには通じずダメージは5程度。

 

 

「シャー!?」

 

 

 ヒマワリン達はアイエフの時と同じように執拗に連射するが、ネプギアはビクともしない。

 

 

「クロスエッジ!」

 

「弧月剣!」

 

 

 ネプギアを囮に接近したアイエフとあんみつがヒマワリンを次々と撃破をしていく。

 

 

「クロックチェーン。四時、あの弱った敵を焼いて!」

 

 

 更に仕留め損ねた敵にはプラエがトドメ刺していく。

 

 

「おおっ! ネプギア様は色々な戦い方が出来るんですね」

 

 

 ネプギアとアイエフの状況に合わせてアタッカーとタンクを交代する見事なコンビネーションに感嘆するファミ通。

 

 

「仲間の状況に合わせて臨機応変に立ち回れるのは、ネプギアさんの強みの一つです」

 

 

 何でもそつなくこなすネプギアはアタッカー、タンク、ヒーラーなんでもこなせる。

 

協調性も高いのでコンビネーションも抜群である。

 

 

「なるほどー、って! こういう時のタンクは私の役目だった!」

 

 

 ネプギアとアイエフのコンビネーションに見とれていたことに気付いたファミ通は、今になって自分の役割を思い出す。

 

慌てて前衛に赴くファミ通。

 

しかし、モンスターはネプギアとアイエフのコンビネーションに圧倒され、既に大勢が決していた。

 

 

***

 

 

 

「いや~、みんな凄いな。私、ほとんど何も出来なかったよ」

 

 

 ネプギアとアイエフの活躍に感嘆するファミ通。

 

しかし、「私はアイエフさんの動きに合わせただけですよ」と ネプギアは自分よりアイエフの活躍を主張する。

 

更に、「それにあんみつさんとプラエちゃん、コンパさんといーすんさんも後衛でサポートしてくれましたから」と他の仲間のサポートも付け加える。

 

 

「ネプギア様は相変わらずだねー」

 

 

 自分より仲間の活躍をアピールするネプギアの姿勢に慣れた様子で対応するファミ通。

 

流石はベテランの記者でネプギアの自分のことより仲間を優先する性格をいち早く掴んでいた。

 

 

「あっ! ごめんなさい。もっとカッコイイパフォーマンスをした方がいいですよね!」

 

 

 しかし、ネプギアはファミ通の態度を勘違いしたようで慌ててしまう。

 

サクラナミキの時は変身後で強気になっていたので自分の謙虚な気持ちを押し通したが、変身前ではそうはいかないようだ。

 

 

「えーと……うーんと……ね、ねっぷねぷにしてあげましたー!」

 

 

 ネプギアは堅い笑顔にVサインをする。

 

 

「ぷっ……ネプギア様は面白いね」

 

 

 ファミ通はネプギアの堅い笑顔に思わず笑いだしてしまう。

 

 

「あっ! これじゃあ、お姉ちゃんの真似ですよね! 私らしく私らしく…」

 

 

 必死に考え込むネプギアに、「ネプギア様はそのままでいいですよ」とファミ通はストップを掛ける。

 

 

「えっ……? でも、いつもの私じゃ面白くないですよね……」

 

 

 ネプギアは少し自信無さそうに質問すると、「確かにネプギア様はネプテューヌ様のような強烈な個性は無い思う」とファミ通はネプギアの質問に正直に答える。

 

 

「実際に前にネプギア様を取材した同僚からも【いい子だけど面白味欠けるから記事のネタとしてはイマイチ】って言われたし」

 

 

 ファミ通の出版社は歴史が古く、もちろん犯罪組織との戦いの後に他の記者がネプギアを取材した。

 

しかし、その記者は控えめで自己主張の薄いネプギアよりネプテューヌ達の方が記事にしやすいと判断してネプテューヌをメインにした記事を書いたらしい。

 

 

「……やっぱりそうですよね」

 

 

しゅんとしてしまうネプギア。

 

 

「でも、それは他人の意見。なにが面白いかなんて人それぞれだし、何より記事を面白くするのは私達記者の仕事だよ」

 

 

ファミ通の言葉に、「え?」顔を上げるネプギア。

 

 

「私はネプギア様のことを凄く魅力的に感じてるんだ、それを更に魅力的にして記事にしたい。もしかしたら万人受けはしないかもしれないけど、ネプギア様のような子の記事を待っている人は絶対に居ると思う」

 

 

 ファミ通は顔を上げたネプギアに目を合わせて自分の意見を伝えると、「ファミ通さん……」とネプギアが感心したような明るい声で応える。

 

 

「だから、いつも通りのネプギア様でいいんだよ」

 

 

 ファミ通の言葉にネプギアは、「わかりました」と素直に頷く。

 

 

「へぇ……いい記者じゃない」

 

 

アイエフがファミ通の対応に関心すると、「いやいや、それほどでも」とファミ通は頭を掻いて照れくさそうにする。

 

 

「それじゃあ、そろそろ二人へのインタビューを初めていいかな?」

 

 

ファミ通がいつものようにペンとメモをを取り出しアイエフとコンパに確認を取る。

 

 

「いいわよ」

 

「頑張りますー」

 

 

 快く承諾するアイエフとコンパ。

 

 

「まずは、ネプギア様のアナライザーで、お二人の能力を測定してもらいましょう」

 

 

 ファミ通がそう言うと、「え? そうなんですか?」とネプギアが不思議そうな顔で答える。

 

ファミ通は、「この測定、編集部でも好評なんで出来るだけデータ取って欲しいって言われてるんですよ。もしかしてダメでしたか?」と少し控えめに言う。

 

 

「そんなことありませんけど……」

 

 

 ネプギアが特に不満がないふうに言うと、「アイエフさんとコンパさんはどうでしょうか?」と二人に質問をする。

 

 

「私はいいわよ。少し興味あったし」

 

 

 アイエフが快く答えると、「わたしもオッケーです」とコンパも快く答えてくれる。

 

 

「それじゃあ、失礼しますね。まずはアイエフさん」

 

 

 ネプギアはそう言うと、Nギアを操作してアナライザーを起動させる。

 

 

【アイエフ】

elemental(属性):風

 

character class(クラス):シーフ【素早さが高い。アイテム盗み】

 

growth(成長タイプ):普通

 

hit point(HP):C

 

magic point(MP):C

 

power(攻撃力):C

 

shot(射撃力):C

 

magic(魔法攻撃力):C

 

support(回復&補助能力):C

 

weakened(弱体化&状態異常):C

 

defense(防御力):C

 

resist(魔法防御力):C

 

speed(スピード):A

 

stamina(スタミナ):B

 

accuracy(命中精度):A

 

avoidance(回避精度):S

 

capacity(最大シェア):E

 

dexterity(クリティカル率):S

 

cooperation(連携、合体技補正):B

 

luck(運):C

 

Intuition(直感):A

 

tension(シェア増加率):C

 

cool(シェア減少率):B

 

guts(HP減少時の能力補正):E

 

casting speed(詠唱速度):C

 

memory(記憶力):C

 

tactics(戦術):B

 

strategy(戦略):B

 

command(指揮):B

 

zone of control(ZOC):E

 

trick(策略):B

 

adaptation(適応力):C

 

learning(学習能力):B

 

viability(生活能力):B

 

politics(政治):C

 

mechanic(機械技術):B

 

computer(コンピューター技術):B

 

 

 

「おおっ!? 速度と回避に全振りな能力ですね」

 

 

 ファミ通が驚いたように言うと、「人呼んで、ゲイムギョウ界に吹く一陣の風よ」とアイエフが腕組みしながらドヤ顔を決める。

 

 

「一陣の風?」

 

 

 ファミ通が不思議そうに首を傾げる。

 

アイエフはファミ通のリアクションを特に気に留めず、「なかなか正確に出るじゃないコレ。流石はネプギアの作った機械ね」とネプギアを褒める。

 

ネプギアは嬉しそうに、「ありがとうございます」と言う。尊敬するアイエフに褒められたのが嬉しいのだ。

 

 

「次はコンパさんです」

 

 

 ネプギアはそう言うと、Nギアをコンパに向ける。

 

 

【コンパ】

elemental(属性):水

 

character class(クラス):ヒーラー【回復、補助魔法重視】

 

growth(成長タイプ):普通

 

hit point(HP):D

 

magic point(MP):A

 

power(攻撃力):C

 

shot(射撃力):C

 

magic(魔法攻撃力):B

 

support(回復&補助能力):S

 

weakened(弱体化&状態異常):A

 

defense(防御力):D

 

resist(魔法防御力):A

 

speed(スピード):E

 

stamina(スタミナ):D

 

accuracy(命中精度):D

 

avoidance(回避精度):E

 

capacity(最大シェア):E

 

dexterity(クリティカル率):E

 

cooperation(連携、合体技補正):B

 

luck(運):A

 

Intuition(直感):D

 

tension(シェア増加率):D

 

cool(シェア減少率):E

 

guts(HP減少時の能力補正):E

 

casting speed(詠唱速度):C

 

memory(記憶力):B

 

tactics(戦術):E

 

strategy(戦略):E

 

command(指揮):E

 

zone of control(ZOC):E

 

trick(策略):E

 

adaptation(適応力):S

 

learning(学習能力):B

 

viability(生活能力):S

 

politics(政治):E

 

mechanic(機械技術):C

 

computer(コンピューター技術):C

 

 

 

「今度はのんびりまったりと癒し系の能力ですね~。まさにヒーラーって感じです」

 

 

 ファミ通が笑顔で言うと、「おや? 弱体化や状態異常も得意なんですか?」と首を傾げる。

 

その項目は特別ヒーラーが高いということはないので、不思議に思ったよううだ。

 

 

「はいです。病院から、悪い子にお注射する用の薬を持ってきてるんですよ」

 

 

 コンパは笑顔で答えるが、ファミ通はやや青ざめながら、「……それってマズイんじゃ……」と言う。

 

 

「とりあえず、今のは聞かなかったことにして、本格的なインタビューに入りましょう」

 

 

 ファミ通がそう言うと、「物わかりの良い記者で助かるわ」とアイエフが言う。

 

それを聞いたネプギアは苦笑いをしつつ、「あはは……」と乾いた笑いを浮かべるだけだった。

 

 

「?」

 

 

 当の本人であるコンパは何も分かってないように、右人差し指を口に当てつつ首を傾げるだけであった……。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 歩きながら、「早速ですが、お二人はネプギア様をどう思いますか?」と本格的なインタビューを始めるファミ通。

 

 

「そうね……。素直で真面目で、良く出来た妹分ってところかしら」

 

 

 アイエフが右手をあごに当てながら答えると、「ギアちゃんは誰にでも優しくて何にでも一生懸命ですー」とコンパが続けて笑顔で答える。

 

二人のネプギアに対する印象はかなり良いようだ。

 

 

「ふむふむ……健気で思いやりがあるってことですね」

 

 

 ファミ通は懸命にメモを取る。

 

アイエフは更に、「ええ、だからこそ守ってあげたくなるのよね」と言い、「清純派ヒロインのお手本みたいな子です~」とコンパもそれに続く。

 

 

「なるほど……まさしく王道って感じですね」

 

 

 ファミ通はアイエフとコンパの言葉にしきりに頷く。

 

アイエフとコンパの褒め言葉に、「目の前でそんなこと言われると、ちょっと恥ずかしいです……」顔を赤らめるネプギア。

 

 

「でも、守られてるだけじゃないのよ。いつの間にか強くなって、ゲイムギョウ界を救ってくれたし」

 

 

 アイエフはまるで自分のことのようにネプギアのことを自慢する。

 

 

「ギアちゃんと一緒にゲイムギョウ界を救ったのは、私の自慢の一つですー。履歴書に書きたいぐらいです」

 

 

 コンパも同じく大きな胸を張って自慢するように言うと、「コンパ……履歴書は止めておいた方がいいと思うわ」とコンパの天然ボケに緩やかにツッコミを入れるアイエフ。

 

 

「あっ、もう病院で働いているんですから履歴書は必要ないですよね」

 

「コンパさん、アイエフさんが言いたいのはそういうことじゃないと思います」

 

 

 今度はネプギアがコンパにツッコミをする。

 

 

「お二人はネプギア様と一緒に犯罪組織とも戦ったんですね」

 

 

 ファミ通の質問に、「ええ、この子の旅立ちからずっと一緒に居たわ」と答えるアイエフは昔のことを思い出し懐かしんでいるようだった。

 

 

「私、アイエフさんとコンパさんが居なかったら何も出来なかったと思うんです。二人に守られて色々教えて貰って、それであの旅が出来たんだと思います」

 

 

 ネプギアは犯罪組織との戦いで最初から見守ってくれたアイエフとコンパの存在に感謝を伝える。

 

 

「そんな風に言われると、お世辞でも照れるじゃない」

 

 

 頬を赤らめるアイエフ。

 

 

「お世辞じゃありません。アイエフさんとコンパさんはもっと評価されるべきだと思うんです」

 

 

 真剣な目で力説をするネプギア。

 

 

「もっと評価されるべきなのは、アンタよネプギア」

 

「そうですー。ギアちゃんは出来る子ですー」

 

 

 アイエフとコンパはずっと見守ってきたネプギアのことを高く評価していた。

 

 

「そ、そうでしょうか……」

 

 

 尊敬する二人に褒められて、戸惑いながらも嬉しそうなネプギア。

 

 

「ネプギアと一緒にゲイムギョウ界を救ったのは私の誇りなのよ。アンタが堂々としてなきゃ、私も誇れないじゃない」

 

 

アイエフの言葉に、「はい、頑張ります」と頷くネプギア。

 

 

「この子に足りないのは自信。ファミ通、この子の自信が付くような記事を書いてちょうだい」

 

 

 付き合いの長いアイエフはネプギアの欠点をよく理解していた、なのでそれを克服させてあげたいという強い気持ちをファミ通に訴える。

 

 

「任せて下さい」

 

 

アイエフの要望にファミ通はサムズアップで応える。

 

 

ビーッ! ビーッ!

 

 

 Nギアから警告音が鳴る。

 

 

「敵の反応です! 十二時方向! 距離800」

 

 

 ネプギアはNギアを見ると同時に敵の接近を全員に伝える。

 

 

「いいところに来たわね。ファミ通、カッコイイところ見せてあげるわ。ネプギア、アレをやるわよ」

 

 

アイエフの言葉に、「わかりました! アレですね」と力強く頷くネプギア。

 

 

「おおっ! 何か記事のネタになりそうなことですね!」

 

 

 ファミ通が期待の眼差しを送る。

 

 

「ファミ通さん、私とコンパさんがサポートしますので前衛に出て敵の足止めをして下さい」

 

 

 イストワールが指示を出す。

 

 

「バッチリサポートしますので、安心して下さい」

 

 

 コンパは救急箱を両手に持ってヒーラーの自分をアピールする。

 

 

「了解。今回はイイところ見せますよ」

 

 

 ファミ通は先程の戦闘であまり活躍出来なかったことに対する名誉挽回と言わんがばかりに意気込んで前衛に出る。

 

 

「あんみつさんとプラエさんは少しでもいいので敵を減らして下さい」

 

 

 イストワールがそう言うと、「承知」とあんみつが頷き、「わかった」とプラエも続いて頷く。

 

ネプギア達はファミ通を前衛に中衛にあんみつとプラエ。残りのメンバーを後衛にして敵に近づいていく。

 

 

「キシャー!」

 

「ウシャー!」

 

 

 うねうねと根っこで歩きながら接近してくる植物系モンスターの群れ。

 

数にして二十数体は居る。

 

 

「おっと、ここから先は通行止めだよ」

 

 

 ファミ通は一人でモンスターの群れに立ちはだかる。

 

 

「シャー!」

 

 

 ヒマワリンの群れのマシンガンがファミ通に向けて発射される。

 

 

「こんなもの! ネプギア様のやり方見てたからバッチリ対処できるよ」

 

 

 ファミ通は巨大なエビを盾にして防御する。

 

 

「防御にはそこそこ自信があるんだ」

 

 

 ファミ通の言う通り、そのダメージ10に満たずはHPゲージ一割分も減らなかった。

 

 

「ガアアア!」

 

 

 今度はチューリップの群れの連続ドリル攻撃がファミ通に襲い掛かる。

 

 

「あいたっ! これは防御してても結構効くね」

 

 

 ファミ通の顔が苦痛に歪む。合計38ダメージを受けてHPゲージが四割ほど削られる。

 

 

「キミ達は向こうに行っててくれるかな!」

 

 

 ファミ通は野球のフルスイングのようにチューリップの一体を思いっきり殴りつける。

 

 

「シュゥゥゥーッ!」

 

 

 チューリップは18ダメージを受けてノックバックされて大きく吹き飛ばされる。

 

 

「ファミ通さん、ナイスだよ」

 

 

 プラエがファミ通に賞賛を送ると同時に、あんみつが吹き飛ばされて来たチューリップに切りかかり、更にプラエの鎖が襲い掛かる。

 

プラエとあんみつはその一体を集中攻撃して戦闘不能に追い込む。

 

 

「ファミ通さん、今回復するです!」

 

 

 後衛のコンパがファミ通を治療するとHPゲージが全快する。

 

 

「よーし。まだまだ行けるよー」

 

 

 ファミ通は大ダメージは出せないが、防御とノックバックを使って指示通り時間稼ぎをする。

 

ノックバックで吹き飛ばした敵はプラエとあんみつがキッチリ戦闘不能にしていく。

 

 

 しかし、モンスターの群れがファミ通に一斉に襲い掛かり集中攻撃をかける。

 

 

「あいたたた!」

 

 

合計で90近いダメージを受けてファミ通のHPが九割も減ってしまう。

 

ゲージの色も危険域の赤になる。

 

 

「天の恵み!」

 

「治療するですー!」

 

 

 だが、イストワールとコンパの二人で回復したおかげでファミ通のHPゲージがあっという間に全快する。

 

タンクは敵を通さないように立ち回り、ヒーラーはタンクが倒れないようタイミングよくHP回復するのが、それぞれの役割である。

 

 

 ファミ通達の後ろではネプギアとアイエフが目を閉じ声を合わせて呪文の詠唱をしていた。

 

二人は何故か右手で顔を隠して左手で自分を抱きしめるようなポーズをしている。

 

 

「「……地獄に眠る闇の炎よ……我が手に宿り敵を喰らい尽くせ……」」

 

 

 二人の周りのペンネルで書かれた黒紫色の魔法陣が怪しい輝きを放つ。

 

 

「塵も残さないわ! いくわよ、魔界粧・裏轟炎!!」

 

 

 アイエフがそう叫ぶとアイエフの手から放たれた黒紫色の炎がモンスターの群れに襲い掛かる。

 

 

「「「ギヤァァァァァ!」」」

 

 

 120以上のダメージを受けて次々と戦闘不能になる植物系モンスターの群れ。

 

火は勿論、光を浴びて育つ植物系モンスターには闇も弱点であった。

 

 

「闇の炎に抱かれて消えなさい!」

 

 

 敵の消滅を確認したアイエフが着ているコートをひるがえして決め台詞を言う。

 

 

「おおっ、合体魔法ですね」

 

 

 ファミ通はネプギアとアイエフに駆け寄りながら言う。

 

 

「違うわ」

 

 

 しかし、アイエフが首を横に振って否定する。

 

 

「今のは私の中に眠るダークフレイムマスターの力を一時的に開放したのよ」

 

 

 そこまで言うとアイエフは右手を抑えてうずくまる。

 

 

「アイエフさん!」

 

 

 ネプギアはアイエフを心配するように駆け寄る。

 

 

「くっ……やはりこの力は反動が強すぎるわね」

 

 

 アイエフは苦しそうな表情でそう言うと息を切らす。

 

 

「あの、出来れば説明してほしいかな」

 

 

 一連のやり取りを見ていたファミ通は少し不審そうにネプギアに質問する。

 

 

「実はアイエフさんは闇の炎の使い手のダークフレイムマスターなんですけど、闇の炎は己の身も焦がす諸刃の剣なんです。だから、普段は私の女神の力で抑えているんですけど、いざという時はその力を開放して私達を護ってくれるんです」

 

 

 ネプギアは神妙な声で説明をする。

 

 

「それってウソだよね」

 

 

 しかし、ファミ通はあっさりとその説明を否定する。

 

 

「う、うそじゃないですよ!」

 

 

 言葉とは裏腹に大慌てのネプギア。

 

その姿は【ウソですよ】と言っているようなものだった。

 

 

「ツッコミどころは満載だけど、とりあえずそんな諸刃の剣をザコモンスターに使わないでしょ」

 

 

 ファミ通は落ち着いて説明をする。

 

 

「ま、それもそうよね。でも、ウソではないわ。私とネプギアの間ではそういう設定になっているの」

 

 

 アイエフは初めからバレるのが分かっていたのか、何事も無かったように立ち上がると落ち着いて話す。

 

 

「……設定って……もしかしてアイエフって中二病? しかも邪気眼系」

 

 

 ファミ通は首を傾げてアイエフに対して質問する。

 

中二病の邪気眼系とは、自分には隠された強力な能力があると思いこむタイプ。

 

 

「世間一般ではそう言うわね。よく、ネプ子とかにからかわれたりするけど、この子はそうじゃないのよね」

 

 

 アイエフはそう言いながらネプギアに目を向ける。

 

 

「ネプギアは私の設定を笑わずに真剣に聞いてくれるどころか、アドバイスをくれたり今みたいに協力してくれたりもするのよ」

 

 

 アイエフも以前は中二病と言われると恥ずかしい思いをしたが、真剣に話を聞いてくれるネプギアのおかげで今は恥ずかしいとは思わず堂々としている。

 

 

「協力ってことは、やっぱり合体魔法だったんですね」

 

 

 ファミ通はメモを取りながら質問をする。

 

 

「はい、アイエフさんの【魔界粧・轟炎】に私が闇属性の魔法を合体させたんです」

 

 

 ネプギアがファミ通の質問に丁寧に答える。

 

魔界粧・轟炎とはアイエフが中二病を拗らせた末に作りだした火属性の独自魔法【オリジナルスペル】である。

 

魔界の炎が敵を焼き尽くす……と言う設定らしい。

 

 

「私としてはどうしても闇の炎が使いたくてね。それをネプギアに相談して編み出したのがさっきの魔界粧・裏轟炎よ」

 

 

 アイエフが説明に付け加える。

 

魔界粧・裏轟炎は先程ネプギアが言ったようにアイエフの魔界粧・轟炎にネプギアが闇属性魔法を合わせる火と闇の合体魔法。

 

アイエフの中二病をネプギアが後押する形で二人で考えられたものだが、実戦でも十分に力を発揮する。

 

 

「真面目だけど意外とノリが良い子でね。私の設定に付き合ってくれたり、他にも特撮ヒーローが好きな子とは一緒に飛び蹴りしたり、錬金術師の子とは合成で、歌手の子とは歌での合体技してたりしたわね」

 

 

「なるほど! ネプギア様はすごく友達思いなんですね」

 

 

 ファミ通はアイエフがこの魔界粧・裏轟炎を発明したエピソードを話して、ネプギアの友達思いのところをアピールしたいんだと考えたようだ。

 

 

「ちょっと違うわね」

 

 

 

アイエフの言葉に、「ちょっと……ですか?」とファミ通が首を傾げる。

 

 

「さっきコンパも言ったけど、この子は誰にでも優しいのよ。それが例えモンスターや犯罪組織の一員であっても」

 

 

 アイエフの言う通りネプギアは相手が敵であっても気遣ってしまう。

 

攻撃する相手につい謝ってしまったり、犯罪組織の一員を意図的に見逃すこともあった。

 

 

「敵に情けを掛けるですか……」

 

 

ファミ通は考え込んでしまう。

 

 

「……やっぱり、女神としては良くないですよね。お姉ちゃんもゲームを違法コピーする人は無期懲役って言ってましたし」

 

 

 ネプギアは俯きながら言う。

 

ネプギア自身も自分のこの性格が女神には向いていないことは分かっていた。

 

 

「ネプギア様は何で敵に情けを掛けるんですか?」

 

 

 ファミ通がネプギアに質問する。

 

 

「……私はゲイムギョウ界に生まれた全ての人、いえ全ての命に意味があると思ってます」

 

 

 ネプギアは顔を上げてファミ通の質問に答える。

 

 

「だから、モンスターも犯罪組織の人も心を入れ替えて一緒に平和に暮らすことが出来たらいいなって」

 

 

 ネプギアは真剣な目でファミ通に語る。

 

 

「私は女神の力はその為にあるんだって、そう思ってます」

 

 

 ネプギアは力強く言い切る。

 

続いてプラエが、「プラエはネプギアお姉さんの夢のお手伝いをしているの」と言う。

 

 

「……ネプギア様は純粋で優しい理想家なんだね」

 

 

 ファミ通が優しい声でネプギアに答える。

 

 

「そうよ。この子はゴミ溜めの中にも美点を見出すタイプなの」

 

 

 アイエフがそう言うと、「なるほど、アイエフの言いたいことがなんとなくわかったよ」と言ってファミ通は深く頷く。

 

 

「今すぐには無理だけど、いつかネプギア様の想いがゲイムギョウ界中に届くような記事を書いてみせるよ」

 

 

 ファミ通は力強くサムズアップを決める。

 

 

「本当ですか!」

 

 

 ネプギアが自分の理想を語ることはこれが始めてのことではなかった。

 

犯罪組織を壊滅させた直後の取材で同じことを言ったことがあったが、世間には【夢見がちな子供】と評価され国を治め守護する守護女神としては物足りないと言われることが大半だった。

 

ネプギア自身もそのことを自分で分かっていたので大きなショックではなかったが、自分が女神に向いてないことを認識させられてしまった。

 

 

「あなたならそう言ってくれると思ったわ」

 

 

 アイエフは嬉しそうにファミ通に手を差し出す。

 

 

「任せて下さい」

 

 

ファミ通はアイエフの手を握りがっちりと握手を交わす。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 ネプギアはアイエフとファミ通にお礼を言うと頭を下げる。

 

 

「ネプギアもちゃんと頑張りなさいよ。夢を語るだけじゃ夢想家止まりよ、ちゃんと行動して現実にしていかないとファミ通も記事を書けないわよ」

 

 

アイエフはネプギアに向かって真剣な声で言う。

 

 

「はい! まずは目の前のクエストですね」

 

 

 ネプギアは元気よく言う。

 

 

「あいちゃんもぎあちゃんのこと大好きなんですね」

 

 

 一連のやり取りを見ていたコンパは嬉しそうにアイエフに話しかける。

 

 

「私はネプギアの理想が叶うなら見てみたいのよ、その世界を」

 

 

 アイエフはコンパに答える。

 

 

「そうですね~。すごく大変なことだけど、ぎあちゃんなら出来る気がします」

 

「ええ、きっと一緒に旅した私達だからそう思えるのよ」

 

 

 犯罪組織との戦いで共に旅をしたアイエフとコンパはネプギアに秘められた可能性や潜在能力を強く信じていた。

 

 

「……ネプギアさんならきっと成し遂げることが出来るでしょう。ですが……」

 

 

 イストワールが小さく呟く。

 

 

「イストワール様?」

 

 

 アイエフがイストワールの呟きに反応する。

 

 

「いえ、何でもありません」

 

 

 イストワールがそう言って首を横に振ると、「全然関係ない話なんだけど、もう一つ聞いてもいいかな?」とファミ通がアイエフとコンパに質問をする。

 

 

「なにかしら?」

 

 

 アイエフはイストワールの呟きのことは一旦忘れて、ファミ通の質問に答えようとする。

 

 

「お二人とも、すっごく若くないですか? 犯罪組織との戦いって十年以上前ですよね。二人とも高校生かそれ以上に若く見えるんですけど……」

 

 

 ファミ通が興味と羨ましさ半々の顔で質問する。

 

女神と犯罪組織との戦いはG.C.2007に四女神とネプギアが捕縛されたことから始まり、三年後のG.C.2010にアイエフとコンパがネプギアを救出したことから反攻作戦が始まった。

 

そして女神候補生を中心とした反攻作戦の成功により終息している。

 

現在はG.C.2019であり、当時のアイエフとコンパが十歳前後の子供だったとは思えないファミ通は思わず質問をしてしまったのだ。

 

 

「何か若さを保つ秘訣があったら知りたいなぁ~……と思って」

 

 

 ファミ通は少し控えめな声で質問を続ける。

 

 

「ああ、その事ね。こう見えても私とコンパはアラサーなのよ」

 

 

 アイエフが事もなげに言うと、「あいちゃん、年齢のことは言っちゃダメです~」とコンパが恥ずかしがって両手を上下に振る。

 

 

「それで若さの秘訣は?」

 

 

 ファミ通は取材の時と同じかそれ以上に真剣な顔でメモを取ろうとする。

 

 

「運動に食事に睡眠時間、色々とあるのよ」

 

 

 アイエフは少し自慢げに言うが、「……と、偉そうにうんちく言いたいとこなんだけど、実は違うのよね」と両手を広げてお手上げのポーズを取る。

 

 

「ねぷねぷは、キャラデザインを変えるのが面倒だからって言ってたですけどね」

 

 

 コンパがその時のことを思い出したのか少し楽しそうに言う。

 

アイエフがイストワールの方を向いて、「話してもよろしいでしょうか?」と確認を取ると、「ええ、構いません。この効果も近日中に公開しますので」と答える。

 

 

「この効果は、NG粒子の効果なのよ」

 

 

 イストワールから許可を貰ったアイエフがファミ通に向き直りながら言うと、「NG粒子って、ネプギア様がNP粒子を改良して作ったビームとかを増強するエネルギーですよね」とファミ通が答える。

 

 

「知ってるなら話は早いわ。簡単に言うと、NG粒子には遺伝子に良い効果をもたらす性質もあって、その一つに老化を止めるどころか若返りの効果もあるのよ。ネオジーン効果って名前なのよ」

 

 

 アイエフが説明をすると、「そんな効果まであるんですか!?」とファミ通は大声で驚く。

 

NG粒子の一つである遺伝子に良い効果をもたらすネオ・ジーン効果はアイエフの言うように若返りの効果が発見されていた。

 

 

「でも、誰でもって言うわけじゃないのよね」

 

 

 アイエフがそう言うと、左手をあごに当てて少し考えるようなそぶりをして、「ネプギア、どういう条件だったかしら?」とネプギアに問いかける。

 

 

「まだ研究中なので確実なことは言えませんが、敬虔な女神の信者と言うのは確実みたいです。後は能力が高く人格的にも人に尊敬されたり愛されている方がNG粒子に触れることで若返りの効果が出ています」

 

 

 ネプギアはNギアを開いて、「効果の方も大小がありまして、アイエフさんやコンパさんまでの効果となると、プラネテューヌで四人、ラステイションで三人、ルウィーでも三人、リーンボックスでは二人にしか現れていません」と続けて言う。

 

 

「徳が高い敬虔な信者だけってことですか……」

 

 

 ファミ通が少し残念そうに言うと、「でも、少しは効果が出たりするんですよね?」とチラリと期待を込めた眼差しでネプギアを見る。

 

 

「試してみますか?」

 

 

 ネプギアはNギアを操作して、インベントリからNG粒子の発生装置を取り出す。

 

 

「え? いいんですか?」

 

 

 ダメ元で聞いたファミ通はあっさりと了承したネプギアに驚きを隠せない。

 

 

「はい、発生装置さえ作ってしまえば粒子は時間と共に自動で生成されますから」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ファミ通は少し控えめに、「それじゃあ、お願いします」と頭を下げる。

 

ネプギアはNG粒子発生装置を作動させると、薄紫色の粒子がファミ通を包む。

 

 

「具合が悪いとかあったら言って下さいね」

 

 

 ネプギアの問いかけに、ファミ通は気持ち良さ気に「逆に何か気分が楽になる感じがします……リラクゼーションみたいな?」と答える。

 

 

「終わりました。後はファミ通さんに適性があれば数日中に効果が現れてくると思います」

 

 

 ネプギアはNG粒子発生装置をNギアにしまいながら言うと、「ありがとうございます」とファミ通が嬉しそうにお礼を言う。

 

 

「ちょうどいいから、このあたりで休憩にしましょう」

 

 

 アイエフがそう言うと、「そうですね。ボス戦も近いと思いますし」とネプギアが言いながら、Nギアからレジャーシートとランチボックスを取り出す。

 

 

「待ってましたー。ネプギア様のおにぎり美味しいんだよね」

 

 

 ファミ通が嬉しそうに言うと、「うん、プラエも大好き」とプラエが微笑む。

 

ネプギアはクエストに出かける前にコンパと一緒に厨房に寄り、おにぎりを握って来たのだ。、

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「ネプギア様もブログとかしてみたらどう?」

 

 

 休憩中に、おにぎりを頬張りながら、ファミ通がネプギアに対して提案をしてくる。

 

 

「ブログですか?」

 

 

 ネプギアは不思議そうな顔で、ファミ通の言葉に答える。

 

すると、プラエが、「ブログってなに? 防御力とか上げるの?」と首を傾げる。

 

ネプギアは、「くすっ」と微笑むと、「それはブロックだよ」と指摘をしてあげる。

 

 

「自分の意見や感想を日記みたいに書いて、それに対する感想などを見た人が自由にコメントできる形式のインターネットのホームページのことだよ。【WebにLogする】のウェブログ【weblog】 をブログ【Blog】って略称するんだよ」

 

 

 ネプギアがそう説明すると、「ネプギアお姉さん、物知り」とプラエがニッコリ笑い、「一般公開する日記のようなものですか?」とあんみつが尋ねると、「そんな感じです」とネプギアが頷く。

 

 

「ラステイション、ルウィー、リーンボックスには女神ブログって言うのがありまして、女神様の近況とかを教えてくれるんだよ」

 

 

 ファミ通がそう言うと、「あれ? プラネテューヌは?」とプラエが不思議そうに首を傾げる。

 

 

「あるにはあったのですが……。ネプテューヌさんが遊んだことしか書かない上に三日で飽きてしまいまして……お恥ずかしい」

 

 

 イストワールが肩を落としながら説明をすると、「まったく、ネプ子は……」とアイエフが呆れ、「でも、ねぷねぷらしいですよー」とコンパが微笑む。

 

 

「世間はネプギア様がどれだけ真面目にお仕事してるか知らなすぎるよ。そういうことで、ブログで活躍をアピールしてみたら?」

 

 

 ファミ通がそう言うと、「いいアイデアね。私は賛成よ」とアイエフが頷き、「ギアちゃんのブログ見てみたいですー」とコンパも賛成し、「うん、見たい」とプラエも同意する。

 

 

「記者の方だけあって目の付け所が良いですね」

 

 

 イストワールが感心したかのように言う。

 

だが、ネプギアは乗り気じゃいようで、ハの字眉毛の困り顔をすると、「うーん……でも、私のブログなんてきっと面白くないですよ」と言う。

 

 

「日記みたいなものでいいんだよ。クエストの内容とかを依頼者とかの個人情報は伏せつつ書いてもらえれば大丈夫」

 

 

 しかし、ファミ通は諦めずに説得を続ける。

 

更に、「そうですね。女神様のお仕事を知ってもらう良い機会ですし、ネプギアさんのアピールにもなりますよ。もう一度考え直していただけませんか?」とイストワールも説得をする。

 

 

「でも、クエスト以外に書くことが……」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「お料理とかのことでもいいと思いますよ~」とコンパが言い、「ネプギアの場合は、機械やコンピューター関連かしらね」とアイエフが付け加える。

 

 

「そう言う一般的なことでもいいんですか? 女神のブログっぽく書かなくちゃいけないんじゃないんですか?」

 

 

 ネプギアが不思議そうにイストワールに尋ねると、「そんなことはありませんよ。たまには料理や機械の話を書かれても結構です。それにアップする前に私がチェックしますので、御安心下さい」とイストワールが答える。

 

 

「そういうことでしたら、挑戦してみます。何事もチャレンジですよね」

 

 

 ネプギアが両手で小さくガッツポーズをしながら意気込む。

 

それを見たイストワールはニコリと笑い、「その通りです。頑張って下さい」と声援を送る。

 

 

「出来たら、私の本の発売日前に宣伝してくれたらなぁ~……」

 

 

 ファミ通がやや小声でネプギアに頼み込むと、「もちろん、書かせてもらいますよ。ファミ通さんの記事を一人でも多くの人に読んでもらいたいですし」とネプギアがにこやかに答える。

 

 

「うわっ! 眩しい。私の邪な下心が浄化されるようだよ」

 

 

 ファミ通がややオーバーリアクションで眩しさを表すと、「まったく、ちゃっかりしてるわね」とアイエフがお手上げのポーズで首を左右に振る。

 

続いて、「あと、私とコンパには敬語は必要ないわ」とアイエフが言うと、「ああ、ごめん。インタビューだからつい」とファミ通が後頭部に右手を当てる。

 

 

「ネプギアお姉さんのブログ楽しみー」

 

 

 プラエが楽しそうに言うと、「そうですね。私はインターネットが開けませんので、プラエ様に見せてもらいましょう」とあんみつが言う。

 

プラエはやや厳しい顔で、「あんみつも練習しなきゃダメだよ」と言うと、「精進します」とあんみつが答える。

 

 

(今時ネットを開けないって、どれだけ機械音痴なんだろう……)

 

 

 ファミ通はそう思いながら、おにぎりを食べていた。

 

そして、ネプギア達は食休みも済ませると、再びクエストに取り組み始めた。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 休憩後、ネプギア達は戦闘を繰り返して先に進む。

 

イストワールが立ち止まり、「皆さん、そろそろボスがいるエリアですよ」と言うと全員がその場に立ち止まる。

 

 

「私、広域レーダーで確認します」

 

 

 ネプギアはNギアを取り出すと操作を始める。

 

 

「三時の方向、距離950の地点に敵の反応が多数ありますね」

 

 

 ネプギアはそう言って操作を続けると、Nギアからホログラムが現れる。

 

他のメンバーにも分かりやすいように画面をホログラムで映し出したのだ。

 

 

 ホログラムは緑色の線で描かれた円の中に複数の色が付いた点が点滅していた。

 

 

「これ、レーダーですよね」

 

 

 ファミ通がホログラムを見ながら、ネプギアに質問する。

 

 

「はい、広域モードです。緑が味方、赤が敵です」

 

 

 ネプギアは頷くとファミ通にレーダーの説明をする。

 

 

「赤いおっきいのはなんですか~?」

 

 

 今度はコンパが質問する。

 

 

「これはボスモンスターですね」

 

 

 ネプギアがそう答えると、コンパはホログラムを見ながら「ボスさんも入れると……ひーふーみー……」と赤い点の数を数え始める。

 

 

「いっぱいです~」

 

 

 しかしコンパは数え切れずに慌ててしまう。

 

ボスモンスターの周囲には五十以上の小さな赤い点があった。

 

 

「これは骨が折れそうね……ネプギア変身してくれるかしら?」

 

 

 敵の数にうんざりしたアイエフがネプギアに女神化を勧める。

 

女神の力で圧倒しようというのである。

 

 

「わかりました! ファミ通さんにカッコいいところを見せてみます」

 

 

 意気込むネプギアに対して、「ちょっと待って下さい」イストワールが待ったをかける。

 

 

「イストワール様? 流石にこの数はネプギアの力を借りた方が良いと思うんですけど……」

 

 

 イストワールの待ったに疑問を持つアイエフ。

 

ネプギアも、「私もそう思います」とアイエフに同意する。

 

 

「確かに、それも一つの手ですが、もう一つこの大群を一掃出来る手段があります」

 

 

 イストワールの言葉に、「あれですね~」と意外にもコンパが一番早く理解したようである。

 

 

「なるほど……」

 

 

 続けてアイエフも納得したように頷くと、「なら、私が正面に突っ込みます」とネプギアも理解したようで、そう言いながら先頭に立つ。

 

 

「どういうこと?」

 

 

 蚊帳の外のファミ通は話について行けず質問をする。

 

プラエも、「プラエも知りたい」と疑問顔で質問をしてくる。

 

 

「いいから見てなさい。私達三人の力を見せてあげるわ」

 

 

 アイエフはそう言いながら、先頭に立ったネプギアの右後ろに付く。

 

 

「じゃあ、左に行くです~」

 

 

 コンパはネプギアの左後ろに付く。

 

それを見た、あんみつは、「三手に分かれるのですか?」とイストワールに問いかける。

 

 

「はい、コンパさんにはあんみつさん。アイエフさんにはプラエさん、そしてネプギアさんには私とファミ通さんが付きます」

 

 

 あんみつは右手をあごに当てながら考える仕草をし、「何か策があるようですね。分かりました従いましょう」と頷く。

 

続けてアイエフの方を向くと、「アイエフ殿、プラエ様のことをお願いします」言う。

 

アイエフは、「任せてちょうだい」と頷くと、「そっちもコンパのことは任せたわよ」と言った。

 

 

「承知」

 

 

 あんみつは力強く頷いて答える。

 

 

「ファミ通さんは私と一緒に大型モンスターの足止めをお願いします」

 

 

 イストワールがそう言うと、「わかったよ。また何か面白いことを見せてくれるんだね」とファミ通はこれから何が行われるかは分からなかったが、イストワールの指示に従うことにした。

 

作戦の決まったネプギア達は敵のいる方向に向かって歩き出す。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギア達から百メートル程先に植物系のモンスターの大群がいた。

 

実際に近くで見ると迫力があり、「やっぱりちょっと怖いです~」とコンパが尻込みしてしまう。

 

あんみつは、そんなコンパを見て、「大丈夫です。私が護衛します」と言う。

 

アイエフはプラエを見ながら、「私を援護しながらついて来るだけでいいわ。できる?」と質問すると、「できるよ。ネプギアお姉さんの役に立つんだもん」とプラエが答えた。

 

 

「それでは作戦開始しましょう」

 

 

 イストワールがそう言うと、「はい」とネプギアが力強く頷く。

 

他のメンバーも次々と頷いて、戦闘準備は万端になったようだ。

 

 

「行きます!」

 

 

 そう言ってネプギアが駆け出すと、アイエフとコンパもフォーメーションを崩さず付いてくる。

 

イストワールとファミ通はネプギアの真後ろを付いて行った。

 

あんみつはコンパに並走し、プラエはアイエフの後ろを一生懸命に追いかけていた。

 

 

「あれがボスです!」

 

 

 イストワールが指を差すところには全長5メートル程の巨大な植物型のモンスター【ハエトリソー】がいた。

 

その周りには何匹もの植物型モンスターが群れていた。

 

 

「キュゥゥゥ!!」

 

 

ネプギア達が近づくと、ハエトリソーは大きな雄叫びを上げ、根っこを触手のよう伸ばして先頭のネプギアに攻撃をする。

 

 

「いーすんさん、ファミ通さん、足止めをお願いします!」

 

 

 すかさずネプギアが指示を飛ばす。

 

 

「援護は任せて下さい」

 

 

 イストワールのファイアーアローの魔法がハエトリソーの触手に当たる。

 

 

「シャーー!」

 

 

 32ダメージを受けて触手を引っ込めるハエトリソー。

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 その隙にネプギアは敵陣を走り抜ける。

 

周囲の小型のモンスターに攻撃せずに真っ直ぐ走る。

 

小型のモンスターからは攻撃を受けるが、植物系のモンスターは基本的に足が遅いので走り抜けるネプギアに追いつけない。

 

種のマシンガンが何発かネプギアをかするがダメージは10前後でHPゲージの一割にも満たない。

 

イストワールとファミ通はネプギアの後ろに付いて行く。

 

 

 多少のダメージは無視して敵陣を駆け抜けるネプギア。

 

 

「キィィィ!」

 

 

 ハエトリソーは再び触手でネプギアを攻撃してくる。

 

巨体のハエトリソーは触手も長いので攻撃範囲が広く、動く必要なく走り抜けるネプギアに対しても攻撃が届く。

 

 

「危ない!」

 

 

 ファミ通がネプギアの前に出てネプギアを護る。

 

 

「くぅ、強烈……流石ボスだね」

 

 

 ネプギアの代わりに攻撃を受けたファミ通は72ダメージを受けてHPゲージが七割ほど減少する。

 

 

「ナイスよファミ通!」

 

 

 遠くからアイエフの声がした。

 

いつの間にかアイエフ達はネプギア達と離れ、モンスターの群れの右側を走っていた。

 

アイエフが華麗な回避で敵をかく乱しつつ前に進み、プラエもその隙を付いて前に進む。

 

 

「ギアちゃんのことお願いしますー」

 

 

 そしてコンパはその逆の左側を走っている。

 

こちらはあんみつが敵を蹴散らしつつ、コンパがその後に付いていく。

 

 

「ファミ通さん、今回復します」

 

 

 イストワールはそう言うと天の恵みでファミ通のHPを八割まで回復させる。

 

 

「シャー!」

 

 

 何度もネプギアを攻撃してくるハエトリソー。

 

 

「やらせません!」

 

「しつこいなー!」

 

 

 その度にイストワールの魔法による迎撃と、ファミ通が身を挺した防御がネプギアを守る。

 

ファミ通の減少したHPはイストワールが回復し、アイエフの方もアイエフが危機になるとプラエが時間操作でフォローし、コンパの方はあんみつが被弾したらすぐさまコンパが回復をした。

 

 

「到着しました!」

 

 

 イストワールとファミ通の援護を受けて、ネプギアは敵陣の最奥に到着するとクルリと振り返る。

 

イストワールとファミ通に守られたおかげで、HPゲージの減少は四割程度で済んでいる。

 

 

「私もオッケーよ」

 

「行けるですー」

 

 

 同じように、アイエフ達が敵陣の右奥、コンパ達も左奥に到着する。

 

 

「これからどうするの? バラバラになって囲まれちゃってる感じなんだけど?」

 

 

 ファミ通の言う通りネプギア達とアイエフ、コンパ達はそれぞれ分断されてモンスターに追い詰められている形になっているように見える。

 

 

「問題ありません。計算通りです」

 

 

 イストワールは落ち着いて答える。

 

 

「戦術レベル最大効果確認。アイエフさん、コンパさんお願いします!」

 

 

 ネプギアがNギアのレーダーを見ながら声を上げる。

 

 

「「「マークツストライク!!!」」」

 

 

 三人の声が重なるとモンスターにいくつもの巨大な雷撃がモンスター達に落ちる。

 

 

「「「ギャオオオン!!」」」

 

 

 【マークツストライク】ネプギアとアイエフとコンパの三人でモンスターを囲むと発生する強烈な電撃攻撃。

 

囲いの中の全ての敵に大ダメージを与える。

 

頂点をネプギアとして、底辺をアイエフとコンパとする二等辺三角の中には全ての植物系モンスターが囲われていた。

 

 

 800近いダメージを受けて、あっと言う間に黒焦げになるモンスターの群れ。

 

ハエトリソーさえも塵になって消滅する。

 

 

「これは凄い……」

 

 

 目も前のモンスターの群れが一瞬で消滅したことに呆気にとられるファミ通。

 

プラエも、「すごいすごいっ!」と言いながら飛び跳ね。

 

あんみつも、「なるほど、これが狙いでしたか」と感心した声を上げる。

 

 

「オーバーキルとはいかなかったけど、一撃で仕留められれば十分ね」

 

 

 アイエフがそう言うと、コンパも「上出来です~、レベルもたくさん上がりました」と言って嬉しそうにする。

 

 

「これが犯罪組織との戦いを乗り越えたネプギアさん達の絆の力です」

 

 

 イストワールはネプギア達三人を見ながらファミ通に自信満々にそう言う。

 

 

「なるほど……先程の見事なコンビネーションといいインタビューといい、ネプギア様は思った以上です。これは今回も良い記事が書けそうです」

 

 

ファミ通はイストワールの言葉に満身の笑みを浮かべていた。

 

 

 

***

 

 

 

 ハネダシティのクエストから二日後。

 

G.C.2019年4月14日 日曜日。

 

 

 ネプギアとプラエ、そしてユニはルウィーを訪れていた。

 

ネプギアとプラエがプラネテューヌから送迎車を出して、途中でラステイションの教会でユニを乗せて来たのだ。

 

 

 ルウィーは魔法文化を主流とする産業国家。小高い山の上に建つ教会を中心に街が広がっている。

 

北国であり、国の一部が雪や氷に覆われており極寒。ラステイションとの国境付近は比較的温暖ではある。

 

 

「ここがルウィー……明るくて綺麗な街だね」

 

 

 車を降りたプラエが呟く。

 

ルウィーは守護女神であるブランが、のんびりしたメルヘンな魔法の国を自称する通り、明るい色で曲線を多用したメルヘンチックな建物が建ち並ぶ。

 

 

「くしゅん……」

 

 

 ルウィーの寒さに、可愛らしいくしゃみをするプラエ。

 

ネプギアが、「大丈夫プラエちゃん」と心配をし、「ちゃんとコートを着た方がいいわよ」とユニが忠告をする。

 

 

「大丈夫。今コート着るから」

 

 

 プラエはそう言いながらNギアからコートを取り出し、それを羽織る。

 

見ればネプギアも白いコートを羽織り、ユニも黒いコートを羽織っていた。

 

 

「迎えの馬車が来てるわね」

 

 

 ユニがそう言うと、「あの馬車に乗って、ロムちゃんとラムちゃんの住んでる教会まで行くんだよ」とネプギアがプラエに説明をしてくれる。

 

のんびりしたメルヘンな魔法の国と言う通り、車が入れるのは街の郊外までで街の中から教会までは馬車を使って移動する。

 

 

「なんだか、おとぎの国に来たみたい」

 

 

 プラエがそう言うと、「そうだね。それがルウィーだから」とネプギアが微笑みながら答える。

 

 

***

 

 

 小高い山の上に建つルウィーの教会は、メルヘンチックな外見をした中世の城のような建物で魔法の国の中心として相応しい建物だった。

 

ネプギアが達は馬車を降りた後に、メイド達にロムとラムの部屋まで案内をされる。

 

 

「ロム様、ラム様、お客様をお連れしました」

 

 

 メイドがノックをした後にそう言うと、「いらっしゃーーい。待ってたわよ!」とラムがドアが開けると同時に元気の良い声で出迎える。

 

 

「いらっしゃい(にこにこ)」

 

 

 その後ろで、ロムが穏やかに微笑んでネプギア達を歓迎してくれる。

 

 

「ほらほら、入って入って」

 

 

 ラムがネプギアの手を引いて部屋の中に招き入れる。

 

ユニとプラエはネプギアの続いて部屋の中に入って行く。

 

メイド達はそれを確認すると、「それでは失礼します」と頭を下げて去って行った。

 

 

 全員が部屋に入ると、ラムは元気よく腕を突き上げて、「それでは第一回、ロムちゃんラムちゃんのスーパーミラクルバンドの会議を始めます!」と元気よく言と、「わー(ぱちぱち)」とロムはラムに向けて拍手をする。

 

 

「なによ、そのだっさいネーミングは……」

 

 

 ユニが呆れ果てた声で言いながら、右手で頭を抱える。

 

 

「ダサくないわよー! わたし達のバンドの名前なんだからー!」

 

 

 ラムが口を尖らせながら抗議すると、「一生懸命考えたのに……(しゅん)」とロムも沈んでしまう。

 

 

「そもそも、アタシ達のバンドなのに、何でロムとラムの名前しか入ってないのよ」

 

 

 ユニが不満そうに腕を組みながら言うと、「だって、全員の名前入れると長いんだもん」とラムも不満そうに腕を組む。

 

 

「名前なんて入れなくてもいいのよ。もっとカッコいい名前にしなさい」

 

 

 ユニがそう言うと、「じゃあ、ユニちゃんは何か考えて来たのー?」とラムがユニに向かって言う。

 

 

「それは……今日話し合って決めるんでしょ」

 

 

 ユニは少したじろぎながら答える。

 

どうやら特に考えて来てはいないらしい。

 

 

「えー? 何も考えて来てないの」

 

 

 ラムが不満そうに言うと、「えっと……じゃあ、エンフィールドとか?」とユニが少し考えた後に言うが、「ユニちゃん、それ銃の名前」とネプギアにツッコミされてしまう。

 

 

「速攻でネタばらししないでよ!」

 

 

 ユニがネプギアに向けて不満そうに言うと、「え? 今のツッコミ待ちじゃなかったの?」とネプギアが不思議そうに首を傾げる。

 

 

「そんなニッチな層をターゲットにした漫才なんか誰もしないわよ」

 

 

 ユニが呆れながらそう言うと、「そういう、ネプギアは何か考えて来たの?」と質問する。

 

 

「私は、シスターズ・ジェネレーション、なんて良いかなって思ったんだけど……どうかな?」

 

 

 ネプギアはそう言って周りを見渡すと、「「普通」」とユニとラムが声を揃えて言い、「うん、普通(こくこく)」とロムが頷きながら答える。

 

 

「わーん、その【普通】って言うの何だか傷つくよー」

 

 

 ネプギアが目をバッテンにさせながら言うと、「ぷ、プラエは良いと思うよ」とプラエがフォローしてくれるが、「すごく普通な感じで」と言ってしまう。

 

 

「また普通って言われたー」

 

 

 ネプギアが再度目をバッテンにさせながら嘆くと、「ごめんね。ネプギアお姉さん、でも、普通な意見も大事だから」とプラエが微妙なフォローを入れる。

 

 

「いいもん。どうせ私は普通の女の子だもん」

 

 

 ネプギアが部屋の隅で体育座りをしてイジけてしまう。

 

 

「なにイジケてるのよ。誰も悪いなんて言ってないじゃないの」

 

 

 ユニが呆れたふうに言うと、「ユニちゃんは乙女心が分かってないよ。私は普通って言われると傷つくお年頃なの!」とネプギアは子供のように口を尖らせて拗ねてしまう。

 

同年代で信頼しているユニだからこそ見せる、いつもとは違うネプギアの子供っぽい一面だ。

 

 

「はいはい、アタシ達が悪かったわよ。機嫌治しなさい」

 

 

 ユニがややおざなりに言うと、「全然誠意がこもってない~」と更に拗ねてしまうネプギア。

 

それを見たラムが、「もー、何やってるのよ。ユニちゃんのへたっぴ」と不満そうにヤジを入れてくる。

 

 

「ラム達だって普通って言ったじゃないの。一緒に説得しなさいよ」

 

 

 ユニは不服そうに言い返すが、「う~~」とネプギアが不満そうなうめき声を漏らす。

 

どうやら説得してる最中にラムの方に意識を向けたのが面白くないようだ。

 

 

「あー! もう、めんどくさいわねアンタは。お菓子でも食べて機嫌治しなさいよ」

 

 

 ユニが心底めんどくさそうに言うと、「ホントにいいの!」とネプギアが目を輝かせて顔を上げる。

 

 

「い、いいわよ、お菓子ぐらい……」

 

 

 ネプギアのご機嫌ぶりに若干引き気味のユニ。

 

 

「本当にユニちゃんが【あーん】して食べさせてくれるんだね!」

 

 

 ネプギアが更に目を輝かせて言うと、「誰もそこまでは言ってない」とユニが冷静に答える。

 

 

「がーーーん」

 

 

 ショックを受けるネプギア。この世の終わりのような顔だ。

 

 

「しくしく……ユニちゃんに騙された……」

 

 

 ネプギアは再び、体育座りでイジけてしまう。

 

 

「ネプギアが勝手に付け加えたでしょ……」

 

 

 ユニは右手を額に当てながら呆れた声を出す。

 

 

「しくしくしくしくしくしく……」

 

 

 ただひたすらに【しくしく】を連呼して遺憾の意を示すネプギア。

 

まるでセミのようである。

 

 

「あー、ユニちゃんがネプギアのことイジメたー」

 

「ユニちゃんのイジメっ子(ぷんぷん)」

 

 

 ロムとラムがユニを責めるように言う。

 

続けてラムがプラエも何か言いなさいよとプラエに言うと、「……えっと、ユニお姉さんが悪いかも?」とプラエもつられてしまう。

 

 

「しくしくしくしくしくしくしくしくしくしく……」

 

 

 更にシクシクゼミになったネプギアが鳴き続ける。 

 

 

「あーーーーー! もう、わかったわよ。やればいいでしょやれば! さっさと口開けなさい」

 

 

 ユニが鬱陶しそうに叫ぶと、「わーい!」と一瞬でご機嫌になって口を開くネプギア。

 

ユニはテーブルに置いてあったクッキーを一つ摘まむと、「はい、あーん」とめんどくさそうにネプギアに差し出す。

 

 

「ぱくっ!」

 

 

 ネプギアは嬉しそうにそのクッキーを咥える。

 

 

「もぐもぐもぐ……」

 

 

 ネプギアはじっくりと味わうようにクッキーを食べると、「うん、おいしい。ユニちゃんが食べさせてくれると五割増しで美味しく感じるよ」と幸せそうな顔をする。

 

 

「……まったく。イジけたフリして、こんなことせがむなんて、意外とあざといわねアンタ」

 

 

 ユニが呆れたふうに言うと、「イジケてたのは本当だよ。でも、ユニちゃんが説得してくれるなら、おねだりしてみようかなー、って思っただけだもん」とネプギアが答える。

 

 

「それが、あざといって言うのよっ!」

 

 

 ユニはそう言いながら、ネプギアに軽くデコピンをする。

 

ネプギアは、「えへへ……」と微笑み、「だって、ユニちゃん優しいから、つい甘えたくなっちゃうんだもん」と少し顔を赤くしながら言う。

 

 

「ネプギアお姉さんとユニお姉さんって仲良いよね」

 

 

 プラエが少し羨ましそうに言うと、「ああいうのを、瓜って言うのよね」とラムが腕組みしながら言うと、「わたし、きゅーちゃん好き(ぱりぽり)」とロムが楽しそうに言う。

 

 

「それを言うなら、百合でしょ。アタシとネプギアはそんなんじゃないから、普通の友達よ普通の」

 

 

 ユニが呆れながらツッコミをすると、「ユニちゃん、あーーん」とネプギアが口を開ける。

 

 

「ああもう、しょうがないわね」

 

 

 ユニはそう言いながら、再びネプギアにクッキーを食べさせると、「……ユニお姉さん、あんまり説得力ないかも」とプラエがツッコミをしてくる。

 

確かに絵面的には説得力ゼロである。

 

 

「遊んでないでバンドの名前考えるわよ」

 

 

 ユニはそう言いながら手をパンパンと叩く。

 

まるで学校の教師のようだ。

 

 

「はい、はーい! 【ロムちゃん&ラムちゃん、ストロングキュート】は?」

 

 

 ラムが元気よく左手を上げながら言うが、「自分達の名前入れるのは諦めなさい」とユニがピシャリと言い放つ。

 

 

「がっかり(しゅん)」

 

 

 ロムが肩を落とすと、「ユニちゃんのケチー!」とラムが文句を言ってくる。

 

 

「まあまあ。とりあえずは名前を入れる方向で考えてみようよ」

 

 

 ネプギアがユニをなだめるように言うが、「そんなこと言っても五人分も名前入らないわよ」とユニは腕を組んで不満そうに言う。

 

 

「イニシャルとかでもいいんじゃないかな? ロムちゃんとラムちゃんならRで、私ならG、ユニちゃんならUで、プラエちゃんはPで」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「バンド名のどこかに、その文字が入るようにするのね。まぁ、それぐらいなら出来なくもないわね」とユニは右手をあごに当てながら頷く。

 

 

「それってどんなふうにするの?」

 

 

 ラムが不思議そうに首を傾げると、「わたし達、あんまり英語とか分からない……」とロムが困った顔をする。

 

プラエも、「……プラエも英語はちょっと……」と困った声を出す。

 

 

「それじゃあ、アタシとネプギアが色々考えるから、三人は良い悪いで決めなさい」

 

 

 ユニがそう言うと、「実は私、もう考えてあるんだ」とネプギアがニッコリ笑う。

 

 

「へぇ……。いつの間に考えたの?」

 

 

 ユニが意外そうに言うと、「さっきのイジケてる間」とネプギアが答える。

 

 

「ただ単に、うじうじしてた訳じゃないのね」

 

 

 ユニが感心したかのように言うと、「当然だよ。時間は有効に使わないとね」とネプギアが答える。

 

 

「そう言うなら、一発で立ち直りなさいよ……」

 

 

 今度は呆れたように言うユニ。

 

しかしネプギアは、「ユニちゃんに甘える時間は無駄じゃないもんっ」と拗ねたように言う。

 

 

「まったく……変なトコで甘えん坊よねアンタは」

 

 

 ユニが右手を額に当てながら呆れたふうに言うと、「で、どんな名前を考えたの?」とネプギアに問いかける。

 

 

「【グランプリ・ユナイテッド】……って言うんだけどどうかな?」

 

 

 ネプギアが少し恥ずかしそうに言うと、「「ぐらんぷり・ゆないてっど?」」とロムとラムが同時に首を傾げる。

 

双子ならではの見事なシンクロだ。

 

 

「グランプリは、映画とかの一番スゴイ賞のことだよね」

 

 

 プラエがそう言うと、「うん、そうだよ。よく知ってたね」とネプギアがプラエの頭を撫でる。

 

 

「じゃあ、ユナイテッドは?」

 

 

 ラムが不思議そうな顔で質問すると、「ユナイテッドは【連合】とか【団結】って意味よ」とユニが答える。

 

 

「一番スゴイ賞を取る為に、みんなで団結?」

 

 

 ロムが少し自信なさそうに言うと、「うん、そうだよ。ロムちゃん、すごいすごい」とネプギアが今度はロムの頭を撫でてあげる。

 

 

「なかなかいいじゃない」

 

 

 ラムが満足気に腕組みして頷くと、「それで、わたし達の名前はどこにあるの?」と続けて質問する。

 

ネプギアは、机の上にあったお絵描き帳と黒のペンを持って、「これ借りるね」と言うと、お絵描き帳に【Grand prix United】と大きく文字を書く。

 

 

「まずは私のG」

 

 

 ネプギアはGの字に丸を付けて、ネプギアと書く。

 

 

「次にラムちゃんのRA」

 

 

 今度はGrandのraに丸を付けて、ラムと書く。

 

すると、ロムとラムが感心したかのように「「おお~」」と声を上げる。

 

 

「もしかして、プリのPの部分はプラエ?」

 

 

 プラエがそう言うと、「うん、そうだよ。よく分かったね」とネプギアはプラエを褒めながら、prixのpの部分に丸を付けて、プラエと書く。

 

 

「じゃ、じゃあ、次のRはわたし?」

 

 

 ロムが期待を込めた目で両手を祈るように合わせながら言う。

 

ネプギアはニッコリと微笑んで、「そうだよ。ロムちゃんのR」と言って、prixのrの部分に丸を付けて、ロムと書く。

 

 

「最後のUnitedは、アタシのUNIが全部入ってるし、これなら全員分ね」

 

 

 ユニがそう言って満足気に腕組みをすると、「一番を取る為に、みんなで団結なんてアタシ達らしくていいじゃない。やるわね、ネプギア」と素直にネプギアを褒める。

 

ネプギアは嬉しそうに、「えへへ……」と笑うと、「実はグランプリの部分にはもう一つ意味があるんだ」と言う。

 

 

「え? なになに?」

 

 

 ラムが興味津々に質問すると、「普通のグランプリはグランド・プライズ 【Grand Prize】って意味なんだけど、私達の場合はグランド・プリンセス【Grand Princess】って意味も含めようと思うんだ」とネプギアが答える。

 

ユニは腕組みをしながら、「【壮大なお姫様の連合】って意味ね。悪くないわ」と頷く。

 

 

「えっと、わたし達は壮大なお姫様の連合で、みんなで団結して一番を取るってこと?」

 

 

 ロムがそう言うと、「うん、そういうことになるの」とネプギアは頷くと、「すごーい、ネプギアお姉さん、カッコイイ!」とプラエが拍手をする。

 

ネプギアは、「ありがとう」とお礼を言うと、「どうかな?」と全員に問いかける。

 

 

「「さんせーー!」」

 

 

 ロムとラムが両手を上げて賛成すると、「アタシも賛成よ」とユニが頷き、「プラエも、もちろん賛成だよ」と言ってプラエが柏手を打つ。

 

 

「じゃあ、次は楽器よ楽器ー!」

 

 

 ラムが元気よく左手を上げて宣言すると、「どんな楽器があるの?」とロムがネプギアに質問をする。

 

 

「5pb.さんからの連絡では、バンドをするなら後はベースギターとドラムとキーボードがいるみたい」

 

 

 ネプギアが質問に答えると、「そう言えば、ラムの勢いのままにバンドって決めたけど、バイオリンってバンドに入るの?」とユニが首を傾げる。

 

 

「え……? プラエ、ダメなの……」

 

 

 プラエが不安そうに言うが、「そんなことないよ。バイオリンが入ってるバンドもあるらしいよ」とネプギアがプラエを安心させるように優しい声で言う。

 

 

「ほら、この前もガールズバンドの音ゲーで新しいバンドにバイオリンの人がいたじゃない」

 

 

 ネプギアが更にユニに説明をすると、「あ、そう言えばお姉ちゃんがそんなこと言ったわ」とユニが納得したように頷く。

 

 

「それで、楽器なんだけど、私、ユニちゃんにお願いがあるんだ」

 

 

 ネプギアは両手を組んで祈るようなポーズでユニに言い寄る。

 

 

「なによ、改まって?」

 

 

 ユニが不思議そうな顔でそう言うと、「私、ユニちゃんにベースをやって欲しいなーって」とネプギアがユニにお願いをする。

 

 

「嫌じゃないけど……何か理由があるの?」

 

 

 ユニの質問に、「ベースはバンドを支える縁の下の力持ちだって、5pb.さんが言ってたから、ユニちゃんにピッタリだと思って」とネプギアが答える。

 

 

「アタシが地味だって言いたいの?」

 

 

 ユニが不満そうに腕組みすると、「そ、そうじゃなくて……」ネプギアは慌ててしまう。

 

 

「冗談よ。何にしても土台は最も重要だし、それだけアタシを信頼してくれてるってことよね」

 

 

 ユニがウインクしながらそう言うと、「もー! 分かってるなら、そんな言い方しないくていいのにー! ユニちゃんのいじわるー!」とネプギアが口を尖らせる。

 

 

「いいわ。アンタ達に屋台骨任せるのも不安だし、アタシがベースやるわ」

 

 

 ユニがそう言うと、ネプギアは再び祈るように両手を組むと、「ありがとう。ユニちゃんが支えてくれるなら心強いよ」と嬉しそうに言う。

 

 

「後は、ドラムとキーボードだね」

 

 

 プラエがそう言うと、「ドラムって太鼓だよね? ドンドコドンドコ、ジャンジャンジャーン、ってやるやつだよね」とラムがドラムの真似事をしながら質問をする。

 

 

「うん、そうだよ」

 

 

 ネプギアがそう答えると、「じゃあ、わたしそれやりたーい!」とラムが元気よく左手を上げて立候補する。

 

それに対してロムは、「わたしは太鼓は疲れそうだから、キーボードがいい……かも」と小さく右手を上げる。

 

 

「意外とあっさり決まったわね」

 

 

 ユニが少し拍子抜けしたように言うと、「じゃあ、次の日曜日にユニちゃん達の楽器を見に行こうよ」とネプギアが提案する。

 

ラムが嬉しそうに、「さんせー!」と言い、ロムも「楽しみ(うきうき)」と楽しそうに同意する。

 

 

「決まりね。プラエもちゃんと準備してきなさいよ」

 

 

 ユニがそう言うと、「うん、わかった」とプラエが嬉しそうに頷いた。

 

 

「あのね、バンドのことじゃないんだけど、みんなに一つ相談があるの」

 

 

 ネプギアが再度改まって全員を見渡すと、「なになに? 何か面白い話~」とラムが興味津々に身を乗り出す。

 

 

「みんなで一緒にブログやらない」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「カエルさん」とロムが首を傾げる。

 

 

「それはフロッグ」

 

 

 ユニが呆れた声でツッコミを入れると、「わかった。防御力が上がるのね」とラムが言う。

 

しかし、「それはプラエも言ったよ。それはブロックって言うんだって」と今度はプラエがツッコミをする。

 

 

「えっと、ブログって言うのは……」

 

 

 ネプギアはプラエと同じように、ロムとラムにブログの説明をしてあげる。

 

 

「何だか面白そう! みんなでやるなんて、交際日記みたいね」

 

 

 ラムが楽しそうに言うと、「それを言うなら交換日記だよ」とネプギアがやんわりとツッコミを入れる。

 

 

「……でも、他の人に見られるのちょっと恥ずかしい(どきどき)」

 

 

 ロムがほっぺたに両手を当てながら恥ずかしそうにすると、「書ける範囲でいいのよ。あれこれ全部書く必要はないわ」とユニがロムを安心させるように言う。

 

 

「私一人じゃ、あんまり面白くならなそうだし……だから、みんなに協力して欲しいなって……どうかな?」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「やるー!」とラムが元気よく左手を上げて、「ラムちゃんがやるなら、わたしもやる(こくこく)」とロムが頷く。

 

 

「アタシもやるわ。お姉ちゃん達より人気あるブログにしてみせるんだから」

 

 

 ユニが右手で小さくガッツポーズをしながら言うと、「みんな、ありがとう。みんなが一緒なら心強いよ」とネプギアは微笑みながらお礼を言った。

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