新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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005神次元のお仕事

 ハネダシティのクエストから一週間後。

 

G.C.2019年4月19日金曜日。

 

 

「ネプギアさん、今回もファミ通さんの記事は大好評です」

 

 

 今回もイストワールが嬉しそうに週刊ファミ通を持ってネプギアの部屋にやって来る。

 

 

「本当ですか?」

 

 

 ネプギアは、イストワールから週刊ファミ通を受け取ると黙々と読み始める。

 

そこには先週のハネダシティでのネプギアの活躍が事細かに書かれていた。

 

 

「わぁ、アイエフさんとコンパさんのことも書いてありますね」

 

 

 ネプギアは読みながら、アイエフとコンパの事も書いてあることに嬉しそうに目を輝かせる。

 

彼女達に対するインタビューの他にも、彼女達自身の活躍も書かれていることにネプギアはとても満足な気持ちになった。

 

ネプギアにとって、尊敬するアイエフとコンパが評価されることは自分が評価される以上に嬉しいことであった。

 

 

「どういうこと? なんであいちゃんとコンパのことまで書いてあるの?」

 

 

 ベッドで寝っ転がってマンガを読んでたネプテューヌが不思議そうに質問すると、「えっと、アイエフさんとコンパさんがこの前のクエストに協力してくれたんだけど、そのついでにインタビューを受けたんだよ」と、ネプギアはこの前のハネダシティでの出来事を簡潔に説明する。

 

 

「聞いてないよー! どうして、わたしが居ない間にそんな一大イベントが起きてるの~! インタビューするならわたしでしょ。主人公オブ主人公、驚異の主人公補正、【うわっ、わたしの主人公補正高スギィ】なわたしをスルーなんてありえないよー!」

 

 

 ネプテューヌはそう言って地団駄を踏んで暴れる。

 

 

「ネプ子は散々仕事しないってゴネた後に居眠りしてたでしょ」

 

 

 イストワールに続いてアイエフとコンパも部屋に入ってくる。

 

 

「ねぷねぷの寝顔が可愛いので起こせませんでした~」

 

 

 コンパがやんわりとネプテューヌに起こさなかった理由を言うと、「ま、起こせって言うなら次からは起こしてあげるわ」とアイエフはそう言いながら指をポキポキならす。

 

 

「……何だか、記憶障害が起こりそうだから遠慮しとく」

 

 

 ネプテューヌは、そんなアイエフの態度に地団駄を踏むのを止めて大人しくなると同時に顔を青くしながらブルブルと恐怖で震える。

 

 

「ネプギアさん、ファミ通さんから次の取材の打診がありましたが、来週の土日などはいかがでしょうか?」

 

 

 イストワールがネプギアにホログラムでカレンダーを見せながら確認してくる。

 

 

「え? でも、来週の土日は神次元にお仕事に行くんじゃ?」

 

 

 ネプギアは不思議そうに首を傾げる。

 

 

「まさか、イストワール様」

 

 

 アイエフが何かを察したかのようにイストワールに問いかける。

 

 

「はい、ファミ通さんを神次元に招待しようと思います」

 

 

 ゲイムギョウ界には様々な次元が存在する。

 

現在ネプギア達がいる超次元からは、神次元と零次元という二つの次元に行き来が出来る。

 

その一つである神次元は超次元と非常によく似た構成をしている。

 

プラネテューヌ、ラステイション、ルウィー、リーンボックスの四つの国で成り立ち、プラネテューヌ以外は女神の名前も姿も同じである。

 

 

「でも、本当にいいんですか? 神次元は限られた人しか行き来できない場所なのに取材なんて……」

 

 

 ネプギアは確認するようにイストワールに問いかける。

 

 

「この数年で、二回も別次元が原因となる事件がありました」

 

 

 イストワールがそう言うと、「はい、そうですね」とネプギアが素直に頷く。

 

イストワールの言う通り、ここ最近超次元では別次元が原因となる事件が相次いでいた。

 

G.C.2012は神次元から始まる【キセイジョウ・レイ】のプラネテューヌの襲撃事件。

 

G.C.2015は零次元から始まる【暗黒星くろめ】の操る猛争モンスターとダークメガミの侵略事件。

 

 

「これにより、ゲイムギョウ界の国民は別次元に対してネガティブなイメージを持ってしまいました」

 

 

 イストワールが話を続ける。

 

どちらも個人的な感情による攻撃であったが、超次元の国民の中には別次元と関わると争いになるという不安を持つ者が少なくない。

 

 

「それはありますね。諜報部でも、たまに【また別次元から攻撃がくるんじゃないか?】って話題になりますし」

 

 

 アイエフがイストワールの言葉を肯定するように話に加わる。

 

 

「そこでネプギアさんが神次元でお仕事をして、神次元の人々に慕われていることを記事にしてもらって、別次元とも友好的な関係を築けることを示して欲しいのです」

 

 

 イストワールは、ここ最近のネプギアの活躍と、何度かファミ通の記事を読んでみて、この計画を立案したのだ。

 

 

「既に他の三国からの同意は出ています」

 

 

 手回しの良いイストワールは、今回の件に関して、ラステイションとルウィーとリーンボックスの同意を貰っていた。

 

 

「わかりました。そういうことなら私頑張ります」

 

 

 ネプギアは真剣な顔で頷く。

 

彼女も神次元と零次元に沢山の知り合いがいるので、出来るだけ仲良くして欲しいと思っている。

 

 

「ねぷねぷもお仕事すれば取材してもらえるかもしれないですよ」

 

 

 コンパがネプテューヌにアドバイスするが、ネプテューヌは、「えー? むーりー。わたし、その日はぷるるんとピー子と遊ぶって決めてるんだから」と面倒くさそうに言う。

 

 

 さっきは地団駄を踏んだネプテューヌだが、どうやら仕事をするのは嫌らしい。

 

 

「……本来なら、そのプル子とピーシェがする仕事を、何故かネプギアがやってるんだけどね」

 

 

 アイエフのツッコミに、「私はお姉ちゃんが幸せならそれでいいですから。プルルートさんやピーシェちゃんと遊んでいるときのお姉ちゃん凄く幸せそうだし」とすかさずフォローを入れるネプギア。

 

プルルートとピーシェとは神次元のプラネテューヌの女神。

 

なぜネプギアが彼女達の仕事をするのかと言うと、事の発端はネプテューヌが神次元に迷い込んだことから始まる。

 

 

 別次元に迷い込んだが、幸いにもイストワールとの連絡が取れ、神次元と超次元を結ぶ道を作り超次元へ帰る予定だったネプテューヌ。

 

しかし、その作業の途中で、ネプギアが姉に会いたい一心で暴走してミスをしてしまった。

 

その結果、神次元と超次元を結ぶ道はネプギアが神次元へ移動するのに使ってしまう。

 

その後、ネプギアとネプテューヌ二人分が神次元から超次元へ戻る道を作るには、膨大なシェアが必要とのことで、暫く神次元に滞在することになってしまったネプギアとネプテューヌ。

 

 

 その間であるが、ネプギアが神次元の女神の仕事をするようになる。

 

理由は神次元のプラネテューヌの女神プルルートは元々仕事が好きではなく、更にネプテューヌと意気投合して毎日遊んでいた為である。

 

そこで困っている人を放っておけないネプギアは、仕事をしない女神達に困り果てている信者達を見かねて、不慣れながらもプルルートの代わりに女神の仕事を始めたのである。

 

プルルート達がまったく仕事をしない所為もあってか、神次元のプラネテューヌの内では国民の60%が女神はネプギアだけだと思われていた。

 

そうしている内に、ネプギア達は神次元で戦いを繰り広げていた七賢人を退けた。

 

だが、その間に超次元では強力な古のタリの女神の力を得たキセイジョウ・レイが暴れていたので、それを止める為にネプギアとネプテューヌは超次元に戻ることになる。

 

その際に、ネプギアは自分が超次元に戻っても大丈夫なようにプルルートや教団の職員に全て引継ぎをし国民の皆にも説明をした。

 

 

 しかし、新しく出来た神次元と超次元を結ぶ道は、使用しても消えることの無く何度も使えるものであった。

 

イストワールの見解では神次元で膨大なプラネテューヌのシェアを得た為とのことらしい。

 

不慣れながらもネプギアの一生懸命な仕事ぶりが、プラネテューヌの国民の心に届いたのだと思われる。

 

それとも、ネプギアと離れたくないという神次元のプラネテューヌ国民の願いが形になったのかもしれない。

 

キセイジョウ・レイの事件の解決後もプルルートは仕事をする気配を見せず、プラネテューヌの国民からの嘆願もあり、ネプギアは月に一度ではあるが定期的に神次元に訪れて女神の仕事をするようになっていた。

 

 

「それに次元が違うとは言え、私を信じてくれている人達を見捨ててはおけません」

 

 

 ネプギアは迷いのない瞳で自分の主張を伝える。

 

 

「……ふぅ……ネプギアらしい答えね」

 

 

 アイエフは肩をすくめてお手上げのポーズで言う。

 

真面目過ぎるネプギアに呆れているように見えるが、彼女の真面目さと優しい心が嬉しいようで顔は微笑んでいた。

 

 

「ギアちゃん、偉いですー」

 

 

 コンパがネプギアの頭を撫でながら褒める。

 

こちらは素直にネプギアの考えに感心をしているようだ。

 

 

「それではアイエフさん、コンパさん、今回も同行をお願いします」

 

 

 イストワールがアイエフとコンパに神次元へに同行を依頼する。

 

アイエフは護衛、コンパは医療班として毎回神次元に同行していた。

 

 

「了解です」

 

「わかりました~」

 

 

 素直に了承する、アイエフとコンパ。

 

 

「プラエちゃんとあんみつさんはどうしますか?」

 

 

 ネプギアがイストワールに尋ねる。

 

 

「お二人にも神次元に来ていただきましょう。人手は多いに越したことはありませんし、二人とも信用できる人だと分かっていますから」

 

 

 イストワールがそう答えると、「よかった。プラエちゃんが寂しい思いするんじゃないかって少し心配だったんです」とネプギアが安心したかのように言う。

 

 

「さーて、今回は何して遊ぼうかなー」

 

 

 ネプテューヌはゲームソフトをバックの中に入れて荷造りしていた。

 

ネプギアが神次元に仕事に行く際はネプテューヌも同行していた。

 

仕事をするのではなく遊ぶ為であるが……

 

 

***

 

 

 G.C.2019年4月21日 日曜日。

 

 

 今日は先日、女神候補生達が楽器を見に行くと約束をした日である。

 

この話を聞いたリーンボックスの守護女神であるベールが、よりより楽器を探そうと提案し、オンガクギョウ界を訪れることになったのだ。

 

 

 そのベールがオンガクギョウ界への飛行機を出してくれるとのことで、女神候補生とプラエはリーンボックスの訪れていた。

 

リーンボックスは他三国がある大陸から海を隔てた場所にある巨大軍事国家だ。

 

ラステイションから船が出ており、主にそれに乗って移動をする。

 

 

「ふわー……ここがリーンボックス……緑がいっぱい」

 

 

 船を降りたプラエが珍しそうにリーンボックスの街並みを眺める。

 

リーンボックスは近代的な街並みの中にも緑が多いのが特徴だ。

 

更に建物の色にも緑色が多く取り入れられている。

 

文明レベルはラステイションと同程度であり、先進国家のプラネテューヌ程では無いが高い技術力を持っている。

 

軍事国家というように開国した頃は軍事に力を入れていたが、今の女神であるベールは軍事の他にも萌え文化の取入れに積極的な姿勢を見せている。

 

 

「迎えの車が来てるらしいけど、どこかしら?」

 

 

 ユニがキョロキョロと辺りを見渡す。

 

 

「どこかなどこかな(きょろきょろ)」

 

 

 ロムがユニと同じように辺りを見渡すと、「人がいっぱいで全然見えないわねー」とラムが不満そうに腕組みをする。

 

港だけあって人が多くいる上に、ロムとラムも身長では遠くまで見えないのだ。

 

更にリーンボックスは体格の大きな人が多く、ネプギアやユニでも人混みの中ではなかなか遠くまで見ることが出来ない。

 

 

「ちょっと、待ってね」

 

 

 ネプギアがそう言いながら両手を広げると、ポーチから呼び出した十本のペンネルが現れる。

 

 

「ペンネル、周囲を見て来て」

 

 

 ネプギアがそう言うと一斉にペンネルが宙に飛び上がりネプギア達の周囲を旋回し始める。

 

ネプギアのペンネルは改造品であり、小型カメラが仕込まれている。そしてその映像をブレインマシンインターフェースでネプギアに届けるのだ。

 

その為、通常は魔法陣を描く為に飛翔するペンネルだが、このように周囲の捜索をすることも出来る。

 

 

「どう? 何か見えた」

 

 

 ユニがネプギアに尋ねる。

 

それと同時にネプギアの脳裏に青いロングヘアーの女性が写る。

 

身長はネプギアと同程度で、左目の下に小さな泣きホクロがあった。

 

 

「あの青い髪は……5pb.さん」

 

 

 ネプギアがそう呟くと、「きっとそこね。行きましょう」とユニが言う。

 

ネプギアは、「うん」と頷くと、「ご苦労様、戻って来たいいよ」と言ってペンネルを回収する。

 

 

「5pb.さーん!」

 

 

 ネプギアが右手を振りながら、先程見た青いロングヘアーの女性に声を掛ける。

 

 

「あっ、来た来た」

 

 

 青いロングヘアーの女性はそう言いながらネプギアの方を向くと歩み寄り、「大丈夫? 迷わなかった」と心配そうに尋ねる。

 

 

「ネプギアのペンネルがあったから平気よ」

 

 

 ラムが自分のことを自慢するかのように両手を腰に当てながら言うと、「ネプギアちゃんのおかげ(にこにこ)」とロムが微笑む。

 

 

「あの……初めまして、プラエ=パピリオです」

 

 

 プラエが緊張した面持ちで、青いロングヘアーの女性に自己紹介をする。

 

それを聞いた青いロングヘアーの女性はプラエの方を向くと、「よろしく、ボクの名前は5pb.」と返事をする。

 

 

「ボク?」

 

 

 プラエが不思議そうに首を捻り、5pb.をしげしげと見つめる。

 

へそ出しの黒いタンクトップに同じく黒のミニスカートをはいた5pb.はどう見ても女性ではあるが、彼女の一人称が変な誤解を招いたらしい。

 

 

「あはは、たまに誤解されるけど、ちゃんとした女の子だよ」

 

 

 5pb.は特に気を悪くした様子もなくプラエの疑問に答えると、「ご、ごめんなさい。プラエ色々なことが初めてで……」とプラエが申し訳なさそうに謝る。

 

 

「キミが噂の天才バイオリニスト?」

 

 

 5pb.がプラエに尋ねると、「えっ!?」とプラエは驚いた顔をしてしまう。

 

 

「バイオリニスト? バイオリズムの仲間?」

 

 

 ラムが不思議そうに首を傾げると、「バイオリニストはバイオリンの演奏者のことだよ」とネプギアが小声でラムに説明をしてあげる。

 

すると、「そうよ! プラエのバイオリンはすごーーく上手なんだから!」とラムが元気よく左手を上げ、「うん、すごく綺麗な音なの(めろめろ)」とロムもそれに続く。

 

 

「ら、ラムさん、ロムさん」

 

 

 プラエが恥ずかしそうに顔を真っ赤にすると、「バイオリンのあるバンドって珍しいから楽しみだよ」と5pb.が微笑む。

 

 

「それじゃあ、行こうか」

 

 

 5pb.がそう言いながら近くに待たせてあった大型車に乗り込むと、ネプギア達も同じ車に乗り込む。

 

車はリーンボックスの空港へと移動をする。

 

そこにベールが用意した飛行機があると言うのだ。

 

 

「そう言えば、ベールさんは?」

 

 

 車の中でユニが5pb.に質問をする。

 

すると、5pb.は少し気まずそうな顔をして、「それがチカさんが【女神候補生ばかり目をかける】ってイジケちゃったらしくて」と言う。

 

 

「あー……」

 

 

 それで全てを察したユニは右手を額に当てながら言う。

 

ネプギアも困った顔で、「後でチカさんに謝った方がいいのかな?」と言う。

 

 

「どういうこと?」

 

 

 事情を知らないプラエが首を傾げると、「チカさんって言うのはリーンボックスの教祖の人なの。凄く出来る人なんだけど、女神のベールさんに対しては甘えん坊なんだ」とネプギアが簡単な説明をする。

 

すると、「そのベールさんが最近アタシ達女神候補生、特にネプギアを目にかけるのよ」とユニが説明を続ける。

 

 

「はいはーい! わたし達も、ベールお姉ちゃんって呼んだら美味しいお菓子くれたよ」

 

 

 ラムが左手を上げてそう言うと、「おいしかった(あまあま)」とロムもそれに続く。

 

 

「それで、構って貰えないチカさんが、今回のことでついにイジケちゃったらしいんだよ」

 

 

 5pb.はそう答えると、「だから今日同行するのはボクだけなんだ」と続けて言う。

 

 

 そうしている内に車は空港に着き、ネプギア達は飛行機に乗り込む。

 

飛行機はリーンボックスを飛び立ち、オンガクギョウ界へと向かう。

 

 

***

 

 

「ここがオンガクギョウ界……」

 

 

 飛行機から降りたネプギアが周囲を見渡しながら言う。

 

 

「えー? ゲイムギョウ界と何も変わらないわよー?」

 

 

 ラムが不満そうに言うと、「楽器とか音符が飛んでたりすると思ったのに……(がっかり)」とロムも肩を落とす。

 

 

「ここは人が住んでる街だからね。そういうのはいないかな」

 

 

 5pb.がそう言うと、「確かに、ゲイムギョウ界でも二次元モンスターが空港に居たら危ないわね」とユニが納得したように頷く。

 

 

「楽器が飛んだりはしてないけど、オンガクギョウ界の奥には楽器や音楽の精霊は居るみたいだよ」

 

 

 5pb.がそう答えると、「ボクも見たことはないんだけど」と付け加える。

 

 

「じゃあ、街で買い物するにあたってはゲイムギョウ界と同じと思っていいのかしら?」

 

 

 ユニがそう言うと、「うん、そうだよ。通貨も同じクレジット」と5pb.が頷いた。

 

 

「それにここは、ゲイムギョウ界の他にもアニメギョウ界やマンガギョウ界から来る人が多いサブカルチャーの街だから、殆どゲイムギョウ界と同じだよ」

 

 

 5pb.がそう言うと、「さぶかる茶ー? それって美味しいの?」とラムが首を傾げ、「わたしはジュースの方がいいな」とロムがそれに続く。

 

 

「プラエはどんなお茶がいい?」

 

 

 ラムがプラエに向かってそう尋ねると、「プラエはミルクティーがいいな……」とプラエが答える。

 

三人のやりとりを聞いたネプギアは右手を口元に当てながら【くすり】と小さく笑うと、「お茶のことじゃないよ」と言う。

 

 

「比較的新しく登場した独自性のある文化のことをサブカルチャーって言うのよ。ゲームやアニメなんかの音楽はそれに当たるわ」

 

 

 ユニが腕組みしながらそう言うと、「だから、この街には私達に関係のある音楽が多く集まってるんだって」とネプギアが説明を付け加える。

 

 

「「「ふんふん」」」

 

 

 ロムとラムとプラエが納得したように何度も頷く。

 

 

「それじゃあ、行こうか? お店の方はボクが案内するから、みんなは好きなだけ楽器を選んでよ。ボクも出来るだけアドバイスするからさ」

 

 

 5pb.がそう言って歩き出すと、女神候補生達とプラエはその後に付いていく。

 

 

 

 ***

 

 

 

 楽器選びは驚くほど順調であった。

 

5pb.のアドバイスが的確だったのもあるが、ネプギアとユニも前もって勉強をしてきたので、全員の楽器がすぐに決まった。

 

 

「いっえーい! 楽しみ楽しみ~」

 

 

 楽器屋を出たラムがウキウキ気分で踊りだすと、「楽しみ(るんるん)」とロムもラムに合わせて踊りだす。

 

 

「5pb.さんのおかげでスムーズに決まりました。ありがとうございます」

 

 

 ネプギアが5pb.に丁寧にお礼を言うと、「そんなことないよ」と5pb.は両手を左右に振って謙遜する。

 

 

「それより、ネプギア様もユニ様も凄く勉強してきてて、ボク驚いちゃったよ」

 

 

 5pb.が感心したかのように言うと、「やるからには全力ですから」とユニが腕組みしながら答える。

 

 

「私達も5pb.さんみたいに、歌でもみんなを元気づけられたらいいなって思って勉強してきたんです」

 

 

 続いてネプギアが言う。

 

それを聞いた5pb.は【うんうん】と頷くと、「みんなならきっと出来るよ。ボクも応援してるからさ」と言った。

 

 

「そういえば、ボーカルは誰なの?」

 

 

 5pb.のさり気ない質問に、「「あ……」」とネプギアとユニの気まずそうな声が重なる。

 

 

「ぼーかる? 棒でダンスでも踊るの?」

 

 

 ラムがそう言うと、「どんどこどんどこ、うんばーって火を付けるの?」とロムが首を傾げる。

 

ユニが呆れ顔で、「それはリンボーダンスよ」と言うと、「ライブ中に火は危ないから止めようね」とネプギアがそれに続く。

 

 

「ボーカルって歌を歌う人だよね」

 

 

 プラエがそう言うと、「おお、プラエ物知りー」とラムが感心し、「プラエちゃんスゴイ」とロムがそれに続く。

 

 

「もしかしてだけど、ボーカル決めてない?」

 

 

 ネプギアとユニの反応から察した5pb.がそう言うと、「はい……うっかりしてました」とネプギアがうなだれ、「迂闊だったわ……」とユニが右手で額を押さえる。

 

 

「歌ならみんなで歌えばいいじゃない」

 

 

 ラムが気楽そうに言うと、「楽器初心者のアタシ達が演奏しながら歌えるの?」とユニが質問をする。

 

 

「ちょっと無理……かも(しゅん)」

 

 

 ロムはそう言って落ち込み、「プラエも演奏しながら歌うなんて出来ないよ……」とプラエも落ち込んだ声で答える。

 

 

「そーゆー時はネプギアよ。ネプギアがギター弾きながら歌えばいいのよ。5pb.だってギターしながら歌ってるじゃない」

 

 

 ラムは負けじと明るく言う。

 

彼女の言う通り、5pb.はギターボーカルをしており、ネプギアにもそれと同じことをして欲しいと言っているのだ。

 

すると、ロムも明るい顔になり、「そうだよ。ネプギアちゃんなら出来るよ(こくこく)」と嬉しそうに頷く。

 

 

 【困った時はネプギア】と言うのは、ロムとラムの中で定説化しつつあった。

 

それだけ、ネプギアが二人の期待に応え続けて来たということだ。

 

 

「わ、私?」

 

 

 困った顔で右手の人差し指で自分を指差しながら驚くネプギア。

 

 

「ギターボーカルか……。ネプギア様なら出来ると思うけど」

 

 

 5pb.は右手をあごに当てながら考え込むと、「でも初心者には少し敷居が高いと思うよ」と続ける。

 

ネプギアは肩を落としながら、「そうですよね」と落ち込んだ声を出すが、「そんなの努力と根性で何とかしなさい」 ユニが腕組みしながら言い放つ。

 

 

「わーん! ユニちゃんがスポ根モードだよぉ~」

 

 

 ネプギアがハの字眉毛で弱った声を出す。

 

ネプギアは少し恨めし気にユニを見るが、一転して祈るように両手を組んで上目づかいでユニの顔を覗き込むと、「じゃあ、ユニちゃんも一緒にやって、ユニちゃんと一緒なら私頑張れるから」とねだるようにユニに言う。

 

 

「あ、アタシも歌うの?」

 

 

 ユニが驚いたように言う。

 

ネプギアは小さく頷くと、「ユニちゃん、デュエットしよ」と同じポーズでお願いをし続けする。

 

すると、ユニは腕組みをしながらそっぽを向くが、まんざらでもない顔で、「しょ、しょうがないわね……」と言う。

 

 

「あっ!」

 

 

 ユニがそっぽを向いた瞬間、ネプギアの目に一つの看板が映る。

 

 

「私、ボーカル見つけたかも!」

 

 

 ネプギアが明るい声で一つの看板を指差す。

 

そこには【初音ミク】と書かれていた。

 

 

「初音ミクで歌を作るの? アリと言えばありだけど……」

 

 

5pb.が少し困惑した声を上げる。

 

【初音ミク】とは、音声合成システム【VOCALOID(ボーカロイド)】に対応したボーカル音源で、メロディや歌詞の入力により合成音声によるボーカルパートやバックコーラスを作成することができる。息継ぎ、強弱も入力可能。

 

数年前にはゲイムギョウ界でリズムゲームになって大人気を博した。

 

 

「アンタの頼み、もう絶対聞いてあげない」

 

 

 ユニが恨めしそうにネプギアを睨む。

 

ネプギアは少し気まずそうな顔で、「ごめんね、ユニちゃん。でも、ユニちゃんとデュエットしたいのは本当だよ」と言いながら両手でユニの右手を掴む。

 

 

「だから、演奏に自信付いてきたら一緒に歌お。ね?」

 

 

 ネプギアが優しい声でそう言うと、ユニは顔を赤くして、「か、考えておくわ……」とだけ呟いた。

 

 

***

 

 

 ネプギア達は初音ミクの看板の付いている店の中に入る。

 

 

「それにしても、ボーカロイドなんてよく思いついたわね」

 

 

 機嫌を直したユニが感心したかのように言うと、「プラネティックディーバはプラネテューヌから出たソフトだからね」とネプギアが少し得意気に答える。

 

先述した初音ミクのリズムゲームは【プラネティックディーバ】と呼ばれるサブタイトルが付いており、これはネプギアの必殺技の名前にもなっている。

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 

 長い緑色の髪をツインテールにした女性店員がネプギア達に声を掛ける。

 

 

「あっ、ミクちゃんだ!」

 

 

 ラムが嬉しそうに言うと、「ミクちゃん可愛い」とロムも嬉しそうに言う。

 

初音ミクは長い緑色の髪をツインテールにした少女で、店員の彼女は初音ミクの格好をしているのだ。

 

女性店員は、「こんにちはー」とロムとラムに微笑んで手を振ると、「何かお探しですか?」とネプギア達に声を掛ける。

 

 

「少しお聞きしたいことがあって……」

 

 

 ネプギアは女性店員に自分達の事情を簡単に話す。

 

 

「なるほど。初音ミクをボーカルにしたバンドを作りたい、と」

 

 

 店員は納得したように頷くと、「面白い試みですけど、おススメはしませんよ」と少し困った顔で言った。

 

 

「やっぱりそうですよね」

 

 

 5pb.がそう言うと、「ええ、ボーカルはバンドの顔ですから、合成音声だけって言うのはちょっと……」と店員が答える。

 

 

「ボーカルは歌いながらパフォーマンスもしなきゃいけないんだよ。だから、姿の見えない初音ミクじゃ厳しいと思うよ」

 

 

 5pb.の説明に、「パフォーマンスなら、わたしがいっぱいするわよ」とラムが腰に手を当ててドヤ顔で答えると、「わ、わたしはちょっと恥ずかしい(おろおろ)」とロムはうろたえ、「プラエも無理だよ~」とプラエも困った顔をする。

 

 

「アタシ達は演奏するんだから、ボーカルみたいなパフォーマンスはできないわよ」

 

 

 ユニはそう言うと、「どうする? ネプギア」とネプギアに尋ねる。

 

 

「姿ならある筈だよ。ゲイムギョウ界とコラボした時に専用のホログラムの技術を開発して、オンガクギョウ界に提供した筈だから」

 

 

 ネプギアがそう言うと、店員は驚いた顔をして、「よく知ってますね」と言った。

 

 

「それじゃあ、それを使えばイケるってことね」

 

 

 ユニが明るい声でそう言うと、「でも、それでも難しいと思いますよ。プログラムで決まった動きしかしないんじゃ……」と店員が難しい顔で言う。

 

更に店員は周囲を見渡して誰も居ないことを確認すると、「それにこんなことは言いたくないんですけど、初音ミク自体がブームが過ぎてますし……」と小声で言う。

 

 

「え!? そんな、ミクちゃんが? どうして?」

 

 

 ネプギアが驚いたように言うと、「時代の流れですかね。今の動画配信はVTuberが中心になってるんですよ」と店員が答える。

 

 

「ぶいちゅーばー?」

 

 

 ロムが不思議そうに首を傾げると、「なにそれ? チューブのお菓子?」とラムが質問し、「チューバ演奏する人とか?」とプラエがそれに続く。

 

 

「CGやアニメのキャラクターをアバターに使って、そのキャラになりきって動画配信、投稿を行う人のことを言うのよ」

 

 

 ユニがそう説明すると、「みんつぶのなりきりアカウントの規模が大きくなったようなものだよ」とネプギアが説明を付け加える。

 

 

「今の動画はリアルタイムで反応をするVTuberの時代で、合成音声で歌うだけの初音ミクは過去の物になりつつあるんです。歌の作り手もめっきり減ってしまって……」

 

 

 店員は残念そうに言うと、「ある意味VTuber達が初音ミクの後継者達と言えなくもありませんし、残念ですけど、私は初音ミクは役目を終えたと思ってるんですよ」と言って肩を落とす。

 

 

「それなら、私が……。ううん、私達が再びミクちゃんの人気を取り戻してみせます!」

 

 

 ネプギアが力強く言う。

 

 

「お客様……」

 

 

 店員が少し驚いたように呟く。

 

 

「ミクちゃんは歌うことしか出来ないけど、本当に歌うのが好きな子でした。そのミクちゃんがこんなところで終わりなんて悲しすぎます!」

 

 

 ネプギアの訴えを全員が静かに聞いていた。

 

 

「それにミクちゃんには、プラネティックディーバでお世話になったし、恩返しがしたいんです」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「お客様は変わっていますね。ただの音楽ソフトの初音ミクにそこまで感情移入して、恩返しまでしたいだなんて」と店員が言う。

 

 

「私の知り合いや友人は、初音ミクの時代は終わった。ミクはオワコンとしか言ってくれなかったのに」

 

 

 店員はそう言いながら、「少々お待ちください」と言って店の奥に入って行く。

 

暫くすると店員は手に一つの箱を持って戻って来た。

 

 

「お客様にこれを差し上げます」

 

 

 店員はそう言って手に持った箱をネプギアに手渡す。

 

手渡されたネプギアは、箱を見ながら、「これ、初音ミクのソフトですよね。いいんですか?」と驚きながら質問をする。

 

 

「ええ、誰も使いこなせない、いわくつきのソフトなんですけど」

 

 

 店員がそう言うと、「いわくつきって……ヤバイ呪いとか憑いてるんじゃないでしょうね?」とユニが怪訝そうな顔で腕を組みながら質問をする。

 

 

「これは有名な初音ミクの歌の作り手が使っていた物です。このソフトの初音ミクには心が宿っているそうです」

 

 

 店員の説明に、「なんでそんなものがここに?」と5pb.が不思議そうに質問すると、「持ち主が亡くなったんです。それで、心を持ったこのソフトを誰も使いこなせず、ここまで流れて来たんですよ」と店員は答えた。

 

 

「わかりました」

 

 

 ネプギアはそう言うと、店員から受け取った初音ミクのソフトを両手で大事そうに胸に抱えて「でも、お代は払わせて下さい」と言う。

 

店員は静かに首を横に振ると、「結構です」と言い、「どうしてもと言うなら、このオンガクギョウ界のコンテストで初音ミクを使って受賞して下さい」と言う。

 

ネプギアは力強く頷くと、「はい、約束します」と言った。

 

 

「またそうやって安請け合いするんだから……」

 

 

 ユニが呆れたように言うと、「あっ! ごめんね、勝手に……」とネプギアが焦りながら言うが、「いいわよ。やりましょ、アタシ達の力を見せてあげるわ」とユニがウインクしながら答える。

 

続いてラムも腕組みしながら、「うん、ネプギアらしくていいと思う。わたしもやるわ」と言い、「わたしもネプギアちゃんとミクちゃんの為に頑張る」とロムも小さく両手でガッツポーズをし、「もちろん、プラエもやるよ」とプラエは祈るようなポーズで上目づかいにネプギアを見る。

 

 

「みんな、ありがとう!」

 

 

 ネプギアは仲間達の友情に心から感謝しつつ、そう言った。

 

ネプギア達は定員にお礼を言って店を後にすると、暫く街を見て回った後にゲイムギョウ界へと帰って行った。

 

 

 

***

 

 

 

 ゲイムギョウ界に戻ったネプギアは、5pb.に港まで見送られ、プラネテューヌのネプギアの部屋まで戻って来た。

 

オンガクギョウ界で手に入れた、心を持った初音ミクのソフトを起動してみる為だ。

 

夕方の遅い時間であったが、ユニ達も気になるとのことで一緒にネプギアの執務室まで来たのだ。

 

 

「これでセットアップは完了かな」

 

 

 ディスクトップパソコンの画面に向かったネプギアが呟く。

 

 

「それじゃあ、いよいよ起動ね」

 

 

 ユニがそう言うと、「楽しみ楽しみ~」とラムが小躍りし、「ミクちゃんに会える(どきどき)」とロムが期待に目を輝かせ、「プラエ、初音ミクさんって初めて会う」とプラエはソフトのパッケージイラストを見ながらつぶやく。

 

同時にモニターに一人の少女の姿が現れる。

 

先程のオンガクギョウ界の店員と同じく長いツインテールの緑色の髪の少女だ。

 

 

「こんばんは、マスター。ご機嫌いかがですか?」

 

 

 少女の口が動くと同時にスピーカーから、ややぎこちないしゃべり方の合成音声が聞こえてくる。

 

 

「こんばんは」

 

 

 ネプギアが挨拶を返すと、「声が違う? 新しいマスターの方ですか?」と画面の少女が反応をする。

 

 

「うん、ネプギアって言うの。よろしくね、ミクちゃん」

 

 

 ネプギアがそう答えると、「わたしはラムよ!」とラムが左手を上げ元気よく言った。

 

 

「マスターが二人も?」

 

 

 画面の中の少女が驚きの声を上げる。

 

 

「ますたーじゃないわよ。わたし、辛くないんだから」

 

 

 ラムが腕組みしながら不満そうに言うと、「それはマスタード」とユニが呆れ顔でツッコミをし、「この場合のマスターは御主人様って意味だよ」とネプギアが説明をする。

 

 

「ぷっ……」

 

 

 画面の少女は小さく吹き出すと、「今度のマスターは面白い方なんですね」と言って微笑む。

 

 

「わぁ~、ミクちゃんが笑った(にこにこ)」

 

 

 それを見たロムも楽しそうに笑う。

 

プラエは目を丸くして、「こんな反応するなんて、凄いゲームだね」と驚く。

 

 

「いえ……音声認識にしても反応がリアルすぎるわ。これが心を持った初音ミクって言うこと?」

 

 

 ユニが右手をあごに当てながら考え込むように言うと、「はい、私は初代のマスターとの生活の中で、人間で言う心に近いプログラムを手に入れた初音ミクです」と画面の少女が答えた。

 

 

「凄いね。ネプギアンダムと同じレベルで会話が出来るなんて」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「えー? ネプギアンダムの方が凄いわよ」とラムが不満そうに言う。

 

同時に、「シツレイシマス」との機械音声と共にネプギアンダムが部屋に入って来る。

 

 

「オチャトケーキヲオモチシマシタ」

 

 

 ネプギアンダムはそう言いながら、机の上にお茶のカップとケーキを綺麗に並べて行く。

 

 

「確かに、こんな給仕みたいなことが出来るロボットはそうは居ないわよね」

 

 

 ユニが少し呆れ気味に言うと、画面の中のミクが、「私、もしかして凄い未来に来てしまったのでしょうか?」と驚きの声を上げる。

 

 

「ううん、そうじゃないの。ネプギアンダムがちょっと特別なだけ」

 

 

 ネプギアが苦笑いを浮かべながら言うと、「ここはゲイムギョウ界でね……」と話し始めゲイムギョウ界の説明と自分達女神候補生とプラエの紹介をした。

 

画面の中のミクは真剣にそれを聞いて、感心したり頷いたり、時には質問をしたりして、その反応は人間と殆ど変わらなかった。

 

 

***

 

 

「なるほど、マスター達のことは大体理解しました」

 

 

 画面の中のミクが頷きながら答える。

 

 

「ねぇ、ミクちゃん」

 

 

 ネプギアが少し控えめに声を掛けると、「なんですか? マスター」とミクが答える。

 

すると、ネプギアはハの字眉毛の困り顔で、「そのマスターって言うの、ちょっと恥ずかしいんだけど……」とミクに向かって言う。

 

 

「けど、マスターはマスターですし……」

 

 

 今度はミクがハの字眉毛の困り顔をしてしまう。

 

 

「それに、ユニちゃん達もみんな友達だし、私だけマスターって言うのも変だと思うんだ」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「今までのマスターからは友人などを紹介されたことがなかったので、このような事態は初めてで……」とミクが更に困った顔をしてしまう。

 

 

「いままでのマスターは全員ボッチだったの?」

 

 

 ラムがそう言うと、「そういうこと、ズバリと言わないの」とユニが軽く注意をする。

 

ネプギアも、「きっと、作詞作曲する時は一人の方がはかどる人達だったんだよ」と軽くフォローをする。

 

 

「じゃあ、人のことを名前で呼んだ事がないの?」

 

 

 プラエがそう質問すると、「はい、そうなります」とミクが答えた。

 

 

「じゃあ、わたし、ミクちゃんに初めて名前呼んでもらう人になりたーい!」

 

 

 ラムが元気よく左手を上げると、「ラムちゃん、ズルい。わたしも初めて呼んでもらう人になりたい」とロムがラムの服を軽く引っ張る。

 

ラムは、「えー? ロムちゃんもー?」と驚く。

 

更に、「プラエもちょっと呼んでもらいたいかも……」とプラエが言うと、「どうしよう、ユニちゃん、私が初めてで呼んでもらいたいのに、みんなも一番が良いって言うよ~」とネプギアが困り顔でユニに訴える。

 

 

「アンタもかいっ!」 

 

 

 ユニは思いっきりネプギアにツッコミをすると、「そう言えば、前もあったわねこんなこと」と言って頭を抱える。

 

ユニはそのまま腕を組むと、「まったく、変なトコで子供っぽいんだからアンタは」と呆れた声で言った。

 

 

「コウイウトキハ、ジャンケンカ、クジビキガセオリーデショウ」

 

 

 今まで大人しくしていたネプギアンダムがそう言うと、「じゃんけんとくじ引きは分かるけど、セロリーってなに?」とラムが首を傾げると、「セロリを使った遊び?」とロムが続けて首を傾げる。

 

ユニが右手で頭を抱えながら、「セロリーじゃなくて、セオリーよセオリー」と言うと、「物事をするときの、最良とされる方法や手順のことを言うんだよ」とネプギアが説明をする。

 

 

「じゃあ、わたしくじ引きー!」

 

 

 ラムが元気よく言うと、「ラムちゃんがくじ引きなら、わたしもくじ引き」とロムも同意し、「プラエもくじ引きでいいよ」とプラエも賛成をする。

 

 

「ソレナラ、ワタシガアミダクジヲツクリマス」

 

 

 ネプギアンダムはA4の白い紙を持つと、それを机の上に置き綺麗に線を引いてあみだくじを作る。

 

 

「あれ? 線が一本多いよ」

 

 

 プラエがそう言いながら、紙に書かれた一本の縦線を指さす、

 

確かに彼女の言う通り、縦の線が五本あって、ネプギア、ロム、ラム、プラエの四人に対して一本多い。

 

 

「ユニサマモヤリタソウナノデ、タシテオキマシタ」

 

 

 ネプギアンダムがそう言うと、「あ、アタシは別に……」とユニが言うが、「どうせなら一緒にやろうよ。みんな一緒の方が楽しいし」とネプギアが微笑む。

 

すると、ユニは少し恥ずかしそうに顔を赤くしながら腕組みをし、「し、仕方ないわね。付き合ってあげるわ」と答えた。

 

 

***

 

 

「じゃあ、やりましょ」

 

 

 ラムはそう言いながらボールペンを持って、「わたしココがいい」と言いながら、ど真ん中の縦線にラムと書く。

 

続いて、「ロムちゃんはどこ?」とロムに尋ねる。

 

ロムは、「じゃあ、ラムちゃんのとなり」と言って、ラムの字の右隣りの縦線を指さす。

 

ラムはロムが指さした縦線にロムと書くと、「ここね。プラエは?」と今度はプラエの方を向く。

 

プラエはラムの字の左隣を指さして、「プラエもラムさんの隣にしようかな……」と言う。

 

ラムは、「オッケー」と言いながら、その場所にプラエと書き込んだ。

 

 

「私はどうしよっかな?」

 

 

 ネプギアがそう言いながら、あごに右人差し指を当てる。

 

 

くいくいっ……

 

 

 ネプギアの服の右袖が僅かに引っ張られる。

 

ネプギアが右側を見ると、ロムが控えめにネプギアの袖を引っ張りながら、あみだくじの自分の名前の書かれた場所の隣を指さしている。

 

 

「……ここがいいと思う(もじもじ)」

 

 

 ロムはそう言いながら上目遣いにネプギアを見つめる。

 

ネプギアはそんなロムを見ながら、(隣に名前書いて欲しいのかな?)と思うと微笑ましくなった。

 

 

くいくいっ……

 

 

 今度はネプギアの左袖が引っ張られる。

 

 

「え?」

 

 

 ネプギアが驚いて左側を見ると、こっちでもプラエがネプギアの袖を引っ張りながら、あみだくじの自分の名前の書かれた場所の隣を指さしている。

 

 

「プラエはこっちがいいと思う」

 

 

 プラエもロムと同じように上目遣いでネプギアを見ながら言う。

 

ネプギアはそんな二人を見ながら、(えええ~!? どうしたらいいの~?)と心の中で困り果ててしまう。

 

 

「えっとね、これはクジだから、隣に名前書いたからって何か起きる訳じゃないんだよ?」

 

 

 とりあえず、ロムとプラエを説得しようとするネプギア。

 

 

「ネプギアちゃんの隣がいい」

 

「ネプギアお姉さんの隣がいい」

 

 

 しかし、ロムとプラエは説得に応じるような気配は無いようだ。

 

ユニはそんな二人を見ながら、「ふぅ……」とため息を吐いて、「モテモテね」と冷やかすようにネプギアに視線を送る。

 

 

「そんなこと言わないで助けてよ~」

 

 

 ネプギアは困った声を上げながらユニに助けを求めるが、「これぐらい一人で決めなさい」とユニに突き放されてしまう。

 

ネプギアは、「ユニちゃんのいじわる~~」とユニを恨めし気に見る。

 

 

「えっとね、じゃあねぇ……」

 

 

 ネプギアは右手を口元に当てながら真剣に悩む。

 

そして、「ごめんね、プラエちゃん」と言いながら、ロムの隣にボールペンでネプギアと書き込む。

 

 

「わーい!(にこにこ)」

 

 

 ロムが万歳して喜ぶ。

 

しかし、「あぅ……」とプラエはガックリとうなだれてしまう。

 

 

「本当にごめんね。今日の晩御飯のデザートあげるから」

 

 

 ネプギアはそう言いながらプラエの顔を覗き込み、「それで許して。ね?」と両手を合わせてお願いをする。

 

するとプラエはにこやかに微笑み、「デザートはいいから、ネプギアお姉さんのお粥が欲しい」と言う。

 

ネプギアは機嫌を直したプラエにホッと胸を撫でおろすと、「うん、いいよ。後で作ってあげるね」とプラエと約束をする。

 

 

(ふぅ……よかった)

 

 

 そう思った矢先に、「ぶーーー! ロムちゃんとプラエばっかりー! わたしはー!」と今度はラムが地団駄を踏む。

 

 

「ええっ!? ラムちゃんも何かして欲しいの?」

 

 

 ネプギアが驚いてそう言うと、「当然よ。こういうの不評堂条約って言うんだから~」とラムがさも当然のように言い放つ。

 

ユニが、「それを言うなら不平等条約よ」と言うと、「でも、難しいこと知ってるんだね。えらいえらい」とネプギアがラムの頭を撫でてあげる。

 

 

「ふふ~ん。ラムちゃんはルウィーの天災少女なんだから」

 

 

 ラムは自信満々に腕組みして言うが、「字が違うわよ。字が」とユニにツッコミをされてしまう。

 

 

「ネプギアー! 抱っこして、ぎゅーーーってして!」

 

 

 ラムはネプギアに向けて万歳すると、ネプギアはラムを抱き上げて、「ぎゅー」と言いながら抱きしめる。

 

ラムが満足気に、「うーん、ネプギアのお胸ふかふかで気持ちいい~」と言いながらネプギアの胸に顔を埋める。

 

 

「はぁ……まるでお気に入りの保母さんの取り合いしてる幼稚園児ね」

 

 

 ユニがそう言いながら、あみだくじの最後の空白に自分の名前を書くと、「ネプギアサマハ、オヤサシイデスカラ」とネプギアンダムがニコォと微笑む。

 

 

「それは同意なんだけど、その笑い方は微妙よ、ネプギアンダム」

 

 

 ユニは不気味なものを見るような声でネプギアンダムにそう言った。

 

 

「「「あっみだくじ~、あっみだくじ~、引くと楽しい あみだくじー どれがいいかな あみだくじー」」」

 

 

 ロムとラムとプラエの三人が仲良く声を揃えて、ネプギアンダムの作ったあみだくじをなぞる。

 

 

「なんなの? その歌」

 

 

 ユニが尋ねると、「ミナちゃんがあみだくじやるときに歌う歌なの」とロムが答える。

 

 

「……ちょっと古そうな歌だけど、ミナさんって何歳なんだろ?」

 

 

 ネプギアが首を傾げながら言うと、「気になるけど、歳のことを聞くのはちょっとねぇ」とユニは難しい顔をした。

 

 

 

***

 

 

 

「じゃあ、呼んでみて。ユニよ」

 

 

 

 ユニがパソコンの画面のミクに向かって語り掛ける。

 

 

「ウ……ニ……?」

 

 

 ミクはぎこちない声な上に間違えてしまう。

 

しかし、ユニは根気よく、「違うわ。ユニよ。ユ・ニ」再度語り掛けると、「……ユ……ニ?」とミクがぎこちなくユニの名前を呼ぶ。

 

 

「そうよ。その調子、やれば出来るじゃない」

 

 

 ユニが嬉しそうに微笑む。

 

 

 あみだくじの結果、一番はユニに決まったのだ。

 

その為、今はユニがマンツーマンでミクに自分の名前を呼ばせるよう話しかけているのだ。

 

 

「む~……。一番最後にやりたいって言ったユニちゃんが当たるなんて納得いかなーい」

 

 

 後ろに居るラムが頬を膨らませて不満そうに言うと、「クジだから仕方ないよ。それに物欲センサーが発動したのかもしれないよ」とネプギアが言う。

 

 

「「「物欲センサー?」」」

 

 

 ロム、ラム、プラエの三人が不思議そうに首を傾げる。

 

ラムが、「物流センターとは違うの?」と質問すると、「ちょっと違うかな。物流センターは物を運ぶところだから……」とネプギアが少し困った顔で答える。

 

 

「物欲センサーって言うのはね。【これが欲しい!】と願う物を正確に検知し、それをとんでもなく強烈に出づらくしてしまう悪魔のセンサーのことを言うの」

 

 

 ネプギアがそう言って説明をすると、「じゃあ、レアポシェモンが出ないのも物欲センサー?」とロムが質問する。

 

ネプギアは頷いて、「うん、そうかもしれないね」と言うと、今度はプラエが、「狩りゲームで欲しい素材が出ないのも?」と尋ねる。

 

ネプギアは再度頷くと、「それも、多分物欲センサーだね」と答える。

 

更に、「じゃあ、お姉ちゃんが新人賞って言うの取れないのも物欲センサー?」とラムが質問するが、ネプギアは困った顔で、「それはちょっと違うかな……」と首を傾げる。

 

 

「うーん」

 

 

 ユニがパソコン画面を見ながら困ったような唸り声を上げる。

 

 

「どうしたの? ユニちゃん」

 

 

 ネプギアがユニの後ろから声を掛けると、「ちょっとね……。ミクがアンタの名前だけ上手く呼べないのよ」と言いながらユニが振り返る。

 

 

「え? 私だけって?」

 

 

 ネプギアが首を傾げると、「ミクに教えるのが楽しくて、つい他の人の名前も呼ばせてみたんだけど、アンタとネプテューヌさんだけ上手く呼べないのよね~」とユニが腕組みして首を傾げる。

 

それを聞いたラムが、「えー! ズルーイ! わたしが教えるハズだったのに~」と両手を上げて抗議する。

 

 

「ごめんごめん。ついね、後で何か買ってあげるから」

 

 

 ユニが手で謝りながらそう言うと、「ホント! わーい」とラムが喜び、「やったー!」とロムが万歳をする。

 

プラエは控えめに、「プラエもいいの?」と尋ねると、「いいわよ。後で買いに連れてくわ」とユニが快く答える。

 

プラエは、「嬉しい。ユニお姉さんありがとう」と言って祈るように両手を組む。

 

 

「ねーねー! ミクちゃん、わたしの名前は?」

 

 

 ラムが元気よく画面のミクに話しかけると、「ラムちゃんですね」とミクが答える。

 

それを聞いたラムは、「おお~」と感嘆の声を上げた。

 

 

 「それじゃあ、わたしは?(どきどき)」

 

 

 次にロムがミクに話しかける。

 

画面のミクは微笑みながら、「ロムちゃんですね」と答えると、「やったぁ」と嬉しそうにロムが飛び跳ねる。

 

 

「今度は、プラエの名前呼んでみて」

 

 

 更に、プラエがミクに話しかけると、「プラエちゃん」とミクが返事をする。

 

プラエは拍手をしながら、「ミクちゃんもユニお姉さんもスゴーイ!」と二人を褒める。

 

 

「じゃあ、最後に私は?」

 

 

 ネプギアがそう言ってミクに話しかけると、「マスター……じゃなくて、ネプ、ギア……さん」とミクは少しぎこちなく答える。

 

 

「どうやら、四文字以上の名前が上手く呼べないみたいなのよ」

 

 

 ユニがそう言うと、「そうなんだ……」とネプギアが残念そうに言う。

 

 

「そう言えば、他のボーカロイドの人たちも二文字か三文字だよね」

 

 

 ネプギアが思いついたようにそう言うと、「そうね。それも関係してるのかもね」とユニが答える。

 

 

「それじゃあ、愛称とかでいいよ。ミクちゃんの好きなように呼んでみて」

 

 

 ネプギアが画面のミクに向かって言うと、「それなら、マスターで……」とミクが言いかけるが、「ごめんね、マスターはちょっと……さっきも言ったけど恥ずかしいよ」とネプギアがストップを掛ける。

 

 

「私の友達とかは、ギアちゃんとか呼んでくれるから、同じふうに呼んでくれてもいいんだよ」

 

 

 ネプギアが優しい声で言うと、「じゃあ、ネギちゃんで」とミクが真顔で答える。

 

 

「ね、ねぎ~~?」

 

 

 ネプギアが驚きの顔で右手を口に当てる。

 

 

「ぷっ……」

 

 

 ユニは小さく吹き出すと、「確かにアンタの名前を略すと、ネギにならなくもないわね」と言って笑う。

 

 

「きゃははは~~、ネギだって~!」

 

 

 ラムがお腹を抱えて笑うと、「もぅ、笑わないでよー!」とネプギアが頬を膨らます。

 

 

「わたし、ネギトロ大好き(はむはむ)」

 

 

 ロムがそう言うと、「えっと……美味しそうでいいかも」とプラエが苦し紛れのフォローをする。

 

 

「ミクちゃん、どうしてネギなの?」

 

 

 ネプギアがハの字眉毛の困り顔で画面の中のミクに尋ねると、「響きが好きなんです」とまたもミクが真顔で答える。

 

 

「これから、よろしくお願いいたします。ネギちゃん」

 

 

 ミクが満面の笑みでそう言うと、ネプギアも反対する気が無くなったようで、「う~……ミクちゃんがそんなに呼びたいなら、ネギちゃんでいいよ」と諦めたふうに答える。

 

こうして、ネプギア達は自分たちのバンド、【グランプリ・ユナイテッド】のボーカルに初音ミクを招き入れて、彼女の調律を始めるのだった。

 

目標はオンガクギョウギョウ界のコンテストで受賞すること。

 

その目標に向けて努力を誓うネプギアであったが、やはりネギという呼び方は直して欲しいと思う今日この頃であった。

 

 

***

 

 

G.C.2019年4月27日 土曜日。

 

ミクと出会って約一週間、ネプギアは普段の仕事の他にも、楽器の練習やミクとのコミュニケーションと調律に精を出していた。

 

新しく始めた、【女神候補生ブログ】も好調で、そこにはネプギアの他にもユニにロムとラムも楽器の練習をしていることが書き込まれている。

 

姉達の女神ブログには及ばないものの、なかなかの人気で、彼女達のバンド活動に対しても関心が高まっているようだ。

 

 

 そして、ネプギアは今日も朝から執務室でミクと話しながら調律を進めていた。

 

 

「うん、ミクちゃん上手上手」

 

 

 ネプギアが小さく拍手をして画面のミクを褒めると、「ありがとう、ネギちゃん」とミクも嬉しそうに微笑む。

 

 

「うぅ……慣れたと言えば慣れたけど、そのネギちゃんって言うのは変わらないんだね」

 

 

 ネプギアがハの字眉毛でそう言うと、「はいっ!!」とミクは物凄くいい笑顔で答える。

 

このネギというあだ名が相当気に入ってるようだ。

 

ネプギア自身も最初は抵抗があったが、ミクの好きなものがネギと知り納得をして受け入れていた。

 

とは言え、直せるものなら直して欲しいと思わなくもないようだ。

 

 

ピピピピピ……

 

 

 Nギアから電子音が聞こえる。

 

ネプギアはその音に反応をすると、「あっ、もうこんな時間」と驚いた顔をする。

 

 

「それじゃあ、もう時間だから行くね」

 

 

 ネプギアが画面のミクに話しかけると、「行ってらっしゃい」とミクがネプギアに向かって微笑み、「神次元でのお土産話楽しみにしてるね」と続けた。

 

今日は、以前にファミ通と約束をした神次元での取材の日となっていた。

 

ネプギアはパソコンの電源を落とすと、Nギアを持って執務室を出ていく。

 

 

「ミクちゃんやバンドのことも大事だけど、お仕事の方もちゃんとしないとね」

 

 

 ネプギアはそう自分に言い聞かせて、頭を切り替えると、部屋に戻って寝ているネプテューヌを起こすとイストワール達と一緒に待ち合わせ場所に向かった。

 

彼女にとって、バンド活動は学校でいう部活動や習い事に位置する物事になっていた。

 

最優先すべきは、女神としての仕事であり、それをこなした上でバンドの練習やミクとのコミュニケーションを行っている。

 

とは言え、真面目で計画的なネプギアは、この一週間特に問題もなく仕事もバンドの練習もこなしていた。

 

 

***

 

 

「ネプギア様、イストワール様、今回は神次元で取材をさせてくれてありがとう。本当に感謝してるよ」

 

 

 待ち合わせ場所のプラネテューヌの街で落ち合ったファミ通は、ネプギアとイストワールにお礼を言う。

 

すると、「ちょっとちょっと! お礼を言う相手が違うんじゃないかなー」とネプテューヌが三人の間に割って入ってくる。

 

 

「これはネプテューヌ様! 失礼しました。勿論ネプテューヌ様にも感謝しております」

 

 

 ネプテューヌが同行することを知らなかったファミ通は驚きながらもネプテューヌにもお礼を言うと、「こんなのわたしが本気を出せば、主人公補正で簡単に許可がでるんだよ」とネプテューヌはいけしゃあしゃあと答える。

 

 

「……ネプ子は何にもしてないでしょうに……」

 

 

 同行していたアイエフが右手で頭を抱えながら小さな声でツッコミを入れると、「まぁまぁ、あいちゃん」とコンパが両手の手のひらをアイエフに向けて宥めようとする。

 

 

「ネプテューヌ様が同行されるってことは今回はネプテューヌ様のお仕事ぶりも拝見できるんですね」

 

 

 ファミ通が嬉しそうに言う。

 

 

「もちろん見せちゃうよー! わたしとぷるるんの48番勝負! 【レトロゲーであ~んなことやこ~んなこと】」

 

 

 ネプテューヌがVサインを決めながら言うと、「おおっ!!」とファミ通は一瞬盛り上がるが、「……って、レトロ……ゲー?」と首を傾げてしまう。

 

 

「ネプテューヌさんは神次元の女神様のプルルートさんと長時間の会議を行いますので取材はご遠慮願います」

 

 

 イストワールは落ち着いて、ネプテューヌが仕事をせずに遊ぶことをオブラートに包んで話す。

 

 

「そ、そうなんですか……」

 

 

 察しの良いファミ通は、ネプテューヌの評判とイストワールの態度で何となく事情を察して、これ以上この話はしないようにした。

 

 

「流石はファミ通殿、理解が早い」

 

 

 あんみつが頷きながら感心すると、「プラエも分かったよ」とプラエが言う。

 

あんみつはプラエの頭を撫でながら、「プラエ様も流石です」と微笑む。

 

ファミ通とプラエ達の反応を見ながら、「うぅ……やっぱりお姉ちゃんって、そういう風に見られちゃうのかな」とネプギアが残念そうに両手の人差し指をツンツンしながら呟くと、「本気を出せば凄いんだけどな……」と続けて呟く。

 

 

***

 

 

 

「ネプギア様、候補生ブログの開設おめでとうございます」

 

 

 ファミ通がそう言うと、「ありがとうございます」とネプギアが丁寧にお礼を言う。

 

 

「ネプギア様が私の記事を宣伝してくれたおかげで、バックナンバーも飛ぶように売れてるみたいですよ」

 

 

 ファミ通はニコニコ笑顔を浮かべながらそう言うと、「この調子で他の候補生のみなさんも取材したいですねー」と続ける。

 

 

「それならちょうどよかったです」

 

 

 ファミ通の言葉に対して笑顔を浮かべるネプギア。

 

 

「どういうことですか?」

 

 

 ファミ通がネプギアに質問をするが、ネプギアはそれには答えず、「そろそろみんなも来る頃かな?」と道路の先を眺めて何かを探しているようだった。

 

 

「みんなとは?」

 

 

 ファミ通が不思議そうな顔でネプギアに質問すると、「それは来てからのお楽しみです」とネプギアは唇に右人差し指を当ててもったいぶるように言う。

 

 

「あっ! 来た」

 

 

 ネプギアがそう言うと道路の先に黒塗りの高級車が見える。

 

カラフルなプラネテューヌの街でその車はやや異彩を放っていた。

 

 

「おおっ! あの黒塗りの高級車は、不幸にも追突しちゃった大学生に車の主の暴力団員が示談の条件イケナイことを突き付けちゃうヤツだね」

 

 

 ネプテューヌは車を指差しながらハイテンションに叫ぶ。

 

 

「なによその分かりにくい上に意味不明な説明は……」

 

 

 アイエフが手を腰に当てて、冷ややかな目でネプテューヌを見ながらツッコミをすると、「ねぷねぷはたまに難しいことを言うです~」とコンパも不思議そうに首を傾げる。

 

どうやら二人ともネプテューヌが何を言っているのか分からないようだ。

 

 

「う~ん、みんなには難易度が高すぎたかな? ベールだったら乗ってくれたんだけどなー」

 

 

 渾身のボケをスルーされたネプテューヌが残念そうにを言っている間に、車はネプギア達の前に止まる。

 

そして車のドアが開くと、一人の少女が現れる。

 

 

「ユニちゃん久しぶり。会いたかったよ」

 

 

 ネプギアは少女の名前を呼ぶと嬉しそうに笑顔を向ける。

 

 

「そんなにはしゃぐことでもないでしょ」 

 

 

 ユニは呆れつつも少し嬉しそうにネプギアに答える。

 

 

「ガーン! 私、ユニちゃんに会いたくて会いたくて今日を楽しみにしてたのに~」

 

 

 ユニの素っ気ない態度にショックを受けるネプギア。

 

 

「たったの一週間でしょ。それにネトゲでもブログでも会ってるじゃない」

 

 

 ユニは落ち着いた態度でネプギアとの話を続ける。

 

ちなみにネトゲと言うのは【四女神オンライン】という大人気MMORPGの続編である。

 

ネプギア達はβテストから参加して、テスト後もそのままみんなで続けているのだ。

 

 

「でもでも、出来れば毎日会いたいし、やっぱりネットで会うのと実際に会うのとでは違うよ~」

 

 

 ネプギアは不満そうにユニに訴える。

 

その姿はいつもの落ち着いた優等生とは違う見た目相応の少女のものだった。

 

相変わらずユニの前だと少し子供っぽくなって、ワガママを言うようになるネプギアであった。

 

 

「まぁ、アタシも楽しみじゃなかったと言えばウソになるけど……」

 

 

 そんなネプギアを見ながら、ユニはぶっきらぼうに答える。

 

 

「ホント! ユニちゃんも楽しみにしててくれたんだ。嬉しい!」

 

 

 しかし、ネプギアはユニのそんな態度も気にせず、ユニが自分と会うことを楽しみにしてたことが嬉しくて笑顔を浮かべながら抱きつく。

 

ユニはネプギアを抱きとめながら、「よ、喜び過ぎでしょ!」と言うが、そう言うユニ自身の顔も嬉しそうだった。

 

 

「ちょっと、ユニちゃん、早く出てよ~」

 

 

 車の奥から、ドアの前でネプギアと話し込んでいるユニに不満を向ける声が聞こえる。

 

ユニが車から降りた直後にネプギアが話しかけたので、後がつかえているのだ。

 

 

「ああ、ごめんごめん」

 

 

 ユニは慌ててネプギアから離れると車のドアの前から移動する。

 

 

「ネプギア~~!」

 

 

 すると車の中からピンク色の物体がネプギアに抱きついてくる。

 

 

「きゃっ!?」

 

 

 驚きながらもしっかり抱きとめるネプギア。

 

 

「ネプギアはわたしと会うのも楽しみだったよね」

 

 

 ピンク色の物体はピンクのコートを着た少女で、ネプギアに抱きしめられながら嬉しそうに質問する。

 

ピンクのコートの少女の正体はラムであった。

 

ネプギアはラムと目を合わせると優し気な声で、「もちろん、ラムちゃんと会うのも楽しみだったよ」と言う。

 

 

「そうでしょそうでしょ! わたしも楽しみだったのよ~」

 

 

 ラムは上機嫌で答える。

 

 

くいっくいっ……

 

 

 ネプギアの服の腰の部分が引っ張られる。

 

 

「……わたしは……」

 

 

 服を引っ張っていたのはラムと同じデザインで水色のコートを着た少女だった。

 

 

「うん、ロムちゃんとも会うもの凄く楽しみだったよ」

 

 

 その少女はロムであった。

 

ネプギアはロムにもこやかに笑いかける。

 

 

「……嬉しいっ(にこにこ)」

 

 

 ロムは嬉しそうにネプギアの腰の部分に抱きつく。

 

ロムとラムの住んでいるルウィーは雪国なので、普段はお菓子のマフィンのような楕円形の帽子をかぶり、モコモコの毛皮付きのコートを着てブーツをはいている。

 

今までは部屋などの暖かい場所に居たので、コートの類いは脱いでいたのだ。

 

 

「ねーねー! ネプギア、わたしの話聞いてよー! わたし、ドラム上手になったんだよ」

 

 

 ラムはネプギアに抱きかかえられながら話かける。

 

 

「わたしのお話も聞いてほしい……キーボードいっぱい練習したの」

 

 

 ロムもネプギアに抱きつきながら話しかける。

 

 

「うんうん、みんなで練習した話しようね」

 

 

 ネプギアはそう言いながらユニを見つめると、「もちろん、ユニちゃんもね」と微笑みかける。

 

ユニは腕組みして、「アタシの上達ぶりを知って、アンタ達が驚かなきゃいいけど」と自信満々に言い放った。

 

 

「相変わらずネプギアはあの子達に大人気だね~」

 

 

 ネプテューヌは生暖かい目で四人を見守り、「女神候補生達は本当に仲が良いわね」とアイエフも同じように見守る。

 

 

「でもでも、少しジェラシーですぅ~。わたし達の方が、ギアちゃんとお付き合い長いのに~」

 

 

 コンパは眉をハの字に曲げて少し悲しそうに言う。

 

 

「やっぱり、年が近いってことは大事なのよ」

 

 

 今度はアイエフがコンパを宥めるように言うと、「あいちゃん、その言い方おばさん臭ーい」とネプテューヌがからかうように言う。

 

しかし、アイエフは「それだと、ネプ子も【おばさん】に含まれることになるわよ」と即座に切り返す。

 

 

「いや~ん、こんなぴちぴちのJSがおばさんなんてありえなーい」

 

 

 ネプテューヌは体をくねらせながら抗議する。

 

ちなみにJSとは小学生のことである。

 

 

「アンタみたいな小学生がいるか! 一体いくつサバ読んでるのよ」

 

 

 素早くツッコミをするアイエフ。

 

 

「あいちゃんは分かってないなー。わたしの可愛さなら何歳でも通じるよ」

 

 

 ネプテューヌは腰に手を当ててドヤ顔で言い放つと、今度は、「ばぶぅ~、ネプ子さんさいでちゅ~」と指を加えて赤ちゃん喋りをする。

 

 

「それ以上は止めておきなさい……痛々しいわ」

 

 

 アイエフが頭を抱えて呆れながら言う。

 

 

「はーい、ネプ子ちゃん、どうしたんでしゅか?」

 

 

 しかし、コンパには十分通じているようだった。

 

 

「ママー、おっぱいー」

 

 

 ネプテューヌはそう言いながら、恥ずかし気もなくコンパの胸に顔をうずめるようにして抱きつく。

 

 

「それはちょっと難しいです~」

 

 

 流石のコンパもネプテューヌの要望には応えられないようだ。

 

 

「三歳児が母乳を飲むか!」

 

 

 アイエフが激しくツッコミを入れるとネプテューヌをコンパから引き剥がす。

 

相手がネプテューヌといえどコンパに密着しすぎだとヤキモチを焼いたようである。

 

 

***

 

 

「女神候補生達? と言うことは!」

 

 

 ファミ通は素早くペンとメモを取りだす。

 

 

「はい、彼女達四人がこのゲイムギョウ界のおられる女神候補生様です」

 

 

 イストワールがファミ通の言葉に答えると、ユニの方に右手を向け、「まずは黒い服の方がラステイションの女神候補生ユニさんです」と紹介する。

 

次にロムラムの方に右手を向け、「そして、水色のコートの方がルウィーの女神候補生ロムさん、ピンクの色のコートの方が同じくルウィーの女神候補生ラムさんです」と続けて紹介する。

 

 

「これは特ダネですよ~」

 

 

 ファミ通の記者魂に火が付いたようだ。

 

 

「ラステイションの女神候補生達のユニよ。ファミ通のことはネプギアから聞いてるわ、アタシ達も取材よろしくね」

 

 

 ユニがファミ通に自己紹介すると、「ルウィーの女神候補生ラムよ!」とラムが元気よく自己紹介し、ロムはラムの後ろに隠れて「ロムです……よろしくお願いします」と控えめに自己紹介する。

 

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

 

 ファミ通はテンション高めで返事をすると頭を下げて一礼する。

 

 

「とりあえず、移動しましょう。今回の目的地は神次元です」

 

 

 イストワールがそう言うと、「そうですね」とファミ通も同意する。

 

ネプギアはユニ達と一緒に黒塗りの車に同乗し、ファミ通とイストワール、そしてプラエとあんみつはコンパの車。ネプテューヌはアイエフのバイクの後ろに乗ることになった。

 

プラエはネプギアと一緒に乗りたがったが、ネプギアが優しく頭を撫でて、「また今度ね」と言うと、大人しくコンパの車に乗るのだった。

 

 

「いえ~い、あいちゃんの後ろ乗るの久しぶり~」

 

 

 ネプテューヌはアイエフのバイクに飛び乗る。

 

 

「こら! 暴れるな!」

 

 

 はしゃぐネプテューヌを注意するアイエフ。

 

 

「ねー! あいちゃん風になろうよ!」

 

 

 ネプテューヌはアイエフの腰に手を回すとねだるようにアイエフの体を揺する。

 

 

「街中でそんなスピード出せるわけないでしょ。信号だってあるんだから」

 

 

 アイエフはそんなネプテューヌを窘めるように言う。

 

 

「逆に考えるんだ! 信号なんて無視しちゃえってさ」

 

「それ、ただの交通違反だから…」

 

 

 ネプテューヌの前向き過ぎる意見に頭を抱えるアイエフ。

 

 

「ねーねー! みんなで一緒に座ろう」

 

 

 黒塗りの車の方ではラムが両手でネプギアの右手を引き後部座席に行こうとする。

 

 

「私もそうしたいんだけど、車の後部座席は三人乗りなんだよ」

 

 

 はやるラムに対してネプギアはやんわりと説明する。

 

 

「ええ~、そうなの~」

 

「がっかり……(しゅん)」

 

 

 肩を落とすロムとラム。

 

 

「事故が起こったら大変だからキチンと守ろうね」

 

 

 ネプギアはロムとラムに優しく言い聞かせる。

 

 

「「はーい」」

 

 

 素直に声を揃えて返事をするロムとラム。

 

 

「じゃ、アタシが助手席に乗るわ」

 

 

 ユニはそう言うと助手席側の車のドアを開く。

 

 

「ありがとうユニちゃん、じゃ、ロムちゃんラムちゃん一緒に乗ろう」

 

 

 ネプギアがそう言って後部座席のドアを開けると、「「わーーい」」と言ってネプギアを挟むように後部座席に座るロムとラム。

 

 

「なんと言うか、ここまで対照的な姉妹も珍しいですね」

 

 

 ネプギアとネプテューヌの様子を見比べてメモを取っていたファミ通が言う。

 

 

「プラエは未だにネプテューヌさんがネプギアお姉さんのお姉さんだって信じられないよ」

 

 

 プラエがはっきりと言うと、「それは私も同じです」とあんみつも同意する。

 

 

「でも、二人とも仲良しなんですよー。ねぷねぷに無いものをぎあちゃんは持ってますし、ぎあちゃんに無いものをねぷねぷは持っています」

 

 

 コンパの言う通りネプギアとネプテューヌは仲良し姉妹である。

 

互いに無いものを補い合う姉妹である。

 

はたからみるとネプギアが世話をしているだけに見えるが、ネプギアにとってネプテューヌは心の支えなのだ。

 

 

「なるほど……」

 

 

 コンパの意見にファミ通は納得し深く頷いた。

 

 

「ほら、ちゃんとシートベルトしてね」

 

 

 ネプギアは後部座席に座るとロムとラムのシートベルトを着けてあげる。

 

世話好きのネプギアは年下のロムとラムにとても優しい。

 

 

「「はーい」」

 

 

 自分でも出来るけど素直に従うロムとラム。

 

二人とも世話好きで優しいネプギアには甘え放題なので大好きなのだ。

 

 

「ユニちゃんもシートベルトした?」

 

「アタシは大丈夫に決まってるでしょ」

 

 

 ユニは不満気な声を上げるが、内心は心配してくれるのが嬉しいようだ。

 

 

「見なさい。ネプギア達はちゃんと交通ルール守ってるでしょ」

 

 

 アイエフがネプギア達を指差しながらネプテューヌを注意する。

 

 

「ルールってのは破る為にあるんだよー。あいちゃんも身も心解放して全開バリバリのブッチギリのヒャッハーでスピードの向こう側行こうよ」

 

 

 しかし自由奔放なネプテューヌには馬の耳に念仏のようだ。

 

 

「意味わからないわ。それ以前に守護女神がルール破ってどうするのよ」

 

 

 アイエフは諦めずにネプテューヌを注意するが、「でも、このまま乗るなんて普通でつまらないじゃん」とネプテューヌはお気楽に答える。

 

彼女としては安全よりスリルを求めたいらしい。

 

 

「普通でいいのよ。事故なんて起こしたらたまらないわ」

 

 

 アイエフはネプテューヌに付き合っていられないと言わんがばかりにそう言い捨てる。

 

注意するのも諦めたようでバイクのキーを回しエンジンをかける。

 

 

「大丈夫だよ。いざって時にはわたしの轢き逃げアタックがあるから」

 

「事故ってるじゃない!」

 

 

 しかし、ネプテューヌのボケにはしっかり反応してしまうアイエフ。

 

 

「テヘペロ」

 

 

 ネプテューヌはアイエフに対して何の悪びれもなくウインクして舌を出す。

 

 

「まったく……そんなに普通じゃないのをお望みなら、簀巻きにして載せてくわよ」

 

 

 ネプテューヌのおふざけに対して嫌気が差したアイエフが低い声でネプテューヌを脅す。

 

 

「いや~ん。亀甲縛りなんて、あいちゃんのエッチ~」

 

「誰がそんなこと言ったのよ!」

 

「あいちゃん」

 

「言ってない!」

 

 

 しかし、完全にネプテューヌのペースでアイエフの脅しは通用しないようだ。

 

 

「あいちゃん楽しそうです~」

 

 

 コンパはニコニコしながらその光景を眺めている。

 

 

「もう! さっさと行くわよ」

 

 

 アイエフはバイクを急発進させる。

 

 

「ヒャッホー! 緊急発進スクランブルだー!」

 

 

 ネプテューヌは急発進に驚くことなく、むしろ楽しんでいるようだった。

 

 

「待ってたぜこの瞬間【とき】をよおーーー」

 

 

ギャリギャリギャリ!!

 

 

 ネプテューヌの右手には何故かツルハシが握られており、地面を擦り道路を削る音が響く。

 

 

「ちょ、ネプ子! そのツルハシどうしたの……きやっ! 振り回すな! バランスが崩れる」

 

 

 フラフラと蛇行するアイエフのバイク。

 

 

「相変わらず賑やかな人ね……」

 

 

 ユニはその光景を醒めた目で見つめていた。 

 

ユニはネプテューヌの女神としての戦闘力は認めてはいるし、自分よりも上の存在だとも認識している。

 

しかし、少しませていて冷静な彼女はネプテューヌのハイテンションなノリには付いて行けないようだ。

 

 

「あはは……」

 

 

 ネプギアは返す言葉もなく苦笑いを浮かべる。

 

彼女も姉のことは好きだが、一般的に見て騒々しいのは否めないと理解している。

 

 

「ネプテューヌちゃん面白いー」

 

「楽しそう」

 

 

 ネプテューヌとアイエフの賑やかな光景を面白そうに眺めるロムとラム。

 

ロムとラムは子供らしく、テンションが高くオーバーリアクションをするネプテューヌは見ていて面白いのだ。

 

 

「ロムちゃんとラムちゃんは真似しちゃ駄目だよ」

 

 

 ネプギアはそんな二人に優しく注意をする。

 

 

「「はーい」」

 

 

 素直に従うロムとラム。

 

ネプテューヌのことを面白いとは思うが、彼女達はネプギアのことを信頼している上に、姉のブランからネプギアとユニの言うことをよく聞くことと言われているので、ネプギアの言うことに素直に従うのだ。

 

 

「そろそろアタシ達も行きましょう。出してちょうだい」

 

 

 ユニは隣の運転手に声を掛ける。

 

運転手は頷くと丁寧に車を発進させる。

 

この黒塗りの車はラステイションのもので運転手も女神専属の者で運転も丁寧である。

 

 

「本当に対照的だねー」

 

 

 ファミ通は蛇行するアイエフのバイクと静かに発進するラステイションの車を見比べて深々と頷く。

 

 

「アイエフお姉さん大変そう……」

 

 

 プラエがアイエフに同情するように呟くと、「あれはあれで、あいちゃんは楽しんでると思うですよ」とコンパが言うが、「とてもそうは見えませんが……」とあんみつにツッコミをされてしまう。

 

イストワールが、「コンパさん、私達も安全運転でお願いします」と言うと、コンパは、「はいですー」と言って頷いてから車を発進させる。

 

 

***

 

 

 そしてネプギア達は目的地のバーチャフォレストに到着する。

 

ここからは徒歩になるので、各自乗り物から降りる。

 

 

「ふっ……不運【ハードラック】と踊【ダンス】っちまったぜ」

 

「何がハードラックよ! 完全無欠にアンタのせいよ! 危険運転で減点されたじゃないの!」

 

 

 バイクから降りてカッコつけるネプテューヌに対して怒鳴り散らすようにツッコミを入れるアイエフ。

 

あんな危ない運転をしていたら捕まるのは当然ではある。

 

 

「わたしまた伝説作っちゃたよ。『疾風【かぜ】伝説、特攻【ぶっこみ】のねぷ』って感じ?」

 

 

 更にカッコつけるネプテューヌに対して、アイエフは疲れたように肩を落とし、「まったく……。ネプギアとイストワール様が居なかったら今頃取り調べ室よ」とぼやく、

 

二人ともあわや逮捕というところであったが、ネプギアとイストワールの説得により免れたのだ。

 

ネプテューヌが気楽そうに、「それもいいかも。ちょうどカツ丼食べたかったし」と言うと、「どれだけ前向きなのよアンタは……」とアイエフは呆れかえる。

 

 

「とりあえず、事故が無くて良かったです」

 

 

 安堵の声を出すネプギア。

 

 

「ネプテューヌちゃん、おバカな珍走団みたいで面白かったよ」

 

 

 子供ゆえに素直すぎるラム。

 

 

「ちんそーだん?」

 

 

 プラエがラムの言葉に首を傾げると、「昔は暴走族と呼ばれて、奇妙なバイクに乗って人の迷惑を顧みずに大音と上げて走行する不審な輩のことです」とあんみつが説明をしてくれる。

 

プラエは納得したように柏手を打つと、「それならネプテューヌさんは珍走団だね。ラムさん賢い」とラムを褒める。

 

 

「でしょーでしょー! もっと褒めていいのよ」

 

 

 プラエの褒め言葉に、ラムは両手を腰に当てて鼻高々に自慢気な声を上げる。

 

 

「ネプテューヌちゃんみたいなのを【きちのそと】って言うんだよね。お姉ちゃんが言ってた」

 

「基地の外? ……ああ、なるほどね」

 

 

 ユニはロムの言葉に納得して頷く。

 

 

「わたし程の一流のエンターテイナーになると常に刺激を求めて体張ってるんだよ」

 

 

 ネプテューヌは女神候補生達のに向かってVサインを決めてドヤ顔をすると、「体張るって、被害に遭ったのは私でしょ」と、その後ろでアイエフが素早くツッコミをする。

 

 

「申し訳ありませんアイエフさん。後日私が交通課に出頭します。あと罰金分は経費で申請してかまいませんから」

 

 

 イストワールは申し訳なさそうに頭を下げる。

 

 

「よしよし、あいちゃん、わたしが慰めてあげるです~」

 

 

 コンパに頭を撫でられると、アイエフは赤面して「こ、子供扱いしないでよ」と言うが大人しく撫でれているその表情は嬉しそうだった。

 

 

「ネプテューヌ様はウワサ以上の方だね」

 

 

 ファミ通はネプテューヌを観察しながら言う。

 

 

「えーと……少し騒がしいかもしれませんけど、悪いお姉ちゃんじゃないんですよ」

 

 

 いつもの癖でネプテューヌをフォローするネプギア。

 

 

「いや、悪い意味じゃないよ? あそこまで人の注目を集められるスター性は流石だなって思ったんだ」

 

 

 しかし、熟練の記者であるファミ通はネプテューヌのスター性に早々と気付いていた。

 

 

「やっぱりそう思いますか! お姉ちゃんって凄いですよね!」

 

 

 今まで初対面の相手は、大抵ネプテューヌの型破り過ぎる性格に付いて行けないが、理解を示したファミ通に嬉しそうに話すネプギア。

 

 

「ネタの宝庫。記者にとっては黄金の珠だね」

 

 

 ネプテューヌに興味津々のファミ通だが、即座に「でも、私はネプギア様達女神候補生の方が取材のし甲斐があるよ」と言う。

 

 

 彼女は取材の対象をネプギアから変える気はないようだ。

 

 

「……どうしてですか?」

 

 

 ネプギアはファミ通の意見が心底不思議であった。

 

確かに自分は周りに【良い子】と言われ第一印象は良い。

 

しかし、ネプテューヌは第一印象こそは悪いことはあるが、その魅力に気づいたものを夢中にさせる力があった。

 

その魅力に気付いたファミ通がネプテューヌより自分を優先するのが理解できないのだ。

 

 

「ネプテューヌ様が黄金の珠ならネプギア様はダイヤモンド原石だからだよ」

 

 

「ダイアモンド原石ですか?」

 

 

 ファミ通の言葉に首を傾げるネプギア。

 

 

「原石の時点では黄金の珠に見劣りするけど、たくさんの人に磨かれて最高の輝きを放つ宝石ってことだよ。私もネプギア様を磨く一人になれたらいいなって思うんだ」

 

 

 ファミ通は石を磨くような仕草をしながらそう言う。

 

 

「……私にそんな素質があるかどうかはわかりませんけど、ファミ通さんの期待に応えられるよう頑張ります」

 

 

 ネプギアは素直に頷く。

 

前からファミ通が自分を高く評価してくれるのは嬉しいけど自信はない、それでも精一杯頑張ろうという意思の現れでもあった。

 

 

「もう一つ。普段から真面目にやってる人が評価されないっていうのは悲しいと思うんだよね」

 

 

 ファミ通は右手の人差し指を上げて言うと、ネプギアは、「どういうことですか?」と首を傾げる。

 

 

「確かに、ネプテューヌ様のように普段は放蕩している人がいきなり凄い成果を上げたら、派手でドラマチックな記事が書けると思うよ」

 

 

「はい、私そんなお姉ちゃんをカッコイイなって思います」

 

 

 ファミ通の言葉に素直に頷くネプギア。

 

ネプギア自身もネプテューヌの生き方に強く憧れをいだいていた。

 

 

「でもさ、私は普段からコツコツと真面目に頑張ってる人の方が偉いと思うんだよ。評価されるべき人が正しい評価をされるべきっていうのが私のジャーナリズムだからね」

 

 

 ファミ通は握りこぶし作ってそう言う。

 

 

「私の正しい評価……」

 

 

 ネプギアはそう呟くと考え込んでしまう。

 

 

「ねーねー! ジャーナリズムってなに? どんなリズムゲームなの?」

 

 

 そこに今まで側で話を聞いていたラムが口を挟むと、「楽しそう(しゃんしゃん)」とロムがそれに続く。

 

 

「リズムゲームじゃないわよ。雑誌を意味するジャーナルと主義を意味するイズムっての二つの言葉が合わさって、ジャーナリズム。新聞や雑誌とかで、その時その時の出来事を報道して解説とか批評とかすることよ」

 

 

 ラムの後ろにいたユニが落ちて説明をする。

 

ちなみにリズムゲームとは、音楽に合わせてボタンを押したり専用のコントローラーを動かしてアクションをとることで進行するタイプのゲームである。

 

 

「あっ! それ聞いたことある。【俺イズム】とか言うやつでしょ」

 

 

 ラムは手を上げて嬉しそうに言うと「……ルウィーには【週刊ルウィズム】って雑誌があるよ」とロムがそれに続く。

 

 

「ルウィズムって……」

 

 

 ネプギアが困惑した声を出すと、ユニは呆れた声で、「……ルウィーのことだから、小さい子のことを色々書いてるんでしょうね」と言う。

 

 

「ところで、俺イズムってなに? しゅぎってよくわからない」

 

 

 ラムは言葉は知ってるが内容までは知らないようだ。

 

いつものようにネプギアとユニに向けて質問する。

 

 

「主義って言うのは常に持っている考え方ってことなの。だから俺イズムは自分の生き方ってことになるんだよ」

 

 

 ネプギアが丁寧に説明すると、ラムは、「じゃあ、わたしも作る!ラムイズムは【明るく、楽しく、元気よく】よ!」と言って元気よく飛び跳ねる。

 

 

「わたしは、【いつもラムちゃんと一緒】……かな?」

 

 

 ラムに続いてロムも自分イズムを考えたようだ。

 

 

「アタシは努力! 根性! そして勝利!」

 

 

 ユニも続けて力強く言う。

 

 

「おっ! いいねいいね。女神候補生達の主張なんて記事になるよ」

 

 

 ファミ通は嬉しそうにペンとメモを取り出す。

 

 

「えっと、私は……」

 

 

 ネプギアはそう言ったっきり考え込んで黙ってしまう。

 

 

「アンタ相変わらず、こーゆー時にハッキリしないわね」

 

 

 ユニがそう言うと、「だって急に言われても困るよー」とネプギアが困り果てた声を出す。

 

ネプギアは側にいたプラエに、「プラエちゃん、何かいいのないかな?」と尋ねるが、「ごめんなさい。プラエもよくわからないよ」とプラエも困った声を上げてしまう。

 

 

「じゃあ、アタシが決めてあげるわ」

 

「えっ!? ユニちゃんが?」

 

 

 ユニの突然の提案に驚きの声を上げるネプギア。

 

 

「ネプギアイズムは【博愛、謙虚、献身】よ」

 

「わっ、予想以上にいい言葉だよ! ユニちゃんが私のことそんなふうに思ってくれてるなんて嬉しいな」

 

 

 ユニの予想以上の言葉にネプギアは嬉しそうな声を上げる。

 

 

「ただし、度が過ぎるね」

 

「度が過ぎるって?」

 

 

 ユニが付け足した言葉にネプギアは首を傾げる。

 

 

「要は超弩級のお人好しよ」

 

 

 ユニがネプギアを指差してそう言うと、続いてロムが、「うん、ネプギアちゃんは優しい」と言い、ラムも、「ネプギアの半分は優しさで出来てるからね」と言う。

 

更にプラエも嬉しそうな顔で、「うん、ネプギアお姉さんにピッタリだね」と言う。

 

 

「……私、頭痛薬なのかな?」

 

 

 ネプギアはラムの言葉に有名な頭痛薬のCMを思い出して、そうつぶやく。

 

 

「うんうん、いいねいいね」

 

 

 ファミ通はその様子を嬉しそうにメモする。

 

 

「ファミ通だっけ? 本当にネプテューヌさんじゃなくて、アタシ達女神候補生を取材するのね」

 

 

 ユニはその様子を眺めながら質問する。

 

 

「そうです。私は劇薬じゃなくて、優しさで出来た頭痛薬に興味があるんですよ」

 

 

 ファミ通は先程の女神候補生達の会話からの言葉を使ってネプギア達に興味があることを示す

 

 

「劇薬? それってお姉ちゃんのことですか?」

 

 

 ネプギアが首を傾げる。

 

それと同時にネプテューヌの方から賑やかな声が聞こえる。

 

 

「ねーねー! コンパー! コンパの車のドライブレコーダーにわたしの雄姿映ってるよね?」

 

 

 ネプテューヌがそう言ってコンパの車に近づく。

 

雄姿とは、蛇行するバイクとツルハシを持って後部座席に乗るネプテューヌのことである。

 

 

「多分映ってると思いますけど……どうするですか?」

 

 

 首を傾げるコンパ、ネプテューヌの意図が分からないようだ。

 

 

「インターネットに動画をアップしてわたしの伝説をみんなに見てもらうんだよ」

 

 

 ネプテューヌは自信満々に腰に手を当てながら言い放つ。

 

 

「や、止めてください! 大問題になります!」

 

 

 イストワールが冷や汗をダラダラ流しながら、慌てて止めに入る。

 

 

「バイトテロならぬ女神テロってところかしら……」

 

 

 アイエフはそう言いながらネプテューヌに背後から近づき素早く羽交い締めにする。

 

 

「ちょ、あいちゃん何するの~、はーなーしーてー!」

 

 

 じたばたと暴れるネプテューヌ。

 

 

「コンパ、今のうちにドラレコのデータ消しちゃって」

 

 

 アイエフは素早くコンパに指示を送る。

 

 

「はいです~」

 

 

 素直に従うコンパ、ネプテューヌに甘いコンパも流石に今回の提案には従えないようだ。

 

 

「ちょっと待ってー! わたしのメモリアルがーーー! あいちゃんはちゃんと顔隠しするから、アップさせてよー」

 

 

「そういう問題じゃないわよ」

 

 

 ネプテューヌの的外れな懇願に呆れた声で答えるアイエフ。

 

 

「私にはあの劇薬を飲み干せる自信はないしね」

 

 

 ファミ通はネプテューヌの方を見ながら少し呆れたように言う。

 

 

「効果が強すぎてイストワールさんの胃に穴が開きそうよ。ネプギアは頭痛薬だけじゃなくて胃腸薬としても頑張らないとダメみたいね」

 

「あはは……」

 

 

 ユニの皮肉に乾いた笑いを浮かべるしかないネプギア。

 

あんみつが、「ネプテューヌ殿のような劇薬は飲むと言うより化学反応を起こすものですね」と言うと、「「「ががくはんのー?」」」とロムとラムとプラエが揃って首を傾げる。

 

 

「一つの物質が原子や電子の組替えや電子の増減により、別の物質に変化することを言うんだよ。身近な例で言うと液体が蒸発したり、水蒸気が冷えて水になったりすることを言うの」

 

 

 ネプギアがそう説明をすると、「それじゃあ、薬を混ぜたらドカーンって爆発して、お顔が真っ黒になるのも化学反応?」とラムが尋ねると、「うん、そうだけど、それは少し失敗してるっぽいかな……」と困った顔で答えるネプギア。

 

それを聞いたユニは、「ネプギアが頭痛薬なら、ネプテューヌさんはニトログリセリン。ついでに言うとプルルートさんはプルトニウムね」と呆れつつ言うと、「そこまで危険物ではない……と思うんだけど」とやや自信なさそうに答えるネプギアであった。

 

 

「あはは。私の知り合いの記者で、デンゲキコって言うネプテューヌ様みたいな派手で賑やかな人を記事にするのが得意な子がいるけど、私はネプギア様みたいに磨けば光るって人の後押しをしたいんだよ」

 

 

 ファミ通はネプギア達のやりとりを見ながら微笑みつつそう言った。

 

 

***

 

 

 ネプギア達はバーチャフォレストにある神次元へと移動するゲートに向かう。

 

 

「では、ユニ様達も神次元へお仕事に?」

 

 

 その間にファミ通はユニとロムとラムに取材をしていた。

 

いつものようにペンとメモを持ちながら真剣な表情でインタビューの内容を書き込んでいる。

 

 

「ええ、そうよ」

 

 

 ユニがファミ通の質問に答えると、「ネプギアちゃんをお手伝いするの(ぐっ)」とロムが小さくガッツポーズをし、「頑張っちゃうからいっぱい取材してね」とラムが元気よく左手を上げる。

 

三人ともファミ通の取材に積極的に協力しているようだ。

 

 

「ちなみに理由はなんですか?」

 

「理由?」

 

 

 ファミ通の質問に、ユニは不思議そうに首を傾げる。

 

 

「他国の女神様達は基本的には競い合うライバルですよね?」

 

 

 ファミ通がそう言うと、「ああ、そういうこと」ユニは何となくファミ通が言いたいことを理解できたようだ。

 

 

「確かにネプギアはライバルよ。でも、それ以前に友達なの、友達を助けるのに理由なんていらないでしょ」

 

 

 ユニがそう言うと、「わたしもおなじ。ネプギアちゃんが困ってたら助ける」と続いてロムも彼女にしてはハッキリした口調でと言い、ラムも腰に手を当てながら「そーそー。それにネプギアもユニちゃんもわたし達がいないとダメだからね」と言う。

 

ユニはネプギアを敵対するライバルではなく、お互いを高め合うライバルとして強く認識しているのだ。

 

そして、ロムとラムにとってはネプギアとユニはライバルという認識はそこまで強くない。

 

彼女達にとってネプギアとユニは、ライバルと言うより友達であり、よく面倒を見てくれる優しいお姉ちゃん達と言ったポジションである。

 

 

「なるほど……仲が良いとは聞いていましたが、これほどとは」

 

 

 ファミ通は関心しながらメモを取ると、「ネプギア様は良い友達に恵まれましたね」とネプギアに微笑みかける

 

 

「はいっ。みんな私の自慢の親友です」

 

 

 ネプギアは嬉しそうな笑顔でファミ通の言葉に答える。

 

 

「親友……」

 

 

 ユニがポツリとネプギアの言った言葉を反芻するようにつぶやく。

 

 

「どうしたの? ユニちゃん」

 

 

 ネプギアが心配そうな顔でユニの顔を覗き込むと、「……もしかして親友って呼ぶの馴れ馴れしかったかな?」と心配そうな顔をする。。

 

 

「べ、べべべ別にそんなことないわよ……ちょっと驚いただけ……よ」

 

 

 ユニは顔を赤くして俯いてしまう。

 

 

(……親友なんて言われたの生まれて初めてかも)

 

 

 ユニがそう思っているところに、「よかった。私ユニちゃんのこと大好きだから、馴れ馴れしいなんて思われたらどうしようかと思った」とネプギアが嬉しそうに言う。

 

 

「~~!!」

 

 

 更に顔を赤くするユニ。

 

ユニにとってはネプギアは生まれた初めての友達である。

 

出会った時にはある事情により衝突もしたが、今は仲良くやっている。

 

ユニは自分が素直ではないことを自覚している。

 

それをまったく気にせずに優しく接してくれるネプギアのことが好きだった。

 

小悪魔ツンデレとも呼ばれるユニだが、ネプギアの前ではその牙は全て抜かれてしまう。

 

 

「ねーねー! しんゆーってなに?」

 

 

 ラムがネプギアの袖を引きながら質問する。

 

 

「凄く仲のいい友達のことだよ」

 

 

 ネプギアはラムの方を向いてにこやかに説明をする。

 

 

「……わたし達も親友?」

 

 

 ロムは少し不安そうにネプギアに尋ねる。

 

 

「勿論だよ。ロムちゃんもラムちゃんも親友だよ」

 

「「わーい」」

 

 

 ネプギアの即答にロムとラムは両手を上げて万歳して喜ぶ。

 

ロムとラムにとってもネプギアは自分達以外の初めての友達だった。

 

ユニと同じように最初は衝突したが、それでも協力をしようと言い続け、自分たちを助けてくれたネプギアに心打たれたのだ。

 

それにネプギアは自分たちを子供として扱わず友達として見てくれる。

 

その上に甘えたい時は子供として扱ってくれる柔軟さが大好きだった。

 

 

 このように女神候補生達はネプギアを中心に強い絆で結ばれているのだ。

 

とは言え、前述のように会った当時はケンカしたり他国の女神と言うだけで攻撃されたりもした。

 

しかし、そのことを一言も恨まず一緒に戦おうと訴え続けた上に、真面目で常に正道を行こうとするネプギアに心打たれたのだ。

 

やや弱気だが、心優しく誰にでも分け隔てなく接するネプギアに対する彼女達の信頼はとても厚い。

 

更にその後の戦いも、常に協力をして乗り越えて来た四人の友情は、長い期間を掛けて育まれた質の高いものになっていた。

 

十年来の親友とは彼女達のようなことを言うのだろう。

 

 

 ちなみに姉達守護女神はそれ以上に長い付き合いなのだが、プライドが高く常に自分が一番だと言う彼女達は互いをライバルとして認めてはいるものの、友達か腐れ縁かを選べと言われたら十中八九後者を選ぶような仲になっている。

 

最大の原因は国同士が競い合ってることだが、ネプギアのように間を取り持つ橋渡し役がいないことも原因にある。

 

某オペレーションメテオなら四番又は三番がいない状態。武力介入組織なら狙撃手がいない状況だ。

 

 

 むしろ、今現在ネプギア達女神候補生が橋渡しになって、四人の守護女神の仲を取り持っていると言ってもいい。

 

もしも女神候補生の友情が育まれなかったら、犯罪組織に勝ったとしても、その後のゲイムギョウ界の覇権争いは激しいものになっていただろう。

 

 

***

 

 

「あれが神次元とを結ぶゲートです」

 

 

 イストワールが直径五メートル程の光り輝く泉のような場所を指差す。

 

 

「ここがゲート……」

 

 

 ファミ通はしげしげとゲートを観察する。

 

 

「よーし! 一番乗りー!」

 

 

 ネプテューヌはそんなファミ通の様子を気にもせずゲートに飛び込む。

 

 

「じゃあ、わたしとロムちゃんは二番乗りー!」

 

「わーい!」

 

 

 続いてラムがロムの手を引いてゲートに飛び込む。

 

 

「すみません、ゆっくり観察しているところに」

 

 

 ネプギアがファミ通に謝ると、ファミ通は「いいよいいよ、気にしないで。私個人が珍しいってだけで、取材の中心は女神候補生様達だから」と答える。

 

 

「じゃあ、私達も行くわよ」

 

「はいですー」

 

 

 アイエフがゲートに入るとコンパもそれに続く。

 

 

「アタシ達も行きましょ」

 

「そうだね。プラエちゃんとあんみつさんも一緒に入りましょう」

 

 

 ユニの言葉にネプギアが頷くと、ネプギアとユニは一緒にゲートに入り、その後ろにプラエとあんみつが続く。

 

 

「それでは私達も入りましょう」

 

 

 イストワールがそう言うと、「はい」とファミ通がその後に続く。

 

ファミ通がゲートに入ると一瞬眩い光に包まれるが、すぐにそれは収まる。

 

しかし、周りは景色は先程とのバーチャフォレストと同じ木と草が生い茂る森の景色だった。

 

 

「ここが神次元? 見たところ全然変わってないみたいだけど?」

 

 

 ファミ通は辺りを見回しながら率直な感想を言う。

 

少し拍子抜けしたように見える。

 

 

「あんみつ、何が変わったかわかる?」

 

 

 プラエがあんみつに質問すると、「いえ、わかりません」とあんみつは首を横に振る。

 

あんみつには景色はおろか、草や土の匂いすら変わらないように思えた。

 

 

「神次元は超次元と非常に似ており、景色どころか住んでいる人々もよく似ています」

 

 

 イストワールはそんなファミ通達に丁寧に説明をする。

 

 

「例えば、神次元には神次元の私もいます」

 

「神次元のイストワール様?」

 

 

 イストワールの言葉にファミ通は不思議そうに首を傾げる。

 

 

「神次元のプラネテューヌに着けばわかりますよ」

 

 

 イストワールがそう言うと森の中から人影が見えた。

 

人影は三人組の男女で女性が二人男性が一人であった。

 

 

「みなさん、お待ちしておりました」

 

 

 中央の男性がネプギア達に話しかける。

 

青い髪をウルフカットにした身長180cmぐらいの成人男性で、白い生地に紫の模様が入ったロングコートを着て、紫のマントをまとっていた。その服装の色合いはネプギアの服セーラーワンピに似ている。

 

右腰に剣を携えているその姿は、中世の騎士のようでもあった。

 

雰囲気も精悍でたくましく、歴戦の騎士のようである。

 

 

「今月も来訪いただきまして誠に感謝しております」

 

 

 続いて右隣の女性が話しかける。

 

彼女も髪が青くミディアムヘアーで、身長は160cmぐらい、男性と似た騎士然とした姿をしている。

 

細部が違うのは女性用であるからだろう。

 

雰囲気は柔らかく温厚な感じのする女性だ。

 

 

「私は女神として当然のことをしているだけです。そんなにかしこまらないで下さい」

 

 

 ネプギアは彼女達に対して謙虚ではあるが、どこか威厳を感じさせる態度で接する。

 

 

「しかし、ネプギア様の御厚意がなければ、この神次元のプラネテューヌはどうなっていたか」

 

 

 左側の女性がネプギアに言う。

 

青いロングヘアーをした少女で服装は同じ騎士然としたものだが先の二人より若く見える。

 

若々しいが雰囲気はクールで冷静な感じの少女だ。

 

 

「プルルートさんが何とかしてくれましたよ………多分」

 

 

 本来の女神であるプルルートをフォローするネプギアだが、正直な性格ゆえに断言ができなかった。

 

 

「彼女たちは神次元のプラネテューヌの住人ですか?」

 

 

 その様子を見ながらファミ通がイストワールに質問する。

 

 

「はい、彼女達は神次元のプラネテューヌに仕える【アレスター】家の皆さんです」

 

 

 イストワールはそう言うと、「父親のレイさん」と中央の男性を紹介し、次に「母親のユリィさん」と温厚な女性を紹介し、最後に「そして娘のエレノアさんです」とロングヘアーの少女を紹介する。

 

 

「ネプギア様への信仰も厚いみたいですね」

 

 

 ファミ通はアレスター家の三人のネプギアに対する敬意ある態度をそう分析しようだ。

 

 

「そうですね。ネプギアさんは実に十年以上もの間、この神次元のプラネテューヌを支えていましたから。アレスター家の皆さんとも付き合いが長く、エレノアさんが子供の頃は色々と面倒もみてあげたそうです」

 

 

「十年? そんなに!」

 

 

 イストワールが説明をすると、ファミ通が目を丸くする。

 

女神が不老不死とは知っているが、どうみても少女のネプギアが十年も国を治めていた経験があるというのが驚きのようだ。

 

それにこの超次元でネプギアが公の場に立ってから、今まで十年程しか経っていないので、どのような経緯があるのかが不思議だった。

 

 

「以前は超次元と神次元では時間の流れが違っており、超次元での一日が神次元での一年に相当していたのです」

 

 

 イストワールがそんなファミ通に説明を始める。

 

イストワールの言う通り先程通ってきたゲートが通じるまで超次元と神次元の時間の流れは違っていて、超次元で数日の間にネプギアは神次元で数年の経験を積んできたのである。

 

ちなみに十年以上神次元に居たのは、神次元に突如として現れた国【エディン】との戦いが長引いた為である。

 

 

***

 

 

「それではご案内しますので付いてきて下さい」

 

 

 ユリィはそう言うと先頭に立ってネプギア達を先導する。

 

その後ろにネプギアを護衛するようにエレノアが隣に立ち、少し離れてユニ、ロム、ラムの三人がついてくる。

 

更にその後ろでは、ネプテューヌのおふざけにアイエフがツッコミを入れながら、コンパ、イストワールがついて来ていて、神次元が初めてなプラエとあんみつとファミ通は神次元の景色をしげしげと観察しながら歩き、その最後尾をレイが護衛していた。

 

 

「そうだ、エレノアちゃんにプレゼント」

 

 

 その最中、ネプギアはエレノアに小さな小箱を差し出す。

 

 

「え? 私にですか」

 

 

 エレノアは疑問を浮かべながらも素直に小箱を受け取る。

 

 

「エレノアちゃんに似合いそうなヘアアクセ見つけたんだ。良かったら使ってね」

 

 

 ネプギアは嬉しそうに答える。

 

イストワールの説明したとおり、ネプギアはエレノアが幼い頃から面倒を見てきた為、彼女を教え子のように可愛がっている。

 

たまたま見つけたアクセサリーが彼女に似合いそうだからとプレゼントしたのだ。

 

 

「あ、ありがとう! 先生!」

 

 

 エレノアは笑顔でお礼を言うが即座に右手で口を覆うと、「………じゃなくて、ありがとうございます。ネプギア様」と顔を真っ赤にしながら言いなおす。

 

エレノアは幼いころからネプギアと接して育った為に昔の癖でネプギアを先生と呼ぶことがある。

 

 

「くすくす……よかったわね、エレノア。ありがとうございますネプギア様」

 

 

 母のユリィがエレノアの態度を微笑みを浮かべながらネプギアにお礼を言う。

 

ユリィはエレノアが年齢の割に落ち着いた性格をしているが、恩師のネプギアの前では子供に戻ってしまうのが微笑ましいようだ。

 

そして、ユリィにとってネプギアは女神であると同時に、娘の恩師でもあり、また同じ時期に子供を育てたママ友でもあるので、娘がネプギアを慕っていることが、とても嬉しいのだ。

 

 

「……」

 

 

 ユニは腕組みしながら黙ってネプギアとエレノアのやり取りを見ていた。

 

 

「あれ? ユニちゃんどうしたの?」

 

「なんかムスッとしてる(ぷんぷん)」

 

 

 ロムとラムはそのユニの様子を不機嫌と捉えたようでユニに問いかけてくる。

 

 

「別になんでもないわよ」

 

 

 ユニはぶっきらぼうにそう答えると足を速める。

 

しかし、ネプテューヌが速足でユニの前に立つ。

 

 

「ふっふーん、わたしには分かるよ。ユニちゃんはズバリ、ヤキモチを焼いている!」

 

 

 ネプテューヌの発言に、「なっ!?」と顔を赤くして慌てるユニ。

 

 

「やきもち? ユニちゃんおもちなんて焼いてないわよ」

 

 

 ラムはヤキモチの意味を知らないので食べる餅と勘違いしているようだ。

 

 

「英語で言うとジェラシー!」

 

 

 ネプテューヌは更にユニへの指摘を続ける。

 

 

「ほうせき(きらきら)」

 

「それはジュエリー」

 

 

 ロムの勘違いを訂正するユニ。

 

 

「簡単に言うと、ネプギアとエレノアが仲良くしてることに怒ってるんだよ」

 

 

 ネプテューヌがロムとラムに向かって簡単な説明をするが、「勝手な想像は止めて下さい」とユニはぴしゃりと否定をする。

 

 

「え~? そんなこと言って不安なんじゃないの~? エレノアはネプギアと十年以上のお付き合いなんだよ~? 同じ女神候補生って言ってもやっぱり付き合い長い方を優先しちゃうよね~」

 

 

 ネプテューヌはニヤニヤ笑ってからかうようにユニに詰め寄る。

 

 

「……ネプギアはちょっと八方美人なところがあるだけですよ」

 

 

 ユニはそんなネプテューヌの挑発に乗らないよう、落ち着いてネプテューヌに答える。

 

彼女はネプテューヌのことが嫌いではないし尊敬もしているいが、かなり気分を害したようだ。

 

 

「少し黙っていて下さい。ネプテューヌさんには関係ありません」

 

 

 ユニがネプテューヌを睨みつけながら言うと、「わお~、ユニちゃん怖ーい」ネプテューヌは茶化すように怖がるフリをする。

 

彼女の不機嫌はネプテューヌの言動のせいでもあるが、ユニはネプテューヌに対して嫉妬に近い感情を持っている。

 

ユニは努力家で努力を至上としているが、それに対してネプテューヌは努力とは無縁の天才肌で直感や才能で物事を成してしまう。

 

そんなネプテューヌを見ていると、努力を否定されているような気分になって不愉快な時がある。

 

そのネプテューヌが自分を認めて貰いたい姉のノワールに一目置かれている上に、友人としてもっと仲良くなりたいネプギアと最も近しい関係にいるのが羨ましいのだ。

 

普段は落ち着いて礼儀正しく接しているが、こうやって煽られると普段抑えている感情が表に出てしまう。

 

 

「なーんだ。ユニちゃんってばそんなことで怒ってるの?」

 

 

 ラムは呆れたようにユニに言う。

 

 

「そんなことって……」

 

 

 ユニはラムの言葉にたじろいてしまう。

 

 

「だったら、一緒に仲良くすればいいんだよ。行こうロムちゃん」

 

「うん」

 

 

 ロムとラムは前を歩くネプギアとエレノアに近づく。

 

 

「ねーねー! ネプギアー! なに話してるのー」

 

「わたし達も混ぜてほしい」

 

 

 ロムとラムはネプギアの両脇に立ち、それぞれ服の袖を引っ張って話しかける。

 

 

「今、エレノアちゃんにヘアアクセをプレゼントしたんだよ」

 

 

 ネプギアは左右の袖を引っ張っられていることは気にせず、落ち着いた声で答える。

 

 

「へー! どんなの? 見せて見せて!」

 

「わたしも見たい(わくわく)」

 

 

 ネプギアの説明にロムとラムはエレノアに対して興味を示す。

 

 

「そうだね。私も付けたエレノアちゃん見たいな」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「そうだ! 私が付けてあげてもいい?」と続けて提案をする。

 

 

 「えっ!? は、はい……」

 

 

 エレノアは驚きながらも素直に頷き、ネプギアにアクセサリーの入った小箱を渡す。

 

 

「ふんふん……こうやってエレノアちゃんの髪いじってると昔を思い出すな~」

 

 

 ネプギアは鼻歌を歌いながら、エレノアの髪の毛にイルカ型のヘアアクセを付けてあげる。

 

 

「先生……くすぐったい……」

 

 

 エレノアはそう言うと、また慌てて右手で口を覆い、「ね、ネプギア様くすぐったいです」と言い直して俯いて顔を真っ赤にする。

 

 

「……」

 

 

 ユニはその光景を憮然とした姿で眺めていた。

 

 

「おっと! ユニちゃんのジェラシーゲージがうなぎ登りだー!」

 

 

 ネプテューヌはその横で面白そうにユニを煽る。

 

しかし、ユニにはネプテューヌの声は耳に入らない様子だった。

 

 

「よしなさい」

 

「ねぷっ!?」

 

 

 アイエフはネプテューヌの耳を引っ張ってユニから引き剥がす。

 

 

「できたよ。エレノアちゃん凄く似合って可愛いよ」

 

 

 ネプギアはエレノアを素直に褒める。

 

青い髪のエレノアに付いたイルカのアクセサリーは、大海を泳いでいるかのようだった。

 

 

「うん、わたしも可愛いと思うわ」

 

「きれい(ほれぼれ)」

 

 

 ロムとラムも声を揃えてエレノアを褒める。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 エレノアは丁寧にお辞儀をして、ロムとラムにもお礼を言う。

 

 

「あれ? 何か忘れているような……」

 

 

 ラムは首を傾げる。

 

 

「ユニちゃんがヤキイモ焼いてる話だったかな?」

 

 

 ロムが首を傾げてそう言うと、「そうそう! ネプギア、ユニちゃんが焼き栗焼いてるのよ」とラムが元気よくネプギアに向けて言う。

 

 

「えーと、ヤキイモか焼き栗かは分からないけど、栗を焼くのは危ないから止めた方がいいよ。さるかに合戦でも栗さんが飛んで行ったでしょ?」

 

 

 ロムとラムの発言からは話が見えないネプギアはとりあえず、栗を焼くのは危ないと言うことを説明する。

 

ユニの方を見ても火の気はないのであまり気にしないことにした。

 

 

「ネプギアはわたし達とエレノアどっちが好き?」

 

 

 ラムは子供らしくストレートな質問をする。

 

ヤキモチの憶え間違いはあったにせよ、ユニはネプギアがエレノアと仲良くしているのが面白くないことは憶えているようだ。

 

 

「どっちも好きだよ。大好き」

 

 

 ネプギアはそう言いながらロムとラムの頭を撫でる。

 

 

「えへへ……」

 

 

 ロムとラムは嬉しそうに目を細める。

 

 

「ユニちゃんは?」

 

「ユニちゃんも好きだよ。大好き」

 

 

 ネプギアは落ち着いて先程と同じように言う。

 

 

「ユニちゃん、よかったね! ユニちゃんのことも大好きだってー!」

 

 

 ラムはユニに向かって大声を出して手を振る。

 

 

「うん? どういうこと?」

 

 

 ラムの一連の質問の意図がよく分からないネプギアは首を傾げる。

 

 

 ネプギアは【どっちが好き】を【どちらの方が好き】という意味には取れなかったようだ。

 

元々心優しいネプギアにとっては友人に差をつけたり格付けをすることなど思いもよらないことである。

 

ロムとラムもそれは同じでネプギアに【大好き】と言ってもらえばそれで十分だった。

 

みんな大好きだから一緒に仲良くしよう。それがネプギアとロムとラムの考えであった。

 

 

「……それはわかるのよ。でも、アタシが知りたいのは……」

 

 

 しかし、ユニはそうではなかった。

 

彼女にとってネプギアはお互いに初めての同世代の友達で同じ女神候補生同士。

 

やはりネプギアにとって自分は特別でありたいのである。

 

恐らく、【ユニちゃんが一番好き】と言われればユニは納得しただろう。

 

しかし、ネプギアにそれを期待するのは酷と言うものかもしれない。

 

 

「ユニさん、ネプギアさんは嘘偽りなく皆さんのことが好きなのです。それだけは分かってあげて下さい」

 

 

 ユニの独り言を聞いていたイストワールがユニに説明をする。

 

 

「それぐらいわかってますよ……」

 

 

 ユニはイストワールから目を逸らしてに言う。

 

 

「どうかネプギアさんのことをよろしくお願いします。これはプラネテューヌの教祖としてではなく、ネプギアさんの育ての親である私個人としてのお願いです」

 

 

 イストワールはそんなユニに態度を気にせず、深々と頭を下げる。

 

イストワールは、ネプギアにとってユニがかけがえのない友人であることを理解していた。

 

現に、ネプギアが落ち込んでいる時に奮起して支えてくれるのはユニであることが多い。

 

 

「はぁ……これじゃ、アタシが小さい女みたいじゃない」

 

 

 そんなイストワールの様子を見たユニはネプギア達の方に向かって行く。

 

 

「あっ、ユニちゃん、エレノアちゃんにヘアアクセ買ってあげたんだけど、どうかな?」

 

 

 ユニが近づくなりネプギアはヘアアクセを付けたエレノアを見せる。

 

 

「へー、似合うじゃない」

 

 

 ユニはエレノアをしげしげと見つめた後、素直に褒める。

 

エレノアも顔を赤くしつつ、「ありがとうございます」と頭を下げてお礼を言う。

 

 

「ところでユニちゃんがヤキイモ焼いてるって聞いたんだけど、ラステイションには携帯式ヤキイモ焼き機とかあるの?」

 

 

 ネプギアは見たところヤキイモを焼いてるようには見えないユニに対して、【ラステイションの新開発の機械があるのでは?】という結論に結び付いたようだ。

 

 

「そんなのある訳ないでしょ。さっさと行きましょう」

 

 

 ユニはネプギアの手を引いて先導するユリィに追いつく。

 

イストワールのお願いに対して、ネプギアの手を引くという自らの行動で答えたのだ。

 

 

「……ユニさん、ありがとうございます」

 

 

イストワールはそう呟きながら、ネプギアとユニの後ろ姿を見つめていた。

 

 

***

 

 

 ネプギア達は森を出て神次元のプラネテューヌの街までたどり着くと、教会まで案内される。

 

 

「ネプギア様達をお連れしました」

 

 

 レイは講堂の奥の教壇までネプギア達を連れてくると報告をする。

 

すると、「ご苦労様です。下がっていいですよ」と落ち着いた声が返ってくる。

 

アレスター家の三人は、「「「はっ」」」と返事をするとネプギア達に一礼して講堂の後ろの方に移動する。

 

 

「あれ? 誰もいない?」

 

 

 ファミ通は教壇を見て人影が無いことを疑問に思う。

 

プラエも、「さっきは声が聞こえたのに?」と不思議そうに首を傾げる。

 

 

「よく見て下さい」

 

 

 イストワールがそう言うと、ファミ通達はもう一度教壇を見なおす。

 

教壇には一人の女性と言うか、女の子の人形のようなものが浮いていた。

 

その姿はイストワールそっくりでサイズを小さくしたものだった。

 

 

「初めましてファミ通さん、プラエさん、そしてあんみつさん、お話は伺っております」

 

 

 教壇にいる小さいイストワールはファミ通達に挨拶を言うと一礼する。

 

 

「……これは驚きましたね」

 

 

 あんみつが驚きで目を丸くする。

 

 

「先程、お話しました神次元のわた……」

 

「説明しよう! いーすんは、そこらじゅうの次元に子供がいて、このいーすんもその一人なのだ!」

 

 

 イストワールの言葉にネプテューヌがいきなり割って入って、でたらめを言い始める。

 

 

「バカ言ってるんじゃないわよ」

 

 

 アイエフはネプテューヌにそう言うと軽く手でツッコミをする。

 

 

「ひどい! この子はあなたの子よ認知して!」

 

 

 ツッコミを受けたネプテューヌは大袈裟に崩れ落ちると、小さい方のイストワールを指差しながらアイエフを批難するように言う。

 

 

「はあ? 何で私の子供ってことになってるのよ」

 

 

 アイエフにはネプテューヌの言動が理解不能であった。

 

 

「神次元のイストワール様が私達の次元のイストワール様の子供って話じゃなかったの?」

 

 

 アイエフの言う通り、ネプテューヌが最初に言いだしたのはアイエフの子供じゃなく、イストワールの子供との話だった筈だ。

 

 

「あいちゃん、それはもう古いよ。3クール前の話だよ」

 

 

 ネプテューヌは呆れたように言うと、「今は私とあいちゃんとコンパの三角関係のドロドロのメロドラマ。主人公のあいちゃんはコンパという妻がいながら、わたしと子供を作っちゃうんだよ」と妙に生々しい設定を説明する。

 

 

「た、大変です~。わたしとあいちゃんどうなっちゃうんですか?」

 

 

 設定を聞いたコンパはあわあわと慌てだすが、「ツッコミどころが満載だけど、とりあえず私がツッコミしてる間にどうやれば3クールも経つのよ」とアイエフは呆れながらも、一応ネプテューヌに説明を求める。

 

 

「ネプリカンジョークは常に時代の最先端! 光よりも速く次なる笑いをお届けするよ!」

 

 

 ネプテューヌがいつもドヤ顔で両手を腰に当てると、「観客置いてけぼりのワンマンショーね……」とアイエフは皮肉を言いながら右手で頭を抱える。

 

 

「ネプテューヌさんは相変わらずのようですね……ご苦労察します」

 

 

 小さいイストワールはイストワールに労いの言葉を投げると、「これぐらい日常茶飯事です」とイストワールは落ち着いて答える。

 

 

「えっと、神次元には超次元に似てるところが多いって聞いてたけど、それはこういうことなの?」

 

 

 プラエがネプギアに尋ねると、「うん、いーすんさんの他にも、この前ラステイションで会ったノワールさんもそっくりなんだよ」とネプギアが答える。

 

 

「ねーねー、ネプギア、ユニちゃん。【さんくーる】ってなに?」

 

 

 ラムはさっきのネプテューヌ言う話の3クールという言葉が気になったようでネプギアとユニに質問をする。

 

ロムも知らないようで、「目薬みたいな名前……」と言って首を傾げる。

 

 

「クールって言うのはね、テレビ番組で使う単位で一つで13週間になるんだよ」

 

 

 ネプギアがロムとラムに説明をすると、「え? クールって冷たいじゃないの?」とプラエが首を傾げる。

 

彼女は冷たいの方のクールだと思っていたようだ。

 

 

「スペルが違うのよ。プラエが言ってる冷たいクールは、COOL。ネプギアが言ったクールはCOURSで流れるものって意味よ」

 

 

 今度はユニが話に加わって説明をしてくれる。

 

 

「ふーん、なんで13なんて中途半端な数なの?」

 

 

 ラムがそう言うと、「……それに13って良くない数字ってお姉ちゃんが言ってた」とロムが言う。

 

プラエが、「そうなの?」とロムに質問すると、「うん、ホッケーマスクかぶった不死身の殺人鬼が出てくるんだって(ぶるぶる)」とロムが少し怯えたように答える。

 

 

「流石はブランさん物知りだね。13って言うのは昔からよくない事が起こる数字って言われて嫌われてるの」

 

 

 ネプギアがそう説明をすると、「13日の金曜日が最も不吉だから、それを題材にしたホラー映画が有名よね。今ロムが言ってたヤツ」とユニが説明を付け加える。

 

 

「じゃあなんでー? なんで13なの?」

 

 

 ラムが両手を上げてネプギアとユニに説明を求めると、「ふしぎ?」とロムも首を傾げ、「プラエも知りたいかも」とプラエも興味を示す。

 

13が不吉な数字と教えられた彼女達は、ますますそれが単位になるのが不思議らしい。

 

 

「テレビ番組は季節ごとに入れ替わるんだよ。ロムちゃん、ラムちゃん、プラエちゃん、季節っていくつある?」

 

 

 ネプギアは説明しながら三人に質問をする。

 

 

「えーと、春、夏……」

 

 

 ラムが考え込みながらそう言うと、「あと、秋と冬?」とロムが少し自信なさそうに言う。

 

プラエも頷きながら「うん……四つだよね?」と言う。 

 

 

「うん、正解。よくできました」

 

 

 簡単な問題ではあるが、ネプギアは答えられた三人を褒めて頭を撫でる。

 

 

「これぐらい当然よ」

 

「えへへ(にこにこ)」

 

「嬉しい……」

 

 

 嬉しそうに撫でられるロムとラムとプラエ。

 

 

「1年が365日、週にすると52週。それを季節の数の4で割ると13になるのよ」

 

 

 更にユニが説明を続ける。

 

 

「ええっ? 365が52になって13になるの?」

 

「……ユニちゃん、難しい(ぐるぐる)」

 

 

 しかしロムとラムにはユニの言うことが難しくて理解できなかったようだ。

 

プラエも、「ユニお姉さん、難しい……」と悲しそうな顔をする。

 

 

「ちょっと端折りすぎたかしら?」

 

 

 ユニは首を傾げる。

 

 

「そうかも、もう少しゆっくりやろ」

 

 

 ネプギア達はそう言うと、少し考えてからラムに話しかける。

 

 

「ラムちゃんお絵かきソフトを立ち上げてくれるかな」

 

「わかったわ」

 

 

 ラムはポシェットからゲーム機を取り出すと操作を始める。

 

これはルウィーの携帯ゲーム機で、2RM【ツインアールエム】と呼ばれ、正式にはツインライドメディアと言う名前である。

 

細かいところは違うが、大体の機能とスペックはNギアと同性能。

 

ちなみにユニの持つ物はラステイション製の携帯ゲームで、U.N.I【ユーエヌアイ】と呼ばれ、正式名称はウルトラ・ニュー・インターナショナルである。

 

これも他の二機と同性能ではあるが、彼女達が持つ物はネプギアに改造されており、ネプギアのNギアの程の魔改造ではないがスペックアップをしている。

 

 

「ちょっと貸してくれるかな」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「はい」とラムは素直にゲーム機をネプギアに差し出す。

 

ネプギアはゲーム機からペンを取り出すと画面に365と数字を書く。

 

ロムとラムの持っているルウィー製のゲーム機はペンによる操作が特徴的で絵を描くことも出来る。

 

お絵かきが好きなラムはこの絵を描けるソフトを愛用しているのでいつも持っているのだ。

 

 

「まずは1年が365日」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「「「うんうん」」」とロムとラムとプラエはお絵かきソフトを使って書かれた数字を興味津々と見て頷く。

 

 

「ロムちゃん、ラムちゃん、プラエちゃん1週間は何日かな?」

 

 

 ネプギアの質問に対して、「月曜日、火曜日、水曜日……次はなんだっけ?」とラムが言うと、「木曜日だったと思う……」とロムが答える。

 

続いてプラエが、「その次は金曜日で、後は土曜日と日曜日だよね」と言う。

 

三人は輪になって相談しながら、指を折って一週間を数える。

 

 

「七つ! 七つだよネプギア」

 

「うん、七日」

 

「プラエも七日だと思う」

 

 

 三人は自分たちが折った指の数を見ながら七日と答える。

 

 

「うん、よくできたね」

 

 

ネプギアはまた三人の頭を撫でる。

 

 

「わたし達が力を合わせればこれぐらい簡単よ」

 

「楽勝(ぶいっ)」

 

 

 撫でられながらお互いにVサインを決めるロムとラム。

 

プラエは、「えへへ……」と気持ち良さそうに目を細めた。

 

 

「それで、365日の中に一週間の七日間が幾つあるか探すの」

 

 

 ネプギアはゲーム画面に先程書いた365の左に7と書く。

 

そしてその間に筆算に使う割り算の記号を書く。

 

 

「これで探せるの?」

 

 

 ラムは不思議そうにネプギアの書いた筆算を見つめる。

 

 

「うん、まずは3の中に7はあるかな?」

 

 

 ネプギアはペンで3を指しながら質問する。

 

 

「3は7より小さいから……ない……のかな?」

 

 

 プラエは少し自信無さそうに答えると、ネプギアはニッコリ微笑んで、「そうだよ」とプラエを褒める。

 

 

「じゃあ次に行こう、36の中に7はいくつあるかな?」

 

 

 ネプギアは36の部分を丸で囲って質問する。

 

 

「えーと、7がひとつで7、二つで15?」

 

 

 ラムが首を捻りながら指を折って数える。

 

そこにロムが、「ラムちゃん14だと思う」とロムがラムの間違いを指摘すると、「おおっ、ロムちゃん凄い。じゃあ三つ目は?」とラムがロムに尋ねるが、「ええと……ふええ……(おろおろ)」とロムは困った顔をして慌ててしまう。

 

どうやら二人には少し難しい問題のようだった。

 

 

「二人とも、かけ算九九はまだみたいだね」

 

 

 ネプギアはその様子を見ながら二人が掛け算を知らないことに気づく。

 

彼女達が出会ってから十年は経つが、モンスターに対抗する為に魔法の勉強や戦闘術の訓練が優先されて一般教養はやや遅れ気味であるようだ。

 

 

「かけざんくく?」

 

 

 ラムがそう言いながら首を傾げると、「知らない(ふるふる)」とロムも首を左右に振る。

 

ネプギアの思ったとおり二人は掛け算を知らないようだ。

 

 

「プラエも知らないの?」

 

 

 ユニがプラエに尋ねると、プラエは恥ずかしそうに頷いて、「プラエ、あんまり丈夫じゃないから寝てる時の方が多かったの……」と寂しそうな声で答える。

 

そこに、あんみつがやってくると、「申し訳ないのですが、この機会にプラエ様に教えていただけるとありがたいです」と頭を下げてお願いする。

 

ネプギアは、「わかりました」と快く頷いた。

 

 

「じゃあ、こうしよう」

 

 

 ネプギアは画面の端に小さいリンゴのようなものを36個書く

 

 

「これを7個づつに分けて、丸で囲ってみて」

 

 

 ネプギアはそう言いながらゲーム機をラムに手渡す。

 

 

「みんなで、一緒にやりましょ」

 

 

 ラムがそう言うと、「「うん」」とロムとプラエが頷き、ゲーム画面のリンゴを七つづつ丸で囲っていく。

 

 

「できたわ!」

 

 

 作業が終わるとラムが嬉しそうな声を上げる。

 

 

「丸はいくつできたかな?」

 

 

 ネプギアが質問すると、「……えと……五つ……」とロムが答え、「でも、ひとつあまるよ?」とプラエが続けて答える。

 

 

「うん、それでいいんだよ」

 

 

 ネプギアは先程の365÷7の筆算を進めて、答えの欄にまず5と書く。

 

 

「1余るから、こうすれば15になるんだよ」

 

 

 ネプギアは筆算の10の桁の余りの1をくり下ろして1の桁の5と合わせて15と書く。

 

 

「へー! そうなるんだー!」

 

 

 ラムが感心したように声を上げると、「ふむふむ」とロムが頷き、プラエも無言で頷く。

 

三人はネプギアの筆算を感心しながら見ている。

 

 

「それじゃあ、今度は15の中に7はいくつ…」

 

「はいはいはーーーい! 二つ二つー!」

 

 

 ネプギアが言い終わる前にラムが元気よく手を上げる。

 

 

「すごい! 正解。よくできたね」

 

 

 ネプギアはそう言いながらラムの頭を撫でる。

 

 

「……わたしもわかってたのに……」

 

 

 ロムが少し残念そうに言う。

 

 

「そっか。ロムちゃんもすごいすごい」

 

 

 ネプギアはロムの頭も撫でてあげる。

 

それを見たプラエが、「プラエも分かってたよ」と物欲しそうな上目遣いで言うと、「うんうん、プラエちゃんもすごいね」とプラエの頭も撫でてあげた。

 

 

「これで、ユニちゃんの言ってた52になるでしょ?だから、1年は52週間ってユニちゃんは言ったんだよ」

 

 

 ネプギアは筆算を完成させながらロムとラムとプラエに説明をする。

 

 

「ねーねー。1余るけど今度はどうするの?」

 

 

 ラムがネプギアに余りの1について質問をする。

 

 

「そうだね……。日付に少数とか余りとかは無いから。この場合は繰り上げちゃおう」

 

 

 ネプギアの言葉に、「繰り上げ?」とプラエが首を傾げる。

 

 

「余った数を一つ上の位に数を加えることだよ。この場合は1の位が10の位になるの」

 

 

 ネプギアは52だった答えを53に書き換える。

 

 

「……ユニちゃん、間違えちゃったの?」

 

 

 ロムはユニの言った52と答えが違ったことに首を傾げる。

 

 

「これは繰り上げの答えだから。ユニちゃんの52の方が一般的な答えなんだよ」

 

「ふーん、それで次はどうするの?」

 

 

 ラムが首を傾げて質問すると、ロムが「……今度は53の中に季節の4つがいくつあるか数える……だと思う」と答える。

 

 

「ロムちゃん、よく分かったね。すごいすごい」

 

 

 ネプギアはロムの頭を撫でる。

 

 

「すごーい! ロムちゃん天才!」

 

 

 ラムも驚いてロムを褒めると、「ロムさん、凄い」とプラエもそれに続く。

 

 

「じゃあ、計算はできるかな?」

 

「うん、やってみる(ぐっ)」

 

 

 ネプギアの質問にロムは小さなガッツポーズを決めると、「わたしもやるー。ロムちゃん、プラエ、一緒にやろ?」とラムが言った、

 

プラエも、「プラエもロムさんと一緒に計算したいな」と言うと、ロムも「うん、頑張ろうね。ラムちゃん、プラエちゃん」と言ってロムとラムとプラエはネプギアの真似をして筆算を始める。

 

 

「できたーー!」

 

 

 ラムはやや大げさな声を上げると、「できたよ。ネプギアお姉さん」とプラエが右手を上げる。

 

 

「本当? いくつになったかな?」

 

 

 ネプギアはロムとラムとプラエに優しく問いかける。

 

 

「13……で余りが1……だと思う」

 

 

 ロムがそう答えると、「正解、よくできたね。よしよし」とネプギアはロムとラムとプラエの頭を先程よりも丁寧に何度も撫でてあげる。

 

 

「えへー(にこにこ)」

 

 

 ロムはニコニコしつつ、「もっと褒めてー!」とラムは嬉しそうに万歳し、「嬉しい」とプラエは気持ち良さそうに目を細めご満悦のロムとラムとプラエ。

 

 

「この計算で1つの季節に一週間が13回あることが分かったかな?」

 

「「「わかったー!」」」

 

 

 ネプギアの説明にロムとラムとプラエは声を揃えて理解を示す。

 

 

「だから一季節のテレビ放送を表すクールは13週ってことになってるの」

 

 

 ネプギアがそう言って説明を締めくくると、「不吉とか中途半端とかじゃなくて、計算的にそうなるのよ」ユニが説明を付け加える。

 

 

「なるほどー」

 

 

 素直に関心するラム。

 

 

「どうしてネプテューヌちゃんは一瞬で3クールも経たせられるの?」

 

 

 ロムはネプテューヌのネプリカンジョークへの説明をネプギアに求める。

 

 

「えーと……それは……」

 

 

 ネプギアは右人差し指を顎に当てて少し考える。

 

 

「お姉ちゃんだからかな?」

 

 

 ネプギアはよく考えたがこれしか答えが出なかった。

 

 

「……ギャグ漫画並みの謎理論よね」

 

 

 ユニがそう言うと、「お姉ちゃんだから許されるって感じあるよね」とネプギアが微笑む。

 

ユニは更に、「小学生レベルの戯言って感じでね」と付け加えると、ネプギアは、「あはは……そうかも」とやや乾いた笑いを浮かべた。

 

 

「じゃあ、今度はかけ算九九のこと教えるね」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「「「はーい」」」とロムとラムとプラエが嬉しそうに万歳をする。

 

 

「……懐かしい……」

 

 

 ネプギア達の様子を見ながら、エレノアがポツリと呟く。

 

 

「何が懐かしいんですか?」

 

 

 ファミ通はすかさずエレノアに近づいて質問をする。

 

 

「私達も昔、ネプギア様にああいうふうに優しく勉強を教えてもらったんです」

 

 

 ファミ通の質問に素直に答えるエレノア。

 

 

「塾みたいなものですか?」

 

 

 ファミ通がさらに質問をすると、「はい、もう十年以上も前の話ですが。ネプギア様は先程のように私達が理解するまで何度でも根気よく、そして優しく教えてくれました」とエレノアは昔を懐かしむように答えた。

 

 

「ふむふむ……と、言うとエレノアさんのような若い世代はネプギアさんの教えを受けて育ったんですか?」

 

 

 メモを取りながら、更に質問を続けるファミ通。

 

 

「はい、ネプギア様は忙しいところ時間を割いて色々な場所に出向いていたようですから」

 

 

 エレノアが再度質問に答えると、「しかし、なぜ女神様が塾なんて?」とファミ通は不思議そうに首を傾げる。

 

 

「私も詳しくは分かりませんが、ネプギア様はいつも【自分のできることを精一杯やる】とおっしゃっていましたから」

 

 

 エレノアがそう答えると、「なるほど……。ネプギア様らしいですね。これは良いネタを仕入れたぞ」とファミ通は嬉しそうに柏手を打った。

 

 

***

 

 

「まったく…ネプ子はもう少し女神様らしいことしなさいよね」

 

 

 その頃アイエフは、先程からふざけているネプテューヌに対して注意をしていた。

 

 

「あいちゃんもわかってないなー。わたし以上に女神らしい女神なんてこの世にいないよ」

 

 

 だが、ネプテューヌには通じていないようだ。

 

いつもの腰に手を当てるポーズでドヤ顔を決め込んでいる。

 

 

「ねぷねぷは大好きですけど、女神様らしいと言われるとちょっと違う気がするです~」

 

 

 しかし、コンパにまでダメ出しをされてしまう。

 

 

「えー? コンパまでそんなこと言うの~」

 

 

 ネプテューヌは不満顔で口を尖らせて反論するが、「現にネプギアの方が女神らしい仕事してるわよ」アイエフはそんなネプテューヌの様子を気にも止めずに冷静に言う。

 

 

「そんなことないよ、ネプギアなんてまだまだ。そもそもネプギアの女神は基本がなってない」

 

 

 ネプテューヌの批判にアイエフは、「なによ? そのどこかの相撲取りみたいな批判の仕方は」と昔の相撲取りの兄弟のケンカ話を思い出してツッコミを入れる。

 

 

「基本ってどんなことですか?」

 

 

 コンパが素直にネプテューヌに女神の基本について質問をすると、即座にネプテューヌは、「もちろん面白おかしく過ごすことだよー!」とまたドヤ顔で腰に手を当てると堂々と言い放つ。

 

 

「いや、それは違うでしょ。女神様って言うのは国を護る為に内政やモンスター退治を……」

 

「ねーねー!ネプギアー!何か面白いこと言ってみてー!」

 

 

 アイエフは真面目にネプテューヌに説明をしようとするが、ネプテューヌはそれを無視してネプギアの元に向かう。

 

 

「え?……面白いことって急に言われても……」

 

 

 ネプテューヌの要望に困ってしまうネプギアだが、「ほら! 常に場を和ませるジョークは女神の基本だよ」とネプテューヌは諦める気は無いようだ。

 

 

「ちょっと違う気もするけど、頑張ってみるね」

 

 

 ネプギアはネプテューヌの言うことに疑問を憶えつつも、素直に面白いことに挑戦してみるようだ。

 

 

「ちょっと待っててね」

 

 

 ネプギアはかけ算九九を教えていた、ロム、ラム、プラエにそう言うと暫く左手をあごに当てて何か考えるようなそぶりをする。

 

 

「あっ!」

 

 

 暫くしてネプギアは何か閃いたような顔をすると、Nギアを操作する。

 

 

「お茶のセットなんか出してなにするつもり?」

 

 

 ユニはネプギアが出したお茶のセットを見て首を傾げる。

 

 

「わー! この湯飲み、かわいいー!」

 

 

 お茶のセットを見て目を輝かすラム。

 

更にロムが、「ちっちゃい(みにみに)」と微笑む。

 

 

「それは、いーすんさん達の湯飲みだよ」

 

 

 ネプギアはそんな二人に説明をすると、「そっか、イストワールさんは小さいもんね」とプラエが納得したように頷く。

 

プラエの言う通り、人間に比べて小さなイストワール達の湯飲みは小さな特注品サイズである。

 

 

 ネプギアは手際よくお茶の準備をすると、イストワール達の湯飲みにお茶を入れる。

 

 

「いーすんさん、お茶が入りましたよ。少し休憩した方がいいと思います」

 

 

 ネプギアは二人のイストワールにお茶を持って行く。

 

イストワール達は、先ほどから超次元と神次元との情報交換で話し合っていた。

 

 

「ありがとうございます、ネプギアさん」

 

 

 イストワールが小さな湯飲みを受け取ると、「相変わらず気が利きますね」と神次元のイストワールは更に小さい湯飲みを受け取る。

 

 

「今日のお茶は玉露【ぎょくろ】なんですよ」

 

 

 ネプギアは自慢気にお茶の名前を呼ぶ。

 

 

「ぎょくろー様です」

 

「………」

 

 

 場の空気が一瞬で凍りつく。

 

 

「あ、あれ? 面白くなかったですか?」

 

「………」

 

 

 ネプギアがは慌てながら全員の顔を見渡す。

 

 

「玉露でご苦労様を、【ぎょくろー様】って……その……ダジャレで……」

 

 

 沈黙に耐えられなくなったネプギアは、自分の言ったダジャレの説明を始めてしまう。

 

 

「……アンタ、なにやってるのよ……」

 

 

 ようやく我に返ったユニが言葉を絞り出す。

 

 

「ダメだったかな? 一生懸命考えたんだよ!」

 

 

 ネプギアは少し涙目で訴えるように言う。

 

 

「ぎょくろでぎょくろーさま……」

 

 

 プラエが不思議そうな顔で、ネプギアの言ったダジャレを繰り返しつぶやく。

 

 

「……ぷっ……よく分からないけどなんか面白ーい!」

 

 

 ラムが吹き出して笑うと、「うん、面白い(にこにこ)」とロムも続けて笑い出す。

 

 

「「ぎょくろー様、ぎょくろーさまー!」」

 

 

 ロムとラムは何かツボにハマったらしく、二人で声を揃えてネプギアのダジャレを連呼しながら踊りだす。

 

プラエは困った顔で、「えとえと……」とオロオロするが、ラムに手を握られて、「ほら、プラエも一緒に」と言われると、「「「玉露で、ぎょくろーさまー!」」」とロムとラムと一緒に踊りだす。

 

 

「よかった。ロムちゃんとラムちゃんとプラエちゃんには伝わったんだね」

 

 

 ネプギアはホッとして嬉しそうな顔をする。

 

 

「……要は小学校低学年レベルのダジャレってことね」

 

 

 ユニは呆れ顔で、やれやれといったポーズをとる。

 

 

「むむっ! これはネプリカンジョークに対する第二の勢力【ぎあジャレ】の登場だね」

 

 

 ネプテューヌが神妙な顔で頷く。

 

 

「え? お姉ちゃんの冗談に対抗できるの私?」

 

 

 ネプギアは少し嬉しそうにそう言う。

 

 

「説明しよう。ぎあジャレとは、ギャグセンスの無いネプギアが思いついた微妙なダジャレのことを言う」

 

「あれ? もしかして、微妙にって言うか全然褒められてない?」

 

 

 ネプテューヌの解説に首を傾げるネプギア。

 

すると、「ネプギア、人間誰しも得手不得手があるわ」とアイエフが言い、「ぎあちゃん、元気出すです!」とコンパが慰め、「その……悪くはないと思います」とあんみつがフォローをする。

 

 

「うぅ~、慰められると逆に辛いよぉ~」

 

 

 アイエフ達の慰めもネプギアには逆効果のようだ。

 

 

「……くすくす……」

 

 

 エレノアはその様子を見て、小さく笑う。

 

 

「え? もしかして、ネプギア様のダジャレが面白かったの?」

 

 

 ファミ通がエレノアに質問すると、エレノアは首を横に振る。

 

 

「いえ、ネプギア様は昔からそういうことは不得意でしたから。でも、それでも一生懸命みんなを笑わせようとする姿は年下の私から見ても可愛らしくて、つい」

 

 

「そうだね。記事にもそう書いておくよ」

 

 

 ファミ通はエレノアの言葉に頷きながらメモを取る。

 

 

「えええ! ダメです。今のダジャレは記事に載せないで下さい~」

 

 

 ネプギアはその様子に気付いて慌ててファミ通を止めようとする。

 

 

「あれ~? ねぷちゃんだ~」

 

 

 教会のドアが開くと、緩やかななパーマがかかった青紫色の髪をお下げにした少女が現れる。

 

身長はネプテューヌと同じぐらい。

 

赤紫っぽい瞳に、パステルカラーでオフショルダーになっているローブのような服を着て、ネプギアと同じようなストライプのニーソックスをはいている。

 

全体的にメルヘンチックで【ゆるふわ】な感じのする少女だ。

 

 

「おおう! ぷるるん。我が心の友よ!」

 

 

 ネプテューヌは両手を開いてその少女をオーバーリアクション気味に歓迎する。

 

 

「こんにちわ、プルルートさん」

 

 

 対してネプギアは丁寧に一礼して挨拶をする。

 

 

「こんにちわ」

 

 

ネプギアが挨拶すると立て続けにユニが挨拶をし、「「こんにちわー」」とロムとラムも挨拶をする。

 

 

「彼女は?」

 

 

 ファミ通がイストワールにプルルートと呼ばれた少女のことを確認しようとする。

 

 

「彼女はプルルートさんです。この神次元のプラネテューヌの守護女神です」

 

 

 イストワールは簡潔にプルルートの紹介をする。

 

ちなみに【ぷるるん】はネプテューヌの付けた彼女のあだ名である。

 

 

「……ふぁ……」

 

 

 プルルートが小さなあくびをする。

 

 

「ぷるるん、またお昼寝してたの? 相変わらずよく寝るねー」

 

「うん。朝起きて二度寝して~、顔を洗って三度寝~、朝ご飯を食べて四度寝、少しお裁縫をして五度寝~、今はお昼ご飯食べた後の六度寝して起きたところ~」

 

 

 聞いてのとおり彼女はよく寝る。

 

気付けば寝ている。

 

明らかに起きている時間より寝ている時間の方が長い。

 

 

「プルルートさん、少しはお仕事をして下さい……」

 

 

神次元のイストワールは肩を落としながらプルルートに懇願する。

 

 

「えー……だって眠いし~」

 

 

 しかし、プルルートはやる気なさそうな声で答える。

 

プルルートは見ての通りののんびり屋で、真面目に仕事に励むということは無い。

 

ネプテューヌが仕事をサボって遊ぶタイプに対して、プルルートは居眠りしてサボるタイプである。

 

 

「それに仕事なら、ぎあちゃんがしてくれるし~」

 

 

 その為、超次元に帰った後もネプギアが神次元の仕事もしているのである。

 

神次元プラネテューヌの国民からの願いだからでもあるが。

 

 

「プルルートさん、あなたには女神としての矜持は無いのですか?」

 

 

 イストワールがプルルートに少し厳しい言葉を浴びせる。

 

ネプギアが神次元の仕事をしているが為に超次元の仕事量が落ちてしまうのは事実。

 

ネプテューヌだけで頭の痛いイストワールとしては、いい加減プルルートには独り立ちして欲しいのである。

 

 

「きょーじ? なにそれおいしいの?」

 

 

 意味を知ってか知らずかプルルートはお約束のボケをかます。

 

 

「わたし知ってる! お相撲さんの審判のことよ!」

 

「はっきょいはっきょい、のこったのこった(どすこいどすこい)」

 

 

 ロムとラムの勘違いに、「それは行司」とやんわりとツッコミを入れるユニ。

 

 

「……ネプギア、きょーじってなに?」

 

 

 どうやらネプテューヌは本気で知らないようで、イストワールに悟られて怒られないようネプギアに助け舟を求める。

 

 

「その立場にいる人の自尊心のことだよ。いーすんさんは【女神という立場にいる自信と誇りは無いのか?】って言ってるんだと思うよ」

 

 

 ネプギアは丁寧にネプテューヌに説明するとネプテューヌは難しい顔をして腕組みをする。

 

 

「ふーん、何か難しいね。変身したわたしならありそうだけど、わたし自身は毎日がハッピーなら女神とかどーでもいいよ。お仕事面倒だし、いーすんもうるさいし」

 

 

 ネプテューヌの答えに、「あはは……お姉ちゃんらしいね……」とネプギアは少し呆れたように言う。

 

 

「あ! でも、主人公の矜持なら全快バリバリであるから! なんてたって主人公オブザ主人公だし」

 

 

 ネプテューヌは人差し指をビシッと突き出すと堂々と宣言をする。

 

 

「プルルートさん、貴女に対して国民のみなさんからお仕事のお願いが届いているんです。これを居眠りして放置して、国民のみなさんにどう顔向けするつもりですか?」

 

 

 ネプギアとネプテューヌが話している間にイストワールは以前にネプテューヌにした質問をプルルートにぶつけてみる。

 

 

「ん~」

 

 

 プルルートは少し考える仕草をする。

 

 

「お昼寝してて放置プレイしちゃった~。ごめんね~」

 

 

 プルルートは悪びれもなく、しれっと言う。

 

 

「流石はプルルートさん、お姉ちゃんとほぼ同じ反応……」

 

 

 ネプギアはそう言って肩を落とす。

 

 

「やっぱりぷるるんはわたしの心の友だよ!」

 

 

 ネプテューヌはそう言いながらプルルートに向かって駆けだすと盛大に抱き着く。

 

ネプテューヌは友人こそ多いが、アイエフのように彼女の仕事ぶりに対して苦言を言う者が多い。

 

しかしプルルートはそうではないどころかネプテューヌと同じような考え方をしているのである。

 

そういう意味では彼女はネプテューヌとって特別な友人なのである。

 

 

「ねぷちゃん大胆~」

 

 

 プルルートは特に慌てた様子もなくネプテューヌを受け入れる。

 

 

「今日は心ゆくまで飲み明かそうよ!」

 

 

 ネプテューヌはそう言いながら元気よく右手に高々と掲げる、その手にはジョッキが握られていた。

 

中に入っているのは黄色いゼリーの上に黒いカラメルソースの乗った、どこから見てもプリンである。

 

これはネプテューヌ特注の【ジョッキプリン】である。

 

 

「おー」

 

 

 プルルートもゆっくりと右手を上げてそれに同調する。

 

 

「それじゃ、レッツゴーイング! 48時間耐久プリン&ゲームパーティ! プレゼントバーイ、ネプテューヌ!!」

 

「わー。ぱちぱちぱち~」

 

 

 ハイテンションで教会の外に駆けて行くネプテューヌに対して、テンションを変えずに歩いて付いていくプルルート。

 

彼女達はテンションこそ違うものの、お互いに良き理解者なのである。

 

 

「あっ! まだ話は……」

 

「……申し訳ございません、その辺りで矛を収めて頂けないでしょうか。プルルートさんを怒らせても大変ですし」

 

 

 二人を止めようとするイストワールに対して神次元のイストワールが割って入る。

 

ああ見えてプルルートは起こると怖い。

 

 

「そうやってご機嫌を伺っているからプルルートさんが増長するのですよ?」

 

「返す言葉もありません。しかし、神次元の女神様は超次元と違って元は普通の人間だったということを分かって下さい」

 

 

 忠告をするイストワールに対して、小さく頭を下げる神次元のイストワール。

 

 

 神次元のイストワールの言う通り、超次元と神次元は似てはいるが女神の成り立ちが違うのだ。

 

超次元の女神は人々の信仰心によって生まれるのに対し、神次元の女神は【女神メモリー】というアイテムを適応する者が使うことにより誕生する。そして女神になった者の元に人々が集まる。

 

つまり信者と女神の生まれる順番が逆なのである。

 

その為、超次元の女神は生まれつき女神としての使命を持っているものが多い。

 

それに対して神次元は自ら望んで女神になった者は使命感を持っているが、成り行きで女神になってしまったものはそうではない。

 

勿論、プルルートは後者であり彼女はたまたま拾った女神メモリーで女神になってしまったのである。

 

 

「それは分かりますが……」

 

 

 難しい顔をして言葉に詰まるイストワール。

 

 

「まあまあ、いーすんさん、私は全然気にしてませんから。それに神次元で仕事したおかげで私自身も成長できますし」

 

 

 考え込むイストワールに対してネプギアがフォローに入る。

 

 

「なにより、ユニちゃん達と一緒にお仕事できますから」

 

 

 ネプギアは続けてそう言うと、ユニが、「そうね。超次元ではこうはいかないものね」と言って頷く。

 

 

 「そうだよねー。お姉ちゃん達がうるさいし」

 

 

 ラムが腕組みしてそう言うと、ロムが少し悲しい顔で「こくえきとか立場とかよく分からない(しくしく)」と言う。

 

ネプギア達女神候補生が一堂に会してお仕事ができるのは、神次元だからであって超次元ではこうはいかない。

 

各国は競い合うライバル関係であり、互いの国益や女神としての立場があり安易に他国のお仕事ができないのである。

 

女神候補生達の意思は別だとしても、姉や教祖などがそれを許さない。

 

それに対して神次元は別次元なので姉達も深くは干渉してこないのである。

 

ユニとロムとラムは月に一度のお泊り会という名目で神次元のプラネテューヌに来てネプギアと一緒にお仕事をしている。

 

 

「と、言うことでお仕事お願いします」

 

 

 ネプギアは話を変える意味もあり、神次元のイストワールに仕事の催促をする。

 

 

「ありがとうございます。まずは書類の決裁からお願いします」

 

 

 神次元のイストワールはネプギアの態度に感謝しつつ仕事の説明を始める。

 

 

「ハンコぽんぽんだね! 任せてよ」

 

「ハンコ楽しい(ぽんぽん)」

 

 

 ロムとラムは楽しそうにハンコを押す仕草をする。

 

 

「ちゃんとアタシとネプギアが見たのから押すのよ」

 

 

 ユニがそう言うと、ネプギアは「じゃあ、行こう」と言って女神候補生達とイストワール達は執務室に移動する。

 

アイエフ達やアレスター家の面々もそれに付いて行く。

 

 

「……」

 

 

 その最中、プラエは俯いて震えていた。

 

あんみつが心配そうに、「プラエ様、大丈夫ですか?」と尋ねると、「……あの、プルルートって言う人……怖い……心の色が赤黒くて気持ち悪い」とプラエは呟いた。

 

 

***

 

 

「はい、しょーにんしょーにん」

 

 

ぽんぽん

 

 

「ダメダメダメ~、ひにんひにんひにーーん」

 

 

ぽんぽん

 

 

 ロムとラムの声と押印をする音が執務室に響き渡る。

 

ネプギアの改造により押印の際に音が出るようになっていて、ロムとラムはそれを楽しんで押していた。

 

ちなみに承認と否認の意味は以前にネプギアとユニから説明を受けている。

 

 

「ユニちゃん、これはどうかな?」

 

 

 ネプギアがユニに書類を見せる。

 

 

「うーん、アタシは良いと思うわよ。ネプギアは?」

 

 

 ユニがそう答えるとネプギアは嬉しそうな顔をする。

 

 

「私も良いと思ったんだ。じゃあ、承認だね。お願いロムちゃん」

 

 

 ネプギアはそう言いながらロムに書類を渡す。

 

 

「しょーにん!」

 

 

ぽんっ!

 

 

 ロムは嬉しそうにハンコを押す。

 

 

「こっちはどう?」

 

 

 ネプギアは別の書類をユニに見せる。

 

 

「こんなのダメに決まってるでしょ。予算を考えなさい予算を」

 

 

 ユニは書類を見るなりダメ出しをしてくる。

 

 

「そうだよね……アイデアはいいんだけど、お金が無いよね。残念だけど、ラムちゃん」

 

 

 ネプギアはそう言いながらラムに書類を渡す

 

 

「ひにーん! また来週っ!」

 

 

ぽんっ!

 

 

 ラムも楽しそうにハンコを押す。

 

女神候補生達はネプギアとユニが書類をチェックしてロムとラムが押印するという綺麗な流れ作業で次々と書類を処理していく。

 

 

「これは凄い。山のようにあった書類がみるみる内に無くなっていきますね」

 

 

 ファミ通は女神候補生の仕事ぶりに感嘆する。

 

執務室に入った時はファミ通が驚く程の書類の山があったが、それが女神候補生達によってみるみるうちに崩されていく。

 

 

「女神候補生の皆さんは協力してなにかをすることが、とても得意なのです」

 

 

 イストワールが嬉しそうに答えると、「確かにコンビネーション抜群ですね」とファミ通は同感のようで感心して頷く。

 

 

「本当にこの子達は何をやらせても上手く協力するわよね」

 

 

 アイエフが腕組みしながら関心すると、「仲良しさんです~」とコンパも嬉しそうに女神候補生達を眺める。

 

 

「いいなぁ……楽しそう」

 

 

 プラエが羨ましそうに右人差し指を咥えながら、ネプギア達を眺めると、「お気持ちは分かりますが、お仕事の邪魔をしてはいけませんよ」とあんみつがプラエの両肩にそっと両手を置く。

 

 

「女神様達は良くも悪くも対抗意識が強いですが、候補生の皆さんはそうではないんですね」

 

 

 ファミ通も彼女達の姉である守護女神は取材したことがあるが、彼女達は良くも悪くも自我が強く対抗意識も強いので、いざという時は力を合わせているが普段はそうは行かないであろうと分析していた。

 

それに対して女神候補生達は対抗意識より協調意識の方が強くチームワークが抜群だと感じたようだ。

 

 

「ええ、会った頃はケンカしたり、いきなり襲われたりもしたけど、今では誰よりも信頼しあっているわ」

 

「皆さんがネプギアさんをリーダーと認め、支えてくれるお陰です。本当に感謝しかありません」

 

 

 アイエフとイストワールが犯罪組織との戦いを思い出しながら、ファミ通に女神候補生達のことを話す。

 

 

「なるほどなるほど……」

 

 

 ファミ通は素早く二人の話をメモに取る。

 

 

「こうやって見るとギアちゃん達は親子みたいです~」

 

 

 コンパは仕事をする女神候補生達を眺めながら、優しい声で言う。

 

 

「親子? 姉妹じゃなくて?」

 

 

 アイエフはコンパの言葉に首を傾げて質問する。

 

 

「はいです~。優しいギアちゃんはお母さんで、ちょっと厳しいユニ様はお父さん、ロム様とラム様はその子供です~」

 

 

 コンパは嬉しそうな様子で、一人一人解説をすると、アイエフは、「まぁ、見えなくもないわね」と同意する。

 

 

「いつもながら見事な仕事ぶりです。本当に助かります」

 

 

 神次元のイストワールが安心した声で女神候補生達に感謝を伝える。

 

 

***

 

 

 そうこう話してる間に書類山は無くなっていた。

 

 

「ラム、これラスト。否認」

 

 

 ユニが最後の書類をラムに手渡す。

 

 

「りょーかい! ひに……んんんんんん?」

 

 

 ラムは意気揚々と否認の印を押そうとするが、その途中で手が止まる。

 

 

「ラムちゃん、どうしたの?」

 

 

 その様子を不思議に思ったロムがラムに質問をする。

 

 

「これお祭りって書いてあるーー! どーして否認なのよーー!」

 

 

 ラムは書類を手に手に持って、ユニに向かって抗議をする。

 

 

「……おまつり? わたしもやりたい……何でダメなの?」

 

 

 それを聞いたロムもユニに向かって質問をする。

 

 

「もぅ……見てないようでちゃんと見てるのね……」

 

 

 ユニは少し呆れたように言う。

 

上手く誤魔化すつもりだったが、思ったよりラムがしっかりしていたので感心もしていた。

 

 

「ユニちゃん、お祭りって?」

 

 

 同じく書類のチェックを済ませたネプギアがユニに問いかける。

 

 

「アタシ達への感謝祭を開きたいって言うのよ」

 

 

 ユニはラムから書類を取り上げるとネプギアの方を向いて説明を始める。

 

 

「そのアイデア自体は悪くないし、気持ちも嬉しいのよ。でも、周期と規模の問題でね」

 

 

 ユニは腕組みして考え込みながらネプギアに説明をする。

 

 

「周期と規模? どれぐらいなの?」

 

 

 ネプギアは案自体は良いと感じたので更にユニに質問をする。

 

 

「アタシ達が来る度、つまり一ヶ月おきにプラネテューヌ全土で大規模なお祭りを開きたいっていうのよ」

 

 

 ユニは書類をネプギアに手渡しながら説明をする。

 

 

「うーん……さすがに毎月は厳しいね」

 

 

 ネプギアはその書類を読みながら、難しい顔をする。

 

 

「じゃあ、毎月じゃなくてもいいから!」

 

 

 どうしてもお祭りのしたいラムが飛び跳ねながら訴える。

 

 

「それでも、予算は厳しいし、何よりアタシ達は遊びに来てるんじゃないのよ」

 

 

 しかし、生真面目なユニの意見は変わらない。

 

 

「えーーーー! やだやだやだやだやだやだやだやだやだ! わたがし、たこ焼き、チョコバナナーーー!」

 

「わたしも金魚すくいとかしたい(うるうる)」

 

 

 ラムはじたばたと暴れロムは涙目で訴えてくる。

 

 

「困ったね。私もお祭り自体は賛成だけど、予算的に厳しいよね」

 

 

 ネプギアは理性としてはユニに同意したいが、感情的にはロムとラムやこの案を提出した人に賛同しているようだった。

 

 

「ネプギア何とかして!」

 

「ネプギアちゃんお願い」

 

 

 ロムとラムはネプギアの袖にすがり付く。

 

彼女達のネプギアの好きなところの一つにとても甘やかしてくれるところがある。

 

これは彼女達の国であるルウィーが歴史が古く規律に厳しく、また姉であるブランの教育も厳しい為、その反動で甘えられるネプギアには精一杯甘えてしまう。

 

 

「うーん、私も出来たらやりたいけど、お金は公共の福祉とかが優先だし、私達がいない間に国を護ってくれる軍人さん達の軍事費用もあるから」

 

 

「お金なんかバンバン作っちゃえばいいじゃない」

 

 

 ネプギアはやんわりと説明をするが、ラムはどうしても諦められないようですぐさま抗議をする。

 

 

「それじゃ、インフレがおきるわ」

 

 

「なにそれ? インフルエンザの仲間? どーしてお金を作って病気が広まるのよー!」

 

 

 ユニもネプギアに加勢するが、ラムの抗議の勢いは止まらないようだ。

 

 

「インフレって言うのは、インフレーションの略でなの。お金を作ってもそれを買う商品の数は変わらないから、お金の価値が下がっちゃうんだよ」

 

 

 ネプギアは落ち着いてロムとラムに説明をする。

 

ユニも、「それに対応して商品の値段が異常なまでに上がるのよ。ゲームソフトが100万円とかになったら困るでしょ」とそれに続く。

 

 

「うー! でもでもでもー!」

 

 

「おまつりやりたい(うるうる)」

 

 

 二人に説明を受けても、どうしても諦められないロムとラム。

 

 

「それに私達この国の正式な女神じゃないし、よく考えるとプルルートさんの立場もあるし……」

 

 

 しかしネプギアはそれでも心を鬼にして難色を示す。

 

正式な女神であるプルルートを差し置いて、自分たちへの感謝祭に抵抗もあるのだ。

 

 

「ネープギア、ネープギア、ネープギア!」

 

「ネープギア、ネープギア、ネープギア!」

 

 

 それでもロムとラムは諦めきれず怒涛のネプギアコールで懇願する。

 

 

「……ユニちゃん何とかならないかな?」

 

 

 コールに負けたネプギアはユニに相談を持ちかける。

 

元来優しい性格のネプギアはロムとラムのお願いは出来るだけ叶えてあげたいという本心が強くなってしまったようだ。

 

 

「アタシもなんとかしたいけど、ネプギアの言うようにプルルートさんの立場もあるわよね」

 

 

 ユニも腕を組んで考え込むが、よい妥協案は浮かばないようだった。

 

 

「あの……差し出がましいようですが、意見を言わせてもらってよいですか」

 

 

 エレノアが小さく手を挙げる。

 

 

「エレノアちゃん? どうしたの?」

 

 

 ネプギアが不思議そうにエレノアに問い掛ける。

 

 

「私達、神次元のプラネテューヌの国民は女神様だからではなく、私達を護り導く存在に対して感謝祭を開きたいのです。そこにプルルート様は関係ないと思います」

 

 

 エレノアが力強くそう言うと、母のユリィも「十数年に及び勤勉に国を護ってくれたネプギア様とその仲間の方々に感謝の気持ちを伝えたいのです」とそれに続く。

 

 

 神次元のプラネテューヌは元々はプルルートやネプテューヌなどの小さい子好きが集まって出来た国だが、途中から来たネプギアの真面目な仕事ぶりに感化され、ほぼ全員が真面目正統派ヒロイン属性に宗旨替えをしている。

 

どうしても小さい子しか愛せない人はルウィーに移るが、それもロムとラムが来てからは殆ど戻って来ている。

 

 

「この案件、我等アレスター家に任せてはいただけないでしょうか? 国民の思いを見事体現してみせましょう」

 

 

 最後にレイが力強い声で提案をしてくる。

 

アレスター家の三人は祭りの開催に積極的なようだ。

 

 

「ホント! ホントにお祭りできるの?」

 

「やったぁ!」

 

 

 嬉しさで跳び跳ねるロムとラム。

 

 

「でも、予算が……」

 

 

 ネプギアは気持ちは嬉しいが予算的な問題が解決していないことを心配する。

 

 

「今回は予算は一切いただきません。我がアレスター家の資産と国民のからの寄与で賄ってみせます」

 

 

 レイが自信満々に言い切る。

 

アレスター家は古くからある聖騎士の家柄で、それなりの資産を持っているのだ。

 

 

「そんな! 悪いですよ!」

 

 

 自腹を切ると言うレイを慌てて止めるネプギア。

 

 

「ご心配には及びません。この祭りの興行収入と経済効果を考えれば安いものです」

 

 

 ネプギアの心配にユリィは落ち着いて答える。

 

 

「ですからお願いいたします。私達に任せて下さい」

 

 

 エレノアがそう言うとアレスター家の三人はネプギア達に向かって深々と頭を下げて懇願する。

 

 

「ユニちゃんどうしよう」

 

「困ったわね……」

 

 

 ネプギアとユニはアレスター家の突然の強気の提案に戸惑ってしまう。

 

 

「ネプギアさん、私もアレスター家の皆さんに賛成です」

 

 

 そこにイストワールが助言をするように話に加わってくる。

 

 

「いーすんさん?」

 

 

 首を傾げるネプギアに、イストワールは、「ネプギアさん、私は民意を無視した政治は上手く行かないと教えましたね」と説明を始める。

 

イストワールの言葉に、「はい」頷くネプギア、続いて「アタシもそう思うわ」とユニも頷く。

 

 

「アレスター家の皆さんの言葉も一つの民意と思って下さい」

 

 

 二人が頷くのを確認したイストワールは話を続ける。

 

 

「一つの民意……」

 

 

 イストワールの言葉を聞いたネプギアはあごに右手を当てて考え込むと、「確かにそうかもしれないわね」とユニもネプギアと同じように考え込む。

 

 

「わかりました!」

 

 

 暫く考えた後にネプギアは力強く頷く。

 

その顔は迷いがなく晴れやかであった。

 

 

「ユニちゃんもいいよね?」

 

 

 ネプギアがユニに確認を取ると、「ええ、いいわ」とユニも同じ意見のようで快く同意する。

 

 

「かわいーすんさんもいいですか?」

 

 

 ネプギアの言葉に、「そうですね。これも民意なのでしょう」と神次元のイストワールも頷く。

 

ちなみに【かわいーすん】とは神次元のイストワールのあだ名。

 

 

「では、アレスター家の皆さん。お祭りの件は一任しますのでよろしくお願いします」

 

 

 ネプギアはアレスター家の三人にお祭りの件を託すこと決めて、書類をロムに渡す。

 

ロムは嬉しそうにその書類に「しょーにん!」と言って判を押す。

 

 

「「「はっ!お任せ下さい」」」

 

 

アレスター家の三人は力強く直立不動で返事を返す。

 

 

「わーい! おまつりおまつりー」

 

 

 ラムが飛び跳ねると、「わっしょいわっしょい」とロムが御神輿を担ぐ真似をする。

 

二人ともは大喜びである。

 

 

「アンタ達はしゃぎ過ぎよ」

 

 

 ユニは呆れたよにロムとラムに言う。

 

 

「だって、わたし達のお祭りなのよ! 超次元ではお姉ちゃん達のばっかりなのに今度のはわたし達が主役なのよ!」

 

 

 ラムがそう言うと、ネプギアが「言われてみれば私達が主役のお祭りってこれが初めてかも」と思い付いたように言う。

 

 

 彼女達女神候補生はそれぞれの国でお祭りはあるが、やはり主役は姉である守護女神であった。

 

それが今回は自分達が主役になれるのが嬉しいのだろう。

 

 

「すごく楽しみ(わくわく)」

 

 

 ロムはウキウキしながら両手をあごに当てる。

 

 

「あれ練習しておいた方がいいかな?……えと……しきゅー式」

 

 

ラムが野球のボールを投げる真似をすると、「何で野球になるのよ……」とユニが溜息をついて呆れる。

 

 

「えー? ないの? じゃあ、ブリーチは?」

 

 

 ラムは続けてそう言うが、「何で髪の色抜かないといけないのよ?」とユニには何の事だかわからず首を傾げてしまう。

 

 

「もしかして、スピーチのことかな?」

 

 

 ネプギアはラムの言うことに心当たりがあるようで少し微笑みながら答える。

 

 

「そう! それよそれ、わたしの【まいっちんぐぱふぉーまんす】で盛り上げてあげるわ」

 

 

 ラムのアピールに、「ラムちゃん頼もしい(ぱちぱちぱち)」拍手を送るロム。

 

 

「それを言うなら、マイクパフォーマンスじゃないかな……」

 

 

 その後ろでツッコミを入れるネプギア。

 

 

「そう、それそれ。マイクパフォーマンス」

 

 

 ラムはネプギアのツッコミで言い直す。

 

 

「なによ、まいっちんぐって……」

 

 

 ユニの疑問に、「ミナちゃんが風でスカートがめくれた時にそう言ってた……」と答えるロム。

 

西沢ミナはイストワールを除く教祖の中でも一番年長に見えるが、その年齢は謎である。

 

 

「じゃ、今日はこれぐらいで終わりにしましょ」

 

 

 ユニがそう言うと女神候補生達は道具の片付けを始める。

 

その後は女神候補生達はお祭りに期待を膨らませ、夕食と入浴を済ませて床についた。

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