新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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006神次元のクエスト

 翌日、G.C.2019年4月28日 日曜日。

 

ネプギア達超次元から来たメンバーは、クエストの為にプラネテューヌ近郊の草原【オオトリイ大草原】を訪れていた。

 

ちなみに、ネプテューヌはプルルートと遊んでいる為に不在である。

 

 

「ネプギア、今レベルいくつ?」

 

 

 ネプギアの隣を歩いていたユニがネプギアに問いかける。

 

 

「私は16だよ。ユニちゃんは?」

 

「アタシも16。やるじゃない、それでこそアタシのライバルよ」

 

 

 ユニは腕組みしながらそう答える。

 

その様子はネプギアが競い合うに足る相手だと満足しているようだった。

 

 

「はーい! わたしとロムちゃんは15ー!」

 

 

 ネプギア達の後ろからラムが元気よく手を上げて宣言する。

 

ロムも、「わたし達も頑張ったよ(ふんす)」と言って頑張りをアピールする為に小さくガッツポーズをする。

 

 

「本当? よく頑張ったね。えらいえらい」

 

 

 ネプギアはロムとラムの隣に行くと二人の頭を優しく撫でてあげる。

 

 

「お姉ちゃんがクエスト行くの止めなければ、ネプギアとユニちゃんより高くなってたんだから」

 

 

 ラムは両手を腰に当ててふんぞり返ると、「クエスト行くの止められちゃったの?」とネプギアがロムとラムに質問する。

 

 

「……ランクの高いのは危ないからって、何回か止められたの(しゅん)」

 

 

 ロムはそう言うと肩を落とす。

 

姉のブランも彼女達の事を心配して止めたのであろう。

 

 

「お姉ちゃんってば、カトンボなんだから」

 

 

 ラムがそう言うと、「それは過保護って言いたいの?」とユニがツッコミを入れる。

 

するとラムは、「それよそれ」と頷く。

 

 

 

 その後もネプギア達は、パーティ内でスキルや装備を確認し合いながら奥に進む。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「この地点のフェンリル退治が今日のお仕事です」

 

 

 イストワールが足を止めるとキーボードを操作し、ホログラムを出す。

 

そこには草原の地図と巨大な狼型のモンスターが映し出されていた。

 

 

「なかなかの大物ね。相手としては不足無しよ」

 

 

 ユニは満足気に頷く。

 

 

「誰が来ようと、わたし達女神候補生の敵じゃないわよ」

 

 

 ラムが自信満々に言い放つと、「負けない(ぐっ)」とロムもも小さくガッツポーズをして、二人ともやる気十分である。

 

ちなみに、これ以外細かなクエストは、ネプギアが居ない間に神次元のプラネテューヌ軍と冒険者達が達成してくれていた。

 

現在の神次元のプラネテューヌのクエストは、軍や冒険者でも歯が立たない強力なモンスターを、月に一度に来訪するネプギア達が討伐をしている。

 

 

「では、ここはファミ通さんに女神候補生の力を見せる為、四人で殲滅をお願いします」

 

 

 やる気満々の女神候補生に対してイストワールが提案する。

 

 

「わかりました。みんなもいいよね?」

 

 

 ネプギアはユニ、ロム、ラムに声を掛ける。

 

 

「わかったわ」

 

「うん(こくこく)」

 

「オッケーよ」

 

 

 ユニ、ロム、ラムの三人も頷いて了解する。

 

 

「おおー、これは楽しみだねー」

 

 

 ファミ通は喜々としてペンとメモを取り出す。

 

 

「新作期も迎えましたし、更なる鍛練の為に、あまり安易な女神化は控えてくださいね」

 

 

 イストワールがそう言うと、「えー? なんでー?」とラムが不満そうな声を上げる。

 

 

「強い力に慣れることも大事ですが、それにより重要な器官を劣化させてはいけません。歩かなければ足が退化してしまいます。しかし、運動ばかりで車などの機械に慣れようとしなければ、いつになっても運転を覚えられません」

 

 

 イストワールが落ち着いた声で説明をすると、「えっと、地力を鍛えることを優先にしつつ、女神化にも慣れていくんですね」とネプギアが答える。

 

 

「じりき?」

 

 

 ロムが首を傾げ、「古いオモチャ?」とラムが質問すると、「それはブリキよ」とユニがツッコミをする。

 

 

「地力は、その人本来に備わってる力のことだよ」

 

 

 ネプギアが地力の解説をし、ユニが、「女神化で楽ばかりしてたら、地力は備わらないのよ。自らを過酷な環境に置いて鍛えて鍛えて鍛えてまくるの!!」と力強く言う。その目には炎が燃えているように見える。

 

 

「……ユニちゃんが凄く燃えてる(ぼうぼう)」

 

 

 ロムがユニを驚きの目で見て、「熱血スパコンってヤツね!」とラムが感心をすると、「疾風覇道拳!!」とユニが叫びながら両手首を合わせて手のひらを開いて前に突き出すが、「……って、違うわよ」とノリツッコミを見せる。

 

【疾風覇道拳】とは格闘ゲームの代名詞のスーパーコンボと呼ばれる強力な必殺技。スーパーコンボを略してスパコンと呼ばれている。

 

 

「あー、ユニちゃん、ズルーい。私、スーパーコンピュータでツッコミしようと思ってたのに~」

 

 

 ネプギアが不満そうに口を尖らせると、ユニが右手で頭を抱えて、「何の争いよ何の……真面目に説明しなさい真面目に」と呆れ声を出す。

 

 

「うーん……」

 

 

 ネプギアは右人差し指を右頬に当てて少し考えると、「お絵かきも、高くて良い道具揃えただけじゃ上手くならないよね」とロムとラムに質問をする。

 

 

「「うん」」

 

 

 ロムとラムは仲良く同時に声を出して頷く。

 

 

「それと同じで、良い道具を使う前に、ロムちゃんとラムちゃん自身が絵を上手く描けるようになることが大事なんだよ。そうすることで、良い道具の効果が更に上がるの」

 

 

「ふんふん(こくこく)」

 

 

 ロムが理解したように何度も頷くと、「わかったー!」とラムが元気よく左手を上げる。

 

 

「私達の場合は女神化の力で簡単に敵を倒すより、自分の力と技や仲間達の連携を鍛える為に、あえて変身しないで戦うの。そうすることで、いつもより質の高い経験が積めるし新しい技や戦法を閃いたりするんだよ」

 

 

 ネプギアが更に説明をすると、「ロマサーガでも、自分より強い敵と戦った方が新しい技を閃きやすいでしょ。閃いた技を女神化で活かせば更に強くなれるわ」とユニが付け加える。

 

ロマサーガには確率で技を閃くシステムがあり、強敵と戦う方がその確率が高くなるのだ。

 

 

「ユニちゃんの言う通りで、基本的には地力を鍛えた方が結果的に強くなれるの。でも、女神化での戦い方を忘れないよう適度に女神しようねって感じかな」

 

 

 ネプギアの説明に、「女神化しないと見えてこない戦法や技もあるしね」とユニが更に付け加える。

 

すると、「真ファルフェニックス~~!」とラムが両手を横に広げて鳥の飛ぶような真似をし、「真ファルフェニックス!」とロムもその後に続く。

 

【真ファルフェニックス】とはロマサーガのシリーズに出ている変身ヒーローのファルカイザーというキャラクターの隠し必殺技。

 

変身した状態かつ特定の条件下でないと閃かない技である。

 

 

「ふふふっ」

 

 

 ネプギアはロムとラムを楽しそうに眺めつつ、「二人とも分かったかな?」と質問する。

 

 

「うん、わかった(こくこく)」

 

 

 ロムが頷いて感心すると、「わかったわ。そういうことなら任せなさい! 大リーグ育成ギプスってヤツよね!」とラムが両腕を組んで頷き、「大リーグショット一号よ!」と続けて野球のピッチャーの投球の真似をする。

 

 

「女神候補生よ、栄光の星を目指すのだ!」

 

 

 ネプギアがそう言いながら右手の人差し指で空を指差すと、「ネプギアちゃん、今はお昼だから、お星さまは出てないよ?」とロムにツッコミをされてしまう。

どうやら、ロムもラムも大リーグ育成ギプスは知っているが、そこまで細かいネタは知らないようだ。

 

 

「あはは……そうだね」

 

 

 ネプギアは照れながら右手で右頬をかくと、「大リーグ育成ギプスなんてよく知ってるね」とラムに質問する。

 

 

「前に日本一が着けてたわ」

 

 

 ラムがネプギアの質問に答えると、「そうだったんだ」とネプギアは納得したように頷く。

 

日本一は熱血な性格をしており、この手のトレーニングが好きらしい。

 

彼女のひいきにしてる、【ローゼンクイーン商会】でもギプス系のアイテムが多数販売されている。

 

 

「とにかく、努力、根性、忍耐、情熱よ!!」

 

 

 ユニがまた目に炎を宿しながら言うと、「おお、ユニちゃんがまた燃えてる」とラムが、「燃えてる(めらめら)」とロムが感心する。

 

 

「ユニちゃんの言うことも分かるけど、特訓も身体を壊さないように適度にね。あと全身バランス良く鍛えて、何よりも継続しつつ、少しづつ運動量を増やしていくのが重要なんだよ」

 

 

 ネプギアが燃え盛るユニに、ストップをかけるように落ち着いて言うと、「わかってるわよ。でも、気持ちは常に高く持っておくものでしょ」とユニも落ち着いて答える。

 

 

「そうだね。気持ちはいつでも全力投球だよね」

 

 

 ネプギアはユニの冷静な態度に安心したように頷く。

 

 

「一休入門ってヤツね!」

 

 

 ネプギアの言葉を聞いたラムが元気よく言うと、「とんち(ぽくぽくぽくちーん)」とロムが両手の人差し指をこめかみの辺りで円を描くように回す。

 

 

「お坊さんに弟子入してどうするのよ……」

 

 

 ユニがそう言って溜息を吐くと、「それを言うなら、一球入魂だよ」とネプギアが言い、「そうそう、一球入魂」とラムがピッチャーの真似をすると、「一球入魂(ずばん)」とロムがキャッチャーの真似をする。

 

 

「ま、そんな感じで努力を重ねていくのよ」

 

 

 ユニがそう話をまとめると、「強くなったら、お姉ちゃんも驚くかな?」とロムが期待を込めた目で言う。

 

 

「きっと驚くよ。努力でお努力ぞーって」

 

 

 ネプギアが楽しそうにダジャレを言うと、「強引にダジャレ差し込まないの」とユニがネプギアの頭を軽くチョップする。

 

 

「お努力ぞー」

 

 

 ラムはネプギアのダジャレが楽しかったようで左手を上げて言い、「お努力ぞー(おー)」とロムも右手を上げる。

 

 

「ふふっ……。とにかく、女神化は奥の手と言うことでお願いしますね」

 

 

 イストワールは、女神候補生達の説明なのか漫才なのか分からないやりとりに微笑みを浮かべながら話を締めくくる。

 

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 イストワールの言葉に元気よく頷く女神候補生達。

 

 

「……」

 

 

 仲良く声を合わせて返事をする女神候補生達を、プラエが右人差し指を咥えながら羨ましそうに見ていた。

 

 

「あっ……」

 

 

 それに気付いたネプギアが小さく声を上げる。

 

プラエは、「……っ!」と慌てて人差し指を隠すが、ネプギアは速足でプラエの側に行った。

 

 

「べ、別に寂しくなんか無いよ。ネプギアお姉さんお仕事だもんね。女神候補生のみんなの凄さをファミ通さんの記事にするんだから、プラエ大人しくしてるよ!」

 

 

 プラエは早口にまくしたてるが、「いーすんさん、プラエちゃんが一緒じゃダメですか?」とネプギアがイストワールに尋ねる。

 

プラエはそんなネプギアに、「ネプギアお姉さん……」と熱っぽい視線を送った。

 

 

「そうですね……。出来れば女神候補生の皆さんの連携を見せて欲しいのですが……」

 

 

 イストワールは少し困った顔をして言うが、「プラエちゃんは女神候補生じゃないですけど、私達の仲間で友達なんです」とネプギアが訴える。

 

更に、「五人で連携するのは今日が初めてですけど、私とプラエちゃんはそれなりに連携してますから、上手くやってみせます」と言葉を続ける。

 

 

「とは言え、前衛がネプギアさん一人で四人を守るのは苦しいのでは?」

 

 

 イストワールがそう言うと、「その時はアタシが前に出ます」とユニが一歩前に出ながら言う。

 

 

「ユニちゃん」

 

 

 ネプギアが少し意外そうにユニの名を呼ぶと、「アタシだって昔は一人で戦ってたんです。それにネプギアが魔法を勉強しているのと同じように、アタシも回避の練習してるんです」とユニが堂々とイストワールに言う。

 

ユニの言う通り彼女は、昔は一人で戦っており、その際にはアイエフには及ばないものの見事な回避率を見せている。

 

特に女神化した時の回避用プロセッサユニットの【アンドロイド】を装着した際は、敵の攻撃がかすりもしなかった程だった。

 

 

「ネプギア。アタシの能力をアナライザーで見てみて」

 

 

 ユニがそう言うと、「うん」とネプギアが頷き、Nギアを使ってユニをアナライズする。

 

同時にユニのアナライズ結果がホログラムで表示される。

 

 

【ユニ】

elemental(属性):火

 

character class(クラス):ガンナー

 

growth(成長タイプ):晩成

 

hit point(HP):C

 

magic point(MP):C

 

power(攻撃力):C

 

shot(射撃力):S

 

magic(魔法攻撃力):C

 

support(回復&補助能力):C

 

weakened(弱体化&状態異常):S

 

defense(防御力):C

 

resist(魔法防御力):D

 

speed(スピード):A

 

stamina(スタミナ):A

 

accuracy(命中精度):S

 

avoidance(回避精度):A

 

capacity(最大シェア):A

 

dexterity(クリティカル率):S

 

cooperation(連携、合体技補正):A

 

luck(運):B

 

Intuition(直感):A

 

tension(シェア増加率):C

 

cool(シェア減少率):C

 

guts(HP減少時の能力補正):C

 

casting speed(詠唱速度):C

 

memory(記憶力):A

 

tactics(戦術):A

 

strategy(戦略):C

 

command(指揮):A

 

zone of control(ZOC):E

 

trick(策略):A

 

adaptation(適応力):C

 

learning(学習能力):B

 

viability(生活能力):A

 

politics(政治):B

 

mechanic(機械技術):A

 

computer(コンピューター技術):B

 

 

 

「わぁ、流石はユニちゃん、射撃と命中がSだよ」

 

 

 ネプギアがそう言って驚くと、「そこも見どころだけど、今は回避よ回避」とユニがネプギアに忠告を入れる。

 

ネプギアは、「あっ、そうだったね」と言いながら回避の項目に目をやる。

 

 

「あっ! Aだ。ユニちゃんスゴイ」

 

 

 ネプギアが右手を口に当てて驚くと、「しかも、スピードもスタミナもAね。これなら長時間の回避タンクができるわ」とアイエフも右手をあごに当てながら頷く。

 

続けて、「回避マスターのあいちゃんのお墨付きがあるなら大丈夫ですねー」とコンパが嬉しそうに頷く。

 

ユニはウィンクをすると、「どう? アタシだって成長してるのよ。四女神オンラインでシーフしてるから、銃を使った高速戦闘も慣れたものなんだから」と言い放つ。

 

 

「ですが……」

 

 

 イストワールは右手をあごに当てて悩んでいるようだ。

 

そこに、「回避だったら、わたしも高いわよ!」とラムが自信満々に胸を張って言い放つと、「うん、ラムちゃんは運動神経抜群だから(ぱちぱち)」とロムがそれに続く。

 

 

「え! ラムさんは魔法使いですから回避は高くない筈では? 私のようにサイズが小さい訳でもありませんし」

 

 

 イストワールが驚きながら言うが、「ホントだもん。わたしも四女神オンラインで忍者やって、魔法をバンバン撃つ以外の戦い方もあるんだって勉強したんだから!」と言ってラムが左手でVサインを作る。

 

ラムは魔法使いで、防御や回避関係の能力は高くなかったのだが、元々運動神経が良い彼女はそれを活かした戦い方を勉強したと言うのだ。

 

 

「ほらほら、ネプギア。アナライザー」

 

 

 ラムがそう言うと、「うん」とネプギアが頷き、先程と同じようにNギアを使ってラムをアナライズする。

 

同時にラムのデータがホログラムで表示される。

 

 

 

【ラム】

elemental(属性):風

 

character class(クラス):魔法使い

 

growth(成長タイプ):晩成

 

hit point(HP):E

 

magic point(MP):S

 

power(攻撃力):C

 

shot(射撃力):E

 

magic(魔法攻撃力):S

 

support(回復&補助能力):B

 

weakened(弱体化&状態異常):A

 

defense(防御力):E

 

resist(魔法防御力):A

 

speed(スピード):S

 

stamina(スタミナ):E

 

accuracy(命中精度):B

 

avoidance(回避精度):S

 

capacity(最大シェア):A

 

dexterity(クリティカル率):C

 

cooperation(連携、合体技補正):A

 

luck(運):A

 

Intuition(直感):A

 

tension(シェア増加率):A

 

cool(シェア減少率):C

 

guts(HP減少時の能力補正):E

 

casting speed(詠唱速度):S

 

memory(記憶力):A

 

tactics(戦術):D

 

strategy(戦略):D

 

command(指揮):D

 

zone of control(ZOC):E

 

trick(策略):S

 

adaptation(適応力):B

 

learning(学習能力):C

 

viability(生活能力):D

 

politics(政治):D

 

mechanic(機械技術):C

 

computer(コンピューター技術):C

 

 

 

「ええっ! 回避とスピードがS」

 

 

 ネプギアがそう言って驚くと、「ふふん、どう? すごいでしょ」とラムが自信満々に腕組みをする。

 

ユニも愕然して、「アタシより上……」と呟く。

 

 

「そうよ! ラムちゃんは、一撃必殺、いたずら離脱の超高速魔法少女なんだから」

 

 

 ラムはそう言うとダブルピースをする。

 

ネプギアは、「いたずら離脱じゃなくて、一撃離脱ね」と少し困った顔をしてツッコミを入れる。

 

 

「しかし、スタミナがEですね」

 

 

 そこに、あんみつが冷静な声で言い、「咄嗟の危険回避と一撃離脱には有効ですが、これでは前に出て回避タンクをするのは難しいですね」と続けて分析をする。

 

 

「そこはネプギアがやってくれるわよ。わたしが言いたいのは、一回や二回の攻撃ぐらいなら避けられるわってことよ」

 

 

 ラムが腰に手を当てつつ胸を張って言う。

 

 

「わたしは、ラムちゃんみたいに運動神経良くないけど、スタミナはついたんだよ。ネプギアちゃん、見て」

 

 

 ロムがそう言いながら右手でネプギアの左袖を引っ張る。

 

ネプギアは、「うん」と頷き、Nギアを使ってロムをアナライズすると、ロムのデータがホログラムで表示される。

 

 

【ロム】

elemental(属性):水

 

character class(クラス):ヒーラー

 

growth(成長タイプ):晩成

 

hit point(HP):C

 

magic point(MP):A

 

power(攻撃力):E

 

shot(射撃力):E

 

magic(魔法攻撃力):A

 

support(回復&補助能力):S

 

weakened(弱体化&状態異常):B

 

defense(防御力):C

 

resist(魔法防御力):S

 

speed(スピード):D

 

stamina(スタミナ):B

 

accuracy(命中精度):D

 

avoidance(回避精度):C

 

capacity(最大シェア):A

 

dexterity(クリティカル率):D

 

cooperation(連携、合体技補正):A

 

luck(運):C

 

Intuition(直感):C

 

tension(シェア増加率):D

 

cool(シェア減少率):D

 

guts(HP減少時の能力補正):E

 

casting speed(詠唱速度):S

 

memory(記憶力):S

 

tactics(戦術):D

 

strategy(戦略):D

 

command(指揮):E

 

zone of control(ZOC):E

 

trick(策略):A

 

adaptation(適応力):C

 

learning(学習能力):C

 

viability(生活能力):C

 

politics(政治):C

 

mechanic(機械技術):C

 

computer(コンピューター技術):C

 

 

 

「本当だ。スタミナBなんて、ロムちゃん頑張ったんだね。えらいえらい」

 

 

 ネプギアがそう言いながらロムの頭を撫でると、「防御力もCに上がってるわ。やるじゃない」とユニもロムを褒める。

 

ロムは両手をあごに当てて、「えへへへ(にこにこ)」と言いながら嬉しそうに微笑む。

 

 

「わたしもロムちゃんも、打たれ弱いって弱点克服する為に頑張ったんだよねー」

 

 

 ラムがそう言うと、「うん、ネプギアちゃんが魔法頑張ってるから、わたし達も防御を頑張った」とロムが続けて言う。

 

ネプギアは、「ありがとう。二人ともスゴイよ」と言いながら、ロムとラムの頭を優しく撫でる。

 

 

「いーすんさん、みんなも新作期に合わせて成長してますから大丈夫ですよ。いざって時はユニちゃんも前に出てくれますし、仮に抜かれても今のロムちゃんとラムちゃんなら持ちこたえてくれます」

 

 

 仲間達の成長を頼もしく思ったネプギアは自信満々にイストワールに訴える。

 

イストワールも表情を崩して、「そうですね。私が慎重過ぎたのかもしれません。みなさんは私が想像するよりも早く成長しているようですね」と微笑む。

 

 

「だって、よかったわね。プラエ」

 

 

 ラムがプラエに向けてそう言うと、「一緒に頑張ろうね」とロムもプラエに向けて微笑む。

 

 

「ロムさん、ラムさん、それにユニお姉さんもネプギアお姉さんもありがとう!」

 

 

 プラエは満面の笑みを浮かべて、女神候補生達に感謝の言葉を伝えた。

 

 

「しかし、変身なしとは、なかなかの縛りプレイね」

 

「でも、ぎあちゃん達なら大丈夫です~」

 

 

 アイエフとコンパは女神候補生達の実力を信頼しており、特に口を挟む気はないようだ。

 

それを聞いたあんみつは、「それほどのものとは、楽しみです」と答える。

 

 

「私も楽しみだよ。でも、私一人で五人を同時に取材するのは難しいかも」

 

 

 ファミ通はそう言って少し考え込む。

 

 

「そんなこともあろかと準備をしてきました!」

 

 

 ネプギアは意気揚々とNギアを操作する。

 

するとNギアからエビの形を模した30センチメートル程の大きさの機械が四つ出てくる。

 

ロムが、「エビさん?」と言うと、「わー、エビだエビー! おっきーい」とラムも嬉しそうにそれに続く。

 

 

「プロペラが付いてるわね。エビ型のラジコンヘリ?」

 

 

 ユニはそれをよく確認して、プロペラが付いていることに気付いたようだ。

 

プラエは、「これがラジコンって言うんだ。プラエ初めて見た」と言ってしげしげと観察する。

 

 

「ネプギア様これは?」

 

 

 ファミ通が不思議そうにその機械を指差すと、「ファミ通さんの為に作った取材用のドローンです」とネプギアは自信満々に答えた。

 

 

「どろーん? 雷系の魔法だったっけ?」

 

「ラムちゃん、それはドロンだよ」

 

 

 ラムはルウィーに伝わる古の雷魔法と勘違いしたようで、ロムに訂正を受ける。

 

 

「ドローンって、無人で遠隔操作や自動制御するって言うラジコンみたいなヤツよね」

 

 

 ユニが自分の知ってる範囲でドローンを解説すると、「そうだよ。これは六つのローターで飛ぶから【ヘキサコプター】って言うんだ」とネプギアが答えながらNギアを操作するとエビ型のドローンから六つのローターが羽を広げた。

 

ローターが回転するとドローンは宙に浮いて飛行する。

 

 

「わー! 飛んだ飛んだわー!」

 

 

 ラムが空飛ぶエビを興味津々に見つめ、「浮いてる(ぱたぱた)」とロムがホバリングしているエビを指差し、プラエも、「すごいすごい!」と拍手を送っている。

 

 

「これが本当の【エビフライ】!」

 

 

 ネプギアは自信満々のドヤ顔で宣言する。

 

 

「え……」

 

 

 ユニの表情が凍りつく。

 

同時に周囲の空気も凍る。

 

 

「えびふらい?」

 

 

 ロムが不思議そうに首を傾げると、「なんでエビフライなのー? あれはエビだけど衣が付いてないわよ?」とラムが左手を上げて質問をするが、「衣が付いてても食べられないんじゃないかな?」とプラエがツッコミを入れる。

 

ネプギアのダジャレを理解出来なかったロムとラムとプラエは凍りつかなかったようだ。

 

 

「えーとね、フライって言う言葉には空を【飛ぶ】って意味とエビフライとかを【揚げる】って意味があるんだよ」

 

 

 ネプギアはロムとラムとプラエに丁寧に説明を始める。

 

 

「「「ふんふん」」」

 

 

 興味津々に聞き入るロムとラムとプラエ。

 

 

「ダジャレを説明してる時点でアウトよね……」

 

 

 アイエフはかわいそうなものを見る目でネプギアを見る。

 

 

「あいちゃん、そういうこと言っちゃダメです~。ギアちゃんあれでも一生懸命なんです~」

 

 

 コンパは生暖かい目でネプギアを見て、あんみつは、「そうです。一生懸命な人を笑ってはいけませんよ」と言うが、「いや、そこは笑って欲しいんじゃないの」とアイエフがツッコミを入れる。

 

 

「それでエビ型のドローンが飛んだから、これもエビフライってことになるの」

 

 

 ロムとラムとプラエへの説明を終えてネプギアは三人の反応を伺う。

 

 

「ふーん、ちょっと面白いかも」

 

 

 ラムがそう言うと、「うん、エビフライじゃないけどエビフライなんだね」とプラエが納得したように頷く。

 

 

「「「エビフライ、エビフライ」」」

 

 

 キャッキャッと騒ぎながら飛んでいるドローンを指差すロムとラムとプラエ。

 

 

「よかった~。意味が通じたよ」

 

 

 ホッとするネプギア。

 

 

「……アンタ、そんな下らないダジャレ言う為にコレ作ったの?」

 

 

 ユニが呆れながら冷めた目でネプギアを見つめると、「やっぱり面白くないかな? でもでも、一生懸命頑張って考えたんだよ!」とネプギアは涙目になりながら必死に訴える。

 

 

「アンタにはギャグセンスってものはないわ。諦めなさい」

 

 

 そんなネプギアを冷たく突き放すユニ。ネプギアのことを思っての諫言だ。

 

 

「そんなことないもん。ユニちゃんのいぢわる~! 私だって頑張れば面白い冗談言えるんだから~」

 

 

 ネプギアにしては珍しく地団駄を踏む。

 

これも相手がユニだから見せられる彼女の年相応の顔なのだ。

 

 

「はい、面白い面白い」

 

 

 ユニは呆れ顔で投げやりに言う。

 

 

「うわ~ん! 全然感情が籠ってない~! ユニちゃんのばかぁ!」

 

 

 ネプギアなりに面白いことを言おうと一生懸命なのである。

 

努力家で真面目な彼女は、向き不向きで簡単にあきらめることはしない。

 

ネプテューヌの【面白いことを言うのが女神に必要】との言葉を信じて頑張っているのである。

 

 

「えーと……取材にこれを借りて良いってことかな?」

 

 

 ファミ通は、話がひと段落したところでネプギアに質問をすると、「いえ、貸すんじゃなくて差し上げます」とネプギアは事もなげに答えた。

 

 

「ええっ!? こんな凄いの貰っちゃっていいんですか?」

 

 

 驚きで目を丸くするファミ通。

 

 

「私が個人的趣味で作ったものですから。それに私が持っているより、ファミ通さんの取材で使って貰った方が、この子達も喜ぶと思うんです」

 

 

 ネプギアは心優しい性格のとおり物を大事にする。自分で作ったこのドローンも自分の子供のように扱っていた。

 

そのドローンに、活躍の場を多く与えてくれるファミ通に譲るのには、何の抵抗もないどころか喜ばしいことだと考えていた。

 

 

「ファミ通さん、ネプギアさんの気持ちを受け取ってはいただけないでしょうか」

 

 

 ネプギアに続きイストワールもファミ通に言う。

 

 

「イストワール様までそう言うなら……でも、本当にいいんですか?」

 

 

 念の為、再度確認を取るファミ通に、「はい、勿論です」と笑顔で頷くネプギア。

 

 

「ありがとうございます。大切に使いますね」

 

 

 ファミ通の感謝の言葉に、「受け取って貰えてよかった」と胸をなでおろすネプギア。

 

 

「それじゃあ、みんな作戦会議しよっか」

 

 

 ネプギアがそう言うとユニ、ロム、ラム、プラエが集まる。

 

 

「まずは、周辺地形のデータを集めるね」

 

 

 ネプギアはそう言いながら右手の人差し指で魔方陣を描いて魔法を唱える。

 

 

「タダイマサンジョウシマシタ」

 

 

 声とともに魔方陣からネプギアンダムが現れる。

 

 

「あー! ネプギアンダムだー!」

 

 

 ラムは嬉しそうにネプギアンダムの登場を歓迎する。

 

ロムも、「こんにちわ、ネプギアンダム」と挨拶をすると、「コンニチワ」とネプギアンダムは返事をしながらニコォと笑顔を浮かべる。

 

ユニは困り顔で、「その微妙な笑顔なんとかならないの……」と呟く。

 

 

「それより、何でここでネプギアンダムが出てくるのよ?」

 

 

 ユニが訝しげにネプギアに質問をする。

 

 

「……もしかして、ネプギアンダムもドローン?」

 

 

 プラエがそう言うと、「あたりっ。この子に偵察してもらうんだ」とネプギアは正解したプラエに向かって嬉しそうに言う。

 

 

「やったぁ」

 

 

 プラエも嬉しそうに小さくガッツポーズをする。

 

 

「偵察機ね。でも、何でネプギアンダム? デザイン的にダサくない?」

 

 

 ユニはネプギアンダムの用途を分かったが、デザインに疑問があるらしい。

 

 

「最初は、私も変なロボットだと思ったけど、よく見るとこれはこれで愛嬌があると思うんだ」

 

「そう? アタシにはちょっと分からないけど……」

 

 

ネプギアの意見にユニは首を捻る。

 

 

「なにより、このシンプルなデザインは生産性に優れてると思うんだよね」

 

 

 ネプギアの説明を受けて、「……確かにこのデザインなら、アタシでも作れそうね」とユニはネプギアンダムをしげしげと観察する。

 

確かに単純な設計で、作るのは至極簡単そうであった。

 

 

「見た目やスペックも大事だけど、機械って言うのは信頼性と整備性、あと操作性の高さと拡張性の多さが大事だと思うんだ」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、おもむろにネプギアンダムの頭を引っこ抜く。

 

 

「わぁ、首が取れた」

 

 

 驚きの声を上げるプラエ。

 

 

「壊しちゃったの?」

 

 

 ロムもネプギアの行動に驚きを隠せないようだ。

 

 

「これから換装するんだよ」

 

 

 ロムの疑問に答えるネプギア、「かんそー? 乾かすの?」とラムが首を傾げると、ロムは、「感想文かも……(かきかき)」と自分の意見を言う。

 

 

「そうじゃなくて、偵察行くのにお着替えするの」

 

 

 ネプギアは換装を分かりやすく説明すると、手慣れた手つきでネプギアンダムのパーツを、まるでプラモデルのように差し替えて行く。

 

 

「できた」

 

 

 ものの数分でパーツの差し替えは完了する。

 

そこには姿の変わったネプギアンダムがあった。

 

 

「頭がぺっちゃんこ(ぺったん)」

 

 

 ロムがそう言うと、「ホントだ。どら焼きみたい」とラムが言う。

 

彼女達の言う通りネプギアンダムは頭が薄いドーム型になっていた。

 

 

「これは【レドーム】って言って、このドームの中にレーダが入っててドームで保護しているの」

 

 

 ネプギアがロムとラムに説明をする。

 

 

「この羽はフライトユニットね」

 

 

 ユニがネプギアンダムに付いた翼を指差す。

 

 

「うん、これで空から偵察してもらうんだ」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、Nギアからカタパルトを出して地面に設置する。

 

するとネプギアンダムは、「ハッシンジュンビニハイリマス」と言って、そのカタパルトに乗った。

 

 

「進路オールクリア。ネプギアンダムRタイプ射出します!」

 

 

 ネプギアはオペレーターのような口調でそう言うと、「リョウカイ。パインサラダキタイシテルゼ」とネプギアンダムが答える。

 

 

「なんでそこで死亡フラグなのよ……」

 

 

 ユニが右肩を落としながらツッコミを入れるが、カタパルトに乗ったネプギアンダムは勢いよく空に発射される。

 

 

「おお~」

 

「すごーい」

 

 

 ロムとラムは驚きで目を丸くする。

 

 

「あのネプギアンダムも、ここまでやるとカッコよく見えるから不思議ね」

 

「ユニちゃんもそう思う! Rタイプって言うのはね、レコノイター【Reconnoiter】タイプの略で他にも27種類のミッションパックがあって、主力攻撃から後方支援、遊撃戦闘、強襲や水中任務とか多彩な運用ができるんだよ」

 

 

 ユニの感想に、ネプギアは喜々として早口で説明し始める。

 

プラエはそんなネプギアを見ながら、「ネプギアお姉さんが、またオタクの人になった」と少し困った顔をした。

 

 

「ネプギアンダムにそこまで情熱注げるのアンタぐらいよ……」

 

 

 ユニはため息を吐きながらそう言った。

 

 

「さて、ネプギアンダムが偵察している間に、私達は作戦立てちゃお」

 

 

 ネプギアがそう提案すると、ユニも、「そうね。敵は恐らく私達より数が多い上にボスも控えているわ。ここは作戦を立てて、綿密なコンビネーションで行くべきね」と自分の意見を言う。

 

 

「私もユニちゃんと同じ意見だよ」

 

 

 慎重に攻めるように提案するユニに、同意するネプギア。

 

 

「「「めんみつなこんびねーしょん???」」」

 

 

 ロムとラムとプラエが声を揃えて首を傾げる。

 

 

「あんみつとは違うの?」

 

「ちょっと、違うかな……」

 

 

 ラムが当てずっぽうで意見を言うが、ネプギアが丁寧に否定する。

 

 

「じゃあ、わたがしみたいなの!」

 

「食べ物から離れなさい」

 

 

 ラムは負けずに更に当てずっぽうな意見を言うが、今度はユニがピシャリと否定する。

 

 

「どういうこと、ネプギアちゃん?」

 

 

 ロムは素直にネプギアに意味を尋ねると、「みんなで協力して、計画的に攻めようってことだよ」とネプギアは丁寧に答える。

 

 

「何となく分かったけど、それってどうするの?」

 

 

 ネプギアの説明を理解したラムは特に異論は無いようで、ネプギアとユニに具体的にどう行動するかを聞いて来る。

 

 

「むずかしい?(おろおろ)」

 

 

 ロムが不安そうにネプギアを見上げると、「プラエに出来るかな……」とプラエも不安そうにネプギアを見上げる。

 

 

「ううん、時間も無いし簡単なので行こうよ」

 

「そうね」

 

 

 ネプギアの意見に頷くユニ。

 

 

「あっ、ネプギアンダムからの偵察データが届いたよ」

 

 

 ネプギアはNギアを取り出してデータを受信する。

 

 

「ふむふむ……地形に目立った変化は無し。大型エネミーのフェンリルは今のところ見当たらないみたい」

 

 

 ネプギアはNギアの画面を見ながら偵察データを確認する。

 

 

「こっちにもデータちょうだい」

 

 

 ユニは自分のゲーム機を取り出すと、ネプギアにデータの転送を要求する。

 

 

「うん、ロムちゃんとラムちゃんとプラエちゃんにもデータリンクするね」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ロムとラムとプラエもそれぞれのゲーム機を取り出す。

 

 

「OK受信したわ」

 

「こっちも来たわ」

 

「わたしも大丈夫」

 

「プラエも出来たよ」

 

 

 ユニ、ラム、ロム、プラエの四人が順番にデータの受信を確認する。

 

 

「まずは敵の正確な位置を確認して、ユニちゃんが狙撃だよね」

 

 

 テキパキとNギアを操作するネプギア。

 

 

「そうね……そこから、こう出るのはどうかしら?」

 

 

 今度はユニがゲーム機を操作する。

 

 

「おおー! これが綿密なコンビネーションなのね」

 

「いたずらみたいで楽しそう(わくわく)」

 

 

 ネプギアとユニの立てた作戦に歓喜するロムとラム。

 

 

「大変そうだけど、プラエ頑張るね」

 

 

 プラエが真剣にゲーム機を眺めながら答えると、「プラエちゃんなら大丈夫だよ。リラックスリラックス」とネプギアが優しく声を掛ける。

 

 

「あれってゲーム機よね?」

 

 

 ゲーム機を操作しながら作戦を練る女神候補生達に首を捻るアイエフ。

 

 

「そう言えば、ギアちゃんがみなさんのも改造したって前に言ってたです」

 

 

 コンパは、以前にネプギアが他の女神候補生の携帯端末も改造していた、と言う話を思い出した。

 

 

「あれから改造を続けて、今は小規模ですけど戦術データリンクも出来るんですよ。プラエちゃんのは元々私の予備ですから」

 

 

 話を聞いていたネプギアは、嬉しそうな顔をしてコンパの疑問に答える。

 

 

「どこをどうすれば、そんな携帯端末で軍隊並みデータ通信が出来るのよ…」

 

 

 呆れ顔のアイエフ。

 

 

「ネプギア様って、機械が好きってだけじゃなくて技術も相当なものなんですね」

 

 

 ファミ通は、いそいそとメモを取る。

 

 

「作戦は立て終わりましたか?」

 

 

 イストワールは、ネプギア達に作戦の進捗を確認する。

 

 

「はい」

 

 

 頷くネプギア。

 

 

「完璧よ。わたし達の綿密なコンビネーションを見せてあげるわ」

 

「完璧(ぶいっ)」

 

 

 ロムとラムはVサインで応える。

 

 

「ふふっ……では、よろしくお願いします」

 

 

イストワールはその姿を微笑ましく思い、軽く笑みを浮かべるとネプギア達に戦闘のお願いをする。

 

 

「みんな、いつも通りに行こうね」

 

 

 ネプギアがそう言って右手を出すと、ユニ、ロム、ラムが順番に手を重ねて円陣を組む。

 

プラエは、「ふぇ?」と戸惑うが、ラムが、「こうするのよ」と右手で自分の左手の上にプラエの右手を乗せる。

 

 

「ファイトーー」

 

「「「「おーーー!」」」」

 

 

 ネプギアの掛け声に合わせて、女神候補生四人の声が重なる。

 

やや遅れて、プラエが「お、おーー」とそれに続く。

 

 

「いいねいいね。いかにもフレッシュな感じで絵になるよ」

 

 

 ファミ通はその光景をカメラに収める。

 

 

「じゃあ、行ってきます」

 

 

 円陣を解くと、ネプギアは前進をする。

 

プラエも、「行ってくるね、あんみつ」と言って、あんみつに手を振りながらネプギアの真後ろについていく。

 

 

「「行ってきまーす」」

 

 

 ロムとラムも手を振りながらネプギアの後ろに付いて行く。

 

その後ろには、ネプギアがファミ通の為に作ったドローン三体が取材の為に、ついて来た。

 

 

「わー! エビフライがついてくるわ」

 

 

 ラムが楽しそうにドローンを指差すと、「私達一人一人を認識して自動追尾する設定なんだよ」ネプギアがラムに説明をする。

 

 

「たのしい」

 

 

 ロムがそう言うと、ロムとラムはジグザグに動いたりクルクル回ったりして、ついてくるドローンの動きを楽しむ。

 

 

「いえーい! ラムちゃんでーす!」

 

「ロムちゃん、だよ(ぶいっ)」

 

 

 ロムとラムはドローンに向けてVサインをする。

 

 

「ほら、遊んでないで早く行きなさい」

 

「「はーい」」

 

 

 ユニに促されて先に進むロムとラム。

 

 

「ユニ様は行かないんですか?」

 

 

 ファミ通は動き出さないユニに質問をする。

 

 

「ここから狙撃するわ」

 

 

 ユニがそう言うと、その手にライフルが現れる。

 

彼女は銃器の扱いに長けており、長距離からの射撃が主な攻撃手段だ。

 

その為、ユニの携帯倉庫のポケットの中には、銃器の類と弾丸が大量に収められている。

 

射撃攻撃は単純な威力は近接攻撃に劣るが、弱点をピンポイントで狙った攻撃は、時に近接攻撃よりダメージが出る。

 

このライフルはネプギアの改造により、モード変換で長距離狙撃、機関銃、散弾、ビーム射撃がこなせるハイスペック銃である。

 

 

「ええっ! この距離から? 敵なんて影も形も見えませんよ?」

 

 

 

 驚くファミ通に、「ユニ様の狙撃は超一流よ。見てなさい」とアイエフが、「百発百中です~」とコンパが自信満々に言う。

 

 

「でも、見えない敵をどうやって狙撃するの?」

 

 

 ファミ通の疑問に、「これよ」とユニは銃に大型のスコープを取り付ける。

 

 

「そのスコープはプラネテューヌ製ですね」

 

 

 イストワールは、ユニの取り付けたスコープがプラネテューヌ製であることに気付く。

 

 

「はい、ネプギアに誕生日プレゼントで貰ったんです。悔しいですけど、照準器の性能はプラネテューヌが一歩上ですね」

 

 

 ユニは目上の者には礼儀正しい。

 

女神であるユニにとって、イストワールは目上と言うわけではないが、人生の先輩である。

 

尊敬する姉も、イストワールの政治手腕を高く評価しているので、尊敬の念を持って接している。

 

 

「例によって改造済みですか?」

 

 

 イストワールは、ネプギアの魔改造を子供のイタズラのように苦笑交じりに言う。

 

 

「ええ、私に合わせてかなり細かい調整してくれたんですよ」

 

 

 ユニはイストワールと話しながら、スコープとゲーム機をコードで繋げる。

 

 

「ユニちゃん、今EWAC【イーワック】で、そこから6キロ先に敵を確認したよ」

 

 

 ユニのゲーム機から、ネプギアの声がする。

 

彼女達が持っている携帯ゲーム機には、ハンズフリーで使用者の声を拾って通話できる機能が備わっている。その為、ケースやポシェットに収納した状態でも会話が可能なのだ。

 

 

「オッケー」

 

 

 ユニがそれに答えると同時に、ゲーム画面がレーダー画面になり、無数の赤い点が三十個以上表示される。

 

 

「この数……恐らく、フェンリルの手下ね」

 

 

 ユニの言う通り、レーダーの端にモンスターの姿がCGで描かれていた。

 

その姿は、先程イストワールが見せたフェンリルの小型版と言ったところであった。

 

 

「ファミ通、このスコープ覗いてみて」

 

 

 ユニがそう言うと、ファミ通が銃のスコープを覗く。

 

 

「おおっ、敵の姿が見える。どうして? 敵は6キロメートルも先ですよね?」

 

 

 スコープの中には小型の狼の姿がバッチリ捉えられていた。

 

CGではあるが、リアルタイムで動くその狼の姿にファミ通は驚きを隠せない。

 

 

「ネプギアが前衛で敵の細かい位置を確認して、そのデータをスコープとリンクさせて敵の姿をCGで映してるのよ。細かい計算とかはネプギアが作った機械が全部やってくれるわ」

 

 

 ユニは、驚くファミ通にイタズラっぽくウインクすると、簡単な説明をする。

 

ネプギアンダムが空から大まかな偵察をした後に、ネプギアが実際に接近して詳細なデータを入手するのだ。

 

 

「なるほどなるほど。ネプギア様の偵察のおかげでユニ様の射程が伸びるんですね」

 

 

 ファミ通は、例によって取材のメモを取る。

 

 

「ええ、アタシはお姉ちゃんともクエストに行くんだけど、その時はお姉ちゃんをサポートするのが精一杯だけど、ネプギアと一緒の時は自分の実力以上の力を出せる気がするわ」

 

 

 ユニは、嬉しそうにネプギアとの連携の凄さを、ファミ通に伝える。

 

 

「まぁ、単にお姉ちゃんが凄すぎて、いいところ全部持ってかれちゃうだけなんだけど」

 

 

 そして最後に自分の姉のアピールを忘れない。

 

 

「さて……地形データからすると狙撃ポイントはここね」

 

 

 ユニは携帯ゲーム機を見ながら移動する。

 

ネプギアンダムから得られた地形データと、敵の配置を考慮して最適な狙撃場所を選んだようだ。

 

次に伏せ撃ちの態勢を取り、銃を銃身に付いた二脚のバイポッドで安定させると、その横にゲーム機を置く。

 

そして、スコープを覗き込みレティクル動かして、CGで描かれた狼の一匹を照準の中央に入れる。

 

 

「ターゲットロックオン」

 

 

 敵影を完全に捉えたユニは自信満々にそう言うと、「ネプギア、敵を捉えたわ。アタシはいつでもいいわよ」とゲーム機の通信機能でネプギアに伝える。

 

 

「ちょっと待って、今ロムちゃんとラムちゃんが準備してるから」

 

 

 ネプギアがユニに応答すると、「ネプギアさん、みなさんにも戦況を伝えたいので、私にもリンクしていただけますか」とイストワールがユニのゲーム機に向かってネプギアに話しかける。

 

 

「わかりました」

 

 

 ネプギアがそう言うと、イストワールがキーボードを叩く。

 

いつものようにホログラム画像が出ると、ユニのゲーム機と同じようにレーダーとモンスターの情報が出て来た。

 

ネプギアのNギアとリンクしたデータをホログラムで映し出したのだ。

 

 

「おおー、これで取材が捗ります」

 

 

 状況が分かりやすくなって嬉しそうなファミ通。

 

 

「ところで、いーわっくってなんですか?」

 

 

 コンパは先程ネプギア言った、EWAC【イーワック】のことが分からず首を傾げる。

 

 

「イーワックとは、Early Warning And Control【アーリー、ワーニング、アンド、コントロール】)の略です」

 

「あーりーわーにんぐ……?」

 

 

 イストワールの説明に首を傾げるコンパ。

 

流石にこれだけでは理解できないようだ。

 

 

「早期警戒管制と呼ばれ、周囲の敵を探知・分析して味方にその情報を与えるシステムです。簡単に言うと、高性能な全周囲レーダーですね」

 

 

 続けて説明するイストワールに、「何となくわかりましたー」とコンパは答える。彼女でも少し理解できたようだ。

 

ただ、あんみつは首を傾げながら、「よくわかりませんが、機械というのは便利なものですね」と答える。

 

 

「主な効果ですが、EWACで敵を捕捉することで、味方の命中、回避に補正を与えることができます。又、今回のネプギアさんとユニさんのように連携すれば後方射撃の射程を伸ばすことも可能です」

 

 

 イストワールが説明すると、「ネプギアのNギアに付いてるのよね多分。どこまで高性能なのアレ……」とアイエフがNギアの高性能さに溜息を出す。

 

 

「このデータはネプギア様が偵察をされた効果ってことですね」

 

 

 ファミ通がデータの解釈をすると、「さっきも見せたけど、このスコープにもリンクしてるから、この距離でも丸見えよ」とユニがスコープを覗きながらそれに追加をするように言う。

 

 

「ユニちゃん、こっちの準備はできたわよ」

 

「ばっちり(びしっ)」

 

 

 ユニのゲーム機から今度はロムとラムの声が聞こえてくる。

 

 

「了解。15秒後に射撃を開始するわ」

 

 

 ユニはそれに答えるとスコープ内で照準を確認する。

 

 

「わかった、お願いね」

 

 

 ネプギアがそう言うと通信が切れる。

 

 

「ふんふん……敵の群れに対して、最前線にネプギア様とプラエちゃん、その後ろにロム様とラム様、そしてその後ろにユニ様って配置だね」

 

 

 ファミ通はレーダーと、ドローンから送られる画像を見ながら敵味方の配置を確認する。

 

 

「敵の数が大分多いけど大丈夫かな?」

 

 

 少し不安そうに言うファミ通に、「心配無用よ。この程度なら十分もあればカタがつくわ」と自信満々で言い切るアイエフ。

 

 

「前のマークツーストライクみたいな大技があるの?」

 

 

 ファミ通の質問に、「ないこともないですけど、使うまでもないですー」コンパが、「この子たちの連携は私やコンパより上よ。刮目してなさい」とアイエフが答える。

 

すると、「あいちゃん、ねぷねぷみたいです~」とコンパが微笑む。

 

二人の女神候補生達への信頼は厚いようだ。

 

 

「そろそろ時間です。静かにして下さい」

 

 

 イストワールの言葉で全員が静まり返る。

 

その数秒後のユニの人差し指が銃のトリガーを引く。

 

 

ズキューン!

 

 

 ネプギアとの通信から、きっちり15秒後に銃声が鳴り響く。

 

 

「どう……なったの?」

 

 

 銃声だけでは何も理解でなかったファミ通が声を出す。

 

 

「画面を見て下さい」

 

 

 そんなファミ通にイストワールがホログラム画面を指差す。

 

画面の端のCGで描かれた狼型のモンスターが射撃の衝撃で吹き飛んでる姿が映っていた。

 

ダメージも表示されており、223もの大ダメージを与えていた。

 

 

「すごい! この距離で当てるなんて!」

 

 

 興奮しながらメモを取るファミ通。

 

 

「しかもヘッドショットよ」

 

 

 ユニが自信満々に付け加える。

 

ヘッドショットとは名前の通り頭に弾を当てることで、大抵の相手に大ダメージを出すことが出来る。

 

射撃攻撃はただ対象に当てるだけではなく、ヘッドショットなどの弱点に命中させるのが重要なのだ。

 

今回は長距離狙撃によるハイドアタックとヘッドショットの組み合わせで大ダメージが出たのだ。

 

 

「赤い点が一個消えたですー」

 

 

 敵の倒したことでレーダーの敵反応が一つ消える。

 

コンパは嬉しそうにそれを解説する。

 

 

「流石はユニ様」

 

 

 腕組みして感心するアイエフ。

 

 

「どんどん行くわよ!」

 

 

 ユニは銃を動かすと、次のターゲットに狙いを定める。

 

長距離狙撃な上に、前衛にはネプギア達がいるので、敵の接近を心配せずに済むので狙撃場所を移動することは無い。

 

 

ズキューン!

 

 

 再びユニの銃が火を噴く。

 

 

「また当たった……」

 

 

 レーダーの赤い点の消滅で命中を確認して驚くファミ通。

 

先程と同じく、ヘッドショットとハイドアタックを組み合わせた221の大ダメージで狼が一体戦闘不能になる。

 

 

「そろそろ、向こうも動くかしらね」

 

 

 ユニの言う通り、レーダの赤い点がこちらに向かって来ていた。

 

狙撃に気付いた狼の群れが、弾の飛んで来る方向と音を聞き分けて、襲い掛かって来たのである。

 

 

「わわっ! 速いです~」

 

 

 そのスピードの驚くコンパ。

 

 

「大丈夫、ネプギア達がいるわ」

 

 

 それに対して冷静に構えるアイエフ

 

 

「ファミ通は、取材の為にネプギア達の後を追った方がいいわよ」

 

 

ズキューン

 

 

 ユニも慌てる様子もなく、狙撃を続ける。

 

その狙いは正確で、こちらに向かって走っている狼にも問題なくヘッドショットで命中をしていた。

 

気付かれたのでハイドアタックはなくなったが、それでも120の大ダメージが出ていた。

 

 

ズキューン

 

 

 更にもう一発弾を放つユニ。

 

先程と同じ狼にヘッドショットを当てて、115のダメージを与え戦闘不能にする。

 

 

「うん、そうするよ」

 

 

 ファミ通はユニの言う通り、ユニ用のドローンを一体その場に残すと、ネプギア達の居る方向に走り出す。

 

 

***

 

 

「ユニちゃんの狙撃が始まった……」

 

 

 ユニ達の先に居たネプギアは、ユニの狙撃を確認する。

 

その隣では、プラエが双眼鏡を使って狼の群れを探していた。

 

 

「敵の動きは……予想通り一直線にこっちに向かってる」

 

 

ネプギアはNギアのレーダーで敵の動きを確認する。

 

 

「来たよ! ネプギアお姉さん」

 

 

 プラエは双眼鏡で狼の群れを確認する。その数は十匹以上。

 

ネプギアは、「プラエちゃん、伏せて」と言って、プラエと二人で素早く身を伏せて息を殺して気配を断つ。

 

 

「ワンワンワン!」

 

 

 狼の群れがネプギアの目の前を通る。

 

 

 群れの列が丁度中央にさしかかったと同時に、ネプギアは左手にボムを呼び出し、「ごめんなさい!」と狼の群れに投げつける。

 

 

ドカーーーン

 

 

 狼の列のど真ん中にボムの爆発が起きる。

 

 

「キャイ~ン!」

 

 

 悲鳴を上げる狼達。

 

爆発に巻き込まれた狼達に、80以上のダメージが当たる。

 

それと同時に奇襲をかけるネプギア。

 

 

「はあっ!」

 

 

 ネプギアのビームソードでの袈裟斬りが狼の一匹を切り裂く。

 

 

「キャン!」

 

 

 斬りつけられた狼が96ダメージを受ける。

 

更に、少し離れた位置から、「プラエもいるよ!」とプラエが同じ狼に鎖で追撃をかける。

 

 

「キャイン!」

 

 

 鎖で叩かれた狼は59ダメージを受けて戦闘不能になる。

 

 

「ここからは、私が相手です!」

 

 

 ネプギアはビームソードを構えて狼の群れと対峙する。

 

ネプギアが前衛に立ち、中衛でプラエが援護するフォーメーションだ。

 

 

「ウー! ワンワン!」

 

 

 ネプギアに対して威嚇をする狼の群れ。

 

 

「たあっ!」

 

 

 ネプギアは狼に恐れることなく果敢に向かっていく。

 

ネプギアの素早い突きが狼に突き刺さると、「ギャイン!」と悲鳴と共に92ダメージを与える。

 

 

「とどめは任せて!」

 

 

 プラエがそう言うと、炎を纏った鎖が狼を焼いて、61ダメージを与え狼を戦闘不能にさせる。

 

 

「ワオーン!」

 

 

 しかし、ネプギアの攻撃後の硬直を狙って、狼の一匹がネプギア左側から飛び掛かる。

 

 

ズキューン

 

 

 飛び掛かってきた狼にユニの射撃が命中し、82のダメージが当たる。

 

ネプギアへ飛び掛かる敵を迎撃する援護射撃だ。

 

流石のユニも援護射撃ではヘッドショットは出せずにダメージは落ちてしまう。

 

射撃の当たった狼は、「キャイーン」と悲鳴を上げて引っ込む。

 

 

「たあっ!」

 

 

 体勢を立て直したネプギアは、再び狼達に攻撃を仕掛ける。

 

その攻撃に合わせてプラエが追撃をし、ネプギアの隙をユニが援護射撃でカバーするというコンビネーションで次々と狼を撃破していく。

 

彼女達が六匹目の狼を倒した頃に、後方から狼の援軍が更に十匹程追いついてくる。

 

 

「ワンワンワン!」

 

 

 狼達は数に物を言わせネプギアを取り囲む。

 

ネプギアの正面に立った狼が飛び掛かってくる。

 

 

「ワオーン!」

 

 

「きゃっ!?」

 

 

 狼の鋭い牙による噛みつきがネプギアに命中する。

 

ネプギアは21ダメージを受けてHPゲージが一割程減少してしまう。

 

 

今度はネプギアの左側から狼が襲い掛かる。

 

 

「ワォォォォォン!」

 

「あうっ!?」

 

 

次は右側から。

 

 

「ウォォォォォン!」

 

「いたっ!」

 

 

更に後ろから。

 

 

「グォォォォォ!」

 

「くぅっ!?」

 

 

 ネプギアは狼達による連続の噛みつき攻撃で23、25、30と連続でダメージを受けてしまう。

 

一撃は小さいが、連続で受けるとダメージが溜まる上に、側面や背後から攻撃を受けるとダメージが増えてしまう。

 

 

「いたた……」

 

 

 合計で100以上のダメージを受けたネプギアのHPゲージは、既に半分を切って黄色になっていた。

 

もう一回、四方からの連続攻撃を受けたらHPが0になってしまうかもしれない。

 

 

「グルルルル」

 

 

 尚もネプギアを取り囲む狼の群れ。

 

周りを囲んで、攻撃するタイミングを伺っているようだ。

 

 

「ネプギアお姉さん、これを!」

 

 

 少し離れた位置に居たプラエが、ヒールドリンクを鎖に巻き付けてネプギアの方に投げつける。

 

ネプギアはそれを見事にキャッチして、一気に飲み干すとネプギアのHPゲージが八割まで回復する。

 

プラエは鎖を使うことで、離れた仲間にもアイテムを使える【アイテムスロー】の特殊技能を習得していた。

 

 

「……そろそろいいかな?」

 

 

 ネプギアは周囲を見渡し、狼の群れが全てこの場所に集まったことを確認する。

 

 

「えいっ!」

 

 

 ネプギアは左手に出したボムを正面に投げつける。

 

 

「キャイン!」

 

 

 爆発で、正面と側面の狼達に80前後のダメージが当たり、爆発の音と爆風に怯む狼たち。

 

その合間にネプギアは後方に逃げ出す。

 

 

「グルルル……」

 

 

 しかし、背後にも狼はいる。

 

ネプギアに向けて狼が飛び掛かる。

 

 

「時よ!」

 

 

 プラエが叫ぶと同時に、ネプギアに向けて飛び掛かって来た狼の動きが急激に遅くなる。

 

ネプギアは素早くステップを踏んで、狼の飛び掛かりを避けると、「はあっ!」と掛け声と共に、動きの遅くなった狼を連続で狼を切りつける。

 

 

「キャィィィィン!?」

 

 

 プラエの時間操作を使った連続攻撃だ。

 

ネプギアは一気に三回分の攻撃を叩き込み、合計で276のダメージを与える。

 

一瞬で戦闘不能になる狼。

 

 

 しかし、もう一匹の狼が素早くネプギアの逃げ道を塞ぐ。

 

 

ズキューン!

 

 

 同時に銃声が鳴り響いて、ネプギアの逃げ道を塞いでいた狼にヘッドショットで126ダメージが当たる。

 

 

「どいて下さい!」

 

 

 続けて、ネプギアの斬り抜け攻撃が狼に命中する。

 

92ダメージが当たり、逃げ道を塞いでいた狼が戦闘不能になると、ネプギアはプラエと合流する。

 

そして、プラエの手を引いて、「シルフィードフェザー!」とスピードアップの魔法を自分にかけると、全速力で後退をする。

 

 

「ワォォォォォン!」

 

「ウォォォォォン!」

 

 

 ボムの怯みから体勢を立て直した狼の群れが、ネプギア達を追いかける。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギアが逃げている先にはロムとラムが待っていた。

 

 

「そろそろ、わたし達の出番かしら」

 

 

 ラムの手にはペン型の杖が握られていた。

 

 

「ちょっと怖い(ぶるぶる)」

 

 

 狼の群れを恐れるロム。

 

その手にはラムと同じペン型の杖が握られていた。

 

ロムとラムは魔法が得意なので魔力を高める杖を装備している。

 

携帯倉庫のポーチの中には、それに合わせてペンネルや魔法の触媒が入っている。

 

ロムが回復と補助、ラムが攻撃魔法を主に使用する。

 

ちなみにロムは右利きでラムは左利きである。

 

 

「大丈夫よロムちゃん。計画通りじゃない」

 

 

 ラムはそう言いながらロムの手を握る。

 

 

「うん、ありがとうラムちゃん(ぽかぽか)」

 

 

 ラムに手を握られて安心するロム。

 

 

「ネプギアが来たわ!」

 

 

 目視で狼の群れから逃げるネプギアを確認するラム。

 

 

「ワオォォォン!」

 

 

 咆哮を上げて走る速度を上げる狼。

 

じりじりとネプギアとの差が縮まっていく。

 

ネプギアを射程内に捉えた狼が、「ガアアアア!」と叫びながらネプギアの背後に飛び掛かる。

 

 

バンッ!

 

 

 しかし、狼は壁に当たったように弾き飛ばされる。

 

狼は、「キャインッ!」と悲鳴を上げると地面に崩れ落ちる。

 

 

「バーカ! そこには、わたしとロムちゃんが結界を張ったのよ」

 

 

 狼に向けてあっかんべーをするラム。

 

 

「目には見えない、わたし達しか通れない壁があるんだよ(かちこち)」

 

 

 モンスターに言葉は通じないが、狼に向かって丁寧に説明するロム。

 

ネプギアがユニに言った、ロムとラムの【準備】とはこのことであった。

 

 

「ワンワン!」

 

 

 ロムとラムに向かって吠える狼。

 

 

「きゃあ(びくびく)」

 

 

 その声に驚くロム。

 

 

「大丈夫よロムちゃん、こーゆーのは負け犬の遠吠えって言うのよ」

 

 

 しかし、ラムが負けずに狼を挑発する。

 

強気で勝気でいたずら好きのラムには、絶好のシチュエーションであった。

 

 

「グルルルル!」

 

「ワンワン!」

 

 

 言葉は通じないが、雰囲気は伝わったのか怒気を強める狼の群れ。

 

ユニが誘き寄せて、ネプギアが盾になり一か所に集められた狼の群れが、誘導された壁の前で渋滞を起こしていた。

 

 

「ラムちゃん、チャンスだよ(ぴかん)」

 

 

 その姿にロムが目を光らす。

 

 

「オッケーよ、ロムちゃん」

 

 

 ラムは力強く頷く。

 

同時に、二人のポーチからペンネルが射出される。

 

ペンネルは二人の足元に魔方陣を描き始めた。

 

 

「大地の力よ!」

 

 

 ロムが杖を高く掲げると、杖の先端が茶色く光る。

 

 

「炎の力よ!」

 

 

 ラムも杖を高く掲げる。今度は杖の先端が赤く光る。

 

 

「「……大地に眠る熱き炎よ……」」

 

 

 ロムとラムは呪文を唱えながら、くるくると舞い踊り杖をバトンのように回す。

 

それに合わせて、ペンネルで描かれた足元の茶色い魔方陣と赤い魔方陣が、光り輝きグルグルと回る。

 

 

 

ズゴゴゴ……

 

 

 

 地面が揺れ、狼の群れの足元の地面が大きく盛り上がる。

 

 

「ワンワン!」

 

 

 地形の変動に驚く狼の群れ。

 

 

「もう逃げ場はないわよ」

 

「燃え尽きちゃえ(めらめら)」

 

 

 ロムとラムは踊りを止めて、杖の先を狼の群れに向ける。

 

 

「「山となりて敵を焼き尽くせ! ヴォルガノン!!」」

 

 

 ロムとラムの声が重なると、隆起した地面の中心が大きく割れる。

 

 

ボオオオオオ!

 

 

 その割れ目から巨大な炎が吹き上がる。

 

 

「キャィィィィン!」

 

 

 炎に焼かれる狼の群れ。

 

 

 【ヴォルガノン】はあ炎と大地の合成魔法で、小規模な火山を作るルウィーに伝わる古の魔法。

 

範囲や威力は絶大だが合体魔法であることと、詠唱時間が長いのが難点。

 

女神候補生達は連携をして、ヴォルガノンを最大限活用するシチュエーションを作っていたのだ。

 

 

ゴゴゴゴゴ……ドン、ドン、ドン、ドカーーーン!

 

 

 火山の爆発で400近いダメージを受けて次々と戦闘不能になる狼。

 

 

「うわー、凄いね」

 

 

 追いついて少し遠くから様子を見ていた、ファミ通が感嘆の声を上げながら近づいてくる。

 

 

「どーよ。これがわたしとロムちゃんの魔法の力よ」

 

「効果は抜群(にこにこ)」

 

 

 揃ってVサインを決めるロムとラム。

 

 

「ネプギア様も凄かったけど、他の候補生のみんなも凄いんだね」

 

 

 ロムとラムを撮影しながら感心するファミ通。

 

 

「ネプギア様の活躍もドローンで見てたよ。見事な誘引だね」

 

 

 ファミ通は、ネプギアがこの場所に全ての狼を誘い込んだことを褒める。

 

すると、「騙したりするのって得意じゃないんですけど、みんなと一緒の作戦だと上手く行くんですよ」とネプギアが答える。

 

ネプギアは嘘などは得意ではないが、みんなで協力する作戦であれば上手に動くことが出来る。

 

 

「本当に凄いですね。あれだけいた敵が五分と経たずに全滅ですよ」

 

 

 ファミ通は感心しながら、今までの戦闘をメモに書いている。

 

狼の群れは全て戦闘不能になり、消滅をしていた。

 

 

ビービービー!

 

 

 ネプギアの右太ももに付いた、ホルスターに入っているNギアから警報音が鳴り響く。

 

 

「ネプギアンダムから緊急警報! エリア内に巨大反応接近! パターン赤。ターゲットのモンスターだよ」

 

 

 ネプギアは、Nギアからブレイン・マシン・インターフェイスを通じて伝達された情報を全員に伝える。

 

上空のネプギアンダムがボスの接近を捉えたのだ。

 

 

「速い!?」

 

 

 レーダーで敵の動きを追っていたユニは、敵の速度に驚きの声を上げる。

 

その言葉通り、今までの小型モンスターの倍の速度で迫っていた。

 

 

「大丈夫、私が食い止めるから!」

 

 

 ネプギアは、Nギアから聞こえてきたユニの驚きの声にそう答えると、フェンリルに向かって駆け出す。

 

 

「ワォォォォォン!」

 

 

 ネプギアの視界に、全長3メートルはあるフェンリルの巨体がもの凄い勢いで迫って来る。

 

 

「あなたの相手は私です」

 

 

 ネプギアはビームソードの剣先をフェンリルに向けて構える。

 

 

「グオオオオオン!」

 

 

 フェンリルは走る勢いを落とさずに、ネプギアに飛び掛かってくる。

 

フェンリルの右手の爪がネプギアに襲い掛かる。

 

 

「くっ!」

 

 

 すかさず刀身でフェンリルの爪を受け止めるネプギア。

 

 

カキーーンッ!

 

 

ズザザザザ!

 

 

 ネプギアの体が後方に押し込まれる。

 

ビームソードで防御をしていたが、それでも62のダメージを受けて、HPゲージが四分の一ほど減少してしまう。

 

そのまま鍔迫り合いに持ち込むが、フェンリルの力に押し負けそうになる。

 

 

「ぐぅぅぅ……強い……」

 

 

 

 ネプギアは足に力を籠めて踏ん張る。

 

 

ズキューン!

 

 

「ガウッ!?」

 

 

 フェンリルの頭に弾丸が命中する。

 

ユニの狙撃である。

 

 

「捉えたわ! そこっ!」

 

 

 後方のユニは、巨大なフェンリルに対して姿勢を立ち撃ちに変えて狙撃をしていた。

 

 

ズキューン! ズキューン!

 

 

 ネプギアが攻撃を受け止めたことにより、動きが止まったフェンリルに対して、ユニは二発目三発目と連続で撃ち込む。

 

その弾は見事にフェンリルの頭に当たり、120以上のダメージが三回、合計370以上のダメージが当たる。

 

 

「グルルル!」

 

 

 たまらず後ろに飛び退くフェンリル。

 

 

「流石はユニちゃん」

 

 

 ネプギアは態勢を立て直すと、ユニの精密な射撃に感嘆する。

 

 

「ネプギアちゃん、頑張って!」

 

「ネプギア頑張れー!」

 

 

 ネプギアを追いかけて来た、ロムとラムが声援を送る。

 

 

「今回もカッコイイところ見せて下さいね」

 

 

 ファミ通もその後について来ていた。

 

 

「ネプギアお姉さん、プラエが牽制するから!」

 

 

 プラエがそう叫ぶと、プラエの両指から12本の鎖が伸びる。

 

その一本一本がフェンリルを追う。

 

フェンリルは俊敏な動きで鎖を避けていく。

 

 

「とびでるよ!」

 

 

 ロムがネプギアに向けて援護魔法を使う。

 

【とびでるよ】は、ロム専用の攻撃力アップの魔法。

 

それに合わせてネプギアのビームソードの刃が太くなる。

 

 

「捉まえた! そこです!」

 

 

 プラエの牽制で、フェンリルの動きを読んだネプギアが一気にフェンリルとの距離を詰める。

 

そして、プラエの牽制を避けきったと思っていたフェンリルの着地と同時に、「フォーミュラーエッジ!」とネプギアが斬りかかる。

 

 

「グオオオオオン!」

 

 

 ネプギアの連続斬りがフェンリルを切り裂き、合計で505のダメージが当たる。

 

ロムの補助魔法の効果も抜群だ。

 

 

ズキューン!

 

 

 更に立て続けにユニの援護射撃がフェンリルの頭に命中し、更に119ダメージで合計600以上ダメージが当たる。

 

ネプギアとユニ、距離は離れているが息の合った連続攻撃である。

 

 

「ワォォォォォン!」

 

 

 しかし、ボスモンスターはこれぐらいでは怯まない。

 

前足を振りかざして反撃をしてくる。

 

 

「……っ!」

 

 

 ネプギアは素早く左手に防御の魔方陣を張ってフェンリルの攻撃を受け止める。

 

 

ガキンッ!!

 

 

「くうっ!」

 

 

 苦悶の表情を浮かべるネプギア。

 

フェンリルのパワーは凄まじく、防御の魔方陣でガードをしても58ダメージ受けてしまい、今まで蓄積したダメージと合わせてネプギアのHPゲージが半分以下まで下がってしまう。

 

フェンリルは、そのままネプギアを切り裂こうと前足に力を込める。

 

 

「うぅぅぅ……」

 

 

 ネプギアの左手が徐々に下がり、フェンリルの爪が魔法陣に食い込んでいく。

 

このまま押し切られて切り裂かれたら、追加ダメージを受けてしまい瀕死の重症は免れない。

 

 

ズキューン!

 

 

「ネプギアお姉さんから離れて!」

 

 

 ユニの援護射撃とプラエの援護攻撃がフェンリルに命中する。

 

 

「ガオオオオン!」

 

 

 フェンリルは合計で200以上のダメージを受けるが、先程のように引き下がる気は無いようだ。

 

その間にも爪は魔方陣に食い込んで行き、魔方陣に亀裂が入り始める。

 

 

「まもってあげる!」

 

 

 すかさず、ロムがネプギアに援護魔法使う。

 

【まもってあげる】はロム専用の防御力アップの魔法。

 

ネプギアの左手の防御の魔方陣が大きくなり、亀裂も修復される。

 

 

「はあああ!」

 

 

 援護を受けたネプギアはフェンリルの前足を押し戻す。

 

拮抗するネプギアとフェンリル。

 

防御の魔方陣とフェンリルの爪がぶつかり合い火花を散らす。

 

 

「不意討ちっ!」

 

 

 そこに、いつの間にかフェンリルの真横に忍び寄ったラムが飛び出してくる。

 

 

「アイスハンマー!」

 

 

 ラムがそう言うと、彼女の持つ杖の先が氷に覆われて、巨大な氷のハンマーのようになる。

 

ラムはそれを両手で振り上げて、フェンリルの頭めがけて振り下ろす。

 

スピードSのラムによる一連の流れは、フェンリルといえども反応ができなかったようだ。

 

 

ガンッ!!!!

 

 

 ハンマーがフェンリルの頭に命中すると鈍い音がする。

 

 

 不意を突かれた上に頭部を強打されたフェンリルは一撃で695近いダメージを受けて、「ガアッ!」と悲鳴を上げながら後ろに飛び退く。

 

【アイスハンマー】はラムの杖の先端に魔法で作りだした氷を装着して、思いっきり叩きつける打属性と氷属性の攻撃。

 

 

「大成功ブイッ!」

 

 

 ラムはネプギア達に向けてVサインを送る。

 

 

「ありがとう、ラムちゃん」

 

「流石はラムちゃん(ぶいっ)」

 

 

 ネプギアとロムもVサインを返す。

 

 

「グゥゥゥ……」

 

 

 フェンリルがおぼつかない足取りでフラフラしている。

 

強烈な打撃属性の攻撃が頭部に当たると、脳震盪を起こして短時間だが隙が生まれる。

 

 

ズキューン! ズキューン!

 

 

 すかさずユニがフェンリルの頭を狙撃する。

 

 

「ハンマーチャーーンス!」

 

 

 ラムも大きく振りかぶって再度アイスハンマーで攻撃をする。

 

 

「わたしも攻撃するよ(どかん)」

 

 

 ロムもファイアーアローの魔法でフェンリルを攻撃。

 

 

「ヒール!」

 

 

 ネプギアは減少したHPを回復する為に回復魔法を使う。

 

更に、「ネプギアお姉さん、ヒールドリンクだよ!」とプラエが鎖で回復アイテムをネプギアに渡すと、ネプギアはそれを飲む。

 

ユニ達はフェンリルに1000以上のダメージを与え、ネプギアもHPを最大まで回復して体勢を立て直していた。

 

 

「ラムちゃん、隠れて!」

 

 

 ネプギアがそう言うと、フェンリルは頭を振るわせて意識を覚醒しようとしていた。

 

脳震盪が回復しようとしている兆候だ。

 

 

「うん」

 

 

 ラムは素直にネプギアの後ろに隠れる。

 

ラムはHPと防御力が低いので、このまま前衛に留まるのは危険な為である。

 

 

「ガルルルル!」

 

 

 怒り心頭の表情でラムを睨むフェンリル。

 

ラムのアイスハンマーが相当頭に来たようだ。

 

 

「ふーんだ! ネプギアが守ってくれるから、アンタなんて怖くないわよ!」

 

 

 負けずに、あっかんべーをするラム。

 

 

「グオオオオオン!」

 

 

 ラムに攻撃しようと近づくフェンリル。

 

 

「ラムちゃんは私が守ります!」

 

 

 だが、ネプギアがそれをさせまいと立ち塞がる。

 

ネプギアの体から闘気が放たれ、フェンリルの体に絡みつく。

 

 

「ウゥゥゥ……」

 

 

 ラムに襲い掛かろうとしていたフェンリルは、ネプギアの目の前で止まってしまう。

 

 

「たあっ!」

 

 

 ネプギアはビームソードでフェンリルに斬りかかる。

 

 

キン! カキーーン!

 

 

 フェンリルも前足の爪で応戦し、ネプギアと打ち合いを始める。

 

ラムに近づこうとするフェンリルの動きを妨害するネプギアに、「さすが、ゴックね! 何ともないわ」と感嘆の声を上げるラム。

 

しかし、「ラムちゃん、私が使ってるのゾック【ZOC】だから……」と言葉に間違いがあったのでネプギアに訂正される。

 

流石に振り向く訳には行かないので声だけである。

 

 

「そうだっけ?」

 

 

 首を傾げるラム。

 

 

「うん、Zone of Control【ゾーン、オブ、コントロール】でゾック【ZOC】ね」

 

 

 戦闘中にも関わらず丁寧に説明するネプギア。

 

 

「やーい! やーい! 近づいてみせなさいよー! ネプギアのゾックがあるから近づけないでしょ~!」

 

 

フェンリルを挑発するラム。

 

 

「グルルルル!」

 

 

 悔しそうに唸り声を上げるフェンリル。

 

ゲイムギョウ界にはZOCという能力がある。

 

この能力を持つ者は、周囲の敵の移動を制限する。

 

その為、フェンリルはネプギアの横をすり抜けて後列のロムやラムに接近できない。

 

後衛の仲間を敵の接近から守るのに有効な手段で、ネプギアもタンク役を学んでいく内に身に着けた能力だ。

 

 

ズキューン!

 

 

「ギャイン!」

 

 

 銃声が鳴りフェンリルの頭に銃弾が命中する。

 

 

「遊んでないで攻撃しなさい!」

 

 

 ユニが通信でラムを叱る。

 

 

「もー! アンタの所為でユニちゃんに怒られちゃったじゃない!」

 

 

 フェンリルを指差し怒るラム。

 

 

「ラムちゃん……それ凄い責任転嫁かも……」

 

 

 ネプギアがフェンリルに同情するように言う。

 

 

ズキューン!

 

 

 再び銃弾がフェンリルの頭に直撃する。

 

 

「アンタもよ。ツッコミを入れてる暇があったら戦いなさい! 次遊んだら当てるわよ」

 

 

 ユニは、今度はネプギアを叱る。

 

とっさに、「わわっ! ごめん!」と謝るネプギア。

 

 

「ユニちゃん怖い(ぶるぶる)」

 

 

 ユニを怖がるロムに、「ユニお姉さん、怒ると怖いかも……」とプラエもユニが怖かったようだ。

 

 

「ガアアアアア!」

 

 

 不意打ちされ、挑発され、ZOCで行動を制限された上に無視されたフェンリルは怒り心頭で大きく息を吸い込む。

 

 

「っ! みんな下がって!」

 

 

 その行動に危機感を感じたネプギアは仲間達に下がるように言う。

 

 

「うん!(いそいそ)」

 

 

 大急ぎで後ろに下がるロム。

 

プラエが、「ネプギアお姉さん!」と心配そうな声を出すが、「私に構わず、早くっ!」とネプギアが叫ぶと、「うん」と大人しくロムの後を追って下がる。

 

ラムは、「ほら、ファミ通も!」とファミ通の手を引きながら下がって行く。

 

 

「フォォォォォォ!」

 

 

 フェンリルが息を吐きだすと、白い強烈な冷気が襲い掛かる。

 

 

「アイスブレスっ!?」

 

 

 ネプギアが驚きの声を上げる。

 

アイスブレスとはモンスターが使用する氷属性の必殺技の一つ。局地的な吹雪が対象を襲う。

 

ネプギアは左手に防御の魔方陣を張りアイスブレスに備える。

 

 

「危なかった(ふぅー)」

 

「ギリギリセーフ!」

 

 

 後ろに下がったロムとラムとプラエとファミ通はアイスブレスの範囲から外れて被害を免れた。

 

 

「ああっ! ネプギア様が!」

 

 

 ファミ通が悲鳴を上げると、「ネプギアお姉さん!」とプラエも叫ぶ。

 

 

「くうっっ!」

 

 

 フェンリルがロムやラム達を追わないように、前衛で足止めをしていたネプギアは動くことが出来ずアイスブレスの吹雪に飲み込まれる。

 

左手の魔法陣を盾にして必死に耐えるネプギア。

 

 

「ォォォォォ……」

 

 

 ファンリルのアイスブレスが止まる。

 

アイスブレスの範囲内の地面は完全に凍っていた。

 

ネプギアもアイスブレスを受ける前の位置には立っていたが、ところどころ凍り付いており攻撃を受け止めた左手は完全に凍っていた。

 

 

「……ううっ……」

 

 

 ネプギアは145ダメージを受けてHPゲージが半分以下になって黄色になってしまう。

 

 

「か、体がっ……動かない」

 

 

 更にアイスブレスの追加効果で凍結している為、体が上手く動かない。

 

 

「ガアアアア!」

 

 

 好機と言わんがばかりにネプギアに体当たりを仕掛けてくるフェンリル。

 

 

「きゃああああ!」

 

 

 避けることも防御することも出来ずに吹き飛ばされてしまうネプギア。

 

61のダメージを受けてHPゲージが真っ赤になり、吹き飛ばされたままぐったり倒れ込んでしまう。

 

 

「ネプギアちゃん!」

 

「ネプギア!」

 

 

悲鳴を上げるロムとラム。

 

 

「……」

 

 

 ロムとラムの叫びにもネプギアはピクリとも反応しない。

 

プラエは顔面蒼白で、「そんな……」と両膝をついてしまう。

 

このままタンク役のネプギアが倒れてしまえば部隊は総崩れの危機となる。

 

 

「ウォォォォン!」

 

 

 勝ち誇ったような雄叫びを上げるフェンリル。

 

【次はお前達だ】と言う目でロムとラムとプラエを睨みつける。

 

 

「ひぃん(びくびく)」

 

「な、なによ! アンタなんか全然怖くないんだからね!」

 

「……ネプギアお姉さん、助けて……」

 

 

 ロムとラムとプラエは震えながら後ずさる。

 

 

 フェンリルはじりじりと近づいてくる。

 

 

「しっかりしなさいアンタ達! ネプギアが何の為にアンタ達を後退させたと思ってるの?」

 

 

ズキューン!

 

 

 叱咤の通信と共にユニの援護射撃が飛んでくる。

 

 

「落ち着いて、ロムの魔法か生命の欠片でネプギアを回復させなさい」

 

 

 ユニがそう言うと、「私が食い止めるよ。その間にネプギア様を」とファミ通が一歩前に出て武器を構えて戦闘態勢を取る。

 

生命の欠片とは戦闘不能から回復するアイテムだ。高価ではあるが、このような時の為に必要なので重宝されている。

 

 

「グルルルル……」

 

 

 フェンリルはファミ通に構わずに近づいてくる。

 

 

 フェンリルが、吹き飛ばされて倒れているネプギアの横を通り過ぎようとした時。

 

 

 突然ネプギアが飛び起きる。

 

 

 ネプギアは一瞬の内にフェンリルの横腹に潜り込む。

 

 

「龍昇けぇぇぇぇぇぇん!!!」

 

 

 ネプギアが叫ぶと同時に、フェンリルの横腹に強烈なアッパーパンチをお見舞いする。

 

 

「ギャウンッ!!」

 

 

 不意を突かれたフェンリルはクリティカルヒットとハイドアタックで656のダメージを受けて大きく上空に吹き飛ばされる。

 

ネプギアのHPゲージは真っ赤だが、僅かにHPが残っていたのだ。

 

 

「プラエちゃん!」

 

 

 ネプギアはフェンリルが吹き飛んでいる間に素早くプラエに声を掛けると、「うん! ヒールドリンク」とプラエが鎖で回復アイテムをネプギアに渡す。

 

ネプギアは素早くそれを飲むとHPゲージが三割ほどまで回復する。

 

しかし、まだゲージの色は赤い。

 

 

「ネプギアちゃん!」

 

 

 ロムはその姿に喜びの声を上げ、「もう! 心配したんだから!」とラムは少し怒りつつもネプギアの無事を喜んでいる。

 

ユニは、「まったく……ヒヤヒヤさせてくれるわね」と通信で呟いた。

 

 

「くっ……」

 

 

 だが、ネプギアのダメージは深いようでガクリと片膝を着いてしまう。

 

更にアイスブレスの影響で、まだ所々凍りついていようで体に氷が張り付いていた。

 

 

「は、早く立て直して……」

 

 

 ネプギアは苦悶の表情でロムとラムに指示を出す。

 

 

「うん!」

 

 

 ロムは両手を合わせて回復魔法の詠唱を始める。

 

 

「……光と水よ……わたしの声に応えて……」

 

 

 呪文を唱えると同時に、ペンネルがロムの足元に青白い光の魔法陣を描く。

 

ダメージが大きすぎてネプギアのヒールでは回復量が不足しているので、回復の専門家であるロムの強力な魔法で一気に癒そうというのだ。

 

 

「ガオオオオン!」

 

 

 起き上がったフェンリルは、そうはさせまいと、ロムに狙いを定める。

 

 

「まだ私はやられていませんよ!」

 

 

 しかし、ネプギアはダメージと凍結で自由に動かない体を何とか動かしつつ、フェンリルの前に立ちはだかり動きを止めようとする。

 

ロムの方は強力な魔法だけあって詠唱に時間がかかるのだ。

 

 

「たあっ!」

 

 

 ネプギアはフェンリルを足止めする為に果敢に斬りかかる。

 

 

「グゥゥゥ!」

 

 

 フェンリルは155ダメージを受けて怯むが、「ガウッ!」とネプギアに前足で反撃をする。

 

 

「きゃっ!」

 

 

 フェンリルの引っかき攻撃で31ダメージを受けて、ネプギアの赤いHPゲージが更に減少する。

 

あと一撃食らえばHPは確実にゼロになってしまうだろう。

 

ネプギアはそれでもフェンリルの前に立ち塞がる。

 

 

「グルルル……」

 

 

 唸り声を上げて次の攻撃に備えるフェンリル。

 

 

(次に攻撃したら、反撃で倒されちゃう……でも、ヒールを使う隙もないし、プラエちゃんからアイテムを受け取る隙もない……)

 

 

 緊張した顔でフェンリルに対峙するネプギア。

 

 

ズキューン!

 

 

 そこに銃声が響き、フェンリルの頭に銃弾が当たり123ダメージが当たる。

 

ユニの狙撃である。

 

 

「ネプギアに近づかないでよ! エクスプロージョン!」

 

 

ドカン! ドカン! ドカン!

 

 

 同時にラムが杖を掲げると、フェンリルの周囲に大爆発が起こる。

 

【エクスプロージョン】は炎系の攻撃魔法、大爆発が対象を包む。

 

フェンリルは368ダメージを受けつつ、爆発の炎から逃れる為に後ろに飛びのく。

 

 

「もっとネプギアお姉さんから離れて!」

 

 

 プラエが両指の鎖をフェンリルに向けて放つ。

 

鎖は一本一本正確にフェンリルを追い立てて、フェンリルに回避を強要させる。

 

 

「ウゥゥゥゥ!」

 

 

 あと一歩のところで邪魔が入り悔しそうな唸り声を上げるフェンリル。

 

 

「ヒール!」

 

 

 三人の攻撃でフェンリルが怯んだ隙に再度HPを回復するネプギア。

 

HPゲージが三割ほどまで回復する。

 

 

「まだまだ!」

 

 

 HPを回復したネプギアは、再びフェンリルに駆け寄って斬りかかる。

 

ネプギアは、深入りはせずに足止めを重視して、ダメージを受けたらユニとラムとプラエが一斉に攻撃をして、ネプギアがヒールを使う隙を作る。

 

ネプギアのHPゲージが真っ赤のままでジリ貧な状態なのだが、意思疎通の取れた四人の連携には安定感があった。

 

四人はこのコンビネーションでロムの魔法が完了するまでの時間を稼ごうというのだ。

 

 

「凄い! 土壇場でこの粘り!」

 

 

 先程まで武器を構えていたファミ通だが、四人の連携に見惚れながらメモを取る。

 

 

「ネプギア様はガッツもあるんだね」

 

 

 ファミ通はメモを取りながらギリギリのところで踏ん張るネプギアの姿を見て感嘆の声を上げる。

 

そのネプギアの周囲には薄紫色のオーラが纏われていた。

 

 

 【ガッツ】と言うのは根性のことだが、ゲイムギョウ界では能力の一つとして存在する。

 

HPゲージが著しく減少することで発動する力で、底力や火事場の馬鹿力に相当する能力である。

 

ネプギアの周囲の薄紫色のオーラが発動している証拠だ。

 

攻撃力や防御力のパラメーターが上昇するので、通常より高い戦闘能力を発揮できる。

 

立ち上がった際の強烈な龍昇拳もガッツの賜物であろう。

 

倒されるギリギリの状態ではあるが、上手く利用することで逆転をすることができる。

 

 

「そうか! ガッツを活かすために中途半端な回復はせずにHPゲージをレッドゾーンで維持しているのか」

 

 

 ファミ通はあごに手を当てながら、ふむふむと頷く。

 

ネプギアの計画的なガッツを使用した戦術に感心しているようだ。

 

 

「グガアアア!!」

 

 

 しつこく攻撃と小規模な回復を繰り返すネプギアに対して、怒りの声を上げるフェンリル。

 

既に回復魔法を唱えているロムは眼中になく、血眼になってネプギアに粘着する。

 

 

「しかも、これはヘイトコントロール!」

 

 

 ファミ通は続けざまに感嘆の声を上げる。

 

【ヘイト】とは憎悪を意味する言葉だが、ゲイムギョウ界ではパラメーターの一種として存在する。

 

ヘイトの数値が高くなると、敵に狙われやすくなる。

 

主にモンスターの嫌がる行動をすると上昇する。

 

基本的にはモンスターは回復と弱点攻撃を嫌がる。

 

最初は回復魔法を使おうとしたロムに対してヘイトが上昇したが、すぐさまネプギアが立ちはだかり、こまめな回復としつこい攻撃を繰り返すことによってロムよりネプギアの方がヘイトが高くなったのだ。

 

その為、フェンリルはネプギアを狙いだしたのだ。

 

 

 もし、ネプギアが逃げ腰で自分の回復を重視していたら、隙を突かれてフェンリルがネプギアのZOCをすり抜けてロムを襲ったかもしれないのだ。

 

このように。打たれ弱いキャラが狙われなくなるように、打たれ強いキャラが自分のヘイト値を上げて、敵の攻撃を自分に集中するようにする戦術がヘイトコントロールと言う。

 

タンク役には必須のテクニックである。

 

 

「ちりょうだよ!」

 

 

 ネプギアのヘイトコントロールのお陰で無事に回復魔法の詠唱を終えたロムが魔法を発動させる。

 

【ちりょうだよ】は体力を回復させ状態異常も直す水属性と光属性の合体回復魔法。

 

以前は状態異常の回復のみだったが、新作期を経てHPの回復も出来るようになっていた。

 

 

「ありがとう! ロムちゃん!」

 

 

 ネプギアは光り輝く青い水色の光に包まれる。

 

水の力でHPを回復し、光の力で状態異常を浄化するのだ。

 

 

「よしっ! これで大丈夫!」

 

 

 ネプギアHPが最大まで回復しゲージが緑色になる。

 

更に凍結していた部分も回復した。

 

 

「立て直し成功(ぶいっ)」

 

 

 Vサインを決めるロム。

 

ネプギアのHPが全快したことにより窮地を乗り切れた喜びの声だ。

 

 

「グルルルル!」

 

 

 対して悔しそうに唸り声を上げるフェンリル。

 

 

「どうやら今の氷の息が必殺技みたいね。けど、ここに居れば届かないわよ」

 

「怖くない(ぐっ)」

 

 

 ロムとラムはアイスブレスが届かない今の位置に留まる。

 

 

「やーいやーい! 届かないでしょ~」

 

「あんかんべー(べろべろ)」

 

 

 更にロムとラムは調子に乗ってフェンリルを挑発する。

 

 

「ロムさん、ラムさん、調子に乗りすぎかも……」

 

 

 プラエが少し引き気味にそう言うと、「いいのよ。こういう時はこうやるのが一番なんだから」とラムが言い、「プラエちゃんも一緒にやろ」とロムが誘ってくる。

 

 

プラエは、「えと……」と一瞬戸惑うが、「べ……べろべろばーー」とややぎこちなくフェンリルに挑発をする。

 

 

こういう挑発行為もヘイトを上げることになるのだが、そこはネプギアが上手くコントロールしている。

 

 

「ガアアアア!」

 

 

 再びフェンリルが怒りの咆哮を上げる。

 

 

「アイスブレス、また?」

 

 

 ネプギアはフェンリルの行動に再びアイスブレスを仕掛けてくると読み取った。

 

 

「けど、同じ手は通用しません!」

 

 

 ネプギアは左手にボムを呼び出す。

 

 

「フォォォォォォ!」

 

 

 フェンリルが息を吐き出す。

 

 

「お願い、ボム!」

 

 

 それと同時にネプギアはボムをフェンリルの口元に投げつける。

 

 

ドカーーン!

 

 

 ボムの爆風がアイスブレスをかき消す。

 

ボムの相殺能力は非常に高く大抵の射撃や放出系の技を相殺できる。

 

 

「やったー! ネプギアのボムがあいつの必殺技をかき消したわよ」

 

「さすがネプギアちゃん」

 

 

 フェンリルのアイスブレスを封じたネプギアに歓喜するロムとラム。

 

プラエも、「やっぱり、ネプギアお姉さんはスゴイ」と感心をする。

 

 

「グルルルル……」

 

 

 必殺技を封じられたフェンリルは悔しそうな呻き声をあげる。

 

 

「みんな反撃だよ!」

 

 

 ネプギアはそう言うとビームソードを構えてフェンリルに向かって走る。

 

HPも全快したので元気一杯である。

 

 

「がんばってね!」

 

 

 ロムが補助魔法をネプギアにかける。

 

【がんばってね】はロム専用のスピードアップの魔法。

 

 

「はああああ!」

 

 

 ネプギアのスピードが一気に速くなる。

 

 

「たあっ!」

 

 

 ネプギアは跳躍からフェンリルの頭部を目掛けた兜割りで斬りかかる。

 

 

「グオン!」

 

 

 フェンリルは、スピードアップしたネプギアの動きに反応しきれず145ダメージを受ける。

 

しかし、着地後の硬直中のネプギアにフェンリルが素早く前足を振りかざして反撃しようとする。

 

 

ズキューン

 

 

 同時に、射撃がフェンリルが攻撃しようとしていた前足に直撃する。

 

 

「グゥゥゥ……」

 

 

 113ダメージを受けてたまらず前足を引っ込めるフェンリル。

 

 

「そう簡単にネプギアは攻撃させないわよ」

 

 

 後方では、ユニがネプギアの硬直に合わせてフェンリルの前足を狙撃して攻撃を妨害したのだ。

 

 

「ていっ!」

 

 

 ユニのサポートで難を逃れたネプギアが再びビームソードでフェンリルに袈裟斬りを見舞う。

 

 

「爆炎よ敵を焼き尽くせっ! エクスプロージョン!」

 

 

 同時にラムの放ったエクスプロージョンがフェンリルに命中する。

 

 

「グオオオオオ!」

 

 

 ネプギアとラムの連続攻撃に合計600以上のダメージを受けて苦悶の雄叫びを上げるフェンリル。

 

 

「ガオオオオン!」

 

 

 だが、フェンリルは再び前足の爪でネプギアを切りつけて反撃する。

 

 

「はあっ!」

 

 

 しかし、ネプギアはその攻撃を読んでいたかのように左手の魔法陣で防御する。

 

 

「おおっ! ジャストガード!」

 

 

 それに合わせてファミ通が歓喜の声を上げる。

 

【ジャストガード】とはゲイムギョウ界の防御テクニックの一つ。

 

相手の攻撃に合わせて特定のタイミングで防御行動を取ることで被ダメージを大きく軽減し、更に防御時の硬直がなくなる。

 

ジャストガードをしたネプギアは11のダメージを受けるが、先程までの苦悶の表情は無く、硬直も無いので素早く次の行動に移る。

 

 

「これはお返しです!」

 

 

 ネプギアがそう言うと、左右からGビットが発射される。

 

Gビットは、攻撃後で硬直しているフェンリルを素早く取り囲み、集中砲火を浴びせる。

 

ネプギアの防御はフェンリルの攻撃を読んでジャストガードをし、ビットによるカウンター攻撃を狙った行動であった。

 

 

「ギャオオオオオン!」

 

 

 悲鳴を上げるフェンリル。

 

 

「やったわ! ネプギアがビットでカウンター攻撃よ!」

 

「すごい! ネプギアちゃん」

 

 

 ジャストガードからのカウンター攻撃は敵の動きを読み、素早く攻勢に転じるという高度な技術が必要である。

 

カウンター攻撃を受けた相手は通常より大きなダメージを受ける。

 

フェンリルもこのカウンターで625のダメージを受けていた。

 

 

「まだ終わりじゃありません! ブルーソニック!」

 

 

 ネプギアは素早くフェンリルの懐に潜り込むと、ビットと連携するように右手のビームソード、左手のパンチ、右足のキックを連続で繰り出して流れるような乱舞攻撃をお見舞いする。

 

【ブルーソニック】はネプギアが得意とする斬撃と打撃のコンビネーション攻撃。名前の通り音速のようは速さの連続攻撃だ。

 

 

「とどめのギアナックル!」

 

 

 最後にギアナックルでフェンリルを吹き飛ばすとビットと合計で2000以上のダメージを与えていた。

 

 

「さすがネプギア! 少し見ただけで敵の攻撃パターンを読むなんて、普通じゃできないことを平然とできちゃう!」

 

「そこにシビれてあこがれちゃう……(めろめろ)」

 

 

 ロムとラムはネプギアの華麗なテクニックに見惚れている。

 

ネプギアの学習能力と回避能力はかなりのもので、以前に犯罪神マジェコンヌと戦った時にも、マジェコンヌの羽を使った全周囲からの攻撃を見事にさばいた。

 

更に、その攻撃を参考にGビットを開発してしまう柔軟性も持ち合わせている。

 

 

「ググググ……」

 

 

 フェンリルはあまりの大ダメージにふらついて、すぐに動くことが出来ないようだ。

 

 

「今がチャンスよ! 一気に押し込んで!」

 

 

 ユニが狙撃をしながら通信でロムとラムに指示を出す。

 

 

「わかった!」

 

「うん!」

 

 

 ロムとラムは同時に魔法の詠唱を始める。

 

同時にペンネルが二人の足元に赤い光と緑の光の二つの魔法陣を描く。

 

 

「「……熱き炎と激しき疾風よ我が力となれ……」」

 

 

 呪文を唱えるロムとラム。地面に描かれた魔方陣がクルクルと回転をする。

 

 

「アイスブレスのお返しよ! 受けてみなさい!」

 

「いっけー(めらめら)」

 

 

 詠唱を終えたロムとラムがフェンリルに両手を向ける。

 

 

「「吹け熱風よ! ファイアーストーム!」」

 

 

 ロムとラムが同時に叫ぶと、二人の手のひらから炎を纏った竜巻が吹き荒れてフェンリルに襲い掛かる。

 

【ファイアーストーム】は火と風の合体魔法で、炎を纏った強烈な風が対象を焼く。

 

 

「キャイイイン!」

 

 

 グロッキー状態だったフェンリルは強烈な魔法攻撃の直撃を受け612ダメージを受ける。

 

だが、何とか体勢を立て直して後ろに飛び退く。

 

 

「うん! 行ける。みんな、このフォーメーションで行こう!」

 

 

 今のフォーメーションに手ごたえを感じたネプギアは全員に指示を送る。

 

 

「ええ、これで決まりね」

 

「ネプギアちゃんはわたしが援護する」

 

「任せて、ガンガン攻撃するわよ!」

 

 

ネプギアの指示に、ユニ、ロム、ラムが頷く。

 

前衛でヘイトコントロールをしながら足止めをするタンク役のネプギア。

 

敵の攻撃範囲外から回復と補助でネプギアを支えるヒーラーのロムと、一方的に攻撃するアタッカーのラム。

 

更に後方から、ネプギアの動きに合わせて援護狙撃するスナイパーのユニ。

 

女神候補生の各自の得意分野を活かしたスタンダードなフォーメーションである。

 

 

「おおー! 完璧なフォーメーションですね!」

 

 

 女神候補生達のフォーメーションに感服するファミ通。

 

そして、「ふわぁ……みんな、すごい」とプラエも感心の声を上げる。

 

 

「ほら、プラエも感心してないで、牽制して!」

 

 

 ユニから通信が入ると、「ご、ごめんなさい!」とプラエは慌てて両指の鎖をフェンリルに向かって伸ばす。

 

 

「プラエちゃん、私が攻撃しやすいように敵を追い立てて。できる?」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「うん、出来るよ。プラエもみんなの仲間だもん!」とプラエが元気よく答える。

 

 プラエの牽制、ネプギアの攻撃、ユニの援護攻撃、ロムとラムの魔法の連携で徐々にフェンリルを追い詰めていく女神候補生達。

 

 

「……グゥゥゥ……」

 

 

 ネプギア達に翻弄されて、悔しそうな呻き声を上げるフェンリル。

 

 

「どう? ネプギア」

 

 

 ユニは通信でネプギアの現状を確認する。

 

 

「問題ないよ。けど、やっぱりタフだし、それにかなり怒ってるから油断できないかも」

 

 

 ユニの質問に落ち着いて答えるネプギア。

 

モンスターは怒ると攻撃力とスピードが大きくアップする。

 

その為、戦闘を優位に進めていても油断はできない。

 

 

 現在、ネプギアは攻撃と回復を繰り返し、ヘイトコントロールをしながらHPゲージを五割~七割を維持して戦い、その後ろでプラエが牽制とアイテム役、ユニが援護射撃、ラムが攻撃魔法、ロムが補助魔法とヘイトに気を付けながらネプギアを回復していた。

 

 

「それと、少しMPが少なくなってきたかも……」

 

 

 ネプギアは繰り返しヒールを使っている為に、徐々にMPが減少して来て、現在のMPゲージは残り三割程である。

 

 

「わたし達のMPもちょっと減ってきたわ」

 

「疲れた……(へとへと)」

 

 

 ロムとラムが通信に割り込んで、自分たちもMPが残り少ないことを伝える。

 

ネプギア程ではないが、彼女達のMPゲージの残りは五割以下になっていた。

 

 

「MPドリンクなら、プラエが持ってるよ」

 

 

 プラエがそう言うが、「いえ、そろそろケリをつけた方がいいわね」とユニはあごに手を当て考える仕草をしながらそう言うと、「敵のHPは分析できたの?」と続けてネプギアに質問した。

 

 

「うん、推定3万。今は2万ぐらいダメージを与えてるよ」

 

 

 ネプギアがユニの質問に答える。

 

彼女の頭の左側に付いている十字の髪飾り【脳波コントローラー】には高性能なカメラが内蔵されている。

 

それにより、戦闘を続けていく内に敵の観察を行い、データを蓄積していく。

 

蓄積したデータは無線でNギアに送信して、Nギア内のアナライズ機能で解析し、ブレイン・マシン・インターフェイスを通じてネプギアの脳に直接送られてくるのだ。

 

 

「そろそろ、相手の底力にも気をつけなきゃいけないわね」

 

 

 ネプギアの答えにユニが考え込む。

 

ガッツによるパワーアップが出来るのは、ネプギアだけではない。

 

モンスターにもその能力が備わっているのだ。

 

先のギガベーダーやハエトリソーは、ガッツが発動する前に一撃で倒してしまったから発動しなかったのだ。

 

決め手のないまま、ボスモンスターにガッツを発動されると泥仕合になる可能性どころか逆転すらされてしまうかもしれないのだ。

 

 

「よし! みんな、一気に決めましょう。まずは部位破壊からよ」

 

 

 ユニが通信で提案をしてくる。

 

【部位破壊】とは特定の部位にダメージを与え、それを破壊する事。

 

ゲイムギョウ界のモンスターは、部位破壊をすると基本的には戦闘能力がダウンする。

 

他にも貰える報酬が増える。

 

 

「うん、わかった。Nギアの解析では破壊可能な部位は、頭、右前足、尻尾って出てるよ」

 

 

 ネプギアはユニの提案をOKすると、同時にNギアで解析した破壊可能な部位を伝える。

 

更にNギアに入っている分析データを、ユニ達に送るよう、ブレイン・マシン・インターフェイスでNギアに指示をする。

 

 

「フォーメーションを変えるわ。まずはアイツの動きを止めるわよ」

 

「オッケー! 任せてよユニちゃん」

 

 

 ユニの指示にラムが了解の合図をする。

 

同時にユニは銃を操作し特殊弾モードに変更すると、ブレイン・マシン・インターフェイスを使って弾丸を呼び出す。

 

ユニは、その弾丸を特殊弾専用の装填場所にセットする。

 

特殊弾とは名前の通り、特殊な効果を持った弾で、主に一発ずつ装填して発射する。

 

 

「雷よ敵の動きを止めよ……」

 

 

 ユニがスコープを覗いて狙いを定めている頃に、ラムは呪文の詠唱を始めていた。

 

 

「痺れなさい! パラライズショット!」

 

 

ズキューン!

 

 

 ユニの銃が火を噴くとフェンリルの体に弾丸が命中する。

 

 

「パラライズマジック!」

 

 

バリバリッ!

 

 

 同時にラムが魔法を発動すると、ラムの杖から電撃が発射されフェンリルに命中する。

 

 

「ギャウンッ!」

 

 

 ダメージは合計で40程度と低めだが、ダメージを受けたフェンリルが痙攣して動きを止める。

 

【麻痺】状態である。

 

麻痺は動きを止める状態異常で、麻痺の状態異常量を蓄積させることで発動する。

 

ユニの放った【パラライズショット】は、麻痺の状態異常を持った銃弾。

 

ラムが放った【パラライズマジック】も、同じく麻痺の状態異常を持った雷属性の魔法。

 

 

 状態異常になるかどうかは、蓄積された状態異常量が相手の抵抗力を上回る必要がある。

 

今回はユニとラムの同時攻撃により、一気に麻痺の状態異常が蓄積し、フェンリルの麻痺抵抗力を上回り麻痺が発動したのである。

 

このようなユニの特殊弾とラムの状態異常魔法のコンビネーションは優秀で、同時に素早く当てることで、あっという間に状態異常を発生させることができる。

 

状態異常は有効な手段だが、使うたびに相手にも抵抗が付いて抵抗力が上がってくる。

 

その為、いざという時に効かなくなるので、ここぞという時に使うべきである。

 

 

「アタシの腕の見せ所よ!」

 

 

 フェンリルの動きを止めたことで、ユニは銃を一旦しまい前方に走り出してフェンリルとの距離を詰める。

 

長距離の狙撃では部位破壊に向いた強烈な弾が使えない為である。

 

ピンポイントに狙えるスナイパーにとって、部位破壊は重要な役目である。

 

遠くで援護射撃をするだけがスナイパーではないのだ。

 

ちなみにユニからフェンリルまでは3キロメートル程離れているが、彼女は女神である上に毎朝ランニングで鍛えているので、ニ~三分で到着することができる。

 

 

「ラムちゃん、プラエちゃん足止め重視に!」

 

 

 ネプギアがラムとプラエに指示を飛ばす。

 

 

「わかったわ! いくわよプラエ」

 

 

 ラムがプラエに向かって言うと、「うん、ラムさん」とプラエが頷く。

 

ラムは素早くフェンリルの右正面に行き、プラエはフェンリルの左正面に行って、「「……凍えつく大気よ、我が呼びかけに応え、敵の動きを封じよ……」」と呪文を唱える。

 

 

「「アイスホールド!」」

 

 

 ラムとプラエが魔法を唱えると、フェンリルの足元が凍りつく。

 

ギガベーダーとの戦いで、イストワールが使ったのと同じ魔法である。

 

左右から仕掛けることで、相手の足元をまんべんなく凍りつかせたのだ。

 

 

「スワンプトラップ!」

 

 

 続けてネプギアが魔法を唱える。

 

今度はフェンリルのいる地面が沼のようになり、両足の凍ったフェンリルは逃げることが出来ずに沈んで行く。

 

【スワンプトラップ】は、相手の地面を沼にして足元を不安定にして足止めする地属性の魔法。

 

 

「ナイスよ、三人とも!」

 

 

 走って来たユニが、ロムの少し後ろに到着する。

 

そして、再び銃を構えると、今度は別の弾を呼び出して銃に装填をする。

 

 

「ユニちゃん、とびでるよ!」

 

 

 膝撃ちに構えるユニに、攻撃力アップの補助魔法を掛けるロム。

 

ユニの銃が赤く光る。

 

 

「あんまり飛ばないけど、威力はあるわよー」

 

 

 ユニがスコープを覗き込む。

 

 

「ユニちゃん、今だよ!」

 

 

 前衛のネプギアが、ユニの為の射線を開ける。

 

 

「まずは尻尾を貰うわ!」

 

 

 ユニは銃を動かして、照準を尻尾に合わせる。

 

 

ズキューン!

 

 

 銃から弾が発射され、見事に尻尾に着弾する。

 

 

ズズズズズキューーーーン!

 

 

 弾は尻尾に張り付くと球状に膨れ上がり、その球から何発もの短いレーザーが四方八方に放たれる。

 

 

「ギャォォォン!」

 

 

 フェンリルが悲鳴を上げると525ダメージが当たり尻尾に亀裂が入る。

 

この亀裂が入った状態が部位破壊の印である。

 

 

「グゥレイトォ! 流石は内蔵破壊弾ね」

 

 

 【内蔵破壊弾】ラステイション防衛隊極東支部に伝わる秘伝の弾である。

 

当たった場所に張り付き、射程は短いが高威力のレーザーを連続発射し、集中的に破壊するため内蔵破壊弾と呼ばれている。

 

威力は抜群だが一発ずつしか撃てないのが難点である。

 

 

「ガアアアア!」

 

 

 部位破壊をされたフェンリルは怒って、ユニに向けて大声を上げる。

 

麻痺は解けたようだが、凍りついた足元と地面の沼で上手く動けずによろめく。

 

 

「たあっ!」

 

 

 更に、ネプギアが足止めにとフェンリルに切りかかる。

 

 

キン、カキーーン!

 

 

 ビームソードとフェンリルの爪が競り合う。

 

その間に、ユニは排莢を確認すると、新しい内蔵破壊弾を込めてライフルを構える。

 

 

「第二射行けるわ」

 

 

 ユニがそう言うと、「いいよ、ユニちゃん」とネプギアは素早くユニの射線を開ける。

 

 

「大喝采を聞かせてやるわ!」

 

 

ズキューン!

 

 

 ライフルから内蔵破壊弾が発射され、今度の弾はフェンリルの右の前足に張り付く。

 

 

ズズズズズキューーーーン!

 

 

「グワァァァ!」

 

 

 内蔵破壊弾の522のダメージで、フェンリルの右前足に部位破壊の亀裂が入る。

 

フェンリルはバランスを崩し前のめりに倒れ、沼に体半分が沈んでしまう。

 

 

「わー! 凄いユニちゃん!」

 

「凄い凄い(ぱちぱち)」

 

 

 ロムとラムがユニの言ったように大喝采する。

 

 

「さあ、次でラストよ!」

 

 

 ダウンしたフェンリルに対して、ユニは落ち着いて内蔵破壊弾をライフルに込めて、狙いを定める。

 

 

ズキューン!

 

 

 内臓破壊弾が、フェンリルの頭部に命中する。

 

 

ズズズズズキューーーーン!

 

 

「アォォォォォン!」

 

 

 フェンリルの雄叫びと共に、頭部の左側に亀裂が入る。

 

 

「やれた! すっごーい! こんなアタシを愛しちゃう!」

 

 

 見事に三発で全部位を破壊したユニは、ウィンクしながら自分に褒め言葉を贈る。

 

 

「うん、私もユニちゃんのこと愛してるよ」

 

 

 ネプギアがユニのノリに乗って答えると、「な、なに言ってるのよ!」と必要以上に慌てるユニ。

 

 

「え? 私変な事言った?」

 

 

 首を傾げるネプギア。

 

 

「ユニちゃん、お顔が赤いよ?」

 

 

 ユニの態度に首を傾げるロム。

 

 

「ユニちゃん、照れてる~」

 

 

 ラムは指差して、からかう。

 

ユニとってネプギアは素直になれない自分の心を開いてくれた上に、気も合い趣味も合う唯一無二の親友である。

 

誰にでも分け隔てなく優しいネプギアに合わせて、少し距離を置いてはいるが本心はもっと仲良くなりたいのだ。

 

そんなネプギアに、その場のノリとはいえ愛してると言われて戸惑ってしまった。

 

 

「うるさいわね! さっさと決めるわよ!」

 

 

 ユニは照れ隠しに大声を出す。

 

ネプギアは素直に、「うん!」と頷くとプラエの方を向いて、「プラエちゃん、時間を!」と叫ぶ。

 

 

「時間さん、ネプギアお姉さん達の時を速くして!」

 

 

 プラエがそう言うと、「わぁ! すごい。全部が遅く感じる」とロムが驚き、「これなら、いつもよりガンガン攻撃を叩き込めるわ!」とラムが叫ぶ。

 

ユニが、「ネプギア、アレをやるわよ」と言うと、「うん、コード、スペリオルアンジェラス!」とネプギアが指示を出す。

 

 

「ウゥゥゥ……」

 

 

 フェンリルは、部位破壊からのダメージから立ち直れずにふらついている。

 

更に一気に大ダメージを受けた上に、部位破壊をされたことで【恐慌】状態に陥っているようだ。

 

基本的にはモンスターはダメージを与えると怒るが、短時間で過度のダメージや連続の部位破壊などを受けると恐怖して、すくんでしまう。

 

この状態になると弱腰になる上に能力もダウンしてしまう。

 

 

「怯えろ! すくめ! ガッツの性能を活かせぬまま、倒されなさい!」

 

 

 ユニは、更にフェンリルに向かって脅しをかけながら走り出すと、ネプギアの背後に着く。

 

 

「お願いユニちゃん!」

 

 

 ネプギアがユニにそう言うと、ユニは頷いて、「近接援護するわ! ネプギア!」と答える。

 

 

ズガガガガガ!

 

 

 ユニはライフルを連射モードに変えて、フェンリルに対して弾幕を張る。

 

先程言ったように、ネプギアが接近するのを援護する為だ。

 

 

 ユニの弾幕を盾に、素早くフェンリルに接近するネプギア。

 

 

「たああっ!」

 

 

 ネプギアの袈裟斬りがフェンリルを切り裂く。

 

 

「はあああ!」

 

 

 続けて、返す刀で斬り上げ、袈裟斬り、斬り上げ、袈裟斬りのコンビネーションを連続するネプギア。

 

ユニは、そのすぐ後ろで援護射撃をする。

 

その弾は、前に居る筈のネプギアに一切当たらずに的確にフェンリルだけを撃ち抜く。

 

ネプギアの斬り上げと、ユニの援護射撃の度に攻撃の衝撃でフェンリルの巨体が浮いていく。

 

 

ズキューン!

 

 

 ユニはライフルを単発モードに素早く変更すると、浮かび上がったフェンリルを撃ち抜く。

 

 

ドカーーン!

 

 

 撃ち込んだ弾は榴弾であり、着弾すると同時に爆発を起こす。

 

爆発の衝撃で更にフェンリルが宙に浮く。

 

 

「はあっ!」

 

 

 その爆発に合わせて、今度はネプギアが龍昇拳のように体全体を使って、思いっきり斬り上げる。

 

フェンリルの巨体が大きく上空に打ち上がる。

 

 

「そこっ! もらったーー!」

 

 

 打ちあがった瞬間にユニは、ライフルの射撃モードをビームライフルモードにチェンジする。

 

 

キィィィン! ズキューーーーン!

 

 

 銃口に短いエネルギーの溜めがされた後に巨大なビームが発射される。

 

上空に浮き上がったフェンリルをビームが貫く。

 

 

「アォォォォォン!」

 

 

 ビームに焼かれながら絶叫を上げるフェンリル。

 

そのまま落下をすると、それに合わせてロムとラムが並んでフェンリルに向かってジャンプで飛び込む。

 

 

「次はわたし達よ!」

 

「がんばる!」

 

 

 ロムとラムが魔法を唱えると、地面から無数の氷の棘が突き出し、落下したフェンリルを貫く。

 

 

「これで終わりじゃないわよ!」

 

「ついげき(どかん)」

 

 

 ロムとラムがそう言うと、周囲に無数の氷のキューブが出現する。

 

 

「「えーーーい!」」

 

 

 ロムとラムの声に合わせて、氷のキューブは容赦なく雨のようにフェンリルに降り注ぐ。

 

 

「ネプギアちゃん……! お願い!」

 

 

 ロムはラムと向き合うと、両手を突き出す。

 

ネプギアが二人の間を駆け抜けると、ネプギアの体が光に包まれ、ビームソードが巨大化する。

 

ロムとラムの援護魔法でネプギアの攻撃力が大幅にアップしたのだ。

 

 

「はあああああ! 一閃!!!」

 

 

 ネプギアは巨大なビームソードを縦切りに振り下ろす。

 

 

ズシャッ!

 

 

 一刀のもとにフェンリルを真っ二つに断ち切る。

 

真っ二つなったフェンリルは合計で10000以上のダメージを受けて消滅する。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 消滅するフェンリルを見ながら一息付くネプギア。

 

【スペリオルアンジェラス】とは、女神候補生達が心と力と技を合わせて放つ高速かつ強力な連携攻撃。

 

 

「やったー! わたし達の勝ち!」

 

 

 ラムが高々に勝利宣言すると、女神候補生全員がネプギアの元に駆け寄る。

 

 

「やったわね」

 

 

 ユニが手を出すと、「うん」とネプギアが笑顔でハイタッチを交わす。

 

 

「やっぱり、わたし達は最強ね」

 

「なんばーわん(ぶいっ)」

 

 

 ロムとラムも楽しそうにハイタッチを交わす。

 

喜々としながら次々とハイタッチを交わして行く女神候補生達に、プラエとファミ通が駆け寄ってくる。

 

 

「みんなすごーい。攻撃が速過ぎて全然見えなかったよ」

 

 

 プラエが女神候補生達にそう言うと、「プラエちゃんの時間操作のおかげだよ」と言ってネプギアがプラエの頭を優しく撫でる。

 

プラエは気持ち良さそうに目を細めて、「えへへ……」と微笑んだ。

 

 

「いやー! 感動しました! お互いの長所を活かしたフォーメーション、完全部位破壊から、相手にガッツを発動させずに強力な連続攻撃で一気にとどめ! もう完璧ですよ!」

 

 

 続けてファミ通が、早口かつ興奮気味に今の戦闘を語りだす。

 

 

「そうでしょそうでしょー! わたし達の一糸まとわぬコンビネーションは完璧なのよ!」

 

「……ラムちゃん、そこは一糸乱れぬじゃないかな」

 

 

 腰に手を当ててドヤ顔でふんぞり返るラムだが、またも言い間違いがありネプギアに訂正される。

 

 

「脱いでどうするのよ……」

 

 

 ユニも呆れ顔で溜息を付く。

 

 

「脱ぐの恥ずかしい(どきどき)」

 

 

 ロムは恥ずかしいそうに両手で顔を覆う。

 

 

「でも、この域まで達するのに、相当努力されたんでしょ?」

 

 

 ファミ通はネプギア達に問いかける。

 

 

「はい、みんなで心を一つにして頑張りました」

 

 

 ファミ通のインタビューに答えるネプギア。

 

 

「アタシ達は武器が全然違うから、上手く助け合わないとね」

 

 

 続けて答えるユニ。

 

 

「大変だったけど、ネプギアちゃんがいっぱい励ましてくれたから(ぽっ)」

 

 

 頬を赤くするロム。

 

 

「みんなと協力するの楽しい!」

 

 

 ラムは嬉しそうに左手を上げて答える。

 

 

「心を一つに、助け合い、協力し合い、励まし合う……素晴らしいですね」

 

 

 ファミ通の言葉に、「はい」と力強く頷くネプギア。

 

 

「ついでに、ここで今後に対しての意気込みを宣言していただけませんか?」

 

「え? 今ここでですか?」

 

 

 ファミ通の突然の提案に困り顔のネプギア。

 

 

「いいじゃない、頑張りなさいよネプギア」

 

「ネプギアちゃん頑張って(ふれーふれー)」

 

「ファイトよネプギア」

 

「ネプギアお姉さん頑張ってね」

 

 

 ユニ、ロム、ラム、プラエが順々にネプギアを応援する。

 

 

「え? いつの間に私がすることになってるの?」

 

 

 ネプギアは、何故か自分が宣言することになっていることに更に困り顔になる。

 

 

「アンタはアタシ達のリーダーでしょ。当然じゃない」

 

「ネプギアちゃんがリーダーだからだよ(こくこく)」

 

「ネプギアがリーダーだからに決まってるでしょ」

 

 

 そんなネプギアに対して、ユニもロムもラムも立て続けに、ネプギアがリーダーだからと主張する。

 

それを聞いたプラエも、「やっぱりネプギアお姉さんがリーダーだったんだね」と納得したように頷く。

 

 

「そんなー、いつの間に? リーダーなんて自信ないよぉ。リーダーなんて決めないで、みんなで仲良くやろうよ」

 

 

 ネプギアは焦りながら、全員に考え直すよう提案する。

 

 

「アタシ達全員がネプギアのこと信頼してるのよ。期待に応えなさい」

 

 

 ユニは腕組みしながら、ネプギアを励ますように言う。

 

彼女はネプギアのことをライバルとして認めていると同時に、自分達女神候補生のリーダーとしても認めている。

 

ネプギアは人を引っ張っていくタイプではないが、仲間と支え合うことには長けている。

 

その人柄と人望は、バラバラだった女神候補生をまとめて犯罪組織を倒したことが証明している。

 

確かにリーダーとして物足りないところはあるかもしれないが、そこは自分が支えてあげたいと思っていた。

 

 

「わたし、ネプギアちゃんがリーダーがいい……(うるうる)」

 

 

 ロムが上目遣いでネプギアを応援する。

 

ロムは全面的にネプギアを信頼して尊敬をしている。

 

優しく穏やかで、真面目で一生懸命なネプギアはロムの憧れでもある。

 

 

「そうよ! 頑張りなさいよ」

 

 

 更にラムが両手を腰に当てながらネプギアに言い放つ。ロムのように素直には言えないがロムと同じような気持である。

 

何よりロムもラムも、守られているだけじゃなく、優しくて真面目なネプギアを中心に助け合える今の女神候補生の関係が大好きだった。

 

そんな訳で、三人ともネプギアがリーダーであることを譲らない。

 

 

「ネープギア! ネープギア!」

 

 

 ラムに至ってはネプギアを推す為にネプギアコールを始めてしまう。

 

 

「ええっ? ラムちゃん、何そのコールは?」

 

 

 ラムのノリの良い大声のコールに困ってしまうネプギア。

 

 

「ネープギア! ネープギア! ネープギア!」

 

 

 ユニもラムに続いてネプギアコールをする。

 

 

「ネープギア、ネープギア、ネープギア(がんばれがんばれ)」

 

 

 控えめなロムもそれに加わる。

 

 

「うぅ……そんなに言われると、その気になっちゃいそうだよ……」

 

 

 相変わらず流されやすいネプギア。

 

みんなのネプギアコールによる応援で、まんざらでもない気持ちになってきていた。

 

 

「……何してるんですか?」

 

 

 そこに後ろから追いついて来たアイエフ達が現れ、この光景を疑問に思う。

 

 

「あ、ちょうどよかった! アイエフ達も手伝ってよ、ネプギアコール。ネープギア! ネープギア!」

 

 

 ラムはアイエフ達にネプギアコールを要請すると、自分もネプギアコールを続ける。

 

 

「どうします?」

 

 

 状況も分からずネプギアコールを要請されたアイエフは困り顔で、一緒に来たイストワール達を見る。

 

 

「よくわかりませんが、ここはラムさんの要望に応えましょう。ネープギア! ネープギア!」

 

 

 イストワールは素直にネプギアコールに加わる。

 

 

「何だか楽しそうです~。ネープギア! ネープギア!」

 

 

 コンパもそれに続く。

 

 

「じゃ、私も。ネープギア! ネープギア!」

 

 

 更にアイエフも続く。

 

 

「これはもう腹をくくるしかないね。ネープギア! ネープギア!」

 

 

 ファミ通はネプギアにそう言うと自分もネプギアコールに加わる。

 

 

「ネプギアお姉さん頑張って! ネープギア! ネープギア!」

 

「ネプギア殿、よくわかりませんが、プラエ様の期待に応えてあげて下さい。 ネープギア! ネープギア!」

 

 

 最後にプラエとあんみつもコールに加わり、全員がネプギアコールを連呼する。

 

 

「わ、わかりました! 自信ありませんけど、頑張ります!」

 

 

 ネプギアは両手で小さくガッツポーズを決めると、観念してリーダーを引き受ける。

 

 

「大丈夫よ。アタシ達が支えてあげるわ」

 

「ネプギアちゃん偉い(ぱちぱち)」

 

「それでこそ、ネプギアよ!」

 

 

 ユニ、ロム、ラムは嬉しそうに拍手しながらネプギアを迎える。

 

 

「では、宣誓をどうぞ」

 

 

 ファミ通の言葉に全員が静まり返る。

 

 

「宣誓! 私達女神候補生は、ゲイムギョウ界の平和に全力で取り組み、助け合い、協力し合い、励まし合って一人前の女神目指して邁進することを誓います! 女神候補生代表、ネプギア」

 

 

 ネプギアは右手を高く上げて力強く宣言する。

 

すると周りから拍手が巻き起こる。

 

 

「カッコいいわよ、ネプギア」

 

「ネプギアちゃん素敵(めろめろ)」

 

「ネプギア最高っ!」

 

「ネプギアお姉さんカッコイイ!」

 

 

 ユニ、ロム、ラム、プラエは立て続けにネプギアを褒めちぎる。

 

他のメンバーも拍手をしながら、次々にネプギアを褒めてくれた。

 

 

「……なんか成り行きでリーダーになっちゃたけど、いいのかなぁ……」

 

 

 少し遠慮気味のネプギア。

 

 

「みなさんが、それだけネプギアさんを信頼している証です。快く引き受けましょう」

 

 

 そんなネプギアに対して、イストワール自信を持つように伝える。

 

 

「わかりました。がんばります」

 

 

 イストワールの言葉に決意を新たにするネプギアだった。

 

 

***

 

 

 クエストを済ませたネプギア達は、神次元のプラネテューヌ教会に戻ってきた。

 

 

「みなさんお疲れ様でした。これで国民も安心して暮らせます」

 

 

 神次元のイストワールは嬉しそうにネプギア達を出迎えると、「流石はネプギアさんです。毎回本当に助かります」とネプギアに深々と頭を下げる。

 

 

「私は女神として当然のことをしただけです。それにみんなが力を貸してくれたおかげです」

 

 

 ネプギアはそんな神次元のイストワールに対して落ち着いて答える。

 

 

「あ~ら、ギアちゃんってば相変わらず謙虚ね~」

 

 

 教会の奥から妙な女言葉を使う男の声が聞こえると同時に、長身でピンク色の人型ロボットが現れる。

 

 

「げっ……オカマ」

 

 

 ユニは嫌そうな顔でそのロボットを見る。

 

 

「わー! オカマだオカマ!」

 

「オカマさんだ……(どきどき)」

 

 

 ロムとラムは面白いものを見るような顔でロボットを指差す。

 

 

「おかま? あの人ご飯とか持ってるの?」

 

 

 プラエはオカマの意味を知らないようで、そう言って首を傾げる。

 

そこに、あんみつが、「オカマとは、女の真似をしてる男のことを言うのです」と丁寧に説明をする。

 

 

「もうっ! みんなしてオカマオカマって、アタシにはアノネデスって名前があるのよ」

 

 

 アノネデスと名乗ったロボットはクネクネと体を動かしながら抗議する。

 

彼はメカニカルなスーツを着たオカマなのである。

 

女の真似をしたいのなら、もう少し他にやり方がありそうな気がするが、彼なりのポリシーなのかもしれない。

 

 

「うるさいっ。アンタキモイのよ。生理的に無理」

 

 

 ユニは態度を変えずにアノネデスを指差して邪険にする。

 

 

「アノネデスさん、この前の問題解けました」

 

 

 対してネプギアは普通の人と接するようにアノネデスに話しかける。

 

 

「うっそぉ~? 解けちゃったの~? ギアちゃん凄いわ~」

 

 

 アノネデスは、また体をクネクネさせながらネプギアと談笑する。

 

 

「じゃ、次はこの問題ね」

 

「ありがとうございます」

 

 

 アノネデスはネプギアにコンピューターの記憶媒体のようなものを手渡す。

 

この中に彼の言う問題と言うのが入っているようだ。

 

 

「ちょっ! ネプギア、なにやってるのよアンタ?」

 

 

 ユニは驚いてネプギアに質問をする。

 

 

「え? アノネデスさんにコンピューター関係の問題出して貰って勉強してるんだよ」

 

 

 ネプギアは、ユニが何でそんなに驚いてるか分からないような表情をしながらも素直に質問に答える。

 

ネプギアは神次元に来た時に、ユニ達と知らないところでアノネデスと会ってコンピューターの勉強をしたいと申し出たのだ。

 

 

「は? なんでよ?」

 

 

 ユニは、何でアノネデスなんかに勉強を教えて貰っているのか分からず不機嫌そうに質問をする。

 

 

「だって、いつまでもソフトに弱いなんて言ってられないもん」

 

 

 ネプギアは意気込むように小さくガッツポーズを決めながらそう答える。 

 

ネプギアが得意なのは機械自体をいじるハードウェアの面で、コンピューターソフトウェアの面はハードウェアに比べればやや劣る。

 

しかし、それでも十二分な知識と技能があるのだが、更なる向上を目指してアノネデスに教えを受けているのだ。

 

 

「でも、オカマって悪いことしてたんでしょ? ハイキングだっけ?」

 

 

 ラムが首を傾げて質問をする。

 

アノネデスは、以前はネプギア達と敵対する七賢人という組織に属しており、そのコンピューター技術でネプギア達を翻弄したことがある。

 

戦いの後、アノネデスはネプギア達と和解して、超次元で事件があった際にも、そのコンピューター技術を活かして協力をしている。

 

 

「ハイキングじゃなくてハッキングね。ハッキング自体はコンピューターの技術で良いも悪いも無いんだよ」

 

 

 ネプギアはラムの質問に丁寧に答える。

 

 

「そうなの?」

 

 

 ロムは意外そうな顔をしてネプギアに更に質問をする。

 

 

「ハッキングで悪いことする人が【クラッカー】、良いことするのが【ホワイトハッカー】って言うの」

 

 

 ネプギアはロムの質問に答える形で更に詳しいことを説明する。

 

 

「じゃあ、ネプギアはホワイトハッカーになるために勉強してるのね」

 

「ネプギアちゃん、えらい(なでなで)」

 

 

 ロムとラムはネプギアの説明で理解できたらしく、ネプギアの勤勉ぶりに関心をする。

 

 

「えへへ、ありがとう」

 

 

 ネプギアは二人の言葉に嬉しそうな顔をする。

 

 

「……だからって、そのオカマに習うことはないでしょ……」

 

 

 しかし、ユニは腕組みして面白くなさそうな目でネプギアを見る。

 

ネプギアの向上心とアノネデスのコンピューター知識は認めるが、ネプギアが自分の知らないとこで、生理的に無理なアノネデスに勉強を教えて貰っているのが面白くないのだろう。

 

 

「でも、アノネデスさん以上に技術を持ってる人、私知らないし」

 

 

 ネプギアは素直にそう答える。

 

こう見えてもアノネデスのハッカーとしての腕前は超一流である。

 

 

「でも、オカマよオカマ。キモいでしょ」

 

 

 ユニとしてもアノネデスのハッカーの腕は知っているので、ネプギアの言うことを否定はしないが、まだ反対のようだ。

 

 

「最初は私も怖かったけど、アノネデスさんは【性同一性障害】って病気だよ。病気の人を攻撃するのは良くないよ。女の子として受け入れてあげなきゃ」

 

 

 ネプギアも彼女なりにアノネデスのことを理解しようと勉強したのだろう。

 

その結果がアノネデスは性同一性障害ということなのだ。

 

性同一性障害とは、自分の産まれ持った身体の性と、心の性が一致しない状態のことを指す。

 

アノネデスの場合は、体は男でも心は女だというのだ。

 

ネプギアなりに、彼の【心は乙女なのよ】と言う言葉を信じての結論なのだ。

 

真面目で心優しいネプギアらしい考え方だ。

 

 

「ああん! ギアちゃんってば、とっても優しいのね。アタシ目覚めちゃいそう」

 

 

アノネデスはネプギアに近づいて両手を広げて抱きしめようとする。

 

 

「えっ!? そ、それはちょっと……」

 

 

 流石のネプギアもこれには引いてしまう。

 

ネプギアは後ずさり恐怖に耐えているようだった。

 

頭で分かっていても、男性が迫ってくるのはやはり怖いようだ。

 

ネプギアは男性に対する免疫が無いので猶更である。

 

 

「っ!!!」

 

 

 その瞬間ユニの中で何かが弾けた。

 

ユニの体が激しく光りだす。

 

 

「汚い手で、アタシのネプギアに触るな!」

 

 

 ユニの声色が凛々しいものに変わると同時にその姿が変化する。

 

 

ズガガガガガガ!

 

 

「うっひゃあああああ!!」

 

 

 激しい機関銃の音と同時にアノネデスの足元に無数の弾丸が着弾する。

 

ユニは一瞬の内に女神化して、手に持った銃X.M.B【エクスマルチブラスター】でアノネデスの足元を機銃掃射したのだ。

 

 

 ユニが女神化した時の名前は【ブラックシスター】。

 

髪の色は黒から白に変わり、髪型もツインテールを縦ロール状にした、通称【ツインドリル】になる。

 

瞳は赤から緑色になり、その奥にはパープルシスターと同じ右側だけ光の欠けた電源マークのような模様が浮かび上がっている。

 

服装もパープルシスターと同じで、ゴムのような素材の黒いレオタードを着て、同じ色のアームカバーとハイヒールとニーソックスが一体になったレッグカバーを履いていた。

 

また、プロセッサユニットも黒く、角のようなヘッドパーツ、悪魔の翼のようなバックパーツ、その他のショルダー、ウエスト、レッグのパーツも鋭角的なデザインがされている。

 

鳥の羽を意匠したパーツ付いて曲線的な羽を持つパープルシスターが天使なら、尖ったパーツで構成されたブラックシスターは小悪魔のようだった。

 

 

ザシュ!

 

 

 ユニは機銃掃射が終わると同時に、一瞬にして間合いを詰めて、怯んでいるアノネデスを足払いで転倒させる。

 

 

「いったぁ~」

 

 

 受け身も取れず、頭から落ちるアノネデス。

 

 

「ネプギアが優しいからって調子乗ってるんじゃないわよ」

 

 

 ユニが倒れたアノネデスを上から仁王立ちで睨みつける。

 

 

「女の子同士のスキンシップじゃないの!」

 

 

 アノネデスは、そんなユニの態度に思いっきり抗議する。

 

しかし、ユニは無言で倒れたアノネデスの眉間にX.M.Bを押し当てる。

 

 

「ちょ……ちょ~っとオイタが過ぎたかしら~」

 

 

 アノネデスは冷や汗を流しながらも平静を装ってユニと向き合う。

 

 

「アンタ、女になりたいのよね。ならアタシがしてあげるわ」

 

 

 ユニは冷たい声で言い放つ。

 

 

「それは素敵な提案ね。でも、どうやって?」

 

 

 アノネデスは平静を保ちながら問い返す。

 

 

「その股間の汚いものを撃ち抜いて、風穴開けてあげるわ」

 

 

 ユニはX.M.Bをアノネデスの股間に向ける。

 

 

「あ、あはは……ちょーっと強引過ぎじゃないかしら~。それにバストの方はどうするの?」

 

 

 アノネデスは焦りながらも、何とか話を続けようとする。

 

 

「鉛玉を詰め込んであげるわ。千発ぐらいあれば充分よね」

 

 

ガアンッ!

 

 

 ユニはそう言うと同時に、X.M.Bのトリガーを引き、弾を発射させる。

 

 

「ちょっ! なに撃ってるのよ! 今アタシが避けなかったら当たってたわよ!」

 

 

 アノネデスは蜘蛛のように這って後退して、間一髪で股間に向けて飛ばされた銃弾から逃れた。

 

 

「なに避けてるのよ。女にしてあげるって言ったでしょ」

 

 

 ユニはアノネデスの抗議に耳を貸さずに冷たく言い放つ。

 

 

「許可ぐらい取りなさいよ!」

 

「アンタの許可なんて必要ないわ」

 

 

 ユニはアノネデスの抗議を無視して、今度は避けられないようにと股間にX.M.Bを押し当てる。

 

 

「じゃ、来世では女に生まれ変わってるといいわね」

 

 

 ユニがX.M.Bのトリガーに力を込める。

 

 

「殺す気マンマンじゃないのーーーー! わかったわ! もうギアちゃんにちょっかい出さないから許して頂戴!」

 

 

 アノネデスは、ユニの本気を十二分に肝を冷やしたようで、早口で一気に謝る。

 

 

「最初っからそう言えばいいのよ」

 

 

 X.M.Bをしまうユニ。

 

同時にその姿が光に包まれて変身が解ける。

 

 

「……まったくつまらないことで変身させないでよね」

 

 

 元の声色に戻ったユニは、やれやれと言わんがばかりに首を振る。

 

 

「……ユニちゃん……今、【アタシのネプギア】……って」

 

 

 ネプギアは頬を赤らめながらユニに質問する。

 

ユニの大胆な発言に驚きを隠せないようだ。

 

 

「えっ……えっと……」

 

 

 ユニは、つい自分の口から出てしまったセリフに慌てふためく。

 

 

「とっ……友達だからよ! それ以上でもそれ以下でもないんだからね!」

 

 

 ユニは精一杯強がりながら言う。

 

 

「うん、それで十分だよ。ありがとうユニちゃん」

 

 

 ネプギア胸に手を当てて、しみじみユニに感謝の気持ちを伝える。

 

 

「……アンタも少しは警戒しなさい。男なんてみんな獣なんだから」

 

 

 ユニはそんなネプギアの真摯な態度に少し恥ずかしくなり、そっぽを向いてぶっきらぼうに言う。

 

 

「うん、ユニちゃんがそういうなら頑張ってみる」

 

 

 ネプギアはそんなユニの態度を気にせずに嬉しそうにそう言って頷いた。

 

 

「……死ぬかと思ったわ……」

 

 

アノネデスは冷や汗をかきながら、「まったく、こっちは情報を持ってきてあげたっていうのに……」と愚痴をこぼす。

 

 

「情報? なんの?」

 

 

 アイエフは、その発言を聞き逃さず素早くアノネデスに質問をする。

 

流石は諜報部員、些細な愚痴も見逃さない。

 

 

「アレスター家が開こうとしてる、お祭りのことよ。聞きたいかしら?」

 

 

 アノネデスはいつもの調子を取り戻すと、もっいたいぶるように言う。

 

 

「はいです。知りたいです~」

 

 

 素直に頷くコンパにアノネデスは満足そうに頷くと話をする。

 

 

「アタシの調べでは一夜にして、プラネテューヌから多数の協力者と既に三千万クレジットの寄付があったそうよ」

 

「はえ~、凄いですぅ~」

 

 

 アノネデスの情報に目を丸くするコンパ。

 

 

「なんだかんだで、ギアちゃん達もプラネテューヌの人気者みたいね」

 

 

 アノネデスは自分の情報収集能力で、ネプギア達女神候補生が神次元のプラネテューヌの国民に受け入れられていることを知っているようだ。

 

 

「やったぁ~。これならお祭りは大成功ね」

 

「うれしい(わくわく)」

 

 

 ロムとラムはバンザイをして素直に喜びを表現する。

 

 

「さて、それはどうかしら?」

 

 

 しかし、アノネデスはそこに水を差すように、少し意地悪そうに言う。

 

 

「それはどういう意味かな?」

 

 

 ファミ通は興味深く質問をする。

 

 

「この国には本来の女神がいるんじゃないかしら?」

 

 

 アノネデスは人差し指を立てて左右に振りながら質問に答える。

 

 

「プルルート様のことだね」

 

 

 ファミ通の言葉にアノネデスは頷くと、「そう。ぷるちゃん派の人たちには面白くないみたいで、中には【ぶっ潰す】ってコメントもあったわ」と少し不穏な雰囲気で自分の集めた情報を伝える。

 

 

「ええ~! どうして、プルルートちゃんも一緒に遊べばいいじゃない」

 

「ひどい……(しくしく)」

 

 

 それを聞いたラムは憤慨し、ロムは悲しそうに目を潤ませる。

 

 

「ぷるちゃん本人の意思は関係ないのよ。中には過激な信者も居るってことよ。それじゃアデュー」

 

 

 アノネデスはそう言って去って行ってしまう。

 

 

「では、今までアノネデスさんとその対策を?」

 

 

 イストワールは、神次元のイストワールに問いかける。

 

 

「はい、同じプラネテューヌの国民を疑うのは心苦しいですが万が一の場合に備えて」

 

「それも致し方ありません。女神様が複数いれば派閥もできるでしょう。ましてやネプギアさんはプルルートさんの血縁者でもなく別次元の女神様ですし」

 

 

 少し落ち込む神次元のイストワールに対して、冷静にフォローを入れるイストワール。

 

 

「大丈夫……なんでしょうか?」

 

 

 ネプギアは心配そうに問いかける。

 

 

「私とアレスター家の皆さんで必ず何とかします。ですから心配しないで楽しみに待っていて下さい」

 

 

 神次元のイストワールは、神次元のプラネテューヌに尽力してくれるネプギア達の気持ちに応えようと、強い決意を込めた言葉で言う。

 

 

「わかりました……」

 

 

 ネプギアは少し不安そうだが、神次元のイストワールのことを信頼しこれ以上心配しなようにした。

 

 

「今月のお仕事はこれで終わりです。みなさん、来月もよろしくお願いいたします」

 

 

 神次元のイストワールはそう言って深々と頭を下げる。

 

その後、ネプギア達は超次元に戻りユニ達も自分の国に帰っていった。

 

 

 数日後に発売したファミ通の記事では女神候補生達の活躍と、それを敬う神次元の人々が記事に書かれていた。

 

それにより、プラネテューヌ、ラステイション、ルウィーのシェアが上がり、また神次元に対する好意的な関心も高まったようだった。

 

ちなみに、ネプテューヌは一週間ほど滞在してプルルートと遊んでいたそうな。

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