新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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007感謝祭

 神次元から帰還した翌日。

 

G.C.2019年4月29日 月曜日。

 

ネプギアとイストワールは、ウラヌスのお参りにギャザリング城を訪れていた。

 

ウラヌスとは過去に犯罪神を倒すアドバイスくれた人物だ。当時にギャザリング城はボロボロだったが、ネプギアとイストワールの意向で今は綺麗に掃除をされている。

 

駐在の職員に挨拶をし、ギャザリング城の奥に向かって行くネプギアとイストワール。

 

二人が足を止めたのは大きな広間で、その中心には簡素な墓石が置かれていた。

 

 

「こんにちは」

 

 

 ネプギアが挨拶をしながら墓石に、持っていた花を供えると、「お久しぶりです」とイストワールが頭を下げる。

 

 

「また来たのか? プラネテューヌの方は大丈夫なのか?」

 

 

 何もない場所から、やや年配と思われる女性の呆れた声が聞こえてくる。

 

この声の主こそがウラヌスであり、意識だけの存在になった彼女はここから動くことも出来ずにここに居る。

 

 

「大丈夫です。最近はお仕事が順調なんですよ」

 

 

 ネプギアは明るい声で言うと、「ファミ通さんと言うゲイム記者の方が取材を始めてから、シェアが右肩上がりなんです」と言って微笑む。

 

 

「そうか……おぬしの自己主張が弱いところは、わしも心配しておったが、上手い解決法を思いついたなイストワール」

 

 

 ウラヌスの言葉にイストワールは首を横に振ると、「いいえ、私の案ではありません。先方から取材させて欲しいと依頼があったのです」と答える。

 

 

「ほほう、お主の地道な活動をちゃんと見ている者が居たのだな」

 

 

 ウラヌスがそう言うと、「はい、ありがたいことです」とネプギアが素直に頷く。

 

 

「して、ネプテューヌの方はどうじゃ?」

 

 

 ウラヌスの質問にイストワールは、今度は疲れたように首を横に振って、「いつも通りです……」と言って肩を落とす。

 

 

「すまんのぉ。わしが犯罪神との戦いで命を落とさねば、彼の物も正しく指導してやれたのだが」

 

 

 ウラヌスが少し残念そうに言うと、「いいえ、ウラヌスさんの所為ではありません。現にラステイションの後を継いだノワールさんも、ルウィーの後を継いだブランさんも立派にお役目を果たしていますから、私の力不足です」とイストワールが答える。

 

 

「そう自分を責めるな。あの者はあの者なりに考えがあるやもしれぬ」

 

 

 ウラヌスが優しい声でイストワールを慰めると、「そうですね。そう思いましょう」とイストワールが答える。

 

 

「それに、ネプギアの方は良く育っているようではないか。会うたびに頼もしくなっているようじゃ」

 

 

 ウラヌスの誉め言葉にネプギアは顔を赤くして、「そ、そんなことないですよ……」と恥ずかしそうに謙遜する。

 

 

「謙遜することではないぞ。最初は若いなと思っていたが、どんどん顔つきが良くなっていくわ」

 

 

 ウラヌスが嬉しそうに言うと、「この十年近く地獄を見て来たんです。面構えが違います」とネプギアが突然ドヤ顔になる。

 

 

「また、ネプテューヌさんが変なことを教えたのですね……」

 

 

 イストワールが右手で額を抑えながら頭を抱えると、「姉を見習うのもほどほどにしておくのだぞ」とウラヌスも呆れた声を出す。

 

 

「しかし、確かにこの十年近くで良い経験をしてきたようじゃな」

 

 

 ウラヌスが改めて言うと、ネプギアは真面目な顔に戻り嬉しそうに、「はい」と頷く。

 

 

「私、昔はお姉ちゃんの後を付いて行くだけの何も出来ない弱虫でした。けど、女神候補生のみんなや他の仲間達と出会うことで、周りにも頑張っている人達がいるんだって勇気をもらって、そしてみんなで協力し高め合う仲間の素晴らしさを知りました」

 

 

 ネプギアはそう力説すると、「次に、神次元で自分の未熟さと愚かさと傲りを知りました」と少し反省をしたように顔を落とす。

 

 

「そして、この前の戦で、仲間と国を守る為に命を掛けて戦う、うずめさんの姿に女神のお手本を見た気がしました。おかげで最近になってようやく自分が女神として何を成すべきなのか見えて来た気がします」

 

 

 ネプギアは再び顔を上げてそう言うと、「そうか。素直に他人を尊敬し重んじ、そして自らの過ちに気付く……良いことだな。期待しておるぞ」とウラヌスが優しい声で言う。

 

 

「ありがとうございます。頑張ります」

 

 

 ネプギアは嬉しそうに答えると丁寧に一礼をする。

 

 

「ところで、お主が今見えている女神として成すべきこととはなんじゃ。よければ聞かせてもらえるか?」

 

 

 ウラヌスの言葉に、「はい」とネプギアは答えると、「私はゲイムギョウ界に生まれた全ての人、いえ全ての命に意味があると思ってます。だから、モンスターも今は悪いことをしている人達も心を入れ替えて一緒に平和に暮らすことが出来たらいいなって」と続ける。

 

 

「その為には、悪い人やモンスターを倒すだけではなくて、悪い人をつくらないようにする世界、そしてモンスターが人を襲わなくなる世界を目指したいんです」

 

 

 ネプギアの言葉をウラヌスとイストワールは黙って聞いている。

 

 

「調和と協調を大事にして、人と動物、科学と自然、秩序と自由、それらを固定概念に囚われず柔軟に変化させ、常にバランスよく保ち続ける。それが女神の役目だと信じています」

 

 

 ネプギアが言い終わると、イストワールは拍手をしながら、「ご立派です。この十年の間で本当に成長されましたね」と言いながらニッコリと微笑む。

 

ウラヌスも、「若いのに立派な心掛けじゃ」と嬉しそうな声を出す。

 

 

「わしも何か手助けしてやりたいところじゃが……この姿ではな」

 

 

 ウラヌスが残念そうに言うと、「えっと……じゃあ、相談に乗ってもらえますか」とネプギアがウラヌスに言う。

 

ネプギア自身聞きたいことがあったし、気落ちしたウラヌスへの気遣いもある。

 

 

「なんじゃ? わしに答えられることなら何でも言うがよい」

 

 

 ネプギアの言葉にウラヌスは少し嬉しそうな声をする。

 

彼女は犯罪神との戦い以降、定期的に墓参りに来てくれる真面目なネプギアに少なからず好意を抱いていた、その彼女に頼られるのが嬉しいようだ。

 

 

「私、成長しているふうには言われるんですけど、女神化した時に変化が少ないのが気になっているんです」

 

 

 ネプギアの質問にウラヌスは、「なんじゃ、そんなことを気にしているのか?」と意外そうな声を出す。

 

 

「そんなことって言われても……お姉ちゃん達は変身すると姿も性格もガラッて変わるし。個性的でいいな~……って思ったりして」

 

 

 ネプギアの言葉に、「ふむ、隣の芝生は青く見えると言うのはこういうことかの」とウラヌスが少し呆れたように言う。

 

 

「そういうものなんですか?」

 

 

 ネプギアが不思議そうに首を傾げると、「性格と姿の変化が少ないのは安定している証拠。むしろ長所じゃ」とウラヌスが答える。

 

 

「長所なんですか? まだ未熟だからだとばっかり……」

 

 

 ネプギアが意外そうに言うと、「お主は機械に詳しいようじゃが、機械も過剰な変化が起こると大きな負担になるであろう」とウラヌスが答える。

 

 

「そうですね。負担を掛けると機械が熱を持ってしまいますね」

 

 

 ネプギアの言葉にウラヌスは、「うむ、その通りじゃ。ネプテューヌが変身すると疲れると言うのは本人の性格の他にも、20センチ近い身長と10キロの体重の増加という大きな体の変化よる負担が関係しておる」と答える。

 

 

「改めて言われると、確かに疲れそうですね。骨格とか体脂肪とか変わり過ぎて痛くないのかな? お姉ちゃんのこと少し心配になってきちゃった……」

 

 

 ネプギアが心配そうに呟くと、「そして性格の変化は、主に戦闘に適した性格の変化であり仕事モードとも言える。その為、気疲れも多いのじゃ」とウラヌスが話を続ける。

 

 

「確かに、ノワールさんやブランさんはテンションが上がり過ぎて疲れるような気がします。お姉ちゃんも真面目になるの疲れそう……」

 

 

 ネプギアはまたネプテューヌの心配をするが、ウラヌスはそれを気には留めず、「確かに変化が激しいのは派手で人目を引き、そのパフォーマンスは信者を喜ばせるが、姿や性格を変えるのはそれなりに疲れるのじゃ」と続ける。

 

 

「そして変化が少ないと言うのは、消耗が少なく安定しており、長期戦にも向いておるんじゃ」

 

 

 ウラヌスが更に話を続けると、「ありがとうございます。少し安心しました」とネプギアが一礼してお礼を言う。

 

 

「お主の変化が少ないのは、裏表の無い純粋な性格と一途な想いの現れじゃ、気にすることではない。真面目かつ努力家で礼儀正しい上に謙虚で優しく正義感の強いお主が無理に性格を変えることなどないぞ。そのままでいた方が良い」

 

 

 ウラヌスの立て続けの褒め言葉にネプギアは顔を赤くして、「そんなに褒めないで下さい……」と恥ずかしそうに俯く。 

 

 

「お主たち女神候補生達のように、戦いの為にやや強気になって女神としての責任感が強くなる程度が丁度いいのじゃ。ギャップ萌えなどと、もてはやされておるが激しい二面性は危険でもある。本人にとってもその周りの人にとってもな」

 

 

 ウラヌスはそう言うと、「ましてや、女神になって強くなった力と性格を利用して横暴を振るうのは暴君と変わらぬ。いずれは破滅するだろう」と付け加える。

 

その言葉を聞いたネプギアは俯いて黙ってしまう。

 

ネプギアの脳裏に二人の女性が浮かび上がる。

 

一人はキセイジョウ・レイ。

 

神次元の古の国であるタリの女神で自らの横暴で国と国民を滅ぼしてしまう。

 

そしてもう一人は……。

 

ネプギアはそこで考えるのを止めた。

 

そんなふうに考えてしまうことが誤りなのだと、ネプギアは考えを振り払うようにかぶりを振った。

 

 

「どうした?」

 

 

 ウラヌスが心配そうにネプギアに声を掛けると、「いいえ、何でもないです。色々ありがとうございます。おかげで自信がつきました」とネプギアが微笑む。

 

 

「そうか、ならば良かった。何故かお主のことは娘のように思えてしまう。そのお主の力になれたのなら嬉しい」

 

 

 ウラヌスが嬉しそうに言うと、「ありがとうございます。ウラヌスさん」と二人の話を聞いていたイストワールが丁寧に頭を下げる。

 

 

「あっ、そうだ! もう一つ聞いて貰えますか?」

 

 

 ネプギアが思いついたかのように言うと、「なんじゃ?」とウラヌスが不思議そうな声で答える。

 

ネプギアはわざと明後日の方向を向くと、「ウラヌスさんは何処に住んでますか~?」と問いかけると、自分自身の質問に答えるように向き直る。

 

そして、「この裏ぬ住んでいます!」とドヤ顔で答える。

 

 

「あー……えー……と……だ、だじゃれと言うやつかの?」

 

 

 ウラヌスが困った声で何とか答えると、「はい! どうでしたか?」とネプギアが嬉しそうな顔で問いかける。

 

 

「……うむ……悪くはないな、悪くは」

 

 

 ウラヌスは差し障りの無い回答をするが、「そうですか! よかった。ありがとうございます」とネプギアは嬉しそうに微笑む。

 

 

「……イストワール、余計なことを教えるでない」

 

 

 ウラヌスが小声でイストワールを注意すると、「……ネプテューヌさんのせいですよ……」とイストワールが肩を落とす。

 

その後、ネプギアとイストワールはプラネテューヌの近況をウラヌスに話してギャザリング城を後にした。

 

 

 

***

 

 

 

 G.C.2019年5月1日 水曜日。

 

 

 世間一般はゴールデンウイークの休日だ。もちろん女神達にもゴールデンウイークはある。

 

ネプギア達女神候補生はプラネテューヌに集まり、バンド活動の第一歩として泊まり込みの合宿をすることになっていた。

 

ネプギアはユニ達の到着を待つあいだ、自分用のラボラトリー内のパソコンで初音ミクと話をしていた。

 

 

「ミクちゃん、今日から合宿だけど調子はどうかな?」

 

 

 ネプギアがパソコン画面のミクに向けて話しかけると、「絶好調だよ。ネギちゃんの調律はいつも優しくて温かいから、いつでも完璧に歌えるよ」と画面のミクが笑顔を浮かべる。

 

 

「そう? よかった」

 

 

 ネプギアはそう言って微笑み返すと、「これから、みんなで一緒に素敵な音楽を作ろうね」と続ける。

 

 

「うん! ネギちゃんと一緒なら出来るって信じてる」

 

 

 ミクがそう答えると同時にラボラトリーのドアが開く。

 

 

「ネプギアお姉さん、みんなが来たよ」

 

 

 入って来たプラエがそう言うと、「ありがとう。それじゃ、そろそろ始めよっか」とネプギアがプラエに向けて言う。

 

 

 ラボラトリーに集まった女神候補生とプラエと初音ミクのバンド、【グランプリ・ユナイテッド】はそれぞれの楽器を練習し始める。

 

初心者の集まりなので、まだまだ演奏はぎこちないが、それぞれが真剣にそして楽しそうに練習していた。

 

 

 ちなみにネプギアのラボラトリーはかなり広く、一般的な学校の体育館ぐらいの広さがある上に防音設備も完璧だ。

 

これはネプギア自身がかなり本格的な発明品を作る上に、ネプギアンダム等の整備なども行う為に、設備もそれなりの物が必要になるからだ。

 

 

「あっ……」

 

 

 演奏中にロムがミスをしてしまう。

 

 

「ロムちゃん、どうしたの? 少し疲れちゃったかな?」

 

 

 ネプギアが優しい声で尋ねると、「うん、ちょっと疲れた(へろへろ)」とロムは素直に疲れたことを伝える。

 

それに合わせて、「プラエも疲れちゃった」とプラエもバイオリンを肩から降ろす。

 

 

「それじゃあ、少し休憩にしましょ」

 

 

 ユニがそう言うと、「うん、そうだね。私、飲み物とお菓子持ってくるね」とネプギアが頷く。

 

 

 そうして休憩に入るネプギア達。

 

 

「あの……ネギちゃん達に聞きたいことがあるんだけど」

 

 

 パソコン画面のミクがネプギア達に問いかけると、「どうしたの? 改まって」とネプギアがミクに尋ねる。

 

 

「どうして、私をバンドのメンバーに入れようと思ったの? ネギちゃん達はプラエちゃん以外確かに楽器初心者だけど、ちゃんと練習すれば歌いながら演奏できると思う」

 

 

 ミクがそう言うと、ネプギアは少し困った顔をするが、すぐに真面目な顔に戻って、「私がミクちゃんと一緒に音楽がしたいと思ったからかな」と答える。

 

 

「私……と?」

 

 

 ミクは不思議そうな声を出して首を傾げる。

 

そんなミクに対して、「前にゲイムギョウ界の出たミクちゃんのリズムゲーム、【プラネティックディーバー】は凄く人気があって、携帯ゲーム機の普及に一役買ってくれたんだよ」とネプギアが説明を始める。

 

 

「ふきゅー? どこか壊れちゃったの?」

 

 

 ラムが不思議そうに腕を組んで首を傾げると、「それは復旧。普及は広く行き渡ること、要はみんなが持ってるってことよ」とユニがツッコミを入れる。

 

 

「携帯ゲーム機は、私達女神候補生の分身。それの普及に貢献してくれたミクちゃんは私達の恩人だし、私は一緒にゲイムギョウ界を盛り上げた仲間だとも思ってる」

 

 

 ネプギアがミクに話し続ける。

 

それを聞いたユニが、「そうよ。U.N.Iもミクのおかげで大分売れたし、ミクもアタシたちの仲間よ」と言い、「わたしもミクちゃん好きだよ(もじもじ)」とロムが、「うん、わたしも好きー!」とラムが言う。

 

しかし、ミクは少し悲しそうに、「でも、私はただの音楽ソフト。人ですらない……」と呟く。

 

 

「そんなの関係ないよ! 女神も人も音楽ソフトも心が通じ合えば仲間にだってなれる!! ゲイムギョウ界とオンガクギョウ界とで住んでる世界が違ってもだよ!」

 

 

 ネプギアが力強くそう言うと、「ネギちゃん……」とミクが少し嬉しそうな声で呟いた。

 

 

「ネプギアお姉さんは、人も物もみんなが幸せになれる世界を目指してる。プラエはそのお手伝いをしてるの。ミクさんにも一緒にお手伝いして欲しいな」

 

 

 プラエがミクに向かってそう言うと、「本当に私でいいの?」とミクが少し自信なさそうに尋ねる。

 

すると、「ミクちゃんじゃないとダメだよ」とネプギアが真剣な声で即答する。

 

 

「ありがとう、ネギちゃん」

 

 

 ミクはそう言うと嬉しそうに微笑んで、「ネギちゃんがマスターになってくれて本当によかった」と呟いた。

 

 

「私、もっとネギちゃんの役に立ちたいな」

 

 

 ミクがそう言うと、「ありがとう。でも、今はその気持ちと歌ってくれるだけで十分だから」とネプギアが優しく答える。

 

 

「……そうだよね。私、歌うことしか出来ないもんね」

 

 

 ミクは少し残念そうに呟くが、「はい、はーい! それなら、わたし、ミクちゃんに応援してもらいたい!」とラムが左手を上げた。

 

 

「応援? どうやって?」

 

 

 ユニが不思議そうに首を傾げる。

 

するとラムは笑顔で、「もちろん、歌でよ! ほら、金融詩人とかあるじゃない」と言うが、「それは吟遊詩人のことかな?」とネプギアにツッコミを入れられてしまう。

 

【吟遊詩人】とは様々な歌で仲間達をパワーアップさせるなどして戦う職業。

 

 

「おおー! さすがラムちゃん(ぱちぱち)」

 

 

 ロムが彼女にしてはやや興奮気味にラムを褒める。

 

続けてプラエも、「ラムさん、賢い」と感心をした。

 

 

「って言っても、そんな簡単に出来るものなの?」

 

 

 ユニがあごに手を当てながらネプギアに尋ねると、「ミクちゃんが活躍できるかどうかなんだ、やってみる価値ありますぜ!」とネプギアがサムズアップで答える。

 

 

「何で男口調なのよ……このメカアニメオタクが……」

 

 

 ユニは頭を抱えながら、溜息を吐いた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「そんな訳で、完成しました! ネプギアンダムHMタイプ!」

 

 

 ネプギアがそう言うと同時に、側に置いてあったネプギアンダムから後光が放たれる。

 

先程の会話から約三時間、ネプギアは何か取りつかれたように黙々と機械のパーツを作成し、このネプギアンダムHMタイプを作ったのだ。

 

 

「HMタイプは、【Hologram&Music(ホログラム&ミュージック)】の意味があって、これでミクちゃんのホログラムを呼び出しながら歌を歌ってもらうの」

 

 

 ネプギアが説明する通り、今のネプギアンダムには右手にホログラムの投影機、左手にミクのソフトが入ったパソコンが装備されており、更に両肩には巨大なスピーカーが乗っていた。

 

 

「「「おおお~~~」」」

 

 

 ロム、ラム、プラエがネプギアの説明に驚きの声を上げる。

 

 

「要はネプギアンダムに、ミクが歌うのに必要な機材を載せたのね」

 

 

 ユニがそう言って頷くと、「こんなことが出来るなんて、ネギちゃんは本当に凄いんだね」とミクが感心をした。

 

 

 同時にラボのドアが開く。

 

 

「ネプギアさん、いらっしゃいますか?」

 

 

 入ってきたのはイストワールであった。

 

 

「いーすんさん、どうしたんですか? 何か困ったことでも起きましたか?」

 

 

 ネプギアがイストワールに尋ねる。

 

ネプギアが言う通り、イストワールは八の字眉毛で、はた目にも困っていることが伝わっていた。

 

 

「ええ、ハネダシティの近郊にまたモンスターが現れたようなのです……」

 

 

 イストワールがそこまで言うと、「グッドタイミングー!」とラムが嬉しそうに左手を上げる。

 

イストワールは目を丸くして、「は?」と驚くが、「ネプギアンダムHMタイプ出撃(びしっ)」とロムもノリノリで敬礼をする。

 

 

「えーとですね……」

 

 

 今までの経緯をイストワールに説明するネプギア。

 

するとイストワールは、「なるほど、そういうことですか」と納得する。

 

 

「いきなり実戦になるけど、大丈夫かしら?」

 

 

 ユニがミクのことを心配するが、「大丈夫だよ。大体のロボットアニメは、成り行きで民間人の主人公が主役機に乗り込んで戦うところから始まるし」とネプギアが答える。

 

 

「その、ロボットアニメ脳は少し直しなさい」

 

 

 ユニが呆れながらそう言うと、「私なら多分大丈夫。歌ってみんなを応援すればいいんだよね」とミクが言った。

 

 

***

 

 

 大型車に乗ってハネダシティの入り口に到着したネプギア達。

 

ちなみにネプギアンダムは長距離侵攻仕様のAタイプ【Assoult(アサルト)】に換装しての出撃である。

 

 

「今回のクエストは、プラネテューヌの街の近郊に現れた、データハウンドを従えたロングホーンの退治です」

 

 

 イストワールがそう言いながら、ホログラムを呼び出す。

 

そこにはハネダシティ周囲の地図と、モンスターの姿が表示されていた。

 

 

「データハウンドが、小型の恐竜型モンスターで、ロングホーンが大きな角を持った中型の恐竜型モンスターですね」

 

 

 ネプギアがイストワールの言葉に答える。

 

彼女の言う通り、データハウンドは大きさ1メートル強程で、四足歩行の恐竜のような姿をしたモンスターで、ロングホーンは3メートル程で、同じく四足歩行をする恐竜のようなモンスターだ。

 

 

「ちょっと強そう……」

 

 

 プラエが少し自信なさそうに呟く。

 

恐竜型のモンスターということで両者とも獰猛な見た目をしていた。

 

 

「大丈夫よ。強そうなのは見た目だけで、大したことないんだから」

 

 

 ラムが両手を腰に当てて胸を張って言うと、「みんながいれば大丈夫(あんしん)」とロムが言う。

 

 

「そうね。でも、油断は禁物よ」

 

 

 ユニがそう言うと、「そうだね、戦闘が初めてのミクちゃんもいるし」とネプギアが頷く。

 

 

「それじゃあ、偵察の為にRタイプにするよ」

 

 

 ネプギアはそう言うと以前のように、ネプギアンダムの換装を始める。

 

 

「そのプラモデルの差し替えみたいので、性能が変わるって本当に便利ね」

 

 

 ユニが呆れ半分感心半分でそう言う。

 

 

「それじゃあ、色々省略してネプギアンダム発進ー!」

 

「リョウカイ。パインサラダキタイシテルゼ」

 

 

 ネプギアが換装を終わらせたネプギアンダムを発進させる。

 

ユニは頭を抱えて、「その死亡フラグ言わせるのやめなさい」と言った。

 

 

***

 

 

 暫くして偵察を終わらせたネプギアンダム帰還してくる。

 

 

「ご苦労様。偵察データの転送が終わったら、HMタイプに換装するからね」

 

 

 ネプギアはそう言うと、Nギアを操作してテキパキと仲間達に偵察データの転送をすると、ネプギアンダムのパーツを差し替え始める。

 

 

「ネプギアお姉さん、街の人が集まってきたよ」

 

 

 プラエが言うように、遠巻きにネプギア達を見ているハネダシティの住人たちが増えてきているようだ。

 

 

「女神様だ女神様」

 

「ネプギアンダムもいるぞー」

 

「モンスターを退治しに来てくれたのよ」

 

 

 ハネダシティの住人達が、ざわざわと騒ぎ出す。

 

 

「うーん、どうしよう。いつもならネプギアンダムに守らせるんだけど……」

 

 

 ネプギアが困った声で首を捻ると、「この街の衛兵を呼んで守らせましょう」とイストワールが答える。

 

そして、イストワールは通信モードになると、「イストワールです。衛兵の出動を要請します」とハネダシティの衛兵達と通信を取った。

 

暫くすると、ハネダシティの衛兵が駆け付けて、街の人達が不用意に近づかないよう指示しつつ、護衛をしてくれた。

 

 

「これで一安心ですね」

 

 

 ネプギアがホッとしたように言うと、「街の人達が見てるんだから、華麗に決めないとね」とユニが右こぶしを左の手のひらに当てながら気合を入れる。

 

 

「わたし達の活躍をみんなに見てもらうわよ!」

 

 

 ラムが小さくガッツポーズをすると、「うん、みんなと一緒にがんばる(がっつ)」とロムも同じように小さくガッツポーズをする。

 

 

「なんだか緊張する……」

 

 

 プラエがそう言うと、「心配ないわ。この前みたいにやればいいのよ」とラムがプラエを励ます。

 

 

「換装完了。ネプギアンダムHMタイプ起動します!」

 

 

 その間にネプギアンダムの換装を完了させたネプギアが、ネプギアンダムにそう呼びかけると、「リョウカイ。ミクサン、ガンバリマショウ」とネプギアンダムが答える。

 

ネプギアンダムが右手のホログラム投影機を起動すると、宙にマイクを持ったミクのホログラムが現れる。

 

かなり高度な3Dホログラムで、それを見たロム、ラム、プラエが「「「おおっ!」」」といつものように声をハモらせて驚く。

 

 

「数時間で作った割にはかなりのものね」

 

 

 ユニが素直に感心をすると、「前々からミクちゃんをホログラムにしようって動きはあったから、その技術を使ってみただけだよ」とネプギアが謙遜をする。

 

しかし、イストワールは、「そうだとしても、ここまでの物を作れるなんて流石はネプギアさんです」と嬉しそうに言う。

 

 

「……これは?」

 

 

 ネプギアンダムのスピーカーからミクの少し戸惑った声が聞こえる。

 

 

「これがミクちゃんの新しい体だよ。どう? 気持ち悪いとか、おかしなって思うところとかない?」

 

 

 ネプギアがミクのホログラムに向けて尋ねると、「ううん、気持ち悪いとこもおかしいところもないよ。むしろ、清々しい気分」とミクが答える。

 

 

「よかった。大成功!」

 

 

 ネプギアが嬉しそうに柏手を打つと、「ありがとう、ネギちゃん。凄く嬉しい」とミクが嬉しそうに頬を赤く染める。

 

 

「表情とか動きとかよくできてるわねー」

 

 

 ユニが腕組みしながら、ミクをしげしげと観察する。

 

ミクは先程のネプギアとの短い会話の中でも様々な表情と体の動きを見せていた。

 

 

「本当だね。普通の人と全然かわらないよ」

 

 

 プラエも頷きながらユニに同意する。

 

 

「流石はネプギアちゃん(すごいすごい)」

 

 

 ロムが嬉しそうにネプギアを褒めると、「わたし達のネプギアの技術力は世界一ィィィィィィ!」とラムが左手を上げながら人差し指を突き出す。

 

 

「おい、あれ初音ミクじゃないのか?」

 

「うん、間違いなく初音ミクだ」

 

「ネプギア様の新しい発明か?」

 

 

 ミクを見たハネダシティの住人がざわざわと騒ぎ出す。

 

 

「かなり注目を集めてるみたいね」

 

 

 ユニがそう言うと、「ミクちゃんの自己紹介とかした方がいいのかな?」とネプギアが首を傾げる。

 

 

「それなら、ゲリラ豪雨しましょうよ!」

 

 

 ラムが元気よくそう言うと、「いきなり雨を降らせるのは難しいんじゃないかな。と言うか、出来てもそんなことしちゃダメだよ」とネプギアが答えるが、「もしかして、ゲリラライブって言いたいの?」とユニがツッコミを入れる。

 

 

「それよそれ! お馬さんも勝ったらライブとかするでしょ? だったら、わたし達もモンスターをパパッと倒して、ライブしましょうよ!」

 

 

 ラムが嬉しそうに言う。

 

しかし、「知らない人の前で演奏なんて、怖い(ぶるぶる)」とロムが縮こまってしまう。

 

 

「プラエも自信ないよ……」

 

 

 更にプラエも困った声を出し、「ラムちゃん、いきなりライブって言うのは難しいよ」とネプギアも考え込んでしまう。

 

ユニも腕組みして、「流石にもう少し練習してからの方がいいんじゃないの?」と言う。

 

 

「なによなによー! みんなの弱虫ー! ちょっと失敗したって平気よ! ガツーンと行きましょうよ」

 

 

 しかし、ラムが諦めずに食い下がると、「ネギちゃん、私、ライブしたい」とミクが訴える。

 

 

「ミクちゃん?」

 

 

 ネプギアが不思議そうにミクに問いかけると、「今の私、この新しい体で歌いたくて、うずうずしてるの。だからお願い」とミクが上目遣いにネプギアに頼み込んだ。

 

 

「うーん……どうしよっか? 確かに、やらずに後悔するより、やって後悔した方がいいって言葉もあるけど」

 

 

 ネプギアが少し前向きな意見を言うと、「確かにそうね。楽器初心者のことはブログでも書いてるし、失敗したなら失敗したなりにブログのネタになるわね」とユニも前向きな意見を言う。

 

 

「ネプギアちゃんもユニちゃんもそう言うなら頑張ってみようかな……」

 

 

 ロムがそう言うと、「そうよ! ロムちゃん、頑張りましょうよ」とラムが両手でロムの両手を握る。

 

続いて、「それなら、プラエも頑張ってみるよ」とプラエが言うと、ラムは万歳をして、「それじゃあ、決まり! そうと決まればパパッと倒しちゃいましょう」と嬉しそうに言った。

 

 

「まったく……ラムの押しの強さにも困ったものね」

 

 

 ユニが腕を組んで呆れたように言うと、「でも、ラムちゃんのこういう前向きなところに何回も助けられてるし、私は好きだよ」とネプギアは答えた。

 

 

 「それじゃあ、作戦を立てよっか」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ネプギア達は先日のフェンリルとの戦いの前と同じように作戦立て始める。

 

 

「戦場は前と同じく見晴らしのいい草原。データハウンドは二十匹ちょっとで、ボスのロングホーンが一匹。私達はレベル18だけど、ミクちゃんは1だから、気をつけて戦わないとね」

 

 

 ネプギアの言葉に、「そうね、ミクはアタシから離れないようにして」とユニがミクに向かって言うと、「うん、よろしくね」とミクが頷く。

 

 

「前と同じように、私が最前衛でプラエちゃんは私のバックアップ。ロムちゃんとラムちゃんは中衛で援護。ユニちゃんは後衛で狙撃とミクちゃんの護衛でいいかな?」

 

 

 ネプギアが簡単な役割分担を話すと、「うん、任せて」とプラエが頷き、「がんばる(ぐっ)」とロムが小さくガッツポーズし、「ラムちゃんにお任せよ」とラムが左手でVサインを決める。

 

 

「前と同じようにアタシが狙撃で敵をおびき寄せるから、ネプギア達は上手く迎撃して」

 

 

 ユニがそう言うと、「うん、わかった」とネプギアが頷き、「私達の綿密なコンビネーションを見せてあげるわ」とラムが意気込む。

 

 

「それじゃあ、作戦開始」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「ミクちゃんは、まずは攻撃力の上がる歌を歌って。吟遊詩人の初歩的な歌は全部インストールしておいたから」とミクに向かって言う。

 

 

「うん、大丈夫。歌えるよ」

 

 

 ミクがそう言って力強く頷いた。

 

 

 

***

 

 

 

「EWACで敵を捕捉。ユニちゃん、狙撃お願い」

 

 

 その後、前線に赴いたネプギアがレーダーで敵を捕捉すると、ユニに攻撃開始のサインを送る。

 

 

「了解。十五秒後に狙撃開始するわ」

 

 

 ユニは短く応答をすると、「ミク、歌って」とミクに言う。

 

 

「うん」

 

 

 ミクはそう言った後に深呼吸を一つすると、歌い始める。

 

同時に、ネプギアンダムのスピーカーからBGMと共に特徴的な機械音声で歌うミクの歌声が流れると、ネプギア達の体が赤く光りだす。

 

 

「いいわよ。攻撃力が上がってるわ」

 

 

 ユニはそう言いながら、レティクルの照準を一匹のデータハウンドに合わせる。

 

 

「落ちろ!」

 

 

ズキューン

 

 

 ユニの声と共に銃声が鳴り響く。

 

銃弾は見事にデータハウンドの後頭部に当たり、「ガウッ!」という悲鳴と共にハイドアタックとヘッドショットと合わせた266のダメージが当たり、データハウンドの一体が戦闘不能になる。

 

 

「いい感じね。ミクの歌のおかげで威力が上がってるわ」

 

 

 ユニは嬉しそうに言うと次のデータハウンドに狙いを定めた。

 

 

 

***

 

 

 

 その頃、最前線ではネプギアと一緒にいるプラエが小さな拍手をしていた。

 

 

「ユニお姉さん、調子がいいみたいだね」

 

 

 正確な狙撃で次々とデータハウンドを戦闘不能に追い込んでいるユニの活躍を喜んでいるのだ。

 

 

「そうだね、ミクちゃんのおかげかも。それより、敵がこっちに向かって来るけど大丈夫」

 

 

 ネプギアがプラエに尋ねると、「うん、大丈夫。ネプギアお姉さんが一緒だから怖くないよ」とプラエは頷いた。

 

 

「ガウガウッ!」

 

 

 データハウンドの群れが、ユニに向けて走って来る。

 

ネプギア達はフェンリルとの戦いと同じように途中で待ち伏せる。

 

 

「ロングホーンは動いて来ないみたい。これなら前と同じようにロムちゃんとラムちゃんの居る地点まで誘き寄せて、ヴォルガノンで一気に倒せるね」

 

 

 ネプギアがレーダーを確認しながら頷く。

 

敵の行動が前回のフェンリルとの戦いと同じなので、同じように迎撃しようというのだ。

 

その後、ネプギアはボムで奇襲をかけた後に、データハウンドの群れを引きつけて後退した。

 

 

 

***

 

 

 

 

「「……大地に眠る熱き炎よ……山となりて敵を焼き尽くせ! ヴォルガノン!!」」

 

 

 女神候補生達の作戦は前回と同じように大的中をした。

 

ネプギアに誘き寄せられたデータハウンドの群れは、ロムとラムの合体魔法で一網打尽された。

 

 

「ロムさん、ラムさん、すごいすごい」

 

 

 プラエが拍手でロムとラムを褒めると、「ミクちゃんのおかげで、魔法の攻撃力も上がってるから楽勝よ」とラムが左手でVサインを決める。

 

ロムも、「凄く力が出る(もりもり)」と小さくガッツポーズ決める。

 

 

「あとはデータハウンドが数匹とロングホーンだけだね」

 

 

 ネプギアがそう言うと同時に、「一度そっちに合流するわ」とユニからの通信が入って来る。

 

 

 数分後、ネプギア達はユニとミクとネプギアンダムと合流をする。

 

 

「ミクちゃん、大活躍だよ」

 

 

 合流して早々に嬉しそうにミクを褒めるネプギア。

 

ミクも嬉しそうに微笑むと、「ありがとう、ネギちゃん。みんなの役に立てたなら嬉しい」と言う。

 

 

「ロングホーンは動かないみたいね」

 

 

 ユニがレーダーを見ながら呟くと、「攻撃を当てるか縄張りに入らない限り攻撃してこないタイプだと思う」とネプギアが答える。

 

 

「じゃあ、早速ユニちゃんの狙撃で誘き寄せましょう」

 

 

 ラムがそう言うと、「そうね。まずは残った取り巻きから倒しましょうか」とユニが頷きながら銃を構える。

 

ネプギアも、「うん、そうしよう」と頷く。

 

 

「データハウンドはあと五匹か……こいつ等はアタシに任せて。みんなはロングホーンに集中して」

 

 

 ユニがそう提案すると、「うん、ロングホーンが動いたら、私とプラエちゃんが抑えるね。ロムちゃんとラムちゃんは魔法で援護して」とネプギアが答える。

 

更にミクを見ながら、「ミクちゃんとネプギアンダムも私と一緒に来て。今度は防御力アップの歌を歌ってくれるかな?」そう言うと、「うん、わかった」とミクが頷きながら答える。

 

 

「じゃ、行くわよ。まずはデータハウンドを一匹落とすわ」

 

 

 ユニはそう言いながら銃を構える。

 

同時に、ロムが魔法の詠唱を始める。

 

 

「とびでるよ!」

 

 

 ロムが攻撃力アップの魔法をユニにかけると、ユニの銃が赤く光る。

 

 

「サンキュー、ロム」

 

 

 ユニはロムにお礼を言いながらレティクルの照準をデータハウンドの頭に捉える。

 

 

「いただき!」

 

 

ズキューン!

 

 

 ユニの声と共に銃声が鳴り響く。

 

銃弾は見事にデータハウンドの頭部に当たり、「グワーッ!」という悲鳴と共にハイドアタックとヘッドショットと合わせた362のダメージが当たり戦闘不能になる。

 

 

「グオオオオオオン!」

 

 

 それと同時にロングホーンが雄叫びを上げながら、一直線にネプギア達に向かって来る。

 

残った四匹のデータハウンドも、その後に続く。

 

 

「行くよ! みんなついて来て!」」

 

 

 ネプギアはそう言いながら迎撃する為に、ロングホーンに向かって走り出す。

 

ネプギアを先頭に、その後ろにプラエ、ロム、ラムが続き、更に後ろにミクとネプギアンダムが付いてくる。

 

 

「来たっ!」

 

「ガウウウウウウ!!」

 

 

 ネプギアの目の前にロングホーンがもの凄い勢いで迫って来る。

 

 

「ミクちゃん、歌を!」

 

 

 ネプギアが叫ぶ。

 

 

「うん!」

 

 

 ミクが歌いだすと、ネプギア達の体が青く輝きだす。

 

 

「この力なら! フィールド全開!」

 

 

 ネプギアは両手を突き出し、防御の魔方陣を展開すると正面からロングホーンに立ち塞がる。

 

ロングホーンは走る勢いを落とさずにネプギアに突っ込んで来る。

 

 

ガキンッ!

 

 

 ネプギアの防御の魔方陣とロングホーンの巨大な角がぶつかり合い火花を散らす。

 

ネプギアは受け止めた衝撃で、50のダメージを受けてHPゲージが四分の一程度減少する。

 

 

「くぅぅぅぅぅ!!」

 

「ガウウウウ!!」

 

 

 ネプギアとロングホーンの力比べだ。

 

両者の力は拮抗しており、互いに一歩も譲らない。

 

 

「ガウガウッ!」

 

 

 そこにデータハウンドが横槍を入れようとネプギアの左側面から襲い掛かる。

 

 

「邪魔はさせないよ!」

 

 

 プラエが叫ぶと、「クロックチェーン五時、水の力よ!」と言って右の小指から水流を纏った鎖を伸ばす。

 

鎖に打ち据えられたデータハウンドは、125のダメージを受けて、「ガアッ!」と短い悲鳴を上げる。

 

 

「ガウガウッ!」

 

 

 更にもう一体のデータハウンドがネプギアの右側面から襲い掛かろうとする。

 

 

ズキューン

 

 

 しかし、すぐさまユニの狙撃が頭部に命中し、210ダメージを受けて、「ギャウッ!」と悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。

 

 

「「ガオオオオン!」」

 

 

 残り二匹のデータハウンドがネプギアの左右から迫る。

 

 

「そうはさせないんだから!」

 

 

 ラムが叫ぶ。

 

 

「ネプギアちゃんはやらせない!」

 

 

 同時にロムも叫ぶと、「「…凍えつく大気よ、我が呼びかけに応え、敵の動きを封じよ………」」と呪文を唱え始める。

 

 

「「アイスホールド!」」

 

 

 ロムとラムが魔法を放つと、左右から迫ったデータハウンドの足元が凍りつき、115のダメージが当たり動きが止まる。

 

 

「てぇぇぇぇぇぇぇい!」

 

 

 仲間の援護に勇気づけられたネプギアが一気にロングホーンを押し返す。

 

 

「ガアッ!」

 

 

 バランスを崩し、隙を見せるロングホーン。

 

 

「チャンス! Gビット」

 

 

 ネプギアが叫ぶと同時にネプギアの左右から現れたGビットがロングホーンに襲い掛かる。

 

 

「一閃! リンドバーグ!」

 

 

 更にネプギア自身もロングホーンの懐に潜り込んで、ビームソードでの連続攻撃を加える。

 

 

「グアアアアアア!!」

 

 

 ロングホーンの悲鳴と共に、合計で601のダメージが当たる。

 

 

ズキューン! ズキューン! ズキューン! ズキューン!

 

 

 その隙にユニが素早い四連射で、データハウンド四匹を撃ち抜いて戦闘不能に追い込む。

 

 

「よし、取り巻きは全滅ね」

 

 

 後方のユニが得意気にウインクをする。

 

 

「さっすがユニちゃん」

 

 

 ラムが柏手を打ってユニを称賛すると、「百発百中(ずきゅーん)」とロムも右手で指鉄砲を作ってユニを褒める。

 

 

「プラエも頑張るよ!」

 

 

 更にネプギアとユニの活躍に刺激されたプラエが、「クロックチェーン六時、土の力よ!」と右の六本目の指、時指から茶色い光を纏う鎖を伸ばしてロングホーンに追撃をする。

 

鎖はロングホーンに当たると114のダメージを与えた。

 

 

「ガアアアアア!」

 

 

 体勢を立て直した、ロングホーンが大きく息を吸い込む。

 

 

「ブレス攻撃!?」

 

 

 ネプギアはロングホーンもフェンリルと同じブレス攻撃を持っていることを予測した。

 

 

(ボムで相殺しなきゃ!)

 

 

 ネプギアは一瞬でそう判断をするが、(……いや、それよりも!)と考え直す。

 

 

「プラエちゃん、敵の時間を遅くして!」

 

 

 ネプギアが叫ぶ。

 

 

「うん!」

 

 

 プラエは頷くと、「時間さん、敵の時間を遅くして!」と祈るように両手を合わせる。

 

 

「みんな! 敵の側面に回り込んで! 早くっ!」

 

 

 ネプギアの指示に、ロム、ラム、プラエ、そしてミクとネプギアンダムが素早くロングホーンの側面に回り込む。

 

ユニは距離があるので、後方待機を維持する。

 

 

「グワッ!?」

 

 

 時間を遅くされたロングホーンには、いつの間にか目標が全て消えてしまったかのように見えた。

 

 

「ブフゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 

 しかし、ブレス攻撃は途中で止めることが出来ないので、そのまま炎の息を吐き出す。

 

 

「みんな! 一斉攻撃!」

 

 

 炎の息を避けたネプギアが指示を出す。

 

ボムで相殺するより、側面に回り込んで、息を吐いて動きを止めてる間に一斉攻撃する方が効率的だと判断したのだ。

 

 

「よーし! タコ殴りよ!」

 

 

 ラムが意気揚々とアイスハンマーでロングホーンの頭部を殴り、435のダメージを与える。

 

 

「ネプギアちゃん、とびでるよ!」

 

 

 ロムがネプギアに攻撃力アップの魔法を使うと、「ありがとう、ロムちゃん!」とネプギアがお礼を言いつつ、「唸れ鉄拳ギアナックル!」とロングホーンの頭部を殴ると、421ダメージが当たる。

 

 

「ミクサン、コウゲキリョクアップノウタヲ」

 

 

 ネプギアンダムがそう言うと、「うん」とミクが頷き攻撃力アップの歌を歌い始める。

 

 

「力が溢れる。これなら! クロックチェーン三時! 敵を打ち据えて!」

 

 

 ミクの歌で勢いを得たプラエが右手の中指の鎖を伸ばして、ロングホーンの頭部を叩くと、222のダメージが当たる。

 

 

「ラムちゃんもとびでるよ!」

 

 

 ロムが今度はラムに攻撃力アップの魔法を使う。

 

ラムは、「サンキュー、ロムちゃん」と言いつつアイスハンマーをロングホーンの頭部に振り下ろすと、クリティカルヒットで825のダメージが当たる。

 

 

「グワアアアアアアア!!!」

 

 

 ロングホーンが大きな悲鳴を上げると同時に頭部の巨大な角にヒビが入る。

 

 

「やったぁ。部位破壊!」

 

 

 ラムがジャンプして喜ぶと、「やったね、ラムちゃん(ぶいっ)」とロムが右手でラムの左手とハイタッチを交わす。

 

 

「グワル……ルルル……ル……」

 

 

 更に頭部に打属性の攻撃を大量に受けたロングホーンは脳震盪を起こしてフラフラしてる。

 

 

「ハンマーチャーンス!」

 

 

 ラムの攻撃を皮切りに更にロングホーンに一斉攻撃を加えるネプギア達は、この短い時間で合計4000以上のダメージを与える猛攻を見せた。

 

 

「やるじゃない、ネプギア」

 

 

 少し離れて援護射撃をしていたユニが通信でネプギアを褒める。

 

 

「フェンリルと戦った時の経験が活きたみたい」

 

 

 ネプギアが少し嬉しそうに応答する。

 

学習能力の高い彼女は、フェンリルとの戦いで得た経験を活かして、より良いブレス攻撃の対処方法を編み出したのだ。

 

 

「これなら勝てるわ!」

 

 

 ラムが嬉しそうに小さくガッツポーズをすると、「楽勝かも(うきうき)」とロムも小さくガッツポーズをする。

 

すると、「油断しないで。しっかり堅実に攻めていくわよ」とユニが通信を送ってくる。

 

 

「グオオオオオオオ!!」

 

 

 ロングホーンが怒りの雄叫びを上げる。

 

 

「ミクちゃん、防御力アップの歌を、ロムちゃんも防御力アップの魔法をお願い」

 

 

 ネプギアが素早く指示を送ると、ミクもロムも素早く反応し、防御力アップの歌と魔法を使う。

 

青い輝きがネプギアを包む。

 

 

「これなら!」

 

 

 ネプギアは怒りの雄叫びを上げるロングホーンに恐れず向かって行く。

 

 

「ガアッ!」

 

 

 怒りによって威力とスピードの増した、ロングホーンの噛みつき攻撃がネプギアを襲う。

 

 

「フィールド展開!」

 

 

 ネプギアは素早く左手に防御の魔方陣を張って防御をする。

 

 

「くっ……」

 

 

 ネプギアは、118のダメージを受けるとHPゲージが半分近くまで減ってしまう。

 

 

「ヒール!」

 

 

 しかし、素早くHP回復の魔法で傷を癒すとHPゲージが満タン近くまで回復する。

 

 

「ていっ!」

 

 

 更に続けてロングホーンにビームソードでの突き攻撃を加えると、226のダメージが当たる。

 

 

「ウウウウウウ!」

 

 

 忌々しそうな目でネプギアを見るロングホーン。

 

ネプギアのヘイトコントロールは上手く機能しているようだ。

 

 

ズキューン!

 

 

 その隙にユニの狙撃がロングホーンの頭部に命中し、264のダメージを与える。

 

 

「ラム! ネプギアがヘイトを集めてる隙に攻撃するわよ。ロムは援護、プラエは牽制」

 

 

 狙撃と同時にユニの通信が聞こえて来る。

 

 

「うん、わかった」

 

 

 ユニの声にプラエが答える。

 

 

「クロックチェーン!」

 

 

 プラエの鎖がロングホーンを追い立てる。

 

 

「捉まえたわ! 水流よ敵を押し流せ! ウォーターガン!」

 

 

 プラエの鎖を回避したロングホーンの着地に合わせるように、ラムが水属性の攻撃魔法を唱える。

 

【ウォーターガン】は激しい水流で敵を攻撃しつつノックバックさせる魔法。

 

 

「グオンッ!」

 

 

 水流がロングホーンに命中すると、632のダメージが当たり後退する。

 

 

「水属性効果ありよ!」

 

 

 ラムが叫ぶ。

 

ロングホーンが水属性に弱いことを見つけたようだ。

 

 

「了解! ロムちゃん」

 

 

 ネプギアが応答すると同時にロムに声を掛ける。

 

 

「うん、ネプギアちゃん、とびでるよ!」

 

 

 ロムが再び攻撃力アップの魔法をネプギアに使う。

 

 

「ウォーターエッジ!」

 

 

 ネプギアの魔法剣がロングホーンを切り裂く。

 

 

「グアッ!」

 

 

 ネプギアの攻撃で524のダメージを受けるロングホーン。

 

 

「ガオオオオン!」

 

 

 今度はロングホーンの攻撃だ。

 

巨体を活かした体当たり攻撃。

 

 

「くうっ!」

 

 

 僅かに防御し損ねたネプギアは136の大ダメージを受けて吹き飛ばされ、HPゲージが半分以下になってしまう。

 

 

「グオオオオオオ!」

 

 

 更にロングホーンが吹き飛ばされたネプギアに追撃をしようと襲い掛かる。

 

 

「油断してるんじゃないわよ!!」

 

 

ズキューン! ズキューン! ズキューン!

 

 

 ユニの牽制射撃がロングホーンの行く手を阻む。

 

更に、「「ウォーターガン!」」とロムとラムも牽制の魔法でロングホーンの行動を妨害する。

 

 

「ネプギアお姉さん、ヒールドリンクだよ!」

 

 

 その間にプラエが鎖に巻き付けたヒールドリンクをネプギアに向かって投げる。

 

 

「ありがとう、みんな」

 

 

 ネプギアはヒールドリンクをキャッチして飲み干すとHPゲージが満タンまで回復する。

 

 

「グゥゥゥゥゥ~!」

 

 

 ネプギアを仕留め損ねたロングホーンが悔しそうな唸り声を上げる。

 

 

「HP解析完了。推定4万」

 

 

 ネプギアが脳波コントローラーのカメラとNギアで解析したロングホーンのデータを仲間達に伝える。

 

 

「強いけど、今みたいに連携していけば勝てるよ」

 

 

 仲間を鼓舞しつつ、再びロングホーンの目の前に立ち塞がるネプギア。

 

 

「了解! 一万以下になったら一気に決めるわよ」

 

 

 ユニがそう言うと、「うん、わかった」とロムが答え、「ラムちゃんに任せなさい」とラムも答える。

 

その後も終始優位を保ちつつ、ロングホーンを圧倒するネプギア達。

 

 

***

 

 

 

「コード、スペリオルアンジェラス!」

 

 

 最後はフェンリルと同じように、スペリオルアンジェラスでとどめを刺して、ロングホーンに完勝するのだった。

 

ハネダシティの住人の元に戻って来たネプギア達に、住人達が大歓声で迎えてくれる。

 

手を振って歓声に応えるネプギア達。

 

 

「今日は特別にゲリラライブしちゃうわよ!」

 

 

 ラムが大声で住人達に呼びかける。

 

 

「ゲリラライブ?」

 

「もしかして、ブログに書いてあったバンド活動のことか?」

 

「グランプリ・ユナイテッドって名前だったよね」

 

 

 住人がざわざわと騒ぎ出す。

 

その間に、ネプギア達は携帯ゲーム機を操作して、ポケットサービスを通して楽器とマイクを呼び出す。

 

 

「それじゃあ、メンバーを紹介します」

 

 

 マイクを持ったネプギアがユニに右手を向けると、「ベースは、ラステイションの女神候補生、ユニちゃん」とユニを紹介する。

 

 

「華麗に決めるわ!」

 

 

 ユニがベースを鳴らしながら挨拶をすると、「ユニ様ー! 華麗ですー」などと歓声が沸き上がる。

 

 

「続いて、キーボードはルウィーの女神候補生ロムちゃん」

 

 

 ネプギアが今度はロムを紹介する。

 

 

「よ、よろしくお願いします(どきどき)」

 

 

 ロムは丁寧にお辞儀をして、挨拶をすると、「ロムちゃん、かわいい~」などの歓声が沸く。

 

 

「ドラムは同じく、ルウィーの女神候補生ラムちゃん」

 

 

 ネプギアが続けてラムを紹介すると、「いえーい! ラムちゃんだよー!」とラムがドラムを鳴らしながら挨拶をすると、「いえーい! ラム様ー!」などの歓声が沸き上がる。

 

 

「バイオリンは、私達の新しい友達、プラエちゃんです」

 

 

 ネプギアの紹介に、「プラエ=パピリオです。ネプギアお姉さん達と一緒に頑張ります」と言って丁寧に一礼するプラエ。

 

 

「みんつぶで噂になったあの子か!」

 

「お人形さんみたいで可愛いー」

 

「金髪ツインテ幼女万歳ー!」

 

 

 住人から歓声が沸くと、「ほっ……」と安堵の溜息を吐くプラエ。

 

女神候補生達と同じように歓迎してもらえたことに一安心したようだ。

 

 

「よかったわね、プラエ」

 

 

 ユニがそう言うと、「プラエもわたし達の仲間なんだから当然よ」とラムが言い、「うん、当然」とロムがそれに続く。

 

 

「最後に、ボーカルはオンガクギョウ界からの新しい仲間! 初音ミクちゃんです!」

 

 

 ネプギアがミクを紹介すると、「はじめまして。初音ミクです。ネギちゃんのおかげでこの体で歌えるようになりました」と言ってミクが一礼する。

 

 

「おおー! ミクミクだー!」

 

「本当にミクちゃんなのねー!」

 

「凄い3Dホログラムだ! 流石はネプギア様!」

 

 

 住人の歓声に、「こんなふうに、みんなの前に立てるなんて嬉しいっ。ありがとう、ネギちゃん」とミクがネプギアにお礼を言う。

 

 

「どういたしまして」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「それじゃあ、一曲目……」と続けて言うが、「ちょっと、ネプギア。自分の紹介忘れてるわよ」とユニにツッコミされてしまう。

 

 

「あうっ! ご、ごめんなさい! ネプギアです! えっと、ギターやってます」

 

 

 慌てて自己紹介をするネプギア。

 

自己主張が薄いが故に仲間を紹介するのに夢中で自分のことを忘れてしまったようだ。

 

その後、演奏を始めるネプギア達。

 

初心者と言うことで演奏のミスは目立ったもののライブは大盛況に終わった。

 

女神候補生ブログでもライブのことを書き、話題性も十分高まったのであった。

 

 

 

***

 

 

 

 G.C.2019年5月25日 土曜日。

 

再び女神候補生達が神次元にお仕事をする日がやってきた。

 

メンバーは前回と同じ女神候補生とプラエにあんみつ、ネプテューヌ、アイエフ、コンパにイストワールとファミ通だ。

 

ミクはネプギアンダムと一緒にお留守番となっているが、ネプギアンダムを召喚魔法で呼び寄せれば直ぐに駆け付けられる。

 

 

「わー! すごーい! 街がキラキラになってるわ」

 

「きれい……(きらきらぴかぴか)」

 

 

 神次元のプラネテューヌに着くなり豪華な装飾を施された街に大喜びで目を輝かせるロムとラム。

 

プラエも、「本当だ、凄く綺麗」とキョロキョロとあたりを見回す。

 

 

「エレノアちゃん、これは?」

 

 

 ネプギアは不思議そうな顔で、ここまで案内をしてくれたエレノアに問いかける。

 

 

「ふふ……予想以上の反響で思いのほか早くお祭りの準備が出来ましたので、ネプギア様達を驚かせようと思いまして」

 

 

 エレノアは悪戯っぽい微笑みをしながら答える。

 

 

「つまり、今日が以前にアレスター家の皆さんが任されたお祭りの日なんですね」

 

 

 あんみつがエレノアの意図を読んで口に出すと、「わー! これがお祭りなんだ。プラエ初めて見たー!」とプラエが目を輝かせる。

 

 

「これはアレね。サンライズってヤツよね!」

 

 

 ラムは自信満々に言い放つが、「それを言うならサプライズよ……」と、あっさりとユニに訂正をされてしまう。

 

 

「そうだっけ? それより、何して遊ぶ?」

 

 

 ラムはすっかり遊びモードになっているようだ。

 

 

「……おなかも空いた……(ちらちら)」

 

 

 ロムは何か食べたそうに屋台を見る。

 

 

「ダメよ。まずは仕事」

 

 

 ユニはそんな二人にピシャリと言い放つ。

 

 

「そんなー(しくしく)」

 

「ユニちゃんのケチー!」

 

 

 ガックリするロムに抗議をするラム。

 

 

「まあまあ、ユニちゃん。何か一つ屋台で食べたらお仕事にしようよ」

 

 

 ネプギアはそんなロムとラムを可哀想に思い、ユニに妥協案として一つ限定で屋台に寄って行くことを提案すると、「私としても、みなさんがお祭りを楽しんでいるところを取材したいですねー」とさり気なくファミ通も援護をしてくれた。

 

 

「ダメよ。ブランさんにもロムとラムの事甘やかさないでって頼まれてるでしょ?」

 

 

 しかし、ユニは譲歩する気はないようでネプギア達にも強気に言う。

 

 

「でも、【腹が減っては戦は出来ぬ】って言うし」

 

 

 それでも説得をあきらめないネプギア。

 

 

「【武士は食わねど高楊枝】とも言うわよね」

 

 

 更に言い返すユニ。

 

 

「むむむ……ユニちゃん、意外と頑固だね」

 

「アンタこそ。それにねぇ、これぐらいのこと我慢できないようじゃ立派な女神になれないわよ」

 

 

 睨み合うネプギアとユニ。

 

しかし、険悪な雰囲気ではなく、心のどこかでこのやり取りを楽しんでるようであった。

 

 

「ひゃっほーーーー! 祭りだ祭り! プリンわたがしとかないの?」

 

 

 ネプギアとユニが言いあっている間に、ネプテューヌはすっかりお祭りを堪能しているようだ。

 

頭にお面を被り両手にイカ焼きを持ってはしゃいでいた。

 

 

「こら! ネプ子! ロム様とラム様の教育に良くないでしょ!」

 

「あいちゃーん、ねぷねぷ~、待って下さ~い」

 

 

 そんなネプテューヌの後ろを追いかけるアイエフとコンパ。

 

 

「あ、お金無くなった。いーすんお小遣いちょうだい」

 

「ネプテューヌさん! いい加減にして下さいっ!」

 

 

 ネプテューヌはかなり屋台で買い食いを繰り返したらしく、もうお金が無いらしい。

 

悪びれもせずにイストワールにお小遣いをねだるが、即却下を受ける。

 

 

「確保!」

 

 

 その隙にアイエフがネプテューヌにタックルして身柄を抑える。

 

 

「うわっち!?」

 

 

 アイエフと一緒に倒れ込むネプテューヌ。

 

 

「コンパ、ネプ子を縛り上げて!」

 

「じゃあ、包帯でグルグルにしてあげるですー」

 

 

 コンパは包帯を取り出すとネプテューヌの体に巻き付け始める。

 

 

「いやー! なにこのプレイ? お医者さんプレイ」

 

 

 ネプテューヌはジタバタと抵抗すると、スルリとコンパの手から逃れて走り去る。

 

 

「こらー! 待ちなさい!」

 

「ねぷねぷ待つです~」

 

 

 再び追いかけっこを始める三人。

 

 

「……ネプテューヌちゃん遊んでる……女神なのに(しげしげ)」

 

 

 ロムは遊び歩いているネプテューヌの姿をしげしげと見ている。

 

ロムにとってはアイエフ達に追い回されるのも遊びの一環に見えるようだ。

 

 

「ネプテューヌちゃんが遊んでてどうしてわたし達はダメなの~! 異議あり~!」

 

 

 ラムがジタバタと暴れる。

 

ネプテューヌが遊んでいるのはいつものことだが、いささかタイミングが悪いようだ。

 

 

「……まったくあの人は……」

 

 

 ユニはネプテューヌの放蕩ぶりに頭を抱えてうなだれる。

 

これではロムとラムを説得するなんて不可能なことだ。

 

 

「ユニちゃん、行こうよ。いっこだけでいいから、ね?」

 

 

 ネプギアはそんなユニに優しい声で改めてお願いする。

 

 

「しょうがないわね……」

 

 

 ユニは諦めたよう溜息を吐きながらそう言う。

 

 

「じゃあ、何にしようか? ロムちゃん、ラムちゃん、プラエちゃん、何が食べたい?」

 

 

 ネプギアはロムとラムとプラエの方を向くと何が食べたいか質問をする。

 

 

「わたし、りんご飴食べたい……」

 

「わたしはたこ焼きー!」

 

 

 ロムはもじもじしながらりんご飴を、ラムは元気よく左手を上げてたこ焼きを食べたいと言う。

 

 

「一つだけって言ったでしょ」

 

 

 ユニは二人に対して注意をする。

 

食べることはOKしても、そのまま遊び歩く気は無いようだ。

 

 

「それなら、みんなで一つずつ好きなもの買って分け合おうよ」

 

 

 ネプギアは胸の前で両手を合わせると名案といわんがばかりに三人に向けて提案をする。

 

 

「さんせー! 流石はネプギア天才っ!」

 

 

 ラムは即座に賛成すると、たこ焼きの屋台に走って行く。

 

 

「ら、ラムちゃん待って~」

 

 

 それを追うロム。

 

 

「私はわたがしにしようと思うんだけど、ユニちゃんは?」

 

「そうねぇ……ならクレープでも食べようかしら」

 

 

 ネプギアとユニは自分の買うものを考えながら、ロムとラムの後を歩いて付いて行く。

 

プラエは、「プラエはお祭り分からないから、ネプギアお姉さんと同じのでいい」と言って二人の後を付いて行く。

 

 

 その後、女神候補生達は屋台の食べ物を仲良く分け合って食べた後に神次元のプラネテューヌの教会に向かう。

 

ちなみにネプテューヌはアイエフとコンパに捕まり引きずられて行った。

 

 

 

 

***

 

 

 

「みなさん、お祭りは楽しまれているでしょうか」

 

 

 教会に着くと神次元のイストワールがネプギア達に、にこやかに話しかけて歓迎をする。

 

 

「はい、街の雰囲気も明るくてとても楽しかったです」

 

 

 ネプギアは嬉しそうに答える

 

 

「りんご飴美味しかった……(ぺろぺろ)」

 

 

 ロムはほっぺたを両手で抑えて、りんご飴の味を思い出しながら答える。

 

 

「仕事が終わったら、また行きたいわね」

 

 

 最初は反対だったユニも楽しめたようだった。

 

 

「うん! もっともっと遊びたーい! 早くお仕事終わらせようよ!」

 

 

 ラムは左手を上げて、遊び足りないことを主張する。

 

お祭りは女神候補生達に好評のようだった。

 

 

「それはなによりです。今月のお仕事は少な目ですから、終わった後にまた遊びに行って来て下さい」

 

 

 神次元のイストワールは女神候補生達がお祭りに満足していることを確認すると嬉しそうに微笑む。

 

 

「はーなーしーてー! お祭りがわたしを呼んでいるー!」

 

 

 その後ろでネプテューヌは包帯で簀巻きにされながらも、お祭りに行きたいようで足をバタバタと暴れさせていた。

 

 

「流石のネプテューヌさんも簀巻きじゃ何にも出来ないみたいね」

 

「あはは……」

 

 

 ネプギアとユニはその光景を眺めながら、呆れつつもあんな状態でも遊びに行きたいことを主張するネプテューヌの姿にある意味感心をしていた。

 

 

「あれ~? ねぷちゃん、今日は刺激的なお洋服着てるね~」

 

 

 教会の奥のドアが開くとプルルートが現れる。

 

簀巻きにされたネプテューヌの姿を興味深く眺めていた。

 

 

「げえっ!? ぷるるん!」

 

 

 ネプテューヌはプルルートを見ると、どこかの豪傑に見つかったような叫びを上げる。

 

 

「ねぷちゃん、【げえっ!?】って何かな~?」

 

 

 プルルートの声のトーンがやや低くなる。

 

 

「い、いやー……ぷるるんにこんなあられもない姿をみせちゃったら危険かな~って……」

 

 

 ネプテューヌはアイエフ達には元気よく抗議していたが、プルルートに対しては冷や汗をダラダラとかいている。

 

 

「大丈夫だよ~。すごくドキドキワクワクしてるだけだから~」

 

 

 満身の笑みを浮かべるプルルート。

 

プルルートはのんびりした姿に似合わずサディストであり、このような拘束をされたネプテューヌを見て嗜虐心を刺激されたのだろう。

 

 

「それが危険なんだってば!」

 

 

 珍しく余裕のないネプテューヌ。

 

プルルートのことをよく知るネプテューヌにとって、その餌食になるのは避けたいところだった。

 

 

「わたしぃ~、ねぷちゃんとデートしたいなぁ~」

 

 

 プルルートはアイエフに目をやる。

 

その目はネプテューヌを簀巻きにした包帯を手渡して欲しいと訴えていた。

 

 

「はいどうぞ」

 

 

 アイエフは何の抵抗も疑問もなく、素直に手に持った包帯の先をプルルートに渡す。

 

 

「ぎゃーー! あいちゃんの裏切り者ーー!」

 

 

 顔面蒼白のネプテューヌ。

 

プルルートはアイエフから包帯を受け取ると少し強めに引っ張る。

 

 

「ぐへっ?」

 

 

 ネプテューヌは思わず変な声を上げてしまう。

 

プルルートはそんなネプテューヌを楽しそうに眺めている。

 

 

「じゃ、行こっか、ねぷちゃん」

 

 

ズルズル……

 

 

 簀巻きのまま引きずられていくネプテューヌ。

 

 

「あのー……ぷるるん、できれば包帯を解いてくれないかな」

 

 

 ネプテューヌは無駄だと知りつつもプルルートに下手にお願いしてみる。

 

 

「そっかー。そんなに解いて欲しいなら……」

 

 

 プルルートは両手に力を込めて包帯を握る。

 

 

「はっ! まさかそれは伝説の!」

 

 

 ネプテューヌは緊迫した顔でプルルートを見る。

 

 

「そーーーれ!」

 

 

 プルルートが思いっきり包帯を引っ張ると、ネプテューヌが勢いよく回転をする。

 

 

「あーーーーれーーーー! お代官様、お許しをーーー!」

 

「よいではないか、よいではないか~」

 

 

 ネプテューヌとプルルートは楽しそうに帯回し遊びをしている。

 

 

「わー、ネプテューヌちゃん面白ーい」

 

「うん、面白い(ぐるぐる)」

 

 

 ロムとラムが楽しそうに回ってるネプテューヌを見ると、「これが本当の【拘束回転】だね!」とネプギアがドヤ顔で言い放つ。

 

 

「なに馬鹿なこと言ってるのよ……」

 

 

 ユニは右手で軽くネプギアの頭にチョップでツッコミ入れると、「なになに? 今のダジャレー?」とラムが興味津々に質問し、「どんなダジャレなの?」とロムも知りたそうにネプギアを上目遣いで見る。

 

 

「えっとね、捕まってる状態を拘束って言うの。その状態で回転したから、速い方の高速とかけて、拘束回転になるんだよ」

 

 

 丁寧にダジャレの説明をするネプギアに、「「なるほどー」」と声をハモらせるロムとラム。

 

 

「あの状態を楽しむって言うのは、流石はネプ子とプル子ね」

 

「楽しそうです~」

 

 

 アイエフとコンパはその光景をある意味感心した目で見ていた。

 

 

「ちょ、ぷるるん、回転速すぎ! 吐きそ……」

 

 

 最初はノリノリだったネプテューヌだが回転する勢いが速すぎるのか、プルルートに不調を訴える。

 

 

「よいではないか、よいではないか~」

 

 

 しかし、プルルートは意にも介さずどころか、更に楽しそうな顔をして回転速度を上げる。

 

彼女のサディスティックな感情が高まっているようで、ネプテューヌの懇願などお構いなしのようだ。

 

 

「ちょちょちょちょま! このままじゃ、わたしゲロインになっちゃうよー!」

 

 

 ネプテューヌの絶叫が響き渡る。

 

ちなみにゲロインとは名前のまんまゲロを吐くヒロインであり、乙女としてどうか? といった状態である。

 

 

「さ、仕事しましょ」

 

 

 ユニはネプテューヌ達から視線を外すと何事も無かったかのように振る舞い、そのまま執務室に向かう。

 

 

「ロム様もラム様も行きましょう」

 

 

 アイエフに促されて、ロムとラムも執務室に向かうと、ネプギアとプラエとネプテューヌを残したメンバー全員が執務室に向かう。

 

 

***

 

 

「……お姉ちゃん、大丈夫?」

 

 

 ネプギアは回転が終わって目を渦巻きのように回して倒れているネプテューヌに、しゃがみ込んで心配そうに声を掛ける。

 

 

「なあにぃ? ぎあちゃん、お仕事してくれるんじゃないの~?」

 

 

 何故かプルルートが非常に機嫌の悪い声でネプギアを見下ろす。

 

 

「え? えっと……お姉ちゃんが心配で……」

 

 

 ネプギアはプルルートが何故不機嫌なのか分からないが、とりあえず自分の今の目的を伝える。

 

 

「今はぁ~、あたしがねぷちゃんと遊んでるんだよ~。ぎあちゃんはいつもねぷちゃんと一緒だからいいでしょ~?」

 

 

 更にプルルートの声が低くなる。ネプギアは訳も分からず困惑するが、そこにネプテューヌが目を覚まし、「わたしは大丈夫だから、早くみんなのところに行ってあげなよ」と明るい声で言う

 

 

「うん……」

 

 

 ネプギアは少し躊躇いつつもネプテューヌの言う通り、仲間達が待っている執務室に向かって行った。

 

 

「本当にシスコンの困ったちゃんだよねぇ~。ねぷちゃんが居ないと呼吸も出来ないのかなぁ?」

 

 

 プルルートは未だ不機嫌そうにしているが、「まあまあ、ネプギアのことは忘れて楽しく遊ぼうよ」とネプテューヌが言うと、プルルートが一転して嬉しそうな顔になり、「そうだね~」と答える。

 

 

「……やっぱり、あの人怖い」

 

 

 プラエはそう呟くと、速足でネプギアの後を追うように立ち去った。

 

 

 

***

 

 

 

「では、このレツゴウアイランドで暴れているモンスターの退治が今日のお仕事です」

 

 

 いつものようにイストワールがクエストの説明をしている。

 

ネプギア達は颯爽と事務仕事を終わらせ、次なる仕事の討伐クエストに赴いていた。

 

レツゴウアイランドとは海のリゾート地で、海面に人工の小島がいくつも浮かんでおり、それが通路で繋がっている。

 

 

「今日一日で二日分の仕事しちゃおうだなんて、ネプギアも大胆なこと考えるわね」

 

 

 ユニが腕を組みながらネプギアに言う。

 

通常は先月のように一日目に事務仕事、二日目に討伐クエストとなるのだが、事務仕事が予想以上に早く終わったのでネプギアの提案で、続けて二日分の仕事をしてしまおうということになったのだ。

 

 

「そうすれば、明日丸一日遊べるし……ダメだったかな? やっぱりみんな疲れてる?」

 

 

 ネプギアは自分が勝手なことをしたのではないかと、少し不安そうに三人の女神候補生に問いかける。

 

 

「そんなことないわよ。元気いっぱいよ! 明日一日は遊んで遊んで遊びまくるんだからー」

 

「うん、げんきげんき(ぴょんぴょん)」

 

 

 ロムとラムはネプギアの考えに賛同するように元気よくジャンプしてアピールをする。

 

 

「別に嫌とは言ってないでしょ。ネプギアにしては大胆なこと考えたなと思っただけよ」

 

 

 ユニも特に不満はないようだった。

 

と、言うか全面的に賛成なのだが、ロムとラムのようにはしゃいだりはしない。

 

 

「あの、いーすんさんお願いがあるんですけど……」

 

 

 ネプギアは胸に両手を当ててイストワールにお願いをする。

 

 

「わかっています。今回は変身して出来るだけ早く倒してお祭りに行って下さい」

 

 

 イストワールはネプギアの考えを見透かしたかのように笑顔で答える。

 

 

「わあっ! いーすんさん、ありがとうございます!」

 

 

 ネプギアは柏手を打って喜びを表現する。

 

 

「じゃあ、そうと決まれば……」

 

 

 ユニがそう言うとネプギア達女神候補生は利き腕を上げる。

 

 

「「「「プロセッサユニット装着っ!!」」」」

 

 

 四人の声が綺麗に重ねると四人同時に発光をする。

 

そして以前にネプギアがパープルシスターに変身した時のように姿が変わると、プロセッサユニットが順々に装着されていく。

 

 

「「「「プロセッサユニット装着完了!」」」」

 

 

 四人同時に装着が完了すると四人で決めポーズをとる。

 

彼女達なりに考えて練習した女神候補生の集合ポーズである。

 

 

「おおっ! 女神様が勢揃い! 圧巻だねー!」

 

 

 ファミ通はパシャパシャとカメラで写真を撮る。

 

 

「みんな、素敵」

 

 

 プラエが熱っぽい視線で女神候補生達を眺める。

 

ネプギアは以前のようにM.P.B.Lを持った薄紫色の天使のようなパープルシスター。

 

 

 ユニは先月にアノネデスに対して変身した黒い小悪魔ブラックシスター。

 

手には巨大な銃エクスマルチブラスター【X.M.B】が握られている。

 

エクスマルチブラスターは変身する前のユニの銃同様に様々な弾を自由に撃ち出すことが出来る。

 

しかもその威力は桁違いである。

 

 

 ロムは髪が茶色から水色になり、髪型はショートカットなのだが前髪の右サイドだけが長く伸びているという少し変わった髪型だ。

 

瞳は青から赤に変わり女神候補生特有の右側の光が欠けた電源マークが浮かび上がっている。

 

着ている服は、ネプギアと似たような白にピンクのラインが入ったレオタードに同色のアームカバーと靴と一体になったレッグカバー。

 

プロセッサユニットも全体的に白く、ピンクのラインが入ったものになっている。

 

頭の右横にはヘッドセットのようなヘッドパーツ。

 

背中には大小の菱形を組み合わせた蝶のような羽のバックパーツ。

 

ショルダー、ウエスト、レッグのパーツは全体的に直方体でデザインがされている。

 

ロムの変身したその姿は雪の妖精のようだった。

 

 

 ラムの髪はピンク色になり、ロムと同じような髪型だが伸びている髪が左サイドになる。

 

この髪型のロムとラムが顔を合わせると頭と伸びた髪が繋がり、ハートマークのように見える。

 

瞳は水色になり、同じように電源マークが浮かび上がっていた。

 

プロセッサユニットはロムと同じだが、スーツのピンクのラインやヘッドパーツが左右対称になっている。

 

二人合わせて双子の妖精といった感じだ。

 

 

 ロムとラムが変身した姿の名前は【ホワイトシスター】。

 

二人を区別する為に【ホワイトシスターロム】、【ホワイトシスターラム】と呼ばれている。

 

 

 武器は二人とも変わらず杖であるが、細いペン型であった杖は巨大な錫杖になる。

 

この武器は、以前は特に気取った名前がなく、二つとも守護女神の杖と呼ばれるだけだった。

 

しかし、ネプギアとユニが武器に名前を付けて大切にしているので、二人でネプギアに【二人と同じようにマルチな感じに改造して名前を付けてほしい】とお願いしたのだ。

 

 

 その結果出来たのが、ロムの持つM.P.S.H【マルチプルサポートアンドヒール】とラムが持つM.P.E.M【マルチプルエレメンタルマジック】

 

ロムのM.P.S.Hは補助魔法と回復魔法を使う際にそれぞれ適切な形に変形することにより魔法の効果を高めるものである。

 

ラムのM.P.E.Mはロムのものと似たような性質で、使う攻撃魔法の属性に合わせて適切な形に変形をするものだ。

 

又、ネプギアの大好きなリミッター解除も搭載されており、普段よりMPを多く使うことで魔法の威力を高めることもできる。

 

 

 ちなみにネプギアはここ最近魔法の研究にのめりこんでいる。

 

理由の一つは以前に挙げた八人の女神の中で魔法を担当するのがロムとラムだけなので、自分も魔法を憶えて女神でパーティを組んだ時の魔法の戦力を上げる為。

 

もう一つは、魔法は彼女が好きな機械工学やプログラムに似たロジックが存在することに気付いて楽しさを憶えた為。

 

なので、ネプギアはロムとラムから魔法を教わる他に、魔法が発展しているルウィーに直接足を運んで魔法を学び、それにプラネテューヌの科学力を合わせてこの二つの武器を改造したのだ。

 

更に女神化した時の装備なので、プロセッサユニットを開発したイストワールからもアドバイスを受けている。

 

 

「それではみなさん、よろしくお願いします」

 

 

 イストワールは女神候補生達が変身完了したのを確認すると、改めてクエストをお願いする。

 

 

「じゃあ、早速行こうよ」

 

 

 早く終わらせてお祭りに行きたいラムはネプギアを急かすが、「ごめんね、ちょっと待っててね。ネプギアンダムで情報収集しちゃうから」ネプギアはそう言って偵察用のネプギアンダムを呼び出す。

 

 

「えー? 女神化したんだから情報なんていらないわよ。どんな敵が来ようと獣神しちゃうんだから」

 

 

 ラムは自信満々にそう言うが、「獣神じゃなくて蹂躙じゃないかな?」とネプギアが訂正するとラムは、「そうだっけ?」と首を傾げる。

 

 

「獣神になってどうするのよ……モンスターでビリヤードするゲームじゃないだから」

 

 

 ユニは額を抑えながら呆れると、ネプギアが少し厳しい口調で、「ラムちゃん、情報収集を侮っちゃダメだよ。慢心、ダメ、絶対」と言うと、ユニも、「慢心で滅びた王様だっているんだから」と付け足す。

 

 

「「まんしん?」」

 

 

 ロムとラムは慢心の意味が分からないようで二人揃って首を傾げる。

 

 

「自信を持ちすぎて、他人をあなどって、おごり高ぶることだよ」

 

 

 ネプギアがそう言うとユニが、「犯罪神もキセイジョウ・レイも暗黒星くろめも、慢心が元でアタシ達に負けたのよ」と言う。

 

 

「なるほどー、何となく分かったわ。つまりお姉ちゃん達が負けるのも慢心なのね」

 

 

 ラムがそう言うと、「お姉ちゃん、慢心」とロムが言う。

 

ネプギアとユニは顔を見合わせて何とも言えない顔をしている。

 

確かに四女神は絶対的な力を持っていながら、ちょっとした油断で敗北したり捕まったりしている。

 

 

「ま、まぁ……慢心が無ければお姉ちゃん達は誰にも負けないと言うことで……」

 

 

 ネプギアはロムとラムのストレートすぎる感想を好意的に捉えてそう言うと、「そ、そうね……」とユニもそれに同意する。

 

 

「ねー! ネプギアー! 情報まだー!」

 

 

 ラムは待ちきれないと言った感じで、杖で地面にコツコツと小刻みに叩く。

 

 

「今来たよ。これを元に進攻ルートと作戦を決めようね」

 

 

 ネプギアが焦るラムを宥めるように言うと、「じゃあ、早く決めようよ」とロムが言って女神候補生達は輪になって作戦を練る。

 

 

「敵の群れはボスを中心に三ヵ所に分かれてるから、各個撃破ね」

 

 

 ユニがそう言うと、「うん、そうしよう」とネプギアが頷く。

 

 

「もー! 一か所に固まってれば、【いんもーだじん】だったのにー!」

 

 

 ラムが悔しそうにそう言うと、「「ぶっ!!」」とアイエフとファミ通が吹き出してしまう。

 

ラムの間違いが、かなり際どいと言うかアウトなので、彼女達でもツッコミをためらってしまう。

 

 

「それを言うなら一網打尽ね」

 

 

 ネプギアにはラムの間違いのアウトっぷりが分からなかったようで、普通にラムに説明をすると、「そうそう、一網打尽一網打尽」とラムが言い直す。

 

 

((ほっ…))

 

 

 アイエフとファミ通が心の中で安堵のため息をつくと、「それじゃ、作戦も決まったから行こう」とネプギアが話を終わらせてモンスター退治に出発しようとする。

 

 

「ええ、行くわよ」

 

 

 ユニがそう応えると、「レッツゴー!」とラムが左手を上げて、ロムも右手を上げて「ゴー!」と言う。

 

 

「みんな頑張ってね」

 

 

 プラエが祈るようなポーズで女神候補生達を応援する。

 

続いて、「戦果を期待しています」と隣のあんみつも応援してくれた。

 

 

「ありがとう、プラエ! サクッとやっつけちゃうからね」

 

 

 ラムが左手でVサインを決めながらそう言うと、「そうしたらお祭り行こうね」とロムがそれに続く。

 

 

「みんな! ダイヤモンドフォーメーション」

 

 

 ネプギアがそう言うと女神候補生は空高く飛んでいく。

 

ネプギアを先頭に右斜め後ろにロム、左斜め後ろにラム、真後ろにユニの菱形のフォーメーションである。

 

 

「うわっ! 速い。ドローンも追いつかないよ」

 

 

 あっという間飛び去る女神候補生達にはネプギアに貰ったドローンでも追いつけないようだ。 

 

ファミ通は慌てて走ってネプギア達を追う。

 

 

「そういえば今日のエネミーの詳細はどうなっているんですか?」

 

 

 アイエフは走り去るファミ通を眺めながらイストワールに質問をする。

 

 

「今回は【モリガメ】、【サイバーホエール】、【ダゴン】の三種の大型エネミーを軸としたモンスターの群れです」

 

 

 イストワールがいつものようにホログラムを出すと、敵の姿と配置と数を示すレーダーが現れる。

 

ネプギアから、ネプギアンダムが偵察したデータを受け取ったものだ。

 

 

 モリガメはカメ型、サイバーホエールはクジラ型、ダゴンはイルカ型の巨大なモンスター。

 

海のリゾート地ということで水棲系のモンスターが侵入してきたので、プラネテューヌの市民からそれの討伐をお願いされたのだ。

 

 

「うわわっ! いっぱい居ますよ~」

 

 

 レーダーに映る敵の数に驚くコンパ。

 

敵の数は百単位にのぼっていた。

 

 

「落ち着きなさい。変身したあの子達からすればアリの群れみたいなものよ」

 

 

 アイエフは落ち着いて言ってコンパを宥める。

 

 

「それもそうですね。ファミ通さんが驚くのが目に浮かびます~」

 

 

 アイエフに言われて落ち着きを取り戻すコンパ。

 

ファミ通が驚く姿が楽しみのようだ。

 

 

「ファミ通殿は大丈夫でしょうか?」

 

 

 あんみつが一人で先行したファミ通のことを心配する。

 

 

「恐らく大丈夫でしょう。それより、私達も行きましょう」

 

 

 イストワールがそう言うと四人はファミ通の後を追う。

 

 

***

 

 

「わわっ! こんなにモンスターがいるなんて聞いてないよー!」

 

 

 ネプギア達を追うのに必死だったファミ通は、いつの間にか十匹以上のモンスターに囲まれていた。

 

ファミ通を取り囲むのは【ゴーストボーイ】と【ゴーストガール】と呼ばれるモンスターだ。

 

ゴーストと名が付いているが、おどろおどろしい雰囲気ではなく、どちらかと言えば可愛らしい姿をしている。

 

体長1メートル程でタコさんウインナーみたいな形状をして大きくて丸い目が二つ付いているだけのシンプルな姿だ。

 

頭に角が付いている方がゴーストボーイで、リボンが付いている方がゴーストガール。

 

シカベーダー達と同じく古くからいるモンスターで、普段は黄色い球状に大きな口のあるモンスターと迷宮の中で追いかけっこをしている。

 

ゴーストボーイ達はファミ通を取り囲み、じりじりと近づいて包囲の輪を狭めてくる。

 

 

「これはちょっとマズいかな……」

 

 

 ファミ通が武器を構えて迎撃をしようとした時……。

 

 

ズキューン!

 

 

 突然、銃声が響き渡る。

 

同時に上空からビームが降ってきて、ファミ通の目の前のゴーストボーイに直撃すると1535の大ダメージが当たり一撃でオーバーキル×4の表示と共に戦闘不能になる。

 

 

ズキューン! ズキューン! ズキューン!

 

 

 ビームは二発三発と続けて降ってくる。

 

その狙いは正確で一発ごとにゴーストボーイ達の数が減っていく。

 

 

「はああああ!」

 

 

 ビームと一緒に白い影が、掛け声を上げて急降下してくる。

 

白い影は落下スピードに乗ったままゴーストガールを突き刺すと、1921ダメージが当たりオーバーキル×5の表示と共に戦闘不能になる。

 

 

「ていっ!」

 

 

 着地した白い影は、すぐさま手に持った武器を振り回して周囲のゴーストボーイ達を蹴散らす。

 

一撃で1500以上のダメージが当たり、一振りごとにオーバーキル×4の表示と共にゴーストボーイ達の数は減って行く。

 

上空からの射撃も続いており、最初の射撃から十秒も経たない内にモンスターは全滅した。

 

 

「一体なにが……」

 

 

 ファミ通はあまりの急展開に構えを解いて呆然としてしまう。

 

 

「ファミ通さん、無理は止めて下さい」

 

 

 白い影の正体はネプギアだった。

 

敵陣に向かって行ったが、その途中でレーダーでファミ通が囲まれていることを知り、ユニと二人で急いで引き返してきたのだ。

 

上空からの射撃はユニのX.M.Bによるものであった。

 

 

「ごめん。取材に夢中で……」

 

 

 状況を理解できたファミ通は後頭部を掻きながら申し訳なさそうにネプギアに謝る。

 

 

「あっ……ごめんなさい。本当はファミ通さんのペースに合わせるべきなんですよね。でも、みんなお祭りを楽しみにしてるから」

 

 

 今度はネプギアがファミ通の取材に合わせて行動出来なかったことを詫びるが、「いいよいいよ。寧ろ、全力のネプギア様達を取材出来るチャンスだし、ゲイム記者魂で頑張ってついて行くよ」とファミ通が明るい声で答える。

 

 

「だったら、Gビットを持って行って下さい」

 

 

 ネプギアがそう言うと彼女の周りに六基のGビットが現れる。

 

 

「え? でも、それはネプギア様じゃないと扱えないんじゃ……」

 

 

 ファミ通は少し驚いたようにネプギアとGビットを見ながら言うが、「大丈夫です。ファミ通さんを護るよう指示を出しておきますから」とネプギアが答える。

 

それと同時に、Gビットはファミ通に向かって移動すると彼女を護るように周囲を浮遊する。

 

 

「ネプギア早く早くー!」

 

「ラムちゃんが呼んでるからもう行きますね。危険だと思ったら直ぐ逃げて下さい」

 

 

 先行しているラムから通信で早く来るよう急かされると、ネプギアは宙に浮かび上がり、そのまま矢のようにラム達の居る方向に飛び去る。

 

 

「いやー……流石は女神様だな。こんな颯爽と助けられたら惚れちゃうよ」

 

 

 ファミ通は暫くポーッとしていた。

 

 

「っと! いけないけない。取材取材」

 

 

 ファミ通は本来の目的を思い出して今度は慎重に進む。

 

 

***

 

 

「わー。いっぱいいるわね」

 

 

 ラムが左手を額にかざして眺めるポーズで、ゴーストボーイとゴーストガールの群れを見ている。

 

その数はファミ通を取り囲んでいた小規模な群れとは違い百匹近い数が群れていた。

 

女神化すると視力も良くなり、視力12.0以上になるので、空からでも裸眼で地上の敵がハッキリと見えるのだ。

 

マサイ族もビックリである。

 

 

「あの大きなカメがボスかな?」

 

 

 ロムが錫杖の先でモンスターの群れに居る6メートル近い一際大きなカメを指す。

 

モリガメである。

 

名前の通り亀なのだが、巨大な甲羅の上には何故か一本のヤシの木が生えている。

 

 

「あんなの一瞬でやっつけてあげるわ」

 

「うん、楽勝」

 

 

 ラムは腕を組んで強気にそう言うと、ロムも自信満々の声で言う。

 

女神は変身すると性格が変わる。

 

姉である守護女神は変化が大きいが、女神候補生は少し強気になるぐらいだ。

 

しかし、そもそも元から強気のラムは恐れを知らない性格になる。

 

ロムはおどおどした様子が無くなり、特徴的な擬音を言わなくなる。

 

ユニも元々強気なので、それに拍車が掛かる。先日にアノネデスを圧倒した時にも証明済みだ。

 

ネプギアは殆ど変わらないが、それでも少し強気になって積極的に敵と戦うようになる。

 

 

「強気なのもいいけど、レベルの方は大丈夫なの?」

 

 

 ユニが戦闘前にお互いのレベルを確認すると、「大丈夫よ。昨日20になったんだから」とラムが言い、「負けないよ」とロムが小さくガッツポーズをする。

 

 

「ふふん、いいじゃない。アタシも20。ネプギアは?」

 

 

 ユニは二人の意気込みに微笑むと今度はネプギアにレベルを確認する。

 

ネプギアは笑顔で、「私も20だよ。みんな同じだね」と言った。

 

 

「戦力は問題なし。後はどう攻める?」

 

 

 ユニはレベルを確認して自分達の戦力に問題ないことに満足すると、ネプギアに作戦を質問する。

 

 

「私が切り込むから、みんな援護して。ボスモンスターは堅いけど動きが鈍いと思うからコンボを稼いで倒そう」

 

 

 ネプギアはすぐさま、ユニの質問に答える。

 

迷いなくハッキリした口調なのは変身しているからであろう。

 

 

「オッケー任せて」

 

「ザコはわたしが一網打尽にしてあげるわ」

 

「ちゃんと援護するから安心して切り込んでね」

 

 

 ユニ、ラム、ロムの順に頷いて了解の意思を示す。

 

 

「うん!」

 

 

 ネプギアは仲間達の了解の返事に頷くと、敵の群れ目掛けて急降下する。

 

 

「がんばってね!」

 

 

 ロムのスピードアップの魔法でネプギアの降下速度が倍になる。

 

 

「援護するわよ」

 

 

 ユニはネプギアが接近しやすいように援護射撃を行う。

 

 

ズキューン! ズキューン! ズキューン!

 

 

 援護射撃とは言え一撃で1500以上のダメージが当たり、ゴーストボーイ達が次々に戦闘不能になっていく。

 

ユニの射撃で敵襲に気付いたゴーストボーイ達がユニ達の方向に向かって上昇してくる。

 

 

「M.P.E.Mアイスモード!」

 

 

 ラムがそう言うと手に持った杖が変形をする。

 

これがM.P.E.Mの属性最適化機能で、特定の属性の魔法の威力を高めることが出来る。

 

 

「凍りつきなさい! アイスコフィン!」

 

 

 ラムは広範囲を凍りつかせて、近づいてくるモンスターの群れを攻撃する。

 

【アイスコフィン】はロムとラムが得意とする氷属性の魔法で、広範囲を凍りつかせる攻撃である。

 

広範囲ゆえにダメージは1500に届かないが、それでも威力は十分で次々にゴーストボーイ達が戦闘不能になっていく。

 

 

「わたしも! アイフコフィン!」

 

 

 ロムもラムに続いて、別の群れにアイフコフィンを唱えると1100前後のダメージが当たり、ゴーストボーイ達が戦闘不能になっていく。

 

攻撃魔法においては、ロムはラムより威力は下がるが、ザコモンスターを蹴散らすには十分過ぎる威力があった。

 

 

「落ちろ落ちろ落ちろ!」

 

 

 ロムとラムの範囲攻撃から逃れたモンスターは次々にユニに撃ち落されていく。

 

 

「覚悟して下さい!」

 

 

 ネプギアはモリガメ目掛けて急降下を続ける。

 

三人の仲間の援護で百匹近いザコモンスターは全て戦闘不能になり、残るはモリガメのみとなっていた。

 

 

「とびでるよ!」

 

 

 更に攻撃が当たる寸前にロムの攻撃力アップの魔法が加わる。

 

 

「はあっ!」

 

 

 ネプギアは硬い甲羅は避けて、首根っこにM.P.B.Lのブレードを突き刺す。

 

 

「ギャオオオオン!」

 

 

 モリガメに1731のダメージ当たる。

 

 

「やっぱりタフですね。けど、負けません!」

 

 

 ネプギアは再びモリガメに斬りかかる。

 

 

「ガオオオン!」

 

 

 しかし、モリガメは怒りの咆哮を上げて口から水流を吐く。

 

 

「当たりません」

 

 

 avoid、ネプギアは華麗に身を翻して初見にも関わらずモリガメの攻撃を避けて見せる。

 

 

「今度はこちらの番です!」

 

 

ズキューン!

 

 

 M.P.B.Lのビームがモリガメに向かう。

 

 

「グゥゥゥゥ!」

 

 

 しかし、モリガメは首と手足を甲羅に引っ込めて防御をする。

 

強烈な筈のビーム攻撃もダメージが二桁になってしまう。

 

 

「ウォォォォン!」

 

 

 モリガメは甲羅に籠ったまま回転をすると滑るようにネプギア向けて突撃してくる。

 

 

「くっ!」

 

 

 ネプギアは回避が間に合わず、左手に防御の魔法陣を張る。

 

 

「きゃあっ!」

 

 

 しかし、それでも弾き飛ばされてしまい、85ダメージを受けてHPゲージが一割ほど減少する。

 

女神化すると最大HPも上昇し、変身前は275だったHPが変身後は900になる。

 

その為、変身前なら大ダメージだったのが一割程度に収まっているのだ。

 

 

「これぐらいっ!」

 

 

 ネプギアはそれでも怯まずM.P.B.Lの射撃を繰り返すが全て硬い甲羅に弾かれてしまう。

 

 

「ウォォォォン!」

 

 

 モリガメが再び甲羅に籠りながら突撃してくる。

 

 

「二度も当たりません!」

 

 

 avoid、素早い横ステップで回避するネプギア。

 

それでもしつこく回転攻撃でネプギアを追い回すモリガメ、諦めずにM.P.B.Lのビーム攻撃をするネプギア。

 

ネプギアの回避も100%ではなく、何回か当たりそうになるが左手の防御の魔法陣で上手く捌いてダメージを最低限に抑える。

 

ダメージが与えられないネプギアがジリジリと追い詰められて劣勢に見える。

 

 

「ロム、ラム、ヒット数を稼ぐわよ」

 

「「了解っ!」」

 

 

 しかし、ネプギアはモリガメの注意を自分に引き付けているのだ。

 

ネプギアが敵を引き付けている間に、ユニはロムとラムに攻撃を指示すると二人は素直に頷く。

 

同時にユニはエクスマルチブラスターをマシンガンモードに切り替えて、マシンガンが届く射程まで急接近すると銃を乱射する。

 

 

ズガガガガガ!

 

 

 一発一発はダメージ一桁だが、そのヒット数は尋常じゃない。

 

あっという間にヒット数が三桁になる。

 

 

「「……数多の氷の槍よ敵を制圧せよ……」」

 

 

 ロムとラムはユニと並ぶよう移動すると声を揃えて魔法の詠唱を始める。

 

 

「「アイシクルスピア」」

 

 

 ロムとラムの周囲に無数の氷の槍が現れると、モリガメに向かって飛んでいく。

 

これも一発のダメージが一桁程度だが、圧倒的な弾幕でユニの攻撃と合わせてヒット数が四桁に届きそうになる。

 

【アイシクルスピア】氷属性の攻撃魔法。威力より数で攻める攻撃だ。

 

 

「M.P.B.Lラピッドモード!」

 

 

 更にネプギアもM.P.B.Lを速射モードに切り替えてヒット数稼ぎに加わる。

 

 

「グゥゥ……」

 

 

 モリガメは凄まじい弾幕の前に動きを止めてしまう。

 

 

「これは凄い! コンボ数があっという間に1,000超えるんじゃないか?」

 

 

 女神候補生達が周りのザコモンスターを倒したことで比較的近くで取材が出来るようになったファミ通が、女神候補生達の猛攻に驚きの声を上げる。

 

【コンボ】とは攻撃を絶えずヒットさせて連鎖させること。

 

この数が多ければ多いほどダメージに倍率が掛かる。

 

 

「いくら硬いカメ型モンスターでも、1,000コンボからの強烈な締めの一撃は耐えれないぞ」

 

 

 コンボを稼げる攻撃は威力が弱く、締めに力を込めた強烈な一撃を入れるのが基本である。

 

 

「グルルル……」

 

 

 モリガメは外の様子を伺うように甲羅から頭を出す。

 

 

「チャンス! 覚悟して下さい!」

 

 

 ネプギアは頭を出したモリガメにM.P.B.Lのブレード斬りかかる。

 

強烈な締めの一撃を加えようというのだ。

 

 

「シャーーー」

 

 

 しかし、モリガメはニヤリと笑うと素早く頭を引っ込めて攻撃を回避しようとする。

 

コンボの締めの攻撃を誘発させようと隙を晒したのだ。

 

締めの攻撃を出した時点で、当たる当たらないに関わらずコンボが終わってしまう。

 

モリガメはそこを狙ったのだ。

 

 

「ごめんなさい! フェイントです!」

 

 

 しかし、ネプギアの攻撃はコンボの締めの強烈な一撃ではなくコンボ稼ぎの連続攻撃だった。

 

M.P.B.Lのブレード部分による素早い突きがモリガメの甲羅を連続で突いて二桁のダメージが無数に当たりコンボ数が上がって行く。

 

 

「本命はこっち。エクスマルチブラスター最大出力!」

 

 

 その間にユニがモリガメの真上でエクスマルチブラスターを構えていた。

 

その銃口に巨大なエネルギーの塊が溜まっている。

 

モリガメがネプギアに気を取られている間に上空に移動してエネルギーチャージをしたのだ。

 

 

「とびでるよ!」

 

 

 そこにロムの攻撃力アップの魔法が加わる。

 

攻撃準備万端になったユニは目に映るレティクルを慎重に動かし照準の真ん中にモリガメを捉える。

 

射撃攻撃をする彼女もネプギアと同じように変身後はFCSを使うことができるのだ。

 

 

ピー!

 

 

 警告音と共に【Lock on】と赤い文字が点滅する。

 

 

「くらえぇぇぇぇ!」

 

 

ズギューーーーーーン

 

 

 エクスマルチブラスターの極太ビームがモリガメに襲い掛かる。

 

 

「ギャアアアアアアス!」

 

 

 ビームは硬い甲羅に何の抵抗もなく風穴を開けると4万以上のダメージが出る。

 

モリガメはそのまま消滅してしまう。

 

元々、頭を出した隙を狙うものではなく、力押しで甲羅ごと破壊する作戦だったのだ。

 

流石のモリガメも自慢の甲羅を貫かれるとは思わなかったらしい。

 

 

「コンボを稼いだとは言え、カメ型モンスターの甲羅にあれだけ大きな穴を空けるなんて……流石は女神様」

 

 

 ファミ通は女神の力に感嘆しながらメモを取る。

 

 

「流石はユニちゃん」

 

「アンタのフェイントもなかなか様になってたわよ」

 

 

 ネプギアはユニの元に飛んで行くと、お互いにグータッチを交わす。

 

 

「ネプギアちゃん大丈夫? 回復するよ」

 

 

 ロムがネプギアの側に飛んでくると、ヒールの魔法を使ってくれた。

 

 

「ありがとう」

 

 

 ネプギアのHPはモリガメとの競り合いで三割ほど減っていたが、全回復する。

 

 

「じゃあ、次行こう次」

 

「早くお祭り行きたいな」

 

 

 ロムとラムに急かされて、女神候補生達は次のターゲットに向かって飛んでいく。

 

 

「わわっ! 待ってー!」

 

 

 急いで追いかけるファミ通。

 

 

 

***

 

 

 

「わっ! またモンスターが通せんぼしてるよ!」

 

 

 ファミ通の前には十数匹のゴースト系モンスターの群れが通路を塞いでいた。

 

 

「困ったな……ここを通らないと取材ができないや」

 

 

 ファミ通がそう言った瞬間、Gビットがファミ通から離れてモンスターの群れに向かって行く。

 

 

「あっ! Gビットが……」

 

 

 ファミ通が驚く間も無く、Gビットはスラスターを吹かして華麗に飛び回り、死角から死角に移動しながらビーム攻撃を行いモンスターの群れを翻弄する。

 

一撃で1,000以上のダメージが当たり、その攻撃は連続で行われていた。

 

その姿は川に落ちた獲物に群がるピラニアのようだ。

 

あっという間にモンスターの群れが消滅する。

 

 

「いやー。これは便利だなぁ」

 

 

 何もせずに見ているだけで戦闘が終わったファミ通はネプギアの技術と女神の力に感嘆する。

 

 

「それより取材取材と」

 

 

 ファミ通は通れるようになった道を通りネプギア達を追う。

 

 

「わっ! もう始まってるよ」

 

 

 走るファミ通の前に上空でモンスターと交戦する女神候補生達が居た。

 

 

「「エターナルフォースブリザード!」」

 

 

 ロムとラムが攻撃魔法を唱える。

 

【エターナルフォースブリザード】とはロムとラムが姉のブランから習った氷属性の攻撃魔法。

 

アイスコフィンより更に威力の増した広範囲攻撃だ。

 

そのダメージは1500を超えていた。

 

百匹近くに居たゴースト系モンスターがロムとラムの魔法で一瞬で凍りつき戦闘不能になる。

 

何匹か範囲から逃れた者もいたが、ことごとくネプギアのM.P.B.Lとユニのエクスマルチブラスターに1500以上のダメージを受けて一撃で撃ち抜かれて戦闘不能になっていく。

 

 

「うわ……本当に凄いな。あと一歩遅かったら見逃してるところだったよ」

 

 

 カメラのシャッターを押しながら感嘆の声を出すファミ通。

 

 

「こっちのザコは全部倒したわ」

 

「がんばったよ」

 

 

 ロムとラムは自信満々に敵の殲滅を自慢する。

 

 

「うん、えらいえらい」

 

 

 ネプギアは変身前と同じように二人の頭を優しく撫でてあげる。

 

性格が変わるとは言え、優しいお姉さんとそれになつく双子という三人の関係性は変わらないようだ。

 

 

「あのクジラのボスはどうする?」

 

 

 ユニは残った巨大なクジラ型モンスター、サイバーホエールをあごで指す。

 

それはボスでも一際大きい15メートル近い大きさだった。

 

 

「あれもタフそうだし、的が大きいからコンボから一気に決めよう」

 

「了解」

 

 

 ネプギアが質問に答えるとユニは頷く。

 

 

「今度はわたし達にやらせて! 新技があるのよ」

 

「ラムちゃんと一緒にがんばる」

 

 

 ロムとラムは両手を上げてコンボの止めを志願する。

 

 

「わかった。じゃあ、私とユニちゃんで囮とコンボ稼ぐから後はお願いね」

 

「しくじるんじゃないわよ」

 

 

 ネプギアとユニは快く了解して、素早く役割分担を決める。

 

 

「誰に言ってるのよ? 最強の双子のロムちゃんラムちゃんの侍女に失敗の文字はないわ」

 

「ラムちゃん、侍女じゃなくて辞書だよ」

 

 

 自信満々に胸を張るラムだが、いつものように言い間違いをネプギアに訂正される

 

この辺りも変身前と変わらない。

 

そもそも、ラムの言い間違いはうろ覚えの言葉でも、【自分に間違いは無い】と言う強気で自信に満ちた考え方からくる物なので、更に強気になった変身後は間違いだろうと思い付いたことはズバズバと言ってしまう。

 

そこには間違ってもネプギアとユニが訂正してくれるだろうという甘えと信頼もある。

 

 

「そうだっけ? ま、いいじゃない。じゃ、行ってきまーす」

 

 

 ラムは自分の言い間違いをまったく気にした様子も無く更に上空に昇っていき、ロムも、「ネプギアちゃん、わたし達の活躍ちゃんと見ててね」とネプギアにアピールするとその後に続く。

 

残されたネプギアとユニはサイバーホエールに立ち向かって行く。

 

 

「あのデカブツに補助魔法無しで接近戦挑むのは得策じゃないわよ」

 

「うん、距離を置いて二人で十字放火で確実にヒット数を稼いでいこう」

 

「了解。フォーメーション・クロスファイア」

 

 

 ネプギアとユニはサイバーホエールに向かいながら手早く戦術を決める。 

 

十字砲火とは二つの火器で前面からだけでなく側面からも攻撃を加えて、火線が交差するようにする攻撃方法。

 

サイバーホエールの目前でネプギアとユニは二手に分かれる。

 

ネプギアが正面に立ち、ユニが左側面に回り込もうとする。

 

 

「M.P.B.L! ラピッドファイアで行くよ!」

 

 

ズガガガガガ!

 

 

「ウォォォォン」

 

 

 ネプギアが連射攻撃してサイバーホエールを引き付けている間にユニは素早く側面に回る。

 

 

「頼んだわよ、エクスマルチブラスター」

 

 

ズガガガガガ!

 

 

 ユニもネプギアに合わせて連射攻撃を始める。

 

そのダメージは一桁~二桁だが、先程のモリガメの時と同じくヒット数が凄まじい。

 

 

「グオオオオオーーー」

 

 

 サイバーホエールは二人の弾幕を無視して巨体を生かしてネプギアに突撃する。

 

 

「そんな見え透いた攻撃なんかに当たりません」

 

 

 avoid、ネプギアはサイバーホエールの直線的な攻撃をプロセッサユニットに内蔵されているスラスターによる横へのスライド移動で悠々と回避をすると再びサイバーホエールとの距離を取る。

 

 

「アタシのことを忘れてもらっちゃ困るわね」

 

 

ズガガガガガ!

 

 

 ユニはその隙に突撃しながら連射を続けヒット数を稼いでいる。

 

 

「グオオオオオ!」

 

 

 しつこく付きまとい連射を続けるネプギアとユニにサイバーホエールが怒りの咆哮を上げる。

 

 

「ウォォォォン!」

 

 

 サイバーホエールはユニに向けて背中の噴気孔から水流を飛ばしてくる。

 

 

「見える!」

 

 

 avoid、ユニはスラスターで急下降をかけると素早く攻撃を回避する。

 

 

「私だっているんですからね」

 

 

ズガガガガガ!

 

 

 今度はネプギアがユニを攻撃して隙を晒したサイバーホエールに突撃しながら連射攻撃を仕掛ける。

 

ネプギアが攻撃された時は攻撃の隙にユニが強襲し、ユニが攻撃された時はネプギアが強襲するように二人は連携しながら華麗に空を舞いサイバーホエールを翻弄する。

 

その姿は、蝶のように舞い蜂のように刺すといったようだった。

 

その頃、ロムとラムは遥か上空からネプギア達の戦いを見ていた。

 

ラムは、「やってるやってるぅ♪」とネプギアとユニの活躍を楽しそうに眺め、ロムは、「流石ネプギアちゃんとユニちゃんだね。凄く息のあったコンビネーション」と冷静に分析をしていた。

 

ネプギアとユニはサイバーホエールの周囲を飛び回りヒット数を稼いでいる。

 

 

「そろそろ1,000ヒットよ」

 

 

 ユニがそう言うと、「うん、ロムちゃんとラムちゃんも動く頃だね」とネプギアが言う。

 

続けてネプギアは、「私、足止めするから援護よろしくね!」と言うとプロセッサユニットのバーニアを吹かし一直線にサイバーホエールに突進していく。

 

ユニは突進するネプギアを援護するように、「あんまり無茶しないでよ」と言いながら連射攻撃を続ける。

 

 

「グオオオン」

 

 

 サイバーホエールが巨体を活かしてネプギアに突撃を仕掛けてくる。

 

 

「このタイミングなら……ジャストガード!!」

 

 

 ネプギアは急接近しながらもタイミングを計り左手の防御の魔法陣を展開する。

 

 

ギィィィィン!!

 

 

 激しい火花が散ってサイバーホエールの巨体とネプギアの防御魔法陣が激突する。

 

ネプギアはジャストガードに成功したが、それでも衝撃で91のダメージを食らいHPゲージが一割減少してしまう。

 

 

「くうううう!」

 

 

 ネプギアはその場に留まりサイバーホエールの巨体と鍔迫り合いを始める。

 

流石の女神化後でもサイバーホエールの巨体は荷が重いらしく、ネプギアは徐々に圧され始めてしまう。

 

 

「ネプギア、頑張って!」

 

 

 ユニはネプギアを応援しながらサイバーホエールの周囲を旋回し連射攻撃を続ける。

 

 

 その光景を見ていたロムは、「ラムちゃん、ネプギアちゃんが」と言い、「うん、足止めしてくれてるわ。本当に気が利くんだから、行くわよロムちゃん」とラムが返すと、「うん!」と力強くロムが頷く。

 

 

 二人はネプギア足止めしていることに感謝しつつ、攻撃態勢に入る。

 

 

「氷剣アイスカリバー!」

 

 

 ラムが左手を高く掲げてそう叫ぶと、その手に全長20mはある氷で出来た剣が現れる。

 

 

「とびでるよ!」

 

 

 ロムは自分達にお約束の攻撃力アップの魔法を唱える。

 

 

「「……氷の檻よ永久の投獄を与えたまえ……」」

 

 

 ロムとラムは声を揃えて呪文を唱える。

 

 

「「フリジットプリズン・ウェディングケーキバージョン!」」

 

 

 呪文を唱え終えた二人が魔法を発動する。

 

 

「来たっ!」

 

 

 ネプギアはロムとラムの攻撃が開始されたのを確認すると、巻き込まれないよう素早く後退をする。

 

 

「グワッ!?」

 

 

 その直後サイバーホエールの周囲に水蒸気が集まり、その巨体が一瞬で凍りつく。

 

その姿はウェディングケーキのタワーのようだった。

 

 

 【フリジットプリズン】はアイスホールドの上位互換魔法。

 

足元だけでなく、体全体を氷で覆い閉じ込める魔法。

 

二人はそれにアレンジを加えてウェディングケーキ型になるようにしたのだ。

 

 

「ロムちゃん、そっち持って」

 

「うん」

 

 

 ロムとラムは二人でアイスカリバーを握る。

 

 

「それじゃ、わたしとロムちゃんの共同作業!」

 

 

 ラムはそう言いながらアイスカリバーの刃をサイバーホエール向けて急下降する。

 

 

「「アイスウエディング!」」

 

 

 ロムとラムは流星のようになってサイバーホエールに向かって落ちていく。

 

 

「「入刀っっ!!」」

 

 

 ロムとラムの流星が通り過ぎると、サイバーホエールはアイスカリバーにより真っ二つに割られていた。

 

サイバーホエールに112Kの表示が現れる。

 

これは大ダメージを与えた時に数字を短く表示するために単位を1000倍のK(キロ)に変えるものだ。

 

つまり、ロムとラムが11万以上のダメージを与えたことになる。

 

続けてオーバーキル×2の表示と共にサイバーホエールは一瞬で消滅する。

 

 

「ロムちゃん、ラムちゃん凄い!」

 

「いいわね、新技」

 

 

 ネプギアとユニはサイバーホエールを一刀両断した二人に称賛の言葉を送る。

 

 

「「ぶいっ!」」

 

 

 ロムとラムは元気よくVサインを決める。

 

 

「ネプギアが足止めしてくれたおかげで、ちゃんと当てられたわ」

 

「ありがとう、ネプギアちゃん」

 

 

 続けて、二人で足止めしてくれてネプギアにお礼を言うと、「どういたしまして、二人の手助けが出来てよかった」とネプギアは返事をする。

 

 

「傷はわたしが治すね」

 

 

 ロムはそう言って、またヒールを使うと減少したネプギアのHPが全快する。

 

 

「次で最後ね」

 

 

 ネプギアのHPが回復したのを確認したユニは得意げにニヤリと笑うと最後のターゲットが居る方向を向く

 

 

「よーし、サクッと行こう」

 

 

 ラムがそう言うと元気よく左手を上げと、「うん、サクサク行くよ」とロムが続けて右手を上げる。

 

 

「頑張ろうね」

 

 

 ネプギアがそう締めくくると、女神候補生達はフォーメーションを組んで最後のターゲットに向かって飛んで行く。

 

 

「強いだけじゃなくて仲間内での連携もバッチリとれてる。これはいい記事が書けそうだぞー!」

 

 

 ファミ通は喜々としながら女神候補生を追いかける。

 

 

 

***

 

 

 

「うわわっ! また敵?……って、アイエフ達か」

 

 

 ファミ通はまたモンスターに遭遇したのかと思ったが、そこにいたのはイストワールとアイエフとコンパとプラエとあんみつだった。

 

 

「その様子じゃネプギアに助けられたみたいね」

 

 

 アイエフは見透かしたような目で言う。

 

 

「かなりね。でも、よくわかったね」

 

 

 ファミ通は素直に答えるが、直ぐに気付いたアイエフを不思議に思い理由を尋ねる。

 

 

「その浮いてるGビットを見れば一目瞭然でしょ」

 

 

 アイエフは呆れたように答える。

 

アイエフの言う通りファミ通の周りにはネプギアから貸してもらったGビットが彼女を護るように浮遊していた。

 

 

「あはは……確かにこれじゃ一発でバレるよね」

 

 

 納得したファミ通は恥ずかしそうに頬を掻く。

 

 

「Gビットさんはとっても優秀なんですよ~。私もバリアで護ってもらったことがあります」

 

 

 コンパはネプギアの凄さを自慢するようにファミ通に説明する。

 

 

「本当に凄いですよね。稼働時間と火力凄いですし、プラネテューヌの最先端技術ってヤツですか?」

 

 

 ファミ通はイストワールに質問する。

 

 

「Gビットはネプギアさんのシェアエネルギーと以前にお話したネプギアさんが研究しているNG粒子で動いています」

 

 

 イストワールがファミ通に説明を始めると、ファミ通は、「ふむふむ……」と言いながらメモを取る。

 

 

「なので、プラネテューヌの技術はあまり関係がありませんね。どちらかと言えばネプギアさん個人のNG粒子の研究の成果でしょうか、ネプギアさんはNG粒子を上手く使ってシェアエネルギーを節約する方法を研究しているそうですし」

 

 

 イストワールは簡潔にファミ通の疑問に答える。

 

 

「なるほどなるほど。やはりネプギア様の力と知恵の賜物なんですね」

 

 

 ファミ通は納得したように、うんうんと何度も頷く。

 

 

「ところで、もう一つ疑問があるのですが?」

 

「なんでしょうか?」

 

 

 立て続けに質問するファミ通に快く応じるイストワール。

 

 

「何故ネプギア様ほどの方が裏方に徹しているのですか? ネプギア様はお人柄も良く、素晴らしい知恵と力の持ち主の上に犯罪組織を倒した実績もある。それなら候補生ではなく守護女神として表舞台に出た方がよいのでは?」

 

 

 ファミ通は今までの取材で感じたことを質問する。

 

今までの取材でファミ通はネプギアのことを高く評価していた。

 

突出した点は無いが、全ての分野において高い能力を持つネプギアを候補生にしておくのは惜しいと感じたのだ。

 

 

「それはあの子が無欲だからよ」

 

「ギアちゃんはゲイムギョウ界が平和でねぷねぷが笑っていれば他に何も要らないですからね」

 

 

 アイエフとコンパは自分の知り得る情報でファミ通の疑問に答える。

 

二人の言う通り、ネプギアは地位や名声にこだわりは無い。

 

ゲイムギョウ界が平和で皆が笑い合っていれば十分なのだ。

 

 

「そういうことです。それがネプギアさんの望みですから……私はそれに応えているのです」

 

 

 イストワールはアイエフとコンパの言葉に付け加えるように答える。

 

 

「しかし、【ノブレス・オブリージュ】という言葉もあります。ネプギア様は女神として、もっと上の立場から、その力をゲイムギョウ界の為に使うべきなのではないでしょうか?」

 

 

 しかし、ファミ通は納得がいかないようで、再度イストワールを説得しようとする。

 

 

「なるほど、それも一理あります。それより……」

 

 

 イストワールは深く頷いてファミ通に言うことに理解を示すが、何か思い付いたように右手の人差し指を上げる。

 

 

「それより?」

 

 

 ファミ通が不思議そうに首を傾げる。

 

 

「このようなところで私達と長話していて取材の方は大丈夫ですか?」

 

「わあああ! そうだった! モンスターに阻まれるより時間くっちゃったよ~」

 

 

 イストワールの言葉にファミ通はハッとすると、慌てて女神候補生の居る場所に走り出す。

 

 

「イストワール殿、私はファミ通殿の言うことが正しいと思います」

 

 

 あんみつはそうイストワールに話しかける。

 

その顔にはファミ通の言うことを後押しするだけでなく、イストワールに対する不満が見えた。

 

 

「この際ですからハッキリと申しましょう。私にはネプテューヌ殿よりネプギア殿の方が統治者として遥かに優れていると思います」

 

 

 あんみつが更に言葉を続ける。

 

 

「長子が国を継ぐと言うのは古いしきたりです。民から不満が出る前に手を打つのが教祖として……」

 

 

 あんみつがそこまで言うと、アイエフが右手であんみつを制する。

 

 

「あんみつの言いたい事は分かるわ。でも、イストワール様にも何かお考えがあると思うの」

 

 

 アイエフがそう言うと、「私にとってはネプギアさんの意思が第一なんです。今はこれでいいのです」とイストワールは言うと、話は終わりと言わんばかりにファミ通の後をゆっくりと追いかける。

 

その後ろをアイエフとコンパが続く。

 

 

 残されたあんみつは唇を噛むと、「これではあの方は何の為に……」と悔しそうに呟く。

 

 

「あんみつ? 何か言った?」

 

 

 あんみつの呟きが聞こえなかったプラエが不思議そうに首を傾げる。

 

 

「いえ、なんでもありません。それより早く行きましょう」

 

 

 あんみつはそう答えると、「うん、ネプギアお姉さん達とお祭り楽しみだな~」とプラエはスキップして、イストワール達の後を追う。

 

 

 

***

 

 

「そーれ! エターナルフォースブリザード!」

 

「凍っちゃえ」

 

 

 その頃、女神候補生達はロムとラムがモンスターの群れに向かってエターナルフォースブリザードを使っていた。

 

その威力と範囲は凄まじくダゴンの元に集まったゴースト系モンスターも一網打尽で倒してしまう。

 

 

「逃がさないわよ!」

 

「落ちて下さい!」

 

 

 ロムとラムの隣では先程と同じようにネプギアとユニがエターナルフォースブリザードから逃れたモンスターを射撃で撃ち落していた。

 

 

「さーて、これで残りはボス1体だけよ」

 

「数は多かったけど、わたし達の敵じゃなかったね」

 

 

ロムとラムは大きく伸びをすると自信満々にそう言う。

 

二人の言う通り、目の前には10メートルぐらいの大きさのイルカ型モンスターが残るだけだった。

 

 

「最後だし派手に決めるわよ」

 

 

 ユニがネプギアに向けてそう言うと、ネプギアは、「みんな! コード・ツェーンクロイツ」と声を上げる。

 

 

「オッケー! 華麗に決めるわ」

 

 

 ユニはサムズアップでネプギアの指示に応えると、ロムとラムも、「「りょうかいっ!」」と声を揃えて敬礼の真似をする。

 

 

「キシャーーーー!」

 

 

 イルカ型の巨大モンスターのダゴンは雄叫びを上げながら女神候補生達の方向に飛んでくる。

 

 

「行きます!」

 

 

 ネプギアはそれを正面から迎え撃つように接近をする。

 

 

「援護するわ!」

 

 

ズキューン! ズキューン!

 

 

 ユニがいつものように援護射撃を始める。

 

 

「ロムちゃん、行くわよ」

 

「うん!」

 

「「「アイシクルスピア」」」

 

「そーれそれそれそれーー!」

 

「乱れ撃ち!」

 

 

 ロムとラムもアイシクルスピアで弾幕を張る。

 

 

「当たって!」

 

 

ズキューン! ズキューン!

 

 

 更にネプギアも急降下しながら射撃をする。

 

 

「シャアアアア!」

 

 

 ネプギアとユニの射撃で1500前後のダメージが当たり、ロムとラムの氷の弾幕で30前後のダメージが無数に当たる。

 

その猛攻に怯んだダゴンの動きが止まる。

 

 

「シュゥゥゥーッ!」

 

 

 突撃を止めたダゴンは射撃に応戦する為に口から水流を吐く。

 

 

「アースシールド!」

 

 

 ネプギアが素早く魔法を唱えると、左手の魔法陣が土に覆われる。

 

 

ブシューー!

 

 

 ダゴンの放った水流が勢いよく土で覆われた魔法陣に当たるが、その水流は土に吸収されてしまう。

 

【アースシールド】は地属性の防御魔法で、単純な防御力が上がる上に水属性の攻撃に対して高い防御効果がある。

 

 

「狙い撃つ!」

 

「まだまだ行くよ!」

 

「撃って撃って撃ちまくるわ!」

 

 

 その間にもユニ、ロム、ラムはダゴンへの射撃を続ける。

 

 

「グオオオオ!」

 

 

 遠距離戦を不利だと感じたダゴンはネプギアに向かって突撃を再開する。

 

 

「はああああ!」

 

 

 ネプギアもユニ達の援護射撃を受けながらM.P.B.Lのブレードを構えてダゴンに向けて突撃をする。

 

 

「シュゥゥゥゥ!」

 

 

 ネプギアとダゴンの距離がどんどんと近づき、お互いが接触する寸前。

 

 

「ごめんなさい!」

 

 

 ネプギアは突如左手に隠していた筒をダゴンの目の前に投げつけると横に旋回してダゴンの突撃をひらりと避ける。

 

 

「???」

 

 

 肩透かしを受けたダゴンの目の前に筒が飛んでくる。

 

その筒がコツンとダゴンの頭に当たる。

 

 

ドカーーーーン!

 

 

 筒は大爆音を起こすと強烈な閃光を発する。

 

筒の正体はスタングレネードで、激しい光と音で突発的な目の眩み・難聴・耳鳴りを発生させる。

 

これもボムと同じくポーチのブレイン・マシン・インタフェースにセットされており、ネプギアの意思でいつでも呼び出すことが出来る。

 

 

「シャアアアア!? シャアアアア???」

 

 

 一時的に視覚と聴覚を奪われ暴れまわるダゴン。

 

 

「はああああ!」

 

 

 横に旋回したネプギアは更に旋回を続けてダゴンの真横に突撃をする。

 

暴れるダゴンの攻撃を避けながらM.P.B.Lのブレードを横腹に突き刺す。

 

 

「グオオオオオ!」

 

 

 咆哮を上げるダゴン。

 

 

「アインス!」

 

 

 ネプギアそう叫んではM.P.B.Lのブレードを引き抜くとギアナックルでダゴンをユニの方に吹き飛ばす。

 

ダゴンは勢いよく吹き飛ばされる。

 

 

「ツヴァイ!」

 

 

 ユニはエクスマルチブラスターの銃身の先で吹き飛ばされて来たダゴンを受け止める。

 

そしてエクスマルチブラスターから照射ビームを放ちその推力でダゴンをまたネプギアの方に飛ばす。

 

ダゴンはネプギアの目の前に飛ばされてくる。

 

 

「ドライ!」

 

 

 ネプギアは今度はM.P.B.Lのブレードでダゴンをユニの方向に弾き飛ばす。

 

再びユニの方に飛ばされるダゴン。

 

 

「シャー!」

 

 

 吹き飛ばされている最中にダゴンは途中で止まるよう踏ん張ろうとする。

 

吹き飛ぶ勢いが減速されてダゴンはネプギアとユニの間で止まってしまう。

 

 

「フィーア!」

 

 

 しかし、まったく予想しない上空からラムがアイスハンマーを持って現れる。

 

 

ガンッ!

 

 

 不意を突かれたダゴンはアイスハンマーで真下に叩き落される。

 

 

「フンフ!」

 

 

 叩き落された先にはロムが待っており、杖の先から強烈な竜巻の魔法を繰り出す。

 

ダゴンは竜巻で巻き上がり再びラムの方に飛ばされる。

 

 

「ゼクス!」

 

 

 ラムが野球のバッターのようにアイスハンマーを使ってダゴンを再びロムの方向に叩き落す。

 

 

「シャー!」

 

 

 ダゴンは落下位置をずらそうと体を捻る。

 

ダゴンの落下位置がロムの真上からズレていく。

 

 

「ズィーベン!」

 

 

 だが、その最中に真横からユニのエクスマルチブラスターのビームがダゴンを貫く。

 

そのビームの推力で今度はネプギアの方向に飛ばされる。

 

 

「アハト!」

 

 

 ネプギアはM.P.B.Lのブレード部分でダゴンを串刺しにするとそのままビーム放つ。

 

ダゴンは再びビームの推力でユニの方向に飛ばされる。

 

 

「ノイン!」

 

 

 ユニが回し蹴りでダゴンを打ち返す。

 

再びネプギアの居る方向に吹き飛ばされるダゴン。

 

 

「クロイツカノーネ!」

 

 

 ネプギアが叫ぶと女神候補生の四人はそれぞれの武器を構える。

 

M.P.B.Lとエクスマルチブラスターはエネルギーチャージが始め、ロムとラムは魔法の詠唱を始める。

 

 

 その頃、ユニに吹き飛ばされたダゴンは四人の女神候補生達の丁度真ん中に到達しようとしていた。

 

 

「「「「ツェーーーーーーーーン!」」」」

 

 

 女神候補生達が声を合わせて同時に攻撃を発射する。

 

ネプギアとユニは銃の最大出力の極太なビーム、ロムとラムは巨大な無属性の魔法エネルギーの奔流を発射する。

 

ダゴンを中心に四方から放たれた攻撃の軌道は十字架描くようであった。

 

 

「ギャオオオオオオオオオオン!」

 

 

 ビームの十字架が完成するとその中央で大爆発が起こる。

 

363Kのダメージを受けてHPゲージが全て吹き飛び、オーバーキル×6の表示と共に一瞬で消滅するダゴン。

 

 

「うわー、三十万超えのダメージってエグイなー」

 

 

 少し遠くで取材していたファミ通がネプギア達の出した大ダメージに驚いていた。

 

 

 【ツエーンクロイツ】とは女神候補生達による十字包囲からの十連コンボの合体攻撃。

 

ドイツ語なのはロムとラムの姉であるブランがドイツ語の技を使用するので、それを真似したいというロムとラムの要望に応えたもの。

 

 

「ミッションコンプリート。華麗に決めたわ」

 

 

 ダゴンの撃破を確認した女神候補生達は集合すると、まずはユニがラムとグータッチを交わす。

 

 

「わたし達にかかれば楽勝よ」

 

 

 ラムはユニのグータッチに応えながらそう言うと、今度はロムとグータッチを交わす。

 

 

「早くお祭り行きたいな」

 

 

 ロムはウキウキしながら、ラムとグータッチを交わし、今度はネプギアとグータッチを交わす。

 

 

「うん、いーすんさん達に報告してこよう」

 

 

 勝利を喜びあった女神候補生達はイストワール達の居る方向に飛んでいく。

 

 

***

 

 

「いーすんさん、クエスト終わりました」

 

 

 イストワールと合流したネプギア達は女神化を解くと、ネプギアがイストワールにクエスト完了の報告をした。

 

 

「みなさん、お疲れ様です」

 

 

 イストワールは女神候補生達に向けて嬉しそうに微笑む。

 

 

「所要時間は三十分か。思った以上に早かったわね」

 

 

 アイエフがスマートフォンの時計を見ながらそう言うと、「あっという間です~」とコンパもそれに続く。

 

 

「いや~、ボスを含めた三百以上のモンスターをこの短時間で殲滅させるなんて並みじゃないよ。しかも最後のボスなんてオーバーキル×6だもの」

 

 

 ファミ通も合流をしており、女神候補生達に称賛の言葉を送る。

 

 

「ロムちゃんとラムちゃんが広範囲の攻撃魔法を使えるから、そのお陰ですよ」

 

 

 ネプギアはロムとラムの活躍をアピールして謙遜するが、即座に「ネプギアとユニちゃんが撃ち漏らしたのを倒してくれるから安心して魔法が使えるのよ」とラムが言い、「ネプギアちゃんとユニちゃんのおかげ」とロムもそれに続く。

 

 

「なかなか言うじゃない。ま、アタシ達のコンビネーションの勝利ね」

 

 

 ユニは、てっきり鼻高々に自慢すると思ったロムとラムが、自分とネプギアを立ててくれるよう成長したのを嬉しく思った。

 

 

「ありがとう、ロムちゃんラムちゃん」

 

 

 ネプギアも同じ気持ちらしく、微笑みながらロムとラムの頭を撫でてあげる。

 

 

「それよりお祭り行こ! お祭り!」

 

「お祭りお祭り(わっしょいわっしょい)」

 

 

 ロムとラムは我慢できないことをアピールするように二人で飛び跳ねながらそう言う。

 

 

「はぁ……こーゆーところはまだまだ子供ね」

 

 

 ユニが溜息を吐きながらそう言うと、ネプギアは「ふふっ、いいんじゃないかな? 私も楽しみだし」と微笑む。

 

 

「そうですね。お話はこれぐらいにして、お祭りに行って来て下さい」

 

 

 イストワールはそう言って話を切り上げると、「やっほー! お祭り」とラムが言って、即座に女神化するプラネテューヌの方向に飛び去って行く、ロムは慌てて「ら、ラムちゃん待って~」と言って女神化して追いかける。

 

 

「ユニちゃん、プラエちゃん私達も行こ」

 

 

 ネプギアは女神化すると、プラエを抱きかかえ浮かび上がる。

 

 

「はわわっ!?」

 

 

 プラエが驚きの声を上げると、「大丈夫?」とネプギアが心配そうに尋ねる。

 

プラエは、「ちょっとビックリしただけ。大丈夫だよ」と微笑む。

 

 

「じゃ、行くわよ」

 

 

 ユニも女神化すると、ネプギアとユニはロムとラムの後を追って神次元のプラネテューヌに向かう。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 プラネテューヌの感謝祭まで戻ってきた女神候補生とプラエ。

 

街の入り口の少し手前に着陸して女神化を解くと、駆けだすロムとラムを先頭にプラネテューヌの街に入る。

 

 

「お祭りお祭りうれしいな~♪」

 

「うれしいうれしい~(るんるん)」

 

 

 ロムとラムは手を繋いで可愛らしく踊っている。

 

 

「ほら、プラエも一緒に」

 

「う、うん……」

 

 

 ラムが誘うと、プラエも一緒になって三人で輪になって踊り始める。

 

 

「日が暮れる前に着いてよかったね」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「そうね。ところでどう回る?」とユニは入り口で渡されたお祭りの地図を見ながらネプギアに尋ねる。

 

 

「ここから時計回りに歩いて回れば丁度いい時間に教会に着くんじゃないかな?」

 

 

 ネプギアは時計回りの方向を指差しながら答える。

 

 

「そうしましょ。ロム、ラム、プラエはぐれないようにね」

 

「「「はーい」」」

 

 

 ロムとラムとプラエは元気よく返事をするとネプギアとユニについて行く。

 

 

「見て見て! 金魚すくいよ!」

 

 

 ラムは左手でロム、右手でプラエの手を引き金魚すくいの屋台に行く。

 

 

「綺麗な金魚さん」

 

 

 ロムは水槽の中で泳ぐ金魚をみてうっとりする。

 

プラエも、「こんなにもいっぱいの金魚さん初めて見た」と驚く。

 

 

「ロムちゃん、プラエ、デメキンよデメキン!」

 

 

 ラムが水槽の中のデメキン金魚を指差すと、ロムも「大きいお目目(ぎょろぎょろ)」と興味津々にデメキンを眺めている。

 

プラエも、「面白いお顔」とクスクスと笑う。

 

 

「やってみる?」

 

 

 ネプギアは優しい声でロムとラムとプラエに問いかける。

 

 

「いいの!」

 

 

 プラエが嬉しそうにネプギアに尋ねる。

 

 

「いーすんさんから沢山お小遣いもらったから大丈夫だよ」

 

 

 ネプギアとユニがプラネテューヌに飛び立つ前、彼女達はイストワールにお祭り用のお小遣いを貰っていたのだ。

 

 

「うれしい(きらきら)」

 

 

 ロムが嬉しそうに目を輝かせると、「流石はネプギア!」とラムはネプギアに抱きつく。

 

 

「三人分お願いします」

 

 

 その間にユニが店主にお金を払う。

 

ロムとラムとプラエは店主からポイを受け取る。

 

【ポイ】とは、和紙を貼った金魚をすくう道具のこと。

 

 

「よーし! バシッとすくっちゃうわよ」

 

 

ばしゃん!

 

 

 ラムは派手に水槽にポイを突っ込み金魚をすくおうとする。

 

 

「あれ~? 破けちゃった……」

 

 

 ガックリするラム。

 

 

「力入れ過ぎよ。もう少しゆっくりやりなさい」

 

 

 ユニは呆れながらアドバイスをする。

 

 

「ゆっくりゆっくり……そーっとそーっと……(どきどき)」

 

 

ぽちゃん

 

 

 ロムはそーっとポイを水槽に沈めて金魚をすくおうとする。

 

 

「……あ……やぶれちゃった……(しゅん)」

 

 

 ロムはしゅんと肩を落とす。

 

 

「ロムは慎重過ぎ。もうちょっと素早くやりなさい」

 

 

 ユニがロムにもアドバイスをする。

 

 

「こ、こうかなっ!」

 

 

ぽちゃん!

 

 

 プラエがぎこちない手つきで金魚をすくおうとするが、やはりポイが破れてしまう。

 

 

「むずかしい……(おろおろ)」

 

「ねーねー! ネプギアとユニちゃんもやってみてよ」

 

「お手本見せて」

 

 

 ロムとラムとプラエが順々にネプギアとユニに期待の眼差しを向ける。

 

 

「わかったわ。まぁ、見てなさい」

 

 

 ユニは自信ありそうな顔で三人の要望に応える。

 

 

「ユニちゃん、ちょっと待って」

 

 

 ネプギアはそう言いながらNギアを操作する。

 

 

「ふむふむ……」

 

 

 ネプギアは真剣にNギアを見ながら頷く。

 

 

「なにやってるのよ?」

 

 

 ユニが腕組みしながらネプギアに質問をする。

 

 

「金魚すくいのコツを調べてるんだよ。出来れるだけ上手いお手本を見せてあげたいし」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ユニは「慎重ねー」と感心する。

 

 

「狙うのは水面近くを泳ぐ、小さくて動きのゆっくりとした金魚がいいんだって。あと、ポイは水の抵抗を少なくするために、必ずナナメの角度で、水面に対して35度〜45度が理想なんだって」

 

 

 ネプギアはネットで調べた知識をユニに説明する。

 

 

「ふーん……でも、そんなことアタシに教えていいのかしら?」

 

 

 ユニは不敵にニヤリと笑う。

 

 

「え? どういうこと?」

 

「決まってるでしょ。アタシとアンタが一緒にやるなら勝負だからよ」

 

 

 ユニはネプギアを指差してそう言うが、「勝負はともかく、いっぱい楽しんでみんなの分も取ってあげようよ」とネプギアはにこやかにそう答える。

 

 

「……それもそうね。年上として恥ずかしいところだけは見せられないわ」

 

 

 落ち着いた対応をするネプギアにユニは少し毒気を抜かれる思いになりながらも、そう答える。

 

 

「頑張ろうね、ユニちゃん」

 

 

 ネプギアはユニの手を取ってそう言うが、ユニは「でも、そんな付け焼き刃の知識でなんとかなるのかしら?」と少し疑問顔で首を傾げる。

 

 

「知らないよりは良いと思うよ。とにかくやってみようよ」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ユニは「そうね」と頷いて、「すいませーん。二人分お願いします」と言ってお金を払いポイを受け取る。

 

 

「斜め45度……こんな感じかしら?」

 

 

 ユニは手首の動かしながらポイの角度を確認すると、ネプギアが、「うん、いい感じだと思う」と答える。

 

 

「華麗に決めるわ!」

 

 

ぱしゃっ!

 

 

 ユニは素早くポイを動かし水面の金魚をすくう。

 

 

「おおっ! ユニちゃんスゴい!」

 

 

 ラムが喜びの声を上げると、「すくえた……(ぱちぱち)」とロムが拍手をし、「ユニお姉さん凄ーい」とプラエも拍手をする。

 

 

「ユニちゃん、凄い。私もがんばらなきゃ」

 

 

 ネプギアはそう言うと、ポイを傾けて金魚に狙いを付ける。

 

 

「えいっ!」

 

 

ぱしゃっ!

 

 

 ネプギアが素早くポイを動かすと見事に金魚がすくわれる。

 

 

「ネプギアちゃんもできた!」

 

「すごいすごーい!!」

 

 

 バンザイして拍手をするロムとラム。

 

プラエは尊敬の眼差しで、「やっぱりネプギアお姉さんは凄いなー」と拍手をした。

 

 

 金魚すくいの屋台を後にした女神候補生達。

 

 

「4対4の引き分けか」

 

 

 ユニは少し悔しそうな顔をする。

 

金魚すくいはネプギアもユニも四匹で終わった。

 

ネットの知識だけにしては取れた方だが、ユニはネプギアに勝てなかったのが悔しいようだ。

 

 

「でも、合わせて八匹もいるから、みんなで分けようよ」

 

 

 ネプギアはそう言うと、自分の手に持った金魚の入ったビニール袋をロムとラムに差し出す。

 

 

「くれるの?」

 

 

 ロムがおずおずとネプギアに質問する。

 

 

「もちろんだよ。大切に育ててね」

 

 

 ネプギアはニッコリ微笑むとロムの手に袋の紐を持たせてあげる。

 

 

「わーい! ありがとう」

 

「やった!」

 

 

 ロムとラムは両手を上げて喜ぶ。

 

 

「ユニちゃん、後でユニちゃんの取った金魚、私とプラエちゃんに分けてね」

 

 

 ネプギアは自分の分をロムとラムに渡したので、ユニの分を分けて欲しいとお願いをすると、ユニは、「いいわよ」と快く返事をする。

 

 

「やった。なんとなくだけど、ユニちゃんの取った金魚が欲しかったんだ」

 

 

 ネプギアが嬉しそうにそう言うと、ユニは、「そ、そう……」と言って顔を赤くする。

 

 

「ユニちゃん?」

 

 

 ネプギアが顔色の変わったユニに少し心配そうに声を掛けると、ユニは、「な、なんでもないわよ。別に嬉しくなんかないんだからね!」とそっぽを向いてしまう。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギア達はお祭りの景色を楽しみながら街中を歩く。

 

日が暮れて辺りは薄暗くなってきている。

 

 

「ん? あれなにかしら?」

 

 

 ラムはそう言って首を傾げて指をさす。

 

そこには女神候補生達四人の絵が描かれた屋台があった。

 

 

「なになに? 女神あめ?」

 

 

 ユニは屋台に書かれた文字を読み上げると、ネプギアが「飴細工の屋台かな?」と首を傾げる。

 

 

「面白そう(わくわく)」

 

「うん、気になるわ」

 

 

 ロムとラムが興味ありそうな目で屋台を眺めている。

 

プラエも物欲しそうな目で屋台を見ていた。

 

 

「行ってみよっか」

 

「「「うん!」」」

 

 

 ネプギアが誘うようにそう言うと、ロムとラムとプラエは声を揃えて元気よく返事をする。

 

そしてネプギア達は飴細工の屋台に向かう。

 

 

「なるほどアタシ達のアクセを飴にして、女神アメか」

 

 

 屋台には女神候補生達のアクセサリーを形どった飴が並んでいた。

 

 

「私が脳波コンのミルク味、ユニちゃんがリボンのチョコレート味、ロムちゃんの帽子がサイダー味でラムちゃんの帽子はストロベリー味だね」

 

 

 ネプギアは一つ一つ確認しながら見ていく。

 

 

「ネプギアー! わたし、これほしい」

 

「わたしもほしい」

 

 

 ロムとラムは手を上げて催促するように飴を指差す。

 

 

「プラエも欲しい……かも」

 

 

 やや控えめではあるが、プラエもロム達に続いて催促をした。

 

 

「じゃ、買おっか」

 

 

 ネプギアはロム達のお願いだし、自分も欲しかったので、あっさりと買うことを決める。

 

ユニも興味があるらしく、「そうねそうしましょ」と同意する。

 

 

「すみませーん。五つ下さーい」

 

 

 ネプギアがそう言ってお金を払うと女神候補生達は自分のアクセサリーを形どった飴を手に取り、プラエはネプギアと同じ脳波コンの飴を手に取る。

 

 

「……おいしい(ぺろぺろ)」

 

 

 ロムが水色の帽子の飴を美味しそうに飴を舐めると、「うん! おいしーい」とラムもピンクの帽子の飴を美味しそうに舐める。

 

 

「ロムちゃんのちょっと舐めさせて、わたしのも舐めさせてあげるから」

 

「うん、いいよ(ぺろぺろ)」

 

 

 ロムとラムは手に持った飴を舐めさせっこし合う。

 

 

「プラエのも舐めていい?」

 

 

 ラムがそう言うと、「わたし達のも舐めていいから」とロムが続く。

 

 

「う、うん……いいよ」

 

 

 プラエは少し恥ずかしそうにしながらも、ロムとラムの言うことを了承すると、ロムとラムに向かって飴を差し出す。

 

ロムとラムは、差し出された飴をペロペロと舐める。

 

 

「ユニちゃん、私達もやろっか?」

 

 

 ネプギアはユニの顔を覗き込むようにそう言うと、「ばっ、バカなこと言わないでよ!」とユニは顔を真っ赤にして目を逸らす。

 

 

「えー……がっかり……折角のお祭りなんだから、ユニちゃんも乗ってくれてもいいのに」

 

 

 ネプギアは心底残念そうな顔をして肩を落とす。

 

ネプギアは祭りの熱に浮かされて少し大胆になってしまったようだ。

 

 

「ほら! 次行くわよ次!」

 

 

ユニはネプギアの言うことを無視して先を急かす。

 

 

「次はあそこ!」

 

 

ラムが指差したのは射的の屋台であった。

 

 

「行こう行こう(ぐいぐい)」

 

 

 ロムは右手でネプギアの手を握って左手でユニの手を握ると【クイクイッ】引っ張る。

 

普段は大人しいロムも祭りの熱気で積極的になっているようだった。

 

ネプギアはそんなロムを見ながら微笑むと、「うん、行こ」と頷き、ユニは少し呆れつつ、「はいはい、そんなに引っ張らなくても行くわよ」と答える。

 

 

「行きましょ」

 

 

 ラムがそう言うと、「「うん」」とロムとプラエが頷いて、三人は射的の屋台に駆け込んで行く。

 

 

「おじちゃーん、わたしとロムちゃんとプラエで1回づつ!」

 

 

 ラムがそう言うと、ネプギアが、「お願いします」と店主にお金を渡す。

 

 

「この中から鉄砲を選ぶの?」

 

 

 ロムは箱の中に置いてある射的用の鉄砲を眺める。

 

 

「どれにしようかな……」

 

 

 そう言ってプラエは箱の中の鉄砲に手を伸ばす。

 

 

「ちょっと待って」

 

 

 ネプギアはそれを制止する。

 

 

「どうしたの? ネプギアちゃん」

 

 

 ロムは不思議そうな顔をする。

 

 

「こういうのは道具選びから差が出てくるんだよ」

 

 

 そう言いながらネプギアは射的の銃を一つづつ取って、レバーを引いたりトリガーを引いたりして動作を確認する。

 

 

「そうね。バネがしっかりしたのを選ばないと弾が遠くに飛ばないわよ」

 

 

 ユニもネプギアと同じように銃を手に取って動作確認をする。

 

 

「そうなんだ……」

 

 

 そんな二人を見て、素直に感心するプラエ。

 

ネプギアとユニは銃が好きであり、それは玩具の射的の銃でも変わらない。

 

先程の金魚すくいとは違い、自分たちの得意分野である銃に関しては玩具とはいえこだわりがあるようだ。

 

 

「ネプギア、銃の方は任せたわ。アタシは弾を選ぶわね」

 

 

 ユニはそう言って持っていた銃を箱に戻すと、別の箱にある射的の銃の弾であるコルクを選び始める。

 

 

「弾も何か変わるの?」

 

 

 ラムがユニに質問する。

 

 

「当然よ。空気の力を均一に伝える為に、コルクの形が整っているか、どこも欠けていないかをチェックしないとね」

 

 

 ユニがドヤ顔で説明を始めるとコルクを一つ一つチェックする。

 

 

「ほわ~」

 

 

 プラエは声を上げて感心すると、テキパキと作業するネプギアとユニを眺める。

 

 

「お嬢ちゃん達なかなかの通だね」

 

 

 射的の店主もネプギアとユニの姿に感心をしていた。

 

 

「銃はこの三つがいいかな」

 

「弾はこのへんのが使えそうよ」

 

 

 ネプギアとユニはそう言って銃と弾をロムとラムとプラエに渡す。

 

 

「「「ありがとう!」」」

 

 

 ロムとラムとプラエは声を揃えてお礼を言うと嬉しそうにそれを受け取る。

 

 

「レバーを引いたら、銃口にコルクを詰めて」

 

「うん」

 

「わかったわ」

 

 

ネプギアが説明をすると、ロムとラムはネプギアの言う通りに弾を込める。

 

 

「よーし当てるわよー!」

 

「がんばる(きりっ)」

 

 

 ロムとラムはそう言うと銃を構える。

 

 

「もう、姿勢が全然なってないじゃない」

 

 

 ユニは呆れながらロムの後ろに回る。

 

 

「まずは脇をしっかり締めて」

 

「うん」

 

 

 ロムはユニの言うように脇を締める。

 

 

「ピストルグリップは右手でしっかり握る」

 

 

 ユニはロムの右手を握り銃のグリップの部分を持たせる。

 

 

「次は左手でフォアエンドを優しく握る」

 

 

 今度は左手を握り中央の木の部分フォアエンドを握らせる。

 

 

「ストックを右肩の肩の付け根にあてて安定させて」

 

 

 更に銃の底の木の部分をロムの右肩の付け根に持ってくる。

 

 

「最後に右頬をストックに密着」

 

 

 ユニは銃のストックの部分をロムの右頬に当てる。

 

 

「なんだか狙いやすそうな気がする(びしっ)」

 

 

 ロムはユニに姿勢を整えられて、更にやる気が出たようだ。

 

 

「両目は開けて、右目でサイトを覗いて照準を合わせて」

 

「最初だから小さい景品を狙った方がいいよ」

 

 

 ユニのアドバイスの後にネプギアもロムにアドバイスをする。

 

 

「うん(こくこく)」

 

 

 素直に返事をするロム。

 

 

「狙いを定めたら迷わず撃つ!」

 

「……っ!」

 

 

パン

 

 

 ユニの声に反応して、ロムがトリガーを引くと勢いよくコルクが飛んで行き、景品に並んでいたお菓子に当たるとその箱が落ちる。

 

 

「できた!」

 

 

 思わず声を上げるロム。

 

 

「ロムちゃん、すごーーーい!」

 

 

 ラムは大声でロムを褒める。

 

 

「アタシが教えればこんなもんよ」

 

 

 ユニは腕組みして鼻高々に言う。

 

 

「ありがとう、ユニちゃん(にこにこ)」

 

 

 ロムは景品のお菓子の箱を持ちながらユニにお礼を言う。

 

 

「ねぇねぇ、ユニちゃん、わたしにもやって」

 

 

 ラムはユニに自分にもロムと同じように姿勢を整えて欲しいとせがむ。

 

 

「わかったわ」

 

 

 ユニは今度はラムの背中に回り姿勢を整えさせる。

 

 

「これでよし! 撃ってみなさい」

 

「とりゃー!」

 

 

パン

 

 

 ラムが掛け声と共にトリガーを引くと小さなぬいぐるみに弾が当たって落ちる。

 

 

「やったー! ゲットよ!」

 

 

 ラムは嬉しそうにガッツポーズを決める。

 

 

「よかったね、ラムちゃん」

 

「うん!」

 

 

 ネプギアの言葉に嬉しそうに頷くラム。

 

 

「ユニお姉さん、プラエにもして」

 

「いいわよ」

 

 

 プラエがユニにせがむと、ユニはプラエの姿勢を整える。

 

 

「よし! 当ててみせなさい」

 

 

 ユニがそう言うと、「えい!」とプラエが銃を放ち、弾が景品のお菓子の箱に当たると見事に落ちる。

 

 

「ネプギアお姉さん、プラエにもできたよ!」

 

 

 プラエが嬉しそうに言うと、「上手い上手い」とネプギアは微笑みながら拍手をした。

 

 

「ねぇ……わたし、あのおっきい水色のクマさんのぬいぐるみが欲しい」

 

 

 ロムはおずおずと景品に並んでいる大きい水色のクマを指差すと、「わたしは反対側のピンクのヤツ」とラムが元気よく反対側の同じ大きさのピンクのクマを指差す。

 

更にプラエも、「なら、プラエは真ん中のウサギさんが欲しい」と大きなウサギのぬいぐるみを指差す。

 

三つとも景品の中で一際大きく、恐らく目玉の景品だろう。

 

 

「あれはちょっと難しいんじゃないかしら? 一発や二発じゃ落ちないわよ」

 

 

 ユニが難しそうな顔で腕組みをする。

 

 

「だったら、みんなで力を合わせようよ」

 

 

 ネプギアが力強く言うと、ユニはネプギアが言いたいことを理解したようでニヤリと笑うと、「なるほど。こういう時こそアタシたちの力の見せ所ね」とやる気をアピールするように右手で握りこぶしを作る。

 

 

「おじさん、私達の分もお願いします」

 

 

 ネプギアは店主に二人分のお金を渡すと二人は銃と弾を選ぶ。

 

 

「一点集中。みんな、息を合わせて行こう」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「合体攻撃、華麗に決めるわよ」とユニが言う。

 

ロムとラムはネプギアとユニが、みんなで力を合わせて落とすという意図を理解して、「「うん!」」と二人揃って元気よく返事をする。

 

 

「えっと……プラエにもできるかな?」

 

 

 プラエが少し困った顔でネプギアの顔を見る。

 

ネプギアは優しく微笑むと、「大丈夫。私達と一緒に頑張ろう。失敗してもいいから。ね?」とプラエに言う。

 

プラエは、「うん」と元気よく頷いた。

 

 

「じゃあ、号令お願い」

 

 

 ユニはネプギアにリーダーとして掛け声を上げるようにお願いをする。

 

 

「みんな整列」

 

 

 ネプギアの声で五人は横一列に並ぶ。

 

 

「撃鉄起こせ!」

 

 

 ガシュッ

 

 

 次の声で五人が銃のレバーを引く。

 

ロムとラムとプラエは撃鉄の意味が分からなかったが、ネプギアとユニの動作を見てレバーだと理解したようだ。

 

 

「弾こめっ!」

 

 

 続いて五人揃って弾をこめる

 

 

「構えっ!」

 

 

 五人は綺麗に銃を構える。

 

ロムとラムとプラエもユニに教わった通りの構えだ。

 

 

「目標、水色のぬいぐるみの頭部!」

 

 

 ネプギアがそう言うと五人は狙いを定める為に銃を動かす。

 

頭に集中して衝撃を与えることでひっくり返そうと言うのだ。

 

 

「うてーーーー」

 

 

パパパパパン!

 

 

 ネプギアの最後の号令で五人が同時に銃を撃つ。

 

弾は五発とも水色のぬいぐるみの頭部に当たるとぬいぐるみは後ろに倒れて落ちる。

 

 

「やったぁ!」

 

 

 飛び跳ねて喜ぶロム。

 

 

「ざっとこんなものよ」

 

 

 ユニは銃を肩に置いて得意げに言う。

 

 

「やるねぇ、お嬢ちゃん達……」

 

 

 店主も女神候補生達の合体攻撃に驚く。

 

 

「次、わたしのピンクのやつ~」

 

 

 ラムがピンクのぬいぐるみを指差す。

 

 

「うん、みんな行くよ!」

 

 

 ネプギアがそう言うと、五人は銃を持つ。

 

次のターゲットはラムが欲しがっているピンクのクマだ。

 

 

***

 

 

 

 射的の屋台を後にした女神候補生達。

 

夜になり、屋台の明かりが周囲を照らし、祭り本番と言った雰囲気になってきていた。

 

 

「お店の人驚いてたね」

 

「そりゃ、目玉の景品をあんなあっさりと落とせば驚くわよ」

 

 

 ネプギアとユニは驚く店主の顔を思い出して、軽く微笑む。

 

あの後、ピンクのクマもウサギも見事に落とし、店主を驚かせたのだ。

 

 

「「「るんるんるん~♪」」」

 

 

 ロムとラムとプラエの手には射的で落とした大きなぬいぐるみが抱かれていた。

 

三人はご機嫌でステップを踏んでいる。

 

ぬいぐるみ自体も嬉しいが、みんなで力を合わせて取ったことが心から嬉しいようだ。

 

 

「あれ? あそこにいるのユリィさんじゃないかな?」

 

 

ネプギアが指差す先にはアレスター家のユリィが居た。

 

 

「本当だわ。何してるのかしら? 制服着てるからプライベートじゃなさそうだけど……」

 

 

 首を傾げるユニ。

 

ユリィの服装はいつも近衛騎士が職務で着る制服だった。

 

 

「ちょっと挨拶してこようよ」

 

 

 ネプギアはユリィの元へと向かうと、残りのメンバーもその後を付いて行く。

 

 

「こんばんは、ユリィさん」

 

 

 ネプギアはユリィに声を掛けると、「「「「こんばんは」」」」とユニとロムとラムとプラエもそれに続く。

 

 

「まあ、皆様お揃いで、ふふっ……」

 

 

 ユリィはネプギア達の姿を見るなり微笑む。

 

 

「どうかしたんですか?」

 

 

 ネプギアが不思議そうに質問をすると、ユリィは「いえ、お祭りを楽しんでいるようでしたので嬉しくなって」と言う。

 

 

「まぁ。金魚すくいの袋持って、ぬいぐるみ抱きかかえてたらそう見えるわよね」

 

 

 ユニはそう言うと、納得した様子を見せる。

 

 

「見て見て~! これ可愛いでしょ~」

 

「くまさんだよ(がおがお)」

 

 

 ロムとラムは自慢するようにクマのぬいぐるみをユリィに見せると、ユリィは「可愛いですね。ロム様とラム様にとってもお似合いです」と答える。

 

 

「ユリィさん、こんな素敵なお祭りを開いてくれてありがとうございます」

 

 

 ネプギアはユリィに丁寧にお礼を言う。

 

 

「ありがたいお言葉です。夫や娘にも伝えておきますね」

 

 

 ユリィは胸に手を当てて目を閉じると嬉しそうそう言う。

 

 

「ユリィさんはここでなにを?」

 

 

 ネプギアがそう質問すると、ユリィは、「見廻りです。女神様に感謝を伝える神聖なお祭りでも羽目を外す者はいますから」と答える。

 

 

「羽目を外すか……身近で羽目を外し過ぎてヒドイ目にあった人を見てるから否定ができないわね」

 

 

 ユニは敢えて名前を隠すが誰のことを言っているのかバレバレな発言をする。

 

 

「業務がありますので私はこれで失礼します。ネプギア様達も遅くなられませんよう」

 

 

 ユリィはそう言うと一礼して立ち去る。

 

 

「荷物もあるし、私達もそろそろ帰ろうか?」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ユニも、「そうね。明日もあるし」と同意すると女神候補生は教会に向かう。

 

 

「夜になると人がいっぱい居るわね」

 

 

 帰り道、ユニが周囲の人混みを眺めながら言うと、「それはそうだよ」とネプギアが答える。

 

 

「お祭りだからね」

 

 

 ラムが頷いて言うと、「ううん、違うよ」とネプギアが首を横に振る。

 

 

「じゃあ何でよ?」

 

 

 ユニが不思議そうに尋ねると、「ミッドナイトだからだよ」とネプギアがドヤ顔で答える。

 

 

「はぁ……」

 

 

 脱力しながら肩を落とすユニは、「アンタのダジャレは本当に寒いわね……」と呆れた声で言う。

 

 

「今のダジャレなの?」

 

 

 ロムが小首を傾げると「どの辺がどの辺がー! 教えてよー!」とラムが騒ぎ出す。

 

プラエも、「プラエも知りたい」とネプギアを上目遣いで見る。

 

 

「えーとね、混み合いの程度を示すのを密度って言うの」

 

 

 ネプギアの言葉に、「「「ふんふん」」」とロムとラムとプラエが頷き「それで、真夜中のことを英語でミッドナイトって言うから、ミッドの部分を密度とかけて密度ナイトで、人の多い夜って意味になるの」とネプギアが説明する。

 

すると、「「「おお~」」」とロムとラムとプラエが感嘆の声を上げる。

 

 

「……まだ真夜中って時間帯じゃないけどね……」

 

 

 ユニがそう言うと「えへへ……ユニちゃんに突っ込まれちゃった」とネプギアが小さく【ペロッ】と舌を出しながら嬉しそうに言う。

 

その後、女神候補生達は屋台を軽く眺めるだけで真っ直ぐ教会に帰って行った。

 

 

 

***

 

 

 

 女神候補生達がお祭りを堪能した翌日。 

 

G.C.2019年5月26日 日曜日。

 

朝食を済ませたネプギア達は、教会の講堂で今日のお祭りはどう回ろうかと相談をしていた。

 

 

「ねぷてぬーーーーー!」

 

 

 そこに豪快に教会のドアが開くと元気のよい子供の声が響き渡る。

 

 

「おおう! ピー子!」

 

 

 その声に気付いたネプテューヌは両手を開き、その子供を迎えようとする。

 

 

「とおっー!」

 

 

 ピー子と呼ばれた子供はネプテューヌに向かって飛び込むと、勢いよくアッパーパンチを当てる。

 

 

「ぐわーーー」

 

 

 大きく吹き飛ばされるネプテューヌ。

 

体は小さいがそのパワーは凄まじいようだ。

 

 

「ピーシェちゃん、暴力はダメって言ってるでしょ」

 

 

 ネプギアが優しくその子に言い聞かせる。

 

 

「きゃはははは」

 

 

 ピーシェは分かっているのか分かっていないのか、面白そうに笑う。

 

彼女はピーシェという名前でピー子はあだ名。

 

身長はロムとラムより低く、幼稚園児のようだった。

 

髪型はミディアムヘアーで前髪が短く、眉毛がハッキリと見え、後頭部には赤くて丸いサクランボのようアクセサリーを付けている。

 

黄色と黒の蜂のようなカラーリングの服を着て、手には猫の手のようなグローブをはめていた。

 

 

「すみませんすみません。うちの子がとんでもない御無礼を!」

 

 

 後からやってきた青いロングヘアーで眼鏡をかけた二十代後半ぐらいの女性がネプテューヌに平謝りをする。

 

黒いスーツを着たその姿でペコペコと頭を下げるその姿は、仕事をミスしたOLのようだった。

 

 

「いいよいいよ。ピー子と付き合ってれば、こんなの日常茶飯事だし」

 

 

 ネプテューヌは笑いながら、跳ね起きで飛び起きる。

 

 

「久しぶり、ピーシェ」

 

「ピーシェちゃん、久しぶり(にこにこ)」

 

 

 ロムとラムは嬉しそうにピーシェの名前を呼ぶ。

 

年の近い彼女達は遊び友達なのだ。

 

 

「ロム! ラム!」

 

 

 ピーシェはロムとラムの方にかけていく。

 

 

「いっしょに遊びましょ」

 

「うん!」

 

 

 ラムに左手を引かれて付いて行くピーシェ。

 

 

「ピーシェちゃん、こっちだよ。わたし達が昨日取ったぬいぐるみ見せてあげる」

 

「見せて見せてー!」

 

 

 ロムもピーシェの右手を引いて三人は教会の奥に入って行く。

 

ロムとラムにとってピーシェは数少ない妹分なので面倒を見てあげたいのだ。

 

 

「あの方達は?」

 

 

 ファミ通がピーシェと眼鏡をかけた黒いスーツの女性のことをイストワールに質問する。

 

 

「子供の方がピーシェさん、眼鏡をかけた方が母親のキセイジョウ・レイさんです」

 

 

 イストワールが質問に答えると、ファミ通は、「……あまり似ていない親子ですね……」とストレートな感想を述べる。

 

見た目もそうだが、元気一杯のピーシェとペコペコと頭を下げる眼鏡の女性があまりにも似ていないと感じたようだ。

 

 

「孤児のピーシェさんをレイさんとアノネデスさんが引き取ったのです」

 

 

 イストワールが続けて質問に答えるとファミ通は、「ええっ? アノネデスって、前に来たオカマの?」と驚きで目を丸くする。

 

 

「いろいろと込み入った事情があるのです」

 

 

 イストワールは細かい事情には触れずにざっくりした内容で質問に答える。

 

キセイジョウ・レイとアノネデスは以前、神次元でネプギアやネプテューヌ達と敵対する組織【七賢人】に所属していた。

 

その戦いの最中、プラネテューヌで預かっていた孤児であったピーシェに女神の才能を見つけたアノネデスはピーシェを七賢人の戦力にする為に自分をピーシェの父親と偽りピーシェを誘拐。

 

 

 その後に今までの記憶を消して自分を父とキセイジョウ・レイを母として、ピーシェを洗脳する。

 

そしてピーシェは新国家【エディン】の女神イエローハートとしてネプギア達の前に立ちふさがる。

 

ネプギア達はエディンとの激しい戦いに勝利しピーシェの記憶を蘇らせるが、キセイジョウ・レイとアノネデスが両親であるという暗示は解けなかったらしい。

 

その後キセイジョウ・レイはタリという国の女神の力で暴走し、ネプギア達と戦い、そして敗れ暴走を止められる。

 

戦いの後は、キセイジョウ・レイを含む七賢人は心を入れ替え女神たちの手助けをするようになる。

 

アノネデスは一時行方をくらますが、ピーシェの野生の勘で見つかってしまい、それに合わせてピーシェは正式にキセイジョウ・レイとアノネデスに引き取られた。

 

 

「あら? レイちゃん、あの子は?」

 

 

 暫くすると教会の入り口からアノネデスが入って来る。

 

姿の見えないピーシェのことをキセイジョウ・レイに尋ねているようだ。

 

 

「友達と一緒に奥に行きました」

 

 

 キセイジョウ・レイがそう言うとアノネデスは、「そう、今日は育児から解放されそうね」と少し嬉しそうに言う。

 

見ての通りピーシェは元気一杯なので面倒を見るのも大変なのだろう。

 

 

「レイさん、アノネデスさん、いらっしゃいませ」

 

 

 神次元のイストワールがキセイジョウ・レイとアノネデスに挨拶をする。

 

 

「こ、こんにちは……今日はお世話になります」

 

「はぁ~い、アタシは来たくなかったんだけど、あの子がお祭りお祭りって騒ぐから」

 

 

 レイは少しオドオドしながら、アノネデスは面倒くさそうにイストワールのあいさつに答える。

 

 

「ピー子達もお祭りに来たんだ」

 

「あたしが招待したんだよ~」

 

 

 ネプテューヌの言葉にプルルートが答える。

 

プルルートは長い間ピーシェと一緒に暮らしていたので、ピーシェが引き取られた後もこうしてたまにピーシェの家族と交流している。

 

 

「それではみなさんの準備が出来次第お祭りに出かけましょう」

 

 

 イストワールがそう言うと、各人が外出の準備を始める。

 

準備の出来たネプギア達は全員揃って感謝祭に出かけた。

 

 

「きゃははは!」

 

 

 ピーシェは楽しそうに街中を走り回る。

 

その両隣にはロムとラムが付いて歩き、少し後方にネプギア達が居る。

 

 

「ピーシェ、あんまり遠くへ行っちゃダメよ」

 

「お祭りは逃げないから、ゆっくり行こう(ぎゅっ)」

 

 

 ロムとラムはピーシェの手を握ってあげる。

 

彼女達はピーシェの面倒を見てあげるのが楽しくて仕方ないのだ。

 

 

「うん」

 

 

 嬉しそうに頷いてロムとラムについて行くピーシェ。

 

プラエは少し離れたところで、あんみつと一緒にロムとラムの様子を微笑みながら見ていた。

 

 

(ロムさんもラムさんも楽しそうだし、プラエは大人しく見てようかな)

 

 

 ピーシェのことは紹介されて仲良くしようと挨拶はしたが、ロムとラムが彼女の面倒を楽しそうに見ているので、あまり口を出さないようにしている。

 

 

(その間にネプギアお姉さんのこと独占しちゃお)

 

 

 プラエはそう思いながら、そっとネプギアの手を握る。

 

ネプギアは一瞬驚いたようにプラエの方を見るが、「ダメ?」とプラエが上目遣いで甘えた視線を送ると、「いいよ」とにこやかに微笑んだ。

 

 

「あれ! あれなにー!」

 

 

 ピーシェは屋台を指差す。

 

 

「あれは金魚すくいよ」

 

 

 ラムがピーシェの質問に答えると、ロムは、「一緒にやる?」と誘いかける。

 

 

「うん! やる!」

 

 

 ピーシェは元気よく頷くと三人で金魚すくいの屋台に向かう。

 

ネプギア達もその後ろに付いて行く。

 

 

「見てなさい。わたしとロムちゃんがお手本を見せてあげるわ」

 

 

 ラムが自信満々に胸を張って言うと、ロムが店主にお金を渡して、「おじさん、三人分お願いします」と言う。

 

ピーシェの面倒を見るようにと、ネプギアから預かったお金である。

 

 

「斜め45度で水面の金魚を取るべし取るべし!」

 

 

 ラムはポイを受け取ると素振りを始める。

 

 

「なにそれー?」

 

 

 ピーシェはラムの素振りを不思議そうに眺める。

 

 

「ネプギアちゃん流金魚すくいだよ(びゅんびゅん)」

 

 

 ロムはそう言いながら、ラムと同じように素振りを始める。

 

 

「ぴいもやる!」

 

 

 ピーシェはそう言うと、ロムとラムの素振りの真似をする。

 

ちなみに【ぴい】とはピーシェの一人称である。

 

 

「ふふっ……三人ともやる気満々だね」

 

 

 ネプギアは三人のその姿を微笑みながら見つめ、ユニも、「上手く取れるといいわね」と楽しそうに言う。

 

 

「よーし! 準備完了。行くわよ!」

 

 

パシャ!

 

 

ラムは素早くポイを動かし金魚をすくう

 

 

「おお! 取れた。ラムすごい!」

 

 

 ピーシェは見事に金魚をすくえたラムに素直に称賛の言葉を送ると、ラムは自慢気に鼻を擦りながら、「へへーん」と言う。

 

 

「わたしも頑張るよ。えい!」

 

 

パシャ

 

 

 ロムも素早くポイを動かし金魚をすくう。

 

 

「ロムもできたー!」

 

 

 ロムにも素直な称賛を送るピーシェ、ロムは嬉しそうに、「えへへ(てれてれ)」と微笑む。

 

 

「ぴいも取りたい!」

 

 

 ピーシェは真剣な目でロムとラムを見つめると、ラムが、「それじゃ、わたし達がネプギア流を伝授してあげるわ」と快く応じると、ロムはピーシェの手を取って、「こんな感じですくうの」とポイの動かし方を教える。

 

 

「ネプギア流は、【いっきソーメンの秘奥義】なんだから、しっかり覚えなさい」

 

 

 ラムは自信満々にそう言うが、後ろにいたユニが、「それを言うなら一子相伝でしょ」呆れながら訂正する。

 

 

「それに一子相伝って、一人にしか奥義を伝えないから、ロムちゃんとラムちゃんが使えるのはおかしいんだけど……」

 

 

 ネプギアが更にツッコミをすると、「アンタも意外と細かいわね」とユニが呆れながら言う。

 

ロムとラムはネプギアとユニのツッコミが聞こえていないのか、真剣にネプギア流金魚すくいをピーシェに教えている。

 

 

***

 

 

「パパ! ママ! ぴい金魚とれたよ!」

 

 

 ピーシェはレイとアノネデスに向かって金魚の入った袋を見せながら笑顔を向ける。

 

ロムとラムの指導の成果があって、何とか一匹取れたのだ。

 

 

「へ~……この子にも金魚すくいなんて出来るのね。集中とか無縁かと思ってけど」

 

 

アノネデスが意外そうにそう言うと、キセイジョウ・レイは、「よかったわね」と素直に喜んであげる。

 

 

「うん! ロムとラムが教えてくれた! ねぷぎゃー流!」

 

 

 ピーシェはそう言って金魚すくいの素振りを始める。

 

 

「ピーシェ、今度は射的やりましょ。またわたし達が教えてあげるわ」

 

「うん、いく!」

 

 

ラムの提案にすぐさま頷くピーシェ。

 

 

「一緒に行こうね(ぎゅっ)」

 

 

 ロムはピーシェの手を握って射的の屋台に連れて行く。

 

ロムとラムとピーシェが射的の屋台に行くと、昨日とは別の店主がいた。

 

女の子二人の店主で片方は小さな翼と天使の輪が付いた子で、もう片方がウサギのような長い耳の生えた少女だ。

 

 

「わー! この屋台カレーの匂いがするわ」

 

 

 ラムの言う通り屋台に入るとスパイシーなカレーの匂いがした。

 

 

「カレーのお鍋がある(ぐつぐつ)」

 

 

 ロムが屋台にある寸胴鍋を指差しながら言う。

 

 

「おかしいわね? 射的の屋台に入った筈なのに?」

 

 

 ラムが不思議そうに腕を組んで首を傾げると、プラエと手を繋いだネプギアが屋台に入ってくる。

 

 

「あれ? ふらぷらさんに初代コンパさんじゃないですか」

 

 

 ネプギアが驚いたように口に手を当てると、「こんなところで何やってるの?」と続けて入って来たユニが尋ねる。

 

 

「見ての通り、射的カレー屋さんだよ」

 

 

 ウサギのような耳の生えた少女がドヤ顔で答えるが、「あのー、初代コンパさん、確かに見てのとおりかもしれませんけど、普通はそんな屋台ありませんよ」とネプギアがツッコミをする。

 

 

「そうですよね……」

 

 

 もう一人の小さな翼を生やした少女が困った顔で答える。

 

 

「ふらぷらが一人じゃ不安だって言うから手伝ってあげてるのに~」

 

 

 初代コンパと呼ばれた少女が不満げに答えると、「やっぱり私達商才がないんじゃないかな」とふらぷらと呼ばれた少女が答える。

 

この二人は命を落としそうになったところをネプギアがプラネテューヌで保護した人物だ。

 

元々はイストワールと同じように超次元で似た人物がおり、それが何かの理由で命を落としてしまったようなのだ。

 

そこで、ネプギアは神次元では命を落とさないようにプラネテューヌで保護をし、そのおかげで二人とも命の危機を逃れ生き延びたのだ。

 

 

「とりあえず、どんな店なの?」

 

 

 ユニが気を取り直して二人に尋ねると、「射的のサービスにカレーが付くんだよ」と初代コンパが胸を張って答える。

 

 

「思ってたより普通ね。てっきり射的でカレーを落とすのだと思ったわ」

 

 

 ユニがそう答えると、「落ちたカレーなんて誰も食べたくないと思うよ……」とネプギアが困った声でツッコミをする。

 

 

「それはそうだけど、初代コンパならそれぐらい斜め上を行きそうだし」

 

 

 ユニの言葉に、「最初はその予定だったんだけど、ふらぷらが止めるからさ」と初代コンパが答える。

 

一連の話を聞いていたプラエは、「ネプギアお姉さんの知り合いは変わった人が多いんだね」と不思議そうに首を傾げながら答える。

 

 

「ところで、皆さんは射的しに来てくれたんですか?」

 

 

 ふらぷらがそう尋ねると、「そうだった。ロムちゃん、ラムちゃん」とロムとラムに声を掛ける。

 

 

「三人分おねがいします(ちゃりん)」

 

 

 ロムがふらぷらにお金を払うと、「まいどありー」と言いながら初代コンパが紙皿に三人分のカレーをよそりロム達に差し出す。

 

それを見たユニは、「普通とは言ってたけど、射的しながらカレー食べるって意味不明なサービスよね」と首を傾げる。

 

 

「わたしが鉄砲と弾を選んであげるわ」

 

 

 ラムは三人分の鉄砲と弾を選んでロムとピーシェに渡す。

 

 

「撃ち方なんだけどね、こうやって構えて……」

 

 

 ロムはユニに教わった構えをして、ピーシェに教えてあげようとする。

 

 

「あー! ダメダメダメ。そんな甘っちょろい撃ち方じゃ当たらないよ」

 

「え?」

 

 

 しかし、突如ネプテューヌが口を挟んでくる。

 

水を差されたロムはポカンとしてしまう。

 

 

「お姉ちゃん、子供達が楽しそうにやってるんだから口を挟まなくても……」

 

 

 ネプギアが遠慮気味にネプテューヌに言う。

 

 

「いや、射的の帝王としてココは黙っておけないよ」

 

「お姉ちゃんは女の子だから女帝なんじゃないかな?」

 

「ツッコミどころはそこじゃないでしょアンタ……」

 

 

 自信満々にドヤ顔を決めるネプテューヌにネプギアがツッコミを入れるが、そのツッコミに呆れるユニ。

 

 

「射的の撃ち方はこうだよ。貸してピー子」

 

 

 ネプテューヌはピーシェから銃を受け取ると、銃を片手で持ってテーブルに身を乗り出し景品に銃口を近付ける。

 

 

「……うわ……いい年した大人がその撃ち方ってどうなんですか?」

 

 

 ユニは白けた目でネプテューヌを見る。

 

 

「えーと、零距離射撃って思えばカッコいい……かも?」

 

 

ネプギアはやや苦しいフォローする。

 

 

ピピーーツ!

 

 

 初代コンパがが笛を鳴らす。

 

 

「ネプテューヌさん、その撃ち方はダメだよ」

 

 

 初代コンパは厳しい口調でネプテューヌを注意する。

 

 

「え? 反則? うそーー! わたしの地方じゃOKだったよ」

 

 

 抗議をするネプテューヌ。

 

どうやらこの店ではテーブルから身を乗り出すのは禁止らしい。

 

 

「ネプテューヌちゃん反則!」

 

「ズルは駄目……(ばってん)」

 

 

 ロムとラムがネプテューヌを非難する。

 

 

「もー! これだから田舎のローカルルールは嫌だね」

 

 

 ネプテューヌは負け惜しみを言いがらピーシェに銃を返す。

 

 

「それ以前に、あの撃ち方は華麗じゃないですよ」

 

 

 ユニがそう言って非難すると、ラムが、「華麗じゃないわ」とそれに続き、ロムも、「華麗じゃない(びしっ)」と更に続き、最後にピーシェが、「ねぷてぬ、カレー抜き」と紙皿に盛られたカレーをネプテューヌから遠ざける。

 

 

「うわーん、ネプギアぁぁ~! わたしはただ射的へのハングリー精神を示しただけなのに~」

 

 

 非難の四連コンボに堪えたネプテューヌはネプギアに泣きつく。

 

 

「よしよし……お姉ちゃんは悪くないよー」

 

 

 ネプギアはネプテューヌを抱きしめ頭を撫でながら慰める。

 

 

「ねぷちゃ~ん、あたしがお店の人にルール変えるよう頼んであげようか~?」

 

 

 プルルートが微笑みながら言うと、「流石にそれはお店の人に迷惑が掛かるんじゃ……」とネプギアが言う。

すると、「……ぎあちゃんには聞いてないんだけど~?」とプルルートが不機嫌そうに言う。

 

 

「あ、いいっていいって、わたし気にしてないから」

 

 

 ネプテューヌはネプギアから離れると、プルルートの隣に行く。

 

すると、不機嫌そうだったプルルートの顔が元に戻り、「そっか~。ならいいや~」と言ってネプテューヌの手を握る。

 

ネプギアはプルルート行動を不思議に思いつつも、ユニ達との話の輪に戻る。

 

 

「射的の撃ち方はこうよ」

 

 

 今度はラムがユニに教わった構えをする。

 

 

「こう?」

 

 

 ラムの真似をするピーシェ。

 

 

「少し違うかな? ここはこう」

 

 

 ロムはピーシェの後ろに回って姿勢を整える。

 

 

「うん、これでよし」

 

 

 ロムはピーシェの姿勢が定まったのを確認すると手を離す。

 

 

「あとは狙いを定めて撃つのよ! 撃つべし撃つべし!」

 

 

 ラムが元気よく景品の棚を指差すと、ピーシェは真剣な顔で銃の引き金を引く。

 

 

「えい!」

 

 

パン

 

 

 ピーシェが撃った弾は小さなぬいぐるみ当たり、パタリと倒れて落ちる。

 

 

「きゃははは! できたー!」

 

 

 見事命中したピーシェはジャンプして喜びを表現する。

 

 

「おめでとうピーシェちゃん(ぱちぱち)」

 

 

 ロムが小さく拍手してピーシェを祝福する。

 

 

「凄いでしょ。ユニ撃ち」

 

 

 ラムが自信満々にピーシェにそう言うと、ユニが、「ユニ撃ち?」と首を傾げる。

 

 

「ユニちゃんから教わったからユニ撃ちよ」

 

 

 ラムは名前の由来をそう説明すると、ユニは、「……まぁ、悪い気はしないわね」と少し恥ずかしそうに頬を掻く。

 

 

「それじゃ、わたし達もやろう」

 

 

 ラムはそう言って銃を構えると、ロムも、「うん、ピーシェちゃんも一緒にね」とそれに続く。

 

 

「うてーーー」

 

 

 ピーシェがそう叫ぶと三人同時に弾を発射して、景品が次々に落ちていく。

 

 

***

 

 

 大量の景品を手に入れて射的の屋台を後にしたネプギア達。

 

相変わらず、ロムとラムとピーシェが先導する形でネプギア達がその後ろをついていく。

 

 

「脳筋だと思ったこの子が、金魚すくいや射的ができるなんてね~」

 

 

 アノネデスは感心したようにピーシェの後ろ姿を眺めながらそう言うと、キセイジョウ・レイも、「意外な一面ですね」と驚いた様子を見せる。

 

ちなみに脳筋とは【脳みそまで筋肉】という意味で、思考が単純な肉体派の人を指して言う。

 

元気一杯で大騒ぎする力持ちのピーシェは頭脳派のアノネデスの目には脳筋に見えるようだ。

 

 

「それにしても、ロムちゃんとラムちゃんって面倒見がいいのね~。助かるわ」

 

「私とアノネデスさんはあの子のペースに合わせることすら難しいですから……」

 

 

 アノネデスとレイは楽しそうに遊んでいるピーシェをホッとした目で眺めている。

 

 

「私もロムちゃんとラムちゃんが、ここまでピーシェちゃんのこと見てくれるとは思いませんでした」

 

 

 ネプギアがあごに手を当てて不思議そうにそう言うと、ユニも、「なんか急に大人っぽくなったわよね」と同じく不思議そうに言う。

 

 

「お二人とも、ネプギアさんとユニさんの真似をしているのではないでしょうか」

 

 

 そこにイストワールが話に入ってくる。

 

 

「私達の真似ですか?」

 

 

 首を傾げるネプギア。

 

 

「ロムさんとラムさんが昨日の晩御飯の時に屋台の話をしてくれたではありませんか。ネプギアさんとユニさんが優しく教えてくれたと」

 

 

 イストワールが昨日のことを思い出すようにそう言うと、ユニが、「そういえばそうですね」と頷く。

 

 

「お二人とも、教えてくれたネプギアさんとユニさんを尊敬して、ピーシェさんにも同じように教えてあげたいと思ったのではないでしょうか?」

 

 

 イストワールはニッコリ微笑むとネプギアとユニにそう言う。

 

 

「それだったら嬉しいです。何だか私とユニちゃんの想いが連鎖してるみたいですね」

 

「そうね、ちょっと嬉しいかもね」

 

 

 ネプギアとユニは嬉しそうにイストワール解釈を受け取る。

 

 

「いやー、やっぱりお祭りはいいねー」

 

 

 ネプテューヌは先程の射的の失態ことなどすっかり忘れてタコ焼きを頬張っている。

 

 

「ネプ子、あんまり食べ過ぎると太るわよ」

 

 

 アイエフは大量の食べ物を食べるネプテューヌの姿を見て呆れながら忠告する。

 

 

「うんうん、なかなかいい絵が撮れてるよー」

 

 

 ファミ通がロムとラムとピーシェの写真を撮っていると、横からコンパが、「また、ギアちゃん達のいい記事書いて下さいね~」とお願いする。

 

 

「みんな楽しそうでよかったね~ふぁ……」

 

 

 うつらうつらと歩くプルルート。

 

 

「プルルートさん、こんなところで寝たらダメですよ!」

 

 

 そんなプルルートを注意する神次元のイストワール。

 

他のメンバーたちの思い思いにお祭りを楽しんでいるようだ。

 

 

***

 

 

「この催しは神の意志に反している! 即刻中止せよ!」

 

 

 そんな中、拡声器で不穏な言葉が飛んでくる。

 

 

「……なぁにぃこれ? 人が気持ちよくお散歩してたのにぃ~」

 

 

 あらかさまに不機嫌になるプルルート。

 

その後ろにはどす黒いオーラが立ち込めているようだった。

 

 

「わー! ぷるるん、ステイッ、ステイッ! まだだッ、まだだッ!」

 

「落ち着いて下さい、プルルートさん」

 

 

 ネプテューヌと神次元のイストワールは必死にプルルートを抑える。

 

 

「あっちの方から聞こえて来たわね」

 

 

 アイエフが声が聞こえた方向を向くと、ファミ通が、「行ってみよう」と言い、ネプギア達は声のした方向に向かって行く。

 

声のした方向に向かうとベレー帽をかぶり軍服に身を包んだ、吊り上がった目をしたやや血色の悪い瘦せた男が居た。

 

 

「私の名前はバントリュー・ボーク! 女神アイリスハート様とパープルハート様の代弁者なり!」

 

 

 男が拡声器を使って叫んでいた。

 

 

「うわ、バントリュー・ボークだって、セコそうな名前だねー」

 

 

 ネプテューヌは呆れながらボークと名乗った男性を冷ややかな目で見る。

 

確かに野球のルールを知っている人から見ればセコそうな名前ではある。

 

 

「このプラネテューヌは美しく華麗で才覚と人望に溢れるアイリスハート様とパープルハート様のものである!」

 

 

 ボークは拡声器を通して話を続ける。

 

 

「あれ? もしかして、わたし達褒められる?」

 

 

 ネプテューヌは意外そうな顔で首を傾げるが、「でも、あんな感じの悪い人に褒められても嬉しくないかも~」とプルルートが不機嫌そうに言うと、「激しく同意!」とネプテューヌも力強く頷く。

 

パープルハートがネプテューヌの女神化した時の名前で、アイリスハートがプルルートの女神化した時の名前である。

 

 

「その神聖な地で、半人前の出来損ないの下級神……いや、神などと呼ぶのもおこがましい小娘どもの祭りを開くなどアイリスハート様とパープルハート様に対する冒涜である!」

 

 

 ボークが続けて痛烈に女神候補生達の批判をすると、アイエフが、「なんですって!」と激昂して飛び出しそうになる。

 

 

「あいちゃん、落ち着くです。難しくてわたしには何を言ってるかわかりませんが暴力はよくありません~」

 

 

 コンパはアイエフの腰を後ろから抱きしめて止める。

 

普段はクールなアイエフだが友達思いであり、友人であるネプギア達がバカにされては黙ってはいられない。

 

ましてや、アイエフの目から見て何の非も無いどころか真面目に仕事に励んでいる彼女達が不当に貶められているのだから猶更である。

 

ちなみに同じ友人のネプテューヌはバカにされても怒るには怒るが、アイエフ自身がネプテューヌの放蕩ぶりを叱る側なので、その沸点はかなり高い。

 

 

「……ユニちゃん、もしかして私達……」

 

 

 ネプギアが不安そうにユニに話しかけると、ユニは不機嫌そうに腕を組んで、「ええ、完璧にディスられてるわね」と吐き捨てる。

 

 

「えー? なんでなんでー!」

 

 

 ラムが憤慨して抗議すると、ロムは悲しそうに、「わたし達なにも悪いことしてないよ……(うるうる)」と泣きそうな顔になる。

 

 

「これがアノネデスの言ってたプルルート様寄りの過激な信者ってヤツかな?」

 

 

 ファミ通はあごに手を当てながら考える仕草をする。

 

 

「まさか本当にやらかすとはね~」

 

 

 アノネデスはやれやれと言わんがばかりにお手上げのポーズで首を振る。

 

 

「ど、どどうしましょう!」

 

 

 キセイジョウ・レイはおろおろと狼狽してしまう。

 

女神に協力する七賢人として何かをすべきなのだろうが、気弱な彼女はどうしたら良いのか分からないようだ。

 

 

「とりあえず様子を見ましょう」

 

 

 イストワールが落ち着いてそう言うと、神次元のイストワールも、「今警備兵に通報をしましたらから、みなさん落ち着いて下さい」とそれに続く。

 

 

「わかりました……」

 

 

 アイエフが落ち着きを取り戻すと、コンパは、「ふぅ……あいちゃんが落ち着いてくれてよかったです」と言ってアイエフの腰から手を離す。

 

 

***

 

 

 ネプギア達はそのまま暫く様子をみることにした。

 

そうしている内に何事かと見物に来る人達が増えて人だかりが出来る。

 

 

「皆! 思い出すのだ、アイリスハート様とパープルハート様を!」

 

 

 ボークは集まってきた群衆に問いかける。

 

 

「誰だ? アイリスハートって?」

 

「そんな会社なかったか? オヤマだかコヤマだか?」

 

 

 群衆の中からざわざわと声が上がるが、誰もネプテューヌとプルルートのことを知らない様子だった。

 

 

「会社ではなぁい! 神だ守護女神様だ!」

 

 

 ボークは額に青筋を立てて、頬をピクピクさせながら群衆に向かって怒鳴る。

 

 

「知らないなぁ……誰かネット調べてみろよ」

 

「アイリスハートなんて載ってないぞ? パープルハートも書いてないし」

 

 

 しかし、人々はボークの呼びかけに冷ややかな反応をする。

 

 

「キィィィィ! どいつもこいつも!」

 

 

 悔しそうに歯ぎしりをするボーク。

 

 

「ふふっ……どうやら私達が行くまでもないみたいね」

 

 

 アイエフはそう言って、ボークを見ながら皮肉っぽい笑みを浮かべると、コンパは、「ケンカにならなくて良かったです~」とホッと胸をなでおろす。

 

 

「ちょっとオカマー。わたし達のことがネットに書いてないってどういうこと?」

 

 

 しかし、自分の知名度が低いのが不満なのか、ネプテューヌが神次元のネットに詳しいアノネデスに質問する。

 

 

「ぶっちゃけちゃうと、世間ではねぷちゃんとぷるちゃんはあんまり知られていないのよ」

 

 

 アノネデスは頬杖をついた女らしいポーズをとってそう言う。

 

 

「えー? なにそれー! 聞いてないよー」

 

 

 ネプテューヌは不満そうに唇を尖らせてアノネデスに抗議する。

 

 

「アタシに言われてもねぇ~。世間一般ではプラネテューヌの女神はギアちゃんって認識だし、エディンとの戦争だって大分昔の話だし、この世界でネットが普及したものつい最近だしね」

 

 

 アノネデスはクネクネと体をくねらせながら話を続ける。

 

数年前は60%程だったネプギアの女神としての認知度は今や100%に近いようだ。

 

ネプギアの真面目で地道な仕事ぶりが、ジワジワと知名度を伸ばして行ったのだろう。

 

ネプテューヌとプルルートが忘れ去られたのは仕事せずに遊んでばかりいるのが原因なのだが……。

 

 

「そこはオカマが気を利かせて話盛って、ネットにバリバリ書き込んでくれなくちゃ。わたし主人公だよ?」

 

 

 ネプテューヌはアノネデスに気が利かないと言わんがばかりにそう言う。

 

女神の宣伝も七賢人の仕事だろうと言いたいようだ。

 

 

「やぁよ。ソースもないデタラメ書いてアンチとか自治厨に粘着されたらたまらないわ」

 

 

 しかし、アノネデスは面倒くさそうにそう答えるとお手上げのポーズで首を振る。

 

 

「ぶーぶー! 異議あり、異議ありー! ぷるるんもそう思うよね」

 

 

 ネプテューヌはそう言ってプルルートに話を振るが、プルルートは、「わたしはぁ~、毎日ゆっくりお昼寝できればいいかな~」と自分の知名度などまったく気にしていないようだ。

 

そう言う意味ではネプギア達に養われている現状は彼女にとって理想的なのかもしれない。

 

 

***

 

 

「貴様! そこでなにをしている!」

 

 

 声と共に兵士を連れたアレスター家のレイが駆けつけてくる。

 

兵士達はレイの服より装飾の少ない中世の騎士のようなコートを着ている。

 

恐らくレイの部下の警備兵だろう。

 

 

「ちっ……もう来たか」

 

 

 舌打ちをするボーク。

 

 

「貴様はボーク! 性懲りもなくまた女神様に背くか!」

 

 

 レイはボークのことを知っているような口ぶりだった。

 

 

「背いているのは貴様だぁ! この地をアイリスハート様に還すのだ!」

 

 

 ボークがややヒステリックにレイに叫ぶ。

 

 

「このプラネテューヌの創始者がアイリスハート様なのは否定しない。だが、今現在国民を護り導いて下さるのはパープルシスター様達だ」

 

 

 それに対してレイは落ち着いて反論するが、ボークは更に興奮しながら、「だから、そのパープルシスターなどは三流以下の神……いや! アイリスハート様の立場を奪った魔女なのだ!」と叫ぶ。

 

 

「……貴様、言わせておけば」

 

 

 レイは腰の剣に手を当てる。

 

ネプギア達を貶されて激昂したのも理由だが、脅しも意味も含まれている。

 

 

「ちょっと待ちなさいよ」

 

 

 アイエフがレイとボークの間に割って入る。

 

その姿は冷静で落ち着いており、先程の怒りの影響はみられないようだった。

 

レイはアイエフの姿を確認すると、ひとまず剣から手を離す。

 

 

「誰だ貴様は!」

 

 

 ボークが忌々しそうにアイエフを指を差す。

 

すると、アイエフは口の端を吊り上げながら【フッ】と鼻で笑うと、「貴方から言わせてみれば魔女を信仰する邪教徒って言ったところかしら?」と堂々と言い放つ。

 

 

「あー……魔女とか邪教徒ってワードが、あいちゃんの中二病スイッチを押しちゃったよ」

 

 

 ネプテューヌは呆れながらアイエフの後ろ姿を眺める。

 

ネプギア達を庇いたい気持ちは本物だが、魔女や邪教徒と言う背徳的な言葉が中二病の彼女の琴線に触れたようだ。

 

 

「きぃぃぃ! 貴様もか! なぜアイリスハート様とパープルハート様の素晴らしさを理解しない!」

 

 

 ボークは歯ぎしりをしながらアイエフを睨む。

 

その敵意に満ちた視線はアイエフを怯ませるどころか、背徳者を演じたい彼女を満足させるものだった。

 

 

「アンタこそ、ネプ子とプル子……じゃなくて、アイリスハートとパープルハートが何をしてくれたっていうのよ」

 

 

 アイエフはボークに厳しい視線を返すと彼に質問をする。

 

 

「あの方々に仕えることこそ信者としての悦び! それ以上になにがある!」

 

 

 ボークは両手を広げると、さも当然かのように言い放つ。

 

 

「それじゃあ、国政はどうなるの? モンスター退治は?」

 

 

 アイエフはボークの態度に内心呆れつつも質問をする。

 

 

「そこは我々信者が高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応すべきことだ」

 

 

 ボークは自信満々にそう言うが、「なによそれ? もう少し具体的に言えないの? 抽象的すぎるわ」アイエフは即座に切り返す。

 

 

「だから熟考を重ねた綿密な作戦を立てて……」

 

 

 ボークがそう言って少し口ごもると、「要するに、行き当たりばったりということ?」とアイエフがズバリと斬り捨てる。

 

 

「その通りだ。ボークは弁舌だけの男だ。政治も軍事も何も分かっていない、過去プラネテューヌの重職だったが、いい加減な指示だけを飛ばすだけの質の悪い信者だった」

 

 

 アイエフの言葉に合わせてレイがボークを糾弾するように言い放つ。

 

 

「なにおぅ! 私は軍事学校のエリートで……」

 

 

 ボークは顔を真っ赤にして抗議しようとするが、話の途中でアイエフが、「なら、アンタの言う柔軟性や臨機応変で、モンスターと戦った兵士が死んだらどうするつもり?」と質問する。

 

 

「それこそ神に仕える者の名誉ある殉職! その魂はアイリスハート様とパープルハート様の元に召され永遠の安息を約束されるだろう!」

 

 

 ボークはアイエフの質問に声高々にそう叫ぶが、即座に、「ふざけないで! 人に死を強いる指導者のどこに真実があるのっ! 寝言を言わないで!!」とアイエフが怒鳴り返す。

 

 

「な、何を言う……私は真理を述べているのだぞ……」

 

 

 ボークはアイエフの剣幕に圧されて腰が引けてしまう。

 

 

「私の言うことに異論があるなら、弁舌はなく実績をもって示せば。他人に強要するようなことが自分にはできるかどうか、やってみたらどう?」

 

 

 アイエフは畳み掛けるようにボークにそう言い放つ。

 

 

「やってみろとは……?」

 

 

 ボークは狼狽しながらもアイエフに質問するが、アイエフは素早く街の外を指差すと「今すぐ、アイリスハートとパープルハートの為にモンスターと戦って来なさいよ」と言ってボークを睨みつける。

 

 

「む、無茶を言うな……」

 

 

 ボークは逃げるように後ずさりながらそう言うと、今度はレイが、「前線にも立たず、安全な場所から指示していただけの貴様に何ができる」と責め立てる。

 

 

「あああああ! 違う違う違う! どいつもこいつも私の足を引っ張る愚鈍な奴らだからだ!」

 

 

 ボークは両手で後頭部を抱えるとヒステリックな声を上げる。

 

 

「私の思う通りにすればゲイムギョウ界中が美しく華麗なアイリスハート様とパープルハート様の信者で溢れかえるのだ!」

 

 

 ボークはかぶっていたベレー帽を掴んで地面にたたき落すと子供のように地団駄を踏んでそれを踏みつける。

 

アイエフとレイは冷めた目でそれを眺めていた。

 

 

「ふぅふぅ……あの魔女達を見てみろ! 地味で発展途上で美しさの欠片もない! 世の中に必要なのはアイリスハート様とパープルハート様のようは唯一無二の美しさだ!」

 

 

 ボークは地団駄を踏むのに疲れたのか肩で息をすると、手を振り上げて再び女神候補生達を魔女と罵る。

 

 

「アンタが今安全かつ豊かに暮らせているのはパープルシスター様のおかげなのよ」

 

 

 アイエフが冷静にそう言うと、レイも、「国民が女神様に求めているのは美しさだけではない。公平で平和な世の中と自分たちを護り導いてくれることだ。パープルシスター様の治世はそれを十二分に満たして下さる」とそれに続く。

 

 

「ちがぁーーーーう! あの魔女さえ来て余計なことさえしなければ、このプラネテューヌはアイリスハート様とパープルハート様の楽園だったのだー!」

 

 

 ボークは再び地団駄を踏み絶叫を上げる。

 

 

「貴様、私達の為にパープルシスター様が身を粉にして下さったことを余計と言うか!」

 

 

 レイは激昂して、再び腰の剣に手を当てる。

 

超次元に帰ってもなお神次元の仕事してくれるネプギアの姿をよく見ているレイにはボークの発言は我慢できるものではないようだ。

 

 

「うわー……絵にかいたような無能な悪役だねー」

 

 

 ネプテューヌは呆れた感じでボークを評価する。

 

 

「……」

 

 

 しかしネプギアは言葉なく俯いている。

 

 

「ネプギア?」

 

 

 ネプテューヌは心配そうにネプギアに声を掛ける。

 

 

「……私のしたことってあの人にとっては余計なことだったのかな……」

 

 

 ネプギアは悲しそうな声でそう漏らす。

 

 

「あんなのの言うこと気にしちゃダメだよ」

 

 

 ネプテューヌは明るい声でネプギアを励ますように言う。

 

 

「でも!」

 

 

 それでもネプギアは何か言いたそうに両手を胸に当ててネプテューヌに訴えようとする。

 

 

「ねぷちゃぁ~ん……わたしぃ、あの頭の悪い人の声聞き飽きちゃったぁ~」

 

 

 しかし、その直後にプルルートがネプテューヌの袖をしわ残るぐらい強く引っ張りながら、もの凄く低い声で不満そうに言う。

 

 

「そうだね。もう我慢しなくていいよ。行けぷるるん! ゴーゴーゴー!」

 

 

 ネプテューヌはボークの方に両手を振り下げて、プルルートにゴーサインを出す。

 

 

「やったぁぁ!!」

 

 

 プルルートは歓喜すると光り輝く。

 

光りが収まると、やや癖のある青紫色のロングヘアーをした妖艶な女性が居た。

 

まったく姿は違うが、これがプルルートが女神化した姿【アイリスハート】である。

 

瞳の色はやや赤紫がかり、女神特有の電源マークが付いている。

 

スタイルもかなり良く、その美貌は魔性を秘めてるように見える。

 

衣装はパープルシスター達と同じ素材のようだが、露出が多い上に色が黒く、そこに赤い模様の入っており、それが彼女の妖艶さに拍車を掛けていた。

 

各種プロセッサユニットも黒に赤い模様が入り、形も全体的にトゲトゲしい上に禍々しく恐ろしい印象を受ける。

 

変身前のゆるふわな雰囲気からは想像できない変貌ぶりだ。

 

 

「はぁ~い。あたしの信者って言うのはあなたかしらぁ~」

 

 

 変身したプルルートであるアイリスハートの声は変身前と同じく間延びしているが、どこか恐怖を感じさせる。

 

そしてハイヒールをコツコツと鳴らしながらボークに詰め寄る。

 

 

「ああああ! アイリスハート様! やはり御光臨して下さったのですね! なんと美しい……」

 

 

 ボークは光悦した表情でプルルートを眺めるが、プルルートは即座に手に持った乗馬用の鞭でボークの横面を叩く。

 

 

ビシッ!

 

 

「な、なにを……」

 

 

 ボークは叩かれた場所を押さえて腰を抜かすようにへたり込んで尻もちをつく。

 

 

「豚のくせにあたしを汚らわしい視線で見るなんて、躾が足りないようね」

 

 

 プルルートは威圧的な目でボークを見下す。

 

 

「し、失礼しました! それより、こいつ等は魔女を信仰する邪教の者です! さあ、この邪教徒共に罰をお与え下さい!」

 

 

 ボークはプルルートに土下座して謝罪をしつつもアイエフ達を指を差して、プルルートに懇願をする。

 

 

ガスッ!

 

 

 しかし、プルルートの強烈な蹴りがボークの顔面にめり込む。

 

 

「あうっ!?」

 

 

 何が起きたか分からず地面に倒れるボーク。

 

 

「何を勘違いしてるのかしら? あたしは頭の悪い信者を躾に来ただけよ」

 

 

 プルルートは手に持った鞭を手で軽くペシペシと鳴らしながら、崩れ落ちたボークの頭をハイヒールで踏みつける。

 

 

「ぐえっ……」

 

 

 ボークはカエルのような声を漏らすと「頭の……悪い……?」と言って何が起きているのか分からないといった顔をする。

 

エリートを自負し自己評価の高いボークには自分のことを言っているのだと理解できないようだった。

 

 

ピシッ!

 

 

 再びプルルートが鞭でボークの尻を叩く。

 

 

「本当に頭の悪い愚図ね」

 

 

 プルルートは鬱陶しそうな声でそう言うとボークの全身を何度も鞭で殴打する。

 

 

ピシッ!

ピシッ!

ピシッ!

ピシッ!

 

 

「ひぃぃぃぃ!?」

 

 

 ボークはプルルートの情け容赦ない鞭の連打に情けない悲鳴を上げる。

 

今までの経緯を見ての通り、プルルートは変身すると女王様気質のドSキャラになる。

 

 

「少しは賢くなったかしら?」

 

 

 プルルートは鞭を止めると、肩に鞭を当てて軽くポンポンと叩いて質問する。

 

 

「は、はぃぃぃぃ……私は頭の悪い愚図な信者ですぅ~」

 

 

 ボークは光悦とした表情で答える。

 

その姿完全にマゾに目覚めたようだった。

 

 

「よくできました。これはご褒美よ」

 

 

 プルルートはボークを何度も鞭で叩く。

 

 

ピシッ!

ピシッ!

ピシッ!

ピシッ!

 

 

「あ、ありがとうございますぅぅぅぅぅぅ~」

 

 

 ボークは更に光悦な顔をする。

 

 

「ほら! この愚図! 周りがあなたを蔑んだ目でみてるわよ!」

 

 

 そして更にヒートアップするプルルート。

 

 

「うわ……無能でドMって救いようないね」

 

 

 ネプテューヌは呆れた目でボークを見る。

 

流石のネプテューヌもこれにはドン引きのようだ。

 

 

「ロム、ラム、プラエ、ピーシェ見ちゃダメよ」

 

 

 ユニは子供達に見ないように注意する。

 

 

「……」

 

 

 ネプギアは黙って何か考えているようだった。

 

 

「まだあんな奴が言ったこと気にしてるの。アンタは正しいと思うことをして来たんでしょ。自信持ちなさい!」

 

 

 ユニはネプギアの右肩をポンと叩くと叱るように鼓舞する。

 

 

「……うん……そうだよね。ありがとう、ユニちゃん」

 

 

 ネプギアは返事はするが、まだどことなく元気がないようだった。

 

 

「女神様、申し訳ございません。私共の力が及ばず不快な思いをさせてしまいました」

 

 

 ネプギア達に気付いたレイが走り寄り、地面に片膝を着くと頭を下げて謝罪する。

 

 

「いいんです。レイさん達は立派にやってくれています。ただ私がもう少しプルルートさんの信者に気を配れば……」

 

 

 ネプギアは落ち着いてそう言うが、即座にレイが顔を上げて、「そのようなことはありません! 信者同士の折衝は我等の役目。パープルシスター様には何一つ非はありません」と訴える。

 

 

「その通りです。私達の力が及ばなかっただけです。ネプギアさんは気を病まれないようお願いいたします」

 

 

 神次元のイストワールもネプギアに頭を下げながらそう言うと、ネプギアは他に言葉が無いようで、「……わかりました」と力なく頷く。

 

 

「この場は私達に任せて、ネプギアさん達はお祭りを楽しんで下さい」

 

 

 神次元のイストワールは元気の無くなってしまったネプギアを心配するようにそう言うと、即座にユニが、「そうよ。行きましょう、ネプギア」とネプギアの右手を強く引っ張る。

 

 

「……あっ……ユニちゃん…」

 

 

 ネプギアはユニに手を引かれて、つんのめりながらもユニに付いて行く。

 

 

「ロムとラムとついてらっしゃい」

 

 

 ユニはネプギアの手を引きながらロムとラムにも声を掛けると、ラムは、「ちょっとー! ユニちゃん速いよー!」と元気よく駆け出し、ロムは慌てながら、「ま、まってー(おろおろ)」と言ってラムの後ろに付いて行く。

 

 

「ギアちゃんは優しすぎるのよねー。アンチなんてどこにでも沸いてくるのに、あんなデリケートじゃ国を治めるのには少し頼りないわよね」

 

 

 アノネデスは片手で頬杖を付くと、「ふぅ……」と困ったような溜息を吐く。

 

 

「そこは私達がしっかりフォローしてあげませんと」

 

 

 しかし、神次元のイストワールはネプギアは十分に女神の務めを果たしていけると信じて彼女を支えて行くことを誓うと力強く頷く。

 

 

「そうですよ、アノネデスさん、頑張りましょう」

 

 

 キセイジョウ・レイも神次元のイストワールに同意して頷く。

 

 

「はいはい……しょうがないわね」

 

 

 アノネデスはお手上げのポーズをとると少し面倒くさそうに首を左右に振る。

 

 

「ネプギアお姉さん……大丈夫かな」

 

 

 プラエが心配そうにそう言うと、イストワールは落ち着いた声で、「大丈夫ですよ。今はユニさんに任せましょう」と言う。その姿ユニのことを完全に信用しているようだった。

 

 

「ねぷねぷ、ユニちゃんに任せてよかったんですか?」

 

 

 コンパは少し不安そうに言う、妹のネプギアを慰めるのは姉のネプテューヌの役ではないかと言いたいようだ。

 

 

「わたしがここから離れたら、誰がぷるるん止めるの?」

 

 

 ネプテューヌは後頭部で両手を組んで、ボークに鞭打ちするプルルートを眺めている。

 

確かにこの場でプルルートが暴走したら、止められるのはネプテューヌぐらいだろう。

 

 

「……止める気あるのアレを?」

 

 

 アイエフがプルルートを見ながらそう言うと、「あんまりない! ぷるるんのご不興を買っても何の得もないし」とネプテューヌはドヤ顔で断言する。

 

 

「まぁ、見てなよ。ネプギアには良い友達がいるんだからさ」

 

 

 ネプテューヌは女神候補生達が去って行った方向を眺めながらそう言う。

 

 

***

 

 

 その頃ネプギアはユニに手を引かれるまま街中を歩いていた。

 

 

「ユニちゃん、どこまで行くの?」

 

 

 ネプギアはユニに手を引かれながら質問する。

 

 

「人が沢山見えるところよ」

 

 

 ユニは辺りをキョロキョロ見渡しながら良い場所が無いか探しているようだ。

 

 

「それなら飛べばいいじゃない」

 

 

 話を聞いていたラムが、さも名案かのように元気良く左手を上げて言うと、ロムも、「空から見ればたくさん見えるよ(みえみえ)」とラムに同意する。

 

 

「街中でいきなり変身するのはちょっと……ねぇ? ユニちゃん」

 

 

 ネプギアは二人のアイデアに対して遠慮気味にそう答えるとユニに同意を求める。

 

街中で変身するのは目立ちすぎると思ったようだ。

 

 

「それいいわね。飛ぶわよ、ネプギア」

 

 

 しかし、ユニはネプギアの言うことを無視するかのように光り輝く。

 

この場で女神化をしようというのだ。

 

 

「え? ちょ、ユニちゃん!?」

 

 

 ユニはネプギアの制止も聞かずに変身が完了すると、ネプギアを両手でお姫様抱っこして飛び上がる。

 

 

「ユニちゃん、待ってー!」

 

 

 ラムがそう言って光り輝いて女神化するとユニの後を追って飛ぶ。ロムも、「置いてかないで(いそいそ)」と言って女神化をするとラムの後を追う。

 

 

「ユニちゃん、急にどうしたの? 街の人もみんな見てるよ」

 

 

 ネプギアはそう言いながらユニの顔を見上げる。

 

突然のユニの行動に驚いたネプギアだが、お姫様抱っこはまんざらでもないようで、いつの間にか両手をユニの首に掛けていた。

 

 

「ほら、アンタも変身しなさいよ」

 

 

 ユニはネプギアの質問には答えずに変身を催促するが、ネプギアはお姫様抱っこが惜しいようで、「もうちょっとこのままで……」と上目遣いで言う。

 

 

「あんまりモタモタしてると落とすわよ」

 

 

 しかし、ユニには上目遣いの効果が無いらしく冷静な声で脅してくる。

 

 

「わわっ! するする! ちょっと待って!」

 

 

 ネプギアは慌てて女神化をする。

 

ユニはネプギアの女神化を確認すると、ネプギアをお姫様抱っこから降ろす。

 

そんなことをしている間に地上ではいきなり変身して飛び上がったネプギア達を驚きの目で見ていた。

 

 

「一体何が起きたんだ?」

 

「女の子達が突然光ったと思ったら飛び上がって…」

 

「鳥だ! 飛行機だ! ……いや、女神様だ!」

 

「うおおおお! 女神様ーーー!」

 

 

 混乱していた住人達もネプギア達が女神だと気付くと空に向かって大歓声を上げていた。

 

 

「みんなーー! お祭り楽しんでるー!」

 

 

 ユニは大声で地上の住人に問いかける。

 

 

「楽しんでるぞーー!」

 

「女神様ありがとうーーーー!」

 

 

 住人たちは精一杯声を張り上げながら手を振ってユニに答える。

 

 

「声が小さい! もっと腹の底から声を出して! ほら、みんなでネプギアコールよ!」

 

 

 しかし、ユニは住人たちを更に煽るとネプギアコールを要請する。

 

 

「ネプギアコール?」

 

「どうすればいいんだ?」

 

 

 戸惑う住人達にラムが、「ネプギアコールはネプギアを応援する時に使うのよ!」と説明をする。

 

 

「女神様を応援……?」

 

「そりゃ、女神様には感謝してるから応援したいけど……」

 

 

 ざわざわと声を上げる住人達、やる気はあるようだ、その様子を確認したラムは、「今教えてあげるわ! こうよ。ネープギア! ネープギア! ネープギア!!」と大声でネプギアコールの手本を見せる。

 

 

「ほら、ロムちゃんも一緒に!」

 

 

 ラムはロムの方に振り向いてそう言うと、ロムは頷いて、「うん! ネープギア! ネープギア! ネープギア!!」とロムも一生懸命声を出す。

 

 

「ネープギア、ネープギア?」

 

 

 住人達はぎこちなくネプギアコールを始めるが、その姿はまだ恥ずかしさが残っており声も小さい。

 

 

「ホラホラ! 声が小さいわ。もっと腹の底から絞り出すのよ! ネープギア! ネープギア!!」

 

 

 ユニは再び住人達を煽ると、自分でも大声でネプギアコールを始める。

 

 

「よっしゃ! 俺達もやるぞ! ネープギア! ネープギア! ネープギア!!」

 

「ネープギア! ネープギア! ネープギア!!」

 

「ネープギア! ネープギア! ネープギア!!」

 

「ネープギア! ネープギア! ネープギア!!」

 

 

 ユニに煽られた住人たちは次々と精一杯の大声でネプギアコールを始める。

 

騒ぎを聞きつけて集まってきた他の住人もそれに続く。

 

 

「聞こえる? この歓声がみんなネプギアを歓迎しているのよ。これがアンタのやってきた成果よ」

 

 

 ユニはネプギアコールを一旦止めると、住人達の歓声に耳を傾けながら、ネプギアに諭すように言う。

 

 

「ユニちゃん……」

 

 

 ネプギアはユニと見つめ合いながら呟く。

 

人が沢山見えるところに来たいというユニの意図を理解し、それに感謝をしているようだった。

 

 

「感じるでしょ? みんなのシェアエネルギーを」

 

 

 ユニはネプギアと見つけ合い続けながら、優しい声でそう言うと、ネプギアは胸に両手を当てて目を閉じ、「うん、感じる。凄い力を感じるよ」と答える。

 

ネプギアの瞳には先程までの暗い悲しみの色は無く、明るい光りに満ちてた。

 

 

「みんなの想いの力、シェアエネルギーは嘘はつかないわ。アンタはそれだけ慕われているのよ」

 

 

 ユニはウインクしてそう言う。

 

シェアエネルギーは人々の真摯な信仰から生まれるもの。

 

このネプギアコールから湧き上げるシェアエネルギーはネプギアの心を温かい気持ちで満たしてくれていた。

 

 

「そうだよ、ネプギアちゃん」

 

 

 ロムもネプギアコールを一旦止めて、ユニの言うことに同意すると、ラムも、「ネプギアは凄いと思うわ」と素直にネプギアを褒める。

 

 

「ロムちゃん、ラムちゃん、ありがとう……」

 

 

 ネプギアは励ましてくれた二人にお礼を言うと、目に溜まってきた右目の涙を手で拭う。

 

ユニ、ロム、ラム、そして神次元のプラネテューヌの住人達の想いが胸に響き感極まって感涙したのだろう。

 

 

「ちょっと文句言われたぐらいでクヨクヨしてるんじゃないわよ。全部が全部100点満点なんて出来るわけないんだから」

 

 

 ユニはそう言うと、右手の親指でネプギアの左目から流れて頬に伝っていた涙を拭ってあげる。

 

 

「一つの問題に囚われて足を止める方がよっぽど悪いわ。それだったら100点じゃなくても、どんどん目の前の問題に取り組みなさい」

 

 

 ユニは右手をネプギアの頬から離すと、そう言ってネプギアの左胸を右手の手の甲でポンと叩く。

 

 

「90点や80点……いや、60点やそれ以下でもいいのよ。取れなかった分はアタシたちがフォローするから」

 

 

 ユニのその言葉で再び感極まったネプギアは自分の左胸に置かれたユニの右手を両手でギュッと握ると「……うん、ありがとう……ユニちゃん」と涙声でお礼を言う。

 

 

「みんなで助け合いだよ」

 

 

 ロムはそう言うと、ユニの右手を握ったネプギアの両手の上に自分の右手を置くと、ラムが、「そうよ。わたし達の一番の特技はチームワークなんだから」と言ってロムの手の上に自分の左手を重ねる。

 

 

「アンタは自分を信じて前に進めばいのよ。アタシ達はネプギアについて行くわ」

 

 

 ユニがそう言うと、ラムは、「そうよわたし達女神候補生は【いちねんらくしょー】なんだから」と自信満々に言うが、即座にユニから、「それを言うなら一蓮托生」と訂正を受ける。

 

 

「もぅ……ラムちゃんったら……ふふっ……」

 

 

 ネプギアはいつものラムの言い間違いが微笑ましくて笑顔を浮かべると、ロムが、「ネプギアちゃんが笑った。ラムちゃんのおかげだね」と嬉しそうに言う。

 

 

「いえーい! わたし、お手柄!」

 

 

 ラムは嬉しそうにそう言うと重ねた手を離して飛び跳ねて喜ぶ。

 

 

「ラムちゃん、えらいえらい」

 

 

 ロムも手を離すと手を叩いてラムを褒める。

 

 

「ユニちゃん」

 

 

 ネプギアはユニの名前を呼ぶと彼女の右手を握った両手をゆっくり離し、そのままゆっくりユニの背中に両手を回して、ギュッと抱き着く。

 

ユニもネプギアに応えるように、両手でネプギアの背中に抱き返す。

 

 

「また、ユニちゃんに助けてもらっちゃった……」

 

 

 ネプギアがユニの耳元でそう囁くと、ユニは、「いいのよ。何度でも助けてあげるわ。前にも言ったでしょ? アンタの面倒なことはアタシが全部受け止めてあげるって」と優しい声で囁く。

 

以前にネプギアが落ち込んだ時、ユニは同じ言葉を彼女に向けている。

 

それはユニにとって、神聖な約束であり誓いであったのだ。

 

 

「うおおおおお! ネプギア様とユニ様がーーーー!」

 

 

 その光景を地上から見ていた住人たちが更に湧き上げる。

 

 

「やはりギアユニか!」

 

「何言ってるのユニギアでしょ!」

 

「順番違うだけじゃん」

 

「その順番が大事なの!」

 

 

 住人達は口々にネプギアとユニとの熱烈な友愛ぶりに声を上げて讃える。

 

 

「ユニちゃんばっかりズルーーイ! わたしも!」

 

 

 ロムに拍手してもらってご満悦だったラムだが、ネプギアとユニが抱き合っていることに気付くと、ネプギアの背中に飛び乗るように抱き着く。

 

 

「わたしも混ぜて」

 

 

 更にロムもネプギアの腰に両手を回して抱き着いてくる。

 

 

「これは、おねロリか!」

 

「しかも双子サンドイッチ! たまらん!」

 

「神の4Pだあああああ!」

 

「尊いーーーーーー!」

 

「尊過ぎて眩暈がするわ……」

 

 

 地上の住人達はその光景を眺めて更に沸き上がり、中には倒れる者まで出てきた。

 

 

「これはこれは……いいネタを仕入れたぞ」

 

 

 住人の中に混じっていたファミ通はパシャパシャと写真を撮りつつ、メモをとっていた。

 

記者の嗅覚で良いネタがあるだろうと、ネプギア達の後を追って来たのだ。

 

 

「よしっ! 今回もゲリラライブしちゃおう!」

 

 

 ラムが大声でそう言うと、「うん、プラエちゃんとミクちゃん呼んでみんなで演奏しようよ」とロムが賛成する。

 

 

「いいアイデアね。ネプギア、アタシ達の音楽で、このお祭りを更に盛り上げるわよ」

 

 

 ユニがそう言うと、「うんっ!」とネプギアは満身の笑顔で頷いた。

 

 

 こうして感謝祭は幕を閉じた。

 

その後ネプギア達は超次元に戻りユニ達もそれぞれの国に帰っていった。

 

後日発売されたファミ通の記事では、女神候補生達の活躍と神次元の感謝祭のことが書かれていた。

 

人々は女神候補生達の活躍とその友情に関心を示し、神次元に対しても女神候補生達を架け橋に友好的な関係を築けるのではないかと言う好意的な意見が多くでるようになった。

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