新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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008初音ミク、ゲイムギョウ界バージョン

 神次元プラネテューヌの感謝祭の翌日。

 

G.C.2019年5月27日 月曜日。

 

ネプギアはネプテューヌとプラエとあんみつを連れてラステイションを訪れていた。以前に訪れたオンガクギョウ界でミクを使ってコンテストを受賞すると言う約束である新人コンテストの期限が迫っているのだ。

 

ラステイションなのはロムとラムの住むルウィーと近いためだ。こういう時、大陸の中央のラステイションは利便性が高い。

 

ネプギア達、【グランプリ・ユナイテッド】のメンバー、ネプギア達女神候補生四人とプラエとミクはラステイションのホールを貸し切って演奏をしていた。

 

観客は、ネプテューヌとノワールとあんみつ、5pb.の四人だ。

 

 

「いえーい! サンキュー!」

 

 

 ラムがそう言いながら激しくドラムを鳴らすと演奏が終了する。

 

同時に、「ブラボー! かわいい、かわいいよネプギアー!」と言いながらネプテューヌが拍手する。

 

 

「お、お姉ちゃん、恥ずかしいよ……」

 

 

 ネプギアは赤面しながら、恥ずかしそうに身を縮こませる。

 

 

それを見たラムが、「ネプテューヌちゃん! わたしはー!?」と不満そうに頬を膨らませる。

 

 

「元気一杯でドラム叩くラムちゃんもかわいいよー! ロムちゃんとプラエちゃんもとってもキュートだし、ユニちゃんもスタイリッシュだし、ミクちゃんの歌も最高だったよ!」

 

 

 ネプテューヌが立て続けにメンバーを褒めると、「いえーい、褒められたー!」とラムがVサインをし、ロムとプラエはネプギアのように恥ずかしそうに照れ、ユニはまんざらでもなさそうに、「ありがとうございます」と言う。

 

 

「私の歌、本当に上手かったですか?」

 

 

 ホログラムのミクが少し自信なさそうに言うと、5pb.が「バッチリだよ。正直最初は不安だったけど、この短期間でここまで調律するなんて、ネプギア様は才能あるよ」と言う。

 

 

「ミクちゃんの覚えがいいからですよ」

 

 

 ネプギアがそう言いながら謙遜すると、「ネギちゃんのおかげだよ」とミクが返す。

 

 

「音楽のことはよく分かりませんが、プラエ様とここまで音を合わせられる皆様の力量には感服します」

 

 

 あんみつの言葉に、「これなら入賞間違いナシだね」とネプテューヌが続く。

 

ネプギア達、グランプリ・ユナイテッドのメンバーの顔が明るくなるが、次の瞬間、「全然ダメね」とノワールの冷たい声が響き渡る。

 

和やかだった空気が一瞬で凍り付く。

 

 

「ちょっと、ノワール! どこがダメなの? みんなちゃんと演奏出来てたでしょ?」

 

 

 ネプテューヌが口を尖らせてノワールに反論すると、5pb.も「恐れながら、ノワール様。ボクの目から見ても演奏はキチンと出来ていたと思います」とネプテューヌに同意する。

 

 

「それに新人コンテストなんですから……」

 

 

 5pb.がそこまで言うと、「そこよ。新人だからなんて言って甘えてるような子達にゲイムギョウ界の代表は任せられないわ」とノワールが遮る。

 

 

「もー! ノワールはそんなことばっかり言うから、ぼっちなんだよー」

 

 

 ネプテューヌは不服そうに言うが、「確かにノワール殿の言うことも一理あります」とあんみつが言う。

 

 

「あんみつ!?」

 

 

 プラエが驚きの声を上げる。まさかあんみつに否定されるとは思わなかったという顔だ。

 

 

「プラエ様を含め確かに皆様の演奏は上出来です。しかし気迫が足りません。生きるか死ぬかの死合に臨むかのような覇気が」

 

 

 あんみつの言葉に、「あなた、なかなか分かってるじゃない」とノワールが関心する。

 

 

「それが一つ目」

 

 

 続けてノワールがそう言うとミクを指差して、「二つ目はあなたよ」と言う。

 

 

「わ……私……?」

 

 

 ミクが怯えながら言う。

 

ミクは完全にノワールに気圧されていた。

 

 

「ホログラムにしては上出来よ。でもね、ホログラムはホログラム。生の質感、息遣いには敵わないわ」

 

 

 ノワールの言葉に完全に意気消沈してしまうミク。

 

 

「それにステージにそんな不格好なロボットを上げるつもり」

 

 

 ノワールはそう言いながら、今度はネプギアンダムを指差す。

 

ネプギアンダムのホログラム機能が無ければミクは姿を見せられないのだ。

 

 

「やっぱり、歌は声優が至高よ。ボーカロイドじゃ無理よ」

 

 

 ノワールがそう言うと、「そこは歌手じゃないかなー?」とネプテューヌがツッコミする。

 

 

「コンテストに出たいなら、この私を納得させるぐらいの演奏を見せなさい」

 

 

 ノワールはそれだけ言うと、ホールから出て行ってしまう。

 

俯いてしまうグランプリ・ユナイテッドのメンバー達。

 

 

「あー! ちょっとみんな暗くなりすぎだよ。コンテストまで、まだ時間あるしさ」

 

 

 ネプテューヌは場の雰囲気を変えるよう出来るだけ明るい声で言うと、「いえ、お姉ちゃんの言う通りだと思います。譜面通りに弾けたってだけで、心のどこかで満足してた」とユニが言う。

 

 

「5pb.さん、本気でアタシ達を鍛えなおして下さい!」

 

 

 ユニが真剣な顔でそう言うと、「わかったよ。そこまでの覚悟があるなら、ボクも本気で行くよ」と5pb.も厳しい表情でも応える。

 

 

「わー……流石はノワールの妹。あれで通じ合っちゃうんだ」

 

 

 ネプテューヌがやや引き気味な声で言うが表情はどことなく嬉しそうだった。

 

ぼっちだと思ってたノワールにもちゃんと良い理解者がいるんだなと言う喜びだ。

 

 

「みんな! いつまでヘコんでるの!?」

 

 

 ユニが仲間達に檄を飛ばすと、「ヘコんでないわよっ! このラムちゃんがヘコむ訳ないでしょ!」とラムが涙声で言い返す。

 

 

「ロムちゃん、やるわよ! ノワールさんをぎゃふんって言わせるんだから!」

 

 

 ラムの言葉に、「う、うん……」とロムが自信なさそうに頷く。

 

気弱なロムにはノワールの言葉がまだ堪えているようだ。

 

 

「………」

 

 

 ネプギアはユニの言葉に反応せず、ただ黙っていた。

 

 

「何ボーっとしてるのよ! アタシ達がしっかりしなきゃ、ロムもラムもプラエも付いて来ないわよ!」

 

 

 ユニはネプギアの肩を少し強く握りながら言う。

 

共に女神候補生の年長組としてネプギアにはしっかりして欲しいとの気持ちの表れだ。

 

 

「あっ……ごめん、ユニちゃん考え事してた」

 

 

 ネプギアはそう言うと、ユニの方を向く。

 

その目にはノワールの厳しい指摘による落胆の色は無かった。

 

 

「考え事?」

 

 

 ユニはネプギアが意気消沈してないことに安心しながらも、ネプギアの考え事が気になるようだ。

 

 

「私もユニちゃんと同じ意見。ミクちゃんをホログラム化しただけで満足してた。ごめんね、ミクちゃん。私がもっとしっかりしてれば悲しい思いしなくて済んだのに」

 

 

 ネプギアの言葉に、「そんな……ネギちゃんは何も悪くないよ」とミクが言う。

 

 

「ホログラム化以上って、何を考えてるのアンタ?」

 

 

 ユニの質問に、ネプギアは首を左右に振りながら、「それはまだ分からない。でも、このままじゃ終われないよ」と言う。

 

その瞳には強い意志の力が宿っていた。

 

 

(みんな凄い……プラエはまだ足が震えて……)

 

 

 女神候補生達を見てプラエがそう思っていると、不意にプラエの手が握られる。

 

 

「プラエちゃん、一緒に頑張ろう……」

 

 

 手を握ってきたのはロムだった。

 

ロムもまだ立ち直っていないのに自分を勇気づけてくれているのだ。 

 

 

「プラエ様、あなたなら出来る筈です。あなたはあの方の妹なのですから」

 

 

 あんみつがそう言うと、プラエの足の震えが止まった。

 

 

「ありがとう、ロムさん、あんみつ。プラエ頑張るよ」

 

 

 プラエがそう言うと、「わかった。ミクのことはアンタに任せるわ。こっちはアタシに任せておきなさい」とユニがネプギアに向けて言う。

 

ネプギアはミクの研究の為にネプテューヌと一緒にプラネテューヌ戻って行った。

 

 

***

 

 

 そして三日後、G.C.2019年5月30日 木曜日。

 

 

「うーん、うーん、ネタネタネタ……」

 

 

 ネプギアはそう呟きながら、自室でNギアを操作しつつ三日三晩考え続けていた。

 

ネプギア達は候補生ブログでグランプリ・ユナイテッドが緊急の強化合宿に入り女神の仕事を休むことを告知していた。

 

ゲイムギョウ界の人々は候補生達の音楽活動が本気だと感じ、各国の職員は候補生の仕事の穴埋めに奔走していた。

 

プラネテューヌは主にアイエフとコンパがネプギアに代わりクエストをこなしてくれていた。

 

アイエフとコンパはクエストを終わらせて、ネプギアの部屋に来ており部屋にはネプギア、ネプテューヌ、アイエフ、コンパが居た。

 

 

「ネプギア先生~、締め切りは守ってもらわなきゃ困りますよ~」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、「……何言ってるのよアンタは」とアイエフにツッコミを受けてしまう。

 

 

「締め切りで苦しむ漫画家を追い込む編集者ごっこ」

 

 

 ネプテューヌが両手を腰に当てドヤ顔で言うと、「追い込んでどうするのよっ!」とネプテューヌの脳天にチョップを入れる。

 

 

「いった~!? コンパぁ~、あいちゃんがぶった」

 

 

 ネプテューヌがコンパに泣きつくと、「暴力はよくないですけど、ねぷねぷもギアちゃんイジメちゃダメですよ~」とコンパが言う。

 

 

「うーん、うーん、ネタネタネタ……」

 

 

 ネプギアの呟きは相変わらずだった。

 

 

「ギアちゃん、食事とお風呂ぐらいはした方がいいですよ~」

 

 

 コンパが心配そう言うと、「その内、犬小屋みたいな臭いがしちゃうよー」とネプテューヌが続けて言う。

 

「うーん、うーん、ネタネタネタ……」

 

 

 ネプギアの呟きは変わらない。

 

 

「聞こえてないみたいね……」

 

 

 アイエフが呆れたように言う。

 

普段のネプギアなら人を無視するような行為は絶対にしないが、集中すると周りの声が聞こえなくなってしまう。

 

 

「なーんか神次元での時のことを思い出すなー」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、「愛と勇気と希望の光だっけ?」とアイエフが答える。

 

 

「ベレー帽をかぶった、漫画の神様が教えてくれたって言ってましたね~」

 

 

 コンパの言葉通り、ネプギアは今回と同じようにスランプに陥った漫画家の如く悩みに悩んだ上に寝落ちした時に、夢の中で漫画の神様がアドバイスしてくれたと言って、アイエフの言った、愛と勇気と希望の光と言う技を編み出したのだ。

 

 

「今回も神様降臨しないかなー」

 

 

 ネプテューヌが気楽そうにそう言うと、「そう簡単に、ホイホイ降りてくるもんじゃないでしょ」とアイエフがツッコミをする。

 

 

「そもそも、ギアちゃんは何をこんなに悩んでるんですか~」

 

 

 コンパの疑問に、「わたしもよくわからない。ミクちゃん関係なのは知ってるけど」ネプテューヌが首を捻りながら言う。

 

 

「私の予想では、リアルな初音ミクを作ろうとしてると思うんだけど」

 

 

 アイエフの予想に対して、「そんなの簡単じゃないの? プラネテューヌとネプギアの魔改造は世界一ィィィィィ!!」とネプテューヌが言う。その瞬間ネプギアの呟きが止む。

 

次の瞬間、もの凄い力でネプギアが両手でネプテューヌの両肩を掴む

 

 

「お姉ちゃん! そんな簡単なことじゃないんだよ!? 人型の歩行ロボットはハーフマラソン走れるぐらいに進歩はしてるけど、私が目指してるのは完璧なミクちゃん再現! 身長158cm、体重42kgで完璧な造形美を作り出しつつ、マラソンどころか歌って踊って息遣いや汗もかいて涙もでて……そもそも人型ロボットは、うんたらかんたらうんたらかんたら!!」

 

 

 ネプギアがめっちゃ早口で語りだして止まらなくなる。

 

 

「何か地雷踏んじゃったみたいね」

 

 

 アイエフが呆れながら言うと、「見てないで助けてよ~! ネプギア、めっちゃ力強いんだけど~!」とネプテューヌが助けを求めるが、「嫌よ。標的が私になったら嫌だもの」とアイエフがあっさりと却下する。

 

 

 

「ね、ネプギア……お姉ちゃんよくわからないけど、それ既に人型ロボットじゃなくて人じゃね?」

 

 

 ネプテューヌがネプギアの言う話の理解できる部分だけを伝えると、「違うのっ!? 何で分からないのお姉ちゃん!! もう一度一から説明するね!!」とネプギアが激昂する。

 

 

「ギャー!? まさかの無限ループ!!」

 

 

 ネプテューヌの顔がムンクの叫びのようになる。

 

 

「あーあ……ご愁傷様」

 

 

 アイエフが我関せずの顔をしてスマホをいじりながら言う。

 

 

「ね、ネプ子さん、ピンチ!? こうなったら、お姉ちゃんとして心は痛むが最終手段!!」

 

 

 ネプテューヌはそう言うと露骨に顔をしかめ、「ネプギア、お口臭いっ!?」と大声で言う。 

 

 

「へ?」

 

 

 ネプギアの動きが一瞬止まる。

 

ネプテューヌはその隙に黒くて光る虫みたいにカサカサと床を這って逃げ出すと、ネプギアと距離を取って右手で鼻を摘み左手を左右に動かす。

いわゆる、臭いと言うジェスチャーだ。

 

 

「何かネプギアから、酸っぱい臭いがする!? あと何か犬小屋っぽい臭いも!」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、「がーーん……」とネプギアがこの世の終わりのような顔をする。

 

流石に乙女に臭いは禁句だとは思うが、ネプテューヌもそこまで追い詰められていたのだろう。

 

すかさずコンパが、「ギアちゃん、お風呂入りましょう~、わたしが洗ってあげます」と言う。

 

ネプギアはしゅんと小さくなり、「はい……」と小声で言ってコンパの後に付いて部屋を出て行く。

 

 

 

***

 

 

 

 コンパに体を洗ってもらったネプギアは髪をまとめると湯船に浸かった。

 

 

(……お姉ちゃんに臭いって言われちゃった……)

 

 

 ネプギアにとって大好きな姉に臭いと言われるのは相当ショックだったようだ。

 

 

(……コンパさんに洗ってもらったから、もう臭くないと思うけど……)

 

 

 ネプギアはそこまで考えると、(はっ!? そうだ! のん気にお風呂入ってる場合じゃなかった!?)と本来の目的を思い出す。

 

 

(早くお風呂から上がって!)

 

 

 そこまで考えるとネプギアに強烈な睡魔が襲う。

 

三日三晩寝なかった反動だろう。お風呂の絶妙な湯加減がネプギアのまぶたを重くさせる。

 

 

(ああ……何だかダメ……私にはミクちゃん作るのは無理なのかな……)

 

 

 ***

 

 

(やあ、久しぶりだね。また悩んでいるのかな?)

 

 

 ネプギアは薄れゆく意識の中で以前にも会ったベレー帽をかぶった男性に出会う。

 

 

(人型ロボット? それならこんなのはどうかな)

 

 

 男性は手に持ったペンでスラスラと一人の少年と共に彼の設計図らしきものを描いた。

 

 

(あと、キミは臭くなんてないよ。むしろイイ匂いがするよ)

 

 

 男性はそう言って微笑むと消えて行った。

 

 

「まっ……」

 

 

 ネプギアは男性を引き留めようとするが、次の瞬間一気に意識が覚醒させられる。

 

 

「ごぼっ!……」

 

 

 ネプギアは見事なまでにお風呂で寝落ちしていた。

 

覚醒した時点で顔半分が湯に浸かっており、軽くパニックを起こしてしまう。

 

 

「ごぼごぼごぼ!!」

 

「はわわわわ!? ギアちゃんがお風呂で溺れてるです~」

 

 

 なかなかお風呂から上がってこないネプギアを心配したコンパが見に来てネプギアを救出する。

 

 

「ギアちゃん、大丈夫ですか?」

 

 

 湯船からネプギアを救出したコンパが心配そうな顔で、ぐったりしたネプギアに語り掛ける。

 

 

「コンパさん! 私やりました!!」

 

 

 ネプギアが起き上がりながら叫ぶ。

 

 

「やった? 何をです?」

 

 

 コンパが不思議そうな顔でネプギアに問いかける。

 

 

「ミクちゃんのアイデア伝授してもらいました! 10万馬力の科学の子なんです! 身長135cm、体重30kgですから、ミクちゃんの体重も全然余裕なんです!」

 

 

 ネプギアが目をめっちゃ輝かせながら力説するが、「あの~……わたしよくわからないのですけど、歌に馬力って必要ですか?」とコンパにですらツッコミを受けてしまう。

 

 

「こうしてはいられません! 早速作業に入らないと! いーすんさんに材料を揃えてもらって!」

 

 

 ネプギアはそのままお風呂から走って出て行ってしまう。

 

 

「ぎ、ギアちゃん~!? 着替えを! せめてタオルぐらい!!」

 

 

 ネプギアは全裸だった。見事なまでのすっぽんぽんである。

 

これには流石のコンパも慌ててしまう。

 

 

「な、何事!? コンパ、どうしたの? ネプギア???」

 

 

 騒ぎを聞きつけたアイエフが駆けつけるが、そこには全裸で全力疾走するネプギアが居た。

 

 

「空を超えた♪ ラララ♪ 星の向こう♪ 行くよ~♪」

 

 

 しかもネプギアはノリノリで歌ってた。

 

 

「ね、ネプギアが壊れた……」

 

 

 歴戦の諜報員のアイエフも固まってしまう。

 

ネプギアは固まっているアイエフ気付かず、そのまま素通りし、その後をバスタオルを持ったコンパが必死に追いかける。

 

 

「流石のネプ子さんも妹の乱心に驚きを隠せません……」

 

 

 その光景を目撃したネプテューヌですら固まってしまう。

 

 

「ネプ子のせいじゃないの? アンタが臭いなんて言うから……」

 

 

 非難の目でネプテューヌを見るアイエフ。

 

 

「それだったら、いくらわたしでも責任感じちゃうよ……」

 

 

 ネプテューヌは冷や汗を流しながら、ネプギアが走り去って行った方向を眺める。

 

この後、ネプギアはイストワールの執務室まで走って行ったのだが、幸い誰にも見つからずに執務室に入りイストワールを驚かせた。

 

ちなみにコンパが追いついてバスタオルを巻くまで、謎の光により大事なところはキッチリ守られてます。

 

 

***

 

 

「ネプギアさんっ!? お母さんを殺すつもりですか!」

 

 

 イストワールがカンカンになってネプギアを りつける。しかもお母さんモードだ。

 

実際に全裸で全力疾走してきたネプギアを見たイストワールはショックで三分程フリーズ状態になってしまった。

 

今のネプギアはコンパに持って来てもらったセーラーワンピを着て正座してイストワールに怒られている。

 

髪はまだ乾かないので、コンパがドライヤーで乾かしてくれていた。

 

 

「まさかネプギアが裸族に目覚めるなんて思わなかったよ」

 

 

 ネプテューヌの言葉に、「もう言わないでお姉ちゃ~ん、死んじゃうほど恥ずかしいんだから~」とネプギアが耳まで真っ赤になる。

 

 

「うぅ……アルキメデスさんの気持ちがちょっと分かったかも……」

 

 

 ネプギアが俯きながらそう言うと、「あるきめです?」とコンパが首を傾げる。

 

 

「アルキメデスの原理を発見した方です。その際に発見した嬉しさで今のネプギアさんのようにお風呂から全裸で駆け出したという逸話が残ってます」

 

 

 イストワールの説明に、「天才って時々おかしなことしますよね」とアイエフが率直な感想を述べた。

 

 

「とにかく、暫くネプギアさんは一人でお風呂に入るのを禁止します。お母さん色々と心配です」

 

 

 イストワールはそう言うと、右手の人差し指を立てて【めっ】のジェスチャーをする。

 

 

「はい……ごめんなさい」

 

 

 素直に謝るネプギア。

 

 

「それで私に用意して欲しい材料とはなんですか?」

 

 

 謝るネプギアを見て怒りの収まったイストワールがいつもの口調に戻り、お母さんモードも終了する。

 

 

「はい、これからNギアにメモしてから転送します」

 

 

 ネプギアはNギアを手際よく操作すると、データをイストワールに転送する。

 

イストワールの瞳が受信モードになり、「なるほど、これは人型ロボットですね」とイストワールが言う。

 

 

「そうです。これなら出来ると思うんですけど、どうでしょうか?」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「そこはネプギアさんの腕次第ですね」とイストワールが答える。

 

 

「はいっ! 頑張ります!」

 

 

 ネプギアは小さくガッツポーズしながらそう言うと、「それじゃあ、早速準備するので失礼します」と言って執務室から出て行く。

 

 

「やはり血は争えませね」

 

 

 イストワールの呟きに、「へ? どういうこと? わたしもうずめもネプギアみたいなメカオタじゃないけど?」とネプテューヌが答える。

 

 

「何でもありません。それよりネプテューヌさん、今日のお仕事……」

 

 

 イストワールがそこまで言うと、「それじゃ、アデュー!」とネプテューヌが猛スピードで逃げて行く。

 

 

 

***

 

 

 

 約一週間後、G.C.2019年6月5日 水曜日。

 

 

「ついに出来たよー! 名付けて初音ミク、ゲイムギョウ界バージョン!」

 

 

 ネプギアが嬉しそう言う。

 

ネプギアの目の前には、ユニ、ロム、ラム、プラエ、5pb.ノワール、あんみつ、ファミ通が居た。

 

ここはラステイションの教会。ミクが完成したネプギアは居ても立っても居られず、隣にいるネプテューヌと共にラステイションにやって来たのだ。

 

 

「……アンタ、裸族だったんだって?」

 

 

 ユニの第一声がそれだった。

 

 

「がーーん!? 何でそれを!?」

 

 

 ネプギアの顔が真っ青になる。

 

 

「本当なのね?」

 

 

 ユニが腕組みしながらジト目でそう言うと、「本当だけど、アレは違うの! 興奮しちゃってつい!」とネプギアが慌てて弁明する。

 

 

「興奮? つい?」

 

 

 ユニの視線が更に冷たくなる。

 

 

「アルキメデスの原理なんだよ、ユニちゃん!」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「アルキメデスの原理は違うでしょ……まぁ、言いたいことは何となく分かったわ」とユニは呆れた声で言う。ユニもイストワールが言ったアルキメデスの逸話を知ってるようだ。

 

 

「お姉ちゃん! ヒドイよ。みんなに言うなんて!」

 

 

 ユニの誤解が解けたところでネプギアが情報源であろうネプテューヌを非難する。 

 

 

「えー? ネプギアのあんな姿、千年に一度ぐらいだし。この感動をみんなと共有しようかなって」

 

 

 ネプテューヌが悪びれもなくそう言うと、「まあまあ、ネプギア様。ボクもステージで、つい歯ギターとかやっちゃうし」と5pb.がフォローを入れる。

 

 

「わたしもあるわよ。見たいテレビとかあるとお風呂から上がってすぐ見に行ちゃう」

 

 

 ラムがそう言うと、「ラムちゃん、凄く大胆(どきどき)」とロムが顔を赤くする。

 

 

「流石に記事にはできないから安心していいよ」

 

 

 ファミ通の言葉に、「え? しないの?」とネプテューヌが意外そうに言う。

 

 

「私はそういう記者じゃないし、何より証拠がないからね」

 

 

 ファミ通がそう言うと、「あの写真を撮り忘れるとは、このネプテューヌ一生一度の不覚……」とネプテューヌが日本武士っぽく言う。

 

 

「ネプテューヌが写真撮り忘れる程驚くなんて、あなたなかなやるわね」

 

 

 ノワールが髪をかき上げながらそう言うと、「そんなことで褒められても嬉しくないですよ……」とネプギアが両手の人差し指をツンツンしてイジケてしまう。

 

 

「あの……ネギちゃん」

 

 

 ネプギアの後ろに隠れていた少女がおずおずとネプギアに声を掛ける。

 

 

「あっ、ごめんね、今日の主役はミクちゃんなのに」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「改めて、初音ミク、ゲイムギョウ界バージョンだよ」と言いながら横に移動して後ろに隠れていた少女をみんなに見せる。

 

 

「「「うわー」」」

 

 

 ネプギアとネプテューヌ以外のその場にいた全員が驚きの声を上げる。

 

そこには今まで画面やイラストでしか見れなかった初音ミクが確かな存在感を持って立っていた。

 

 

「ミクさん……なの?」

 

 

 プラエがおずおずと質問すると、「はい、ミクです。ネギちゃんにこの体を作ってもらいました」とミクが右手を胸に当てながら言う。

 

 

「喋った!? 動いた??」

 

 

ラムが驚きの声を上げると、「すごい……(どきどき)」とロムも驚きの声を上げる。

 

 

「なんと自然な動き……マネキンの類ではないようですね」

 

 

あんみつの言葉に、「これは革命じゃないかな」とファミ通が写真を撮りながら言う。

 

 

「やるじゃない。ネプギア」

 

 

 ユニがそう言って、ネプギアに向けて手のひらを出す。

 

ネプギアは、「うん、やったよユニちゃん」と言いながら、その手を叩きハイタッチを交わす。

 

 

「…………」

 

 

 ノワールは無言でミクに近づく。

 

 

「あの……?」

 

 

 戸惑うミク。まだ少しノワールが怖いようだ。

 

ノワールは両手でミクの頬を触ると、「肌よし」と言い。

 

次は手でミクの髪を撫で、「髪よし」と言い、今度は指で唇を開かせると、「歯並びよし」と言う。

 

ノワールは次々と戸惑うミクの体を触って行き、「よし」宣言をしていく。

 

最後に胸を触ると、「きゃああっ!?」とミクが驚いて後ずさる。

 

 

「胸の感触も触った時の反応も表情も完璧だわ……」

 

 

 ノワールはそう言いながら驚きの表情を見せる。

 

見ればミクは赤面して恥ずかしそうに両手で胸を隠していた。

 

 

「どうだ、我がプラネテューヌの科学力は! ドヤァ!」

 

 

 ネプテューヌが両手を腰に当てながらそう言うと、「作ったのはネプギアでしょ……」とノワールが呆れながら言う。

 

 

「最高の造形美を目指してみました」

 

 

 ネプギアが自信満々にそう言うと、「そうね。まずは見事と言っておくわ。でも、実際に歌って踊れるのかしら?」とノワールが挑発的に言うと、「出来らあっ!」とネプテューヌが即座に反応する。

 

 

「お姉ちゃん、歌って踊るのはミクちゃんだから……」

 

 

 ネプギアの言葉に、「こういう時のお約束のセリフだよー」とネプテューヌが笑いながら言う。

 

 

「行けるの? ネプギア」

 

 

 ユニの質問に、「大丈夫。ね? ミクちゃん」とネプギアがミクに語り掛けると、「うん、大丈夫だよ、ネギちゃん」とミクが微笑んだ。

 

その微笑みは人間のそれと変わりなかった。

 

 

 

***

 

 

 

「我がプラネテューヌの科学力は宇宙一ィィィィィィィィィィィィィィーーーーー!!!」

 

 

 ネプテューヌが右手を突き上げながら宣言すると、「うるさい」とノワールに頭を叩かれる。

 

 

「いや、ネプテューヌ様の言うことも分かるよ」 

  

 

 ファミ通がやや放心したような表情で言うと、「凄い迫力だったよ……」と5pb.が言う。その表情は驚きに満ちていた。、

 

 

「この前の、ほろぐらむとは全く別の次元ですね……生きた人間の気迫を感じます」 

  

 

 あんみつの言葉に、「滑らかな動きに生の息遣い……完璧だわ」とノワールが言う。

 

ここは以前にネプギア達、【グランプリ・ユナイテッド】が演奏した、ラステイションのホール。

 

ノワールの挑戦を受けたネプギア達が演奏を披露したのだ。

 

結果はノワールの言葉通りである。ミクの動きは人間の歌手かそれ以上だった。

 

 

「ミクちゃん、すっごーい!」 

  

 

 ラムがドラムから降りてミクに駆け寄ると、「とっても素敵な歌と踊りだった(めろめろ)」とロムもミクに駆け寄る。

 

ユニはその光景を見ながら、「驚いたわね。まさかここまで歌って踊れるなんて……あんまり激しく踊るから途中で壊れるんじゃないかとヒヤヒヤしたわ」と言う。

 

 

「そんなヘマしないよ。機械は信頼性と耐久性が大事なんだから」 

  

 

 ネプギアがそう答えると、「これなら、コンテストに出れるどころか優勝かも」とプラエが言う。

 

すると、「いいえ、まだよ」とノワールが厳しい声を出す。 

 

 

「えー? ノワールぅ~、今度は何が気に入らないの?」 

  

 

 ネプテューヌがそう言うと、ノワールはゆっくりとミクを指差す。

 

 

「えっ!? また私ですか?」 

  

 

 ミクが驚きの声を上げると、「その服はなに?」とノワールが更に厳しい声を出す。

 

 

「これはネギちゃんに買って貰って……」 

   

 

 ミクがそこまで言うと、「ネットの通販サイトでミクちゃんのコスプレで検索して買ったんです。値段の割に良くできて……」とネプギアが言いかけると、「全然ダメよ。ここは私に任せなさい」と言うと、U.N.Iを操作してメジャーを出すと手際よくミクの体を採寸する。

 

 

「……これ単にノワールがミクちゃんの衣装作りたいだけじゃね……」 

   

 

 ネプテューヌは両手でお手上げのポーズをすると、やれやれと言わんがばかりに首を左右に振った。

 

 

「今回もネプギア様に驚かされたよ」 

   

 

 ファミ通がそう言いながらネプギアに近づくと、「そう言えば、ファミ通さんはどうしてここに?」とネプギアが尋ねる。 

 

 

「女神候補生の取材は私の使命みたいなものだからね。ユニ様達に頼んで合宿を取材させれもらってたんだ」 

   

 

 ファミ通の答えに、「そうだったんですね」と納得するネプギア。   

 

 

「ユニ様達の取材だけでもいい手ごたえ感じてたけど、今日でこれは確信に変わったね。コンテストの日ゲイムギョウ界とオンガクギョウ界に革命が起こる」 

   

 

 ファミ通はそう言って力強く右手握る。

 

 

 

***

 

 

 

 

 G.C.2019年6月8日 土曜日。

 

ネプギア達は新人コンテストに出る為にオンガクギョウ界に行くためにリーンボックスを訪れていた。

 

 

「お姉ちゃん早く早く~」

 

「早く行こうよ(いそいそ)」 

   

 

 ロムとラムが一人の女性の手を引っ張っている。

 

茶色いショートヘアに白い大きなマフィンのような帽子を被ったネプテューヌと同じぐらいの背丈の女性だ。

 

無表情で青い瞳を持つ彼女は冷静なイメージを受ける。

 

服は白いワンピース型のキャミソールを着て、同じく白い色のコートを羽織っていた。

 

背丈はネプギアより低いが、その落ち着いた雰囲気にはネプギアより年上の貫禄があった。

 

 

「ブランのところは相変わらず大変そうだねー」 

   

 

 ネプテューヌが両手を後頭部で組みながら、ロムとラムに引っ張られている女性に言う。

 

するとブランと呼ばれた女性は、「そう思うなら、この子達の面倒見てくれないかしら?」と落ち着いた声で言う。

 

ブランはロムとラムの姉でルウィーの守護女神である。

 

 

「あらあら? 楽しそうですわね」 

   

 

 ネプテューヌとブランに優しそうな声がかけられる。

 

声の主は金髪のロングヘアーで青く柔和な瞳を持つ包容力に満ちた大人の女性を思わせた。

 

オフショルダーの緑色のドレスには豪奢な金色の装飾が施されている。

 

身長はノワールと比べて更に一回り高く、更に胸はかなりの大きさだった。

 

雰囲気もそうだが、成人女性と言って問題無い大人の女性だ。

 

 

「ロムちゃん、ラムちゃん、わたくし美味しいお菓子を用意しておりますの」 

   

 

 金髪の女性がそう言うと、「「わーい、ベールお姉ちゃん」」とロムとラムがブランの手を放して万歳する。

 

 

「……ベール、人の妹を餌付けするのは止めてくれないかしら」 

   

 

 ブランが冷静だが不機嫌そうに金髪の女性に言うと、「あらー? 先程は面倒を見て欲しいと言ってませんでした?」とベールと呼ばれた女性が言い返す。

 

 

「……あなたは下心が丸見えなのよ」 

   

 

 ブランの言葉に、「わたくしに下心なんてありませんわ」とベールが余裕の表情で言う。

 

ベールはこのリーンボックスの守護女神である。

 

 

「はわ~、大人の人だ」 

   

 

 プラエがベールに尊敬の眼差しを送ると、「あら? あなたはプラエちゃん」とベールが嬉しそうに言う。

 

プラエは驚きつつも、「プラエのこと知ってるの?」と問いかける。

 

 

「勿論ですわ。妹達のブログは毎日チェックしてますし」

 

 

 ベールはそう言いながら、優雅な足取りでプラエに近づく。

 

プラエはベールに見とれて動かずに居る。

 

あんみつが警戒しようとするが、「大丈夫です。危険な人ではありませんよ」とネプギアが手で制する。

 

 

「ああ、会いたかったですわ。実際見ると本当にお人形さんみたいですわね」

 

 

 ベール嬉しそうに言うとかがんでプラエを両手で抱こうとする。

   

しかし、「お姉様! やっぱりここでしたのね!」と 突如としてベールに向けて怒声が向けられる。

 

声の主は緑色のロングヘアーをポニーテールにしたベールと同じくらいの背丈の女性だ。

 

スリット入りのセクシーなドレスを着こなすその姿は艶やかな大人の印象を受ける。

 

しかし彼女を見たベールは一瞬にして余裕の表情が無くなり、代わりに冷や汗がダラダラと流れる。

 

 

「ち、チカ……どうしてここに?」

   

 

 ベールがそう言うと、「お姉様の行動なんてお見通しです。これでもリーンボックスの教祖なのですから」とチカと呼ばた女性が自信満々に言う。

 

チカの言う通り彼女はリーンボックスの教祖だ。

 

 

「チカ、今日くらい見逃してくれませんこと?」

   

 

 ベールは出来るだけ冷静を装ってチカと交渉しようとするが、「ダメです。あたくしの目の黒いうちはネプギアと二人っきりになんてさせませんわ」とチカがキッパリと断る。

 

 以前に5pb.と楽器を選んだ時に少し触れたがチカはベールが大好きなのだが、そのベールは女神候補生達、特にネプギアを可愛がっている。

その為、チカはネプギアを恋敵としてもの凄い敵意と嫉妬心を持っている。ゲイムギョウ界では数少ないネプギア嫌いの人物だ。

 

 

「あらあら? チカの目は綺麗な赤でしてよ」

   

 

 ベールは褒め言葉でチカの機嫌を取ろうとするが、「さ、お姉様帰りますわよ」と冷たく言い放つ。

 

 

「ベールさん、チカさんの許可も得ずに来たのね」

   

 

 ユニが呆れながらそう言うと、「それより、私、ベールさんと二人きりになる約束なんてしてないんだけど……」とネプギアが困った表情を浮かべる。

 

 

「その辺はベールの事だから、ちゃちゃっとかどわかして来るんじゃないの?」

   

 

 ネプテューヌが気楽そうに言うが、ネプギアは眉毛をハの字に曲げて、「そう思うなら助けてよ、お姉ちゃん」と困った声を出す。

 

 

「毎回ベールがどんな手でネプギアに迫るのか見るの密かな楽しみなんだよねー」

   

 

 ネプテューヌの言葉に、「アンタも大変ね……」とユニがネプギアに同情する。

 

 

「わたくし、絶対にオンガクギョウ界に行きますわーー!」

   

 

 そうこうしている内にベールはいつの間にか、空港の柱にセミのようにしがみ付いていた。

 

チカはベールの腰に手を回して懸命に引っ張っているが、ビクともしない。

 

 

「大人の人だと思ったのに……」

 

 

 プラエが残念そうな声を上げる。

 

その目にはありありと失望の色が混じっていた。

 

 

「同じ守護女神として恥ずかしいわ……」

   

 

 ノワールが頭を抱えながらベールのその姿を見ている。

 

 

「マズいわね。あのままでは柱が折れるわ」

   

 

 ブランがそう分析すると、「そうね。これで飛行機が止まったらオンガクギョウ界どころじゃないし、ちょっと止めてくるわ。ブラン付き合って」とノワールが言う。

 

 

「えー? わたしはー?」

   

 

 ネプテューヌが不満そうに言うと、「あなたが来ると話がややこしくなるだけ」とブランが冷静に言う。

 

 

 

***

 

 

 

「はるばる来ましたわ。オンガクギョウ界!」

   

 

 ベールがそうに言うと、「はーるばるきたぜ、オンガクギョウ界~♪ あーなたと歌いたいオンガクギョウ界ー♪」とネプテューヌが歌い始めるが、「全然リズムが合ってないわ」とブランに言われてしまう。    

 

 

「さ、ネプギアちゃん記念撮影を……」

   

 

 ベールがそう言いながらネプギアに近づくと、ピピーッと警笛の音が鳴る。

 

 

「警告っ! それ以上近づいたら減点よ!」

    

 

 ノワールが叫ぶ。警笛を鳴らしたのはノワールだった。  

 

 

「そんな!? お目こぼしいただけないかしら?」

    

 

 ベールがそう言って、ノワールの腕にすがりつくが、「ダメなものはダメよ。そういう約束でしょ」とノワールはベールを振りほどく。

 

 

「聞けば、グランプリ・ユナイテッドに夢中で全然仕事してないそうじゃない」

    

 

 ブランの言葉に、「だって、可愛い妹達がバンドを組んだんですのよ! チェックは当たり前ですわ!」とベールが熱弁する。 

 

 

「やりすぎなのよ。チェックだけじゃ飽き足らず、最近のファミ通毎週100冊ぐらい買ってるそうじゃない」

    

 

 ノワールの指摘に、「買ってくれるのは嬉しいんですけど、買い占めはちょっと……」とファミ通が苦笑いする。

    

 

 「転売ではありませんわ。全部わたくし用ですわ!」

    

 

 ベールがそう言うと、「百冊もなんに使うのー?」とネプテューヌが不思議そうな顔をする。

 

 

 「聞きたいですか?」

    

 

 ベールがニヤリと笑いながら言うと、「やっぱいい。流石のわたしもドン引きしそうだし」とネプテューヌが首を左右に振る。

 

 

 「とにかく、ベールは女神候補生達の半径1メートル以内近づかないこと。近づいたらリーンボックスに帰すわよ」

    

 

 ノワールがぴしゃりと言い放つと、「よよよ~、あんまりですわ。これでは蛇の生殺し……」とベールが脱力して座り込んでしまう。

 

 

 「自業自得よ。連れてきて貰えただけでもありがたく思いなさい。あなたのところの教祖を説得するのに私達がどれだけ苦労したと思っているの?」

    

 

 ブランが呆れながら言う。

 

ブランの言う通り、チカはノワールとブランの守護女神二人相手に一歩も引かない構えだった。

 

それを飛行機の時間ギリギリまでに何とか交渉して、先の条件でベールは同行を許されたのだ。 

 

 

 「しくしく……プラエちゃん、わたくし悲しいですわ~」

    

 

 ベールが泣き真似しながらプラエを見る。

 

女神候補生じゃないプラエならOKだと思ったのだろう。

 

しかし、プラエはそそくさとベールから距離を置きネプギアとユニの後ろに隠れてしまう。   

 

 

 「がーーん!? プラエちゃん、わたくしが何をしたって言いますの~」

   

 

 ベールがそう言うと、「プラエが好きなのはネプギアお姉さん達みたいな真面目で優しい大人の女の人」とプラエはジト目でベールを見ながら言う。

 

 

 「ベール、諦めた方がいいよー。プラエちゃんはわたしにも塩対応だし、可愛い顔して某幼馴染ヒロイン並みに理想が高いから」

   

 

 ネプテューヌが両手を後頭部に当てながら言う。その姿はプラエの攻略は完全に諦めたようだった。

 

 

 「そう言われますと、ますます燃えますわ!」

   

 

 ベールが小さくガッツポーズを決めながら言う。その目には炎が宿っていた。

 

ベールは廃ゲーマーでどんなゲームでも攻略してしまう。ネプテューヌの表現がベールのゲーマー魂に火を付けたのだ。   

 

 

 「ネプギアお姉さん、ユニお姉さん……」

   

 

 プラエがベールを怖がって、ネプギアとユニの手を握る。

 

 

「大丈夫だよ。あれでも本当はお姉ちゃんと同じぐらい凄い人なんだから」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「プラエにネプテューヌさんと同じくらいって言っても分からないでしょ。どうせなら、お姉ちゃんぐらいって言いなさいよ」とユニが言う。

 

 

「……ノワールさんはちょっと怖い」

 

 

 プラエの言葉に、「それちょっとわかる(こくこく)」とロムが同意する。

 

 

「早く行きましょうよ。遅れちゃうわ!」

 

 

 ラムがそう言って元気よく駆け出すと、「ラムちゃん、そっちじゃないよ!」とネプギアが呼び止める。

 

ここでオンガクギョウ界に来たメンバーを紹介しよう。

 

ネプギア達、グランプリ・ユナイテッドのメンバー六人と先程から会話の中心になっている四人の守護女神。

 

あとは取材に来たファミ通と別のコンテスト出場者として来た5pb.に護衛のあんみつ。

 

ちなみにミクは本番まで秘密なので、帽子とサングラスとマスクを付けてコートを着て変装している。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギア達はお昼過ぎにコンテスト会場に付くと、出場者と観客席の案内に従い分かれて行った。

 

観客席で席の最前列に座るネプテューヌ。

 

 

「あんまりお客さん居ないねー」

 

 

 ネプテューヌが辺りを見回しながら言うと、「今日のメインはボクが出るコンテストだからね。暗くなればお客さんも増えるよ」と5pb.が言う。

 

 

「5pb.殿がメインなのですか?」

 

 

 あんみつの質問に、「ううん、ボクは挑戦者の一人。ゲイムギョウ界では歌姫なんて呼ばれることもあるけど、オンガクギョウ界じゃまだまだ無名だよ」と5pb.が答える。

 

 

「えー? ネプギア達、前座なのー?」

 

 

 ネプテューヌが不満そうに口を尖らせると、「どこの世界でも新人なんてそんなものよ。私達がもてはやされるのはゲイムギョウ界だけ」とブランが冷静に答える。

 

 

「そうよ。プロの世界は厳しいんだから」

 

 

 ノワールが腕組みしながらそう言ってブランに同意する。

 

 

「ネプギア様達は30番か。最後だね」

 

 

 ファミ通がパンフレットを確認しながら言うと、「えー? 最後なのー? わたし早くネプギア達の演奏聞きたいよ」とネプテューヌが足をバタバタ動かして不満を露わにする。

 

 

「静かにしなさい。始まるわよ」

 

 

 ノワールがそう言うと、ステージに司会者が現れてコンテストの内容と審査員の紹介を始める。

 

 

「うー、たーいくーつ」

 

 

 ネプテューヌの言葉に、「だから静かにしなさい。ブランも本読まない」とノワールが注意する。

 

しかし、ブランは本を読むのを止めず、「ロム達の出番になったら呼んでちょうだい」とだけ言う。

 

 

 

***

 

 

 

「どれもパッとしませんでしたわね。オンガクギョウ界だから期待してたのですけど」

 

 

 ベールがつまらなそうに言うと、「オンガクギョウ界って言っても新人ですから」と5pb.が答える。

 

5pb.の言葉通り出場者の演奏は上手くはあったが、ベールの耳は満足できないようだった。  

 

 

「うるさいだけ……」

 

 

 ブランは本を読みながら迷惑そうに言う。

 

 

「ビジュアル面もイマイチだわ。もうちょっと服飾に気を遣えないのかしら?」

 

 

 ノワールが厳し目の声で言うと、「そんなことより、ネプギアまーだ!」とネプテューヌはどこからか取り出した箸で茶碗をチンチン叩く。

 

 

「しっ! 静かに。次だよ」

 

 

 ファミ通がそう言うとステージの司会者が、「次、エントリーナンバー30番」と言う。

 

すると舞台袖から、ネプギア、ユニ、ロム、ラム、プラエが現れる。

 

 

「なんだ? 子供か?」

 

「でも、無茶苦茶可愛いぞ」

 

「服も凄いぞ、何だあのゴスロリドレスは?」

 

 

 観客達が口々にネプギア達のことを評価する。

 

観客の言う通り、ネプギア達の衣装は動きやすいように調整されたゴスロリドレスで、ネプギアが薄紫色、ユニが黒、ロムが水色、ラムがピンク、プラエが青だった。

 

 

「つかみはOKですわ!」

 

 

 ベールが嬉しそうに言うと、「当然よ。ラステイション特製の衣装なんだから」とノワールが自慢げに言う。

 

 

「かわいい、かわいいよ! ネプギアー!」

 

 

 ネプテューヌは嬉しそうに、自分のNギアで何度もネプギアの写真を撮っている。

 

ブランもいつの間にか本を読むのを止めて、「ロム、ラム、頑張って……」と呟く。

 

演奏の準備が整うと、中央に立ったネプギアが一礼する。

 

 

「はじめまして! 私達はグランプリ・ユナイテッド。ゲイムギョウ界から来ました」

 

 

 マイクを持ったネプギアが凛とした良く通る声で言う。

 

 

「ゲイムギョウ界? どこだそれは?」

 

「ゲイムギョウ界ならビジュアルと声だけはいいだろうな」

 

「どうせ演奏は下手くそなんだろ? ゲーム音楽なんて聴くに堪えないね」

 

 

 観客が口々に悪態をつくと、「なんだと!」と言ってブランが立ち上がる。

 

ベールがそんなブランの肩にそっと右手を置くと、「落ち着きなさいな。オンガクギョウ界にとってゲイムギョウ界はまだまだそのレベルなのですわ」と落ち着いた声で言う。

 

 

「そうよ。こんなの実力で黙らせればいいのよ」

 

 

 ノワールが少々怒気を含んだ声で言う。

 

冷静を装っているが、ノワールも観客の態度が面白くないようだ。

 

 

「それではメンバーを紹介します」

 

 

 ネプギアが落ち着いた声で言う。

 

ネプギアの耳にも観客の言葉は届いているが、その姿は冷静で足の震えも無かった。

 

 

「まずはベースのユニちゃん」

 

 

 ネプギアがそう言って右手をユニの方に向けると、ユニはベースを鳴らし、「アタシの音を聞きなさい」とウインクする。

 

 

「キーボードはロムちゃん」

 

 

 ネプギアが続いて、ロムの方に右手を向けるとそう言う。

 

 

「ろ、ロムです。頑張ります(どきどき)」

 

 

 ロムがキーボードを鳴らしながら一生懸命手を振って挨拶すると、今度はネプギアがラムの方に手を向け、「ドラムはラムちゃん」とラムを紹介する。

 

 

「ラムよ。今日からあんた達、わたし達のファンになるんだから覚悟しておきなさよね!」

 

 

 ラムはそう言いながら派手にドラムを鳴らし、観客席を指差す。

 

 

「続いて、バイオリンのプラエちゃん」

 

 

 ネプギアがプラエの方に手を向けながらプラエは紹介すると、「プラエです」とプラエは丁寧に一礼するとバイオリンを鳴らせた。

 

 

「ギターは私、ネプギアです」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「そしてっ!」と言ってマイクを宙高く放り投げる。

 

同時にネプギア達は演奏を始める。

 

 

「え? ボーカルは?」

 

「まさかボーカル抜きなのか?」

 

「ゲイムギョウ界なんてそんなものさ」

 

 

 観客が口々に疑問や悪態を付くと舞台袖から一人の少女が走ってくる。

 

その少女はマイクに向かって跳躍すると、伸身三回宙返り一回捻りをして右手でマイクを掴むと見事な着地を見せる。

 

 

「なんだアレは?!」

 

「おい、あれって……」

 

「「「「初音ミク!?」」」」

 

 

 観客が一斉に驚きの声を上げる。

 

 

「ボーカルは私、初音ミクですっ!!」

 

 

 ミクが元気よく言う。

 

 

「ば、馬鹿な??? そんな訳……」

 

「ほ、ホログラムじゃないのか?」

 

「ホログラムがマイク掴むかよ!?」

 

「ソックリさんじゃ……」

 

「それにしたって、レベル高すぎだろ!? 宙返りまでしたし」

 

 

 同時にネプギア達の前奏が終わり、ミクが歌い始める。

 

 

「初音ミクの声だ……」

 

「しかも、最新バージョンより滑らかな声……」

 

「おい、今こっち見て手を振ったぞ!」

 

「見ろよ、あのダンス! すげぇ!」

 

「ミクだけじゃない。演奏もすげぇレベル高いぞ!」

 

 

 驚く観客達を見て、「どうだ、これがゲイムギョウ界の力だ! ドヤァ!」とネプテューヌが両手を腰に当ててドヤ顔をする。

 

 

「きゃー! グランプリ・ユナイテッド最高ですわー!」

 

 

 ベールは自作の団扇とペンライトを振って応援に夢中だ。

 

 

「立派よ。ユニ」

 

 

 ノワールが腕組みしながらユニを褒める。その姿は後方腕組み彼氏面である。

 

 

「あの子達がここまで出来るなんて……」

 

 

 ブランはロムとラムから目を離せず、目を潤ませる。その姿は姉と言うより親だった。

 

会場全体が熱狂する間もなくネプギア達の演奏が終わると盛大な拍手が起こる。

 

 

「「「「「アンコール! アンコール! アンコール!」」」」」

 

 

 続いて大きなアンコールが起こる。

 

慌てて司会が、「み、皆様、今日は新人コンテストなのでアンコールは……」と言うが、「ありがとうみんな! アンコール行くよー!」とミクが遮る。

 

 

「「「「「うおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

 

 歓喜する観客達。

 

見れば続々と観客が訪れていた。

 

観客達がオンガクギョウ界のSNSに書き込み大騒ぎになっているのだ。

 

グランプリ・ユナイテッドは三回ものアンコールを終えて演奏を終えた。

 

既に観客席は満員で入りきらない客が扉から溢れていた。

 

 

「みんなー! ありがとう!」

 

 

 ミクはそう言いながら右手でマイクを持ち左手で観客に手を振る。

 

 

「本当に初音ミクなんですかーーーー!」

 

 

 観客の一人が大声で質問すると、「そうです。私は初音ミク。正確には初音ミク、ゲイムギョウ界バージョンです。この体はまだ0歳だけど、身長158cm、体重42kgの正真正銘の初音ミクのリアルバージョンです」とミクが答える。

 

 

「「「「「おおおおおーーーー! 初音ミクばんざーーい!!! ゲイムギョウ界最高ーーーー!」」」」」

 

 

 

 観客達が雄叫びを上げる。

 

それを見たネプテューヌは、「見事なまでの手のひらドリルだねー」と言いながらお手上げのポーズで首を左右に振る。

 

 

「それも仕方ありませんわ。あれだけのモノを見せたのですから」

 

 

 ベールが落ち着いた声で言うと、「これは今週のファミ通はバカ売れだぞ」とファミ通がメモをとりながら嬉しそうに言う。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギア達の演奏終わると、暫くして審査結果の発表になる。

 

 

「こんなに待たせる必要あるー? 優勝はネプギア達で決まりでしょ」

 

 

 ネプテューヌが不満そうに言うと、「仕方ないわよ。他にも賞はあるんだから」とノワールがたしなめる。

 

 

「それでは表彰に入ります」

 

 

 司会者の言葉と同時にステージに今まで演奏してきたチームの代表者が並ぶ。

 

グランプリ・ユナイテッドの代表者はネプギアでは無くミクだった。

 

次々と表彰されて行き、ついに優勝者の発表になる。

 

照明が落ち、ドラムロールの音と共にスポットライトがステージの代表者達を照らす。

 

 

「優勝は! 18番の9614【くろいよ】ガールズです!」

 

 

 司会者の宣言と共にスポットライトがミクじゃない少女を照らす。

 

 

「皆さん、盛大な拍手をーーーー!」

 

 

 司会者はそう言うが、会場は静まり返ったままだ。

 

 

「5pb.さん……これって……」

 

 

 ファミ通が5pb.に尋ねると、「うん、出来レースだね。初めから優勝は9614ガールズに決まっていた」と5pb.が悲しそうな声で答える。

 

 

「どういうことですか!?」

 

 

 あんみつが怒気含んだ声で、5pb.に詰め寄る。

 

 

「八百長だよ。9614プロと言えば、オンガクギョウ界でもトップレベルのプロダクションだけど悪い噂の絶えないところなんだよ。9614プロにとっては新人コンテストなんて箔を付けるためだけの道具に過ぎない……でも、こんな結果9614ガールズの子も幸せになれないよ……」

 

 

 5pb.が口惜しさと悲しさを含んだ声で言う。

 

彼女もそれなりにオンガクギョウ界の闇を知っているのだろう。

 

 

「こんな結果で勝っても売れるわけないものね」

 

 

 ノワールが冷たく怒気を含んだ声で言うと、「一体いくらのお金を積んだのかしら?」とベールが言う。

 

二人の声には軽蔑の色がありありと出ていた。

 

 

ぷちん……

 

 

 同時に何かが切れる音がする。

 

 

「あ……何か嫌な予感……」

 

 

 ネプテューヌはそう言いながら、ブランの顔を覗き込む。

 

次の瞬間、ブランはステージを駆け上がって司会者の胸倉を乱暴に掴む。

 

 

「テメェ等の目と耳はどうなってんだ!!! 優勝はどう見てもグランプリ・ユナイテッドだろうが!!!!」

 

 

 ブランが今までの冷静な声とは真逆の怒声を上げる。

 

彼女は普段は冷静だがストレスが限界に達するとキレて言葉遣いも乱暴になる。

 

 

「……げ、ゲイムギョウ界からの参加は禁止になっていて……ボーカロイドも禁止で……」

 

 

 司会者がしどろもどろに答えると、「嘘つくんじゃねぇ!!! そんなことどこにも書いてなかったぞ!!!」とブランが即座に言い返す。

 

読書家のブランは、このコンテストのルールブックやパンフレットを読破していた。

 

 

「……度を越えたアンコールが進行の妨げに……く、苦しい……」

 

 

 司会者がそう答えると、ブランは司会者を乱暴に放り投げ、「つまんねぇ、難癖だな。もういい、責任者呼んで来い!!」と怒鳴る。

 

同時に太った中年がトロフィーを持って現れる。

 

 

「く.9614社長!?」

 

 

 司会者が中年をそう呼ぶと、「お前が八百長の元締めか」とブランが言いながら睨む。

 

 

「手短に言うぞ小娘。ワシに逆らうと、オンガクギョウ界で二度と音楽が出来なくなるぞ」

 

 

 9614社長がドスの効いた声で言うが、ブランは眉ひとつ動かさずに、「レベルの低い脅しだな。こんなクソみたいな結果出す世界なんてこっちからお断りだ」と毅然とした態度で言い返す。

 

睨み合う、ブランと9614社長。

 

すると小さな声が会場から聞こえ始める。

 

 

「み……みーく……」

 

「「「みーく……」」」」

 

 

 最初は小さな声だったが、次第にその声は大きくなり人数も増えて来る。

 

 

「「「「「ミーク、ミーク」」」」

 

「「「「「「ミーーーク!!!  ミーーーーク!!!!」」」」」

 

 

 やがて会場全体がミクコールに包まれる。

 

 

「どうだよ? これでも優勝はお前達のところのインチキアイドルか?」

 

 

 ブランがそう言うと、「小娘が!」と9614社長が悔しそうに言う。

 

同時に9614ガールズの女の子が9614社長に近づいていく。

 

 

「誰が何と言おうと優勝はお前達だ! 受け取れ!」

 

 

 9614社長は乱暴に女の子に向けてトロフィーを差し出すが、女の子はそれを無言で押し返すと、「私達、今日で9614プロを辞めます」と冷静な声で言う。

 

 

「な、なんだと!?」

 

 

 驚きの声を上げる9614社長。

 

 

「どうする? こいつ等はもうお前の手駒じゃないぜ」

 

 

 ブランの言葉に、9614社長は真っ赤になると、「もうワシは知らん。覚えておけよ!!」と捨て台詞を言うとトロフィーを床に叩きつけてステージから去っていく。

 

 

「そういうことだ。優勝は誰だと思う?」

 

 

 ブランは放心していた司会者を睨むと、「言うまでもねぇよな?」と言って更に凄む。

 

会場全体を包むミクコールはまだ続いていた。

 

司会者は慌ててマイクを掴むと、「優勝は、30番。グランプリ・ユナイテッドですっ!!!」と宣言する。

 

同時にスポットライトがミクに当たり、会場は割れんばかりの拍手に包まれる。

 

9614ガールズの女の子が落ちていたトロフィーを拾い、「おめでとう、ミクちゃん」と言ってミクに渡す。

 

 

「あ、ありがとう……」

 

 

 ミクは右手でトロフィーを受け取ると、左手で涙を拭った。

 

ミクは嬉しさのあまりに涙を流したのだ。

 

 

「涙まで流したぞ!?」

 

「どうなってるんだ、ゲイムギョウ界の技術は!」

 

 

 ミクの反応に驚く観客達。

 

女神たちはその反応を満足そうに眺めていた。

 

 

 

***

 

 

 

「ボク達のコンテストなんて消化試合だったね」

 

 

 5pb.がそうに言うと、「そんなことないですよ。とっても素敵でした。それに優勝なんて凄いです」とネプギアが言う。

 

ネプギア達の新人コンテストの後にあったメインのコンテストで5pb.は見事優勝した。

 

 

「ネプギア様達に刺激を受けたからね。ボクも負けてられないなって」

 

 

 5pb.がそうに言うと、「よし! 今から祝勝会だー! ノワール、プリンおかわり自由の店探して」とネプテューヌが言う。

 

 

「そんな店ないわよ。あと何で私が幹事になってるのよ?」

 

 

 ノワールが冷めた目で言うと、「仕切りたがりの、ノワールを差し置いて幹事なんてできないよー」とネプテューヌは返す。

 

 

「でも、祝勝会は賛成ですわ。みんなで派手に行きましょうか?」

 

 

 ベールがそうに言うと、「そうね。こんな時ぐらい悪くないわ」とブランが賛成する。

 

 

「よし! 決定っ! ネプギア達も早く行こうよ!」

 

 

 ネプテューヌはそう言ってネプギアの手を引くが、「ごめんね、お姉ちゃん。私、ちょっと用事があるから後から合流するね」とネプギアが言う。

 

 

「ミクちゃん、付き合ってくれるかな?」

 

 

 ネプギアはミクの方を向いてそう言うと、「うんいいよ。ネギちゃんに付いて行く」とミクが頷く。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギアとミクが訪れたのは以前にミクのソフトを譲って貰った店。

 

 

「ここは?」

 

 

 ミクが尋ねると、「ミクちゃんを譲ってもらった人の居るお店だよ」とネプギアが答える。

 

 

「えーと、確かこっちがレジで……」

 

 

 ネプギアがそう言いながら店内を歩き始めると、「あなたは!!」と大声で声を掛けられる。

 

 

「きゃっ!?」

 

 

 ネプギアが驚いていると、「見に行きましたよ、グランプリ・ユナイテッド! 初音ミク最高でした!!」と以前に会った初音ミクのコスプレをした女性が興奮気味にネプギアの両手を握る。

 

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 

 店員の迫力に気圧されてしまうネプギア。

 

 

「ネギちゃん、この人知り合い?」

 

 

 ミクの言葉に店員が反応してミクの方を向くと、「きゃー! 本物の初音ミクだーーー!」と絶叫を上げる。

 

店員はネプギアを離すと今度はミクの手を握る。

 

 

「この手触り温度、本当にコスプレとかじゃないんですか?」

 

 

 店員の質問に、「はい、私はゲイムギョウ界で生まれ変わった、リアルボーカロイドです」とミクが笑顔で答える。

 

 

「この声……間違いない、初音ミクだ……きゅぅ~~」

 

 

 店員は感動のあまり卒倒してしまう。

 

 

「わあー!? しっかりして下さい」

 

 

 慌てて店員を抱きとめるネプギア。

 

 

***

 

 

 「あれ? 私?」

 

 

 店員が目を覚ますと、「ほっ……良かった」とネプギアが胸をなでおろす。

 

 

 「す、すみません! 感動のあまり」

 

 

 店員が謝ると、「気にしないで下さい。ほんの二三分です」とネプギアが言う。

 

 

 「約束、守ってくれたんですね……」

 

 

 店員の言葉に、「はい、私もミクちゃん大好きですから」とネプギアが答える。

 

 

 「これで彼の魂も救われると思います……」

 

 

 店員はそう言うと、胸元からロケットペンダントを取り出してカバーを開く。

 

 

 「マスター……」

 

 

 そこに収まっていた写真を見たミクが呟くと涙を流した。

 

 

 「覚えているんですね……」

 

 

 店員はミクを見ながらそう言うと、「はい、大切な思い出ですから」とミクが答える。

 

 

 「もしかして店員さんとその人って……」

 

 

 ネプギアが何かを察したように言うと、「昔の話です……あの人は、本当にミクちゃんに夢中だった。それでも良かった側に居られるだけで満足だった……」と店員は寂しそうに呟く。

 

 

「ミクちゃんの事よろしくお願いしますね」

 

 

 店員の言葉に、「はい」と力強く頷くネプギア。    

 

 

「それじゃあ、私達そろそろ行きますね」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「あっ、待って下さい! サインをサインをいただけますか?」と店員が言う。

 

 

「それぐらいお安い御用です。ミクちゃんもいいよね」

 

 

 ネプギアが快諾すると、「ネギちゃん、私、サインって初めて」とミクが言う。

 

 

「大丈夫だよ。自分の名前書けばいいだけだから」

 

 

 ネプギアはそう言うと店員の持って来てくれた色紙にサインする。

 

いつもの事務仕事の際に使う事務的なサインだが、それが彼女の真面目さをよく表していた。

 

 

「それじゃあ、ネギちゃんの真似して……えーーーい!」

 

 

 ミクはネプギアが書いたサインを真似て自分の名前を書く、初々しさが残るそれがミクがただの機械でないことを証明していた。

 

こうして、ネプギア達、グランプリ・ユナイテッドはオンガクギョウ界で華々しいデビューを飾った。

 

小さな一歩だが、これが後々ゲイムギョウ界やオンガクギョウ界を含めた娯楽の世界を守る大きな力になる。

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