新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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009ネプテューヌの動画

 オンガクギョウ界の新人コンテストから約1週間後。

 

G.C.2019年6月14日 金曜日。

 

プラネタワーのリビングには昼食を済ませたネプギアとネプテューヌとミクが居た。

 

 

「ネプギアさん、またまたファミ通さんの記事でプラネテューヌのシェアが上がりましたよ」

 

 

 ネプギアが、寝っ転がってゲームをしているネプテューヌにお茶を出しているところにイストワールが雑誌を持って現れる。

 

ネプギアの記事が思いのほか好評で連載が決まったのだ。

 

それによりファミ通は毎週ネプギアの元を訪れ取材をし、その記事を書いていた。

 

その連載もなかなかに好調で、プラネテューヌのシェアは以前に比べて遥かに上昇していた。

 

 

「流石はファミ通さんですね。ファミ通さんが毎週毎週いい記事を書いてくれるおかげです」

 

 

 謙虚にファミ通を称賛をするネプギア。

 

勿論、ネプギアもファミ通の記事を読んでいた。

 

最初は気恥ずかしい気持ちもあったが、ファミ通の文章の上手さと自分のことを本当によく見て記事を書いてくれているのが嬉しくて、今では毎回読むのを楽しみにしている。

 

 

「ネプギアさんの活躍があってこそです」

 

 

 イストワールは素直にネプギアを褒めるとニッコリと微笑む。

 

 

「私、ゲイムギョウ界のことまだよくわからないけど、ネギちゃんが凄く頑張ってるのは分かるよ」

 

 

 ミクもイストワールに同意する。

 

まだ制作されて間もない彼女は日々のメンテナンスが欠かせないのでネプギアと一緒に行動しているのだ。

 

 

「ミクちゃんのおかげでもあるよ。今週号なんて、ミクちゃんの特集で凄く売れたみたいだし」

 

 

 ネプギアの言葉に、「そ、そうかな……ネギちゃんの役に立てたなら嬉しいな」とミクが顔を赤くさせる。

 

 

「この前から上がった上がったっていうけど、どれくらいあがったの? 順位は?」

 

 

 ネプテューヌがゲームをしながら、イストワールに質問をすると、「……4位です……」とイストワールは少し声のトーンを落として質問に答える。

 

 

「なーんだそれって最下位じゃん」

 

 

 ネプテューヌは呆れたような声を出して肩を落とす。

 

超次元のゲイムギョウ界は4国から成っている。

 

その為、4位は最下位なのである。

 

 

「あはは……」

 

 

 さっきまで明かるかった雰囲気が一気に暗くなってしまい、ネプギアも苦笑いを浮かべてしまう。

 

 

「ネプギアー、もっと頑張んないとダメだよー」

 

 

 仕事をせずにゲームをしてる自分のことを棚に上げてネプギアを注意するネプテューヌ。

 

 

「ごめんね。お姉ちゃん」

 

 

 しかし、何故か素直に謝ってしまうネプギア。

 

尊敬する姉の期待に応えられなかったことを詫びているのだ。

 

 

「ネプテューヌさんがお仕事しないせいです!」

 

 

 そこにイストワールが正論をぶつけてくる。

 

プラネテューヌのいつもの光景ではあった。

 

 

「あはは……冗談冗談。これぐらい想定内だよ」

 

 

 しかし、余裕を見せるネプテューヌ。

 

ネプテューヌは一旦ゲームを止めて、立ち上がる。

 

 

「流石お姉ちゃん、やっぱり何か考えがあったんだね」

 

 

 ようやく姉の活躍が見れると期待に目を輝かせるネプギア。

 

 

「最下位から一気にトップに返り咲く! 主人公冥利に尽きるね」

 

 

 ネプテューヌは、腰に手を当てドヤ顔を決める。

 

 

「……返り咲く以前に、ネプテューヌさんが女神になってから、プラネテューヌが一位になったことなどないのですが……」

 

 

 イストワールがジト目で細かいツッコミを入れてくる。

 

 

「まぁまぁ、いーすんさん、折角お姉ちゃんがやる気になったんですら」

 

 

 ネプギアはネプテューヌのやる気が削がれないようフォローを入れる。

 

 

「そうだよー。いーすんは細かいなー」

 

 

 しかし、ネプテューヌは特に機嫌を損ねた様子はなくイストワールのツッコミをさらりと受け流す。

 

 

「それじゃ、お姉ちゃんクエスト行こうか」

 

 

 ネプギアがそう言ってネプテューヌをクエストに誘うと、「何で?」と真顔で疑問を返すネプテューヌ。

 

 

「だって、シェアを上げるにはお仕事しないと……」

 

 

 ネプギアは丁寧にネプテューヌの質問に答える。

 

シェアは国民の信仰心なので、基本的には女神が国民の要望であるクエストをこなして女神の力を示すことで増えていくのである。

 

 

「古いなー! もっとココを使わないと」

 

 

 ネプテューヌはそう言いながら、右手の人差し指で自分の頭をコンコンと叩く。

 

 

「……何だか嫌な予感がします……」

 

 

 イストワールは眉間にシワを寄せ神妙な顔をすると、わずかに胃がキリキリと痛むような気がしていた。

 

 

「わたし、動画を配信しようと思うんだよねー」

 

 

 ネプテューヌは右手の人差し指をビシッと上げるとさも妙案かのように明るく話し出す。

 

 

「動画って……インターネットの?」

 

 

 ネプギアがネプテューヌの提案を確認するように説明する。

 

 

「そう! アレって楽して儲けられるみたいじゃん。わたしがやればシェアもガンガン溜まると思うんだよね」

 

 

 ネプテューヌは目を輝かせて力説する。

 

 

「そんな安直な案却下です! もっと真面目に考えて下さい」

 

 

 イストワールは嫌な予感が的中したと言わんがばかりに即刻ダメ出しをしてくる。

 

 

「いーすんは古いなー。わたしの可愛さと変身後の美貌と知名度があれば大成功間違い無しじゃん」

 

 

 ネプテューヌは、イストワールのダメ出しがさっぱり理解出来ない顔で、やれやれと言わんがばかりにお手上げのポーズで首を左右に振る。

 

 

「知名度はあるならあるなりのリスクがあるんです! それに動画配信はネプテューヌさんが考えているような簡単なものでは……」

 

 

 イストワールはネプテューヌを止めようと必死に説得しようとするが、ネプテューヌは、「おっと、そろそろファンクラブとの撮影の時間だよ! じゃ、そういうことでよろしく」と聞く耳持たずといった感じでいそいそと準備を始める。

 

 

「ネプテューヌさん! 話はまだ……それに今日が期限のクエストもあるんですよ!」

 

 

 イストワールはネプテューヌを捕まえようと飛び掛かるが、ネプテューヌはひらりと身を翻しイストワールを避けると、「それはネプギアに任せた!」とネプギアを指差す。

 

 

「うん、それはいいけど、いーすさんの話はちゃんと聞いた方が……」

 

 

 ネプギアは素直に引き受けるが、話を聞いて貰えないイストワールを気の毒に思ってネプテューヌに忠告する。

 

 

「じゃ、行ってきまーす! わたしの動画に全国が刮目するよ~」

 

 

 しかし、ネプテューヌはネプギアの話も聞かずに部屋を出て行ってしまう。

 

 

「あ、頭が痛いです……ネプテューヌさんとそのファンクラブで作った動画を全国配信なんて……」

 

 

 イストワールはネプテューヌが出ていたドアを見ながらそう言うと、頭を抱えてうずくまる。

 

 

「お姉ちゃんのファンクラブって、会長の人が男の人だけど、お姉ちゃんと同じ服着てる人ですよね。それなら心配ないじゃないですか、悪い人ではないと思いますよ」

 

 

 ネプギアは姉のネプテューヌのファンクラブのメンバーが特に悪い人達だと思えなかったので、安心するようイストワールに伝える。

 

 

「そういう心配ではないのです。普段のネプテューヌさんのぐーたらぶりが全国配信されたらどうなると思いますか?」

 

 

 イストワールは鬼気迫る顔でネプギアに質問をするが、ネプギアは小首を傾げて、「えっと……お姉ちゃん可愛い?」と呑気に答える。

 

 

「がくっ……」

 

 

 ネプギアの答えにガクッと肩を落とすイストワール。

 

ネプテューヌ好きのネプギアからはイストワールの想定していた答えは得られかったようだ。

 

 

「お姉ちゃんの動画楽しみですね」

 

 

本当に楽しみにしているようで嬉しそうな顔をするネプギア。

 

 

「……今回も立て直しに苦労しそうです……」

 

 

 イストワールはお腹を押さえながらそう言う。

 

どうやら胃が痛いようだ。

 

イストワールは過去にネプテューヌの安易な思い付きの案によって国が傾くくらいの赤字を何度も出され、その度に立て直してきた。

 

今回もそれと同じ予感を感じていた。

 

 

「それじゃあ、プラエちゃん達と一緒にクエスト行ってきますね」

 

 

 ネプギアは立ち上がると、机に置いてあるNギアを右太もものケースに入れてクエストに向かう準備をする。

 

 

「私も行きます」

 

 

 イストワールが同行を申し出るとネプギアと一緒に部屋を出る。

 

ここ最近イストワールは、よくネプギアのクエストに同行している。

 

ネプギアが心配な気持ちと、彼女の活躍を見るのが嬉しい気持ち、後はネプテューヌのせいで溜まったストレスの発散などが主な理由だ。

 

 

「ネギちゃん、私も行っていい?」

 

 

 ミクの言葉に、「うん、もちろんだよ。ミクちゃんが応援してくれれば百人力だよ」とネプギアが答える。

 

 

 

***

 

 

 

 ネプギアがプラエとあんみつを誘ってプラネタワーを出ると時間は13時過ぎになっていた。

 

 

「あら? ネプギア、それにイストワール様達も」

 

 

 プラネタワーを出てすぐに、後ろから知ってる声に名前を呼ばれる。

 

 

「アイエフさん、それもコンパさんとファミ通さんも」

 

 

 ネプギア達が後ろを振り向くと、声を掛けてきたアイエフとその右隣にコンパ、左隣にファミ通がいた。

 

 

「こんにちはですー」

 

 

 コンパが挨拶をすると、ファミ通も、「こんにちは」と挨拶をする。

 

 

「こんにちは。みなさん、お揃いでどうしたんですか?」

 

 

 ネプギアはアイエフとコンパはよく一緒にいるが、ファミ通が一緒なのは珍しいと思ったので質問をする。

 

 

「みんなでランチをしてきたのよ」

 

 

 アイエフがそう言うと、ファミ通が、「取材でお世話になったから、私から誘ったんだ」と細かい事情を説明してくれる。

 

 

「もうファミ通さんも仲良しさんですー」

 

 

 ファミ通の誘いで、三人で昼食を取ってきたようである。

 

以前から良好な関係ではあったが今日の昼食で更に三人とも意気投合したようで以前より仲良くしている。

 

 

「そっちは、またネプ子の肩代わり?」

 

 

 アイエフあごを右手で押さえながらそう言って、ネプギア達の目的を即座に言い当てる。

 

 

「えと……当たりです」

 

 

 ネプギアは姉のサボりを隠したい気持ちはあったが、アイエフ相手にそれは無駄だと思い素直に認める。

 

 

「アイエフさん、凄い」

 

 

 プラエが驚きながらアイエフを褒めると、「ネプ子とネプギアの行動なんてお見通しよ」とアイエフが腕組みして得意気に答える。

 

コンパも、「普段のギアちゃんは午前中にお仕事に出かけますから、午後に行くときは、ねぷねぷがお仕事してくれない時だって決まってるんですー」と微笑みながら答える。

 

 

「なるほど、確かにそうですね」

 

 

 あんみつが感心したように頷く。

 

ここ最近プラエと共にネプギアの仕事に同行する彼女は、コンパの言う通りだと感じたのだ。

 

 

「私も付き合うわ。コンパとファミ通も来れる」

 

 

 アイエフが軽く買い物に行くようなノリで同行を申し出つつコンパとファミ通を誘うと、コンパも、「行くですー」と言い、ファミ通も、「勿論行きますよ」と即答する。

 

 

「ありがとうございます。助かります」

 

 

 ネプギアは素直に感謝すると同行を受け入れる。

 

 

「皆さん、レベルはどれぐらいになりましたか? 私達は26になりました」

 

 

 イストワールが全員にレベルの上がり具合を質問する。

 

パーティの戦力はパーティを組むたび常に確認して、それに応じた戦術を立てる必要があるのだ。

 

 

「私は24だよ」

 

 

 ファミ通がそう答えると、アイエフが、「25です」と言い、コンパが、「24です~」と答える。

 

 

「イストワール様、今日のクエストは何ですか?」

 

 

 戦力の確認が終わったところで、アイエフがイストワールに質問するとイストワールは、いつものホログラムを出す。

 

 

「今日はパナンジャングルで、馬鳥の討伐です」

 

 

 イストワールはそう言ってクエストの説明に入る。

 

パナンジャングルとはバーチャフォレストの南にある密林のことである。

 

馬鳥とは馬に羽の生えたモンスターだ。

 

しかし、ペガサスとは違い、前足にあたる部分が翼になっており、後ろ脚で二足歩行をするのだ。

 

読み方は【うまとり】と【ばちょう】で議論が上がっており結論はまだ出ていない。

 

ちなみにプラネテューヌでは、うまとりの方が主流なので、皆うまとりと呼んでいる。

 

ばちょうの読み方はリーンボックスでの主流となる。

 

 

「ねぷねぷは、馬鳥だから嫌だっていったんですか~?」

 

 

 コンパが首を傾げて質問すると、ネプギアは、「いえ、違いますけど……」と答えると、「でも、なんで馬鳥だとダメなんですか?」と続けてコンパに質問する。

 

 

「ねぷねぷはナスの次に馬鳥のふんが嫌いみたいです~」

 

 

 コンパがそう言うとアイエフが、「何かトラウマがあるみたい。ドロップアイテムがどうのこうの言ってたかしら?」と説明を付け加える。

 

 

「なるほど! 馬だけにトラウマなんですね!!」

 

 

 ネプギアは自信満々のドヤ顔でそう言うが、周囲には寒い空気が押し寄せる。

 

 

「それじゃ、行きましょ」

 

 

 アイエフは何事もなかったように華麗にスルーするとスタスタと先に進む。

 

 

「む、無視しないで下さい! 悲しいです!」

 

 

 ネプギアはあわあわとあわふためきながらアイエフの右手の袖を掴む。

 

彼女なりにネプテューヌに言われた面白い女神になろうと努力しているのである。

 

自分でも、少しダジャレを考えるのが楽しくなってきているふうでもあるが……。

 

 

「わかりましたー。そこに車を停めてありますから、みんなで行きましょうー」

 

「こ、コンパさんまで~」

 

 

 コンパにですらスルーされたネプギアはガックリと肩を落としてしまう。

 

 

「ネプギア様のダジャレ結構好評だよ。清楚な見た目に対してのギャップ萌えって感じで」

 

「き、記事にするのは止めて下さい~」

 

 

 ファミ通は微笑みながらフォローするが、ネプギアは顔を真っ赤にして慌ててしまう。

 

ファミ通の記事は読んでいるが、自分のダジャレが出る度に赤面してしまう。

 

まだ自分のダジャレを大勢の人に見られるのは恥ずかしいようだ。

 

 

「ネプギア殿、そんなに恥ずかしいなら言うのを止めてみては?」

 

 

 あんみつが落ち着いた声で進言するが、「それはダメなんです。私、ダジャレでみんなを笑顔にするって決めたんですから」と小さくガッツポーズをしながら力説するネプギア。

 

ネプテューヌに言われたことを律儀に守っていることの他に、彼女なりにダジャレで個性を付けたいという意味があるようだ。

 

 

「私は面白いと思うよ、ネギちゃんダジャレ」

 

 

 ミクがそう言うと、「プラエも結構好きかも……」とプラエも同意する。

 

 

***

 

 

 ネプギア達はハネダシティと同じように、アイエフはバイクで、ネプギア達はコンパとファミ通の車で現地に向かう。

 

 

「あれ?」

 

 

 車で移動中にネプギアの目に見覚えのある人物が映る。

 

 

(あれは……ボーク? でも、あの人は神次元の人で……)

 

 

 ネプギアが外のボークらしき人影を集中し見る。

 

服は私服になっているが、確かに似ている。

 

ネプギアが本物かどうか悩んで首を傾げていると、イストワールが、「どうかしましたか?」と心配そうな顔して質問してくる。

 

 

「いえ、なんでもありません」

 

 

 ネプギアは何事もなかったように首を左右に振る。

 

 

(もしかしたら超次元のそっくりさんかも)

 

 

 イストワールのように超次元と神次元には似た人物が多い。

 

ネプギアはあのボークもその類だと思うようにした。

 

 

***

 

 

「ヒヒーン!」

 

 

 ジャングルに馬のいななきが響く。

 

パナンジャングルを訪れたネプギア達は早々に一匹の馬鳥と遭遇していた。

 

体長3メートルはある巨体が翼をはためかせて、敵意に満ちた瞳でネプギア達を睨みつけている。

 

 

「さて、相手をしてあげようかしら」

 

 

アイエフはそう言って、余裕のある笑みをニヤリと浮かべると前に歩み出て馬鳥の目の前に立つ。

 

 

「フヒーーン!」

 

 

興奮した馬鳥は鼻息を荒くしてアイエフ目掛けて突進してくる。

 

 

「見え見えね」

 

 

 avoid、アイエフは素早く横にステップを踏んで突撃を避ける。

 

攻撃の避けられた馬鳥の進む先には左右でネプギアとファミ通が待ち受けていた。

 

 

「その隙見逃しません!」

 

 

 ネプギアがそう叫んで馬鳥の右横に飛び出すと右手のギアナックルで正拳突きを繰り出す。

 

それと同時に、「もらったー!」とファミ通が反対側から飛び出て両手にエビを持って横にスイングする。

 

 

ズガン!

 

 

 ネプギアのギアナックルとファミ通のエビによる横殴が馬鳥を挟撃する。

 

 

「ブヒーーン!」

 

 

 馬鳥は合計で二人の攻撃で500以上のダメージを受ける。

 

 

「覚悟!」

 

 

 ネプギアとファミ通の挟撃で動きの止まった馬鳥の正面に、あんみつが飛び出して袈裟斬りで切り裂く。

 

更に、「クロックチェーン九時! 雷の力よ」とプラエが雷を纏った鎖を伸ばす。

 

鎖は馬鳥に絡みつくと、電撃でダメージを与え、あんみつの攻撃と合わせて又も500以上のダメージを与える。

 

 

「雷の矢よ敵を撃て! サンダーアロー!」

 

 

 続けてイストワールが魔法を唱えると、イストワールの右手の人差し指から電撃が飛んでいき馬鳥に命中すると438ダメージが当たる。

 

 

「お覚悟ですー!」

 

 

 更にコンパが巨大注射器を抱えて馬鳥に突撃しその太い針を突き刺す。

 

 

「ブモーーー!」

 

 

 コンパの追撃で101ダメージを受けた馬鳥は悲鳴を上げて、オーバーキル×2の表示と共に消滅する。

 

 

「やりました!」

 

 

 ネプギアがそう言って右手を上げると、「完璧だね」とファミ通も右手を上げて二人はハイタッチを交わす。

 

 

「ナイスよ」

 

 

 その先ではアイエフがサムズアップを二人に送っていた。

 

 

「ファミ通さんとのコンビネーションも大分慣れてきましたね」

 

 

 イストワールが感心しながら頷いてそう言うと、コンパも、「流石ギアちゃんですー」と言って、ネプギアのコンビネーションに感嘆していた。

 

ネプギアと付き合いの長いアイエフとのコンビネーションはバッチリだが、まだ出会って日の浅いファミ通とも息の合った同時攻撃を完璧にこなすネプギアの器用さと協調性に感心しているようだ。

 

 

「ミクの回避率アップの歌もかなり効いてるわ」

 

 

 アイエフの褒め言葉に、「ありがとうございます。嬉しいです」とミクが答える。

 

 

「この調子でサクサク行きましょう」

 

 

 先頭のアイエフがそう言って前に進み始めると、ネプギア達もその後を追った。

 

 

 

***

 

 

 

「ここが最奥ですね」

 

 

 ネプギアがNギアの地図を見ながらそう呟く。

 

ネプギア達は何匹もの馬鳥を蹴散らしつつ、最奥へと辿り着いていた。

 

 

「そろそろお約束のボス戦かな?」

 

 

 ファミ通がそう言うとあたりが影に覆われる。

 

 

「ヒヒーーーーーン!」

 

 

 ネプギア達が空を見上げると、上空に6メートルはある巨大な馬鳥が浮いていた。

 

 

「おっきいですー」

 

 

 巨大な馬鳥【ビッグ馬鳥】の大きさに驚きおののくコンパ。

 

 

「ブルルル!」

 

 

 ネプギア達を敵とみなしたビッグ馬鳥が激しく翼をはためかせて突風を起こす。

 

もの凄い風圧がネプギア達を襲う。

 

 

「くっ! ウインドストーム?」

 

 

 アイエフはそう言うと両手で身を守るようにして突風に耐える。

 

 

「す、凄い風ですー」

 

 

 そう言いながらスカートを抑えるコンパ。

 

 

「ダメージは大したことありませんけど……」

 

 

 イストワールはコンパの服に掴まり突風に耐えている。

 

イストワールの言うようにダメージ自体は40前後でHPゲージ二割分にも満たないが、「これじゃあ、身動きが取れないよ~」とファミ通が情けない声を上げる。

 

 

 実際にファミ通の言う通りで、吹き飛ばされないよう踏ん張るので精一杯で誰一人としてその場から動けない。

 

【ウインドストーム】とは風属性による広範囲の特殊攻撃。

 

巨大な翼から突風を起こし相手にダメージを与えつつ風圧で動きを制限する攻撃である。

 

 

「ブヒーーーン!」

 

 

 身動きの取れない先頭のアイエフ目掛けて、ビッグ馬鳥が急降下してくる。

 

アイエフにビッグ馬鳥の巨体が迫る。

 

 

「しまった……回避が間に合わない!」

 

 

 風は止むが、とても回避が間に合うタイミングじゃない。

 

回避タンクで防御力の低いアイエフでは、あの高さからのビッグ馬鳥の体当たりを受けてしまうと瀕死どころか戦闘不能に陥る可能性がある。

 

 

ズキュキュキュキューーーーン!

 

 

 ビッグ馬鳥の巨体がアイエフに当たろうかという時に連続したビーム射撃の音が響く。

 

 

「ヒーーーン!」

 

 

 同時に五発のビームがビッグ馬鳥に当たり、ビームの推力により落下起動をずらされ、アイエフの真横に土煙を上げて墜落する。

 

ビッグ馬鳥は合計で2516のダメージを受けて横倒れになる。

 

 

「アイエフさんはやらせません」

 

 

 パープルシスターに変身したネプギアが凛とした声を上げる。

 

続けて、「よかった……間に合ったね」とプラエがホッと安堵の溜息をもらす。

 

ネプギアはウィンドストームの最中に、プラエの時間操作の力を借りて女神化をしてパープルシスターに変身していた。

 

そして、その右手に持った銃剣M.P.B.Lの射撃機能によってビッグ馬鳥を撃ってアイエフを守ったのである。

 

 

「まったく、冷や冷やさせてくれるわね……」

 

 

 アイエフはネプギアの方を振り返りながら、冷や汗を拭う。

 

 

「遅くなってすみません」

 

 

 ネプギアはアイエフに一言謝ると、滑空して倒れている馬鳥に接近する。

 

 

「フヒィィィィ!?」

 

 

 ビーム攻撃と墜落したダメージでもがき苦しむビッグ馬鳥。

 

 

「ごめんなさい!」

 

 

 その姿を哀れに思うネプギアだが、戦いに私情を挟む訳にはいかない。

 

 

ブスッ!

 

 

 勢いに乗ったネプギアのM.P.B.Lのブレード部の突きがビッグ馬鳥の首に刺さる。

 

 

「ヒィィィィィィン!」

 

 

 ビッグ馬鳥は1925ダメージを受けて絶叫を上げると、「みんなは私が守るんです!」とネプギアが叫ぶ。

 

 

キィィィィィィン!

 

 

 同時にM.P.B.Lからチャージ音が聞こえてくる。

 

 

「M.P.B.L最大チャージ!」

 

 

 ネプギアは容赦なく、そこから零距離射撃を放つ。

 

ビッグ馬鳥は避けることも出来ず、3848ダメージを受けるとビームの推力に吹き飛ばされる。

 

 

「ヒヒヒヒン!」

 

 

 悲鳴を上げながら転がり回る馬鳥。

 

 

「うわ……ネプギア様にしては容赦ない攻撃ですね……」

 

 

 ネプギアの一連の連続攻撃に恐れおののくファミ通。

 

 

「女神様は女神化すると、みんな強気になるですー」

 

 

 コンパはネプギアの激しい攻撃の理由は女神化によって性格が強気になった為であると説明する。

 

 

「それだけではありません。みなさんを護りたいと言う強い意志もあるのです」

 

 

 イストワールがコンパの解釈に追加するように言う。

 

 

「みなさん! 私が先頭に立ちます! バックアップを!」

 

 

 ネプギアはビームの照射が終わると同時にビッグ馬鳥を更に追撃しながら、全員に指示を飛ばす。

 

 

「OK! みんな行くわよ」

 

 

 アイエフがそれに応えると、全員がネプギアを先頭にしたフォーメーションに切り替える。

 

先頭のネプギアがタンク兼アタッカーで、その後ろにアイエフとファミ通とプラエとあんみつがアタッカー、更に後ろのイストワールはヒーラー兼アタッカー、コンパはヒーラー、ミクは歌で援護の役割分担である。

 

 

「ブルルル!」

 

 

 吹き飛ばされて墜落したビッグ馬鳥は意識を覚醒させる為に頭を左右に振っている。

 

 

「フォーミュラーエッジ!」

 

 

 ネプギアはその隙を逃さずビッグ馬鳥に連続の斬撃で攻撃をする。

 

合計で2549ダメージが当たる。

 

 

「ヒヒーン!」

 

 

 しかし、ビッグ馬鳥はダメージを堪えてネプギアに反撃する。

 

 

「くっ!」

 

 

 ネプギアは避けずに左手に防御の魔法陣を張り攻撃を受け止める。

 

ネプギアは223のダメージを受けてHPゲージが二割ほど減少する。

 

 

「ギアちゃん、何で避けないですか?」

 

 

 コンパは女神化したネプギアなら避けられそうな攻撃を受け止めたネプギアに疑問を持つ。

 

 

「ビッグ馬鳥にウィンドストームを使う隙を与えない為に張り付いているんです」

 

 

 あんみつがコンパの疑問に即座に答える。

 

パーティ全体に被害が出るウィンドストームを使う隙を与えない為に回避を捨てて、ビッグ馬鳥に肉薄するネプギア。

 

回避の為に距離を置いたら、ビッグ馬鳥が素早く後退してウィンドストーム使うかもしれないのだ。

 

 

「はああああ!」

 

「ブヒヒヒヒン!」

 

 

 激しい攻防を繰り広げるネプギアと馬鳥。

 

双方共にダメージの応酬が続く。

 

 

「ネプギア様……女神様自ら盾になるんて……」

 

 

 感嘆しながらもメモを取るファミ通。

 

プラエも、「ネプギアお姉さん……」とネプギアに感嘆の眼差しを向け、「私、防御力アップの歌でネギちゃんを援護します」とミクが歌う歌を変える。

 

 

「さあ! この間に攻撃を!」

 

 

 イストワールは魔法の詠唱を始める。

 

 

「ギアちゃんの回復はわたしに任せるです」

 

 

 コンパは救急キットを取り出し、ネプギアの減少したHPを回復させる。

 

回復するコンパへのヘイトは上がるものの、ネプギアとの激しい攻防でビッグ馬鳥のヘイトはネプギアに集中しており、ビッグ馬鳥のターゲットはネプギアに固定されていた。

 

 

「そこ! 隙だらけよ!」

 

 

 怒り狂いネプギアだけに攻撃をするビッグ馬鳥の真横からアイエフがカタールで突き刺すと、「こっちも隙だらけ!」と同時に逆サイドからファミ通が殴り掛かる。

 

 

「ヒーン!」

 

 

 不意を突かれたビッグ馬鳥は合計で500以上のダメージを受けて一瞬動きが止まる。

 

更に動きの止まったビッグ馬鳥に、「もらった!」とあんみつが刀を突き刺し、「クロックチェーン、十時! 光の力よ!」とプラエが鎖を伸ばしてビッグ馬鳥を打ち据える。

 

こちらも500以上のダメージが当たり、流石のビッグ馬鳥も、「ブルルル」と唸りながら怯む。

 

 

「大地の記憶!」

 

 

 ビッグ馬鳥が怯むと同時に魔法の詠唱を終えたイストワールが魔力を解放する。

 

 

ズゴゴゴ!

 

 

 馬鳥の足元から巨大な岩の槍が突き出す。

 

 

ザクッ!

 

 

「ヒィィィィィン!」

 

 

 串刺しになり512ダメージを受けて絶叫し悶える馬鳥に続けざまに、「はあああああ!!」とネプギアが気合の籠めたM.P.B.Lの一閃で切り裂き2389のダメージが当たる。

 

ネプギアをタンクに、コンパをヒーラーとして、他の五人が援護攻撃続け少しづつビッグ馬鳥にダメージを与えていく。

 

 

「解析完了。最大HP推定60000、現在のダメージ40575。 ガッツ発動前にシェアエネルギーキャノンでの撃破を提案します」

 

 

 ネプギアの頭にNギアの機械音声が響いてくる。

 

女神化したネプギアと同化したNギアの解析機能の結果による戦術の提案である。

 

ネプギアとの激しい攻防とイストワール達の援護でビッグ馬鳥のHPは三割近くまで低下していた。

 

Nギアは大体HPの三割を切ると発生するガッツ発動前に一撃で葬り去ろうと提案したのだ。

 

 

「いーすんさん、シェアエネルギーキャノンで一気に決めます!」

 

 

 ネプギアはNギアの提案に従いイストワールにそう言うと高速で後退して馬鳥と距離を取る。

 

幸いにも今ビッグ馬鳥は岩の槍で串刺しになって動きを止めていた。

 

 

「あなたに力を……」

 

 

 イストワールはネプギアに従い、祈るように目を閉じてシェアエネルギーキャノンの発動準備を始める。

 

同時にネプギアが後退を止め、その場に静止する。

 

 

「みんな! ヒット数を稼ぐわよ」

 

 

 アイエフはシェアエネルギーキャノンのダメージを上げる為にガッツが発動しない範囲内でヒット数を稼ぐように全員に指示を送る。

 

ファミ通は、「了解」と声を上げると必死にエビを連続で振り下ろしてヒット数を稼ごうとする。

 

コンパも、「はいです~」と了解すると巨大注射器から劇薬を水鉄砲のマシンガンのように連射する。

 

プラエは12本の鎖を巧みに操ってビッグ馬鳥を叩き、あんみつも刀と体術を使った素早い攻撃に切り替える。

 

そしてアイエフは流れるような華麗なカタール捌きで連続攻撃を加えていく。

 

ミクも攻撃速度アップの歌を歌い始める。

 

一撃一撃のダメージは一桁だが、ヒット数がみるみるうちに三桁に上って行く。

 

 

「座標固定! 発射シークエンス入ります。ロングレンジバレル、シェアエネルギー受信システム転送!」

 

 

 その間にネプギアのM.P.B.Lにはシェアエネルギーキャノン用に銃口に長い銃身、後部にはリフレクターが装着される。

 

 

「シェアエネルギー来ます!」

 

 

 イストワールの言葉と同時にプラネテューヌ方面から一筋の光がM.P.B.Lに注がれる。

 

その間にネプギアは両手でM.P.B.Lを握りそれを動かして、目に見えるレティクルの照準をビッグ馬鳥に合わせる。

 

 

ピー!

 

 

 照準を合わせると警告音と共に【Lock on】と赤い文字が点滅する。

 

 

「照準、発射態勢……オールクリア!」

 

 

 ネプギアの声に合わせてM.P.B.Lに装着されたリフレクターが激しく発光する。

 

 

「ヒヒーーーーーン!」

 

 

 串刺しから態勢を立て直したビッグ馬鳥はヒット数を稼ぐアイエフ達を無視して怒り狂ってネプギア向かって突撃してくる。

 

 

「ネプギア! 早く撃ちなさい!」

 

 

 アイエフが叫び声を上げるが、シェアエネルギーキャノンは発射されない。

 

 

カチッ!カチッ!

 

 

 ネプギアは何度もM.P.B.Lのトリガーを引いているが反応が無いのである。

 

 

「エネルギーが足りません」

 

 

 M.P.B.Lからの機械的な音声が聞こえてくる。

 

 

「くっ……チャージが遅い!」

 

 

 ネプギアがM.P.B.Lのロングバレルに付いたシェアエネルギーキャノン用のエネルギーゲージに目をやると表示は60%を示している。

 

 

「どうしたの? この前は直ぐに撃てたのに!」

 

 

 ファミ通も焦りの叫び声を上げる。

 

 

「シェアエネルギーキャノンのエネルギーが100%にならないんです!」

 

 

 状況を察したイストワールが説明をすると。「そんなー」とうろたえるコンパ。

 

 

「早く……早くっ……」

 

 

 ネプギアは祈るように表示を見続けるがエネルギーゲージはなかなか上がらない。

 

 

「ブヒーーーン!」

 

 

 馬鳥の突進がネプギアに迫る。

 

 

「お願いGビット!」

 

 

 ネプギアが叫ぶと五基のGビットが現れてネプギアを護るように囲むとピンク色のピラミッド型のバリアを張る。

 

 

ガンッ!

 

 

「ブヒーン!」

 

 

 バリアに当たったビッグ馬鳥の突進が止まる。

 

 

「ヒヒヒヒン!!」

 

 

ガンガンガン!

 

 

 しかしビッグ馬鳥はバリアをヘッドバットで無茶苦茶に叩いて攻撃する。

 

一撃ごとにバリアの色が薄くなり、ピンクから白に変わって行く。

 

 

「バリアが圧されてます!」

 

 

 あんみつが言う通り、バリアの耐久力が減少してビッグ馬鳥の攻撃に耐えられる様子ではない。

 

プラエは、「そんな! ネプギアお姉さん!」と声を上げる。

 

 

「NGフィールド限界まであと三秒」

 

 

 ネプギアの頭にNギアの機械音声が聞こえてくる。

 

ビッグ馬鳥の攻撃から耐えられる時間があと三秒だと計算したのだ。

 

 

「ネプギアさん、退避を!」

 

 

 イストワールが叫ぶ。

 

 

パリン!

 

 

 ビッグ馬鳥のヘッドバットでバリア真っ白くなると、ガラスが割れるようにバリアが飛び散る。

 

バリアを突破したビッグ馬鳥はネプギアに向けてもヘッドバットをしよと頭を振り上げる。

 

 

「くっ!」

 

 

 avoid、ネプギアは何とか空中に舞い上がりビッグ馬鳥のヘッドバットをを避ける。

 

 

「ど、どうしましょう!」

 

 

 ビッグ馬鳥を仕留め損なったことで慌てるコンパ。

 

稼いだコンボもゼロになってしまっている。

 

 

「ロングバレルを装備したままじゃ接近戦ができないわ」

 

 

 アイエフの言う通りで、長い銃身が邪魔でM.P.B.Lのブレード部分が使えない。

 

 

「少しだけ時間を稼いで下さい。何とかします!」

 

 

 ネプギアはそう言いながら後退して、左手から魔法を発動させる。

 

 

「水よ……敵の動きを封じよ……アクアネット!」

 

 

びちゃ!

 

 

 ビッグ馬鳥を水の膜が覆う。

 

【アクアネット】は粘着性の強い液体で敵の動きを遅くする水属性の魔法。

 

 

「わかったわ。行くわよ、ファミ通、あんみつ」

 

 

 アイエフがそう言うとファミ通は、「了解」と、あんみつは、「承知」と言ってビッグ馬鳥の正面に立つ。

 

 

「ブヒーーーン!」

 

 

 怒り狂って暴れるビッグ馬鳥。

 

狙いはヘイトの高いネプギアだが、進行方向にファミ通が立ち塞がりZOCで足止めをし、更にアイエフとあんみつも横から動きを妨害する為の足止め攻撃をする。

 

ファミ通達を無視して突破しようにも、アクアネットのせいで動きにキレが無くそれも出来ないようだ。

 

 

「これなら私達でも時間を稼げそうだね」

 

 

 ファミ通がビッグ馬鳥を攻撃しながらそう言う。

 

 

「みんな頑張って下さい~」

 

 

 コンパも声援を送りながら回復と補助で前衛の三人をフォローする。

 

ミクも防御力アップの歌を一生懸命歌っていた。

 

 

「……氷の檻よ永久の投獄を与えたまえ……」

 

 

その間にイストワールが氷属性の魔法の詠唱を始める。

 

 

「フリジットプリズン!」

 

 

イストワールが魔法を発動するとビッグ馬鳥の周囲を冷気が覆う。

 

 

カチーーーン

 

 

 452ダメージを受けて氷塊の中に閉じ込められる馬鳥。

 

以前にロムとラムが使ったのはアレンジをしたウェディングケーキバージョンだが、こちらはオリジナルのフリジットプリズンである。

 

 

「これで時間が稼げるわね」

 

 

 アイエフとファミ通は攻撃で氷塊に衝撃を与えないよう、バックステップをしながら距離を取る。

 

 

「時間さん、あの馬の時間を遅くして」

 

 

 更にプラエが超能力でビッグ馬鳥を遅くして、氷が割られるまでの時間を稼ぐ。

 

 

「ネプギアさん、どうですか?」

 

 

 イストワールが上空のネプギアに問いかける。

 

 

「もう少しです」

 

 

カタカタカタカタ……

 

 

 ネプギアは右手でM.P.B.Lを持ちながら左手でキーボードを叩いている。

 

Nギアと同化したネプギアはイストワールのように何もないとことにキーボードを出現させてNギアを操作することが出来るのだ。

 

 

ピシッ……ピシッ……

 

 

 しかし、ネプギアの作業が終わる前にフリジットプリズンにヒビが入る。

 

拘束時間も終わろうとしていた。

 

 

カタカタカタカタ……

 

 

「シェアエネルギー効率化プログラム更新!」

 

 

ポーーーン!

 

 

 ネプギアが左手で実行キーを押すと、ネプギアの周囲を0と1の二進数の数字の輪が展開される。

 

 

パリーーーン

 

 

 同時にフリジットプリズンが割れてしまう。

 

 

「ブルルルルルルル!」

 

 

 閉じ込められてことで、ビッグ馬鳥の怒りが増しているようだ。

 

 

「わわっ! もの凄く怒ってるよ」

 

 

 ファミ通が焦りの声を上げると、アイエフも冷や汗をかきながら、「これはちょっと止められそうにないわね」と言う。

 

 

「しかもガッツが発動してます!」

 

 

 あんみつはビッグ馬鳥の纏う炎ように赤いオーラーに驚きの声を上げる。

 

ビッグ馬鳥がガッツを発動している証拠である。

 

ネプギアのオーラは薄紫色だがオーラの色は個々で違う。

 

 

「ちょっとやり過ぎたかもね」

 

 

 アイエフがあごの冷や汗を拭いながら言う。

 

足止めとは言え攻撃を続けていく内にジワジワとビッグ馬鳥のHPが減少してしまい、ガッツが発動してしまったのだ。

 

 

「ヒヒヒヒン!」

 

「「「きゃああああ!」」」

 

 

 アイエフとファミ通とあんみつが馬鳥の体当たりに吹き飛ばされてしまう。

 

ガッツの発動したビッグ馬鳥の動きには流石のアイエフも反応しきれず、三人してガッツの乗ったクリティカルヒットを受けて400以上のダメージを受けて倒れてしまう。

 

HPがゼロになってしまったのだ。

 

パーティを組んでいるので仲間がいるから直ぐには消滅しないが、時間が経つかパーティが全滅すれば消滅してしまう。

 

 

「ぎあちゃん、早く~」

 

 

 コンパは三人を蘇生する準備をしながら、祈るようにネプギアに向かって叫ぶ。

 

プラエは、「もっと、もっと時間を遅くして!」と必死に超能力を使っているが、ビッグ馬鳥の動きはこれ以上遅くならないようだ。

 

 

 ビッグ馬鳥はイストワール達は無視して、ヘイトの高いネプギアを狙うべく後退すると加速を付けて跳躍してネプギアに体当たりを仕掛けてくる。

 

 

「ブヒーーーン」

 

 

 ビッグ馬鳥の姿がネプギアにどんどん迫って行く。

 

M.P.B.Lのエネルギー表示はまだ80%だ。

 

しかし、その時ネプギアの周囲の二進数の輪が収まった。

 

 

「シェアエネルギー効率化プログラム更新完了しました」

 

 

 同時にネプギアの頭にNギアからの機械音声が聞こえてくる。

 

 

「出来たっ!」

 

 

 ネプギアがそう言うとM.P.B.Lのエネルギーゲージが一瞬で上がる。

 

 

「エネルギー充電100%。撃てます」

 

 

 M.P.B.Lから機械音声が聞こえてくると同時にネプギアは、「照準セット!」と叫び迫りくるビッグ馬鳥の巨体にM.P.B.Lを向ける。

 

ネプギアは焦らずレティクルを動かしビッグ馬鳥を照準に捉える。

 

 

ピー!

 

 

 警告音と共に【Lock on】と赤い文字が点滅する。

 

ビッグ馬鳥の姿はもう目と鼻の先だ。

 

 

「シェアエネルギーキャノン発射!」

 

 

 ネプギアはM.P.B.Lのトリガーが引くと巨大なエネルギーが馬鳥を襲う。

 

 

「ヒーーー!!!!」

 

 

 馬鳥は突撃をビームの推力に押し返されながら地面叩きつけられると、28768ダメージを受けてHPゲージがゼロとなり消滅をする。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 安堵のため息を付き降下してくるネプギア。

 

 

「ネプギアお姉さん……無事で……よかった……」

 

 

 プラエはそう言うと、ガクリと膝をつく。

 

ネプギアは慌てて、「プラエちゃん!」とプラエを抱きかかえる。

 

 

「少し、超能力使い過ぎたみたい……」

 

 

 プラエの言葉に、「無理させちゃってゴメンね」とネプギアが謝りつつ、「今、スプラウトの魔法を使うから」と言って疲労回復の魔法のスプラウトでプラエを回復させる。

 

 

「まったく……何度も冷や冷やさせないでよ」

 

 

 コンパに蘇生してもらったアイエフはフラフラしながらも安堵した顔でネプギアに近づいてくる。

 

 

「すみません。何故かシェアエネルギーの溜まりが悪くて……」

 

 

 ネプギアは心配させたことを素直に謝ると、不思議そうな顔をしてM.P.B.Lに目を向ける。

 

 

「故障でもしたですかー?」

 

 

 コンパはそう言いながら、ファミ通とあんみつの蘇生を終えてネプギアに近づいて行く。

 

 

「そんな筈はないです。メンテナンスは欠かしてませんし」

 

 

 首を傾げるネプギア。

 

 

「でも、どうやって撃てるようにしたのですか?」

 

 

 あんみつが立ち上がりながらネプギアに質問する。

 

 

「研究中だったNG粒子によるシェアエネルギーの効率化プログラムを試したんです。成功してよかったです」

 

 

 ネプギアは彼女が発明したNG粒子をシェアエネルギーに融合することで効率化を行い、今までより少ないシェアエネルギーで変身や攻撃ができるようにしたのだ。

 

それにより、80%だったM.P.B.Lのシェアエネルギーキャノン用のエネルギーが一気に100%になったのだ。

 

 

「なるほどなるほど……流石はネプギア様」

 

 

 ファミ通は感心しながらメモを取ると、「ネギちゃんはやっぱり凄いね」とミクが柏手を打ちながら褒める。

 

 

「効率化して撃てるようにしたってことは、エネルギーの溜まりが悪かったことは変わりないのね」

 

 

 アイエフがネプギアにそう質問すると、ネプギアは、「はい……今も少し力が出ない感じです」少し辛そうに答える。

 

変身を維持するのにシェアエネルギーが足りないようだ。

 

 

「私の方でも状況は把握しています。今原因を究明します」

 

 

 イストワールはそう言いながら必死にキーボードを叩きホログラムで映る画面を確認している。

 

 

「とりあえず、帰りましょうー。帰ったら元気が出るように美味しいご飯作りますよ」

 

 

 コンパがにこやかにそう言うと、ネプギアは、「そうですね。私も疲れました」と言って変身を解く。

 

 

「さあ、帰りましょう」

 

 

イストワールがそう言うとネプギア達は帰路につく。

 

 

***

 

 

 パナンジャングルの入り口に置いたアイエフのバイクとコンパとファミ通の車に向かう最中、ネプギアが「いーすんさん、何かわかりましたか?」と先程からキーボードを叩くイストワールに声を掛ける。

 

 

「原因はわかりませんが、プラネテューヌのシェアが急激に落ちているようです」

 

 

 イストワールは現状で分かったことを手短にネプギアに伝える。

 

 

ピピピピ!

 

 

 そこに電話の着信音が鳴り、「私だわ」アイエフはそう言うとスマホを取り出して通話を始める。

 

 

「シェアが落ちた原因が気になるね」

 

 

 首を傾げるファミ通に、「それ、わかったかもしれないわ」と言ってアイエフは電話を切る。

 

 

「あいちゃん、何かわかったですか」

 

 

 コンパが首を傾げてアイエフに質問すると、「諜報部からの情報だと、全国配信したネプ子の動画が炎上しているそうよ」とアイエフが答える。

 

 

「ああっ……恐れていたことがこんなに早く……」

 

 

 頭を抱えるイストワール。

 

彼女の感じていた嫌な予感が的中したのだろう。

 

 

「お姉ちゃんの動画が炎上って、どうしてですか?」

 

 

 理由が分からないネプギアは心底不思議そうに小首を傾げる。

 

 

「何となくこうなる気はしていたんです……プラネタワーに急ぎましょう」

 

 

 イストワールがそう言うとネプギア達はパナンジャングルの入り口まで急いで駆けて行く。

 

 

 

***

 

 

 

 

 プラネタワーに戻って来たネプギア達。

 

疲労したプラエはあんみつに任せて、残りのメンバーは急いで女神の執務室に行ってドアを開ける。

 

すると、「もー! バカって言う方がバカなんだよー!」と、そこにはネプテューヌがパソコン画面に向かって大騒ぎをしていた。

 

 

「お姉ちゃん、そんなに怒ってどうしたの?」

 

 

 ネプテューヌのあまりの剣幕に驚くネプギア。

 

 

「あ、ネプギア。聞いて聞いて、このリンダって言うのがヒドイんだよ!」

 

 

 怒りながら、パソコンのモニターを指差すネプテューヌ。

 

そこには【ねぷねぷ】と【リンダ】という名前がインターネットの掲示板で激しい口論になっていた。

 

 

「リンダ? 聞いたことがあるような……」

 

 

 首を傾げるネプギア。

 

記憶を掘り起こしているようだが心当たりが見当たらないようだ。

 

 

「HN【ハンドルネーム】よ。それにリンダなんてよくある名前じゃないの」

 

 

 その横で冷静に分析するアイエフ。

 

 

「ところで、そのリンダさんはどうヒドイんですか~」

 

 

 コンパがネプテューヌに詳細な説明を求めるとネプテューヌは不機嫌そうに、「わたしの動画に対して【ぐーたらバカが女神するな】とか何回も言ってくるんだよー」と言って口を尖らせる。

 

 

「インターネットだからってそういう暴言はよくないよね」

 

 

 ネプギアは頷いてネプテューヌに同意すると、「私がリンダさんを説得してみるね」と言って自分のNギアを起動しようとする。

 

 

「待ってください。それはごく一部の方の意見です。それに惑わされて感情的に対応しては他の人へのイメージが悪くなります」

 

 

 そんなネプギアに対して、イストワールは慌てて割って入る。

 

 

「えー? いーすんはわたしの味方じゃないのー?」

 

 

 ネプテューヌは不満そうにイストワールを見る。

 

 

「ここは中立的な視点で冷静に対応すべきです」

 

 

 しかし、イストワールはピシャリと言い放つと、「そうだね。記事もそういう風に書かないとね」とファミ通もイストワールの意見に同意する。

 

 

「ネギちゃん、インターネットで迂闊な発言は禁物だよ。失敗だったと思って消しても魚拓取られて延々と晒されるんだから」

 

 

 ミクが真剣な顔で言う。

 

ミクの言う魚拓とはウェブ魚拓のことで、一般に【ページの魚拓を取る=ページ内容を保存する】という比喩的用法で使われる。

 

彼女もオンガクギョウ界でインターネットで失敗した人間を大勢見てきたのだろう。

 

 

「って言うか、アンタどんな動画投稿したのよ?」

 

 

 アイエフはネプテューヌの動画が気になったので本人に聞いてみる。

 

 

「わたしの魅力を120%引き出した超カッコ可愛い動画で、批判の隙なんて見当たらない一晩で五千兆クレジットは稼げそうな最強動画だよ」

 

 

 ネプテューヌは手に腰を当てて、ドヤ顔で答えると、「それは見てみたいですー」とコンパは素直に興味を示す。

 

 

「ネプ子の魅力どうこうは置いておいて、そんな都合の良い動画がある訳ないでしょ」

 

 

 しかし、アイエフは首を横に振って冷静に答える。

 

 

「えー! わたし、主人公で女神の無敵要素満載のチートキャラだよ。そのわたしが出した動画が稼げないわけないじゃん」

 

 

 納得行かないネプテューヌは手足をバタバタ動かしてアイエフに反論するが、アイエフは、「それが炎上してるのが現状なのよ。少し頭を冷やしなさい」と軽くあしらう。

 

 

「えー! 解せない!」

 

 

 ネプテューヌは不満顔で更に激しく手足をバタつかせる。

 

人を煽ることの多いネプテューヌだが意外と本人も直情的な面があり、以前にも子供であるピーシェと激しい言い争いになってケンカ別れしたこともあるぐらいだ。

 

この直情的な面がプラスに働けば仲間の危機を救ったりするが、マイナス方面に働くとこのような結果になる。

 

 

「そんなノリで反論してたら炎上もするわよ……」

 

 

 ふぅ……とため息を吐いて頭を抱えるアイエフ。

 

 

「ぜんぜん違うじゃん!」

 

「なによいきなり……」

 

 

 いきなりアイエフに向けて叫びだすネプテューヌ。

 

流石のアイエフもやや困惑顔だ。

 

 

「言ったよね!? すごい人気が集まるって……なのに、この結果は何!」

 

「私は何も言ってないし、ネプ子のノリに誰も彼もが付いて行ける訳ないでしょ。言うなれば当然の結果よ」

 

「当然? ひどいよ、なんで……わたしが可愛すぎるから? もういいよ、私、仕事辞める!」

 

 

 踵を返し駆けだすネプテューヌ。

 

だが、すぐさまアイエフに襟首を掴まれ、「ぐえっ!?」と首を圧迫されて変な声を出すネプテューヌ。

 

 

「ノリと勢いで逃げようとしてもそうはいかないわよ」

 

 

 アイエフは冷静にそう言い放つと、「あはは……バレた? でも、こんなハズじゃなかったんだよ~」ネプテューヌは右手で頭を掻きながら、イタズラのバレた子供のように言い訳をする。

 

 

「まあまあ。とりあえず、どんな動画か見てみましょうよ」

 

 

 ネプギアは両手の手のひらをアイエフに向けてアイエフを宥めるように言う。

 

 

「そうだね。まずはそこからだよね」

 

 

 ファミ通がそう言って同意すると、ネプギアはNギアを操作する。

 

 

「これかな?」

 

 

 ネプギアは目的の動画を見つけるとそれをクリックする。

 

一同は黙って動画を視聴する。

 

 

「うわ……これは……」

 

 

 アイエフは口を覆うと見てはいけないものを見てしまったような表情をする。

 

 

「思った以上の酷さです……」

 

 

 続けてイストワールが頭を抱えてうなだれる。

 

 

「お姉ちゃん……流石の私もこれは無いと思うよ……」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ねぷねぷ。メッです」ととコンパまでダメ出しをしてくる。

 

 

「えー!? なんでなんで!」

 

 

 ネプテューヌは誰か一人ぐらいは理解してくれると思ったが、全員にダメ出しされてしまったので不満そうに抗議する。

 

 

「仕事せずに遊んでる事をこれでもかってアピールしながら、一般の人に【庶民のみんなお仕事乙】は煽り過ぎじゃないかな? あと、他の国の女神様をディスるのはよくないね」

 

 

 ファミ通は自己分析したことを要約してネプテューヌに伝える。

 

 

「えー? だって、わたしがいつも言ってることだし、本当のことだよ。わたしは居るだけでプラネテューヌのみんなは信仰してくれるし、ノワールはボッチだし、ブランは自称知能派の売れない小説家で、ベールはオタク腐女子の廃ゲーマーじゃん」

 

 

 ネプテューヌはファミ通の分析に納得がいかないようで、早口にまくしたてて抗議をする。

 

 

「確かにいつもお姉ちゃんがみんなに言ってることだけど、インターネットは第三者の目に触れるんだよ」

 

 

 ネプギアはそんなネプテューヌを諭すように優しく言い聞かせる。

 

ネプテューヌと他の三国の女神、通称四女神と呼ばれる四人の女神は付き合いが長く、気心の知れた仲なので多少の悪口は言い合える関係だ。

 

だが、インターネットの世界でそれをするのは良くないよ、と言いたいのだ。

 

いくら仲が良くても大勢の前で悪口を言われて恥をかかされたら面白くないだろう。

 

 

「他の国の信者が自国の女神様を悪く言われたら怒るのは当然でしょ」

 

 

 続けてアイエフがお説教をするような少し厳しい口調で言う。

 

誰でも自分の好きなものを貶められたら怒るだろう。

 

 

「ネプテューヌさん、このゲイムギョウ界はプラネテューヌだけじゃないんですよ」

 

 

 イストワールが少し厳しい口調で言う。

 

確かにネプテューヌはプラネテューヌでは絶大な人気だが、ゲイムギョウ界には他の女神も居る。

 

他の女神を信仰する人の中には働かずに遊んでいるネプテューヌのノリを理解できなかった者がいるのだろう。

 

その上に自国の女神を公の場でバカにされたら怒るのも当然である。敬虔な信者であれば猶更だ。

 

そういう人達が集まった上にネプテューヌが口論していたリンダのような愉快犯も混じって動画が炎上したのだった。

 

 

「こんなことをしたら、他国からのシェアが落ちてしまいますよ」

 

 

 そう言いながらイストワールがガックリと肩を落とす。

 

この炎上により、プラネテューヌのシェアが下がったのは確かだった。

 

プラネテューヌ内の減少はそれ程ではないにしても、他三国の人々からのネプテューヌの好感度は暴落してしまっただろう。

 

シェアエネルギーを得られるのは自国の国民だけではない。

 

他国の人間でも好かれていればシェアエネルギーを得ることが出来る。

 

特に今は四女神が協力してゲイムギョウ界の危機を三度も乗り越えてきたので、他国の人々の好感度も高まっており、その影響は無視できないものになっていた。

 

それが無くなってしまったので、ネプギアのシェアエネルギーキャノンが発射できなかったのだ。

 

 

「人の目なんて気にしてたら自由に出来ないじゃん」

 

 

 みんなにダメ出しをされたネプテューヌは不貞腐れて口を尖らす。

 

 

「それはそれでお姉ちゃんらしいけど、何て言うか……」

 

 

 ネプギアはそんなネプテューヌの態度に困惑顔をして言葉を探してしまう。

 

確かにネプテューヌの天真爛漫ぶりはネプギアも好きだし憧れているが、それとこれとは話が別である。

 

ネプギアはネプテューヌに時と場所をわきまえてもらおうと言葉を探すが、なかなか良い言葉が思い付かずに困ってしまう。

 

 

「自由は結構。けど、公序良俗は守りなさい」

 

 

 困っているネプギアを見かねたアイエフがネプテューヌに向けてピシャリと言い放つ。

 

 

「こうきょーりょーじょく?! あいちゃんの変態!」

 

 

 ネプテューヌは微妙な聞き間違いをして、顔をしかめる。

 

 

「こ・う・じょ・りょ・う・ぞ・く! 変な聞き間違いしないでちょうだい!!」

 

 

 アイエフは顔を真っ赤にして一文字一文字噛み締めるように言う。

 

 

「なにそれ? おいしいの?」

 

 

 ネプテューヌは言葉の意味が理解できないようで、キョトンとした顔をして質問をする。

 

 

「えーと、常識的に考えてダメだと思うことはしない。ってことだよ」

 

 

 ネプギアがネプテューヌに丁寧に説明する。

 

 

「なーんだ。それならそう言えばいいじゃん。もう、あいちゃんの中二病は重症だなー」

 

 

 ネプテューヌはネプギアの説明で理解できたようだが、特に反省した様子はなく、アイエフは難しい言葉を使いたがる中二病だと茶化す。

 

 

「型破りこそ主人公の醍醐味! ゴーイングマイウェイ! 主人公っていうのは超一流のエンターティナー! 常識に囚われたエンターテインメントなんて面白くないよ!」

 

 

 更にネプテューヌは矢継ぎ早に身振り手振りで自己アピールしながら早口でまくしたてる。

 

自分の破天荒ぶりを自慢するその姿には反省や後悔の文字は無いようだった。

 

 

「はぁ……ネプテューヌさん、少し静かにしていて下さい。話が進みません」

 

 

 イストワールは疲れた溜息を吐いて、ネプテューヌにそう言った。

 

 

「やったんですよ! 必死に! その結果がこれなんですよ! 動画を撮って、シェアとお金をガッポリ稼ごうとしたのに、今はこうして炎上している。これ以上、何をどうしろって言うんです! 何と戦えって言うんですか!!」

 

 

 ネプテューヌはイストワールの懇願も聞かずに、何処かで砂漠を横断してそうな少年のような叫び声を上げる。

 

 

「もういいから黙ってなさい」

 

 

 アイエフはどこからともなくガムテープを取り出すと、ネプテューヌの口に張り付ける。

 

 

「むぐぐー」

 

 

 流石のネプテューヌも口を塞がれては何も言えないらしい。

 

 

「とりあえず、ここは私とアイエフさんに任せて下さい」

 

 

 イストワールは落ち着いてそう言うと、アイエフは頷いて、「ネプギアはネプ子を部屋に連れていきなさい」とネプギアに言う。

 

 

「あの……私も何かお手伝い……」

 

 

 しかし、ネプギア何か力になりたくて手伝いを申し出る。

 

 

「ネプギアさんは絶対にダメです」

 

 

 だが、手伝いを申し出たネプギアにイストワールは厳しく言い放つ。

 

 

「ええ、ネプ子に対してはネプギアに冷静になんて無理だし」

 

 

 アイエフもイストワールと同意見のようでネプギアに対して厳しく言う。

 

 

「そうなの? 姉思いとは聞いてるけど」

 

 

 アイエフの意見にファミ通が興味を示す。

 

 

「正直、ネプギアのネプ子に対しての擁護は第三者から見たら気持ち悪いレベルよ」

 

 

 アイエフがそう言うと、「き、気持ち悪い!? そんなに気持ち悪いですか私」とネプギアが【ガーン】とショックを受けてしまう。

 

尊敬するアイエフのあんまりの感想にネプギアは肩を落としてしまう。

 

 

「中立的な視点で冷静見るとそう見えるわ。それに前にネット辞典で編集合戦。あの時イストワール様にお説教を受けたでしょ?」

 

「あう……」

 

 

 アイエフの指摘に黙ってしまうネプギア。

 

ネプギアは以前にネット辞典のネプテューヌの項目がステマックスという人物に荒らされた際に彼と編集合戦を繰り広げたことがある。

 

その際にネプギアはかなり主観的にネプテューヌを擁護してしまい結果的にかなり荒れてしまった。

 

その為、イストワールからネット辞典は中立的な視点で書くものとお説教を受けている。

 

尚、編集合戦はイストワールの手筈でネプテューヌ項目の編集をロックするという形で決着が付いている。

 

この件はアイエフにも伝わっており、その話を聞いたアイエフも呆れかえってしまい、同時に常々から思っている少々度の過ぎたネプギアの姉びいきの歯止め役をしようと決めたのだ。

 

 

「ネプギアはネプ子が余計なことしないよう監視してなさい」

 

 

 しゅんと落ち込んでしまうネプギアにアイエフは少し心を痛めるが、心を鬼にして冷静に指示をする。

 

 

「そうした方がいいかもね。私がネプギア様の代わりに手伝えることがあったら手伝うから」

 

 

 ファミ通がそう言うとコンパも、「ご飯だったら,わたしが作ります~」ネプギアの代わりに手伝いをすることを申し出る。。

 

 

「……はい、わかりました。お姉ちゃんお部屋行こっか?」

 

 

 ネプギアは諦めて、イストワール達に全てを任すことにして、ネプテューヌの手を引いて自室に戻る。

 

 

「……ネギちゃん……」

 

 

 心配そうにその後ろ姿を見守るミクに、「今はそっとしておいてあげて下さい」とイストワールが言う。

 

 

***

 

 

 ネプギアはネプテューヌと一緒に自室に戻って来た。

 

 

「納得いかなーーーーーーーい」

 

 

 ネプテューヌはガムテープを口から剥がすとベッドに飛び込み仰向けになって手足をバタバタと動かして暴れる。

 

 

「主人公のわたしが作った動画ならみんなが称賛して、【わたしTUEEEE(ドヤッ)】でハッピーエンドで終わりでしょ?」

 

 

 アイエフ達の前では散々自己主張をしたネプテューヌだが、やはり炎上したのはショックだったようだ。

 

 

「まあまあ。お姉ちゃん落ち着いて」

 

 

 そんなネプテューヌを窘めるネプギア。

 

 

「落ち着いてなんかいられないよー! このままじゃ主人公の沽券に関わるよ! 汚名挽回! 名誉返上を希望するー!」

 

 

 ネプテューヌはそう言って立ち上がると右手の人差し指をビシッと立てるが、「それを言うなら、汚名返上と名誉挽回じゃないかな……」とネプギアにツッコミを受けてしまう。

 

 

「とーにーかーく! 主人公としてこのままじゃ終われないよ! 不死鳥のごとく蘇るフェニックス! 主人公とはそうあるべきなんだよー!」

 

 

 ネプテューヌは握り拳を掲げ力説するが、「不死鳥とフェニックスは同じ意味だよ」とネプギアにまたツッコミを受けてしまう。

 

 

「それに、今の私達にはどうすることもできないよ。今はいーすんさん達が炎上を治めてくれるのを待とう。ね?」

 

 

 ネプギアは子供に言い聞かせるようにネプテューヌに言うが、「それじゃあ、わたしの株が下がったまま! ストップ安の状態だよ~!」とネプテューヌは再びベッドに倒れ込みバタバタと暴れる。

 

 

「でも、どうすれば……?」

 

 

 ネプギアは首を傾げると、「ピンチをチャンスにしてこそ主人公! 死中に活あり! わたしの主人公補正でこの炎上を治めるんだよ!」ネプテューヌは再び立ち上がると、いつもの腰に手を当てるドヤ顔ポーズを決める。

 

 

「……他ならぬお姉ちゃんがこの炎上騒ぎを起こしてるんだけど……」

 

 

 ネプギアは至極当然のツッコミをする。

 

ここまで連続でツッコミをしたら疲れそうなものだが、ネプギアは慣れているようで特に疲れた様子は見せない。

 

 

「いや! これはマーケティング! 炎上商法だよ! この炎上を楽しんで勝利を掴んでこそ主人公!」

 

 

 ネプテューヌが、いけしゃあしゃあとそう言い放つと、ネプギアはあごに右手を当てて、「なるほど……炎上を楽しむ。言うなれば【炎ジョイ】だね!」と素直に感心して頷く。

 

 

「……」

 

 

 流石のネプテューヌも笑顔のままで固まってしまう。

 

 

「お姉ちゃん?」

 

 

 ネプギアがネプテューヌの様子を心配して声をかけると、ネプテューヌは苦笑いをしながら、「いやいや、なかなかネプギアらしい微妙なギアジャレだったよ」と褒めてるか褒めてないか微妙な言い回しをする。

 

 

「でも、炎上を治めるってどうするの?」

 

 

 ネプギアはネプテューヌが具体的になにをするかを質問すると、「それは、わたしの主人公補正で、あーんなことやこーんなことをすれば楽勝だよ!」とネプテューヌはあまり具体性の無い案を言う。

 

 

「うーーん……」

 

(お姉ちゃんの気持ちは分かるしお姉ちゃんのこと信じたいけど……やっぱりこういう時はいーすんさんに任せた方がいいよね)

 

 

 ネプギアは悩みに悩んだ末に、イストワール達を信じることにした。

 

 

「ダメだよ、お姉ちゃん。いーすんさん達を信じよう。きっとお姉ちゃんの誤解も解いてくれるよ」

 

 

 ネプギアは遊びに行きたい子供を宥めるように優しい声でネプテューヌにそう言うと、ネプテューヌは、「う~、だけど、ジッとしてるなんてわたしの性に合わないよ」とベッドの上で手足をジタバタさせる。

 

 

「それより、お姉ちゃん。どうしてあんな動画作ったの?」

 

 

 ネプギアは話題を変える為にネプテューヌに質問する。

 

 

「えー? そんなにダメだったかなー? ファンクラブの人は良いって言ってくれたよ」

 

 

 ネプテューヌが口を尖らせて反論すると、ネプギアは、「自由奔放なお姉ちゃんらしいと言えばそうだけど、少し調子に乗り過ぎだよ」と落ち着いてネプテューヌに言う。

 

 

「ノワールさんもブランさんもベールさんもお姉ちゃんの友達なんだから悪く言っちゃダメだよ」

 

 

 ネプギアは少し眉を吊り上げて怒ったような感じで言う。

 

顔は怒っているふうだが声色は優しく諭すようだった。

 

その様子は友達とケンカをした子供を叱る母親のようだ。

 

 

「友達だって! ノワールが聞いたら泣いて喜ぶんじゃないかな?」

 

 

 しかし、ネプテューヌはネプギアの真面目な雰囲気を無視して茶化すように言う。

 

ラステイションの女神であるノワールは自他共に厳しくプライドが高いので、やや人付き合いが苦手な一面がある。

 

その為、ネプテューヌにしょっちゅう【ぼっち】呼ばわりされている。

 

 

「お姉ちゃん! 私、真面目な話してるんだよ」

 

 

 ネプギアは声色を少し厳しくしてネプテューヌを注意する。

 

 

「うーん……ノリノリだったのは認めるけど……なにせ乗せるのが上手い信者が居てさ」

 

 

 流石のネプテューヌでも空気を読めたらしく、両手を後頭部で組むと素直に動画を撮った時の話を続ける。

 

 

「乗せるのが上手い人?」

 

 

 ネプギアはネプテューヌに質問すると、ネプテューヌは、「うん、ススキ……なんだっけ? とにかく、ガリガリで顔色が悪くて陰気そうな人」と数時間前の事だが名前を忘れてしまったらしく、何とか憶えている情報だけをネプギアに伝える。

 

 

「ガリガリで顔色が悪くて陰気そうな人? ……まさか……」

 

 

 ネプギアの脳裏に車の中から見たボークの姿がよぎる。

 

 

「お姉ちゃん、それってこんな人?」

 

 

 ネプギアはうろ覚えであるがボークの似顔絵を描く。

 

即興ではあるが特徴を捉えている絵で、これにネプテューヌはが頷けば、あの動画の黒幕はボークでほぼ間違いないだろう。

 

 

「そうそう! こんな感じ。ネプギア知り合い?」

 

 

 ネプテューヌはうんうんと頷きながらそう言う。

 

彼女自身はボークのことなどすっかり忘れているようだった。

 

 

「お姉ちゃん、忘れたの? この人この前の神次元のお祭りで私達の悪口を言ってた人だよ!」

 

 

 ネプギアがネプテューヌにそう教えると「な、なんだってーーー!」と、どこかのミステリー調査団のような叫びを上げてショックを受けるネプテューヌ。

 

しかし、直後に「そんなことあったっけ?」と首を傾げる。

 

 

「がくっ……」

 

 

 ネプギアはネプテューヌの忘れっぽさにガクリと肩を落とす。

 

 

「いやー、たこ焼きやわたがしの味は覚えてるんだけどさー」

 

 

 ネプテューヌは後頭部に右手を当てて頭をかきながらそう言う。

 

彼女は嫌なことや都合の悪いことはすぐに忘れてしまう。

 

かなり幸せな思考回路をしているが、それ故にイストワールがいくら叱っても仕事をしないのであろう。

 

 

「私、いーすんさんに言って来る」

 

 

 ネプギアはネプテューヌに詳しい説明をしてもよかったが、その時間も惜しいようで慌てて部屋を出ていく。

 

 

 

***

 

 

 

「なるほど……事情はわかりました」

 

 

 執務室に戻ったネプギアはイストワール達にボークのことを伝える。

 

 

「お姉ちゃんはボークに騙されただけなんです」

 

 

 必死に訴えるネプギアだが、「でも、妙ね……」とアイエフが腕を組んで首を傾げる。

 

 

「何がですが?」

 

 

 ネプギアがアイエフに質問すると、アイエフは、「ボークが否定的だったのはネプギア達女神候補生達で、ネプ子には好意的と言うか狂信してるレベルだった筈よ。それがネプ子を陥れるなんて変じゃない?」と答える。

 

 

「……そう言えばそうですね……」

 

 

 ネプギアもアイエフの言いたいことが理解できたようで、あごに右手の人差し指を当てて考え込んでしまう。

 

 

「あの人の考えでは、これが本当にウケると思ってるんじゃないかな?」

 

 

 そこにファミ通が自分なりの意見を言うと、イストワールも、「それはありえますね。かなり排他的な印象がありましたし」と言ってそれに同意する。

 

 

「そうね。とにかく【ネプギア達は偉くない。ネプ子とプル子は偉大だ。自分の言うことが正しい。黙って従え】って言うだけで他人の意見に耳を貸そうとしなかったしね」

 

 

 アイエフもファミ通の意見に同意してそう言うと、ファミ通は、「あの人は薄っぺらいエゴイズムに満ちた願望と誇大妄想の塊って感じがしたね」と辛辣な人物評を述べる。

 

 

「ん? まさか……」

 

 

 イストワールがパソコンの画面を真剣な顔で見る。

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

 アイエフはその様子を不思議に思い問いかける。

 

 

「先程から、ネプテューヌさんの動画を一方的に賛美する意見を多数書き込む人物がいるのです」

 

 

 アイエフはイストワールの横から画面を覗き込む。

 

 

「この、【プラネテューヌの大元帥】というHNの人です」

 

 

 イストワールが書き込みを指差すとアイエフが書き込みを読み始める。

 

 

「なになに? 【ネプテューヌ様を讃えるこの動画は停滞に苦しむゲイムギョウ界の民衆を解放し救済する、崇高な大義を実現するためのもの!】」

 

 

 そこまで読んだアイエフは露骨に顔をしかめる。

 

 

「【これを批判する者は結果としてゲイムギョウ界の滅亡を導く者と言わざるを得ません。私の言う所は誤っておりましょうか!?】」

 

 

 読み続けながらアイエフは頭痛がすると言わんがばかりに頭を抱える。

 

 

「【我々はこの動画を称賛し、ネプテューヌ様をゲイムギョウ界の唯一神として崇めれば世界は永遠の繁栄と平和を約束され、全てのギョウ界がネプテューヌ様にひれ伏すに違いないのです!!】」

 

 

 読み終えたアイエフは盛大な溜息を吐く。

 

他にも似たような書き込みが多数あったが、読む気にはならないようだ。

 

 

「盛大な美麗字句を連ねた自画自賛だね」

 

 

 ファミ通は既にこの書き込みの主がボークと特定しているようで、呆れながら皮肉を言う。

 

 

「アイエフさん諜報部にこの書き込みを元にボークの居場所を特定するよう指示して下さい」

 

「はい」

 

 

 イストワールが言うと同時にアイエフはスマートフォンを取り出して、同僚の諜報部員に連絡を取る。

 

 

「わー……批判が殺到してるね」

 

 

 ファミ通はボークの書き込みを見て予想通りと言わんがばかりに頷く。

 

 

「書き込みの様子が変わってきましたね……」

 

 

 イストワールが画面をスクロールさせながら書き込みの履歴を追う。

 

ファミ通は画面を見ながら、ボークの書き込みを読み上げる。

 

 

「何故ネプテューヌ様の足を引っ張る!?」

 

「何故ネプテューヌ様を称賛しない!?」

 

「役立たずのクズめ!」

 

 

 ファミ通はそこまで読んで呆れかえる。

 

ボークは自分に対する批判意見に耳を貸さず、暴言を書き込んでいた。

 

 

「……議論もせずに逆ギレとは見苦しいね」

 

 

 ファミ通はお手上げのポーズで【やれやれ】と言わんがばかりに首を左右に振る。

 

 

「まだ続きがありますね」

 

 

 イストワールがそう言うと今度はイストワールがボークの書き込みを読む。

 

 

「ゲイムギョウ界の住人くせにみんなネプテューヌ様の邪魔をしようとする……!」

 

「ネプテューヌ様が名声を得るのがそんなに妬ましいか!?」

 

 

 それを聞いたファミ通は、「今度は被害者面か……」と溜息を吐く。

 

 

「いつまでも傍観していられません。こうしてる間にもネプテューヌさんの評価は下がる一方です」

 

 

 イストワールはボークによる感情的な書き込みが間接的にネプテューヌの評価を貶めることを危惧していた。

 

 

「その心配はありません。今、諜報部員がボークを逮捕しました」

 

 

 アイエフはスマートフォンの通話を終えると、イストワールにそう伝える。

 

 

「流石はアイエフさん、仕事が早いですね」

 

 

「ネットカフェから【奇声を上げて騒いでいる客がいる】と連絡があったそうで、そこが調べているボークの居場所と一致したそうです」

 

 

 感心するイストワールにアイエフが事の経緯を説明する。

 

 

「それで、ボークは自分が犯人だって白状したの?」

 

「それが、諜報部員が乗り込んだ時には泡を吹いて卒倒していたらしいわ。医者に診せたところ、転換性ヒステリーだそうよ」

 

 

 ファミ通の質問に続けてアイエフが答える。

 

 

「あれだけ大見得を切っといて、中身は豆腐メンタルか……。こんな奴の為に苦労する身にもなって欲しいね」

 

 

 ファミ通は溜息を吐いてそう言う。

 

今自分達が炎上を収める為に帆走しているのが馬鹿馬鹿しくなってきたようだ。

 

 

「いつの時代も、主語と声が大きい無能なヤツが世の中を乱すのよね……」

 

 

 アイエフも溜息を吐いてファミ通に同意する。

 

 

「ボークがどうやって超次元に来たかなど疑問はありますが、今はこの炎上を収めましょう」

 

 

 イストワールはボークの件が一件落着したが、炎上自体はまだ続いているので、アイエフ達に再び協力を求める。

 

 

「みなさーん、サンドイッチを持って来ましたー。これを食べて頑張って下さい」

 

 

 そこにコンパがサンドイッチを持ってやってくる。

 

それぞれがサンドイッチを手に取り口に運ぶ。

 

 

「……」

 

 

 しかし、ネプギアは黙ってうつむいている。

 

 

「ネプギア様、どうしたの? 顔色が悪いよ」

 

 

 それに気付いたファミ通はネプギアを心配し声を掛ける。

 

 

「……どうしてこんなことをするんでしょう……お姉ちゃんが好きならもっと他に良い方法があったかもしれないのに……こんなことしたって誰も喜びません……」

 

 

 ネプギアは悲しそうな声でつぶやく。

 

純粋で真面目なネプギアにはボークのあまりに身勝手な行動が悲しくてしかたなかった。

 

 

「うーん……難しいね。言いたくはないけど、記者の中にもボークみたいな身勝手な奴はいるし」

 

 

 ファミ通はサンドイッチを食べ終わると、そう言う。

 

 

「ジャーナリズムを盾にプライバシーの侵害とか平気でする奴とか。一部の言動だけ切り抜いて報道して印象操作しようとする奴とか」

 

 

 記者歴の長いファミ通は色々なタイプの人間を見てきたので、純粋なネプギアに比べて、すれた意見を述べる。

 

 

「十人十色って言うけど、正にそれだね。だけど、こういう誰かの身勝手を止める為に、私達やネプギア様は行動してるんだと思うよ」

 

「そうよ、これぐらいでヘコんでどうするのよ」

 

 

 ファミ通の意見に同意するアイエフ。

 

 

「しかし、ネプギアさんには少し毒気が強すぎたようですね。コンパさん、ミクさん、ネプギアさんを部屋まで送ってあげて下さい」

 

 

「はいです~」

 

「わかりました。行こうネギちゃん」

 

 

 イストワールの指示にコンパとミクは頷いてネプギアの連れて部屋を出ていこうとする。

 

 

「さて、ネプ子のバカの為にもうひと頑張りしましょうか」

 

「そうですね」

 

 

 改めて作業に没頭するアイエフとイストワールとファミ通。

 

 

「みなさん、お姉ちゃんのことよろしくお願いします」

 

 

 ネプギアは部屋を出て行く前に、イストワール達に改めてお願いをしてから出る。

 

 

***

 

 

 

 ネプテューヌが動画を投稿してから三日が経った。

 

G.C.2019年6月17日 月曜日。

 

ここはプラネタワーの会議室。

 

そこにはネプギアにネプテューヌ、イストワールにアイエフにコンパ、それにファミ通が円卓に座っていた。

 

 

「ネプテューヌさんの動画の件は何とか丸く収めることが出来ました」

 

 

 まずはイストワールが口を開く。

 

 

「良かった。何とかなったんですね」

 

 

 安堵するネプギアにイストワールが、「ネプギアさんの作ったシェアエネルギー効率化プログラムを公表したおかげで、プラネテューヌ全体への風当たりは弱くなりました。そのお陰です」と少し嬉しそうに言う。

 

娘の自慢をしたい母親の心境なのだろう。

 

 

「ネプギア、またお手柄じゃない」

 

 

 アイエフがそう言ってネプギアを褒めると、「ギアちゃん偉いです~」とコンパも続いてネプギアを褒める。

 

 

「ウチの雑誌の号外で公表したから、ウチの売り上げが伸びて大感謝だよ」

 

 

 ファミ通が嬉しそうに言う。

 

この短期間で号外を出すのとが出来たのもファミ通の力だ。

 

すると、「えー? またネプギアばっかり褒められるパターン~? 扱い良すぎない」とネプテューヌは不満そうに口を尖らす。

 

 

「えっと……私に言われても」

 

 

 ネプギアは困り顔でたじろいてしまう。

 

 

「ネプ子も褒められるようなことすればいいのよ」

 

 

 アイエフが正論を返すが、「でも、そういうダメダメなところもねぷねぷのいいとろです」とコンパが言いながらネプテューヌを抱きしめる。

 

 

「コンパがそういうならそれも悪くないけどさ~」

 

 

 ネプテューヌはコンパの胸に顔をうずめて、その抱き心地で機嫌を直したようだった。

 

 

「ところで、ボークはどうなったの?」

 

 

 ファミ通が思い出したかのように手をポンと叩くとアイエフに尋ねる。

 

ボークは諜報部に拘束されたので、アイエフが知っているのだろうと思ったのだろう。

 

 

「ああ、アイツね……」

 

 

 アイエフは思い出すのも馬鹿馬鹿しいような顔つきで額に手を当てる。

 

 

「本当に困った人でした……」

 

 

 イストワールも、どっと疲れた顔をしてため息をつく。

 

アイエフとイストワールは拘束したボークに尋問をしたことを話し始める。

 

 

 ことは三日前にさかのぼる……。

 

場所はプラネタワー内の諜報部に割り当てられた六畳ほどの部屋の中。

 

椅子に座るボークにイストワールが厳しい視線を向けていた。

 

 

「あなたの名前はバントリュー・ボーク。神次元のプラネテューヌの在住者、間違いありませんね」

 

 

 イストワールは厳しい声色でボークに詰問する。

 

 

「ボークなど知りませんな。私はパープルハート様を信仰する敬虔な信者、ススキ=トキユキです。善良な一般市民に対してこのような無法な扱いはパープルハート様の意思に背くことになりますよ」

 

 

 ボークはイストワールの詰問に対して偽名を使って答える。

 

その余裕がある態度は本気で自分に非が無いと思っている様子だった。

 

 

「嘘は自分の首を絞めることになりますよ? 私はあなたのことを知っているんです」

 

 

 イストワールは偽名を使うボークに内心呆れながらも厳しい声で詰問を続ける。

 

 

「なにを根拠に? 証拠はあるのですか?」

 

 

 ボークはニヤニヤと笑いながら、余裕を持った態度を続ける。

 

その様子は自分の偽造工作に絶対の自信があるようだった。

 

 

「いいでしょう。アイエフさん入って来て下さい」

 

 

 イストワールがそう言うと部屋のドアが開きアイエフが入ってくる。

 

 

「久しぶりね。アイリスハートにあれだけこっぴどくやられたのに、まだ懲りてないの?」

 

 

 アイエフは呆れた口調で冷めた視線をボークに向ける。

 

 

「きっ、きき貴様はあの時の邪教徒!」

 

 

 ボークはアイエフの姿を見ると、驚きで目を大きく開き驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「フッ……もう尻尾を出したの? 知らぬ存ぜぬで押し通せば、アンタの間抜けな猿芝居もまかり通ったかも知れないのに」

 

 

 アイエフは鼻で笑うと、嘲笑してボークを挑発する。

 

 

「くっ……何故貴様がここに……」

 

 

 ボークは悔しそうにそう言って唇を噛むとアイエフを睨みつける。

 

アイエフの挑発が相当堪えたようだ。

 

 

「私は超次元のプラネテューヌの諜報部員なの。あの時はパープルシスター様達の護衛で神次元に居たのよ」

 

 

 アイエフは自分の挑発に予想通りどころか予想以上のリアクションを取るボークに、ほくそ笑みながらそう言うと、ボークは、「なっ、なななな……」と言いながらブルブルと体を震わせる。

 

 

「三人の女神様を貶めるような発言をするようネプテューヌさんを誘導したあなたの行為は不敬罪の幇助にあたります!」

 

 

 イストワールは自分の立場を理解したであろうボークに対して指差ししながら糾弾する。

 

 

「不敬罪? 心外ですね。この世界で敬う価値があるのはパープルハートであるネプテューヌ様とアイリスハートであるプルルート様のみ」

 

 

 ボークは開きなったように唇を歪めてそう言うと、アイエフは、「アンタの価値観なんて興味ないわ。大人しく服罪しなさい」とピシャリと言い放つ。

 

 

「私に罪を問うなど、アイリスハート様に背くことになりますよ? 私はアイリスハート様に洗礼の儀式を受けてスティグマータを刻んでいただいたのですから」

 

 

 ボークがそう言うと、アイエフは、「スティグマータですって!?」と驚いた声を上げる。

 

中二病の彼女は聖痕を意味するスティグマータの言葉に敏感に反応した。

 

 

「ふふっ……今お見せしましょう」

 

 

 ボークはニヤリと笑うと両手で服を掴んで胸元を見せる。

 

 

「……それがスティグマータ??」

 

 

 アイエフは拍子抜けしガッカリした表情で言う。

 

ボークの胸にはプルルートに鞭打ちされた跡が残っていた。

 

プルルートもかなりヒートアップしてたのか、それとも相手が男だから手加減しなかったのか、鞭の跡はクッキリと残っている。

 

 

「あの行為を洗礼の儀式って思えるなんて、どういう神経してるのよアンタは……」

 

 

 アイエフはプルルートの鞭打ちを思い出しながら、頭を抱えて呆れ果てた表情で言う。

 

 

「ああ……あの甘美な時を思い出すだけで体が熱くなる……」

 

 

 ボークはプルルートに鞭打ちされていた時のことを思い出したのか光悦した表情を浮かべ、口の端にはヨダレが垂れていた。

 

 

「……そう言えばアンタ、マゾに目覚めたんだっけ……」

 

 

 アイエフは冷めた視線をボークに向ける。

 

プルルートに鞭打ちされたのに信仰を止めるどころか更に熱烈に信仰する理由がよく理解できたようだ。

 

 

「あなたが自分の行為をどう思っていようと、この超次元では許し難い罪です。その罰は軽くはありませんよ」

 

 

 イストワールはこれ以上ボークに付き合っていられないと言わんがばかりに話を打ち切る。

 

 

「ふん! 邪教徒の言うことに従う道理は……はっ! そうか!」

 

 

 ボークは反抗的な態度を取りながら、突然なにか思い付いたように立ち上がる。

 

 

「なに!?」

 

 

 アイエフはボークが何か仕掛けてくるのかと思い身構える。

 

 

「全ては魔女の汚い罠だったのだな! 卑怯だぞ邪教徒め!!」

 

 

 ボークは興奮気味にイストワールとアイエフに罵声を浴びせる。

 

 

「何を言い出すの? 追い詰められて頭おかしくなった?」

 

 

 アイエフは興奮するボークに冷ややかな視線を向けながら、右手の人差し指をこめかみの近くに置いててくるくる回す。

 

くるくるぱーのジェスチャーだろう。

 

 

「とぼけるな! 私の作ったネプテューヌ様の傑作動画を貴様らが大量の工作員を使って情報操作して評価を貶めたのだろう! ネプテューヌ様と私が称賛される筈だった未来を捻じ曲げるとはどこまでも汚い!!」

 

 

 ボークはそう言うと、心底悔しそうに歯ぎしりをする。

 

 

「はぁ……よくもそこまで自分の都合の良いように想像の翼を広げられるわね」

 

 

 アイエフはそう言って、お手上げのポーズで首を左右に振りながら呆れ果てる。

 

 

「あなたの言うことはただの被害妄想です。あの動画に寄せられたコメントは世界中の人々の正直な意見です」

 

 

 イストワールは冷静にボークに説明するが、「黙れ黙れ黙れ! 私は騙されんぞ! そうやって情報操作を続けて、ネプテューヌ様が治めるべき世界を魔女の手に委ねるつもりだな!」ボークは聞く耳を持たず喚き散らす。

 

 

「しかし、私は負けない! 貴様等が想像を絶する卑怯な罠を仕掛けてこようが、怯むわけにはいかない、ネプテューヌ様とプルルート様が治める正しい世界が訪れるその日まで私は戦い続ける!」

 

 

 ボークは声高々に絶叫する。

 

その姿は自分が悪と戦う正義のヒーローだと陶酔しているようだった。

 

 

「どうします?」

 

 

 アイエフは頭を抱えながらイストワールに質問する。

 

その様子はボークの狂気ぶりに呆れ果てているようだった。

 

 

「とりあえず、身柄を神次元に引き渡しましょう。恐らく元職員の立場を悪用して無断でゲートをくぐったのでしょうし」

 

 

 イストワールがそう言うと、「精神病院の方がいいんじゃないですか?」とアイエフが皮肉っぽく言う。

 

 

「こちらで起こした事件もあらましも説明して、それも踏まえて神次元の司法で裁いてもらいましょう」

 

 

 イストワールがそう言うと、部屋のドアが開き屈強な二人組の男が入ってきてボークを連行する。

 

その間ボークは終始、イストワール達に対する暴言と自己陶酔の言葉を言い続けていた。

 

ボークはその日の内に神次元に引き渡され、その後裁判により禁固刑が言い渡された。

 

 

「……と、言うことです」

 

 

 話終えたイストワールは少し疲れた様子だった。

 

恐らくその時のことを思い出したのだろう。

 

 

「あんなのに騙されるなんて、ネプ子も焼きが回ったんじゃないの?」

 

 

 アイエフが呆れながらそう言うと、「えー? わたし、タバコなんて吸わないよー」とネプテューヌが言い返す。

 

どうやら、タバコを使った暴力行為と勘違いしたのだろう。

 

ちなみに焼きが回るとは頭の働きや腕前が落ちることを言う。

 

 

「とにかく、騒ぎは収めることができましたが、プラネテューヌのシェアは大きく下がってしまいました」

 

 

 イストワールは話を戻すとキーボードを叩く。

 

するとホログラムで折れ線グラフが出てくる。

 

 

「グラフがどんどん右上にあがって行くです~」

 

 

 コンパの言う通りモニターに映ったグラフは緩やかであるが右肩上がりを続けていた。

 

 

「あ、急に直角に落ちちゃいましたね」

 

 

 ネプギアが少しガッカリしたような口調で言う。

 

一時期は緩やかに右肩上がりを続けていたが、急に直角に落ち込んでいた。

 

 

「これがここ最近のプラネテューヌのシェアの変動です」

 

 

 イストワールがグラフの説明をすると、ファミ通が、「右上に上がって行ったのがネプギア様の効果で、直角に落ち込んだのがネプテューヌ様の炎上かな?」と分析をする。

 

 

「その通りです」

 

 

 イストワールはファミ通の分析が当たっていることを告げる。

 

緩やかに右肩上がりはファミ通によるネプギアの記事の効果で、直角に落ち込んだのがネプテューヌの動画の炎上のせいだった。

 

 

「ネプギアとファミ通の努力が台無しね」

 

 

 アイエフは素直な感想を言うと、「上手く行くと思ったんだよー。今は反省している」とネプテューヌが珍しく自分の非を認める。

 

この数日で珍しく怒ったコンパによるつきっきりで説教を受けて頭が冷えたらしい。

 

 

「今日、みなさんに集まっていただいたのはプラネテューヌのシェア回復の一大プロジェクトに協力して欲しいからです」

 

 

 イストワールがコンソールを叩くと画面が変わる。

 

 

「わかった! わたしの動画の第二段を出すんだね!」

 

 

 ネプテューヌはそう言うと、右手の指をパチンと鳴らし自信満々の顔でVサインを決めるが、「そんな訳ないでしょ!」とアイエフに即刻ダメ出しをされる。

 

 

「次こそは上手く行くと思うんだよ、時代の波が来てるね。乗るしかない、このビッグウェーブに! とにかく次は来る!」

 

 

 ネプテューヌは椅子の上に立つと、サタデーナイトフィーバーのポーズを決めてそう言うが、「アンタはギャンブル依存症か?」とアイエフに呆れられる。

 

 

「ギャンブルものの主人公は最初負けても最後には神懸かり的なイカサマとか強運で必ず勝って大儲けするって決まってるんだから」

 

 

 ネプテューヌはサムズアップを決めながらそう言うが、今度はネプギアが、「強運はともかくイカサマはダメなんじゃないかな……」と至極当然のことを言う

 

 

「ダメでも最後には黒服の優しいおじさんがめぐんでくれるよ」

 

 

 ネプテューヌは諦めずに説得を続けるが、「めぐんでもらう程落ちぶれている時点でアウトでしょ……」とアイエフが呆れながら言う。

 

 

「ねぷねぷ、全然反省してないです~」

 

 

 激しい身振り手振りで自己アピールするネプテューヌを見ながら、コンパはそう言って苦笑いをする。

 

 

「ネプテューヌさんの根拠のない自信に国の命運を掛ける訳にはいきません」

 

 

 今度はイストワールもダメ出しに加わる。

 

それと同時に新しいホログラムが映る。

 

 

「これはゲイムギョウ界の地図ですね」

 

 

 ネプギアが画面に映るものがゲイムギョウ界の地図だと気付く。

 

 

「何か印が付いているね。これはルウィーとラステイションとの国境付近かな?」

 

 

 地図には印が付いており、ファミ通はその場所を付け加えるように言う。

 

 

「この辺りで、一大プロジェクトをするようなことってありましたっけ?」

 

 

 ネプギアが小首を傾げながらそう言うと、コンパも不思議そうに、「森と山しかないですー」と言う。

 

ネプギアとコンパの言う通り、この場所はプラネテューヌ、ラステイション、ルウィーの三国の首都から離れており辺境と言っても差し支えなかった。

 

 

「ここを開拓してラステイションとルウィーとの交易都市に発展させるんです。しかもプラネテューヌ主導で」

 

 

 イストワールが全員の疑問に対して説明をすると、アイエフが腕組みしながら、「それは……確かに出来れば、プラネテューヌへの関心が高まってシェアが上がりそうですね。でも、そんな簡単に出来るんですか?」と言う。

 

アイエフはイストワールの案を理解したようであるが、そんな簡単に出来ることには思えなかった。

 

 

「そうだね。開拓の資金、人員は勿論だけど、プラネテューヌ主導ってそんな簡単に出来るの?」

 

 

 ファミ通もアイエフと同意見であるようだった。

 

 

「少なくともラステイションとルウィーは黙ってませんよ?」

 

 

 アイエフがファミ通に続けて言う。

 

アイエフの言う通り、他の国も自国の名を上げるチャンスを指を咥えて見ているとは思えなかった。

 

四つの国はゲイムギョウ界全体の危機には協力するものの基本的は競争相手なのだから。

 

更に都市を作るとなったら、ラステイションとルウィーは自国の領内に入るので否が応でも協力せざるを得ない。

 

それをプラネテューヌの主導でと、美味しいところを持っていかれたら堪らないだろう。

 

 

「私は出来ると思っています」

 

 

 しかし、イストワールは懸念を杞憂だと言わんがばかりに落ち着いた声で言うと、「それはそうだよねー。主人公のわたしがいるんだから! わたし、開拓も得意だよー!」とネプテューヌがいつものドヤ顔で名乗り出る。

 

 

「流石はお姉ちゃん」

 

 

 ネプギアはネプテューヌの自信満々な態度に両手を合わせて感心の声を上げる。

 

 

「まずは地面を平坦にして、国民に家を建てさせたりして繁栄させて……」

 

 

 ネプテューヌは人差し指を上げながら説明を始めると、ネプギアは、「うんうん」と嬉しそうに頷く。

 

ネプテューヌがやる気を出したのが嬉しいようだ。

 

 

「他の国には地震とか毒沼とか火山とか洪水とかして嫌がらしてー」

 

「え?」

 

 

 しかし、急にネプテューヌの話の雲行きが怪しくなって来て、ネプギアは思いっきり首を傾げてしまう。

 

 

「最終的にはハルマゲドンで他の国の国民を全員滅ぼせばいいんだよね」

 

 

 ネプテューヌがそう言って右手で小さくガッツポーズを決めるが、「ほ、滅ぼしちゃダメだよ!」とネプギアはネプテューヌを止めるように両手を横に振ってあわあわする。

 

 

「……こんな女神に主導を握らせてくれるとは思えないんですけど……」

 

 

 頭を抱えるアイエフ。

 

確かにハルマゲドンなどと言っている相手に任せてもらえるとは思えなかった。

 

 

「ネプテューヌさんは当てにしていません。今回は勿論ですが、ネプテューヌさんにこういう内政的な仕事は向いていませんから」

 

 

 イストワールが落ち着いてそう言うと、「えー……わたしの評価って武力マックスで他が壊滅的な武将のイメージ? 呂布とか張飛とかそんなポジション?」とネプテューヌが不満そうに口を尖らせる、

 

 

「そう言って差し支えありません」

 

「ひどっ!」

 

 

 イストワールの冷ややかな言葉にダメージを受けるネプテューヌ。

 

 

「この計画は、ネプギアさんの双肩に掛かっています」

 

 

 イストワールはそう言いながらネプギアを正面に見据えると、ネプギアは驚いた顔で、「私ですか!?」と言う。

 

話の中心が自分になり驚きを隠せないようだ。

 

 

「正確にはネプギアさんを含む女神候補生の皆さんです」

 

 イストワールがそう言うと、ネプギアは、「みんなと一緒に?」と首を傾げる。

 

イストワールがまだ詳細を説明していないこともあり、何をするのか想像すら出来ないようだ。

 

 

「ネプギアさん、私を信じてこの計画に協力してくれませんか?」

 

 

 しかし、イストワールはネプギアの困惑をよそに願い出る。

 

 

「………」

 

 

 黙って考えるネプギアに、「プラネテューヌの……いえ、ゲイムギョウ界の未来の為にネプギアさんの力を貸して下さい」とイストワールは頭を下げる。

 

続いてアイエフが、「大変そうだけど、ネプギア達なら出来るわ」と言うと、コンパも、「わたしも応援してるですー」言い、ファミ通も、「ネプギア様なら大丈夫! 私が保証するよ」と三人共ネプギアの背中を押してくれる。

 

ネプテューヌはファミ通を横目で見ながら「うーん……ファミ通の大丈夫って怪しくない? 天使の騎士がレベルアップの度に攻撃力が下がるとか」と言う。

 

ファミ通は右手で後頭部を掻きながら「ネプテューヌ様は辛辣だなー。昔のことじゃないですか」と恥ずかしそうに言う。

 

どうやらネプテューヌはファミ通の過去の失敗を知っているらしい。

 

 

 ネプテューヌはネプギアの方に目を向けると、「でもさ、ネプギアなら大丈夫だよ。わたしも信じてるから」とウインクしながら言う。

 

皆に背中を押されたネプギアは暫く考えた後に、「……わかりました。正直自信ないですけど、やってみます」と頷くと、イストワールは、「ありがとうございます」嬉しそうに頭を下げる。

 

 

「アイエフさん、コンパさん、ファミ通さん、みなさんにはネプギアさんを支えて欲しいのです。お願い出来ますか?」

 

 

 イストワールは三人を見渡しながらそう言うと、アイエフが、「わかりました」と頷き、コンパは、「任せて下さいー」と小さく両手でガッツポーズをし、ファミ通はあごを右手で掴みながら、「これは絶対良いネタになるよ。是非協力させて」と言う。

 

 

「では、詳細の説明をします」

 

 

 説明を開始しようとするイストワールに、「ちょっと! 主人公をスルーとかありえなくね?」とネプテューヌが不満そうに言う。

 

 

「ネプテューヌさんは、プラネタワーでゲームしたりお菓子食べたりお昼寝してて下さい」

 

 

 イストワールはネプテューヌの不満を気にも留めずに冷静にそう言うと、「よし! 任された!」とネプテューヌは力強くサムズアップする。

 

 

「……いいんですか?」

 

 

 怪訝な顔のアイエフに、「下手に関わると、本当にハルマゲドンのボタン押されそうですし」と声をひそめるイストワール。

 

ていのよい戦力外通告なのだが、自由に遊べることに気を取られたネプテューヌは気にも留めない。

 

 

「確かに……」

 

 

 頷いて納得するファミ通。

 

ファミ通もこの短い期間にネプテューヌの特色を分かってきたようだった。

 

その後、イストワールを中心に全員で計画の詳細を話し合った。

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