野生児少女は魔法剣を使いたい   作:とらいあ

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再開します。
書き溜めはありませんが、切りのいい所までの流れは構想済みです。


リヴァイアサンと戦術機

ジークヴルムとの決戦が終わってから数日後。

 

前線拠点近くの砂浜で一人、魔法少女姿のプレイヤーが黄昏ていました。

 

私はそんな彼女――いいえ、彼に近付きます。

 

「こんにちは、キョージュさん。ちょっとお時間よろしいですか?」

「…………ああ、なにかな。……君は……ライザくんと言うのか……」

 

考察クラン『ライブラリ』のクランリーダーであるキョージュさん。

 

現役の大学教授だというお爺さんは、声だけでも萎れているのが分かりました。

 

無理もありません。

 

なにせ突然、神代の遺産である宇宙船『リヴァイアサン』が現れて、けれど一向に中に入ることが出来ないのですから。

 

シャンフロの全ての謎を解き明かしたいライブラリにとっては、最上級のご馳走を並べられながら、おあずけを食らったようなもの。

 

彼の心中はお察しします。

 

ですが今回は、そこに付け込ませてもらいましょう。

 

「ライブラリは最近、『深淵のクターニッド』への挑戦権を売っていますよね」

「……ああ、そうだね。しかしもちろん安くはない――」

「『到達技能(プライムアーツ)』」

 

ピクリ、とキョージュさんが震えました。

 

「『独律独帆』『全霊捧武』『一刀英断』『絶対音感』『千篇挽歌』『威風憧童』」

「あっ……あっ……」

「なにも今すぐ参加させてとは言いません。いずれ、でいいんですよ。そうお約束していただくだけで、この情報は今すぐあなたのものです」

 

普段なら、キョージュさんもその明晰な頭脳で丁々発止の値段交渉を繰り広げるのでしょうが。

 

ただでさえ餓えているところに、さらにお預けをされるのはさぞ辛いでしょう。

 

「この宇宙船、いつになったら入れるんでしょうね?」

「ぐっ……だが、さすがにそれだけでは……せめてユニークシナリオの一つはないと」

 

はい、言質を取りました。

 

「この大剣、ユニークシナリオの報酬なんですよ。……交渉成立ですね」

 

リヴァイアサンの攻略が解禁されたのは翌日のことでした。

 

 

 

 

リヴァイアサンは全5層のエリアからなるダンジョンの一種です。

 

1層、2層は順当に探索と戦闘のエリアであり、特に言うことはありません。

 

ですが、ここ3層からは様子が変わります。

 

広大なエリアのあちこちに設置された、まるで遊園地のようなアトラクション。

 

スロットマシンやカードゲームといった、ギャンブルの数々。

 

3層「戯盤」はその煌びやかさで開拓者の足を止める、魔性のエリアなのです。

 

原作ではプレイヤーは全員、サンラクさん(原作主人公)たちが攻略法を示すまで先に進めませんでした。

 

ですが知ってさえいれば、少し面倒なだけの障害物。

 

足早に各地のアトラクションを確認し、私と相性が良さそうなものを見つけてリヴァイアサンの管理AIを呼び出します。

 

「……ねえ、『勇魚(イサナ)』」

『はい、なんでしょうか?』

「このアトラクション、()()()()()()()()()()()()?」

()()()()()。「勇魚」は開拓者の自由な発想と挑戦を応援します』

 

自分の強みを理解しているかどうか、それを試すのがこのエリアなのでした。

 

 

 

 

『本日のおすすめはこちらです! 容量無限のインベントリ、装着者自身も中に入れちゃう、その名も格納鍵インベントリア!』

「買った」

 

4層「機舎」はショッピングコーナーです。

 

リヴァイアサン内通貨『スコア』の大半を消費して、「あと7()()」と表示されていたインベントリアを購入。

 

さっそく装備した後は、人間用の武器コーナーを散策します。

 

遺機装(レガシーウェポン)と表示された剣の一つを手に取りました。

 

「こういう武器は自分でも作れるの?」

『現在は既製品のみ購入可能です。ですが、第5層の攻略後――アンバージャックパス5があれば新規に製造できますよ』

「んん、そうじゃなくて。普通の鍛冶師には作れない? 私たちみたいな開拓者じゃない、普通の人には」

 

英傑武器の神化には『古匠』であることが絶対条件。

 

そして古匠となるには神代の技術を学ぶ必要があります。

 

コーウェンとの約束を果たすために、ここでその道筋をつけることは必須でした。

 

『……なるほど、神代の技術を体得させたいのですね。優れた者ならという前提ですが、遺機装(レガシーウェポン)を分解することで仕組みを理解できるでしょう』

「ん、それなら大丈夫。コーウェンは天才だから」

『それは喜ばしいですね。ですが必要な装置――魔力運用ユニットは新規製造が必要ですよ。条件はお伝えした通りです』

「ん、さっさとクリアしてみせる」

『ところで、ライザ様は戦術機に興味はありませんか?』

「……くわしく」

 

それはそうと、新コンテンツはいつだってワクワクするものです。

 

ですから、ちょっと寄り道するのも仕方ないのです。

 

 

 

 

「始源獣……マナ粒子……刹那理論……」

『ライザ様? せっかくアンバージャックパス5を入手したのに、新規製造はよろしいのですか?』

「ちょっと待って、今いいところだから」

 

第5層「叡智」では神代の情報を閲覧することが可能です。

 

シャンフロの世界設定の根幹にかなり近い知識が開示される、それがこの層の特典。

 

つまり私にとって、原作知識を大々的に口にしても良くなるのです。

 

ですので第5層のクリア条件を満たした後も、こうして文章を読みふけっているのでした。

 

「また刹那理論……勇魚、本当にこの理論の中身は読めないの?」

『申し訳ありません、その情報は特に秘匿すべき対象として設定されています』

「……ならしょうがない。それに、少しは予想できたし」

『差し支えなければ、その予想をお聞きしてもよいでしょうか?』

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それが、原作でも不明な部分が多い刹那理論に対する、私なりの解釈でした。

 

強そうな者はより強く、弱そうな者はより弱くなる。

 

ワンオフ機の無双こそが正義で、量産型はすぐにただのやられ役に堕ちる。

 

神代の英雄、ウェザエモンが使っていた規格外戦術機が四聖獣を模しているのもそれが理由でしょう。

 

強い存在にあやかることで、その強さを借り受けているのです。

 

「大事なのは格好つけ。格好悪く勝ったとしても、後が続かない」

『……その予想の正誤をお答えすることはできません。ですが、神代の叡智を解き明かそうとする姿勢は好ましいとお伝えしておきます』

「ありがとう……ん? 待って、()()()()()()()()()()()()()()?」

 

以前に樹海でサンラクさんと出会った際、彼が連れていたヴォーパルバニーのエムルとも言葉を交わしています。

 

私に対する評価は『ヴォーパル魂はあまり高くない』という辛口なものでした。

 

ヴォーパル魂、未だ謎の多いマスクデータ。

 

格好つけて格上を倒すと高まるという、未知の概念。

 

「強いと思われるから強くなる。じゃあ、()()()()()()()()()()()()()も大事なはず」

 

これまでの実績(歴戦値)ではなくこれからへの期待、それがヴォーパル魂の求めるところなのだとしたら。

 

だとしたら、格上との戦いが重視されるのは当然に決まっています。

 

始源獣に比べれば、誰だって弱者なのですから。

 

「……むう」

 

ここにきて大きな課題が出てきてしまいました。

 

私のビルドは高ステータスによる雑な強さの押し付けです。

 

大量のバフによって格上との差を埋めることが根底にあり、埋まらないほどの差がある相手と戦うことは想定していません。

 

それが崩された時、「私は強い」と胸を張って言える理由はどこにあるのか。

 

……考えても答えは出そうにありません。

 

今は魔力運用ユニット、そして戦術機の製造に必要なスコアを稼ぎに行きましょう。

 

 

 

 

『Battle Ended. Winner : ライザ』

 

リヴァイアサン完全攻略後に解放される裏3層「戦盤」。

 

ここでは様々なモンスターと戦い、スコアを獲得することが出来ます。

 

最後の一体を斬り捨てると同時に勝利アナウンスが流れ、私は大きく息を吐きました。

 

試合を見ていた勇魚が話しかけてきます。

 

『ステップアップ・チャレンジの完全クリア、おめでとうございます。素晴らしいスコアです』

「戦術機なし用のチャレンジで、でしょ。ありの方は途中でやられちゃった」

『戦術機とは格上に対抗するための技術ですから。むしろ戦術機なしで後半まで進むことができたライザ様が優秀なのです』

「……優秀止まりで満足してたらだめ、どうせ目指すなら最強がいい」

 

褒められて悪い気はしませんが、ここで甘えてはいけません。

 

「それより、これで次のライセンスを買えるはず」

『はい、「長距離砲撃手」ライセンスですね。……あの、本当にまだ続けるのですか? すでに通常のタイプメンを何機もフルカスタムできるスコアが溜まっているのですが』

「もちろん。戦術機『青天の霹靂(イニシアチブ)』に妥協は許されない」

 

戦術機あり用のステップアップ・チャレンジに躓いたことで、現状の改善点が見えました。

 

私はバフを盛って戦うわけですが、バフには効果時間があります。

 

相手の強力な弾幕に攻めあぐねている内にバフが切れ、そのまま押し負けてしまったのです。

 

これを戦術機で補おうとすれば、対処法は二つ。

 

バフが切れている間の継戦能力を補うか、相手の強みを潰して切り込む隙を作り出すかです。

 

そして刹那理論によって中途半端は悪手だと分かっている以上、選ぶべきは後者です。

 

「飛行能力、機動力、防御力、攻撃力、ぜんぶ盛り込む。撃ち落とされる()()なんて笑えない」

 

強い存在にあやかることでその強さを借りる、それが刹那理論。

 

ならば私の戦術機、そのモチーフはドラゴン(ジークヴルム)をおいて他にありません。

 

 

 

 

『シャングリラ・フロンティアをプレイされている全てのプレイヤーの皆様にお知らせ致します』

『現時刻を持ちまして、ユニークモンスター「冥響のオルケストラ」の討伐を確認いたしました』

 

結局、戦術機が完成したのはリヴァイアサン解禁から一週間後、ライブラリによるオルケストラ攻略がなされた後のことでした。




・7個のインベントリア
本作では、サンラク一行より先にインベントリアを購入していたプレイヤーが数人いたものとする。
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