野生児少女は魔法剣を使いたい   作:とらいあ

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死神の真実とベヒーモスの真実

旧大陸、王都に戻ってきました。

 

「ふう……ありがとうございました、ディープスローターさん」

「まいどありぃ。今後ともご贔屓にねぇ」

 

座標移動門(テレポートゲート)】で新大陸から一気に王都まで転送してくれたディープスローターさんにお礼を言って別れます。

 

本当に便利ですね、【座標移動門(テレポートゲート)】。

 

一回数十万マーニという高額な料金設定も納得です。

 

「質問:この後はどこに寄るつもりですか?」

「お世話になってる鍛冶師の所に行きます。……前にも言った通り、普通の人の前では話し方を変えるので合わせてくださいね」

肯定(やれやれ):しょうがないですね。奇特な契約者(マスター)に付き合うのも征服人形の務めです」

 

 

 

 

「久しぶり、コーウェン。これ、お土産」

「おおおおお!? こ、これはまさか神代の武装、遺機装(レガシーウェポン)か! しかも完動品だと!? いくら探しても見つからなかったのに……やはり貴様は最高だ、ライザ! これの機構を解き明かせば、僕はさらなる高みへと登ることができる! ふはははは、人類は今、偉大なる一歩を踏み出したのだ!」

 

コーウェンは相変わらずです。

 

私がリヴァイアサンで購入した遺機装(レガシーウェポン)や魔力運用ユニットを前にして、笑いが止まらない様子。

 

英傑武器の神化のためにも彼には古匠になってもらう必要がありますが、今はそれよりも先にやって欲しいことがあります。

 

私はインベントリアから例のエクゾーディナリー蠍、『輪廻転晶』の素材を取り出しました。

 

「ん。調べるのはいいけど、その前にこれで防具を作って。近いうちに使うから」

「そんな、ここでおあずけだというのか!? 貴様なら今ある物で十分戦えるだろう、それよりもだな――」

「……ん!」

 

問答無用。

 

ドサドサドサ、と大量の素材をインベントリアから床へと取り出していきます。

 

戦術機の運用試験で乱獲した、帝晶双蠍の素材やツァーベリル帝宝晶。

 

山積みとなったそれらに目を白黒させるコーウェンに対し、私は言い放ちました。

 

「作ってくれたらこれ全部好きにしていい」

「任せておけ!」

 

そういうことになりました。

 

 

 

 

宿屋。

 

「セーブポイント更新……それじゃ、いってきます」

契約者(マスター)、ご武運を」

 

ミーヤに見守られながら、自分自身の黒い影へと手を伸ばします。

 

影に届いた手はそのままずぶずぶと沈み、やがて私の体全体が影の中に飲み込まれていきました。

 

レベル150になった直後に発生し、今まで攻略を後回しにしていたイベント。

 

神秘(アルカナム)「真実」イベントです。

 

 

 

 

影の中は白い空間になっていました。

 

何もない広い空間にぽつんと一人、見覚えのある黒い影が立っています。

 

黒一色ながら非常に見覚えのあるシルエットは、他でもない「ライザ」の姿をしていました。

 

お互いにバフを発動し、戦闘が始まります。

 

「今日は勝つ」

「……」

 

神秘はレベル150になると効果が反転し、この真実イベントをクリアするまで強制発動となります。

 

神秘「死神」の正位置効果はHP半減後の全ステータス1.5倍、デスペナルティ倍化。

 

それに対して逆位置効果はHP半減後の全ステータス0.5倍、デスペナルティ無効化。

 

逆位置の効果を受けながら、正位置――「プレイヤーの全盛期」を再現した敵に勝利しなければなりません。

 

元から難易度の高いイベントですが、死神はその中でも特に難しい部類でしょう。

 

なにせ死神の逆位置は、戦闘で役に立たないどころか足を引っ張るものだからです。

 

未来を犠牲にしてでも今この瞬間の勝利を望む正位置。

 

現在にさっさと見切りをつけて次に期待する逆位置。

 

プレイヤーたる二号人類は何度でもリスポーンしますが、だからといってゾンビアタックを繰り返すのは強さと言えるのか、そこにヴォーパル魂があるのか。

 

「真実」とはよく言ったものです。

 

「……」

「くっ、『大黒天化身』!」

 

既にステータスの差は歴然としています。

 

私のHPは順当に削られて5割を切り、敵のHPは自傷バフで一度全損した後『輪廻転勝』で全回復しています。

 

0.5倍と1.5倍、実に3倍ものステータス差がある戦い。

 

圧倒的に不利ですが、ここが踏ん張りどころです。

 

私の心の中の紳士も言っています。

 

『なに? 強さに差があり過ぎて心が折れそう?』

『ライザ、それは楽をしようとするからだよ』

『逆に考えるんだ。苦しくたっていいさ、そう考えるんだ』

 

逆境でも自分を強いと思える心がヴォーパル魂ならば、今はまさにヴォーパル魂を学ぶ絶好の機会でしょう。

 

敵の猛攻を必死に凌ぎながら観察し続け、やがて気付きました。

 

 

――戦い方が雑すぎる。

 

 

例えばDEX。

 

ゲームの設定画面で、目盛りが0から100まであるとしましょう。

 

DEXが低いと目盛りを10単位でしか変更できませんが、DEXが高いと1単位で変更できるようになります。

 

細かな調整による「ずらし」が高DEXの強みなのに、「私」が振るう剣の軌道はワンパターンなままでした。

 

例えばAGI。

 

AGIはキャラクターの行動速度を決めるパラメータで、速ければ速いほど有利です。

 

ですが、常に最高速度を出す必要はありません。

 

対人戦の上手い人なら緩急をつけたりフェイントを混ぜたりするでしょうに、「私」は速いだけで単調な動きでした。

 

例えばLUC。

 

私のLUCは1ですが、それは素の状態に限った話で、バフをかけた後はそれなりの値になります。

 

クリティカルを狙えば補正はちゃんと入るのです。

 

ですが「私」の刃筋は立っておらず、クリティカルを全く考慮していませんでした。

 

「これが、こんなのが全盛期……『大黒天化身』!」

「……」

「負けられない、『大黒天化身』! ……っ!」

 

とうとうHPが1割を切りました。仕方なく自傷して一度HPを0にし、『輪廻転勝』で全回復します。

 

ですが、敵はその瞬間を待っていたのでしょうか。

 

体がぐんと重くなりました。大上段に構えた敵の姿が目に映ります。

 

レベル150で覚えたスキル、『剛雄傑の栄光(ヘラクレス・レジェンド)巨神応報(アトラス)』。

 

敵を重力で拘束して一撃で屠る、ハーキュリー・スラッシュの進化先スキルです。

 

比べるのもおこがましいですが、あえて言うならばユニークモンスター『墓守のウェザエモン』の最終奥義「天晴」、その超劣化版でしょうか。

 

だから、対処法もほぼ同じでした。

 

――『大黒天化身』。

 

進化前の『倶利伽羅刹那』と同じく非常に素早い斬撃スキルを起動。

 

到達技能(プライムアーツ)『一刀英断』によるモーション強化も乗せて、真正面から迎え撃ちます。

 

強力ですが雑な振り下ろしと、非力ですが精緻な切り上げ、両者が衝突した結果は――()()()()()()()()()

 

剣筋を弾かれた「私」が硬直します。

 

その隙、約1秒。

 

ところで、この戦いで私が使い続けた『大黒天化身』には150スキルに相応しい特殊効果がありました。

 

それは、使用する度に必要リキャストが減少していくこと。

 

今の『大黒天化身』のリキャストタイムは0()()です。

 

『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』『大黒天化身』――!!

 

 

 

 

「や、やっとファステイアにつきました……もう間に合わないかと」

嘲笑(バカめ):こまめに復活地点(リスポーンポイント)を更新していれば余裕はありました。もしくはむざむざ「青」に倒されなければ」

「いきなりカウンター型になるとは思いませんよ……やっと戻ったらちょうど倒されちゃいましたし散々です」

 

真実イベントをクリアして、サブジョブにセットせずとも神秘「死神」の効果を得られるようになり。

 

コーウェンから新しい防具『流転聖人装(クリスタルパレス)』を受け取って。

 

道中のレイドモンスターにちょっかいを出しつつ、私たちは最初の街ファステイアにやってきました。

 

ゲーム開始地点のこの街には普段は初心者プレイヤーしかいませんが、今日は私のような高レベルプレイヤーたちが多く集まっています。

 

それもこれもサンラクさんが流した噂が目当てです。

 

 

当のサンラクさんは日が沈んだ頃に現れました。

 

「あれ、ライザ氏じゃん。久しぶり」

「お久しぶりです、サンラクさん。ジークヴルム戦以来ですね。【最大速度(スピードホルダー)】おめでとうございます」

「おお、どうも。そっちこそ【最大強化(ブーストホルダー)】ゲットしたじゃん。折った角の数も同じだし。それに……」

 

サンラクさんの視線を受けて、ミーヤが前に出ました。

 

挨拶(はじめまして):エルマ=318、ミーヤと申します。貴方がエルマ=317の契約者ですね、ミーヤがよろしく言っていたとお伝え願います」

「おお……うちのサイナとはえらい違いだな」

「ふふん、可愛いでしょう」

 

そうして雑談することしばし。

 

知り合いらしき剣士やキョージュさんとも話していたサンラクさんは、「銃のような何か」を取り出して構えました。

 

「お前の名前は「象牙」、あるいはバハムート三番艦……ベヒーモス!」

 

大地が揺れます。

 

山が姿を変えます。

 

ホログラム迷彩を解いて現れる、神代の遺産。

 

リヴァイアサンの姿が鯨なら、それの姿は象。

 

そうして、プレイヤーたちをゲーム開始当初から見守ってきた巨大宇宙船「ベヒーモス」は、その真実を露わにしたのでした。




・彷徨う大疫青
光刃で遠くからチクチクしていたら始源回帰でカウンターを食らった。報酬は末期ノ慰メ。
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