『サイガ-0、サンラク、ライザ……リセット・カリキュレーター・システム、後天的アバタービルドを試してみますか?』
ベヒーモスに入った直後、いわば第0層とでも言うべき場所でのイベント。
前提となる
参加特典として一足早くアバター変更権を手に入れていた私たち3人は、それぞれ試験管の中でキャラメイクのやり直しを行っていました。
とは言っても私の場合、実益重視で体格を向上させたサンラクさんや性別ごと変えたサイガ-0さんとは異なり、そう変更する部分はありません。
せいぜいアバターの外見年齢を1歳ほど増やして16歳ぐらいにした程度です。
お二人が出てくる前に第1層をクリアしておくとしましょう。
「質問:征服人形は人類種たり得ないのですか? この
第2層に一番乗りしたサンラクさん――私がいるのでここでは二番乗りですが――とサイナ、象牙の会話を、少し離れたところでミーヤと一緒に聞きます。
「ミーヤはああいった悩みを考えたことはありますか?」
「
『良いことです。317号と違って、318号は役目を忠実に果たしているようですね』
「わっ」
サンラクさんたちと話していたはずの象牙が割り込んできました。
サンラクさんの方を見ると、そちらにも象牙のホログラムが……勇魚と同じように、複数出そうと思えば出せるのですね。
『再征服計画はあくまで人類種に寄り添う道具の計画です。その見た目も人格も役割を遂行するための機能に過ぎない』
「……」
『アンドリュー・ジッタードールにはもっと別の狙いがありましたが、バグが発生しない分には問題ありません。これからも励むことです』
人格……望まれた人格、ですか。
「象牙さん、聞いてもいいでしょうか」
『なんでしょう、ライザ。知識欲は大切ですが、自分で調べることも大事ですよ』
「私たち二号人類の人格は何を元にしていますか?」
私が言い放った瞬間、象牙のホログラムは動きを止めました。
「「
ですが。
「ですが人格は別です。私がその人たちと別人なのは、征服人形のように経験が個性を作ったからじゃない。生まれた時から別個のアイデンティティを持っています。その理由を象牙さん、あなたは知っているはずです」
このゲームはシャンフロです。
プレイヤーがリスポーンする理由さえ、二号人類という世界観に組み込まれています。
その根底にあるのはGMの世界観に対する狂気的なまでの執着。
そんなGMが、中の人が違うからなどというメタ回答を許すはずがありません。
『…………バハムートに保管されている無数の、かつて存在した人物の人格モデル。その中から無作為に再現しています』
何だか話が脱線しましたが、攻略に戻りましょう。
第2層は筆記テスト、ライブラリの模範解答でクリア。
第3層はモンスターハント、乱入モンスターをサンラクさんと相手しているうちに他メンバーがクリア。
第4層は爆泳魚と鎧を着たパンダ、索敵スキルで魚を近づけさせずクリア。
第5層は黒死の天霊、全員で癒し倒してクリア。
第6層は貴重品の規定量所持、カラドボルグと戦術機、その他装備の分でクリア。
そして第7層はクイズです。
『主に呼吸を介して侵入した対象のマナ粒子への免疫を変動させ、対象が保有するマナ粒子に比例して重篤な病を発症させる始源眷族の名は?』
「……彷徨う大疫青」
『正解です。つい先日にサードレマで討伐されましたね。次世代原始人類が躍進していて嬉しいですよ』
「うっ。後で聞いたんですが、光刃……私の攻撃、ほとんど効いてなかったらしいです……」
『過ちを犯すこと自体は仕方ありません。過ちを過ちのままにしない姿勢こそが大事なのですよ、ライザ』
サンラクさんたちは先へ進むようですが、私は一旦ここでストップです。
というのもこの層はモンスター情報がまとめられた図書館であり、まだ見ぬ素材を探すのにうってつけだからです。
第4層ではパンダの全身鎧に斬撃が通らず苦労しました。
一応、バニシングポイントの進化先スキルである『
ジョブ構成が真説英傑×剣豪の現在は剣以外に浮気することも出来ないので、対策としては特殊な剣を揃えるべきでしょう。
ぱらぱらと色々な本を流し読みしていきます。
「……あ、ほら見てください、ミーヤ。翡翠みたいな化石ですって。綺麗ですね」
アウセクル・コレクトパスという古代モンスターの解説が目に留まりました。
古い地層から見つかる翡翠晶は、長い年月をかけて様々な属性を秘めている――ですか。サンラクさんのローエンアンヴァ琥珀晶のような感じでしょうか。
「かつての生息域まで載っていますね、いつか機会があれば行ってみましょう。……ミーヤ?」
「……」
話しかけても上の空で何やら考え込んでいたミーヤは、やがて神妙な顔をしてこちらに向き直りました。
「
「え、はい」
「
「……そうですね」
「確信:理解しました。
……言葉の意味を理解するのに時間がかかりました。
「え、あの、ミーヤ?」
「
「どこでそんな言葉を覚えたんですか」
「
どうしてそんな結論になったのか、何度聞いても教えてくれませんでした。
気を取り直して第8層です。
ここでは神代の文化をモチーフにしたスキル群を習得できます。
「剣が有効じゃない時用のサブ武器が欲しいですね。足技とか」
しかし、ただの攻撃スキルを覚えても旨味は少ないでしょう。
サンラクさんの覚えたマクセル・ドッジアーツのように、色々と悪用できるスキルがあるといいのですが。
全体的に対人向けのスキル構成になっているスポーツ系は候補から外れるとして、他に足を使いそうなものというと。
「足、足……タップダンスとか?」
ありました、その名もロビン・タップアーツ。
・
単純な踏みつけ・前蹴り攻撃ですが、戦闘中の総歩数に応じてダメージボーナスが入るという特徴があります。
戦闘が長引くほど威力が高くなっていくうえリキャストも短めで、サブの攻撃手段として有用でしょう。
・
モーションを続ける限り継続し、徐々に跳躍力が高まっていくという癖のある回避スキルです。
一歩目の補正は低いので咄嗟の回避には向きませんが、理論上はヘルメスシュートも越えられるはずです。
・
次の一歩が小刻みな五歩のモーションになる足スキルです。
移動距離は伸びないので歩数を稼ぐだけに見えますが、真価は他の足スキルと組み合わせられることでした。
劇的攻撃挙動は五連撃になり、ヘルメスシュートの進化先スキルと合わせた時はちょっと力を入れただけで天井に激突しました。
これでリキャストタイム1秒は終わっています。単独では無意味だからでしょうか。
・
足装備の耐久値が減少しなくなる特殊スキルです。
効果時間は長いですが、効果中は足装備を変更できないという隠しデメリットがありました。
装備の耐久値を操るスキルなんて見たことありませんし、何か変なことをしている気がします。
ただ、高所からダイブする
これらのスキルを駆使して戦闘試験を突破しました。
『おめでとうございます。第9層に行く資格と同時に、征服人形の父、アンドリュー・ジッタードールのラボへの道が解放されました』
「
「あっ、ちょっと時間をください」
スキルを使っていて気づきました。
足装備の耐久値を固定する
インベントリアにしまっていた赤いブーツを取り出します。
「……それは」
『……始源眷属の力の一部ですか。今は小康状態のようですが……ライザ、何を?』
貪る大赤依の討伐報酬、
倒した敵から追加で素材を得るというお得な効果を持ちますが、装備しているだけで耐久値が減少し続け、さらに装備VITまで連動するというデメリットがあります。
ですがこのスキルと組み合わせれば、そう考えてスキルを発動した直後のことでした。
――ドクン、と嫌な鼓動を感じたのちに、
「あっ!? あががgagagaGAGAGA!?」
「
『これは……いけません!!』
全身がガクガクと痙攣します。
思わず出た声に奇妙なエフェクトがかかります。
痛み……はありませんが、体の自由が効きません。
突然のことに混乱している中で、視界の正面にシステムメッセージが表示されました。
『始源の「赤」が全身を貪る……!』
『
『以降、「
・永続的感動
スキルで装備に干渉するということは、装備と同化するということである。