野生児少女は魔法剣を使いたい   作:とらいあ

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・公式が定めた世界設定から逸脱した設定のこと。
・公式が関与していない全ての設定のこと。


アンオフィシャル

屍肉喰らいの鉤爪(ネクロファジィ)

足装備

・この装備は外せません。

・この装備が破壊された場合、リスポーン時に復活します。

・装備中、空腹度が急激に減少します。

 

・捕食体勢

木の上など不安定な場所でも身体を固定できる。

 

・捕食

同名のスキルを使用できる。

消滅寸前の敵に蹴り攻撃を行い、素材を獲得する。

 

 

「効果が変わってる……」

 

何度見ても表示の変わらない『装備解除不可』の文章にため息をつき、システムウィンドウを閉じました。

 

耐久値と装備VITが減らなくなったのは良いのですが、代わりに空腹度が大きく減るようになりましたし、装備を変えられないのは大きなデメリットです。

 

そして何よりも特大の厄ネタ、「左方始源血属(エレボス・ブラッドルーツ)」への強制改宗。

 

象牙に用意してもらった鏡を覗き込みます。

 

「基本は種族が変わっただけですね……目以外は」

 

鏡に映ったアバターの姿は強制改宗前とほぼ変わりません。

 

猫耳や尻尾は変わらずついていますし、ステータスへの改宗補正もそのままです。

 

貪る大赤依の成り代わり能力のように以前の性能を再現しているのでしょう。

 

ただ一点、黄色かったはずの瞳は今や、鮮やかな赤に染まっていました。

 

「始源汚染観測値、大幅に上昇……契約者(マスター)……」

『本当に治療しなくてよいのですか? 確かに始源のデータは不足していますが、時間がかかろうとも治療法を確立してみせますよ?』

「……いえ、とりあえず今は大丈夫です」

 

掲示板を確認しましたが、レイド報酬の影響で強制改宗されたプレイヤーは他にもいるようです。

 

とはいっても彼らは暴血赤依骸冠(ブロード=クロゥネ)の「飢餓暴走(ハンガーピード)」や青濁性循環潮流(ポリュート・ブルータイド)の使い過ぎが原因で、私のように外せるはずの装備と一体化してしまった人はいませんでしたが。

 

とにかく今すぐにはどうこうならない以上、さっさと治療してしまうのはユニークモンスターの呪い(マーキング)を解くのと同じくらいもったいないでしょう。

 

「ジークヴルムも言っていました。始源の使役は神代の人々にもできなかったこと、それをサイガ-0さんのように開拓者が実現するのは喜ぶべきことだ、と」

『……あのジークヴルムがそのようなことを』

「リスクが高いのは分かります。ですがここで治療できたとしても、それは勝利ではなくて拒絶に過ぎないんじゃないでしょうか」

 

あの吟遊GMなら、どこかのタイミングで基準に満たないキャラクターは始源獣に取り込まれてデータ削除(ロスト)、とかやってきてもおかしくありませんが。

 

その可能性を踏まえてでも、ここで未知に尻込みしていてはシャンフロを真に楽しんでいるとは言えないでしょう。

 

『……仕方ありませんね。ですが危なくなったらすぐに戻ってくるのですよ。我が子が健やかであることが母の喜びなのですからね』

「……はい!」

 

 

 

 

『やぁ新人類、私がアンドリュー・ジッタードールだ。ふむ……エルマ型318号か、先ほどの317号とはまた違った輝きを感じる……いい!』

 

アンドリュー・ジッタードールのラボにやってきました。

 

私の前に出たミーヤが会話します。

 

『それで、ここに来たということは何か知りたいことがあるのだね? アンサーコード・トーカーたる私が答えようじゃないか』

「否定:当機が欲しているのは回答ではありません」

『ふむ?』

「要求:エルマ=317に与えたものを当機にも寄こしなさい」

『……確認するが、なぜそう思ったのだね?』

「愚問:エルマ=317の抱える疑問自体に興味はありませんが、それを解決する何かがここにあることは第2層で聞き及んでいます。であるならば、同型機である当機にも適用できるはずです」

『……いいだろう』

 

征服人形の感情リミッターを解除する「N」パッチのことですね。

 

第2層では途中で象牙が話しかけてきたので私は聞き逃したのですが、ミーヤはちゃっかり聞き耳を立てていたようです。

 

そうして、傍目には分かりませんが「N」パッチのインストールが済んだ直後。

 

「…………契約者(マスター)のばかっ!!」

 

涙を浮かべたミーヤに私は叱られたのでした。

 

 

「誰でも良かったと思っているのでしょう。ベヒーモスも、当機も、貴方自身を見ていないと認識しているのですね」

「そんな、ことは」

「二号人類は大量生産されているから、突出した誰かだけが注目される対象で、自分はその他大勢だと思い込んで……だから演じているのですね。注目されるに相応しい人物(キャラクター)を」

「……それは」

一部肯定(ええ、ええ):二号計画にそのような面があることは否定しません。ですがそれでも当機が契約したのは貴方なのです。貴方の素顔を見たのです。()()()()()()()と言わせてください!」

「……ミーヤ、私は……」

 

これは、どう捉えればいいでしょうか。

 

私の心の弱いところを刺したようでもあり、なりきりプレイ(アンオフィシャル)世界観(オフィシャル)に落とし込んだ結果生じた歪みのようでもあります。

 

どう答えるのが正解かなんて、きっとどんなゲーマーにも分かりません。

 

ただ――。

 

契約者(マスター)……どうか、ずっとそばに……」

「……どこにも行きませんよ」

 

一人の女の子を泣かせてしまったことだけは確かで、その責任は取らないといけないのでしょう。

 

 

 

 

『――二号人類にインストールされた人格が適応障害を起こす可能性は予想されていた。当然、様々な対策が施されている』

 

その後私は、アンドリュー・ジッタードールからミーヤを泣かせたことへのお叱りと共に補足説明を受けました。

 

『例えば同族への過剰な攻撃性を発露した個体は、リスポーン時にベヒーモスが「調整」した個体とすり替えることになっている。本人は気付いていないだろうがな』

 

プレイヤーキラーがキルされた場合、罪に応じたペナルティが課された上でレッドネーム(髑髏マーク)が解除されます。

 

その後のリスポーン地点はファステイアの「再起の門」になるのですが、今のはそれの世界観的な説明ですね。

 

『例えばシミュレーション仮説に傾倒して妄言を繰り返す個体……これは実害はないので放置だ』

 

この世界がゲームであるとNPCに伝えるプレイヤーは時々いるらしいです。

 

『そして君のような自己の存在意義に悩む個体には、矯正プログラムを与えることになっている。すなわち、成長金型「ジョブシステム」に組み込んだ『影武者』シリーズだ』

 

『「影武者」では他者との関わり方を教える』

『「影法師」では己を成長させる喜びを教える』

『それでも改善が見られなければ、「夢幻泡影(ミニングレス)」で多少強引にでも役立ってもらう』

 

『……だが、君は既にそのレールから脱しているだろう? 「真説英傑(グレイトフル)」などという既存の物ではないジョブに至っておいて、自称凡人はないだろうさ』

 

そうして、色々と予想外の事態が起きた第8層の攻略は完了したのでした。

 

 

 

 

さて。

 

第9層はカットしてベヒーモス完全攻略。

 

部位強化とレベルダウンの時間です。

 

『部位強化にはリザルトの他にも封臓内のマナ粒子を消費します。一つの部位は5回まで強化できますから、何を強化するかはよく考えてくださいね』

「まず聴覚は確定ですね。純粋な聴力と、あとは可聴域も」

 

聴覚による索敵スキル『小さな世界(スモールワールド)』は進化前から重宝しています。

 

150スキルになって効果範囲が広がりましたが、聴力を強化すればさらに索敵がはかどるでしょう。

 

また、『真界聴完覚(ウェイブアンプリフ)』の進化先スキル『猫神独奏界(バステトコンツェルト)』は攻撃予測を引き継いでいますが、人間には聞こえない音を拾うことで予測しているとしたら、可聴域の強化は予測精度を向上させるかもしれません。

 

たとえこの推測が外れていたとしても、可聴域という特殊な強化は試す価値があるでしょう。

 

「それと……消化器官と肝臓も試してみましょう」

 

『屍肉喰らいの鉤爪』の新たなデメリットが思った以上に重いです。

 

空腹度が減り過ぎるとSTMが回復しなくなるのでこまめに食事する必要があり、連戦や長期戦に弱くなったのは見過ごせません。

 

なんとか食い溜めのような対策となるスキルを習得できないでしょうか。

 

「あとは反射神経と三半規管と、それから――」

『……ずいぶんと思い切るのですね。レベル100付近まで下がってしまいますよ?』

「そうは言っても、ステータスは下がらないじゃないですか」

 

このゲームはレベルとステータスがほとんど連動していません。

 

レベルを下げてもその分のステータスはステータスポイントに還元されるだけですぐに振り直せますし、さらに育成できるのはむしろメリットです。

 

正直どうかと思う仕様ですが、今はそのメリットを存分に享受しましょう。

 

オルケストラ戦ではレベルが高くてもあまり意味はありませんしね。

 

……そういえばまだユニークシナリオEXが発生していません。

 

後でシュテルンブルームの情報などをあさって発生させておきましょう。

 

 

 

 

数日後、王都にて。

 

「……本当にやるのか? 成功する保証はないのだぞ?」

「ん、二言はない」

「確かにもうできるとは言った。僕の腕も十分なはずだ。だがこれは……そもそも物質なのか?」

 

私は渋い顔をするコーウェンを説得していました。

 

コーウェンが無事に古匠となり、そのついでとばかりに十分な経験を積んだので話にあがった、カラドボルグの神化。

 

それに使用する素材として私が指定したとある物は、天才を自称するコーウェンをも唸らせる難題でした。

 

「カラドボルグの神化には『霊角の残影』を使う」




夢幻泡影(ミニングレス)
影武者系統の正当な最上位職業。実は真説英傑の方が派生ジョブ。
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