野生児少女は魔法剣を使いたい   作:とらいあ

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へえ、あなたもライザって言うんだ

王都、コーウェンの鍛冶屋。

 

「ふはははは! くはははは! はーはっはっはっはっは!!」

 

ベヒーモスから戻った私たちを迎えたのはいつも以上の高笑いでした。

 

以前に見せた苦悩する姿は何だったのかと思うくらい、楽しくて仕方がないと全身で表現しています。

 

「……その調子だと、お土産は役に立った?」

「おお、戻ったか! もちろんだ、取っ掛かりさえあれば神代の技術だろうとこの僕に解き明かせないはずがない! 貴様の置いていった素材もこうして……そら!」

 

出かける前とは違って、何かを隠すように布がかけられていた作業台。

 

その布が取り払われると、神代技術の特徴である機械的な柄の剣が現れました。

 

それも二振り。

 

 

甦機装(リ・レガシーウェポン)祝砲の宝剣(クラッカーネイジ)】』

両手剣

この武器は通常の耐久値減少は反映されず、刀身を生成する度に耐久値が減少する。

日光もしくは月光を浴びることで耐久値を回復する。

 

・【弾け飛べ(Splash)

音声認証で刀身を射出する。射出と同時に刀身は粉砕される。

 

・【超過機構(イクシードチャージ)】:超排撃(リジェクト)

最低限の耐久値を残して全て消費し、【弾け飛べ】の強化版挙動を行う。

その後、【爆裂せよ(Explode)】の音声認証でそれらの破片が急激に成長して爆裂する。

 

 

甦機装(リ・レガシーウェポン)老山蠍尾剣(シャウラオレン)】』

両手剣

攻撃力、耐久値、魔法耐性が非常に高い。

 

・【超過機構(イクシードチャージ)】:賦活醒(リベレト)

水晶群老蠍の晶化液を装備者に注入し、特殊状態「水晶態」を付与する。

 

・特殊状態「水晶態」

リスポーンするまで解除されない。

VITへの極大補正と高い魔法耐性を得る。

欠損が再生する。

 

 

「こっちの宝剣にツァーベリル帝宝晶を使ったのは分かるけど。こっちは水晶群老蠍? まだ素材残ってたんだ?」

「主に晶化液がな。というか、あんな劇薬が普通の装備に使えるか。毒物は錬金術の領分だぞ」

「……使えないのにわたしから受け取ってたんだ。ふーん」

「……ま、まあそれはいいじゃないか。おかげで活用するのにちょうどいい分量を見極めることが出来たんだ。ほら、これらは貴様のだぞ」

「ん、そういうことにしとく」

 

甦機装を受け取ってインベントリアにしまうと、コーウェンがずいと身を乗り出しました。

 

「で、だ。……喜べ、ついにカラドボルグを先へと進める目途がついたぞ! 出してみろ!」

「……ん」

 

取り出したカラドボルグを作業台の上に置きます。

 

それをコーウェンは慎重な手つきで調べ始め、やがて大きく頷きました。

 

「やはりな、この剣は既に満足している」

「……満足?」

「剣自身が次に進むことを望んでいるんだ。英傑武器としての本懐を遂げたと言ってもいい」

「……本懐」

「前にも言ったが、英傑武器とは偉業あってこそ。この剣ならさしずめ、人類を脅かす巨大な敵を討つ、といったところか。心当たりがあるんじゃないか?」

「ん……ジークヴルムの角を折ったから、それかも」

「黄金の龍王を!? ……いやはや、それならまさに偉業だ。剣が満足するのも当然だろう」

 

ジークヴルムの角と言えば。

 

あの時、角破壊報酬として特殊なアイテムを手に入れていたのでした。

 

インベントリアから取り出し、カラドボルグの隣に置きます。

 

 

『霊角の残影』

アクセサリー

龍の角を折ったという偉業の証。物質よりも概念に近く、素材として利用するのは非常に難しい。

 

装備中の武器一つの性能を強化する。

この装備は他プレイヤー、及びNPCに譲渡不可。

 

 

「ん、こんなのを手に入れた」

「おお……凄まじい力を感じるな。まあ、今はそれよりもカラドボルグについてだ」

「……ん」

「剣を次へと進ませる、いわば「神化」には相応しい素材が必要だ。苦労して倒した強敵の素材はないか?」

 

相応しい素材。

 

目の前のアイテムの説明文を読み返します。

 

『素材として利用するのは非常に難しい』――つまり、不可能ではない。

 

……決めました。

 

「コーウェン、神化には『霊角の残影』を使って」

「……は?」

 

 

 

 

「……本当にやるのか? 成功する保証はないのだぞ?」

「ん、二言はない」

「確かにもうできるとは言った。僕の腕も十分なはずだ。だがこれは……そもそも物質なのか?」

 

『霊角の残影』。

 

原作では神匠でなければ扱えないとされている、ゲーム内で五つしか存在しないアイテムです。

 

サンラクさんが二つ、ヤシロバードさんが一つ、そして私が二つ。

 

その内の一つをここで使うことにしました。

 

そもそも神匠とは肩書きとしての側面が強いジョブです。

 

神匠だから神化できるのではなく、神化できた者を神匠と呼ぶのです。

 

ならば、神化に挑戦するコーウェンにだって扱える可能性はあるはずです。

 

「カラドボルグの神化には『霊角の残影』を使う。これは決定事項」

「……むむむ」

「この角は偉業の証明なの。コーウェンは言ったはず、カラドボルグはわたしの偉業に応えてくれるって。だったら、その証を使わないなんてありえない」

「それは……そうかもしれないが。くどいようだが、失敗するかもしれないんだぞ?」

「わたしは学んだ。できて当たり前のことは偉業じゃない。できないかもしれなくて、それでもやり遂げるから偉業なの」

「……」

「コーウェンは天才、それは良く知ってる……だからこそ天才を超えてほしい。あなたも英傑の一人だって証明してみせて」

 

成功する保証なんてありません。

 

神化に失敗すれば装備はロスト、カラドボルグとは永久にお別れです。

 

それでも、ここで安全策に逃げてしまったら失敗するよりも後悔することでしょう。

 

言いたいことを言い切り、しばし無言の時間が流れました。

 

「…………ふ」

 

笑い声。

 

「ふはははは、ふーっははははは! そこまで言われては仕方ないな! この僕が天才、いや、超天才であると世界に証明してみせようじゃないか! あーっははははははは!!」

 

その高笑いは、もしかしたら幾分かはやけっぱちも含まれていたかもしれません。

 

ですが不思議と、彼が失敗する姿は想像できませんでした。

 

 

 

 

「それはそうとつなぎになる素材が必要だぞ」

「じゃあこれ、輪廻転晶の創生核で」

 

 

 

 

結果が出るまでは水晶巣崖で過ごしていました。

 

帝晶双蠍にも通用した先制爆撃で水晶群蠍を一網打尽にしたり。

 

スキル剪定で強力なスキルを覚えたり、レベルアップで明らかな厄ネタが生えてきたり。

 

大量採掘を繰り返して上等そうなローエンアンヴァ琥珀晶を手に入れたり。

 

世間を騒がせたサンラクさんのオルケストラ攻略配信を見返したり。

 

サイナの後塵を拝したことで不機嫌なミーヤをなだめるためにデートしたり。

 

そんな日々を繰り返し、やがて運命の日がやってきました。

 

 

 

 

神化に成功したことはすぐに分かりました。

 

コーウェンの浮かれ切った表情が物語っていますし、何よりも作業台の上に剣が見えています。

 

その剣は今までの集大成でした。

 

水晶剣だった時は、その刀身は青みがかった水晶でした。

 

帝晶剣だった時は、昼は碧く、夜は赤く輝く水晶でした。

 

その剣は今や無色透明の水晶であり、内部に黄金の角を封じていました。

 

 

龍晶剣(ノトーリアス)カラドボルグ』

両手剣

蠍狩りも龍狩りも、仲間と共にやり遂げた。ならばカラドボルグは仲間を贈ろう。

 

・我が半身

この装備の耐久値が0になった時、MPを消費して耐久値を回復する。

この装備が破壊された時、プレイヤーの体力を0にする。

この装備はプレイヤーの体力が0になった時に破壊され、体力が1以上になった時に復活する。

この装備は他プレイヤー、及びNPCに譲渡不可。

 

・巨獣を屠る剣

一定サイズ以上のモンスターに対するダメージ量を強化する。

 

魔力蓄積(マナチャージ)

同名の魔法を使用できる。

装備者のMPを消費し、魔力を300まで蓄積できる。

また、日光または月光を浴びることで魔力を蓄積する。

蓄積した魔力は装備者が消費するMPを肩代わりする。

 

光刃(プリズムエッジ)

同名の魔法を使用できる。

MPを任意で消費し、魔力刃で射程を強化する。消費量に応じて耐久値が減少する。

 

・破天煌

魔力を消滅させる。

 

双生輪廻(ディオスクロイド)

同名の魔法を使用できる。

新たな命を創造する。

 

 

「これが……神化したカラドボルグ」

「ああ、証明は為された。これこそが貴様の、貴様だけの剣だ」

「祝福:当機にも分かります。これが契約者の象徴なのですね」

 

シャンフロでこう表現するのは本来微妙なのですが、とても神々しい剣でした。

 

普段は無言に徹しているミーヤも思わずといった様子で言葉を零しています。

 

その効果は以前から引き継いだ物と新しく増えた物が混在していますが、私が注目したのは一番下の効果でした。

 

「魔法が増えてる、なにこれ? ……攻撃魔法じゃなさそうだし試してもいい?」

「構わんぞ。僕もどんな力か見てみたい」

「ん。――【双生輪廻(ディオスクロイド)】」

 

そうして私は、長い詠唱を行って魔法を発動しました。

 

目の前でポリゴンが組み上がり、人影が浮かび上がります。

 

――それは、非常に見覚えのある姿でした。

 

16歳ほどの日に焼けた褐色肌の少女。

 

猫耳と尻尾を生やし、猫を思わせる瞳は鮮やかな赤。

 

赤いブーツをはじめとした私と全く同じ防具に身を包み。

 

黄金の角を封じた水晶の剣を手に。

 

私のアバター『ライザ』と瓜二つの人物が、満面の笑顔と共に口を開きました。

 

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