野生児少女は魔法剣を使いたい   作:とらいあ

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隠し職業はまだ弱いがいずれ強くなる

予想外に早く終わりましたが、無事に呪いを手に入れることができました。

 

リスポーン先である穀倉都市テンバートの宿屋で、ステータス画面を開きます。

 

 

・ジークヴルムの呪い(マーキング)

天覇のジークヴルムは英傑をこそ好む。人の可能性を示した者に、ジークヴルムは期待を込めて試練を課す。

『ジークヴルムの呪いが付与された部位は装備品を装備することができません』

『ジークヴルムの呪いを持つキャラクター以下のレベルのモンスターは逃亡します』

『ジークヴルムの呪いを持つキャラクターは他の呪いに対して強い抵抗を得ます』

『ジークヴルムの呪いを持つキャラクターはNPCとの会話で補正がかかります』

 

想像通り、原作で描写されたリュカオーンの呪いと同じ効果ですね。

 

呪いには複数の効果がありますが、大事なのは2番目です。

 

格下モンスターがプレイヤーから逃走する、この効果がある限りプレイヤーは強制的に強敵とだけ戦うことになります。

 

格上殺しを目標にしている私にとって、まさに必要なものです。

 

このゲームはすべての行動が覚えられるスキルに影響しますからね。

 

余計なことをしていると、まとまりのない性能のキャラクターになってしまいます。

 

宿屋の鏡の前に立ち、鼻を横切る傷跡のような模様をなぞります。

 

呪いを付与された部位は頭ですか。

 

部位次第では防御力に困る所でしたが、頭はかなり良い結果ですね。

 

原作でも女性キャラクターが呪いを受けた場所は同じく頭でしたし、アバターの性別が考慮されていたりするんでしょうか。

 

それはともかく。

 

今回の挑戦では他にも得るものがありました。

 

覚えている回避スキルが少なすぎると発覚したことです。

 

振り下ろされる腕を避ける際に、全ての回避スキルがリキャストタイム中だったせいで一か八かの選択を迫られました。

 

回避スキルはゲーム素人な私の命綱なのですから、これからは常に最低一つは使える状況を維持しておかないといけません。

 

攻撃スキルも同様です。

 

最後の最後、高い位置にある逆鱗を攻撃するスキルがなかったせいで、剣を投げるはめになってしまいました。

 

さすがにあれを何度もできる気はしません。

 

斬撃を飛ばすスキルとか、空中を走るスキルとか、戦いの選択肢を増やすこともこれからは考えていかないといけないでしょうね。

 

まずはこの街で売っているスキル秘伝書を覗いてきましょうか。

 

 

 

 

『ムーンジャンパー』『アクセル』『ダッシュスラッシュ』。

 

中盤の街だけあって、売り出されているスキル秘伝書は中々の品揃えでした。

 

山登りでのドロップ品を売り払ったお金で買い漁り、ほくほく顔でお店を後にします。

 

少し進んだところで、路地の陰から怪しげな男に声をかけられました。

 

「……おい、そこのお前」

「ん、わたし?」

「お前のことは聞いているぞ、失礼なガキだとな」

「……サードレマでの話でも聞いたの? それで、何の用?」

 

プレイヤーではありませんね、サードレマで商人たちを怒らせ続けた件のイベントでしょうか。

 

しかし、どうしてこのタイミングで現れたのでしょう。

 

「逸るな、お前が本心じゃなかったことくらいお見通しだ。……俺が言いたいのは、お前の大根役者ぶりが気にいらんということだ」

「……んん、つまり?」

「こっちに来い、まともな演技の仕方を教えてやる」

 

男が背を向けて路地の向こうへと歩き出します。

 

すると視界の中央に見慣れたウィンドウが浮かび上がりました。

 

『隠し職業クエスト「演技指導」を開始しますか? はい・いいえ』

 

これは……ロマンの予感がします!

 

シャンフロは最初から公開されている職業ばかりではありません。

 

誰かが偶然に転職条件を満たして初めて明らかになる、そんな隠し職業が多く存在するのです。

 

こんなの「はい」一択です。

 

ボタンを押して男の後を追いかけました。

 

 

「いいか、まずは目を見て話せ! よそ見など論外だ!」

「……ん!」

 

「声が小さい! 相手に聞こえるよう喋らんか!」

「……んん!」

 

「秘めるべき言葉もある。思ったはしから口に出すのを素直とは言わん!」

「……んんんんん!」

 

「ふん、まあこんなところか。これで少しはましになるだろう」

「……お礼は言っとく。ありがとう」

 

『隠し職業クエスト「演技指導」をクリアしました』

『ジョブチェンジ! メイン職業が「影武者」に変更されました』

『職業「剣士」をサブ職業に変更しますか? はい・いいえ』

 

 

おや、少し会話しただけであっさり終わってしまいました。

 

しかし影武者ですか。

 

そんな職業、原作では出てこなかったはずです。

 

もちろん原作で描写されたもの以外にもジョブはあるのでしょうが。

 

ブラウザを開いて調べましたが、少なくとも攻略Wikiには載っていません。

 

ひょっとして私が初めてなんでしょうか。

 

一体どんなジョブなんでしょう、早く検証したいですね。

 

「……うん? なんだお前、よく見たら既にいっぱしの面してるじゃないか」

「ん?」

「これなら本職にも劣らんだろうよ、さっさとギルドに寄っておけ。じゃあな」

 

一方的に話すだけ話して男は去っていきました。

 

いや、結局あなたは誰だったんですか。

 

『ジョブチェンジ! メイン職業が「影法師」に変更されました』

 

急展開過ぎて頭が追い付きません。

 

 

 

 

結論から言うと、隠し職業「影武者」とその上位職業「影法師」は強いジョブではありませんでした。

 

これらのジョブに戦闘適性は全くありません。

 

かといって生産職でもない、ほとんどの人にとっては価値のないジョブでしょう。

 

ですが私にとってはとても価値がありました。

 

ひとつお見せしましょう。

 

「わたしはライザ、森育ちの開拓者。前に森で見たかっこいい剣士のお兄さんに憧れて、わたしも剣士になりたいと思って出てきたの。この前はおっきなドラゴンと戦って一太刀入れてみせたよ」

 

どうです、この長台詞。

 

実はこれ、私が考えて喋ってるわけじゃありません。

 

――演じる役を文章で設定するスキル『マイロール』。

 

――役の台詞を目の前に表示するスキル『ユアセレクト』。

 

転職して覚えたこの2つのスキルが、私のロールプレイの質を上げたのです。

 

……それだけのためにメインジョブを潰すのはもったいない、そう思いますか?

 

確かに強さという意味ではそうでしょう。

 

もしかしたら私もいずれはこのジョブに見切りをつけていたかもしれません。

 

しかし結局、そうなることはありませんでした。これについては後々お話しします。

 

それに上位の「影法師」ではデメリットが軽減されているのです。

 

メインジョブと比べてサブジョブは、上位職業に転職できないなどの制限があり、弱い職業をメインジョブにすることは推奨されません。

 

しかし「影法師」はなんと、サブジョブもメインジョブとして扱うことができるのです。

 

これによって実質メインジョブ二つ持ちというユニークな性能のキャラクターが出来上がります。

 

今の私はメインジョブ「影法師」、サブジョブ「剣豪」です。

 

メインジョブ扱いの剣士を、剣士ギルドで上位職業へ転職させてきました。

 

ジークヴルムに会うための山登り中に条件を満たしていたようですね。

 

あの男は転職NPCだったのでしょう。

 

シャンフロのことですから、彼にもバックボーンがありそうですが……また会うことになるかは分かりませんね。

 

それにしても、まさか私のなりきりプレイが隠し職業に繋がるなんて。

 

これだからシャンフロは面白いんです。

 

さあ、まだ見ぬ未知を求めて冒険を再開しましょう!

 

 

 

 

「この剣を見たまえ。一見ボロボロだが、天才の僕の目は誤魔化せない。僕には分かる、この剣はすさまじい力を秘めていると!」

 

王都の片隅にある、とある鍛冶屋。

 

そこで出てきた、英傑武器(グレイトフル)と呼ばれる特殊な武器の一本。

 

この武器との出会いが、私のシャンフロプレイのあり方を決定付けたのですが。

 

その時はまだ、そんなことになるとは夢にも思っていませんでした。




・隠し職業「影武者」
条件1:ロールプレイによってNPCの好感度を一定量低下させる。
条件2:ロールプレイによってNPCの好感度を一定量上昇させる。

ロールプレイを補助してくれる、なりきり勢の希望の星。
ゲーム的には、世界観に向き合う意欲だけはあるプレイヤーへの救済措置。
ロールプレイが重要なシャンフロでは意外と活躍するが、戦闘適性などは皆無であり、メインジョブが潰れるデメリットは大きい。

・隠し上位職業「影法師」
条件:サブジョブにセットしている職業の転職条件を満たす。

サブジョブをメインジョブ扱いさせる効果を持つ。
実質、ロールプレイ補助の代償がメインジョブからサブジョブに軽減された。
それ以外は変わらないので、ロールプレイに慣れたら別の職業にした方が強い。
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