野生児少女は魔法剣を使いたい   作:とらいあ

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いったんここまで。感想お待ちしてます。


天才鍛冶師育成計画(難易度ナイトメア)

ジークヴルムと戦ってからそこそこの月日が経ちました。

 

その間の私が何をしていたかと言うと。

 

まず、港町フィフティシアに到着した後は王都に向かいました。

 

道中のエリアボスの倒し方を探るために死亡しては再挑戦するゾンビアタックを繰り返したり、レアエネミーのイーティバル・ペガサスに武器を壊されかけたりしました。

 

そうしてたどり着いた王都で、そろそろ装備を更新しようと鍛冶師を探したのですが。

 

出会った鍛冶師が、それはもう強烈な人物で、唖然としたのを覚えています。

 

ちょうど今から、彼の鍛冶屋に向かうところです。

 

 

 

 

「ふはははは、良く来たな! 貴様が望むのは竜の鱗をも切り裂く刃か、いかなる爪も通さない鎧か!? この僕、天才鍛冶師コーウェンが最高の物を作ってやろう!」

 

はい。

 

鍛冶屋に入った瞬間、高笑いと共に出迎えたこの青年NPCがその鍛冶師です。

 

大げさな身振り手振りが、ああ、そういう人物なんだと一瞬で伝えてきます。

 

自分で天才と言いきるあたり、とんでもない自信家ですよね。

 

いえ、実際に腕は良いのですが、天才を自称するだけあってプライドがとても高く、ほとんどの依頼人は彼のお眼鏡に叶わず追い出されるのだとか。

 

本人が得意気に語っていました。

 

元々はもっと大きな鍛冶屋に所属していたのに、人間関係を拗らせて独立したというから相当ですよ。

 

そんな彼が私に友好的なのは「影法師」のロールプレイ補助のおかげです。

 

表示される台詞を読み上げていたら、何が彼の琴線に触れたのか、こちらへの態度がすごく良くなっていました。

 

それ以来、事実上の専属鍛冶師として色々と装備を作ってもらっているのです。

 

「ん、言われた通りオフロードランナーの素材を取ってきた。これで例の足防具が作れるはず」

「おお、早かったな!」

「どれくらいかかる?」

「案ずるな、この天才にかかれば一日で済むとも!」

「ううん、お金のほう。すごい技にはそれだけマーニを払うべき」

「……ふっふっふ、やはり貴様は分かっているな。120,000マーニだ」

「はい、これ。それといつも通り、見た目は地味な感じでお願い」

「確かに受け取った。しかし毎度のことだが、もう少し特別感を出してもいいんだぞ?」

「目立つ装備は狙われる。もっと強くなったらともかく、今足を引っ張られるのはいや」

「……ふん、そうだな。僕にもその気持ちは分からんでもない」

 

こんな感じです。

 

ちなみに、今頼んだ足防具にはスタミナ消費軽減の効果が付く予定です。

 

どんな素材を使えば望んだ特殊効果を付けられるか、コーウェンの知識には助けられました。

 

つくづく腕はいいんですよね。

 

「そうだ、コーウェン。相談がある」

「なんだ? 防具は今回ので一通り揃うだろう。待て、つまり武器だな?」

「ん、最近はちょっと火力不足気味。いい剣に心当たりがあれば教えてほしい」

「……ふうむ、そうだな」

 

そう言ってコーウェンは考え込みました。

 

「おかげで炉の強化もできたし、物の道理も分かっている。貴様になら……ちょっと待ってろ」

 

コーウェンはそう言って奥の部屋に引っ込むと、すぐに戻ってきました。

 

その手にはボロボロに朽ちた両手剣が握られています。

 

……待ってください、なんでこれがここに。

 

「この剣を見たまえ」

「……それは? ただのガラクタをコーウェンが出すはずがない」

「ふっ、その通り。一見ボロボロだが、天才の僕の目は誤魔化せない。僕には分かる、この剣はすさまじい力を秘めていると!」

 

プレイヤーとしてその剣を意識すれば、アイテム名が表示されます。

 

その剣は『朽ち果てしカラドボルグ』という名前でした。

 

「本で読んだことがある。かつて英傑が振るった武器は、すさまじい力を持っていたと。長い時の中でほとんどが消え去ったが、一部は現代まで残っていると」

 

『朽ち果てし』から始まる武器のことを、私は原作知識で知っています。

 

それはサンラクさん(原作主人公)が手にした『朽ち果てしアラドヴァル』と同じ、特別なカテゴリ。

 

「その名も英傑武器(グレイトフル)! どうだ貴様、この剣を蘇らせてみないか?」

 

 

 

 

コーウェンの提案にはもちろん頷きました。

 

原作をおさらいしましょう。

 

英傑武器は貴重で強力な装備ですが、その分強化には手間がかかります。

 

真の力を引き出すには、その武器の由来を探って非常に難しい課題をクリアしないといけません。

 

そのため、原作ではこの武器を使いこなすプレイヤーはほぼゼロでした。

 

一応、性能は一段階下がりますが妥協する道もあります。

 

前者を「再生成」、後者を「再構築」といって、サンラクさん(原作主人公)でさえ再構築を選んだほど再生成は難しいのです。

 

さらに最終強化には、特殊な隠し最上位職業「神匠」に就いた鍛冶師が必要です。

 

「神匠」は転職条件が複雑で、原作ではかなり後になるまでプレイヤーは誰一人転職できていませんでした。

 

そんな英傑武器が鍛冶師NPCから出てきたのです。

 

これは、この鍛冶師を「神匠」まで育てろということではないでしょうか。

 

超レア職業である神匠との伝手を得られればメリットは計り知れません。

 

ですので、最初の強化に必要だという大量の銀色鉄鉱を買い集めるべく金策に走りました。

 

 

そして今。

 

第三段階への強化が済み、次はいよいよ再生成か、妥協して再構築か、分岐点にさしかかったところなのですが。

 

できあがった剣を手に取った瞬間、妥協はできそうにないと悟りました。

 

「できたぞ! 刮目せよ、これが『カラドボルグ・リペア』だ!」

「ありがとう、これでちゃんと武器として使ってあげられる……ん?」

 

『最上位職業転職クエスト「英傑の影法師よ、遺されし偉業を継げ」を開始しますか? はい・いいえ』

 

 

 

 

「……はあ」

 

あれから数日。

 

何度目かのため息をつき、クエスト名を見返します。

 

『英傑の影法師よ、遺されし偉業を継げ』

 

どう考えても、この英傑武器を再生成しろという意味としか思えません。

 

影法師の転職クエストですから、メインジョブを別の強いジョブに変更してから挑むという方法も無理でしょう。

 

影武者や影法師の時と難易度が違いすぎませんか。

 

それでも、手がかりを探してはみました。

 

「コーウェン、この武器はどこで手に入れたの?」

「僕が前にいた鍛冶屋だ。どいつもこいつも節穴でな、この剣のポテンシャルに気付いているのは僕だけだったのさ」

 

「聞きたいことがあるの。この鍛冶屋にあったっていう武器について。コーウェンが持っていったやつ」

「げっ。嬢ちゃん、あいつの関係者か。……それはまさかあの鉄クズか?」

 

「あなたが鍛冶屋にボロボロの剣を下ろした人ね。仕入れ元はどこ?」

「ああ、あの鉄クズですか。確かサードレマで買い付けましたな」

 

「これはあなたが売った剣なの。何か知ってる?」

「エイドルトの近くで落ちてたんですよ」

 

嫌な予感はしていました。

 

復元したカラドボルグには『巨体特効』の効果がついていたのです。

 

ということは、再生成条件はこの武器で何か巨大な敵を倒すのだと予想できます。

 

そしてエイドルト付近に出る巨大な敵について、私は原作知識から心当たりがありましたが、当たって欲しくない予想でした。

 

エイドルトの先のエリア、『去栄の残骸遺道』には巨大ゴーレムがエリアボスとして出ますから、どうかそっちであってくださいと祈っていました。

 

そんな祈りを嘲笑うのがシャンフロというゲームなのです。

 

「かつてこの地にとても大きな蠍が出たのです。それに立ち向かった英傑のお話は、今でも語り継がれておりますじゃ」

「……そ、そう。すごいね、ははは……」

 

エイドルトの手前、『奥古来魂の渓谷』の上層部には隠しエリアが存在します。

 

『水晶巣崖』と呼ばれるそこはシャンフロでも特に有名なエリアの一つです。

 

その特徴は、誰もが攻略を諦めるほどの高難易度。

 

推定レベル100オーバーのモンスター、水晶群蠍(クリスタル・スコーピオン)が数の暴力で侵入者を圧殺するこの世の地獄。

 

そしてそこにはとあるレアエネミーが出現します。

 

水晶群蠍の十倍もの巨体を誇り、群れが危機に陥ると現れる蠍の長老。

 

水晶群老蠍(エルダー・クリスタル・スコーピオン)

 

……レイドボス級モンスターじゃないですか。




・隠しイベント
数打てば当たるの精神ではそう簡単にユニークシナリオには至れない。
NPCにも好みがあるのだ、見ず知らずの相手に秘密を打ち明けることはない。

・英傑武器カラドボルグ
はるか昔、人類を襲った巨悪を打ち倒した英傑がいた。
彼は故郷を蝕む水晶を押し返そうと、蠍の長老に挑み帰らぬ人となった。
彼の愛剣は蠍の食性に合わず捨て置かれ、長い年月の末に朽ち果てて崖下へ落下した。
今でも敗北を引きずっている。
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