野生児少女は魔法剣を使いたい   作:とらいあ

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明日も投稿します。


レベルを上げてステータスで殴る

英傑武器を再生成する条件は、レイドボス級モンスター『水晶群老蠍』の討伐でした。

 

いくら何でもハードすぎます。さすがに今は攻略不可能です。

 

一応考えがなくもないのですが、それだって最低限、レベルを現時点での最大である99まで上げておかないと話になりません。

 

まずはとにかくレベル上げです。

 

いずれは水晶群蠍を相手にすることを踏まえて、固めの敵が出現する『去栄の残骸遺道』に向かいました。

 

 

 

 

『去栄の残骸遺道』。

 

ここのレアエネミー『オメガセルユニットゴーレムSS』とエリアボス『オーバドレス・ゴーレム』との何度目かの往復を終え、私は一息つきました。

 

オーバドレス・ゴーレムはその巨体から、水晶群老蠍と戦う際の参考になります。

 

一度だけ高く跳躍するスキル『キャノンシュート』を覚えられたのも追い風です。

 

ここで改めて、成長方針をおさらいしましょう。

 

 

大抵のゲームにおいて、モンスターの強みはステータスが高いことです。

 

それはシャンフロでも変わりません。

 

世界観に沿ったギミックが特徴的に思えますが、ステータスが高いからこそ厄介なのであり、弱ければ強引に倒すことができます。

 

対人戦とは違い、極端にプレイヤースキルが要求されるということはありません。

 

「レベルを上げて殴る」というネットミームが前世で流行りましたが、あれは対モンスターにおける真理ではあるのです。

 

 

逆にプレイヤーの強みは、なんといっても多彩なスキルです。

 

強力なスキルをいくつ覚えてどれだけ使いこなせているか、そこが強さの大きな割合を占めます。

 

スキルでモンスターとの強さの格差を埋めていく、そういう設計のゲームなのです。

 

しかし、ほとんどのプレイヤーは覚えたスキルを十分に使いこなせていません。

 

なぜなら一度に覚えておけるスキルの数は二十を優に超え、有効な場面もリキャストタイムもバラバラなそれらを無駄なく運用するのはハードルが高いからです。

 

せっかく覚えたスキルも使わなければ覚えていないのと同じです。

 

 

これらを踏まえた私なりの答えが、これです。

 

蛇竜の威風(ファーブニル・ハウル)』『タラリア』『アキレス・スキン』『ワイルドハント』『愛刀爛漫』『戦極武頼』『出征怪童』。

 

戦闘開始と同時に発動させた大量の自己強化スキルによってステータスが大幅に上昇し、アバターの動きが格段に良くなりました。

 

戦闘中に使い分けができないのなら、予め使っておけばいいのです。

 

レベルには上限がありますが、ステータスにはありません。いえ、もしかしたらあるのかもしれませんが、少なくとも今は引っかかりません。

 

大量のバフで高ステータスを維持する、これが私のビルドの一段階目です。

 

 

ビルドの二段階目は攻撃スキルです。

 

自己強化スキルに多く習得枠を割き、回避スキルも余裕を持った数がいる以上、攻撃スキルには少数精鋭が求められます。

 

それに、攻撃に意識を割きすぎて被弾なんてゲーム素人あるあるですからね。

 

まずは戦い方の黄金パターンを構築し、それを繰り返して錬度を高めていけばいいのです。

 

使いやすさやスキル回転率などを考慮して、スキル剪定所で統合していきました。

 

今の主力は、装甲貫通効果のある『破山閃断』や、走り抜けながら斬りつける『破門疾走(ダッシュドライブ)』、威力と隙の少なさが両立する『パイルピアス』、回避ジャンプの隙を潰しつつ攻撃する『隕星落蹴(メテオ・フォール)』などです。

 

特に『破山閃断』は水晶群蠍の硬い甲殻への有効打が期待できます。

 

 

……そろそろこのエリアも物足りなくなってきました。もう少しでカンストなのですが。

 

さらに先の『無果落耀の古城骸』に進みましょう。

 

 

 

 

ユザーパー・ドラゴンは強敵でしたね。

 

おかげでレベル99になりました。

 

 

 

 

「強きに至りし者よ……汝が神秘を示す、運命の札を引きたまえ」

 

二度目のフィフティシア到着直後、怪しげな黒ローブの老人NPCが現れました。

 

老人NPCの名前は『覚醒の導師アーカナム』。宙に浮いている何枚ものカードの中から一枚選べと言っています。

 

レベル99に到達したプレイヤー全員が体験する、特殊サブジョブ『神秘(アルカナム)』を入手するイベントですね。

 

今はメインジョブもサブジョブも固定なので使えませんが、最終的にはジョブと関係なく使えるようになるはずです。

 

とはいえ、22種類あるバリエーションのうちどれになるかは選べないので、物によっては永遠に使えませんが……さて、私が引いたカードはなんでしょうか。

 

 

『神秘:死神』

HPが半分以下になると全ステータス1.5倍。

デスペナルティ倍化。

 

 

おお、強いですね。

 

高ステータスを頼りにする私のビルドにとても合っています。

 

デスペナルティが増えるのはゾンビアタックしがちな私としてはデメリットですが、立ち回りを改善すればいい話です。

 

今後の楽しみが増えました。

 

 

 

 

ファイヴァルへやってきました。

 

大陸を横断する四本の街道のうち、二番目の街道に属する街です。

 

これで大陸中の街を回ったことになりますね。ここまで長い道のりでした。

 

この街自体に用はありません。用があるのはここから北に向かった先、一番目の街道との合流地点となるエリア。

 

そう、『水晶巣崖』です。

 

崖下の『奥古来魂の渓谷』から登ってくるルートでは、エリアの中央に出る形となるため、どうしても敵に囲まれてしまうのが水晶巣崖の攻略難易度を上げている要因の一つです。

 

ですが、ファイヴェル近郊と繋がる横道から入るなら、敵がやってくるのは一方向だけで済みます。

 

しかもこの横道には、ターゲットである水晶群老蠍が番人として潜んでいるのです。

 

横道ルートを使う場合の関所ですが、私は水晶群老蠍に会いたいのですから、むしろ願ってもないことです。

 

ちなみに、横道の存在は知られていません。崖下から直通できるのに、わざわざ遠回りする道を探す人はいませんので。

 

原作知識さまさまです。蠍については今でもよく思い出せるんですよね。

 

では、逝きますか。

 

 

 

 

数週間後。

 

夜も更けて久しい中、とある街のとある建物で、私は人と会う約束をしていました。

 

シンプルな応接室で待っていると、ドアを開けて男性が入ってきます。

 

「お待たせしました、ライザさん。初めまして、本日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、お忙しい中ありがとうございます、カローシスUQさん」

 

立ち上がってお辞儀をすると、男性もお辞儀し返して対面の椅子に腰かけました。

 

黄金の騎士といった風体なのにどこかくたびれた雰囲気を纏っている、そんな彼はプレイヤーの一人、カローシスUQさん。

 

攻略ガチ勢として名高いクラン『午後十時軍』のクランリーダーです。

 

プレイヤー同士ですから、今日はロールプレイはお休みです。

 

「いやあ、二徹目ですしまだまだですよ。四徹目からが本番です」

「は、はあ……お疲れ様です」

「本題に入りましょう。メールで事前に伺っていますが、改めて説明していただけますか」

「あ、はい。添付の画像は見てもらえましたよね」

「ええ、あの特徴的な見た目は忘れられませんよ。あれの名前はなんでしょうか?」

「――水晶群老蠍。それがあのモンスター、水晶巣崖のレアエネミーです」

 

ここまで苦労しました。

 

寄生プレイヤーと思われないようにレベルとスキルを鍛え上げて。

 

水晶巣崖に通い詰めて、ターゲットの位置や出現条件などを調べ上げて。

 

全てはこの時のためです。

 

「午後十時軍さん。大陸最難関の狩り場に興味はありませんか?」

 

取り出した水晶群蠍の素材を机の上に置いて、私は相手の顔を見つめました。




・『タラリア』
効果時間中、段階的にSTR、DEX、TEC、AGIが上昇していく。

・『ワイルドハント』
AGIに補正、STM消費を軽減。

・『アキレス・スキン』
VIT、AGIに大補正。

・『蛇竜の威風』
屋外でのみ発動可能。装備のランクに応じて全ステータスに上昇補正。

・『愛刀爛漫』
今の武器を装備している時間に応じてSTR、DEXに補正。

・『戦極武頼』
原作準拠。
武器による攻撃補正を強化し、武器の耐久値消耗を軽減。

・『出征怪童』
金太郎の別名である怪童丸より。
現在のフィールドに慣れている(野生値が高い)ほど全ステータスに上昇補正。

・神秘:死神
発動後に回復してもいいので、開幕自傷バフで条件を満たすのが定番。
世界観的にはリスポーン用の出力を前借りしており、最悪リスポーン不能になる危険がある。
デメリットを踏み倒しやすく使いやすい神秘だが、死亡回数が多いほど取得しやすいので上級者ほど縁がない。
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