流行らせたいので縛りプレイをしようと思います。 作:正体不明の筆者A
「……あ、そう言えば結局あの人の事は何も分かりませんでしたね」
さらりとフレンド登録も回避されてしまいましたし、なんだか貴重な機会を逃した気がします。まぁ良いです。世の中一期一会とも言いますからね。
そう言えば先ほどメイプルから連絡が来ました。何やら色々とあった様子ですが、これだけ時間が経過すれば色々なスキルも見つかっているでしょう。私は気を入れ替えてメイプルの集合場所である街の中心部に戻ることにしました。
「リーフっ!こっちこっちっ!」
街に戻ってくるとメイプルの元気そうな声が聞こえてきました。何やら表情が明るげですね。どうやらこの様子だとNWOをしっかりと楽しんでくれたようです。
「お待たせしました。ふふ、その様子だと随分と楽しんでおられたようですね」
「うんっ。結果を見せたいからさっきの場所いこっか」
「分かりました」
と言うことで先ほども利用した宿屋に入りメイプルが取得したスキルを確認していくことにしましょう。どんな私の知らないスキルが眠っているのでしょうか。
ふむ……【絶対防御】は単純に防御を倍加させるスキルですか。そして【
そして【瞑想】。動けなくなる代わりに体力を回復出来るスキル。【毒半減】と言うスキルも付いていますね。あの辺ですと……蜂型のモンスターが毒を使ってきましたか。VITが高いからこそ取得できるスキルがかなり並んでいるご様子です。
この時点でスキルだけで単純にVITが4倍以上になっていることが分かります。流石の私でもこのVITの相手を削りきるのは困難を極めるでしょう。それだけでも十分に脅威と言えますが、まだまだ壊せそうな気配を感じるあたり底が知れません。
「良いですね。まさにVIT極振りと言ったスキル一覧だと思います。これなら工夫次第でもっと強くなれると思いますよ」
「ほんとっ!?えへへ、リーフにそう言われるとなんか安心しちゃうなぁ」
「では今日はこのくらいで終わりにしましょうか。リアルはもう深夜帯ですからね」
「うんっ!明日は?」
「私は少々用事がありますので明日はログインが出来ません。もしよろしければもっと色んなところを探索してみるのも良いかもしれませんね」
この様子なら私の同行無しでもある程度しっかりやって行けそうな気配を感じます。もしかしたら私がまだ見ぬスキルに出会える可能性もありますからね。メイプルのリアルラックの高さを侮ってはいけません。
「分かった!それじゃあゲームの中で会うのはまた明後日だねっ」
「はい。メイプル。まずは楽しむ事が大事です。専門的な事はその次に行うことが望ましいでしょう。あなたにはこのゲームを好きになって欲しいですからね」
「うんっ!」
うふふ、良い返事です。これならすぐに辞めてしまうことはなさそうで安心しました。先述した通り私は明日休みですので、明後日にどうなっているかをしっかりと確認することにしましょう。
「ごめんね早苗。わざわざ来て貰っちゃって」
「構いませんよ理紗。貴方のゲームがかかっているのですから」
翌日。私は理紗の家にお邪魔しています。要件は次の実力テストに向けての勉強会。理紗は少し成績が低め(当社比)なラインのため、ゲームをやる権利をかけて勉強の真っ最中と言うわけです。そして親友組の中で飛び抜けて頭が良いらしい私に助太刀を求めてきたとのこと。
「それで、どの辺が分からないのですか?」
「あはは〜。取りあえず暗記系は自力で何とか出来るから、現代文の読解とかが大変かなぁ」
「分かりました。では早速始めて行きましょう」
なるほど、現代文ですか。小中学校の国語は面倒なイメージがありますが、高校の現代文は文だけ読んでいれば案外何とかなるものです。そもそも問題文に描写されていない答えはほぼ無いと言って良いですからね。
これが自分の見解を求められた場合は話が別ですが、これもまた文中の言葉を引用してそれっぽく書くだけでなんとかなってしまいます。まぁこれは向き不向きがはっきり出る分野ではないでしょうか。
「現代文の問題は、よほどの想定外が無い限り最初の文から始まることがほとんどです。例えば問一は第一段落からとか、最後のまとめは最後の段落付近だとか、問題構成はその都度文を読めばある程度理解出来るようになっています」
「た、確かにそう言うこと言ってた気がする」
「そしてもっとも大事なことですが、記述式問題は自分の独自見解を聞かれない限り文章に忠実に書いてください。自分で言葉を選んで書く必要はありません。答えは全部文中にありますので」
「な、なるほど……」
これは国語問題の基礎とも言える事だと思います。料理レシピと同じです。レシピを見ても上手く作れない人は、道中で何かオリジナリティを出そうとして失敗したりします。まずはバカ正直に提供されたものに忠実になることが必要なのです。
そしてちゃんと文を読めるかどうかも重要です。読み落としや読み飛ばしをすると大事な箇所を忘れて仕舞いかねません。それを踏まえて現代文をどう解くべきか。私は主に三つの段階があると思います。
最初は問題文を所謂Z読みで最後まで読むことです。これはこの問題文がどのような話か、その触りを確認するためにしなくてはいけません。次にすべきは問題の構成確認です。どこで何が聞かれているか、どこでどう記述すべきかを把握します。
そして最後に問題を該当箇所の文と摺り合わせながら解いていきます。二つの段階だけで概ね概要を理解出来たら、後はそれに従って解いていくだけです。どこかが不十分だとそこが足かせとなって問題が解けなくなります。
「理紗は決して地頭は悪くないのですから、やり方を覚えるのが一番手っ取り早いでしょう。何か分からないところがあったらアドバイスしますので、まずはやってみましょう」
「は、はい先生っ」
まぁ私のこのやり方も半分受け売りだったりはするのですが、そこからどうやって自分流に改良出来るかを考えるのも勉強の意義だと思います。中には最初に文章を読まずにいきなり問題に行った方ができる人もいるでしょうしね。
文字数制限系の問題も、やはり文中の言葉を少し切り抜くだけで成立します。そもそも最初から自力で文字数制限付きの回答を見つけるのは至難の業ですし、教師側も採点が大変になってしまうでしょう。
現代文、ひいては国語のテストがこう言う形態になるのは、教師の負担軽減という要素も多いと思います。だからこそ対策が取りやすいとも言えます。そして最後に生徒ごとの解答を聞くためにオリジナル記述問題を設けてみたり、そこは教師の個性が出るところだと思います。私学だとそういう教師が多いという偏見がありますけどね。
「っはぁ〜っ!一旦休憩っ」
「よく頑張りました。紅茶をとお茶菓子を用意しましたのでティータイムと参りましょう」
「お〜さすが早苗っ」
勉強開始から1時間。ここで一旦休憩を取ることにしました。人間って基本45分〜60分くらいしか集中力が保たないと言いますからね。ここでお茶菓子で糖分を入れておく事でここから先も頑張れると言うものです。
「はむはむ……ん〜美味しいっ。このクッキーもしかして手作り?」
「えぇ。昨晩に僭越ながらご用意させて頂きました」
「す、凄いなぁ。早苗何でも出来るんじゃないの?」
「何でもは出来ません。私が知ってることだけです」
「どっかの委員長みたいなこと言ってる……」
お料理は自分が満足出来るまで探求することが出来ますからね。何かのゴールが無いと言うのはやはりモチベーションに繋がるものです。そういう趣味は他にもあるでしょうが、料理はその中でもお手軽に始めやすいですからね。
両親から自立するために、私は何でも自分で出来る必要がありました。そうでなければ今頃私は潰れていたでしょうね。結果的に自立する決断をさせてくれた両親には感謝すべきかもしれません。これからも反面教師として頑張って頂きましょう。
「はむはむ……そう言えば楓の調子はどう?」
「昨日は大変楽しんでおられましたよ」
「そう?よかったぁ。絶対面白いからって念押ししたのは私だからなぁ」
「えぇ。お陰様で私の顔と一緒に楓の顔も有名になったかもしれませんよ」
「あはは、言うね〜トッププレイヤー」
縛りと言うか目標ですが、次のイベントでは1位にならなければなりませんからね。最大株の危険人物が数人いますので、そこをどう抑えられるかがポイントになるでしょうか。
「噂は色々聞いてるよ。
「プレイスタイル的には妥当なネームなのがムカつきますねほんとに」
「んでんで、そんな早苗さんのプレイスタイルの方、聞いてもいい?」
ふむ、別に理紗になら話してもいい気がします。どういう反応をするのかも概ね予想が付きますしね。これからの理紗のプレイにも何かしら影響があるかもしれません。
「ふむ……理紗は私がどんなプレイヤーかご理解していますよね?」
「そりゃもちろん。息を吸うように縛りプレイする変人」
「大当たりです。私はβテストも当選していましたので、色々と事前情報がありました。なのでその中から縛りスキルを二個取得し、守りを捨てたスタイルで戦いたいと思っています」
「ほうほう。ここまでは予想通りだね。で、その縛りスキルって?」
「【隻眼】と【冥界の理】という二つのスキルです。効果は左目の視界消失と自身への回復効果が反転するというものです」
「……はぁっ!?」
おっ予想通りの反応ですね。この驚く顔が見たかったのですよ。
「そしてそこに【超下限減算法】というスキルでVITを極限まで減らし、一撃食らったら終了のプレイスタイルでやらさせてもらっています」
「……お、お〜ぅ。早苗さん中々飛ばしてるね」
「理紗もノーヒットくらいは出来るでしょう?ちょっと左側の視界がなくなるくらいで大したことはありません」
「いやいや十分大ありだけどね?ちなみに今のVITの値は?」
「−255です」
「なにそのスペランカーモード」
「スペランカー縛りはゲーム縛りの王道ですから」
「そんなわけないじゃん」
そういうものでしょうか?私は何分世間知らずなもので。
「いやいや何私分かりませんみたいな顔してるの?自覚あってのプレイだよね?」
「でも理紗も出来ますよね?」
「…………ま、まぁ、出来なくは、無いけど」
「それでは何も問題ありませんね」
「問題はあるけどね!?」