流行らせたいので縛りプレイをしようと思います。   作:正体不明の筆者A

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 今作では【毒竜喰らい】の【致死毒の息吹】を【デッドリーブレス】という名前に変更しています。ご了承ください。


黒聖女と逸般人

 

 

 そしてさらに翌日。今日は楓ことメイプルとNWOで集合する予定になっています。昨日はログインする事が出来ませんでしたが、一日経ってどう変わっているのでしょうか。大変楽しみです。

 

「お〜いリーフ〜っ!」

「この声はメイプル。お待たせしま……し、た?」

 

 ログイン早々メイプルの方を振り向いて返答しようとしたところ、そこにはどう見ても見慣れない装備を身に纏ったメイプルの姿が。黒に赤のラインが入った鎧と盾は、昨日まで初心者であろうメイプルがしていい装備ではないようにしか見えません。

 

「え、えっとメイプル?そ、その装備は……?」

「ふふ〜んっ。詳しくはいつものところでねっ」

 

 メイプルは得意げに胸を張りながら私の腕を引っ張っていった。目的地は作戦会議のお供こと宿屋の一室。う、う〜ん。これは詳しく話を聞かなければならないでしょう。

 

「こほん……さてメイプル。早速その装備について聞かせて欲しいのですが?」

「分かった!取りあえずステータス画面をドンっ」

 

 メイプルはそう言って得意げにステータス画面を見せてきました。そこには見覚えのない文字がいくつか並んでいます。まだ【毒無効】はマシな方で、問題はスキル【毒竜喰らい(ヒドライーター)】と新装備の闇夜ノ写装備です。

 新装備は特性【破壊成長】を持ち、全装備がVIT特化のステータス補正を持ちながら、各装備に任意のスキルを入れられるスロットを完備しています。まず【破壊成長】が本当に偉く、私が持つ装備の【破壊不可】の実質上位互換とも言えるスペックをしています。攻撃を受け止めるメイプルの特性と完璧に噛み合っているのが最大の特徴でしょうか。

 

 そして新スキル【毒竜喰らい(ヒドライーター)】。これは毒竜の洞窟のボスが使用するスキルをスキルとして発動可能になるという代物で、メイプルは毒属性の攻撃魔法を間接的に得たことになっています。

 毒属性攻撃の中には、三つ首の竜を召喚してブレス攻撃などを使える【毒竜(ヒドラ)】、周囲の敵複数に麻痺の状態異常をばら撒く【パラライズシャウト】、周囲に毒の霧をまき散らす【デッドリーブレス】といったスキルが存在します。どれもこれも【毒無効】クラスでないと対処できないスキルばかりで、広範囲に作用すると言う関係上AGIの低いメイプルとは相性がとてもいいスキルになるでしょう。

 しかもVITの数値が800を超え始めたのも問題で、今の段階だとこのVITを貫通してダメージを与えられるプレイヤーは……強いて言えばペインくらいでしょうか。彼の聖剣技でどこまでダメージが入るか。少なくとも致命傷を与えることはかなり難しいでしょう。

 

「【毒竜喰らい】の取得条件は……毒竜をHPドレインで撃破する、ですか。確かNWOはモンスターを食べることで撃破すると、それはHPドレイン扱いだったはず……なるほど、そう言うことですか」

「あっリーフはもう分かっちゃったかな?」

「しかるところ……毒竜の洞窟に赴き【毒無効】を取得して実質無敵になったのは良いものの、メイプルもダメージを与える手段がなくて、もはや自棄になってかぶりついて撃破したと」

「すごい一言一句全部合ってるっ!?」

 

 本来はHPドレインという半ば縛りプレイに近い方法でないと手に入らないスキルだったのでしょうが、それしか攻撃手段がないメイプルにとっては取得は必然だったと言うことでしょうか。

 それにしてもHPドレインで取得できるスキルですか……そこは案外盲点でしたね。確かに運営ならいかにも仕込んできそうなラインではあります。今の私で取得出来るかは分かりませんが、やってみる価値はありそうですね。

 

「ありがとうございます。中々に面白い知見が得られました」

「そ、そう?役に立ったならよかったよ」

「はい。メイプル、今日の予定はいかがなさいますか?」

「ん〜そうだなぁ。取りあえず毒は対策出来たから、他の状態異常対策が出来ないか試してみるつもり。リーフは?」

「私は少々やりたいことが見つかりましたので、そちらの方の検証に参ろうかと」

 

【毒竜喰らい】。これが中々にユニークなスキルであることは確定です。そしてさらに優位になれるだろうスキルだという事も。それに縛りプレイの極地みたいな戦い方で大変私向きではありませんか。

 

 

 

「ここが毒竜の洞窟ですか……」

 

 ここのユニーク装備はすでにメイプルのものですから、新装備が入手出来るわけではないでしょう。私の目的はただ一つ。毒竜を全て胃の中に収める事にあります。

 早速ダンジョンに潜り速攻で最深部を目指します。私はメイプルのようにVITによるごり押しが効きません。ならばどうするか。自動HP回復がないのを良い事にヒットアンドアウェイ戦法でどうにかしようと思います。

 確かプレイヤーの噛む力はSTRに依存していたと解析班の方から報告があがっていたはず。一体誰がそんな検証をしたのかわかりませんが、やるだけやってみようの精神で何とかしましょう。安心してください。死ぬのには慣れていますから。

 

「ここがボス部屋…いかにもな場所ですね」

 

 私が独りごちるとボス部屋の深奥から三つ首を持つ巨大な竜が姿を現しました。これがこのダンジョンのボスこと毒竜なのでしょう。

 このボスの特徴はその巨体を使った物理攻撃と、【毒無効】でもなければ防ぐことが出来ない毒攻撃にあります。そもそも私は何を喰らっても一撃ですので関係ありませんが、遠距離攻撃を持っていると言うのは厄介な要素ですね。

 

「ふふっ。ですが幸い、そこまで動きが速いと言うわけでは無いようですね」

 

 それならば付け込む隙があろうというもの。私はひたすらに毒竜の死角になるだろう場所に移動し、その都度接近戦を仕掛けてHPドレインを狙います。

 味の方は……お世辞にも美味しい訳ではないですね。ナマのピーマンをそのままかじったような味と言った方が良いでしょうか。この肉に毒が付着しているわけではないようなので、食べたら死んだなんてギャグみたいな状況は防げそうです。

 

「なるほど……やはり捕食行為はSTR依存のようですね」

 

 そしてやはり解析班の言うとおり、HPドレインはSTR依存で威力が決定するようです。それならば話は早いですね。私は引き続きヒットアンドアウェイで敵への強襲を続けていきます。幸いこの空間は足場になる天井や壁が遠くありませんので、毒竜の攻撃を縦横無尽に動いて躱すことが出来ます。

 私は戦法を一つに絞るのが好きではありません。数多の戦略で敵を倒すことに達成感を得る生物なのです。テンプレに頭が凝り固まってしまうと、そこで人間は発展することを止めてしまいますからね。それは何時の時代も人間自身が証明しています。

 

「これで、トドメですっ」

 

 最後の1噛みが毒竜を捉え、私はHPドレインだけでHPを吸収しきる事に成功しました。ボスの体力がポリゴンとなって消えますが、やはり宝箱の類いは出現しませんね。ユニーク装備は最初の単独討伐者にのみ与えられるようです。

 

 <スキル【毒竜喰らい(ヒドライーター)】を入手しました>

 <【毒竜喰らい】入手に伴い、スキル【毒無効】を入手しました>

 

「ほう、これは思わぬ収穫ですね」

 

 これを見るに、【毒竜喰らい】の毒攻撃は自身すらも効果範囲に入っていると見るのが良いでしょう。本来であれば【毒無効】を入手した上での取得になるはずですが、万が一の例外があっても良いように逆の入手法もあると言うことでしょう。

 ですがこれで無事目的のスキルを入手しました。これでさらにスキル検証がはかどります。私がわざわざこのスキルを入手してまでしたかった検証……【狂気反転】の仕様検証が出来るのですから。

 

 

 

 スキル【狂気反転】は次に発動するスキルの効果を正反対の効果へと書き換えるという効果を持ちます。MPを分け与えるスキルがMPを奪い取るスキルへと変化したり、回復魔法が回避不可の攻撃魔法に変わるのはこれが原因です。

 ですが私のスキル構成では現状サポート魔法以外での検証が出来ませんでした。ですが今回純粋な攻撃魔法を手に入れたことで、【狂気反転】の効果が攻撃魔法にどのように及ぶのかを検証することが出来るのです。

 

「それでは参りましょう……【狂気反転】」

 

 私は周囲に人気の無い第一層の端っこで検証を行います。【狂気反転】は使用する事でステータス欄のスキル名が変化すると言う仕様が存在します。今までは分かりやすくそのままの名前で詠唱していましたが、本当の名前で呼ぶことでそのスキルの力を最大限生かすことが出来るのです。

【MP譲渡】だけは例外で、元々のスキルに弱体化を施す要素が無いため同名での詠唱でも効果が変わらないのです。では早速ステータス欄を確認して主要スキルの変化を見てみましょう。

 

【回復術の心得Ⅹ】→【攻撃術の心得Ⅹ】

【MP譲渡】→【MP消失】

【毒竜】→【神龍】

【パラライズシャウト】→【オーバーヘイスト】

【デッドリーブレス】→【超自然源流入(インビンシブル・ネイチャー)

 

 【毒竜】→【神龍】

 一つ首の巨大な龍を召喚し、パーティやギルドメンバーには回復を、それ以外の対象にはダメージを与え攻撃する。自身への効果付与はなし。

 

【パラライズシャウト】→【オーバーヘイスト】

 対象のAGIを+1,000%上昇させる。

 

【MP譲渡】→【MP消失】

 対象のMPを全て自分に与える。

 

【デッドリーブレス】→【超自然源流入(インビンシブル・ネイチャー)

 光り輝く霧状のブレスを発射する。これを受けた味方以外の対象は、HPが満タンを超過して回復し続ける。本来のHP+100%以上を回復したプレイヤーに状態異常:過剰供給(オーバーフロー)を与える。

 *過剰供給(オーバーフロー):付与後30秒以内に一定量のダメージを受けなかった場合、HPが限界を超えて0になる。

 

「ふふ……ふふふっ。なるほどそう言うことになるのですかっ」

 

 なるほど、反転とはこう言うことを言うのですね。文字通り全ての効果が裏返るのです。邪悪なる竜は神聖なる龍に、動きを止める麻痺攻撃は制御不能の素早さを与え、徐々に体力を削る毒のブレスはキャパシティを越えた回復の先を征く。

 これは他のスキルも検証する必要が出てきたと思いませんか?今まで見向きもしてこなかったスキルに新しい可能性が出てきたのです。私はもっともっと強くなることが出来る。誰もが到達できない境地に至ることが出来る。ゲーマーとしてこれ以上に素晴らしいことがあるでしょうか。

 

「ふふ……そうですかっ。NWOはまだまだ私を離してはくれませんかっ!」

 

 良いでしょうっ!ゲームが私を導くのならば、私はその導きのままに従いましょうっ。そして誰もがたどり着けない境地へと、私は至って見せましょうっ!それこそがこのゲームが望む理想像なのですからっ!

 

 

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