流行らせたいので縛りプレイをしようと思います。   作:正体不明の筆者A

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黒聖女は困惑する

 

 

 ショッピングモールを出てからというもの、3人とも一向に別れる気配が見えぬまま私達は私の住むマンションに到着してしまいました。

 そもそもさっきから2人とも頬を赤く染めたまま私の顔を見つめて動かないのです。え、やっぱり変なフラグを踏みましたか私?確かさっきはこう言った気が……

 

『理紗、楓?え、えっと、私まだ今日の夕ご飯の献立を決めていないのですが、何か提案はあるでしょうか?ハンバーグだけは決まっているのですが』

 

 ………………あれ?確かに私は夕ご飯の献立を聞いた筈ですが、私のとか、私が1人で食べるみたいな、対象を限定するような言い方をしていない気が、します……。

 ……え、つ、つまりこの聞き方には色々と解釈の余地が残ってしまったとでも言うつもりですか?た、例えばの話になりますが……

 

『理紗、楓?え、えっと、私まだ今日の夕ご飯の献立を決めていないのですが、(2人が一緒に食べるとしたら)何か提案はあるでしょうか?ハンバーグだけは決まっているのですが(2人が食べたいものがあったら何でも言ってくださいね)』

 

 こんな風に括弧内の文章を足すことで全く別の解釈も出来てしまいます。私は決してそんなことを言っていないのですが、もし2人にこういう解釈をさせる余地を残してしまっていたのだとしたら……

 

「(えっ……もしかして実質私から2人を晩ご飯に誘った扱いになる……?)」

 

 そ、そんなちょっと昔のAI搭載型ゲームみたいな挙動許されて良いのですかっ!?ほら2人ともすっかり目がキラキラしているではありませんか。さっきこっそり両親に連絡しているのも見ていますし最悪うちに泊まる予定ですよねこれ?

 今のテンションの2人を私の家に泊めようものなら、明日には私はきっと干からびて居る気がします。何でかは乙女である私の口からはとても言えませんが……なぜかこの3人の場合私だけが受けになる予感がしてならないのです。

 

 結局私は2人を部屋に連れ込んでしまいました。連れ込むとは言い方が悪いですね。連れ込まされたと言った方が正しいでしょう。そもそも2人の腕ががっちりと私の両腕を捕獲していて抜け出せなかっただけなのです。

 

「そう言えば早苗の部屋って初めて来るね」

「そうだねっ。まさかタワマンの最上階とは思ってなかったけどっ」

「こ、ここなら部屋を広く使えたり自由に暮らせる足がかりになると思ったものですから」

 

 と、取りあえず2人にはリビングで楽にして貰うとして、私は変な煩悩や嫌な予感を全部吹き飛ばすためにさっさと料理を始めましょう。部屋着に着替えてから後ろ髪をゴムで1つに縛り、昔から使っている無地のエプロンを羽織ります。

 特に髪を結って首筋が見えたあたりから2人の視線ががっつり背中に刺さっている気配を感じますが、きっと気のせいですし気にしたら負けです。気にしているのがバレたら某ゲームのように一撃でゲームオーバーになるのが確定していますのでこれは。

 

 取りあえずハンバーグのタネはさっさと作っておかねばなりません。焼くのは最後で構いませんので。簡単に作れるものや平行調理出来そうなものを終わりにしましょう。

 具材を刻んでアサリと一緒に鍋に入れます。そこに味噌を適量解かして沸騰しないレベルまで置いたら取りあえず味噌汁は完成です。サラダはお気に入りのカット済み野菜をお皿に盛り付けてごまドレッシングをかけてお終いです。

 そして出かける前に予約炊飯で入れておいたお米が炊き上がるのを見計らってから、ハンバーグの下に敷くナポリタンとハンバーグを同時に調理していきます。なぜかスーパーにナポリタン専用の生麺なるものが売っていましたので、それにトマトソースやらなんやらを混ぜたソースを絡めてお終いです。ハンバーグは牛肉を使っていますのでほどよく焼き目がついたら引き上げてしまいます。豚が混ざっているとリスクが残ると思っていますから。

 

 そうしたらできあがった料理をささっと盛り付けて完成です。気合いを入れるならもっと時間を取るのですが、今日はもうそれどころではありません。そもそも2人の視線が突き刺さって非常に料理がし辛かったです。

 

「お〜美味しそうっ」

「さっすが料理の腕も一人前だねっ」

「あ、ありがとうございます。で、では頂きましょう」

「「は〜いっ」」

 

 ……わ、私は今日生きて帰れるのでしょうか。

 

 

 

「「すぅ、すぅ」」

「はぁ……はぁ……っ」

 

 今の時間は夜の1時過ぎです。普段ならとっくの前に寝ているはずですが、今日に限ってはそんな訳にもいきませんでした。理由はもちろんおわかりですね?

 えぇ……それはもう大変でした。ご飯時はまだ良かったのです。問題はその後でした。リビングでは楓を膝の上にのせながらテレビを見るはめになり、お風呂は広いことが災いして3人で洗いっこをすると言われ、挙げ句の果てにベッドに潜ったら潜ったで2人に好き勝手されると言う。

 

「(うぅ……私としたことが、こんな形で不覚を取ることになろうとは)」

 

 そ、そもそも急に2人が好意全開で迫ってくるのが悪いのです。そんな瞳をされたら、私が断れないのを2人はよく知っているのです。

 そもそも私達は女の子同士ですよ?だと言うのに私は2人から危うく撃沈一歩手前の愛情攻撃を食らっていました。かろうじて2人を先に撃退出来たのは奇跡に近いと思います。こ、こんなふしだらな事で私の考察眼を使いたくはありませんでした……。

 だ、大体私の胸なんて揉んでも面白くないでしょうに。胸と言うより胸板と言った方が正しい薄さなのですよ?ですのに……2人してあんなに集中的に。もう私の頭はぐちゃぐちゃです。

 

「……」

 

 はぁ……これでは上手く眠れませんね。夜更かしは厳禁なのであまりしたくないのですが、今日はそれを考慮するにはいささか事が性急過ぎました。

 私達がこれからどうなるかなんてわかったものではありません。ですが、私は2人の親友であり続けると言う認識は変わりません。2人も今日は色々と盛り上がっていたようですから、1時期の気の迷いと言う事にしてしまっても良いと思います。

 ですがそんな事を2人が許してくれるとは到底思っていません。2人が私をよく知るように、私もまた2人をよく知っているのです。

 

「はぁ……あまり気は乗りませんがNWOにログインして現実逃避でもしましょうか」

 

 今日は本来ログインする予定では無かったのですが……気持ちを落ち着けるにはゲームをするのが一番です。私は楓と理紗を起こさないようにしてベッドから立ち上がると、NWOにログインするヘッドギアを装備してゲームの世界に飛び込んで行きました。

 

 

 

「ふむ……第2回イベントですか」

 

 私はゲーム内掲示板を見ながら頭を捻っていました。そこに書いてあったのは新規イベントの情報。今度のイベントは専用フィールドを使ったゲーム内時間で7日の長期イベントになるようです。

 しかも今回はパーティを組んで挑戦できるとのこと。私はやはりメイプルサリーと組む事になるのでしょう。タイミングが良いと言いますかなんと言いますか、内心はちょっぴり複雑です。

 私は今第2層のカフェで情報を見ています。こんな時間にここに来る客はほとんどいませんから。ですが今日ばかりはそうもいかないようで。私が優雅に紅茶を飲んでいると、店のドアが開いて誰かが中に入ってきました。

 

「ん?君がいるとは随分珍しいな」

「ペインさん?探索終わりですか?」

「あぁ。少しばかり今日は時間がかかってしまってね。他のみんなは先にログアウトしたよ」

 

 店に入ってきたのはなんとペインその人でした。彼は私から一つ席を離した場所に座ります。今更店を出るのは心象が悪いですので、何事も無かったかのようにティータイムを再開します。

 

「それにしても、君がこの時間にログインしているなんて珍しい事もあるものだな」

「今日は本来ログインするつもりは無かったのですが……私にも色々と考えたい事がありまして」

「深くは追求しないでおくよ。ゲーム内ではリアルの話はしない、基本中の基本さ」

 

 ペインはそう言いながら私から視線をそらします。私達以外が居ない店内はしんと静まりかえっています。私は紅茶とケーキを食べ終わり、気分転換にレベル上げでもしようかと席を立とうとしました。その時、ペインが少しだけ私の方を向いてこう仰ってきたのです。

 

「丁度良い機会だ。リーフ、君と一度手合わせがしたい」

「私とですか?また性急な」

「そもそも君は神出鬼没で中々出会えないというのもあるが……今の俺が全力でぶつかれる相手は、多分君しかいないと思ってな」

「あはは……大きく出ましたね。私に一瞬でも勝てると思いましたか?」

 

 その発言は私に対する果たし状と見なします。恐らく彼も同じ結論に至ると分かっての発言でしょう。私はすぐに彼に決闘申請を送ります。彼はその申請をノータイムで了承します。

 NWOはプレイヤー同士の戦いは原則決闘機能でのみ行えます。つまりこれから私達がするのは正真正銘の殺し合いです。どちらかが負けを認めるまで終わらないのです。

 

「ペインさん。私に一撃当ててみてくださいね」

「君こそ、悩み事に振り回されて足下を掬われないようにな」

 

 私達は軽口を叩き専用フィールドに移動しました。……それに、ふふっ。どうやら彼には全てお見通しのようですね。

 

 

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