流行らせたいので縛りプレイをしようと思います。   作:正体不明の筆者A

30 / 47
黒聖女と第2回イベント⑤ー2

 

 

 <青龍討伐に基づき、スキル【変天】を取得しました>

 

 【変天】

 このスキル以外の常時発動型スキルに干渉することが出来るようになる。

 ・取得条件

 ?????を撃破する。

 

「ふふ……やはりありましたか」

 

 そしてこれまたとても面白そうなスキルですね。常時発動型スキルと言うのはかなり多種多様に及びますが、代表例が私の【隻眼】やメイプルの【絶対防御】などが上げられるでしょう。

 この対象スキルは俗にパッシブスキルなんて言われるものが該当します。つまり行おうと思えば私のデメリットスキルを【狂気反転】でひっくり返す事も可能になると言う事です。それ以外にも他プレイヤーのパッシブスキルを無力化することも出来たりと使い方は多岐にわたると思われます。

 

「青龍を討伐し、残るはさながら朱雀、玄武、白虎でしょうか」

 

 可能性の領域に過ぎませんが、正直あり得る範囲の話だと思います。ご丁寧に東方に青龍ですからね。これは全方角のボスを討伐しなければゲーマーとしてのプライドが満たされません。

 ですがそれはある種修羅の道と言っても良いでしょう。青龍でさえこの強さなのです。他の三体がこれ以上の強さを持っている可能性は往々にして存在します。まぁその程度で止まるほど私も甘い生活は送っていませんがね。

 

「それに……ようやく足枷の一つを外すことが出来るようになったのですから」

 

 私の笑みはこの瞬間に最大になっていました。

 

 

 

 

 

 

 そう言えば、皆様には話したことがありませんでしたね。なぜ私が【隻眼】の代償として左目を差し出したのか。これは単純に私のプレイスタイル的にデメリットが少ない方と言うのが表向きの理由ですが、もっと根源的な理由が存在するのです。

 さて、皆様はNWOがどのようにしてプレイヤーをゲームの世界に投影しているかをご存じでしょうか。NWOを中心としたVRMMOと言う分野は、原則としてヘッドギア等の専用の装備を装備する事が必要となります。それはこれらの機能を使ってプレイヤーにゲームの世界を体感させるためです。

 ではどのようにしてそれを行うのでしょうか。原理は大して難しくはありません。ヘッドギアから出力される刺激を脳が関知してリアルな質感や五感を表現し、人間の意識と呼べるものを実際に機械に移すことによって成し遂げられているのです。

 

 この意識転移や感覚はリアルとかなりの精度で一致しています。サリーが元の運動性能をフルに使ってプレイを行えたり、リアルで得意なことがゲームでも得意になりやすいのはこう言った要素が影響しているのです。

 そして最大の特徴として、プレイヤーの身体器官が完全に機能を停止していなければ、それらが万全に動く状態をゲーム側で作り出してくれるというものがあります。例えば寝たきりになってしまったご老人であったとしても、僅かにでも器官が生きていればゲーム内では正常な動きを実現させることが出来るのです。

 これがNWOが密かに医療分野で使われている要因の一つでもあります。特に小児医療における貢献にはすさまじいものがあり、病弱で入院しがちな子供達に自由に動ける仮想空間を提供することに貢献していると言われています。

 

 ここまでNWOひいてはVRMMOの前提を話してきましたが、これはあくまで大前提条件となるものにすぎません。ここからは例外の話しをしていきます。

 さっきも申し上げました通り、VRMMOは身体器官が少しでも生きていればそれを補正する事が可能です。では、もしその器官が完全に死んでいればどうなってしまうでしょうか。例えば、左目が完全に見えなくなっていたりしたら、ゲームはどのように処理するのでしょうか。

 

 答えは単純です。ないものを補正する事は出来ないと言うのが正解になります。ですがこれはかなり限定的な状況でしか起こりえません。例え失明状態に陥ってしまったとしても、視神経がほんの僅かにでも動作さえすればゲーム側での補正が可能なのです。

 足や腕が無い人でも同様です。このゲームのシステムで擬似的に欠損部位を再現して機能を回復させることが可能となっているのです。では、なぜそのような例外が存在するのでしょうか。

 

 そうです。完全に死んだ部位と言うのがその例外です。存在しないものを復興させることはいくらゲームとは言え不可能なのです。目がなければ目を再現することは出来ませんし、身近な例だと男性が女性に、女性が男性プレイヤーになれないと言うのもこの例外に該当します。

 女性と男性では根本的な身体構造が違いますから、その部分まで完全に再現することは出来ないのです。当然そこから引き起こされる五感を体感することも出来ません。まぁよくよく考えれば当然のことだとは思いますがね。

 

 

 

 さぁ皆様。そろそろお察しになられたのではないでしょうか。なぜ私が左目を犠牲にしてまでスキル【隻眼】を取得したのかを。なぜそのような苦行とも言える事を自ら行ったのかを。

 そうです。私は元々左目が全く見えていないのです。生まれた時から、物心ついたときから私は左目の視力が全くありませんでした。ゲームでは何とか頑張って光の明暗だけが分かる程度にしか補正が出来ず、私は元々左目が全く使えていなかったのです。

 現実はさらに非情です。私は生まれてこの方右目の世界しか知りません。周りに隠すのは本当に大変でした。視力検査の時に配置を完全に暗記して無理矢理突破していたのは懐かしい思い出ですね。

 

 ですから私は左目を潰すのに何の抵抗もありませんでした。むしろ余計に明暗を描写されるのを防ぐために【隻眼】を取得したまであります。それこそが私の全てであり、私が知っている世界なのです。

 この判断に後悔はしておりません。今後もすることは無いでしょう。片側の視界が無いことで見える世界もあるのですから、それを謳歌すれば良いだけの話しなのです。

 

 

 

 

 

 

「見える……見えます」

 

【隻眼】→【開眼】

 両目が見えるようになる。

 

「あは、あはははっ。見えるっ。左目の世界がこんなにもくっきりとっ!!」

 

 あぁ、なんと素晴らしいことでしょう。なんという達成感なのでしょう。私は遂にこの二つの眼で目の前の情景を映し出すことを可能としたのです。

 今までどんな努力をしても、足掻こうとも見えなかった左目が、今この瞬間からはっきりと景色を私に見せているのです。あぁ、左目の視野があることのどんなに素晴らしいことか。ここまで視界が広くなれば今まで回避出来なかったものがどれだけ避けられる事か……っ!

 

「良い、実に良いですよっ。私は遂にゲームの中で不可能を可能にしたのですっ」

 

 あぁせっかくです。私のこの『真の』初陣にふさわしい相手を探さなくては。私は今まで特大のハンデを背負って生きてきました。それを覆す時がようやく来たのです。世界の宿命に反逆出来る時が来たのです。

 私は反転スキルである【堕天騎士の密法】を使い、【開眼】を常時発動可能状態にすることが出来ます。あぁなんて全能感なのでしょう。左目が見えると言うだけでここまで素晴らしい感情をもたらしてくれるとは。

 

「では……まずは白虎から参りましょうかっ!!」

 

 私は引き続きAGIを異常値に設定したまま西方の地へ向かいます。この速度ならマップ端から端までほぼ時間をかけずに辿り着く事が可能です。とにかく今の私はこの現状を戦いで表したいのです。今の私がどこまで本気になれるのか、それを確かめてみたいのです。

 

「ふふふっ!予想は当たっていたようですねぇっ!!」

 

 西方のマップ端まで来ると、目の前に白く巨大な虎らしき生物が姿を現しました。私はそのままの速度で抜刀し攻撃を開始します。白虎は典型的な近接戦タイプ。目にもとまらぬ速度でのひっかき攻撃やかみつき、突進にのしかかりなど、多種多様な攻撃が異次元の速度で襲いかかってきます。

 ですが今の私には全てが見えています。白虎が認識出来る以上の速度で空中を飛び回り、その手に持つ黒く光る双剣をひたすらに白虎の身体に打ち込み続けます。私の剣には【科学術の心得】で付与される状態異常:科学汚染が付与されています。連撃と状態異常によるスリップダメージで白虎の体力はみるみる減少していきます。

 

「はは、あっはははっ!!遅い、遅すぎますよぉっ!今の私には全てが遅く見えるのですっ!!」

 

 私は高らかな笑いを浮かべながら白虎にトドメの一撃を放ちます。白虎の体力が尽きその巨躯が倒れ伏していきます。そして先ほどの青龍と同じようにすぐさまスキル取得の通知が届きました。

 

 <白虎討伐に基づき、スキル【廻天】を取得しました>

 

 【廻天】

 自身に状態変化:輪廻を付与する。1日1回のみ発動可能。

 *輪廻:死という概念を超越し、数秒前の時間軸に干渉する事が出来る。

 ・取得条件

 ?????を撃破する。

 

 時間という概念を僅かに改変出来るスキルですか。非常に面白いではないですかっ。この調子なら朱雀や玄武もさぞ素晴らしいスキルを用意しているに違いありませんっ。あぁそうとなりましたら早速残りの2体を撃破しに向かいませんと。

 

 

 

 

 ALERT ALERT ALERT ALERT ALERT

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 本来討伐不可能に設定されたボスの討伐を確認しました。内蔵AIの独自判断により討伐者にスキルを付与します。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ALERT ALERT ALERT ALERT ALERT

 

 

 ALERT ALERT ALERT ALERT ALERT

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 本来討伐不可能に設定されたボスの討伐を確認しました。内蔵AIの独自判断により討伐者にスキルを付与します。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ALERT ALERT ALERT ALERT ALERT

 

「お、終わった……」

「誰かあのバケモノを止めてくれ……っ」

「ま、まさかリーフがあそこまでの力を隠していたなんて……っ」

「む、無理だ……あんなバケモノに対応出来るボスなんて作り出せる筈がない」

「内蔵AI がおかしくなるほどのプレイヤーってなんだよ……っ」

「しゅ、修正の方は上手くいきそうなのか?」

「これに関しては……一度リセットをかけない限りどうしようもないかと」

「くそぅ……なんだあのラスボスはよぉ……っ!!!」

 

 

 

 <朱雀討伐に基づき、スキル【黒点】を取得しました>

【黒天】

 自身を中心として半径30キロ圏内に超高温地帯を生成する。発動後3時間で再使用可能。超高温地帯にいる自身以外全ての存在に状態異常:灼熱を付与する。

 *灼熱:この状態異常が付与されている間秒間30の防御無視ダメージを与え続ける。

 ・取得条件

 ?????を撃破する。

 

 <玄武討伐に基づき、スキル【零天】を取得しました>

 【零天】

 10秒間の時間停止能力を使用可能にする。1日3回まで使用可能で発動後3時間で再使用可能。

 ・取得条件

 ?????を撃破する。

 

 

 

 

 

 

 第二回イベントは表向きは普通のイベントとして終幕しました。最後にサリーが一暴れしたことでの一波乱があったようですが、そこから先の出来事は至って平和的であったと言われています。

 私は四神を全て撃破し4つのスキルを入手するに至りました。どれもこれも一プレイヤーが所持するには強大すぎるスキルの数々です。そこで私はとある可能性に至りました。それは、もとより四神の撃破は想定されていなかったのでは無いかと言うことです。

 四神は所謂マップボーダーを超えないためのセーフティとして機能しているボスでした。マップ外に出ようとするプレイヤーを圧倒的な力で粉砕し、プレイヤーにトラウマと言う名の教訓を与えることこそが彼らの役割だったのではないかと。

 

 故に可能性として元々スキルが設定されていたかどうかすら怪しいと言わざるを得ません。ですが現にスキルは私の所持するところとなった。運営がすぐそこまでスキルを実装できるとは思えません。とすると……ゲーム自体が私にスキルを与えたのでは無いかと。

 それならある程度の説明が付きます。このNWOと言うゲームそのものの私に対する敗北宣言があのスキル達だとするならば、私も自然と納得出来る理屈になり得るのでは無いでしょうか。

 

「であるからにして……この方程式は……」

 

 イベント翌日。今日も今日とていつも通りの授業です。ゲーム内で両目が見えるようになったとはいえ、未だにリアルでは私の左目は全くと言って良い程機能しておりません。当たり前です。名医をして私の左目は回復しないと宣告されているのですから。

 ですが、それこそが本来の私なのです。両目が見えるのはゲームと言う名の非現実が生み出す幻想(ゆめ)に等しいのですから。私はその幻想の中では誰よりも自由でいられる。それだけで十分ではないでしょうか。

 

「桜井。ここの方程式を解いてみてくれ」

「はい。まず最初の式を……そして次をこのように書き換える事で……よって値はこうなります」

「正解だ。さすがだな」

 

 人間にとって視界とは情報入手の手段の一つに過ぎません。それに私は全盲ではなく片目は見えているのです。確かに情報の半分を入手することは出来ませんが、逆に言えば半分の情報を入手することは出来るのです。

 私はその入手出来ない半分の情報を残りの感覚で補うことで日々を過ごしています。特に聴覚は重要視するものの一つです。まぁやっていることは目が退化した生物と同じ事なのですがね。音の大きさや方角、その性質をある程度分析して、対象がどの範囲にいるかを予測しているだけです。

 私はそうして失った視力を補ってきました。そのための手段としてゲームと言うのは重要な役割を果たしてくれました。今の私はゲームを趣味とし、ゲームを人生の糧としてこの世を生きているのです。

 

「これで授業は終了とする。各自昼休みに入ってくれ」

「ふぅ……」

「お疲れ早苗〜。今日も大活躍だったね」

「そうでもありませんよ理紗。あなたもしっかり学べば理解出来る範囲の内容です」

「うへぇ簡単に言ってくれちゃって。そんな単純な問題じゃ無いんだけどなぁ」

 

 私の左目は暗闇のみを映しています。この目が真に開く時はゲームで反転させるときだけなのです。ですが今の私にはそれで十分なのかもしれません。そう、私は片目での生活に慣れすぎました。左目が見えると言う感覚を知らずに生きてきたのです。いきなりそれが開くようになったと言われても、慣れるのはそう簡単な事では無いでしょう。

 だからせめて夢の中でだけは自由でありたいと思います。それが私の人生の新たな彩りとなるのならば、私はどこまでも進んで見せましょう。大丈夫です。それもまた一種の縛りプレイなのですから。

 

 

 




はい。今回はここまで。これで第1章黒聖女の秘密は完結です。次回から新章となります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。