流行らせたいので縛りプレイをしようと思います。 作:正体不明の筆者A
私が理紗と出会ったのは高校に入学した初めの日のことでした。私と理紗は同じサ行の名字を持つもの同士であり、偶々席が隣になったのを覚えています。
私は当時暇つぶしとして持ってきていた漫画を読んでいました。確かかなり人気のタイトルで発売日に買えない人が続出したと記憶しています。私は当時電子書籍ではなく紙を多用するタイプでしたので。
『へぇ〜それ○○でしょ?私それ買えなかったんだよね〜』
理紗は私が読んでいた漫画を知っていたのか私に話しかけてきました。話しを振られたら返答するのが礼儀だと私は当たり障りのない話しをした記憶があります。
『羨ましいなぁ。あっそう言えば自己紹介してなかったね。白峯理紗。よろしくねっ』
彼女はあの時から気さくな性格をしていました。私はやはり人間不信を拗らせていたので、かつての彼女とも当たり障りの無い話や返答ばかりをしていた記憶があります。
ですが理紗はそれだけで止まるような女子ではありませんでした。彼女は何を思ったのかずっと私に話しかけ続けて来たのです。今までの子達は私がこういう態度を取ったら脈なしとばかりに立ち去っていたのに、彼女にはそんな素振りが一つも見えなかったのです。
『へぇ〜早苗って色々ゲームやってるんだね〜。ねぇねぇ今度マルチしようよ。私もそれ持ってるからさっ』
『うへぇ早苗強いなぁ。私も結構やりこんでるつもりなんだけどなぁ。いよっし!こうなったらあたしが勝てるまで耐久しちゃうぞ〜っ!』
『早苗早苗っ。じゃじゃ〜んっ。にしし、新しいゲームを買ったらやることは一つだよねっ』
『早苗〜。お母さんがそろそろ勉強しなさいってうるさいんだよ〜っ!私のゲーム人生のために勉強教えてよ〜っ!!』
彼女の底知れない人間性に、気がついたら私は少しずつ感化されていったのでしょう。今でも全ての人間を信頼出来るとはとても言えません。ですが少なくとも理紗や楓のことは信じよう、そう思えるくらいには、私は少しずつ軟化していったのではないでしょうか。
楓も楓で似たもの同士なのか私との関わりを持ち続けてくれました。理紗と似たもの同士なのかは分かりませんが、昔から親友をしているだけはあると言った具合でしょうか。それに彼女は意志が固い子なのです。
私は初めて友人と言うものを持ちました。週末にお出かけをしたり通話をしたり、学校でたわいも無い話をする、他人が持っていた日常の一つを得ることができたのです。彼女達との関わりが私にどれだけの影響を与えたかなんて想像すら出来ないでしょう。
私がいつからか自然な笑みを浮かべるようになれたのも、彼女達と関わり続けた末の結果だと思っています。ですがやはり今まで続けて来た生き方と言うのは変えられないものです。私は大切な思春期の時期を孤軍奮闘していたのですから。
今の私がこだわり続けるのもかつての経験が故のことなのです。今でも私はどこかでかつての幻影に囚われているのです。自分のアイデンティティを何かを極める事に求めることしか出来なかったのです。
「「お〜いっ!!」」
そんな私を、受け入れて、超えてくれる人々が、周りに居ることを示してくれた。私にとってゲームとは、人生の転機をもたらしてくれた掛け替えのない物なのです。
「良いですね。こんな穴場物件があったとは」
「でしょ〜?購入代金もそんなに高くないからほんとに穴場って感じなんだぁ」
メイプルとサリーが見つけて来たのはまさに木の家と言って良い外観をしたギルドホームでした。お値段もお手頃で外観や内装もヨシ。合計収容人数もそこそこと私達にとってかなりの好条件とも言える場所と言えます。
「それではここで決定でよろしいですか?」
「「うんっ」」
「では……」
ギルドホームの購入は購入用のお金と先ほど入手した専用アイテムが必要になります。ギルドホームの値段は収容人数や立地、内装などで決定され最終的な金額が算出されます。まぁお金については私の方で幾らでもまかなえるので問題はないのですが、こういう隠れ家の様な雰囲気に憧れないかと言われたらそれは嘘になるでしょう。
「購入完了……これでこのホームは私達の物となりましたね」
「ね〜っ!早速ギルド登録しちゃおうよっ」
「そうだね。リーフ何か案はある?」
「さぁ?ふふ、そういうセンスは二人の方にお任せしますよ」
私は表沙汰に動くより裏でコソコソしていた方が性に合うのです。私はあくまで戦闘要員ですからね。それにこう言うのは私より二人に任せた方がより面白い方向へと向かうのは経験上知っていることです。
取りあえずは命名を後回しにして私達3人は同じギルドの所属となりました。さて、ここからは追加メンバーをどうするかと言う相談になってきます。私の知り合いは基本的に他ギルド所属やマスターだったりするので、これもやはり二人に任せてしまった方が良いと思われます。私が役に立たなすぎる気がしますがきっと気のせいでしょう。
「追加メンバーかぁ……あっそうだっ!」
メイプルが何かを閃いたようでチャットアプリを操作し始めました。やはりメイプルは各所で知り合いとなるプレイヤーを沢山作っていたのでしょう。やはり彼女をある程度放任したのは正解だったのかもしれませんね。
「メイプルったらいつの間にかフレンドが増えてるんだよね」
「それが彼女の良いところだと思いますよ」
「ふふ、まぁね」
ということでメイプルが知り合い全員に声をかけてくれたようです。人数にして4人ほど。中には私の顔見知りもいるとのこと。しばらくしてそのメンバーの人達がこちらに到着したようです。
「おぉう、まさか件の聖女様がメイプルの知り合いだったとは」
「あらクロム知らなかったの?まぁあなたほぼ彼女とは面識ないものねぇ」
「ボクは初めてかな。初めまして。ボクの事はカナデって呼んでね」
「私もリーフとは初対面だったな。カスミだ。よろしく頼む」
メンバーは生産職のイズさん、大盾使いのクロムさん、魔法使いのカナデくん、剣士?武士?のカスミさんの4人です。イズさん以外はほぼ初対面のメンツですが、カナデくんとカスミさんはどうやらメイプルが第二回イベントで知り合ったプレイヤーのようですね。
時期的には丁度私が四神をシバき回している時でしょうか。あの時は身体とスタミナに無理を言わせて強行軍をしていましたから、二人の元に戻る手間も惜しんでいたのですよね。そんな出会いがあったとは思いもしませんでした。
「初めまして。プレイヤー名リーフと申します。以後お見知りおきを」
「リーフちゃん相変わらずねぇ。その衣装今も使ってくれてて嬉しいわ」
「えぇイズさん。お陰様で色々と物騒な異名が増えて困っていますよ」
「リーフちゃんの場合はプレイスタイルが……おっといけないいけない。俺はクロム。まぁしがない大盾使いをやらせてもらってる」
「初めましてクロムさん。お噂はかねがねお伺いしています。メイプル以外で唯一最強クラスの大盾使いだと」
「め、メイプルを引き合いに出されちゃもうどうしようもないがな」
クロムさんは第一回イベントで10位にランクインを果たした大盾使いのプレイヤーです。メイプルというブレイクスルーを除けば最強クラスのプレイヤーで、大盾のプレイスタイルを体現した攻守一体のプレイスタイルを得意としておられます。
そして何よりあの蹂躙劇となった第一回イベントで私の攻撃を辛くも耐えしのぎながらのこの高順位です。私の中では密かに評価していたプレイヤーでもあります。やはり上位勢と比較すると見劣りする部分があるとは思いますが、彼の真価はパーティ戦にて機能するタイプですので大した問題にはならないでしょう。
カスミさんは第一回イベントで6位に入賞した近接タイプのプレイヤーです。得意技は様々な太刀スキルであり、よく言えば正統派な日本刀使いの立ち回りを得意としています。彼女の最大の武器はその機動力であり、炎帝の国所属の崩剣のシンに純粋な剣術のみで圧倒した経験すら持ちます。
彼女はその機動力に見劣りしない状況判断能力を持ち合わせており、やはり上位のバケモノもといペインやドレッド等を差し引くと、他プレイヤーが彼女の剣術を見抜くのは困難を極めるでしょう。
一方でカナデくんは私のデータベースをひっくり返しても一切データが出てこない希有なプレイヤーです。恐らく前線に出て活躍した経験が無いのが最大の要因でしょうが、どうせメイプルが連れてきたメンツですから何かしらが壊れている事が予測されます。
彼曰く得意分野は属性魔法らしいですが、何やらキューブ状の変わった武器を所持しているようです。どうやら何処かしらの高難易度パズルを解いて入手したとのことですが、これも詳細な情報は一切不明となっています。
「詳しい話や積もる話、その他聞きたいことは様々ありますが、取りあえず皆様は我らがギルドに参加して頂けると言う事でよろしいですね?」
「あぁ。せっかく誘われたからな」
「メイプルちゃんのお誘いだもの〜」
「私は第二回イベントの時の恩があるからな」
「メイプルに付いていったら何か面白そうな事がありそうだしね、にゅふふ」
ということで、私達のギルドに4人の新メンバーが加入なされました。これで合計で7人とそこそこの少数集団になりましたね。さて、これくらいの人数がいればギルドを正式に樹立するのにふさわしい段階に来たと思われます。
「いよっし。それじゃあギルドマスターを決めないとねっ」
「ふむ。それでしたらせっかくですのでメイプルがギルドマスターをやってみては如何でしょうか?」
「えっ!?私っ!?」
「あ〜それいいかも」
「ここに居るメンバーはメイプルがいたからこそ集まったメンバーです。それならそのきっかけを作ったメイプルがギルドマスターになるのは必然だと思われます」
「とか言ってるけど本音は?」
「そっちの方が面白そうですし、私は誰かを隠れ蓑にしてコソコソしている方が趣味なので」
「元も子もない事言われたっ!?」
メイプルの盛大なツッコミが入りましたが、残念ながら私は嘘を吐かないのです。真実を隠すことはまぁまぁありますが、嘘だけは吐きませんので。そしてこの場にメイプルがギルマスになるのを反対するメンツはいません。
「……うんっ。そこまで言うなら私がやるよっ」
「では決まりですね。ではギルドマスター。最初の仕事としてこのギルドの名前を決めて下さい」
「な、名前っ?え、え〜っとどうしよっかなぁ」
ギルドの名前はギルドマスターになったプレイヤーに原則として命名権が与えられます。私はこういう名付けがあまり得意ではありませんので、ここはメイプルのセンスに期待したいところです。彼女は少しばかり思考すると、何やら頭に電球が浮かんだかのような閃きを得ました。
「……楓の木。このギルドの名前は楓の木にしますっ!」
「良いわねぇ。メイプルちゃんらしいわ」
「そうだな。俺も賛成だぜ」
「ボクも賛成だよ。まさにこのギルドを象徴してる感じ」
「私も賛成だ」
ここに新生ギルド、楓の木が爆誕することになりました。
遂に色々と壊れた楓の木が爆誕しました。運営の胃痛も最高潮に達していますが、私は上位次元の存在なのでこれからもドンドン胃痛に苦しんで貰いましょう(鬼畜)