流行らせたいので縛りプレイをしようと思います。 作:正体不明の筆者A
<第4回イベント開催決定!!>
ついに第4回イベントの開催が決まっちゃったぞ!今回はギルド対抗のPVPイベントだ!時間加速を使ったリアルな防衛戦に注目だ!!
「来たね〜対抗戦」
「予想通りではありましたが」
遂に第4回イベントの詳細が発表された。私と早苗は何時ものようにビデオ通話をしながら……ではなくソファーで隣同士で座りながらそのお知らせを眺めていた。
何せ今日は早苗のおうちにお泊まりの日。楓は予定が付かなかったから今日は私だけなんだけどね。私は早苗の肩にもたれ掛かりながらスマホで情報を確認していたりする。
「で、今回はどうするの?」
「まぁ全員参加の方針ではありますが、理紗としては私やメイプルだけ活躍してもつまらないでしょう?」
「そりゃね〜。それに私は初めての対人イベントだから、燃えない方が無理って物でしょっ」
私は時期的に第1回イベントに出られていない。確かに第2回イベントでも対人戦こそしたけれど、本格的なものは初めてだった。
でもうちのギルドには楓と早苗っていう2人のぶっ壊れが居る。今回のイベントは2人がどう動くかで戦略が変わると言って良かった。
「理紗ならそう言ってくださると思っていましたよ。ですので先に戦略の方は考えてあります」
「おっさすが〜。それじゃあ早苗の話をしっかり聞かせてもらおうかなっ」
私は今回のイベントにおける早苗の案を聞くことにした。まず今回は時間加速を使った長期イベントと言う扱いになる。そして舞台は専用に用意されたフィールドで、その詳細は本番になるまで分からないとのことらしい。
「理紗はうちのエースです。そして前衛の要でもあります。ですがご存じの通り、理紗はスタミナ面が欠点です。夜通し走って戦い続けてはどこかで綻びが出る可能性が非常に高いです」
私だって人並み以上には動き回れるつもりだけど、早苗クラスかと言うとそんなことは無い。早苗はやろうと思えば48時間ぶっ通しでプレイし続けられる強靱なスタミナも持ち合わせているからね。
「ですが理紗が暴れ回りたいと言う気持ちはよく分かります。ですのでまず私がイベントエリア全域のマッピングを終わらせてきます。その情報を元に現地で新たな戦略を立てることになるでしょう。マップに欲しい情報は、敵の位置、マップの地形情報などがあれば良いでしょう」
「でもそれだと早苗の負担が重くならない?」
「ふふ、私をなめないでくださいよ理紗。それに策はいくらでもあります。そして何より重要なのが、集う聖剣と炎帝の国の情勢を細かく知ることだと思います。彼らは最大派閥のギルドと言うだけで無く、ランキングトップクラスの強豪プレイヤーが集うギルドでもありますので」
確かにその2つのギルド達のことが気がかりだね。特に前偵察に来てたフレデリカの所属する集う聖剣は驚異だ。早苗を除くと現状最強クラスと言われるペインを要しているだけでなく、そのほかにも力強いメンツが揃ってるからね。
そして早苗としては、今回は早苗自身ではなく他のギルドメンバーに活躍してほしいとのこと。早苗が思いきり暴れれば確かにイベントで勝利することなんて容易だろう。でもそれじゃあ他のメンバーがつまらない思いをすることになってしまう。
だから早苗は意図的に協力をせずに単独行動するらしい。ギルドがピンチだったらその時は助けに入るって言ってくれたけど、基本は不干渉主義なんだろうね。早苗らしいっちゃ早苗らしいね。
「ですので最終的な戦略は理紗、あなたが考えてください。私は道を示しただけに過ぎません。これはあなたの実質的な初陣なのです。その力を存分にふるって下さい」
「へへ。言われ無くてもそうするつもり。早苗が私に期待してくれるなら、私はその期待に応えるだけだよ」
「その返事が聞けて良かったです。これで私は存分に裏側で暴れることが出来ます」
早苗はそう言って優しく微笑んでから私の頭を抱き寄せてくれる。私はそんな頭を撫でられる間隔に酔いしれながら、自分に課せられた責任の重大さを再認識する事になった。
一通りの話が終わって、再びリビングに静寂が訪れる。今日は私と早苗のふたりきり。夕ご飯も食べてお風呂も入った。後はベッドに潜って眠るだけだ。
だけど早苗は何やらまだ話したいことがあるみたい。彼女はひとつ息をふっと吐くと、私と目を合わせるようにして顔を向けてきた。相変わらずの絶世の美貌が私を目を捉えて放さない。
「理紗。ゲームは楽しいですか?」
「?もちろん楽しいよ?今更そんなこと聞くなんて早苗らしくないね」
「えぇ。私らしくないかもしれません。どうせです。今日という日に感謝してひとつ話をすることにしましょうか」
早苗はそう前置きをして淡々と私に対してとある話をし始めた。
私が早苗と出会ったのは高校1年の最初の日。私達は隣の席だった。
最初に早苗に抱いた印象は、異常なまでに高校生離れした美人だなぁってくらいだった。本人申告で身長170cmですらっと無駄を省いたようなプロポーション。今時のモデルでも見られない目鼻立ちの整い方に、彼女の特徴でもある赤い瞳。こんな美人がこの世にいるんだって大真面目に思ってた。
でも、その時の早苗は誰に対しても素っ気なかった。確かに人当たりは良いかもしれない。でもそこに親しさを感じることが出来なかった。笑顔のひとつも無く、ただそこに居るだけの存在。早苗はそんな女の子だった。
私が声をかけたのはふとした気まぐれだったんだと思う。彼女が読んでいた漫画が気になったから。それだけの話だった。当然早苗は私を近づけさせようとしなかった。彼女の拒絶心は当時の私ではどうしようもないくらいに強固だった。
でも、なぜか私は早苗と仲良くなりたいって思うようになっていった。理由なんて分からない。でも、きっと彼女とは仲良くなれるって確信が私の中にあった。
だから私は拒絶する早苗を無視してどんどん彼女と関わりを持つようになっていった。一緒に帰ってみたり、ゲームをしたり、お買い物に連行したり。私と早苗の趣味が似ていたのは偶然だったと思う。
私のそんな努力は早苗にも顕著に表れた。今の早苗が良い例だろう。笑顔が増えて、他の人と関われるようになって、こうして隣で微笑んでくれる。1年以上前の早苗じゃ絶対に考えられないことだった。
だから……
「え……それ、ほんとなの?」
「はい。今まで隠していて申し訳ありませんでした」
私は驚愕した。早苗の秘密を知ってしまったから。早苗の思いを知ってしまったから。
早苗は左目が全く見えていない。早苗は生まれてから右目での視界でしか世界を知らない。早苗が【隻眼】で左目を選んだのもこれが理由だった。
そして、早苗がどうして人間不信になっていたのかと言う理由も話してくれた。
「私の親は酷い親でした。私は望まれぬ妊娠で生まれた子供です。親同士の仲も悪く私が生まれたから仮の結婚関係を築いているだけの関係性でした」
そして早苗は半ば育児放棄とも言える状態で育っていくことになる。親達は最低限の子育てこそすれど、彼女を愛すると言うことはほとんどなかったらしい。早苗は家の中で昔からずっと孤独に生きることを余儀なくされていた。
彼女が大人しい子供だったのが余計にそれを加速させたんだろう。小学校に入ることには彼女は他人を拒絶するようになってしまっていた。でも早苗は聡い子供だった。上辺だけを繕って人と関わり、自分に踏み込ませることを一切しない。
そんな彼女の防衛反応は周囲から人を遠ざけていった。早苗は子供として早期に成熟しすぎていた。そんな彼女を怖がって誰も彼女に近づこうとしなかった。
「親からも愛されず、大人達は私を怖がって近づこうとせず、子供達は私の異様な雰囲気に気圧されてかだれも近づこうとしない。私が孤独になるのはある意味必然でした」
そんな早苗が選んだのは、何かを極めることで自分の自我を確立させることだった。自分はこの世に望まれず生まれた存在。そんな自分自身を定義するためには何かをしなければならない。そうすることで早苗と言う存在をこの世界に存在させ続けなければ、彼女は壊れてしまう。
だから早苗は過剰なまでに物事にのめり込み始めた。やれることは何でもやった。それが出来る極地まで徹底的にやりこみ続けた。そして早苗はそれが出来てしまった。
「私は天才だったのでしょう。運動をすれば男子含めたクラスで1位になり、勉強をすれば満点のみを出し続け、成績はすべて満点と言う有様でした。楽器をすれば1ヶ月もせずにプロ並みに弾きこなすことが出来て、料理をすればそれは高級料理店で出てくるような料理に変わり。私はやれることは何でも出来たのです」
でも、そこに達成感はなかった。早苗は自分は何でも出来てしまうことに気がついてしまった。そこに努力も無ければ達成感もない。それはさらに彼女を追い詰めていた。何でも出来るのだから、やったところで無駄じゃないか。でもやらなければ自分と言うものを保てなくなってしまうと。
早苗はそんな自分に苦しみ続けながら、ひたすらに自分を痛めつけていった。何をやっても達成感を得られないのに、彼女はやれることは何でもやってしまった。その積み重ねが災いし、あの時のような彼女が生まれてしまったという。
「誰かに認められたいなんて思っていませんでした。私自身が実感を得られるだけで良かったのです。ですが、それも敵わなかった。私はそんなからっぽの自分が嫌いでした。私はただ満たされたかっただけ。それすら叶えられない自分が嫌いでした」
だけどゲームだけは唯一彼女を少しだけ満たしてくれた。ゲームはやり方次第でどんなプレイでも出来る。彼女は必然とそんなゲームに飲まれていった。自分を追い込むためにどんなプレイもした。全ては彼女自身の願望を叶えるために。
「そんなときでした。私は…理紗、あなたと出会った」
「理紗は入学式の日。私に話しかけてくださいましたね。まるで友達に話しかけるように気さくな様子で」
「私は最初理紗すら拒絶しようとしました。でもあなたはそんな私に唯一踏み込んで来てくれた。他の子では成せなかったことを、あなたは成してくれた。からっぽだった私に形を与えてくれた」
「初めて誰かと遊びに行った。初めて誰かと話せた。初めて誰かと趣味が合った。初めて誰かと趣味を共有出来た。初めて誰かとゲームをすることが出来た。初めて……誰かに、あなたに心を許すことが出来た……初めてあなたに愛された」
「私は嬉しかった。あぁ、満たされるってこう言うことなんだって分かった。あなたが、理紗が、私にそれを教えてくれた。私はあなたに救われた。あなたになら心を許しても良いって思えた。あなたになら……私を預けても良いって思う事が出来た」
早苗は心の何処かで誰かに見てほしかったんだと思う。でも周囲はそんな早苗を拒絶してしまった。早苗の負のスパイラルを止められる人は誰も居なくて、彼女はどんどんと苦しむ道へと進んでしまった。
でも、早苗は私を頼ってくれた。私と遊んでくれた。私に心を許してくれた。私を愛してくれた。それは私のお陰だって言うけど、私だって早苗と関わるようになってからさらに毎日が楽しくなった。お互いに、同じ事を思っていたんだって。
「理紗。ありがとう。私はただそれだけが言いたいです。あなたが居なければ、私はきっとダメになっていました。私はあなたに救われた」
「理紗。好きです。大好きです。今はただそれだけを言いたい。私を救い出してくれて、私に愛を教えてくれた。好きです。愛しています」