流行らせたいので縛りプレイをしようと思います。 作:正体不明の筆者A
ペインが確実に強くなっていると申し上げた通り、彼は確実に私の領域に到達しつつあります。彼はゲームのセンスと言うのが抜群に良いのでしょう。圧倒的スキル不利を持ちながらも私に肉薄できる実力を持っているのですから。
「あはははっ!!また腕を上げましたねっ!!」
「お褒めにあずかり光栄だなっ!!」
彼は既に二重三重のデバフを受けてかなり弱体化しています。ですが未だに私の攻撃に付いてこられているどころか、隙あらば私の喉元を掻っ切らんが如き攻撃を仕掛けてきます。
最初のペインであればこんな一撃を繰り出せはしなかったでしょう。彼が恐怖を克服し始めている証拠なのです。それが分かって私は大変嬉しく思っているのです。
私の細身の剣と彼の両手剣が激しく火花を散らし合います。その剣筋はもはや並のプレイヤーどころか上級者でも視認不可能でしょう。お互いにお互いを倒そうとする意志だけがそこにはありました。
「ふふっうふふふふっっ!!あぁっ!やはり貴方との戦いは心が躍って仕方有りませんっ!」
「その余裕面そろそろゆがめたいところだなっ!【退魔の聖剣】っ!」
「やれるものならやってみなさいっ!!【雷帝剣】!!」
お互いがお互いの死力を尽くしてする戦い。これほどまでに燃える物事が果たしてあるのでしょうか。お互いのスキルがぶつかり合い周囲に属性エネルギーが拡散していきます。それらは地面にぶつかり小規模の爆発を起こし、私達の戦いが如何に白熱しているかを演出しているのです。
ペインの剣筋に迷いはありません。私を倒すためだけにその剣は振るわれています。私から勝利をもぎ取るためだけにその剣は振るわれています。あぁ、これこそが勝負、これこそが私が望んだ決闘!そこに無粋な物は必要ないのですっ!!
「ペインっ!!やはりあなたと戦えることを私は光栄に思いますっ!そんなあなたに対して手加減は無用!!今できる私の全力をお見せしましょうっ!!【纏雷武装】!!」
私は魂の昂ぶりを感じながら高らかとスキル名を宣言します。すると私の装備は光を放ち即座に変換されていきます。天使を模したような翼は機械化された翼に。月桂冠は近未来のヘッドセットと一体化し人工物へと変わり、私の真っ白な装備はあちこちが白い金属で覆われそこから緑色の光を発し始めました。
これが【纏雷武装】の最大の特徴。自身の装備を近未来の武装スーツの様な見た目に改変します。それに加えて『機械神の化身』が使っていたスキルを使用可能になるほか、武器に雷属性のエネルギーを纏わせることも出来るのです。
「また君は変なスキルをっ!!」
「ペインっ!!あなたが成長しているように私もまた成長しているのですっ!!私の全力を、私の思いをその身に刻みなさいっ!!」
リーフの新スキル【纏雷武装】。俺はこのスキルの恐ろしさをその身をもって知ることになった。
まずはただでさえ高い機動力がさらに強化された点だろう。俺は彼女のデバフスキルで相当量のハンデを背負った状態だ。そんな状態でさらに機動力なんて上げられたらたまったものでは無い。
そして何より新スキルの存在。【纏雷武装】にはいくつかのスキルが内包されている。リーフやメイプルが使う【
「(くそっ!あの電磁装甲をどうにかしないことには彼女に手が出せないっ)」
その最たるものが今彼女が展開している電磁装甲。正式なスキル名称を【磁界防御】と言う。効果は単純で自身に電磁の力を持つ
こいつの最大の特徴は金属製の武器が装甲にヒットした時に発揮され、攻撃して来た相手に麻痺に近い状態異常を付与すると言う点だ。早い話感電と言った方が良いだろう。ダメージこそたいしたことは無いが、予想外の刺激を喰らいペースが乱れてしまう。
しかもこの装甲は彼女から少し離れて展開される。そして彼女はそれを知った上で接近戦を仕掛けてくるため、俺が攻撃する意志が無かろうが装甲にヒットする可能性があるのだ。
静電気の刺激をより強くしたような電撃は、確実に俺の集中力を切らそうとその牙を剥いてくる。だが俺は魔法職ではないからこの装甲と向き合っていかなければならない。そして彼女は全くの隙も無くこちらを殺しに掛かってくる。
「(ははっ。だが俺とて手をこまねいている訳にはいかないっ)」
だがこれは逆にチャンスでもある。彼女のスタイルは超接近戦。彼女は過去に遠近両用のスイッチ戦法なんてものをして来た過去があり、それに比べれば遙かに攻撃を当てやすい。そして例の如く彼女は攻撃を一度でも当てれば倒す事が出来るのだ。
今の彼女は戦いからの昂ぶりで異常なまでに接近戦に固執している。これは俺の死が早まるのと同時に彼女の死も早めているのだ。彼女はそんなハイリスクハイリターンを楽しんでいる節さえある。
「(くそ、このスキルをここで使うのは避けたかったが…致し方ないっ)」
俺は未だに彼女に勝てていない。だが俺もゲーマーの端くれ、負けっぱなしと言うのは気に入らないのだ。だから見つけて来た。彼女に特攻となり得る新たなるスキルを。
だがこれは俺の手の内を彼女に明かすことと同義になる。このスキルを見破られたら彼女に勝つのはほぼ不可能になるだろう。だが、この千載一遇のチャンスを無駄にするわけにはいかない。俺は覚悟を決めることにした。
「……【
【
30秒間の間対象と自身のステータスを入れ替える。1日に1回のみ使用可能。
スキルを発動すると、俺の身体が異様なまでに軽くなるような感覚を得た。スキルの効果が無事に発揮されている証拠だろう。
このスキルは言ってしまえば俺とリーフのステータスを一定時間お互いのに入れ替えてしまうと言うスキルだ。彼女は確かにPSも馬鹿げているプレイヤーだ。だがやはりその強さの何割かは取得されたスキルにある。
しかも今の彼女は【隻眼】ではなく【開眼】の状態。デバフスキルの概念をほぼ無力化した彼女のステータスを一時的に奪取することが出来る。当然一撃食らったら死亡すると言う事実は変わらないだろう。
「……はは、あはははっ。あなたもその領域に到達したのですねっ!」
リーフは明らかに俺の表情が変わり今の状態を察したのだろう。今までに無いほど純粋で、綺麗な笑みを浮かべた。あぁそうさ。俺は確かにリーフと言うプレイヤーになることは出来ない。だが、彼女を模倣する事くらいは可能なはずだ。それを今この場で証明しなければならない。
「俺の覚悟を受け取ってくれ!【狂気反転】!【堕天騎士の密法】!!」
「えぇえぇっ!!あなたがお望みならば何度でも受けて立ちましょうっ!!【断罪の聖剣】!!」
俺たちは他の誰よりも決闘を重ねてきた。もうお互いのスキルなど見飽きる程に見続けてきた。ならばお互いのスキルくらい即興でも使いこなせて当然だ。
俺たちは入れ替わったステータスのまま激しい攻撃をし続ける。そして確実に俺が押していることがこう見ても分かる。確かに彼女は強い。俺が今まで見た誰よりも強いだろう。だが、やはり俺たちには埋められないスキルという名の壁があることを、今こうして思い知ることになった。
こんな勝ち方は俺の流儀に反するかもしれない。だが、俺は勝ちたい。この一度だけで良い。俺はリーフと言うプレイヤーに黒星を付けたい。そう願った。そしてその思いがこのスキルを発現させた。今このチャンスをものにするために。
「「はぁ〜〜っ!!!」」
スキルの効果時間が切れる直前。最後のつばぜり合いで生じた光が、俺と彼女を包み込んだ。
「はは……やはり君は強いな」
「ペイン。あなたの敗因が何か、分かりますか?」
そして最後に地面に立っていたのは、私でした。勝負の決め手は本当に僅かな、人間では見極められない僅かな差でしか無かったのです。
「ペイン。あなたは強いです。私が今まで戦ってきた中で一番強いのです。ですが、やはりあなたは『人間』であることしか出来ない。それがあなたの敗因です」
「はは、まるで自分が人間では無いと言いたげだな」
「よく考えて見てください。確かに私は種族としては人間でしょう。ですが、その心がどこまで人間かなんて、私でさえ分かっていないのですから」
私は生まれてこの方自分が普通の人間から外れていると分かっていました。だから私は人間では到底耐えられない苦行にも耐えることが出来ました。
ですが私は確かに人間です。ですが私は真に人間としてここまで生きてこられたでしょうか。理紗や楓のお陰で人間らしい生活を取り戻しつつあるのは事実です。ですが、それはあくまで彼女達と出会った2年足らずでの出来事に過ぎません。
「ペイン。あなたは強い。私の力を借りたとは言え私に後もう少しで刃を届かせることができた。ですが、あなたはやはり人間でしかありません」
「ふっ……俺が君の領域に立つには、まだまだ時間が掛かりそうだ」
「あなたならきっと到達出来ます。私はそういう生まれでしか無かったと言うだけの話です。誰であろうとも、突き詰めればたどり着けるのですから」
私はこの世が産んだバグの様な存在です。ですが現実とはプログラムの様に綺麗に整っているものばかりではありません。私みたいな異端児が生まれる事が往々にして存在するのです。
それはまさにかつての歌で言われたオンリーワンと言う概念そのもの。私はただそれだけの存在なのですから。
……ですがまぁ、そんな私だからこそ、これからをやり直す事が出来るのも事実です。
私が人間に戻れるようになれば、きっとこの異常な性質も少しはマシになる、のでしょうか。それはやってみなければ分かりません。
まぁもしくは、みんなが私と同じになれば、私も普通の人間になれるかもしれませんがね。
【廻天】
【進天】
対象のプレイヤーと能力を共有する事が出来る。
次回、最終回&最長文字数の予定。