流行らせたいので縛りプレイをしようと思います。   作:正体不明の筆者A

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黒聖女と新衣装

 

 

 生産職の鍛冶屋で装備を頼んだ翌日、チャットで完成したとの連絡を受けた私は、ログイン早々鍛冶屋に向かうことにしました。

 注文内容は黒いシスター服に黒の眼帯。イメージは魔王軍に墜ちた聖女の衣装です。今回のロールがまさにそんな感じのビルドになっているので理想通りの注文が出来たのが大変有難かったと思います。

 装備はVITの加算無しでDEXとINTを上げる構成にしています。STRは別途武器で補う予定です。当然店売りを買うことは出来ませんので、別途ダンジョン等に潜り手に入れる事になるでしょう。

 

「失礼します」

「あ、いらっしゃいリーフちゃん。注文の装備、出来てるわよ」

「ありがとうございます。早速拝見しても?」

「良いわよ」

 

 こちらは生産職のイズさん。オーダーメイドの装備を作っている人で、サービス開始当初の中でも腕利きとして知られる人です。今回の装備を作って貰うにあたりしっかりと要望を聞いて下さったのは大変有難いと思っています。

 

「はい。お金は事前に支払って貰っているからそのままお渡しよ」

「ありがとうございます。では……」

 

 私は早速イズさんに作っていただいた装備を身に纏ってみます。指定通りの左目を覆う黒い眼帯、ベースをシスター服風にしながら、鎧風味の装飾を付け丈は短めにして所々ダメージを負ったかのように破かせ、聖職者らしからぬ色気を出しています。

 そして腕には長めのアームカバーを、脚には黒の刺々しいブーツ。まさに要望通りのデザインに仕上がりました。これで後はそれっぽい武器さえ見つけてしまえば問題なしですね。

 

「ふふ、完璧ですイズさん。大切に使わせて頂きます」

「ご希望に添えたようで良かったわ。それにしても、随分と独創的なデザインよね。何か意図があったりするのかしら」

「くす、どうでしょう。後々実装されるだろうギルドで同じメンバーになれたら教えてあげます」

「あら、つれないわね」

 

 これでようやく初心者風の見た目からおさらばすることが出来ます。キャラメイクも完璧、基礎も全て整った。ここから本格的に私のゲーム生活が始まるのです。

 

 

 

「ではありがとうございました。また何かあったらよろしくお願いします」

「は〜い」

 

「クロム〜?こそこそしてても無駄よ〜」

「……ははっ。流石にイズは気づいてたか」

「そりゃね〜。多分あの子も気づいてたと思うわよ」

「実力は折り紙付きってか」

 

「んで、イズは彼女を見て気づいたことはあるか?」

「そうねぇ……素性に関する事はさっぱりよ。でも分かっている事が一つだけ。多分だけどあの子、眼帯をしてる方の目が見えていないのね」

「ほう?その理由は?」

「何となくよ何となく。でも明らかに見えていない方の視界をカバーするような動きをしてるって感じたのよね。クロムが得た情報の【隻眼】は本当とみて間違いなさそうね」

「そうか……なんでまたそんなことをするんだろうな」

「さ〜ね〜。案外大した理由なんてないのかも知れないわ。それこそ、縛りプレイをしたいからって理由だけな気がするけどもね」

「縛りプレイって……あの見た目の若さでその領域にいるってのがもうおかしい気がする」

「ま、あくまで推測よ推測。彼女がいずれ私達の敵となるか味方となるかは、分からないけどもね」

「はは、出来れば味方になることを強く望むところさ」

 

 

 

 早速武器の調達に向かいたいと思います。と言うことで私は第一層の南東部にある祭壇らしき場所に向かうことにします。この場所はβテストの時点で存在が判明していた場所で、特定の条件を満たすことで特別なイベントを起こすことが出来るらしいとか。

 その発動条件は様々で、武器種・ステータス振り・所有スキルなどで変化するらしいとのこと。ですがイベント時出現のモンスター達が結構強いため、ある程度のレベルととPSが無ければ攻略できない仕様となっております。

 

「まぁ私はどんなに強化しようとも一撃死なのは変わらないんですけどね」

 

 VIT−255は伊達ではありません。それならばもう死なない=クリアと同義と言えますから、何も怯えることはありません。

 祭壇の中心に立ち武器を天に掲げます。そうすると祭壇の上空に魔法陣のようなものが広がります。これがイベント開始の合図です。

 広いフィールド一面にモンスターが大量に出現しました。このイベントの趣旨は、逃げることの出来ないフィールド内で、各フェーズごとに襲ってくるモンスターを全て倒す事。フェーズは全部で第3フェーズまで存在し、総討伐数は約300体になります。

 

「さて。では初陣の方参りましょうか」

 

 私の戦略は主に二つ。メイスによる物理攻撃と反転回復魔法による遠距離・範囲攻撃です。メイス攻撃はただの物理近接ですが、反転回復魔法はスキル【過剰回復(オーバーリザレクション)】をフル活用した戦い方になります。

 スキル【回復術の心得Ⅹ】には、俗に範囲回復や全体回復とされるスキルが内包されています。これは古のRPGと同様に誰にでも付与することが可能です。よってこの回復をスキルで攻撃魔法へと変える事で、擬似的な遠距離かつ範囲攻撃として利用しようと言うのがコンセプトになります。

 ですが当然この戦法も万能ではありません。中身は回復魔法でも本質が攻撃魔法になっているせいで、【狂気反転】と違って必中になりません。当たらなければどうということはないのです。そこをどうにかして当てるのがプレイヤーの腕の見せ所なわけですが。

 

「【レストレーション】っ。【レストレーション】っ。MP無くなったら【狂気反転】からの【MP譲渡】っ」

 

 このように多数の敵が相手になる場合は、範囲回復スキルの【レストレーション】を使うのが妥当でしょう。攻撃威力に変換すると某クエストのイオ()ズンくらいの威力になりますので。並大抵のレベルのモンスターでは下手な攻撃をするより強いのです。

 ですがこうやって多数に囲まれると、視界が半分使えないと言うのは致命的な隙を晒すはめになりかねません。ですのでその分聴覚などをフル活用して全体の把握を欠かさないようにする必要があるのです。

 これはいずれ行われるであろう大規模PVPイベントでも活かせる技です。プレイヤーは決まった動きしかしないモンスターとは違います。そんな時に大事になるのは自分の五感を信じる事と第六感を頼りにする事だと思っていますから。

 

「ふぅ……次はメイス主体の戦闘も試してみましょうか」

 

 メイスのような超近距離武器は、いかに相手の隙に攻撃をたたき込めるかが重要になってきます。私はスキル【地砕き】を持っていますので、適度に地割れで移動範囲を制限しながら高速撃破をすることが必要となるでしょう。

 私のようにVITが低い場合、近接で近寄るのは想像以上のリスクを孕んでいます。特に私はナイフの先が掠っただけで逝ってしまうので、絶対に敵の攻撃を見逃してはいけません。視界が片方無いと言うのはこの点に置いて致命的ですが、そんなことでへばっているようでは縛りプレイを乗り越えたとは言えませんからね。

 

「最終ウェーブですか。最後に中ボスが出てくるのは知っていますよ」

 

 そして何の問題も無く最終ウェーブ。ここは最後にちょっと強い中ボスがスポーンしますので、そこまでに上手いことリソースを残す事が求められます。道中の敵自体はたいしたことはありませんので、後残すは最終戦のみとなるでしょう。

 

「来ましたね……いざ速攻!」

 

 最後に出現したのは私の背丈の倍以上はあるスライム。名前は安直にキングスライムです。ですがこいつは見た目だけのサービスモンスターではありません。

 特徴は物理攻撃に対する耐性と俊敏な動きにあります。特に跳躍力に秀でていて、そこからの強烈なボディプレスは軽く私が30万人くらいは消し飛ぶくらいの威力をしています。しかも周囲には振動を発生させるためその後の行動にも影響すると言う有様。

 ボディプレスを余裕をもって回避し、単体で威力の高い回復魔法【エクスヒール】を使いHPをガンガンと減らしていきます。MPが減ってきたら【MP譲渡】での回復も忘れてはいけません。基本に忠実に動かなくてはボス戦は成り立たないのです。

 

「これで、トドメですっ!」

 

 トドメの【エクスヒール】が決まりボスを撃破。無事このイベントを終了させることができました。祭壇周囲に張り巡らされていた結界が解除され、その中心には報酬となる宝箱がひとつ。私の下調べが正しいならこの中身は武器の筈なのですが……

 

 <黒結晶>

【破壊不可】

 STR+30,AGI+10

【スキルスロット空欄】

 

「ふふふ……予想通りのスペックです」

 

 

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