流行らせたいので縛りプレイをしようと思います。   作:正体不明の筆者A

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ここから原作スタートになります。メイプルの暴れっぷりにも注目です。


黒聖女と新入り

 

 

 ゲーマーとは難儀な生き物です。ゲームと日常生活の配分を常日頃考えながら過ごさなくてはならないのですから。どっちかが偏ってしまうのは大変よろしくありません。特に生活が疎かになるなどもってのほかなのです。

 特に私の場合はPSのみで生きているような存在ですので、体調が優れないようでは最善のプレイを行うことは出来ないのです。体調不良で勝負を落とした日には翌日二日間は起きないくらいに拗ねる自信があります。

 

「……」

 

 と言うことで今日もいつも通りの時間に目が覚め、学校に行く準備を整えています。今日の朝ご飯はご飯にインスタントの味噌汁、冷凍してある焼き鮭を解凍して食べています。なんて平和な朝ご飯なのでしょう。これで誰か一緒に食べる人がいたら完璧なのですが、生涯一人暮らしの私には関係の無い話です。

 え、なんで一人暮らしなのか?両親との仲がもう無くなっているから以外に理由はありません。別に私の話なんて興味は無いでしょう。

 私の親はそれはまぁひどいものでした。私はそんな親から独立すべく色々努力し、最終的にかなりの豪運を引いて宝くじが当たったのを機会に親との縁を完全に切りました。今彼らがどこで何をしてるかなんて知るよしもありません。

 

「今日の予定は……あぁそう言えば数学で小テストがありましたね。教科書を見返すくらいはしておいた方が良いでしょう」

 

 今の私はその軍資金をうまく運用しながら、時折ゲーム大会に参加して報酬を得たりして生計を立てています。幸い私には秀でた才能がありましたので、そこを努力で補強しておけば案外勝てるものです。

 さて。今日もいつも通り制服に着替え、いつもの時間に家を出ます。この登校時間は私が私であるべき仮面を被れる時間でもあります。まぁそんな事をしなくても公私の区別くらいは付くのですが、こう言うのは心がける事が重要なのですから。

 

 

 

「おはよ〜早苗っ」

「おはようございます楓。今日もお元気そうですね」

 

 私の元気な声に早苗が反応を返してくれる。ほんといつ見ても早苗はブレないよね。私はそう言うのって苦手だからなぁ。理紗にはそれが私の良いところだって言ってくれるけどさぁ。

 

「あ、そうだ早苗」

「何でしょうか?」

「ちょっと相談したいことがあってさ」

「相談したいこと……もしやNWOの件でしょうか」

 

 さすが早苗は察しが早いなぁ。そう。遂に今日私の家にNWOをプレイするための機材が届く予定なんだよね。結局理紗に激推しされて断り切れず買っちゃったけど、やっぱりまだいまいち腰が上がらないって感じなんだよね。

 

「そう、そうなのっ。理紗は楽しいからやってって言ってくれてるけど、やっぱりまだ不安だなぁって」

「お気持ちはよく分かります。理紗は私と違って純粋にゲームが好きな子ですからね。親友な分断りづらいのもあるでしょう」

「でも理紗はまだログイン出来ないでしょ?私だけ先に一人でやるのは不安だなぁって思ってて……もし良ければ早苗に色々と手伝ってほしいなぁって」

 

 理紗曰く、早苗はNWOでもかなりのトッププレイヤーみたいだし、そんな彼女が手伝ってくれたら私も安心出来るかなぁって思ってたり。

 

「ふふ、そう言うことだと思いましたよ。分かりました。それでは後で指定の時間をお伝えしますので。せっかくプレイなさるのですから楽しんでもらいたいですからね」

「ほんとっ!?ありがと〜っ!」

 

 よ、よかったぁ……。早苗ってゲームの時になると豹変具合が凄いから心配だったけど、その心配をしなくても良さそうだね。

 

「ですが何でもかんでも私が指図するのでは面白くないでしょう。プレイするのは私ではなく楓なのですから。ですので私は序盤の方向性やアドバイスをするに留めようと思います。そっちの方がおもしr……コホン楽しいプレイが出来るに違いありませんので」

 

 ……ほ、ほんとに大丈夫かなぁ?なんか心なしか早苗の目が怖い気がするんだけど。

 

 

 

 そして時間はあっという間に夜。私は事前に楓にやることを伝えてからゲームにログインします。あえて序盤のステータス振り等のおすすめは話さないでおきました。そっちの方が面白そうな結果になりそうですし、ゲームを全くやらない楓がどんなスタイルを選ぶのか、私は大変興味があるのです。

 

「そろそろですかね……お、来ましたね」

 

 街の中心部にある噴水広場のところで待機していると、ポリゴンに包まれた楓と思しき人物が現れました。武器は……ほう、大盾を選んだのですか。少し意外な選択ですね。初心者なら格好いい武器や魔法を選ぶものだと思っていました。

 

「あっ!お〜いっ!」

「ふふ。無事ログイン出来たようですね。ではまず大前提を。私はこの世界ではリーフと言う名で活動しています。これからはこの名前で呼んでくださると幸いです」

「分かった!えっとね、私はメイプルって名前にしたんだ」

「メイプル、ですね。分かりました」

 

 楓を外国語読みしてメイプル。安直のようで安定した命名でしょう。さて、ではまず彼女がどのようなステータス振りにしたのかを見る必要がありますね。この町には一時休憩所の宿屋がありますので、そこで様子を見ることにしましょうか。

 

「ではまず私にどんなキャラでプレイするのかを教えて頂きたいです」

「わ、分かった!」

 

 と言うことで取りあえず宿屋に向かうことにしたのですが、ここで明確にステータス振りが分かる瞬間を見ることになります。そう、歩行速度です。

 このゲームはAGIの高さが歩行速度にも反映されるという仕様があります。メイプルの速度は明らかに遅いと言って差し支えないものでした。本人もそれを自覚したのか酷く驚いているご様子。その辺の説明も兼ねてやる必要がありそうですね。

 なんとかメイプルと共に宿屋の一室に潜り込み、早速彼女のステータスを確認することにしました。そしてそこで私は再び驚かされる事になります。

 

 メイプル

 Lv:1

 HP:40

 MP:20

 STR:0

 VIT:100

 DEX:0

 INT:0

 AGI:0

 

「ほう……VIT極振りと来ましたか」

「え、えっと……やっぱりまずかったかなぁ?」

「うふふ、そんなことありませんよメイプル。むしろこのくらい尖っていてくれた方が私としては面白みが増すと言うものです」

 

 VIT極振り。STRでもINTでもAGIでもなくVIT極振り。いい、実に素晴らしいです。私の中の常識をひっくり返される気分です。やはりメイプルには自主性を持ってプレイしてもらうのが一番良いようですね。

 さて、このゲームにおけるVIT極振りのメリット・デメリットをお話しましょう。メリットはまず上げれば上げるだけダメージを負わなくなると言うことです。このゲームはダメージを負うと感覚として痛みを伴う事があります。

 実際にメイプルも痛いのが嫌だからと言う理由でVIT極振りを選んだと言っています。実に彼女らしい理由だと思います。このゲームにはたくさんの防御系スキルが存在しますので、それらを使えば盾役としての立場を確立出来るでしょう。

 

 逆にデメリットも単純で、それ以外のステータスが全て無いも同然と言うことです。STRがないので物理攻撃が弱く、DEXがないのでそれ系統の動作が苦手、INTがないので魔法も威力が出ないですし、AGIがないので素早く動くことも出来ません。

 しかも普通のオンラインゲームであれば防御と言うのはインフレするにつれて意味を成さなくなるもの。どこかで必ず限界がくる振り方と言うのが世間一般でも常識です。

 ですがこのゲームはその限りではありません。まずVITは物理ダメージだけでなく魔法ダメージすら無効化してしまいます。他ゲーで見る魔法防御と言うものは存在しないのです。

 そしてこのゲームには何の偶然か極振りに適正のあるスキルが存在しています。それとVIT特化スキルを組み合わせれば、誰も破ることのできない鉄壁の壁が君臨することになるのです。

 

 そして何より私が嬉しいのは、これもある一種の縛りプレイであると言えるからです。極振りと言うのは古来より言い伝えられる縛りプレイの一種。AGIで速度だけ上げて制御不能にしてみたり、攻撃力だけ底上げして力に溺れてみたり。

 メイプルがその境地の極地に行ける可能性を秘めている以上、私がこれを阻止することは有り得ないのです。ですので私は全力でメイプルを最凶にすることを決意しました。これは私の縛りプレイゲーマーとしての威信を賭けた戦いなのです。

 

「え、え〜っと……リーフ?」

「……っと失礼。少々脳内会議が白熱してしまいました。分かりました。取りあえずメイプルにはこのゲームに慣れ親しんで貰う必要があります。さぁ、RPGと言えばまず何をするのが定石でしょうか?」

「えっと……レベル上げ?」

「そうです。ここから西の森は初心者でも狩りやすいモンスターが大量に生息しています。まずはそこでこのゲームに慣れてもらうのが一番でしょう。まずは楽しめるかどうかが重要ですからね」

「そ、そうだねっ。えっと、リーフはどうするの?」

「そのVITなら西の森程度ではほぼノーダメージで切り抜けられるでしょう。まずは私に囚われることなく自由に探索を楽しんでください」

「わ、分かったっ!」

 

 そもそも速度特化の私の戦い方を、私とは真逆のスタイルを征くメイプルに教えること自体が烏滸がましいと言わざるを得ません。ここで数時間メイプルを放逐して、そこで入手したスキルを元に次の戦略を考える。縛りプレイの醍醐味ではありませんか。

 それに私は防御系のスキルの全容をまだまだ把握出来ていません。サブデータが作れない以上そう言ったものの実地データが欲しいと言うのもあります。

 

「ち、ちなみに聞きたいんだけど……リーフってどういうスタイルなの?」

「私ですか?取りあえずステータス画面をどうぞ」

「うん。どれどれ……VIT−255ぉっ!?!?」

「うふふ、初期モンスターの体当たりで300人の私が消し飛びますよ」

「どんなスタイルで戦ってるのっ!?」

 

 

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