ゆっくりですが更新していきます。
追記:少し修正しました。
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが暮らしていました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に。おばあさんが洗濯をしていると、川上からどんぶらこどんぶらこ、と大きな大きな桃が流れてきました。
おばあさんは桃を家へと持ち帰り、芝刈りから戻ってきたおじいさんと食べるため、桃に包丁を入れた途端
「おぎゃー! おぎゃー!」
なんとなんと、桃の中から男の子の赤ん坊が出てきたではありませんか。
子どもに恵まれなかったおじいさん達は、突然のことに驚きながらもこの赤ん坊のことを『桃太郎』と名付け、大切に大切に育てました。
すくすくと大きくなった桃太郎はある日、たびたび村へ悪さをしに行く鬼を懲らしめに『鬼ヶ島』へ行くと言い、おばあさんのこしらえたきび団子を持ち、一人鬼退治へと向かいました。
鬼ヶ島への道中、犬・猿・雉を仲間に迎え入れた桃太郎は、っいに鬼ヶ島で鬼の頭領を打ち負かし、金銀財宝を持ち帰っておじいさんとおばあさんと幸せに暮らしました。
――これは、誰もが知る御伽噺。
今も昔も、そしてこれからも変わることはないであろう不変のお話の一つ。
これはそんなお話の遥か未来での出来事。
桃太郎の血を引く少年と、その従者の少女たちが織り成す、新たな
それでは、開幕――
〇
朝、カーテンからこぼれる日の光と、聞きなれたアラーム音にかき消される微睡。
自身の寝床である二段ベッドの上から降り、未だすやすやと寝息を立てるルームメイトを起こさないよう静かに部屋を出る。洗面所にて冷水で顔を洗い、ぼやけていた思考をクリアにした後はキッチンへ。
トースターでパンを焼く間に目玉焼きやウィンナーなど簡単な朝食を用意する。パンが焼き上がり、香ばしい匂いが部屋を徐々に満たしていくと
「……おはよう」
「ん、おはよう。ご飯できてるよ」
そんな匂いにつられて目を覚ましたのか、ルームメイトの少女が寝ぼけ眼をこすりながらリビングへとやってきた。
「
「うん、ありがとう。
桃哉。僕のことをそう呼ぶ彼女の名前は
薄い水色のショートカットに、未だ眠そうにしている同じく水色の瞳。身長は150あるだろうかというくらい小柄で、熊柄のパジャマという様相も相まって小学生の様な印象を抱く幼馴染だ。
小さな口でゆっくりと食事をする彼女の正面の席に座り朝食を口に運ぶ。
普段無口でマイペースな千里との会話は少ないが、御朝菜馴染みということありすでにこの空気にも慣れっこだ。
未だ朝食が半分ほど残っている彼女より先に食べ終え、歯磨きをしたのち制服へと着替えていると、机の上に置いてあったスマホが音を鳴らす。
「もしもし、おはよう
『おはようございます、桃哉様。今からバスで寮を出ます』
凛とした少女の声がスマホ越しから聞こえてくる。
もうそんな時間かと時計を見ると、いつもより少し早いかと思いつつも、そんなものかと時計から意識を逸らす。
「いつもありがとね。千里ももうすぐ食べ終わるからすぐに準備するよ」
『今日もですか! いつもいつも、桃哉様は白雉に甘すぎます! 少しは自立できるようにですね――』
僕の一言に母親のように怒り出す瀬奈。
生真面目な性格の彼女とマイペースな千里では生活スタイルが合わないのは仕方ないが、僕としてはそこまで目くじらを立てなくてもなと思わなくもない。
が、火に油を注ぐほど僕も馬鹿じゃない。千里の準備もあるため、ほどほどに宥めつつ通話を切る。そしてようやく朝食を食べ終えた千里のもとへ行き、空になった食器を流し台へ移すと彼女が準備をしている間に粗いを済ませる。
そうこうしている内にバスの到着する時間が近づいてきた。
「千里、準備はできた?」
「うん、ばっちし」
「そっか。そしたら行こうか」
ぶいっ、と寝ぼけ眼のままピースをする千里に笑みをこぼしつつ、バス停へ向かうため部屋を後にする。
バス停へ向かうと、ちょうどのタイミングで通学バスがやって来て後ろの窓から一人の少女がこちらへ手を振ってきた。
「桃哉、千里! 迎えに来たぞー!」
「
「んだよ、瀬奈の声の方がデカいじゃんか――って、わかったわかった! 静かにするからそんな睨むなって」
到着して早々、仲良く言い合いをしているのは僕の幼馴染たち。
手を振ってきた方の少女が猿候士
そんな紅華とは対照的に校則に則りしっかりと着用し、一つ奥の席から小さく頭を下げるのは、先ほど僕に電話をくれた相手である
腰まで伸ばした黒髪をリボンで一括りにし、いかにも大和撫子然とした少女だが、如何せん僕に対しての礼儀が少しばかり固く、いつも僕の事を“様”付けで呼んでくる。
「おはようございます、桃哉様。こちらの席を取っていますのでどうぞお座りください」
「別にそこまでしてくれなくてもいいんだけど……いつもありがとね、瀬奈」
「いえ、従者として当然のことですので……おい、白雉。いったい何をしている?」
瀬奈に促され、彼女たちの隣の席へと腰を掛けると、そんな僕の膝の上へ千里が当然の如く座ってきた。
ああ、瀬奈の目がまた怖いことになってる。
「なにって、とーやの膝に座ってるだけだけど……瀬奈、目が悪くなった?」
「そんなもの見ればわかる! 聞いているのは座っている理由だ!」
「そんなの、ここはちーの特等席だから。えっへん」
僕の膝の上で自慢げに胸を張る千里に瀬奈は眩暈がしたのか、こめかみを指で押さえマッサージをし、そんな彼女の横では紅華ケラケラと楽しそうに笑っている。
「朝っぱらからそんなカリカリすんなって。そんなんじゃ将来シワが増えるぞー?」
「いったい誰のせいでこうなっていると……。まぁいい白雉、桃哉様の負担になるだろう。隣の空いてる席に座りなおせ……白雉?」
「……くー、すぴー」
「なにを主の膝の上で吞気に寝ているんだ貴様はぁ!」
おちょくる紅華と自分のペースを崩さない千里に怒る瀬奈。
騒がしいと思うが、いや、実際にはバスの中ではだいぶ浮いている方だとは思うけど。何はともあれ、これが僕たちの日常である。
さて、だいぶ自己紹介が遅れたけど、僕の名前は
僕は、いや、彼女たち含めこのバスに乗っている生徒、そしてこれから向かう学校は普通というには少しばかり異常な教育機関。武装探偵――縮めて武偵を育てる東京武偵高校。
荒くれ者や変わり者が多いそんな学校の一生徒であり、
「桃哉様も吉備家の次期当主として、従者の教育はしっかりとしてください!」
「ははっ、そうだね。次からはちゃんと椅子に座るように言うよ」
「えー、桃哉が教育してくれんの? だったらさ、放課後アタシとマンツーマンで……」
「させるわけないだろう、この馬鹿が!」
鬼退治で有名なあの『桃太郎』を先祖に持つ、吉備家の跡取り候補である。
偉大なご先祖様同様、個性豊かな3人の
(さて、今日も1日いい日になりますように)
これはそんな僕たちの激動の日々のプロローグ。
とある少女と
それでは、皆様どうかご照覧あれ。
御伽噺に勝るとも劣らない、そんな僕たちの