五条悟になってワンピース世界に転生したけど、エースだけは絶対に死なせない   作:熊々

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気に入らないのであれば評価せずにブラウザバックしてください。
何でもかんでも、気に入らないものは全部低評価!みたいな方に向けては書いていません。

どうぞこの時点で気に食わないかたは離脱いただく方が賢明かと思います。
アマチュアですが文章とは思想をのせるものだと思います。

さて今回は
PX-1を一発で沈めた直後の話です。
空には光が降りてきていてレイリーは「先に動いていろ」と言いました。

ここから先は街の片側で冥王が光を受け止めて、もう片側で別の重い男が立ちふさがる時間になります。
「肉球」の男です。

俺はと言えば止めるべきか止めないべきか、たぶん人生で一番難しい判断をすることになります。



第二十一話 肉球の暴君

光が樹液の幹の合間に降りた。

 

降りたというより空のひとすじがそのまま人の形を引き受けた、という方が近かった。サングラスの縁。だらしなく緩い肩。海軍大将のコートの裾。痩せた長身が樹液の太い根に立っていて、俺の視界の中ですらその輪郭は半呼吸ぶんまだ揺れていた。

 

光の余韻が肌の上で散らないままだった。

 

樹液の幹の上で、夕方前の陽がほんの一瞬翳った気がした。気のせいではなかった。光の男が立った場所だけ、空気の屈折率が違っていた。違うものを違うままにして、男はゆっくりと首を傾げた。

 

「いやぁ……」

 

声が間延びして降ってきた。

 

「お久しぶりですねぇ、CP9の七番目さん〜」

 

黄猿だった。

本物の。

 

俺は影の縁から半歩だけ前に出た。フードの縁をもう一度引いた。引いた縁の下で、口の中だけ薄く笑った。笑ったところで、向こうのサングラスは何も変えなかった。

 

「もう辞めた」

「いやぁ……元、ですか〜」

「うん」

「元、ねぇ。元、ねぇ……怖いですねぇ、元って言葉は」

 

語尾がぐずぐず溶けていた。溶けているのに視線だけはまっすぐ俺に当たっていた。サングラス越しに目の温度がわかる男というのは滅多にいない。この男はいる。

 

足元の砂利が、三粒だけ蒸発していた。男が立った半径一メートルの範囲だけ、地面の色が、ほんの少し白く灼けていた。

 

息を吸わずに、肩の力を一段抜いた。

抜きながら、無下限の縁を靴底に薄く敷き直した。

 

その上から別の声が降ってきた。

 

「黄猿。久しぶりだな」

 

低かった。

低くて空気の重さが一段増えた。

 

樹液の幹の影に片手をポケットに突っ込んだままの男が立っていた。さっきまで俺の隣にいたはずの男がもう一歩だけ前に出ていた。冥王。レイリー。

 

「冥王さんも〜、出てきちゃいますか〜」

「悪いな」

「いやぁ、悪くはないんですけどねぇ……俺が困りますねぇ」

 

困った口で言うが口角は微かに上がっていた。

 

レイリーが俺を見ずに言った。

 

「坊主、こいつは俺が引き受ける」

「うん」

「お前は別の方へ行け」

「うん。頼んだ」

 

それだけだった。それだけのやり取りで俺の足は反対側に向きかけた。

向きかけた背中に黄猿の声がもう一度ねっとり絡みついた。

 

「逃がしませんよぉ〜、元・七番目さん〜」

「逃がさないのはこっちのジジイの仕事だ」

「おやおや」

 

レイリーが半歩前に出た。

出た瞬間、空気の質が変わった。

 

俺はそれを見届けなかった。

見届けない方がレイリーへの礼儀だった。

 

 

街の北側へ、足を伸ばす。

 

走るより速く、歩くより静かに、無下限の境界を地面に薄く滑らせる。靴底と砂利の間に空気の膜を一枚噛ませて、踏むたびに音を消す。広場の方角から重い破裂音が一発、二発と背中越しに届いた。光の音だ。続けて、別の音。鞘走りに似た擦過音。冥王の刀身が空気を裂いた音だった。

 

三発目は来なかった。

来なかったのがいい兆候か悪い兆候か判断はつかなかった。

判断をつけるのはたぶん俺の役目じゃなかった。

 

(——保つな、あの人は)

 

それ以上は考えなかった。

 

俺の役目は別の場所だ。

 

グローブ番号20番。コーティング業者の通り。樹液で固められた古い船底が並んでいる路地に、さっきまでなかった足音が四つ増えていた。重い。鋼の重さだ。鈍い駆動音。冷却フィンの隙間から漏れる蒸気。観光客の悲鳴がひとつ路地の奥から聞こえた。

 

PX。

パシフィスタ。

広場で見たのとは、別個体。三体——いや、四体。

 

四体ぶんの駆動音は四種類の周波数で重なっていた。完全な同型機ではなかった。世代差か調整差か、あるいは試験用の個体差か。どれでも結果は同じだった。同じだと判断した時点で俺の役目は決まった。

 

俺は屋根の上に、音もなく登った。

登りながら、頭の中の温度を一段下げた。

 

(——一体ずつやってる時間がない)

 

下の路地で麦わら帽子の影と緑の三本目の影と長鼻の男の影が走っていた。逃げているのではなく誰かをかばって走っていた。橙の髪が一瞬だけ視界をよぎった。コックの黒スーツがその後ろに続いた。

 

「ナミ! 走れ!」

「わかってる! わかってるけど——!」

 

声が路地に重なる。

重なった声を鋼の足音が追っていた。

 

俺は屋根から半身を投げ出して四体のパシフィスタの位置を見た。三体は路地の入り口、一体はもう少し前で麦わらの一味の背中に届きかけている。届きかけている一体の鋼鉄の砲口が、すでに半分まで光を溜め始めていた。

 

順番が決まった。

 

『——蒼』

 

順転。引き寄せる方の力。

路地の入り口に立つ三体の鋼鉄の重心を、空中の一点に向けて引き絞る。鋼の足がほんの一瞬だけ砂利から浮いた。浮いた三体が互いの輪郭にぶつかるように、空中の一点へ吸い寄せられた。鉄と鉄が触れ合う鈍い音が、路地の壁を二度往復した。

 

引き寄せた重心の中央で三体の駆動音がひとつの不協和音に重なった。冷却液が漏れる細い音と装甲が擦れる軋みとヘルメットの内部で警告灯が回り始める電子音。それらが半秒ぶん空気の中で同時に鳴った。

 

「PX、なぜ整列を……」

路地の奥にいた海軍兵の声が一段上がった。

「PX-3、PX-5、PX-7、座標が——!」

「制御効きません……!」

 

整列していない。引き絞っているだけだ。

 

引き絞った三体の鋼鉄の真ん中に、僕は左の指先を向けた。

向けた指先の先で世界の縁をもう一度薄く切った。

 

『——無限消失』

 

声には出さなかった。

 

三体の鋼鉄の輪郭が同時にずれた。

ずれたというより引き伸ばされた。手の先。足の先。ヘルメットの曲面。装甲の継ぎ目。内部の駆動音。その奥の冷却液の匂い。全部が空間ごと向こう側に消えた。

 

砂利の上に半円形のくぼみが三つ、並んで残った。

 

血は、飛ばなかった。

影も、残らなかった。

路地の温度が、半度下がった。

 

下がった温度のぶんだけ観光地の安息が街から削げ落ちた気がした。観光地の安息というのはたぶんパシフィスタ三体ぶんの重さで足りるくらいの軽さだった。

 

「ぱ、パシフィスタが……」

 

海軍兵Cの声が震えていた。

 

「三体、同時に……?」

「同時、消失、確認……?」

 

「同時じゃない」

 

別の海軍兵Dが小さく言った。

 

「先にまとめられた。まとめられてから、消えた」

「まとめ……?」

「あの男だ。あの幽鬼だ」

 

ざわめきが路地の入り口から内側へ流れ込んだ。

 

俺は屋根の上からもう片方の手をゆっくり下ろした。

下ろした先に最後の一体——麦わらの一味の背中に迫っていた同型機がいた。

 

その鋼鉄の頭が僕の方をゆっくり振り向いた。

 

(——派手にやりすぎたか、また)

 

ため息ひとつぶん肺の空気を入れ替えた。

 

最後の一体に向けて僕は屋根から飛び降りた。

降りながら右の拳に武装色を一直線に通した。覇気を絞る。神経の伝達速度を、いつもより半呼吸だけ速める。

 

『——黒閃』

 

衝撃が二重に鳴った。

一発目は拳が後頭部に触れた音。二発目は半呼吸遅れて空気が捻れる音。鋼鉄の頭部が内側から潰れた。潰れた頭部が樹液の根方の苔の上にごとりと落ちた。

 

落ちた音は、間抜けではなかった。

昨日の池の方が、まだ柔らかかった。

 

俺は拳を一度、軽く振った。骨に痺れが残っていた。覚悟していたより、PXの鋼鉄はほんの少しだけ硬かった。武装色をもう一段絞っておくべきだったかもしれない。次の一発で、調整する。

振りながら路地の奥に走り去る麦わらの一味の背中をフードの陰から見送った。

ルフィたちはこちらを振り返らなかった。振り返る余裕すらないらしい。それでよかった。

 

路地の入り口で海軍兵が震えていた。

 

「3億2,000万……? あれが……?」

「政府の止めてた数字だ。本当の数字は誰も知らねえ」

 

「本当の数字って、なんだよ……」

「俺たちが知らされてない数字だ」

 

「あれは、あの幽鬼は、本当に元・CP9なのか……?」

「元なら、なぜ天竜人を消した」

 

「答えになってねえぞ」

「答えは、本人にしかねえだろ」

 

俺はフードの縁をもう一度引き直した。

 

(——尾ひれをつけて広げてくれて、結構だ)

 

 

そのとき、路地の反対側から足音がひとつ増えた。

 

ひとつだけだった。

だがひとつ分の重さじゃなかった。

 

砂利を踏む音が空気の中で妙な質量を帯びていた。歩幅が広い。歩幅が広いのに足音はほとんど消えていた。聖書の革の匂いと油の匂いと機械の匂い。それらが人ひとり分の輪郭にまとめて圧縮されて歩いてきていた。

 

俺は無下限の縁をすっと張り直した。

張り直しながら影の縁から半身だけを路地に出した。

 

通りの真ん中に男が立っていた。

 

長身。聖書を脇に抱えた格好。フードのような帽子。鼻と口の下まで覆う厚い装束。そして——肉球の刻印された両の掌。

 

(——バーソロミュー・くま)

 

息が半拍止まった。

止めながら俺はもう一度頭の中の温度を一段下げた。

 

くまは何も言わなかった。

言わずに聖書を一度脇から外した。

 

それから低く、短く言った。

 

「君は」

「……ああ」

「邪魔をするのか?」

 

短かった。

短いがまっすぐだった。

 

短さの裏側に、いくつかの問いが折り畳まれている。問いを折り畳む癖が、まだ残っている男だった。

 

俺は答える前に相手の目を見た。

サングラスの奥にまだ「目」があった。光の入り方が人のそれだった。鈍い。鈍いが生きている。鈍いまま、まっすぐ俺を見ている。

 

(——こいつ、まだ意思がある)

 

革命軍出身。原作で読んだ。読んだが目で見るのとは違った。

目で見ると確かに人だった。人で、これから人をやめる予定の男だった。

 

俺はゆっくり首を横に振った。

 

「邪魔はしない」

「……」

 

「したくないと言えば嘘になる」

「……」

 

「だがしない」

 

くまは一拍だけ俺を見つめた。

見つめたまま低い声で言った。

 

「君を知っている」

「……」

「革命軍が、いや——」

 

そこで言葉が切れた。

切れたままくまは目を伏せた。伏せた瞼の縁がほんの少しだけ強張った。強張ったあと低く、もう一度言った。

 

「忘れろ」

 

ドラゴン経由か、と頭の中で短く納得した。

 

頭の中でその名前を一度だけ書いて、消した。

消した先でくまの肉球がゆっくり持ち上がった。

 

ニキュニキュの実。

何でも弾く力。

人を空間ごと吹き飛ばす力。

 

俺は両の掌を、軽く広げた。

広げて一歩、影の縁から退いた。

 

退いた半歩のぶんだけ空気の重さがこちらの肩に乗ってきた。乗ってきた重さを俺は受け止めなかった。受け止めればたぶん背中の刀が応える。応えれば止めることになる。

 

「俺は、止めない」

「……」

 

「彼らを、散らせ」

「……」

 

「彼らは二年で、もっと強くなる」

 

くまの肉球が半秒止まった。

止まったままサングラスの奥の目がもう一度俺に向いた。

向いた目の中にほんの一瞬、人間の色が戻った気がした。気のせいかもしれなかった。気のせいで、よかった。

 

「……わかった」

 

それだけだった。

それだけでくまは肉球を構え直した。構え直したまま俺の脇をゆっくり通り過ぎた。聖書の革の匂いが半拍だけ残った。残った匂いの中に油でも血でもない別の重さが混じっていた。

 

責任、と呼ぶには近すぎる重さだった。

 

俺は追わなかった。

追わずに背を向けた。

 

背を向けた先の海風が、少しだけしょっぱかった。

しょっぱさの中に樹液の甘さが薄く混じっていた。シャボンディ独特の混合だった。この匂いを俺は二度と、同じ気持ちで嗅げない気がした。

 

 

遠くで悲鳴がひとつ。

 

それから間隔を空けてもうひとつ。

 

最初の悲鳴は低かった。

鍛えた喉から漏れる男の悲鳴。

(——ゾロが消えた)

 

俺は拳を一度握った。

 

二つ目の悲鳴は橙の女の声だった。

高くて短くて、最後まで言い切れなかった声だった。

 

握った拳の指の関節が軽く鳴った。

 

三つ目はコックの怒声だった。怒声のまま途中で消えた。

 

四つ目は長鼻の男の悲鳴。

 

五つ目はトナカイの小さな声。

 

六つ目は考古学者の落ち着いた一言。

 

(——全部、原作通りに)

 

風が運んできた。運ぶたびに麦わらの一味がひとり、ふたり、空の向こうへ吹き飛ばされる音がした。空気の縁が肉球の力で人ひとりぶんずつ引きちぎられる音だった。空気そのものが、肉球の押す方向に向かって、薄く、長く、伸びていく。伸びた先で、人が一人、世界の継ぎ目の向こうへ消える。

 

俺は目を閉じなかった。

閉じればたぶん走り出してしまう。

 

走り出して止めて、それで——彼らから二年を奪う。

 

(——今だけは原作通りでいい)

 

頬の内側を強く噛んだ。

噛んで噛んだ味をひとつ肺の奥にしまった。鉄の味だった。前世で何度か覚えのある味だった。覚えのある味を、知らない場所で噛む夕方というのは、たぶんこれが最後ではないと思った。

 

最後にひときわ大きな声が遠く海の方から響いた。

 

「みんな!!」

 

ルフィの声だった。

泣いていた。怒っていた。両方だった。

 

その声を俺は聞いた。

聞いてそれから——歩き始めた。

 

歩く方角は港の方じゃなかった。

バーの方だった。

 

 

シャボンディの灯りが夕方の方へ傾き始めていた。

 

シャクヤクのバーの裏口を押した。押した先に艶のある声がひとつ待っていた。

 

「アズくん」

「うん」

「行くのね」

「うん」

 

それだけだった。

それだけでシャクヤクはカウンターの内側から、小さな包みをひとつ差し出した。

 

布の包みだった。中身は見えなかった。見せようとしなかった。

俺もまた訊かなかった。

 

「持っていきなさい」

「……うん」

「開けるのは、必要になったときでいい」

「……了解」

 

俺は包みをコートの内側に滑り込ませた。

滑り込ませた重さが思っていたより軽かった。軽さがかえって重かった。

 

カウンターの上に湯気の立つコーヒーが一杯だけ置かれていた。

俺の分だった。

俺は飲まなかった。

 

「飲んでから行きなさいよ」

「飲んだら出にくくなる」

「……そうね」

 

シャクヤクがほんの少しだけ目を伏せた。

伏せた目の縁にいつもの艶が、半度だけ薄かった。

 

レイリーはまだ戻ってきていなかった。

広場の方角からまだ光と刀の音が断続的に届いていた。届くたびにバーの天井の梁がほんの一瞬、軋んだ音を立てた。バーの建付けが緩んでいるわけではなかった。冥王が遠くで殴っている、というだけの話だった。

 

「あの人保つかな」

「保つわよ」

「即答だな」

「あの人、女房に格好悪いとこ見せたくないのよ」

 

カウンターの艶が半度だけ上がった。

俺は口の端でほんの少しだけ笑った。

 

笑い終わったあとシャクヤクがいつもの一言を言った。

 

「血、ちゃんと落としてから帰ってきて」

「うん」

 

それだけだった。

 

それだけで十分だった。

 

シャクヤクが小さく息を吐いた。

吐いた息に、鼻歌がほんの一秒ぶんだけ混じっていた。聞き覚えのある、古いシャボンディの船歌だった。歌詞は、たぶん、無事に帰る、というだけの単純な意味だった。

 

俺はバーの裏口を出た。

出た先の路地に夕方の風がもう一段、潮の匂いを濃くしていた。

 

港まで歩いた。

歩きながらコートの内側の包みの形をひとつ、指でなぞった。

なぞった形は四角でも丸でもなかった。

 

少しだけ固いものが布越しに芯を通していた。芯の方向は上に長く下に短い。鞘とは違った。鞘よりももう少し軽くて、もう少し冷たい。

 

金属だった。たぶん、片手で握れる種類の。

握って、振るうのではなく、握って、構えるための種類の。

 

なんだろうな、と思いながら指を離した。離しても布の感触が、指紋の側にだけ残っていた。

 

訊かないことに決めた男の指は、少し長くその布の上に残った。

 

 

港の桟橋に無人の小舟が一隻繋がれていた。

 

帆は古かった。

古いが海に出るぶんには問題なかった。

 

俺は綱をほどいた。

ほどきながら最後にもう一度シャボンディの方を振り返った。

 

振り返った先で樹液の幹の合間をまだ光がときどき走っていた。

走った光の終点にたぶんまだ、あの白髪の男が立っていた。

立っているはずだった。

 

帆を、上げた。

 

帆布が一拍だけ膨らんで、それから長く張った。

張った布の縁が、夜の方角に向かって、ほんの少し傾いた。

 

風は夜の方に向かって吹いていた。

吹いていた先に、海軍本部があった。

 

俺は舳先に立った。

立ったまま、シャボンディの灯りが背中で小さくなるのを聞いた。

 

潮が、舳先の下で一拍だけ重く鳴った。

鳴った先で、海面の色がほんの少しだけ濃くなった。

 

風の向きをもう一度確かめた。確かめた向きは夜の方角と海軍本部の方角をちょうど半分ずつ分け合っていた。半分ずつというのはたぶん、俺の今夜の歩幅にちょうどよかった。

 

 

港の風に油の匂いが混じった。

胸の内側でシャクヤクの一言だけまだ生きていた。

船が夜明けの海へ滑り出した。

 

 




いかがだったでしょうか。

書きながら一番悩んだのが「くまをどう描くか」でした。
原作で麦わらの一味が散らされるあの場面は、ルフィたちにとっての二年間の入り口で、彼らが一段強くなるためのどうしても必要な時間だと思っています。

次回、第22話。
アズールがひとつ寄り道をします。
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