マブラヴ・インサート 〜白き少佐の因果強化計画〜   作:きのこ大三元

47 / 47
第27話「白刃の鞘」

11月8日 深夜

国連軍横浜基地・格納庫

<< 浪花 千歳 >>

 

 夜の格納庫は、昼よりも機械の音がよく聞こえる。

 換気装置の低い唸り。

工具を置く金属音。

冷却系の作動音。

整備端末が一定間隔で吐き出す警告。

 その一つ一つを聞きながら、浪花千歳はJM-01の訓練ログを睨んでいた。

 

「……あかん」

 

 XM3評価用不知火、仮登録JM-01。

 神宮寺真白少佐相当の操縦特性に合わせて調整された、A-01預かりの評価機だ。

 実機訓練そのものは成功している。

瞬間的な機動力も高い。入力への追従もよく、姿勢制御も破綻していない。

 だからこそ、厄介だった。

 

「成立してまうんが、一番あかんのよなぁ……」

 

 千歳は負荷グラフを拡大した。

 膝部フレーム。

股関節部。

肩部アクチュエータ。

跳躍ユニット。

推進剤消費。

着地衝撃。

近接機動後の姿勢補正。

 どれも一度や二度なら許容範囲だ。

だが、連続すれば話は変わる。

 負荷が抜ける前に次の入力が入り、さらに次が重なる。

そのたびに機体は姿勢を修正し、関節と推進系へ小さな借金を残していた。

 壊れてはいない。

 まだ、壊れていないだけだ。

 

「少佐本人は、動かせてしまうんやろうけど……」

 

 普通の衛士なら、先に人間側が追いつかなくなる。

速度に判断が遅れ、入力が乱れ、そこで自然と限界を知る。

 だが、真白は違った。

 白銀武から引き継いだとされる衛士経験。

異常な戦術機適性。

XM3との高い親和性。

 そして何より、自分を後回しにする悪い癖。

 機体が応えてしまえば、あの少佐はさらに次の一手を入力する。

 

「……機体に根性論は通じませんよ、少佐」

 

 千歳が独り言を漏らした直後、格納庫の入口から足音が聞こえた。

 白い制服。

 話題の本人だった。

 

「浪花さん」

「噂をすれば、ですわ」

 

 千歳は椅子を回した。

 

「こんな時間に何してますのん」

「JM-01のログを、もう一度確認したくて」

「ちょうどええです。うちも少佐に言いたいことがありました」

「……はい」

 

 真白は、怒られると察した顔をした。

 最近は分かりやすい。

 

「これ、見てください」

 

 千歳は端末を向けた。

 

「膝、股関節、肩。全部跳ねすぎです。推進剤も使いすぎ。特に近接機動のあと、姿勢を戻すところで機体が無理してます」

 

 真白は黙って画面を見た。

 

「少佐は動かせるんでしょう。でも、JM-01は少佐の身体やありません」

「……はい」

「少佐がまだ行けると思っても、機体が同じとは限りません」

 

 千歳は負荷グラフの山を指した。

 

「この動き、一回ならできます。二回もできます。三回も、たぶんできます」

 

 そこで指を止める。

 

「せやけど、それを十回できる保証はありません」

 

 戦場で問題になるのは、そこだった。

 一度だけ派手に動けても意味はない。

敵を斬ったあと、歩けなくなれば帰れない。

 真白は、しばらく画面を見つめていた。

 

「……自分は、機体を使いすぎていますか」

「使いすぎです」

「即答ですね」

「整備ログは遠慮しませんから」

 

 真白が少し肩を落とした。

 千歳はため息をつく。

 

「謝らんでええです」

「まだ謝ってません」

「顔が謝ってます」

「最近そればかり言われます……」

 

 少しだけ空気が緩む。

 だが、本題は変わらない。

 

「XM3は、速く動くためのOSやない」

 

 以前にも伝えた言葉だった。

 

「速く動けてしまうOSです」

 

 真白の表情が変わる。

 

「せやから、少佐の場合は止める側の仕組みも要ります」

「止める側……」

「少佐が踏み込みすぎる前に、機体側で入力を抑える。危険域へ入る前に、一度姿勢を戻す」

 

 千歳はJM-01を見上げた。

 

「少佐専用のリミッターです」

 

 

11月8日 深夜

国連軍横浜基地・格納庫

<< 神宮寺 真白 >>

 

 リミッター。

 その響きは、思っていたより重かった。

 戦場へ向かう準備をしている。

普通なら、もっと速く、もっと強くすることを考える時期だ。

 なのに、自分に必要なのは制限だった。

 

「……そんなに酷かったですか」

「酷いです」

「もう少し迷ってください」

「数字が迷わせてくれません」

 

 千歳さんは、シミュレーターと実機の軌道比較を表示した。

 ほぼ同じ機動をしている。

それだけを見れば、自分は上手く実機へ落とし込めているようにも見える。

 けれど、負荷表示を重ねると別物だった。

 シミュレーター上では何度でも成立する。

実機では、着地の衝撃が残る。関節が摩耗する。噴射するたび推進剤が減り、姿勢補正にも負荷がかかる。

 

「シミュレーターは壊れません。整備班も泣きません」

「はい……」

「実機で同じことを繰り返されたら、こっちは泣きます」

 

 千歳さんはJM-01へ視線を向けた。

 

「新潟で今の動きを続けたら、少佐が帰る前に脚が死ぬかもしれません」

 

 胸の奥が冷えた。

 戦場で機体が止まる。

 それは、自分が動けなくなるだけでは済まない。

A-01へ負担をかける。救援を必要とする。場合によっては、自分を回収するために誰かが危険を冒す。

 第26話で、高濃度リンク因子を誰へ使うか考えたばかりだった。

 足りない切り札を、誰に渡すか。

 なのに、自分がJM-01を壊せば、今度は自分自身が救援を必要とする側になる。

 

「……それは、駄目ですね」

「駄目です」

 

 千歳さんは容赦がない。

 

「だから対策します」

「どうやって?」

 

 千歳さんは、新しいファイルを開いた。

 

 JM-01近接高負荷抑制制御案。

 

「長いですね」

「うちも思いました」

 

 画面を見ながら、千歳さんが続ける。

 

「関節負荷、推進剤消費、姿勢崩れを監視して、危険域に入る前に入力補正をかける。連続機動も一定回数で一回切る」

「強制的にですか」

「はい」

 

 少し抵抗感はある。

 自分が動きたい時に、機体側から止められる。

戦場では、それが致命的になる可能性もある。

 けれど、今のままなら自分が止まらない。

 

「……自分を止める仕組み」

「そうです」

 

 千歳さんは、少しだけ笑った。

 

「刃が鋭すぎるなら、鞘が要るでしょう」

 

 その言葉に、目が止まった。

 

「鞘……」

「抜きっぱなしの刃物なんて危ないですから」

 

 白い識別ラインの不知火。

近接戦闘。

斬撃。

そして、それを必要な時まで抑える仕組み。

 

「……白刃」

 

 思わず言葉が漏れた。

 

「はい?」

「前に考えていた機動案です。薄く、鋭く、必要な分だけ斬って戻る……白い刃みたいな」

「ああ、あれですか」

 

 千歳さんが端末を操作する。

 

「なら、これは白刃そのものやなくて、その鞘ですね」

 

 画面の名称が書き換えられた。

 

 白刃構想・JM-01暫定制御案。

 

「……入力するの早くないですか」

「仮称ですし」

「まだ白刃構想自体、何も完成していませんよ」

「だから暫定です」

 

 千歳さんはあっさり言う。

 

「白刃を作るんやなくて、今あるJM-01を折らんための制御です」

 

 その言葉で、少し整理できた。

 これは新しい戦術ではない。

完成された専用機動でもない。

 白刃構想という名前だけが先にあり、その前段階としてJM-01へ鞘をつける。

 速く斬るためではなく。

刃を折らずに戻すために。

 

「……それなら、必要だと思います」

「でしょう?」

 

 千歳さんは満足そうに頷いた。

 

 

11月9日 未明

国連軍横浜基地・B19フロア解析室

<< 香月 夕呼 >>

 

「白刃構想?」

 

 夕呼は、端末に表示された仮称を見て眉を上げた。

 

「随分それっぽい名前になったわね」

「仮称です」

「いいんじゃない? 私は嫌いじゃないわよ」

「夕呼にそう言われると、ちょっと不安です」

「失礼ね」

 

 夕呼は千歳から送られてきたJM-01の負荷ログへ目を通した。

 問題はすぐに分かった。

 真白の入力そのものは破綻していない。

むしろ、成立しすぎている。

 通常なら衛士が諦める機動へ、JM-01がついてきてしまう。

その結果、衛士側ではなく機体側へ負荷が蓄積していた。

 

「なるほど。動かないのが問題じゃなくて、動いちゃうのが問題なのね」

「はい」

「シミュレーターの感覚、白銀武由来の経験、XM3。全部が悪い方向で噛み合ってる」

「……悪い方向なんですね」

「この件についてはね」

 

 夕呼は、暫定制御案を開いた。

 

「近接高負荷入力を検出。関節負荷、姿勢、推進剤消費を監視して、一定値を超える前に補正」

 

 ピアティフ中尉が続ける。

 

「連続高負荷機動は原則三手まで。三手目終了後は、一時的に姿勢安定を優先します」

 

「三手」

 

 真白が画面を見る。

 

「斬って、次へ行って、もう一度動いたら、一度戻す」

「大雑把に言えばそうね」

 

 夕呼は頬杖をついた。

 

「悪くない」

 

 通信回線から千歳の声が飛んできた。

 

『悪くないやなくて、必要なんです』

「分かってるわよ」

 

 夕呼は少し笑った。

 

「ただし、解除手段は残す」

 

 真白が顔を上げる。

 

「解除できるんですか?」

「戦場で絶対に外せないリミッターなんて、場合によっては機体ごと棺桶になるわ」

 

 BETAに包囲され、あと一歩動かなければ死ぬ。

そういう状況で安全装置を優先する意味はない。

 

「通常はON。緊急時に限り、一時的な手動解除を可能にする。ただし解除時間は制限。機体負荷が危険域へ入れば強制的に再制限」

 

『解除ログも全部残してください』

 

 千歳が割り込む。

 

「当然」

『解除後は強制点検』

「それも当然」

 

『少佐、聞いてます?』

「聞いてます」

 

 通信の向こうで、千歳が一拍置いた。

 

『解除は必殺技やないです』

「はい」

『借金です』

 

 真白が少し固まった。

 

「借金……」

『その場で機体から余裕を前借りするだけです。あとで絶対に払わされます』

 

 夕呼は思わず口元を上げた。

 

「分かりやすいわね」

『笑い事ちゃいます』

「褒めてるのよ」

 

 真白は、端末の負荷曲線を見つめていた。

 

「つまり、解除できるからといって、使っていいわけではない」

「そういうこと」

 

 夕呼は頷く。

 

「この制御は、あんたを弱くするためじゃない」

 

 強すぎる入力を抑える。

次の一手へ移れる状態を残す。

戦場の途中で、機体を使い切らない。

 XM3が与える自由を殺すのではなく、その自由を最後まで使えるようにする。

 

「帰るための制限……」

 

 真白が呟いた。

 

「そういう理解でいいわ」

 

 夕呼は画面を閉じかけ、もう一度手を止めた。

 

「ただし、白刃構想なんて大層な名前をつけても、今はJM-01の暫定制御に過ぎない」

「はい」

「A-01用の機動体系でもない。新型機の設計思想でもない」

「分かっています」

「ならいいわ」

 

 先の構想へ飛びつかれるのは困る。

 今必要なのは、目前の新潟でJM-01と真白を帰還させるための手段だ。

 

「A-01への説明は?」

 

 真白が聞いた。

 

「必要最低限にする。JM-01には高負荷機動を抑える暫定制御が入っている。緊急解除を使った場合は、以後の継戦能力が落ちる。その程度で十分」

「まだ白刃構想の名前までは?」

「出さない」

 

 夕呼は即答した。

 

「今は真白と整備班の内部名称でいい。正式な構想として扱うのは、実戦データを取ってからよ」

 

 真白は、少し安心したように頷いた。

 それでいい。

 名前だけが先に歩けば、本人までそれへ引っ張られる。

 

「それと真白」

「はい」

「今日はもう寝なさい」

「でも」

「リンク因子の会議が終わった直後に格納庫へ行って、今度はここ。何時だと思ってるの?」

 

 真白が黙った。

 

「リミッターを入れる前に、搭乗者本人へリミッターが必要になってるじゃない」

「……反論しづらいです」

「しなくていいから寝なさい」

「はい」

 

 今度は素直だった。

 

 

11月9日 朝

国連軍横浜基地・格納庫

<< 浪花 千歳 >>

 

 朝になっても格納庫は止まらない。

 JM-01の整備ベイでは、暫定制御の実装作業が続いていた。

 

「関節負荷監視、もう少し手前から警告出して」

「了解」

「三手目以降は警告だけやなくて、姿勢安定へ補正。少佐は音だけやと無視する可能性あるから」

「それ、本人に聞かれたら怒られません?」

「怒られるより機体壊される方が困ります」

 

 近くの整備員が苦笑しながら作業を続ける。

 XM3の自由度そのものを潰す気はない。

真白の操縦を鈍くするつもりもない。

 危険な入力が連続した時だけ、機体側から少し手綱を引く。

 それだけだ。

 だが、その少しが生死を分けることもある。

 

「浪花さん」

 

 聞き慣れた声に振り返る。

 

「おはようございます、少佐」

「おはようございます。作業はどうですか?」

「今日中に暫定版は入ります」

「ありがとうございます」

「礼は新潟から帰ってきてからでええです」

 

 真白の顔から笑みが少し消えた。

 

「……はい」

「使うんでしょう、JM-01」

「その予定です」

 

 千歳は手を止めた。

 ここだけは、曖昧にしたくない。

 

「なら、約束してください」

「何をですか」

 

「人も機体も、両方返してください」

 

 真白が黙った。

 その沈黙だけで、不安になる。

 自分だけなら削ってもいい。

機体なら、必要なら壊してもいい。

 おそらく真白は、追い詰められればそういう判断をする。

 

「少佐」

 

 少し強く呼ぶ。

 

「整備班は壊れた機体なら直せます。でも、帰ってこなかった機体は直せません」

 

 真白の目が揺れる。

 

「帰ってこなかった人は、もっと直せません」

 

 格納庫に、工具の音だけが残った。

 

「だから、帰ってきてください。JM-01も、少佐も」

 

 真白はしばらく黙ったあと、ゆっくり頷いた。

 

「はい」

 

 戦場に絶対はない。

約束したから帰ってこられるわけでもない。

 それでも、言わせることには意味があると思いたかった。

 

「それから、通常時は解除禁止です」

「分かっています」

「危なくなった時も、最初に解除やないですよ」

「まず戻る道を探します」

「それでも必要なら?」

「……借金する」

 

 千歳は少しだけ笑った。

 

「覚えてるなら結構です」

 

 端末へ戻りながら、最後に一つだけ付け足した。

 

「これは少佐を遅くするための制御やありません」

「はい」

「帰ってくるまで、刃を折らんための鞘です」

 

 真白はJM-01を見上げる。

 

「……白刃の鞘」

 

「そういうことです」

 

 

11月9日 昼

国連軍横浜基地・シミュレーター室

<< 神宮寺 真白 >>

 

 白刃構想・JM-01暫定制御案。

 実機へ入れる前に、シミュレーター上で制御を試す。

 

 視界が仮想戦場へ切り替わった。

 荒れた市街地。

接近するBETA。

手元には長刀。

機体設定はJM-01。

 

 最初の踏み込みで、すぐに違和感があった。

 遅い。

 いや、違う。

 自分が入力した軌道より、少しだけ穏やかに機体が動く。

噴射量が抑えられ、着地後すぐに次へ踏み込もうとすると、姿勢制御が優先された。

 

「……もどかしい」

 

 シミュレーターなら行けた。

白銀武の感覚なら、さらに一手入れられる。

 そう思った瞬間、警告が表示される。

 

 高負荷連続機動――三手。

 姿勢安定優先。

 

「ここで止めるのか……」

 

 通信から千歳さんの声が入った。

 

『止めてませんよ』

「止められてるように感じます」

『戻してるんです』

 

 戻す。

 その言葉を意識して、もう一度動く。

 

 一体目の進路を潰す。

二体目を斬る。

三体目の足を止める。

 三手。

 以前なら、四手目へ続けた。

 だが、今度は機体の補正へ逆らわず、姿勢を戻す。

一度距離を取り、次の敵群を正面へ捉える。

 

「……あ」

 

 そこで気づいた。

 機体がまだ整っている。

 四手目を無理に入れなかった分、次の加速へ移れる。

推進剤もわずかに残り、姿勢も崩れていない。

 

「もう一回お願いします」

 

 何度か同じ機動を試した。

 速さだけなら、制御なしの方が上だ。

瞬間的な撃破数も多い。

 だが、時間を延ばすと差が逆転する。

 制御なしでは、少しずつ機体負荷が積み上がる。

動きは速いままでも、関節負荷と推進剤消費が膨らみ、どこかで姿勢補正に遅れが出る。

 暫定制御ありでは、その山が低い。

 

「……これ、強いですね」

 

『速くないのに?』

 

 千歳さんが聞く。

 

「はい」

 

 自分は、再び機体を構えた。

 

「次も動けるので」

 

 通信の向こうが、少しだけ静かになる。

 

『それが分かったなら、十分です』

 

 強さとは、一回の最大出力だけではない。

 一度斬ったあとに戻れる。

戻ったあと、もう一度動ける。

 その繰り返しが、最後まで残る。

 それなら。

 

「帰ってこられる」

 

『はい』

 

 千歳さんの声は短かった。

 

『そのための鞘です』

 

 

11月9日 夕方

国連軍横浜基地・格納庫

<< 神宮寺 真白 >>

 

 JM-01の前に立つ。

 白い識別ラインが、格納庫の照明を受けて薄く浮かんでいた。

 

 端末には、実装予定の暫定制御項目が表示されている。

 関節負荷監視。

推進剤消費監視。

近接高負荷機動三手制限。

姿勢安定優先。

緊急時一時解除。

解除時間制限。

解除ログ保存。

解除後強制点検。

 ただの設定項目だ。

 けれど、自分には鞘のように見えた。

 

 8日の夜に(第26話で)は、高濃度リンク因子が足りないことを知った。

 全員を強くすることはできない。

自分を削って、無理に増やすことも許されない。

 なら、今あるものを壊さず使う。

 人だけではなく、機体も。

 

 白刃構想は、まだ完成していない。

 専用機もない。

完成した白兵機動体系もない。

A-01へ正式に教えられるものでもない。

 今あるのは、JM-01を新潟から帰すための暫定制御だけだ。

 白刃そのものではない。

 その前に必要になった、鞘。

 

「……全力を出すためじゃない」

 

 JM-01を見上げる。

 

「全力を出し続けないために」

 

 必要な時に斬る。

斬ったら戻る。

戻ったら、また次へ進む。

 その繰り返しを最後まで残す。

 

「帰ってくるために、刃を振るう」

 

 小さな声は、格納庫の機械音へ消えていった。

 

 その日、JM-01に一つの暫定制御案が与えられた。

 白刃構想・JM-01暫定制御案。

 まだ白刃ではない。

新しい戦術でも、新型機の完成形でもない。

 ただ、神宮寺真白が自分の限界より先へ踏み込み、機体まで折ってしまわないための制御だった。

 刃を鈍らせるのではなく。

刃を折らず、必要な場所まで持ち帰るために。

 白刃そのものより先に生まれたもの。

 それは――。

 白刃の鞘だった。

 

第27話「白刃の鞘」 END

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

マブラヴオルタネイティヴ〜願いそして望む者〜(作者:ガトリング餅)(原作:Muv-Luv)

武と純夏の幼なじみである服部 凪が8年前のBETAが居る世界に目覚め、色々と頑張るお話。▼そこで凪は様々な場面に出くわし、経験を得て何を願い望むのかのか……▼⬇Twit…Xのアカウントですゲームとかそんなのを投稿してます、生存確認的な奴です▼https://x.com/mochi02913


総合評価:22/評価:-.--/連載:8話/更新日時:2026年05月31日(日) 22:19 小説情報

マブラヴ・インサート IFルート集(作者:きのこ大三元)(原作:Muv-Luv)

これは、本編『マブラヴ・インサート…』とは異なる可能性を描くIFルート集です。▼完全に作者の息抜きとして作成しています。▼IFルート、番外編ですので気まぐれに更新していく予定です。▼本編では国連軍横浜基地に現れ、香月夕呼副司令の管理下に置かれた異物――神宮寺真白。▼しかし、もし彼を取り巻く世界が少しだけ違っていたら。▼もし夕呼副司令が、彼を“研究対象”ではな…


総合評価:14/評価:-.--/連載:5話/更新日時:2026年06月27日(土) 22:33 小説情報

Muv-Luv Alternative Plantinum`s Avenger(作者:セントラル14)(原作:Muv-Luv)

はじめは"元の世界"に還りたいと願った。▼だがそれは叶わず、戦いが突きつけられる。▼戦いに身を任せ、戦い、戦い、戦い続けた。資源、食料、ヒト、全てをすり減らしながら。▼いつ死んだ? 何処で死んだ?▼はじまりに戻っていた。▼そこでも戦い、戦い、戦いだ。戦いに明け暮れるが、そこでは全てを失った。全てだ。▼力があっても、知識があっても、覚悟がそ…


総合評価:2195/評価:8.47/連載:61話/更新日時:2026年08月13日(木) 21:00 小説情報

Muv-Luv 戦場に咲く雷花(作者:マルク)(原作:Muv-Luv)

地球外生命体BETAによって地球は滅亡の危機に瀕していた。▼地球の管理神もまたその事実に苦しむ1柱である。▼ある日、神々の会合である議題が挙がった。▼転生者にやらせてみよう。▼その者を神の代行者として人類を救おう。▼しかし事は出来るだけゆっくりとだ。BETA側に神的存在がいないとも限らない。故に、事は静かに、慎ましく、エレガントに運ぶ事。▼作中の主人公がやっ…


総合評価:444/評価:8.19/短編:17話/更新日時:2026年07月04日(土) 18:00 小説情報

マブラヴ オルタネイティブー最良の未来を掴み取るためにー(作者:桜大尉)(原作:Muv-Luv)

白銀武は確かに世界の英雄だった、しかし武自身はそうとは思っていなかった。「身近な人を守れなくて何が英雄だ!」と。武は虚数空間の中で▼「やり直せるならもう一度.....次は誰も死なせない!次こそは最良の未来を掴み取ってみせる!!」と強く思った。▼これは英雄と呼ばれた1人の男が最良の未来を掴み取る「あいとゆうきのおとぎばなし」


総合評価:72/評価:-.--/連載:17話/更新日時:2026年08月14日(金) 22:55 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>