マブラヴ・インサート 〜白き少佐の因果強化計画〜   作:きのこ大三元

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第30話「小さな貝殻と紅の祈り」

11月10日 夜

横浜基地・PX食堂

<< 神宮寺 真白 >>

 

 胸ポケットの中で、小さなものが揺れていた。

 

 モアイの左近。

 

 鎧衣左近さんから渡された、手のひらほどの置物だ。霞が確認した限り通信反応はなく、夕呼副司令も後で詳しく調べると言っていた。

 

 たぶん、ただのモアイ。

 

 ……たぶん。

 

「……なんで自分、モアイを胸ポケットに入れてるんだろう」

 

 口に出すと、なおさら意味が分からない。

 

 それでも捨てる気にはなれなかった。

 

 帝国の記録に存在しない人間。

 

 出生記録も、戸籍も、学籍も、軍歴もない。横浜基地へ突然現れた、自分でも説明できない存在。

 

 そんな自分を、情報省が見始めている。

 

 明日の新潟で何かを変えれば、横浜基地だけでは済まなくなる。

 

 左近さんの言葉は、まだ胸の奥に残っていた。

 

「真白ちゃん!」

 

 突然、大きな声が飛んできた。

 

 顔を上げると、厨房の向こうから京塚のおばちゃんが手を振っている。

 

「そんな顔してどうしたんだい! 今日は合格祝いなんだから、もっと景気よくしな!」

「……合格祝い?」

 

 聞き返した直後、食堂の入口が騒がしくなった。

 

 榊千鶴。

 

 彩峰慧。

 

 珠瀬壬姫。

 

 御剣冥夜。

 

 鎧衣美琴。

 

 207Bの五人だった。

 

 疲労は隠しきれていない。それでも、その顔には演習へ向かう前にはなかったものがある。

 

 達成感。

 

 そして――五人全員が、ここにいる。

 

「皆さん……」

 

 思わず立ち上がった。

 

 美琴さんがこちらを見つけ、ぱっと手を振る。

 

「あ、真白さん!」

「お帰りなさい」

 

 口から出たのは、それだけだった。

 

 千鶴さんが姿勢を正す。

 

「ただいま戻りました、神宮寺少佐」

「……ただいま」

 

 彩峰さんは少しだけ視線を逸らした。

 

「か、帰ってこれましたぁ……」

 

 たまは今にも泣きそうだ。

 

 冥夜も静かに頷く。

 

「皆で越えることができた」

 

「いやー、大変だったよ! 森も罠もすごかったし、最後の地雷原なんて――」

「鎧衣、食事前に騒がない」

「えー、いいじゃん。合格したんだし!」

「合格したからこそ節度を持ちなさい」

「榊、硬い」

「彩峰も……って、もう食べてるじゃない!」

 

 見ると、彩峰さんは既に席へ着き、京塚のおばちゃんが並べた料理へ手を伸ばしていた。

 

「……お腹空いた」

「早いですね……」

 

 京塚のおばちゃんが豪快に笑う。

 

「いいんだよ! 帰ってきた若い子は食べるのが仕事だ! 今日はたんと食べな!」

 

 食卓には、普段より豪華な料理が並んでいた。温かい汁物に山盛りのご飯、焼き魚、肉の入った煮込み、小鉢。それに大きなおにぎりまである。

 

 千鶴さんが少し困った顔をする。

 

「京塚さん、ありがとうございます。ですが、この量は少し……」

「足りないかい?」

「逆です」

「なら問題ないね!」

「問題はあります!」

「榊、食べればいい」

「彩峰はもう少し考えて――」

「おかわり」

「早すぎます!」

 

 笑い声が食堂に広がった。

 

 自分も、少し笑った。

 

 左近さんに言われたことが消えたわけではない。

 

 でも今は、それよりも目の前の光景の方が大事だった。

 

 五人が帰ってきた。

 

 自分が答えを与えたからではない。五人自身が考えて、ぶつかって、それでも互いを信じて戻ってきた。

 

 少し遅れて、まりもさんが食堂へ入ってきた。

 

「全員、席につきなさい」

 

 その一言で空気が締まり、美琴さんまでぴんと背筋を伸ばす。

 

 まりもさんは207Bを見渡した。

 

「総合戦闘技術演習、合格。よくやりました」

 

 五人の顔が変わった。

 

 たまは目元を押さえ、千鶴さんは唇を引き結ぶ。冥夜は静かに目を伏せ、彩峰さんの箸も止まった。

 

「ですが、これで終わりではありません。あなたたちは、ようやく次の段階へ進む資格を得ただけです」

『はい!』

 

 五人の声が揃う。

 

 まりもさんは少しだけ表情を和らげた。

 

「……それでも、今日は食べなさい。帰ってきた身体には食事が必要です」

「そうそう! まりもちゃんも分かってるねぇ!」

「京塚さん。私は当然のことを言っているだけです」

「はいはい。教官様は相変わらず固いねぇ。ほら、真白ちゃんも座りな!」

「あ、はい」

 

 促されるまま、207Bの近くへ腰を下ろした。

 

「神宮寺少佐」

 

 千鶴さんがこちらを向く。

 

「演習前にいただいた言葉がなければ、私たちはあそこまで整理して動けなかったと思います」

「そんなことはありません」

 

 首を横へ振る。

 

「越えたのは皆さん自身です。自分は少し背中を押しただけですから」

 

 千鶴さんは何か言い返そうとして、それから小さく息を吐いた。

 

「……ありがとうございます」

 

 隣から彩峰さんが口を挟む。

 

「今回は、榊の話も少し聞いた」

「少し?」

「前よりは」

「それを成長と言っていいのかしら……」

 

 千鶴さんは額を押さえた。

 

 それでも、本気で怒ってはいない。そのやり取りだけでも、演習前とは少し違って見える。

 

「そうだ、真白さん!」

 

 美琴さんが突然ポケットを探り始めた。

 

「はい?」

「これ、お土産」

 

 差し出されたものを受け取る。

 

 小さな貝殻だった。

 

 白い表面に、淡い桃色が混じっている。

 

「貝殻……」

「南の島で拾ったんだ」

 

 美琴さんが笑う。

 

「なんか、帰ってきた記念っぽいでしょ?」

 

 その言葉に、手のひらを見る。

 

 帰ってきた記念。

 

 207Bが南の島へ行き、自分たちの力で演習を越え、五人で横浜へ戻ってきた証。

 

「……ありがとうございます」

「前に、綺麗なものがあったら一つ欲しいって言ってたでしょ? だから探してきたんだ」

「覚えていてくれたんですね」

「もちろん!」

 

 貝殻を指先でそっと持ち直す。

 

 これを渡したい相手がいた。

 

「少佐」

 

 まりもさんが静かに声をかける。

 

「はい」

「前に話していた子へ、ですか」

「……はい」

 

 207Bへ相手の名前を明かさず、まりもさんはそれ以上聞かなかった。

 

「では、きちんと伝えてあげてください」

「はい」

「この子たちが、ちゃんと帰ってきたと」

 

 五人がこちらを見る。

 

 美琴さんが胸を張った。

 

「そうそう! 207B、五人ともちゃんと戻ってきたよって!」

 

 自分は貝殻を見下ろし、頷いた。

 

「必ず伝えます」

 

 

11月10日 夜

横浜基地・B19フロア/霞の部屋

<< 神宮寺 真白 >>

 

 食堂を出たあと、そのままB19フロアへ向かった。

 

 今日は一日が長かった。

 

 A-01への正式命令。

 

 帝国側との調整。

 

 鎧衣左近さんとの遭遇。

 

 そして207Bの帰還。

 

 明日になれば、新潟へ向けて全てが動く。

 

 霞の部屋を軽くノックすると、少しして扉が開いた。

 

「真白さん」

「夜分にすみません」

「大丈夫です。入ってください」

 

 部屋の中は静かだった。

 

 棚には以前一緒に作ったプラモデルが置いてある。その隣には、ちょうど何か一つ置けそうな空間が残っていた。

 

「霞、これを」

 

 ポケットから貝殻を取り出す。

 

 霞は両手で受け取った。

 

「これは……?」

「貝殻です」

「貝殻」

 

 じっと見つめる。

 

「207Bの皆さんが、南の島から帰ってきた証です」

「207B……」

「前にも少し話した人たちです。五人で演習を乗り越えて、今日、ちゃんと戻ってきました」

 

 霞が小さく頷いた。

 

「美琴さんが拾ってきてくれたんです」

「美琴さん」

「はい。207Bの一人です。明るくて、ちょっと変わっていて……でも、周りを楽しくしてくれる人です」

「そうですか」

 

 霞の指が、貝殻の縁をそっとなぞった。

 

 そして、おもむろに耳へ当てる。

 

「……霞?」

 

 しばらく黙っていた霞が、小さく口を開いた。

 

「ごわごわ~」

「……え?」

「ごわごわ~」

 

 真顔だった。

 

「それは……波の音ですか?」

「はい」

 

 こくり。

 

「貝殻を耳に当てると、海の音が聞こえると聞きました」

「たぶん『ざあざあ』とか『ごうごう』とか……」

「ごわごわ、ではありませんか」

「ごわごわは……少し布っぽいかもしれません」

 

 霞が首を傾げる。

 

「難しいです」

 

 あまりにも真剣なので、思わず笑ってしまった。

 

「霞」

「はい」

「いつか、本物の海を見に行きましょう」

 

 紫の瞳がこちらを向く。

 

「本物の海」

「はい。戦場じゃない海です」

 

 明日、自分が向かうのも海に近い場所だ。

 

 けれど、そこにはBETAが来る。

 

 霞に見せたいのは、そんな海ではない。

 

「BETAもいなくて、警報も鳴らなくて、戦術機も出なくて。ただ波があって、砂浜を普通に歩ける海です」

「皆で、ですか」

「はい」

 

 少し考える。

 

「霞と、自分と、207Bの皆さん。それにまりもさんやA-01の皆さんも。月詠さんたちも来られたらいいですね」

 

 欲張りなのは分かっている。

 

 それでも、明日の前くらいはそんな未来を口にしてもいい。

 

「いつか、みんなで行きましょう」

 

 霞は手の中の貝殻を見つめ、それから小さく頷いた。

 

「はい。約束です」

「……はい。約束です」

 

 もう一度、貝殻を耳へ当てる。

 

「ざあざあ」

 

 今度はそれらしくなっていた。

 

「さっきより近いです」

「はい」

 

 ほんの少し、得意そうに見えた。

 

 霞は貝殻を棚へ置いた。

 

 プラモデルの隣。

 

 戦術機の模型と、小さな貝殻。

 

 妙な組み合わせなのに、不思議と悪くなかった。

 

「音楽」

「え?」

「聞きますか」

 

 少し迷ってから頷いた。

 

「……はい。少しだけ」

 

 スマホを取り出す。

 

 この世界では圏外のままの、元の世界の欠片。通信はできない。それでも、中に残った音楽だけはまだ聞ける。

 

 静かな曲を選んだ。

 

 小さな音量で流すと、霞の部屋を柔らかい旋律が満たしていく。

 

 戦場の警報でも、基地の機械音でも、誰かの命令でもない。

 

 ただの音楽。

 

「真白さん」

「はい」

「これを聞くと、帰りたくなりますか」

 

 すぐには答えられなかった。

 

 帰りたい。

 

 元の世界へ。

 

 自分の部屋へ。

 

 スマホに普通に電波が入って、BETAも戦術機も存在しない場所へ。

 

 そう思わないと言えば、嘘になる。

 

「……帰りたいとは、思います」

「はい」

「でも……」

 

 棚を見る。

 

 プラモデルの横で、小さな貝殻が部屋の明かりを受けている。

 

「こっちにも、帰ってきたい場所ができてしまったみたいです」

 

 霞は何も言わず、こちらを見ていた。

 

「だから明日も、帰ってきたいです」

 

 霞は静かに答えた。

 

「帰ってきてください」

 

「はい」

 

 頷く。

 

「帰ってきます」

 

 胸ポケットで、モアイの左近が揺れた。

 

 外から見られるようになったことを思い出させる、妙な重み。

 

 その一方で、棚には207Bが戻ってきた証がある。

 

 霞が貝殻を見る。

 

「真白さん」

「はい」

「この貝殻は、ここで待っています」

 

 一瞬、言葉が出なかった。

 

 それから小さく笑う。

 

「……じゃあ、ちゃんと戻ってこないといけませんね」

「はい」

 

 音楽が静かに続いている。

 

 帰りたい世界は、今もある。

 

 でも、帰ってきたい場所もここにある。

 

 今夜は、それだけ覚えていればよかった。

 

 

11月10日 夜

横浜基地・格納庫前連絡通路

<< 神宮寺 真白 >>

 

 霞の部屋を出た後、眠る前にもう一度だけ格納庫へ向かった。

 

 中では、まだ整備の音が続いている。工具の金属音に、整備員たちの短い声。冷却装置の低い唸り。

 

 明日、新潟へ向かう戦術機たちが並んでいた。

 

 A-01の不知火。

 

 XM3搭載機。

 

 そしてJM-01。

 

 白い識別ラインの入った機体が、格納庫の照明を受けて立っている。

 

「……明日、か」

 

 XM3がある。

 

 A-01も訓練を重ねた。

 

 JM-01には、高負荷機動を抑える暫定制御も入っている。

 

 準備できることはしてきた。

 

 それでも、怖いものは怖い。

 

「……逃げたいわけじゃないんだけどな」

 

 背後から、静かな足音が聞こえた。

 

「神宮寺少佐」

 

 振り返る。

 

 赤い斯衛の制服。

 

 月詠真那中尉が、通路の向こうに立っていた。

 

「月詠さん……どうしたんですか?」

「少し、お時間をいただいてもよろしいでしょうか」

「もちろんです」

 

 月詠さんは隣まで歩いてきた。

 

 二人で格納庫を見る。

 

 しばらく、どちらも口を開かなかった。

 

「明日の新潟防衛戦には、私は同行できません」

 

「……はい」

 

 分かっていた。

 

 月詠さんは斯衛であり、冥夜を護る立場にある。国連軍のA-01と共に新潟へ出撃することはできない。

 

「私は冥夜様の護衛を離れるわけには参りません。斯衛としての任があります」

「分かっています。月詠さんには、月詠さんの役目がありますから」

「……はい」

 

 短く答える。

 

 それでも、何かを言い残している顔だった。

 

「ですが」

 

 月詠さんがこちらを向く。

 

「本来なら、私はこのようなことを申し上げる立場ではありません」

「月詠さん?」

「それでも、申し上げます」

 

 赤い瞳が、まっすぐこちらを捉えた。

 

「必ず、生きて帰ってきてください」

 

 息が止まりかけた。

 

 命令ではない。

 

 近衛としての指示でもない。

 

 ただ、自分へ向けられた言葉だった。

 

「戦果を挙げろとは申しません。無理に未来を変えろとも、誰かを救うためにご自身を捨てろとも申しません」

 

 月詠さんは一度だけ息を置いた。

 

「ただ、生きて戻ってきてください」

 

 簡単に「大丈夫です」とは答えられなかった。

 

 そんな保証はない。

 

 だから、別の言葉を選ぶ。

 

「……怖いです」

 

 月詠さんの目がわずかに動いた。

 

「何が起きるかをある程度知っているから、余計に怖いです。XM3があっても、A-01が強くなっていても、全部を思い通りにできるわけじゃない」

 

 画面越しではなく、本物のBETAと向き合う。

 

 判断を一つ間違えれば、誰かが死ぬ。無理をすれば、逆に誰かを巻き込むかもしれない。

 

「でも……帰ってきます」

 

 月詠さんを見る。

 

「帰ってこないと、その先を変えることもできませんから」

 

 しばらく沈黙があった。

 

「その場しのぎの返事ではありませんね」

「はい」

「覚悟として受け取ってよろしいのですね」

「……はい。約束します」

 

 月詠さんが手を差し出した。

 

 一瞬遅れて、その手を取る。

 

 思っていたより温かい。

 

「戻られたら」

 

 握ったまま、月詠さんが言う。

 

「また模擬戦にお付き合いいただきます」

「……模擬戦ですか?」

「はい。まだ私は、神宮寺少佐の動きを全て見切れておりません」

「それは……」

「勝ち逃げは許しません」

 

 思わず笑ってしまった。

 

「それ、月詠さんなりの約束ですか?」

「はい」

 

 即答だった。

 

「分かりました。帰ってきたら、またお願いします」

「必ずです」

「はい。必ず」

 

 月詠さんの手に、少しだけ力が入る。

 

 それから、ゆっくり離れた。

 

「神宮寺少佐」

「はい」

「貴方は、ご自身が考えている以上に、多くの者に必要とされています」

 

「……自分が、ですか」

「はい」

 

 迷いなく頷く。

 

「横浜基地にも。A-01にも。第207衛士訓練小隊にも」

 

 そこで、ほんの少し間が空いた。

 

 月詠さんの視線が、わずかに揺れる。

 

「そして……私にとっても、失いたくない方です」

 

 返事が遅れた。

 

 最初は、冥夜へ近づく危険人物として警戒されていた。

 

 それが今、こうして自分の帰りを待つと言ってくれている。

 

「……ありがとうございます」

 

 頭を下げる。

 

「必ず帰ってきます。月詠さんに、ただいまって言えるように」

 

「……はい」

 

 小さな返事だった。

 

 月詠さんは一歩下がり、姿勢を正した。

 

「ご武運を。神宮寺少佐」

 

 近衛としての敬礼。

 

 自分も敬礼を返す。

 

 月詠さんは、その姿勢を崩さないまま、少しだけ声を柔らかくした。

 

「そして……お帰りを、お待ちしております。真白さん」

 

 一瞬だけ、呼び方が変わった。

 

 少佐ではなく。

 

 神宮寺でもなく。

 

 ただ、真白さん。

 

「……はい」

 

 敬礼を解き、今度は自分も少しだけ笑った。

 

「行ってきます、月詠さん」

 

 月詠さんは静かに頷いた。

 

 赤い制服が、夜の通路の向こうへ遠ざかっていく。

 

 しばらく、その背中を見送った。

 

 手のひらには、まだ温度が残っている。

 

 胸ポケットにはモアイ。

 

 霞の部屋には、小さな貝殻。

 

 そして今、待っていると言ってくれた人がいる。

 

 格納庫の奥で、JM-01が静かに立っていた。

 

 明日、自分はあれに乗る。

 

 本物のBETAがいる戦場へ向かう。

 

 怖さは消えない。

 

 でも、自分は死にに行くわけじゃない。

 

「……帰ってきます」

 

 誰に聞かせるでもなく、もう一度口にした。

 

 戦うために出る。

 

 そして、帰るために戦う。

 

 霞の部屋では、207Bが持ち帰った小さな貝殻が待っている。

 

 ここには、帰りを待つ人がいる。

 

 それで十分だった。

 

 新潟防衛戦まで、あと数時間。

 

 神宮寺真白にはもう、戦う理由だけではなく――帰ってくる理由があった。

 

第30話「小さな貝殻と紅の祈り」 END




モアイが左近なのはある人の作品が好きなので、そのリスペクトですね笑。
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