マブラヴ・インサート 〜白き少佐の因果強化計画〜 作:きのこ大三元
6話は明日12時頃の投稿を予定しています。
本日19時に、番外編として「純夏交信事故シリーズ①」を投稿予定です。
本話では、真白の実力や新型OSに関わる重要な部分に触れていきます。
今後の展開にも関わってくる回になりますので、楽しんでいただけたら嬉しいです。
ゴールデンウィーク中は、できるだけ毎日更新していく予定です。
もし少しでも面白いと感じていただけましたら、
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引き続きよろしくお願いします。
10月24日 朝
横浜基地・真白私室
<< 神宮寺 真白 >>
「……夢じゃ、ないんですよね」
目を覚まして、最初に出た言葉がそれだった。
見慣れない天井。
軍用のベッド。
無機質な壁。
机の上に置かれた仮身分証と、支給された国連軍の制服。
そして、昨日から何度見ても慣れない階級章。
少佐相当。
その言葉が、朝の頭には重すぎた。
昨日、自分は社霞と出会った。
白銀武ではないと言われた。
でも、奥の方が似ているとも言われた。
そして、少し白い、と。
あの言葉が、ずっと胸の中に残っている。
「白い因果……か」
意味はまだ分からない。
ただ、霞は自分の中にある何かを見た。
自分でもまだ把握しきれていない何かを。
机の上の仮身分証を手に取る。
そこには、簡潔に自分の立場が記されていた。
神宮寺 真白。
国連軍横浜基地所属。
特務技術顧問。
待遇階級:少佐相当。
「……やっぱり、胃が重い」
昨日までは、まだどこか現実感が薄かった。
でも、こうして朝を迎えると、少しずつ分かってくる。
これは一時的な夢ではない。
自分はこの世界で、この身分を背負って動いていかなければならない。
制服に袖を通す。
鏡の前に立つ。
昨日よりは少しだけ着慣れた気がする。
けれど、中身が追いついていないことに変わりはない。
「少佐って顔じゃないよなぁ……」
そう呟いたところで、端末が鳴った。
『神宮寺少佐』
ピアティフ中尉の声だった。
「はい、神宮寺です」
少佐です、と言いかけてやめた。
まだ自分で言うには照れがある。
『本日の予定について、ご説明に伺います。入室してもよろしいでしょうか』
「はい。お願いします」
少しして、扉が開いた。
ピアティフ中尉が、いつもの整った姿勢で入室する。
手には薄い資料端末。
表情は淡々としている。
「おはようございます、神宮寺少佐」
「おはようございます、ピアティフ中尉」
「体調はいかがですか」
「身体は大丈夫です。精神的には……まあ、少し重いです」
正直に答えると、ピアティフ中尉は一瞬だけ目を細めた。
笑った、のかもしれない。
本当にわずかだったので、自信はない。
「昨日までの状況を考えれば、当然かと」
「ですよね……」
「ですが、慣れていただく必要があります。神宮寺少佐は、今後その待遇で基地内を行動されますので」
「その呼び方、やっぱり落ち着かないですね……」
「慣れてください」
「即答……」
「必要事項ですので」
ピアティフ中尉は、資料端末をこちらへ向けた。
今日の予定が表示されている。
午前。
基地内主要区画の案内。
行動規則の確認。
副司令室周辺施設の確認。
午後。
香月副司令との打ち合わせ。
翌日のシミュレーター適性確認準備。
「翌日のシミュレーター……」
その文字を見た瞬間、胸が少しだけ高鳴った。
怖い。
けれど、同時にどこかで待っていた。
戦術機。
この世界の象徴。
白銀武が、本来なら乗るはずだったもの。
自分の中に白銀武由来の因子があるなら、そこではっきりする。
「神宮寺少佐?」
「あ、すみません。少し考えてました」
「本日は、まず基地内での行動範囲と規則を確認していただきます」
「行動範囲、ですか」
「はい」
その言い方に、少し嫌な予感がした。
10月24日 午前
横浜基地・居住区通路
<< 神宮寺 真白 >>
ピアティフ中尉に連れられて、基地内を歩く。
居住区。
食堂。
PX。
医務区画。
訓練施設の見える通路。
シミュレーター区画へ続く通路。
一つ一つ案内されるたびに、この基地が想像以上に大きく、複雑で、そして閉じた世界なのだと実感する。
通路を歩いていると、すれ違う兵士たちの視線がこちらへ向いた。
ちらり。
じっ。
また、ちらり。
昨日よりも視線が多い気がする。
理由は分かる。
昨日はまだ、ただの不審な若い男だった。
今日は違う。
国連軍の制服を着ている。
しかも、少佐相当の階級章まで付けている。
中性的な外見の若い男が、少佐待遇で、香月副司令の秘書に案内されている。
目立たないわけがない。
「……あれが例の」
「男の少佐って……」
「若すぎない?」
「香月副司令の管理下らしいわよ」
小声が聞こえる。
聞こえないふりをした方がいい。
そう分かっていても、耳に入ってしまう。
自分は少しだけ肩を縮めた。
「注目されるのは避けられません」
隣を歩くピアティフ中尉が、淡々と言った。
「ですよね……」
「若い男性であり、香月副司令の直接管理下にあり、なおかつ少佐相当の待遇を受けている。基地内で噂にならない方が不自然です」
「客観的に言われると、ますます怪しいですね、自分」
「はい」
「そこは否定してほしかったです」
「事実ですので」
ピアティフ中尉は真面目な顔で言った。
本当に容赦がない。
けれど、不思議と冷たさはない。
淡々としているだけで、こちらを馬鹿にしているわけではないのだろう。
「それと、神宮寺少佐」
「はい」
「今後の行動について、いくつか制限があります」
「……やっぱりありますよね」
「基地外への単独外出は禁止です」
「それは分かります」
「人気の少ない区画への単独移動も避けてください」
「はい」
「B19区画周辺は許可制です。副司令、もしくは許可を受けた者の同行が必要です」
「……はい」
B19。
その言葉だけで、胸の奥が少し重くなる。
そこには、きっとこの世界の核心がある。
「社霞のいる区画への訪問も、香月副司令または私の許可が必要です」
「霞のところも、ですか」
「はい。神宮寺少佐にとっても、社霞にとっても、安全管理上必要です」
安全管理。
その言葉は正しい。
正しいけれど、少し寂しくもあった。
「シミュレーター使用も、当面は記録付きになります。使用時間、機体設定、補助者、観測者をすべて記録します」
「それ、ほとんど監視じゃないですか……?」
思わず苦笑する。
ピアティフ中尉は、表情を変えずに答えた。
「保護でもあります」
「保護」
「神宮寺少佐は、基地内において極めて重要かつ不安定な存在です。保護と管理は、現時点では切り離せません」
その言葉に、少しだけ息が詰まった。
保護。
管理。
どちらも、自分に向けられている。
守られている。
同時に、自由ではない。
夕呼副司令の管理下の重要隔離対象。
第3話で言われたその言葉が、改めて重く響く。
「……分かりました」
「ありがとうございます」
ピアティフ中尉は軽く頷く。
そのまま、通路を進む。
途中、PXの前を通った。
中には兵士たちが数人いる。
棚には補給品や日用品が並んでいた。
元の世界のコンビニとはまったく違う。
けれど、生活感がある。
戦争の中でも、人は食べて、眠って、日用品を買う。
当たり前のことなのに、それが妙に胸に残った。
「ここは自由に利用可能です。ただし、単独で長時間滞在する場合は行動記録に残ります」
「了解です」
「食事は基本的に食堂を利用してください。体調管理のため、摂取内容もある程度記録されます」
「そこまで……」
「必要事項です」
「……はい」
自分は、小さく息を吐いた。
この基地に、自分の自由はまだ少ない。
でも、居場所がないわけではない。
少なくとも、居場所を作ろうとしている人たちがいる。
そう思うことにした。
10月24日 午前
横浜基地・副司令室周辺通路
<< 神宮寺 真白 >>
副司令室周辺へ戻ると、空気が少し変わった。
他の区画より静かで、人通りも少ない。
昨日、霞と会った部屋が近い。
そう思うだけで、少し緊張する。
その時、通路の先に小さな影が見えた。
紫がかった髪。
小さな身体。
社霞だった。
「あ……」
思わず声が漏れる。
霞はこちらを見た。
しばらく、じっと見ている。
それから、静かに口を開いた。
「……神宮寺少佐」
その呼び方に、少しだけくすぐったい気持ちになる。
昨日は、真白さんと言われた。
今日は少佐。
場所と状況に合わせているのだろうか。
「あ、霞。おはよう」
言ってから、少しだけ迷う。
呼び捨てで良かったのだろうか。
でも、霞は特に気にした様子もなく、小さく頷いた。
「……おはようございます」
短い挨拶。
それだけ。
けれど、昨日より少しだけ自然に感じた。
「昨日は、ありがとう」
霞が首を傾げる。
「……何が、ですか」
「握手してくれて」
正確には、手首に触れられた。
そして、こちらの奥を見られた。
怖かった。
でも、あの時、霞が自分を完全に拒絶しなかったことは、少しだけ救いだった。
霞は、少しだけ目を伏せる。
「……はい」
それだけだった。
けれど、その声は昨日よりも少し柔らかい気がした。
ピアティフ中尉は、黙ってそのやり取りを見守っている。
霞が、ふとこちらを見上げる。
「……今日は、白いです」
「え?」
「昨日より、少し」
意味は分からない。
けれど、昨日の言葉と繋がっているのは分かった。
「……そっか」
自分は困ったように笑う。
「良い意味だと、受け取っておくね」
霞は、わずかに首を傾げた。
「……たぶん」
「たぶんなんだ……」
思わず笑ってしまう。
その瞬間、少しだけ緊張が解けた。
霞も、ほんのわずかに目を細めた気がした。
本当にわずかだったけれど。
「霞」
副司令室の方から、夕呼副司令の声が聞こえた。
霞はそちらを向く。
「……はい」
そして、もう一度こちらを見る。
「神宮寺少佐」
「うん?」
「無理は、しないでください」
それだけ言って、霞は副司令室の方へ歩いていった。
自分はしばらく、その背中を見ていた。
「……覚えてくれてたんですね」
「社霞は、必要なことは記憶しています」
ピアティフ中尉が言う。
「そういう意味じゃないんですけど……」
「そうでしたか」
淡々と返される。
でも、胸の中は少しだけ温かかった。
霞との距離はまだ遠い。
けれど、繋がりは切れていない。
それだけで十分だった。
10月24日 昼前
横浜基地・訓練施設見学通路
<< 神宮寺 真白 >>
訓練施設の上部通路から、下の様子が見えた。
教官の号令。
訓練兵たちの返事。
走る足音。
装備を担ぐ音。
その中に、見覚えのある人物がいた。
神宮司まりも軍曹。
昨日、夕呼副司令が名前を出していた人物。
白銀武にとって大きな存在であり、この世界でも207Bを導く教官。
まだ直接話したことはない。
いや、正確には、まだ会うべきタイミングではないのだろう。
そう思いながら、下を見ていた。
まりもさんは、訓練兵たちへ鋭く指示を出している。
その動きは、思っていたよりずっと軽かった。
姿勢。
歩幅。
視線の動き。
号令の張り。
どれも、現場を知っている人間のものだった。
「……元気そうだな」
思わず呟く。
ピアティフ中尉がこちらを見る。
「神宮司軍曹をご存じなのですか」
「あ、いえ。直接はまだ。ただ、名前は聞いています」
「神宮司軍曹は、207衛士訓練小隊B分隊の教官です。明日のシミュレーター適性確認にも、観測者として呼ばれる予定です」
「明日……」
明日、まりもさんと会う。
そう思うと、少し緊張した。
神宮寺真白。
神宮司まりも。
名前の響きが似ている。
それだけでも、妙な縁を感じてしまう。
下では、まりもさんが訓練兵に何かを指示していた。
その横顔が、ほんの少しだけ晴れやかに見えた。
理由は分からない。
ただ、どこか調子が良さそうに見えた。
「……?」
一瞬、何か引っかかった。
けれど、その違和感の正体は分からない。
自分は首を振る。
気のせいだろう。
昨日、自分は霞と会っただけだ。
まりもさんとは、まだ何もない。
何もない、はずだった。
「神宮寺少佐」
ピアティフ中尉の声で、意識が戻る。
「次はシミュレーター区画です」
「あ、はい」
自分は訓練場から視線を外した。
まりもさんがこちらに気づくことはなかった。
ただ、読者だけが知っている。
その前夜、彼女の身体にはすでに、真白由来の因果が届いていたことを。
10月24日 午後
横浜基地・香月副司令執務室
<< 神宮寺 真白 >>
午後。
再び副司令室へ入ると、夕呼副司令は端末に向かったままだった。
机の上には、昨日よりも資料が増えている。
自分が持ち込んだ未来知識。
白銀武不在の情報。
霞の反応。
そして、おそらく自分の検査データ。
それらが、この机の上で何かの形に組み替えられている。
「来たわね」
「はい」
「基地案内はどうだった?」
「……思ったより、視線が痛かったです」
「そりゃそうでしょうね」
夕呼副司令は笑う。
「若い男で、少佐待遇で、あたしの管理下。目立つなって方が無理よ」
「ですよね……」
「でも、慣れなさい」
「そればっかりですね」
「実際、慣れるしかないもの」
夕呼副司令は端末から顔を上げた。
その目が、少しだけ真剣になる。
「さて、本題よ」
「はい」
「明日、シミュレーター適性を見るわ」
分かっていた。
それでも、直接言われると胸が跳ねる。
「……ついに、ですか」
「ええ。機体は不知火を使う。もちろん実機じゃなくシミュレーターよ」
「それは助かります……」
「観測者として、神宮司まりも軍曹と伊隅みちる大尉を呼ぶ」
「伊隅大尉も……」
A-01部隊、伊隅ヴァルキリーズの隊長。
伊隅みちる。
また一人、原作の重要人物と会うことになる。
「まりもは訓練教官として。伊隅はA-01代表として。あんたが本当に戦術機を扱えるのか、見てもらう」
「……かなり緊張します」
「怖い?」
夕呼副司令が、軽く尋ねる。
自分は少し考えた。
怖い。
それは間違いない。
戦術機なんて、元の世界では画面の中の存在だった。
それを、自分が動かす。
しかも、この世界で。
白銀武が本来辿るはずだった道の代わりとして。
怖くないわけがない。
でも。
「怖いです」
自分は正直に言った。
「でも……少しだけ、楽しみでもあります」
夕呼副司令の眉が、わずかに動いた。
「へぇ」
「不謹慎かもしれませんけど。戦術機に乗れるかもしれないって思うと、やっぱり……少し」
言ってから、自分は苦笑する。
「自分、元の世界ではロボットゲームとか好きでしたから」
「ロボットゲームね」
「もちろん、実際の戦術機がそんな軽いものじゃないのは分かってます。戦うための兵器で、人を殺して、人を守るための機体だってことも」
「……」
「でも、だからこそ。自分がどこまでできるのか、確かめたいです」
夕呼副司令は、しばらくこちらを見ていた。
そして、薄く笑う。
「いいわ。その感覚は大事よ」
「そうなんですか?」
「怖いだけなら固まる。楽しみだけなら死ぬ。両方あるなら、まだ使える」
「また使えるって……」
「事実よ」
夕呼副司令は端末を操作する。
画面には、シミュレーター適性確認の予定が表示された。
日付は、10月25日朝。
観測者。
香月夕呼副司令。
ピアティフ中尉。
神宮司まりも軍曹。
伊隅みちる大尉。
そして対象者。
神宮寺真白少佐。
「明日は、あんたの中にある白銀武由来の因子が本当に衛士として使えるかを見る」
「はい」
「それ次第で、新型OS開発の優先度を上げる。A-01への導入はまだ先だけど、準備は始める」
「207Bとの接触は?」
「段階を踏むわ。いきなり全部見せるには、あの子たちはまだ若い」
「……分かりました」
「それと」
夕呼副司令の目が細くなる。
「明日の結果次第では、あんたの扱いはさらに変わる」
「さらに、ですか」
「ええ。未来知識持ちの特務技術顧問から、戦術機を動かせる教導役になる」
その言葉は重かった。
教導役。
誰かを導く側。
昨日までの自分には、想像もできない役割。
「……自分に、できますかね」
「知らないわ」
即答だった。
「そこは励ましてくれてもいいのでは……」
「できるかどうかじゃない。やる必要があるかどうかよ」
「……」
「必要なら、やりなさい」
厳しい言葉だった。
でも、夕呼副司令らしかった。
優しく背中を押すのではなく、逃げ道を切る。
それでも、その言葉には妙な説得力がある。
「……はい」
自分は頷いた。
「やるしかないですよね」
夕呼副司令は満足そうに笑った。
「その口癖、便利ね」
「便利ではないです……」
10月24日 夕方
横浜基地・真白私室
<< 神宮寺 真白 >>
自室に戻ると、机の上に新しい通知が置かれていた。
衛士強化装備貸与通知。
シミュレーター適性試験案内。
明日の集合時刻。
装備着用手順。
注意事項。
それを見ただけで、心臓が少し速くなる。
明日、自分は初めて衛士強化装備に袖を通す。
そして、戦術機を動かす。
実機ではない。
シミュレーターだ。
それでも、自分にとっては大きすぎる一歩だった。
机の上には、今朝と同じ仮身分証がある。
少佐相当の制服。
仮の肩書き。
そして、明日の予定表。
今日一日で、少しだけ分かったことがある。
この基地における自分は、自由な客人ではない。
保護対象であり、管理対象であり、研究対象であり、戦略資源でもある。
それでも。
霞は、おはようと言ってくれた。
ピアティフ中尉は、淡々としながらも自分を案内してくれた。
夕呼副司令は、相変わらず怖いけれど、自分を使うと決めている。
そして、まだ直接話していないまりもさんや伊隅大尉も、明日、自分を見る。
少しずつ、この世界の中に自分の立つ場所が作られていく。
それが怖い。
でも、何もないよりはいい。
「……白き少佐の居場所、か」
そんな言葉が、ふと頭に浮かんだ。
自分で言っておきながら、少し恥ずかしい。
でも、今の自分にはぴったりかもしれない。
白銀武ではない。
でも、少し白いと言われた自分。
少佐相当という仮の肩書きを背負って、横浜基地に置かれた異物。
その異物が、ここで居場所を作ろうとしている。
「……明日」
自分は、衛士強化装備の通知をもう一度見る。
怖い。
緊張する。
逃げたい気持ちもある。
でも。
その奥に、少しだけ楽しみがある。
戦術機を動かせるかもしれない。
白銀武の因子が、本当に自分の中にあるのかもしれない。
その力で、誰かを助けられるかもしれない。
「……やるしかないですよね」
小さく呟き、ベッドに腰を下ろす。
遠くで、基地の機械音が低く響いている。
横浜基地の夜が、ゆっくりと降りてくる。
翌朝。
神宮寺真白は初めて、衛士強化装備に袖を通すことになる。
そして。
白き少佐は、初めて戦術機の操縦席へ向かう。
第5話「白き少佐の居場所」
それは、神宮寺真白が横浜基地での立場を知った日。
そして、少佐待遇の異物が、自分の居場所を探し始めた日だった。