鋼の隣人 ―石の世界の副読本(バイブル)―   作:微糖コーヒー

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幕間:エンジニアの休息と、絆の設計図

 

 

幕間:エンジニアの休息と、絆の設計図

 

1. 【蓮 × コハク】 強さの定義と「手入れ」

 

 月明かりの下、蓮は村の広場で一人、高純度の砥石(蓮が地層から選び抜いたもの)を使ってコハクのナイフを研いでいた。

 

 そこへ、夜のパトロールを終えたコハクが音もなく現れる。

 

「……蓮。また夜なべか? 千空といい、お前といい、科学使いというのは眠るのを忘れる種族らしいな」

 

「習慣なんだよ。道具を万全にしておかないと、現場じゃ死ぬからな」

 

 蓮は、鏡のように磨き上げられた刃をコハクに返す。コハクはそれを受け取り、驚きに目を見開いた。

 

「すごいな……。これほどまでに鋭い刃は、カセキに打ってもらった直後でも見たことがないぞ」

 

「カセキさんの鍛造は完璧だ。俺がやったのは、分子レベルで表面を整えただけ。……コハク。お前は、司や氷月のような『超人』と戦うことになる。俺はお前のように戦うことはできないが、お前の持つ『武器』を世界一にすることならできる」

 

 コハクは、蓮の隣に腰を下ろし、夜空を見上げた。

 

「……蓮。お前は時々、ひどく寂しそうな顔で村を見るな。3700年前の世界を、惜しんでいるのか?」

 

「……。惜しんでるわけじゃない。ただ、便利すぎて『強さ』を忘れてた世界だったとは思う。今の、この泥臭い世界で必死に生きるお前たちを見て、俺はようやく『生きている』実感が湧いてるんだ」

 

 蓮の不器用な言葉に、コハクは快活に笑い、彼の肩を強く叩いた。

 

「ハハハ! なら安心だ。お前がその『科学の目』で私を支えてくれるなら、私はどんな怪物相手でも後れは取らんぞ、相棒!」

 

2. 【蓮 × 羽京】 沈黙の共犯者

 

 潜入ミッション以来、羽京と蓮の間には、言葉を使わなくても通じ合う「現代人同士」の奇妙な連帯感が生まれていた。

 

 蓮は、羽京のために開発した「骨伝導型レシーバー」の調整を行っていた。

 

「羽京、どうだ? 周囲の音を邪魔せずに、千空の声だけが脳に直接届くはずだ」

 

「……完璧です、蓮さん。これなら、僕の耳を塞ぐことなく作戦指示が受けられる。……あなたは、僕が何を嫌がっているか、すぐに見抜きますね」

 

 羽京は、少し苦笑いしながらレシーバーを撫でる。

 

「お前は、不必要なノイズ――争いや、人の悲鳴を聞きたくないんだろ。俺も同じだ。効率の悪い争いは、エンジニアとしては『バグ』でしかない」

 

「『バグ』ですか。相変わらず、冷めていますね。……でも、その冷徹さが、この世界では僕たちの救いになっています」

 

 羽京は、蓮が手渡した通信機の基盤を見つめ、静かに告げた。

 

「蓮さん。大航海に出るなら、僕もあなたの『耳』になりましょう。あなたが作る新しい世界の音を、一番近くで聞き届けたい」

 

3. 【蓮 × 龍水】 欲望と投資の計算

 

 第二部から合流した、七海財閥の御曹司・龍水。

 

 彼は目覚めて早々、蓮が構築した「石神村の生産ライン」を見て、爆笑しながら叫んだ。

 

「はっはー! 素晴らしい! 千空が『開発者(デベロッパー)』なら、蓮、貴様は完璧な『工場長(マネージャー)』だ! 欲望の匂いがするぞ、この生産効率!」

 

「龍水、お前の『欲望』は、俺にとっては『予算』にしか見えないんだが。……この大型帆船の建造、どれだけの鉄とマンパワーが必要だと思ってる?」

 

 蓮が提示した、緻密なコスト計算書(木板に刻まれたもの)を、龍水は指で弾いた。

 

「金(ドラゴ)ならいくらでも稼ぎ出す! 蓮、貴様の力で、この船に『エンジン』を載せろ! 帆と風の力、そして貴様の科学。その融合こそが、世界を掌握する美しき力だ!」

 

「……エンジンか。内燃機関の設計、ちょうど図面を引き始めたところだ。……龍水、お前が世界を欲しがるなら、俺はそのための『足(ハードウェア)』を最高傑作に仕上げてやる」

 

「はっはー! 唆るじゃねえか、エンジニア! 貴様のその、一分の隙もない合理性に、私は100億%の『投資』を約束しよう!」

 

4. 【蓮 × 千空】 科学の王の、たった一人の理解者

 

 深夜。誰もいなくなったラボで、千空と蓮は向き合っていた。

 

 二人の間には、試作段階の「GPS(電波航法装置)」のプロトタイプ。

 

「……千空。お前、たまには休めよ。顔色が土器と同じになってるぞ」

 

「ククク、てめーに言われたくねえよ、現場監督。……蓮。てめー、石化が解けてからのこの一年、後悔したことはねえのか?」

 

 千空の問いは、唐突だった。

 

 蓮は、油で汚れた手を拭き、少し考えてから首を振った。

 

「後悔? まさか。……前世の俺は、誰が作ったかも分からない巨大なシステムの、たった一つの歯車だった。でも今は違う。俺が引いた一本の線が、ダイレクトに誰かの命を救い、文明を動かしている」

 

 蓮は、千空の赤い瞳を真っ直ぐに見つめた。

 

「お前が『全人類を救う』なんて馬鹿げた夢を語ってくれなきゃ、俺は今頃、ただのサバイバーで終わってた。……礼を言うのは、俺の方だ、千空」

 

「……ククク。湿っぽいのは100億%似合わねえな。……行くぞ、現場監督。明日は船の進水式だ。世界を、俺たちの科学でひっくり返しに行くぞ」

 

「あぁ。……納期は死守する。それがエンジニアの誇りだからな」




各キャラクターとの絆を描くことで、蓮が科学王国にとって単なる「便利な装置」ではなく、欠かせない「家族」になっていく過程を強調しました。

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