『本編完結』鋼の隣人 ―石の世界の副読本(バイブル)― 作:微糖コーヒー
第14話:新世界への航跡 ―エンジニアの宣戦布告―
1. 太平洋のクロスロード
ペルセウス号は、宝島で救出した仲間たちを乗せ、一路、北米大陸へと突き進んでいた。
甲板では、復活した龍水が風を読み、カセキが石化装置の解析用ケースを磨き上げている。しかし、蓮は一人、機関室に引きこもって「レーダー」の感度調整に没頭していた。
「……千空。この先の北米エリア、電波のノイズが多すぎる。ホワイマンの干渉じゃない。これは……もっと組織的で、人為的な指向性電波だ」
蓮がモニター(カセキが吹き上げたブラウン管の試作機)を指差す。そこには、規則正しく刻まれるパルス信号が映し出されていた。
「ククク、100億%同意だ。……蓮、てめーも気づいてんだろ? この世界には、俺たち以外にも『科学の階段』を駆け上がってる狂者がいやがる」
「あぁ。それも、俺たちのような『村』単位じゃない。……大規模な工業プラントの匂いがする」
蓮は、前世のエンジニアとしての勘で察していた。
広大なトウモロコシ畑を背景にした、巨大な煙突と、空を切り裂く「鉛の弾丸」の気配を。
2. ミシシッピ川の狙撃
北米大陸、ミシシッピ川の河口付近。
ペルセウスが川を遡上し始めた瞬間、蓮の耳に設置された小型レシーバーが、不快な高周波を拾った。
「……っ、全員伏せろ!! 弾道計算、右舷30度! 狙撃だ!!」
蓮が叫ぶと同時に、ペルセウスの船体を激しい衝撃が襲った。
――ガギィィィン!!
鉄板を貫通し、メインエンジンの冷却パイプを掠めたのは、洗練された「全金属製」の弾丸。
石神村の火縄銃とは一線を画す、ライフリングの刻まれた近代兵器。
「クソっ……! 冷却系をやられた! 千空、船を岸に寄せろ! このままじゃエンジンが焼き付く!」
「ククク、いい挨拶じゃねえか。……どうやら向こうの『現場監督』は、俺たちの入国を歓迎してねえらしい」
3. Dr.ゼノとの無線通信(ハッキング)
蓮は、損傷したエンジンを応急処置(ダクトテープと樹脂によるシーリング)しながら、船内の無線機を強引に広帯域へと改造した。
相手が近代兵器を使うなら、必ず「通信」を使っているはずだ。
「……こちら、科学船ペルセウス。狙撃してきた無礼な連中に告ぐ。……お前たちの弾道計算は、風速補正が0.2秒遅いぞ」
蓮がオープンチャンネルで放った言葉に、数秒の沈黙の後、ノイズ混じりの「洗練された英語」が返ってきた。
『……ハハハ! 驚いた。石の時代に、私の弾道の「甘さ」を指摘するエンジニアがいるとは。……エレガントではないが、興味深い』
Dr.ゼノ。元NASAの科学者にして、力による世界再建を掲げる男。
「ゼノと言ったか。……お前がNASAの科学者なら、このエンジンの燃焼音を聞けば分かるはずだ。俺たちは、お前の『独裁』に協力する気はない。……この大陸のトウモロコシ(資源)は、全人類70億人の復活のために、俺たちがハックさせてもらう」
4. 科学の二正面作戦
無線を切った蓮は、千空を振り返り、不敵に笑った。
「千空。……向こうの所長(ゼノ)は、プロの科学者だ。小細工は通じない。……俺は、この船を『移動要塞』に改修する。あいつが鉛を飛ばしてくるなら、俺たちは『科学の盾』と『見えない槍』で応戦だ」
「ククク、唆るじゃねえか、現場監督! 科学 vs 科学。……人類最高の頭脳戦の始まりだ!」
北米大陸。
トウモロコシの黄金色に染まる大地を舞台に、千空と蓮のコンビは、かつてない強敵との「近代戦」へと足を踏み入れる。
科学的ポイント:
ライフリング: 銃身の中に刻まれた溝。弾丸に回転を与え、命中精度を飛躍的に高める。
応急処置: 現場エンジニアの必須スキル。ダクトテープは文明の守護神です。