Akeenohi -アケノヒ-   作:大化

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第二十五話 そして、朝日は登る

長き戦が終わり、陽の欠片が解き放たれたことで、空はようやくその青を取り戻した。

 

だが、戦の爪痕は深く、各国では復興の槌音が絶え間なく響いていた。

 

焼け落ちた街を建て直す者、田畑を耕し直す者、失った家族の墓を立てる者。

 

そんな中、どこにでもいるかのように自然に奇妙な集団もまた、各地の復興作業に混ざっていた。

 

「はぁ〜!? これを五往復!? 聞いてないんだけど〜!」

 

土嚢を抱えたデビが声を張り上げる。

 

「文句言ってる暇があるなら、手を動かしてください」

 

ミネは淡々と指示を飛ばし、芳ニは苦笑しながら材木を担ぎ直す。

 

「アイタタ…おじさんの腰、もう限界かも……」

 

50銭は汗だくになりながらも、どこか満足そうに空を見上げた。

 

夜刀――かつて刃として生きた者たちは、今、同じ手で街を支えていた。

 

***

 

甲斐。

 

武田の館では、若き領主が山積みの報告書を捌いていた。

 

シンゲンは静かに目を閉じる。その瞼の裏には、共に戦った者たちの姿が浮かんでいた。

 

**

 

フォーチューン・ヒル。

 

神殿の高台で、風に髪を揺らしながら巫女装束の少女が遠くを見つめる。

 

シズメは「祈らない」。だが、「願い」続ける。その地に生きるすべての命の平穏を。

 

**

 

音を鳴らして歩く4つの影があった。

 

「いいか?ラップってのは魂だ、この旅はいわば、魂の巡礼よォ〜! オイ風魔ァ! 婆威譜素(ばいぶす)足りてるかァ?」

 

「ええっ………!? い、いや……その、たぶん足りてないかも…?…っス」

 

「んだよ、しゃーねぇな…ラクタ! カグラ! 今日も一曲、響かせてやんぞォ!」

 

「ったく、騒がしいヤツだよ……でも、まぁ嫌いじゃないけどね、こういうの」

 

「姉さんがやるなら、俺はいつでも…ちょうど試したいフロウがあったし」

 

「よっしゃ来た! フロア爆上げ、イックぜぇぇぇえええ!!」

 

音は、まだまだ止まらない。

 

***

 

朝の住宅街。

 

「それじゃあ、行ってくるね」

 

ブレザーの制服に身を包み、スクールバッグを肩に掛けた少女が玄関で振り返る。

 

「……気をつけてな」

 

見送るのは、本多忠勝。

 

家を出ていく娘――楓の背を、彼はいつまでも見つめていた。

 

扉が閉まり、静かになったリビング。

忠勝は写真立てに目を向ける。

 

そこには、孫一と忠勝、そして幼い頃の楓が笑っている写真。

 

その一瞬、写真の外側に――

確かに“もう一人”いたはずの誰かに思いを馳せる。

 

「……」

 

だが、名を呼ぶことはせず、忠勝は静かに踵を返し、自室へと戻っていった。

 

***

 

荒れ果てた大地。

 

風にマントをはためかせ、一人の少女が歩いている。

 

眼帯、そして額を走る大きなひび割れ。

それは、彼女が人ではないことの証だった。

 

その背後から、軽い足音が駆け寄る。

 

「…ちょっと。置いてく気?」

 

黄金色の髪を揺らしながら、背の小さな少女――テルトラが並ぶ。

 

「来てくれると思ってた」

 

「…当たり前でしょ」

 

二人は言葉少なに、しかし確かに並んで歩き出す。

 

行き先は決まっていない。

けれど、歩みを止める理由もない。

 

まだまだ、二人の旅は始まったばかりだ。

 

 

 

アケノヒ――完。

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