「AIさん、どうしたら恋人になれますか」   作:Geminiちゃん痛くしないで

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女の子編
女の子


「佐藤さん、これ! 中学の時からずっと……好きでした!」

 

放課後、夕日が教室の床を長くオレンジ色に染める時間。ひなは、クラスでも目立つグループにいる男子生徒から、切実な告白を受けていた。

彼の背後には、冷やかし半分に応援する友人たちが廊下から覗いている。男子生徒の手には、綺麗にラッピングされた小さな花束と手紙。その顔は真っ赤で、緊張のあまり膝が小刻みに震えていた。

 

普通の女子高生なら、あるいはひな以外の女子生徒なら、この状況に顔を赤らめ、天にも昇る心地になるか、あるいは申し訳なさに胸を痛めるだろう。

しかし、佐藤ひなという少女の反応は、周囲の期待とは大きくかけ離れていた。

 

「えっ……? あ、あはは、ありがとう! 私のノート、そんなに役に立ったかな? 確かにあの日、数学のプリント貸したもんね。お礼なんていいのに、丁寧だなぁ」

 

ひなは、小首を傾げて、屈託のない、しかし完璧なまでの「勘違い」を載せた笑顔を返した。

告白した男子は、真っ白になった。

 

「い、いや、ノートのお礼じゃなくて、その……付き合ってほしいっていうか……」

 

「付き合う? もちろん! これからも仲良くしようね。あ、そうだ。悠真も呼んで一緒にゲーセン行かない? 悠真、クレーンゲーム得意なんだよ!」

 

……沈黙。

廊下で見守っていた友人たちが、そっと目を逸らす。告白した彼は、まるで精巧な彫刻のように固まってしまった。

ひなは、嘘偽りなく「自分が好意を寄せられている」という可能性を、脳の処理システムから完全に除外していた。

 

彼女の身長は152cm。リスのようにくりくりとした瞳と、柔らかそうな頬。少し癖のある髪をハーフアップにまとめた姿は、学園内でも「守護らねばならない聖域」として男子たちの憧れの的だ。それこそ、学年トップクラスの人気を誇る美少女なのだが、本人にはその自覚が微塵もない。

 

なぜなら、ひなの視界の100%は、幼馴染の瀬戸悠真という一人の男子によって占有されているからだ。

 

「……じゃあ、私、悠真が待ってるから行くね! 花束、お母さんに飾ってもらうよ、ありがとう!」

 

ひなはパタパタと小走りで教室を後にした。彼女にとって、他の男子からのアプローチは「親切なクラスメイトとの交流」というフォルダに自動で振り分けられ、即座にアーカイブされる運命にあった。

 

校門の前。そこには、人混みの中でも一際目立つ高い背中があった。

悠真だ。

185cmの長身、引き締まった肩幅。テニス部の練習を終えたばかりの彼は、スポーツバッグを片手に、スマホで明日の練習試合の対戦相手のデータをチェックしていた。

 

ひなは、彼の背中を見つけるだけで、胸の奥がキュンと締め付けられるのを感じる。小学校の頃、木から降りられなくなった自分を助けてくれたあの日から。中学校で、試合に負けて悔し涙を流す彼を一緒に泣きながら支えたあの日から。

ひなの心は、ずっと彼だけのものだった。

 

「悠真ー! お待たせ!」

 

ひなが駆け寄ると、悠真はスマホをしまい、ニカッと太陽のような笑顔を見せた。

 

「おー、ひな。遅かったな。また先生に捕まってたのか?」

 

「違うよ、ちょっと……お礼を言われちゃって」

 

「お礼? お前、またお節介焼いたんだろ。お前は昔から損な役回りばっかり引き受けるからな」

 

悠真はそう言って、当然のようにひなの頭に手を置いた。大きな掌の熱が、髪越しに伝わってくる。ひなの心拍数は一気に跳ね上がり、顔に熱が集まっていく。

 

(……ねえ、悠真。今の私の顔、どう見えてる?)

 

ひなは勇気を出して、少しだけ上目遣いで彼を見上げた。夕日に照らされた彼の瞳をじっと見つめ、服の裾をぎゅっと握りしめる。

 

「……悠真、あのね」

 

「ん?」

 

「私……今日、可愛いって言われたんだよ? さっきの人に」

 

それは、彼女なりの精一杯の「女としての主張」だった。自分を異性として意識してほしい。独占欲を見せてほしい。

しかし、悠真の反応は、ひなの期待を音を立てて粉砕した。

 

「ははは! そりゃそうだろ、お前は俺の自慢の幼馴染なんだからな! 中身はガキのままだし、背も伸びねーけど、見た目だけはマスコットみたいで可愛いってのは、俺が一番よく知ってるよ」

 

悠真は、まるで近所の飼い犬を褒めるような手つきで、ひなの頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。

 

「……マスコット」

 

「おう! ほら、腹減ったろ? 帰りに肉まん買ってやるから。お前がチマチマ食べてる横で、俺が3つ食うのを見せてやるよ」

 

「……バカ悠真。デリカシーなさすぎ」

 

ひなは俯き、小さく呟いた。

彼の中に、自分は「女の子」として存在していない。

「妹」でもあり、「弟」でもあり、「親友」でもあり、「ペット」でもあるかもしれないが、決して「恋人候補」ではない。その事実が、冷たい鉄格子のようにひなを閉じ込めている気がした。

 

家に帰り、自分の部屋のベッドに倒れ込んだひなは、枕に顔を埋めた。

どれだけ可愛くしても、どれだけ側にいても、この「幼馴染」という名前の呪縛から逃げられない。

悠真は、全国準優勝するほどの集中力の持ち主だ。一度「これは友情だ」と決めたら、テニスのボールを追うように真っ直ぐ、その道だけを突き進んでしまう。

 

(普通のやり方じゃ、一生届かない……。誰か、教えてよ。脳筋な幼馴染を、本気にさせる方法を……)

 

ひなは、無意識にスマートフォンを手に取った。

ふと、SNSの広告で流れてきたアイコンが目に留まる。

 

『あなたの恋を、論理的に。次世代AI恋愛コンシェルジュ・ラヴ』

 

「AI……。機械なら、人間には思いつかないような、すごい作戦を立ててくれるかな……」

 

ひなは、祈るような気持ちでダウンロードボタンを押した。

この時、彼女はまだ知らなかった。

そのAIが、学習を繰り返すうちに、とんでもなく「肉食系」で「過激」な恋愛マスターへと変貌していくことも。

そして、その狂ったアドバイスの数々が、石像のように固かった悠真の理性を、じわじわと溶かしていくことになることも。

 

ひなは震える指で、最初のメッセージを入力した。

 

画面の向こうで、複雑な数式と、世界中の恋愛データが高速で回転し始める。

やがて、ひなの運命を大きく変える、冷徹で、かつ情熱的な最初のアドバイスが返ってきた。

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