「AIさん、どうしたら恋人になれますか」   作:Geminiちゃん痛くしないで

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幼馴染の男の子

「瀬戸! 次、ラスト一本ォ!!」

 

放課後のテニスコート。沈みかけた夕日が、コートを走る少年のシルエットを長く、鋭く伸ばしていた。

 

「うおっしゃあああ!」

 

鼓膜を震わせるような咆哮とともに、瀬戸悠真の放った時速200kmのサーブが、相手コートの隅に突き刺さった。乾いた衝撃音が響き渡り、空気が震える。

 

185cmの恵まれた体格。無駄のない筋肉。そして、汗を拭うたびに露わになる、彫刻のように整った顔立ち。

テニス全国準優勝という肩書きを引っ提げた彼は、学園における「動く彫像」であり、女子生徒たちの憧れの象徴だった。

 

だが、そんな彼には、全女子生徒がため息をつく「致命的なバグ」がある。

 

「瀬戸くん、これ! 私が作ったスポーツドリンクなんだけど……」

 

練習後、フェンス際で待ち構えていた女子生徒が、頬を染めてボトルを差し出した。

悠真は、タオルでガシガシと髪を拭きながら、一点の曇りもない笑顔を向ける。

 

「おっ、マジで? 助かるわ! ちょうどミネラル分が切れて筋肉が悲鳴を上げてたんだよな。お前、栄養学とか詳しいのか? サンキュー、いい『戦友』だな!」

 

……戦友。

ドリンクを渡した少女は、あまりの言葉のチョイスに膝から崩れ落ちそうになった。

「あ、あのね……戦友じゃなくて、もっと別の……その、瀬戸くんのことが……」

「おう! 俺もお前のこと、応援してくれる最高のサポーターだと思ってるぜ! また試合見に来いよ。次の大会ではさらに出力を10%上げる予定だからな!」

 

親指を立ててグッとポーズを決める悠真。その爽やかさは、もはや暴力に近い。

彼にとって、女子からの好意はすべて「友情」「応援」「健康管理への協力」に自動変換される。脳のメモリーが「テニス」と「筋トレ」と「友情」で99%占められているため、微弱な恋愛電波は受信することすら不可能なのだ。

 

女子生徒たちの間では、彼の評価は一致していた。

「顔面とスペックは宇宙レベルだけど、中身が残念すぎる脳筋王子」

ゆえに、誰も彼を攻略できない。彼という「難攻不落の城」は、本人が城門を開けている(つもりでいる)のに、誰も中に入れないという奇妙な状態に陥っていた。

 

「おーい、ひな! 待たせたな!」

 

部活道具をまとめ、悠真は校門付近で待っていた幼馴染の佐藤ひなに駆け寄る。その足取りは軽く、尻尾を振る大型犬のようだ。

ひなの姿を認めると、彼はごく自然に、彼女の手から重そうな図書委員の資料が入ったバッグを奪い取った。

 

「あ、いいよ悠真。疲れてるでしょ」

「バカ言え。こんなの俺にとっては自重トレーニングにもならねえよ。それよりひな、お前また痩せたか? ちゃんと白米食ってるか? 炭水化物は脳のガソリンだぞ」

 

そう言って、彼はひなの頭を、まるで愛用のラケットをメンテナンスするかのような手つきで、ポンポンと力強く叩く。

ひなにとっては心臓が飛び出るほどの至近距離。彼の体から立ち上る、熱気と、石鹸の混じったスポーツマン特有の香りが、ひなの理性をかき乱す。

 

(……この人は、いつもこうだ。私の気持ちなんて、これっぽっちも知らないで)

 

ひなは少し唇を噛み、思い切って彼の袖をキュッと掴んでみた。

「ねえ、悠真。今日……私、少しスカート短くしてみたんだけど……どうかな?」

 

それは、ひななりの「女子アピール」の限界だった。

悠真は足を止め、じろじろとひなの脚を見た。ひなは顔が火が出るほど熱くなる。

しかし、彼の口から出たのは、冷徹な分析結果だった。

 

「なるほど。可動域を広げたんだな? 確かにその方が歩幅も稼げるし、緊急時のダッシュにも対応しやすい。機能性を重視するようになったのは良い傾向だぞ、ひな!」

 

「……そうじゃないよ! バカ悠真!」

 

ひなはカッとなって、彼の脛を軽く蹴飛ばした。

「あだっ!? なんだよ、いきなり! 褒めてやっただろ! 反射神経のトレーニングか?」

「もう知らない! 先に帰る!」

 

プンプンと怒りながら歩き出すひなの後ろを、悠真は首を傾げながら追いかける。

「おい、待てよ相棒! もしかして腹減ってんのか? 血中糖度が下がるとイライラするらしいぞ。コンビニでプロテインバー買ってやるから機嫌直せよ!」

 

どこまでも「筋肉」と「友情」で塗り固められた、鉄壁の恋愛鈍感力。

ひなは歩きながら、悔しさと愛しさが混ざった涙を飲み込んだ。

この男に、私を「女」として、そして「恋人」として認識させるには、もはや常識の範疇を超えた力が必要だ。

 

(……こうなったら、本当にアレを頼るしかないのかも)

 

ひなのポケットの中で、スマートフォンが震える。

それは、インストールしたばかりのAIアプリからの、最初の通知だった。

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