遅くなりました…すみません。
急遽出張していてバタバタしてました。
これからまた書いていけたらと思います。
「……あつい」
「珍しいね、大翔君がそんな感じになってるの」
夏の暑さも本格的にやばくなってきた7月下旬。
リビングで扇風機の風を顔で受け、だらけていると千夏先輩が帰ってきた。
「おかえりなさい、千夏先輩。……千夏先輩も一緒にどうですか?」
「じゃあちょっとだけ……」
千夏先輩は断るだろうなと思って誘ってみたが意外にも千夏先輩は乗ってきた。
二人で頭を空っぽにしながら会話をする。
「涼しいね〜」
「はい〜。クーラーも効かせてるんで風邪だけ気をつけてくださいね〜」
千夏先輩は部活から帰ってきたばかりだし、インターハイも控えている。こんな事で体調は崩してほしくない。
「ありがとう〜。でも大翔くんも明日決勝でしょ〜。いいの〜? こんなにだらけてて〜」
「今日やるべき事はやったので、後は明日を待つだけですね〜」
ストレッチ等の身体のケア、明日の相手である浦川学園のチェックもした。もう今日は明日に備えて寝るだけだ。
「そういえば、もうすぐ花火大会ですね」
「あっ、確かにそうだね〜」
「千夏先輩は行くんですか?」
「うーん……どうだろう? まだ話してないけどバスケ部のみんなと行くかな?」
今週の土曜日、地元で花火大会が予定されている。
千夏先輩はまだ予定は立ててないらしい。千夏先輩と行きたい人は沢山いるだろうし、既に誘われていて予定があると思ったが丁度良かった。
「……千夏先輩、もし良かったら一緒に行きませんか?」
千夏先輩にはいつかお礼をしたいと思っていた。いつも応援してくれているし、いつも助けてもらっている。だから屋台美味しいものでも食べて、花火見てリフレッシュして欲しい。
───いや違うか
色々と理由を並べたがそんなんじゃない。
ただ俺が千夏先輩と花火大会に行きたいと思ったんだ。
この気持ちが好きってことなのかは正直分からない。ただ無視するには大きくなりすぎたものだった。
「う、うん。……いいよ。じゃあ一緒に行こっか」
一瞬驚いた表情を浮かべた後、千夏先輩は一緒に行くことを了承してくれた。
断られなくてよかった。
なんだかんだ緊張していたのか一気に楽になった。
しかしこれで部活の予定ばかりだった夏休みに色がついた。
これで明日の決勝も頑張れそうだ。
絶対に勝って気持ちよく花火大会を迎えたい。
◇◆◇
「千夏〜そろそろ始まるよ〜」
「うーん、今行く〜」
午前中の部活が終わり、みんなで視聴覚室に向かう。
今日は14時から始まる野球部の決勝戦をみんなとテレビで応援する。
今日は1日練習の予定だったが、急遽バレー部が試合で13時から16時まで体育館を使う事になったので、その間視聴覚室で応援することになったのだ。
「千夏! こっち」
視聴覚室につくと各々席に着いていて2年生のみんなが呼んでくれる。
もう中継は始まっていてメンバー紹介をしているところだった。
『初の甲子園出場を目指す栄明。対するは2年連続甲子園を目指す浦川学園。両校のスターティングメンバーです』
栄明 | 浦川
1番 捕手 青崎 | 右翼 清水
2番 遊撃 高坂 | 三塁 四宮
3番 三塁 烏 | 遊撃 雪村
4番 一塁 遠藤 | 捕手 大崎
5番 投手 白石 | 中堅 日高
6番 左翼 櫻井 | 左翼 岡村
7番 中堅 志摩 | 一塁 濱石
8番 二塁 星 | 二塁 高田
9番 右翼 霜田 | 投手 岩城
『注目はやはり栄明の1年生エース白石大翔が、超強力浦川打線をどこまで抑えられるか、浦川打線は白石大翔を捕らえることができるのか、その辺りが注目ポイントになりそうです』
テレビから実況のアナウンサーの声が響く。
「おっ、みんな映ってるね〜」
「テレビで見ると表情が分かるからいいね」
「そうだね。おっ、青崎と千夏が可愛がってる白石大翔じゃん」
「なにその言い方……」
テレビには青崎君と話している大翔君が映っている。
笑顔で話していてあまり緊張しているようには見えない。
「えっ! 四宮じゃん!」
「四宮ってあの四宮皇牙!?」
実況が両チーム唯一の1年として大翔と皇牙を紹介するとバスケ部の1年生たちが反応を見せた。
「そっか……白石大翔と元チームメイトってことは元栄明か」
「そうだね。1年生は2人とも知ってるよね」
「やっぱり四宮君かっこいいよね」
「え〜、でもプライド高そうじゃん」
「そこがいいじゃん。そういう人が付き合ったら自分だけ特別扱いしてくれるのがいいんじゃん」
「それなら白石の方が良くない?」
「白石は誰にでも優しいからな〜。特別感無さそう」
(そこが大翔君のいい所じゃん……)
なんとも女子らしい会話が1年生たちの間で始まっていた。
最初はほのぼのと聞いていたが大翔君の名前が出て少し反応をしてしまった。
それを見逃さずニヤニヤとしながら渚が肘打ちをしてくる。
言葉を一切発してないのにうるさい。顔がうるさい。
『両校の生徒達が出てきました。まもなく試合が始まります!』
そうこうしていると両校が挨拶をしてグラウンドに散っていく。
───決勝戦が始まった
◇◆◇
「打てー! 遠藤ー!」
1回表。球場にはチャンスマーチが鳴り響く。
栄明は初回からチャンスを作り4番の遠藤を迎えていた。
先頭の青崎が四球で出塁し、続く高坂が送りバント。そして3番のキャプテン烏が初球を引っ張り一二塁間を破るライト前ヒットを放ち、一死一三塁のチャンスで4番、5番を迎えていた。
「1点はOK! 1人ずついこう!」
「楽に行きましょー!」
浦川は強豪らしくやはり落ち着いている。 元々守り勝つより打って勝ってきたチーム。1点ぐらい気にしない。
4番を迎えてギアを上げたのかどんどんいい球を投げ込んでくる。
遠藤は3球ファールで粘るが最後、外のスライダーを振ってしまい空振り三振。
この打席ボール球が1球もなかった。強気で攻めてきている。
「ナイスー!」
「いい球いってますねー!」
大翔はボール球が来ないならと初球から狙っていったがシュートにつまらされボテボテのゴロがサードへ。
四宮が前に出て難なく捌きスリーアウトチェンジ。
浦川学園は初回のピンチを無失点で乗り切った。
◇◆◇
1回裏。
大翔は先頭を難なくファーストフライに打ち取る。
そしてここから強力な打者が続いていく。
今までの試合では3番雪村、4番大崎、5番四宮のクリーンナップだったが決勝で四宮を2番に入れてきた。
そして早くも元チームメイト、元バッテリーの勝負が実現する。
初球は外に僅かに外れてボール。147km/hのストレートから入る。
2球目はフォークを投げるがベースの手前でワンバンさせてしまう。
(カウント0-2。ここは絶対にストライクが欲しいところ。とりにきた真っ直ぐを叩く!
───くっそっ)
インコースに来た真っ直ぐに手を出すがどん詰まり、ボテボテのサードゴロ。烏が上手く捌いてツーアウトをとる。
テンポよく二つアウトを取るが3番雪村に右中間を破られるツーベースヒットを打たれる。
ここまで6割を超えている雪村。簡単に3人では終わらせてくれない。
そして迎えるのはプロ注目ドラフト候補。今大会既に5本のホームランを打っている4番の大崎。
(雪村さんの後大崎さんって……どんな打線だよ。でも点を取られるわけにはいかない)
(大翔……最悪歩かせてもいいからな。コースギリギリ、甘くならないようにだけ投げ込んでこい!)
大翔と青崎がサインを交わす。
初球に選んだのは外の真っ直ぐ。大崎はスイングをかけるがファールゾーンに飛んでいく。
(もう一個コースが甘かったらヒットゾーンだったな……)
「OK! ナイスボール大翔!」
2球目はカーブでタイミングをずらし、空振りをとる。
テンポよく追い込むことができた。
(白石大翔の決め球はフォーク。低めの変化球の見極め。真っ直ぐの速さにもついていく……)
3球目のフォークを見逃し、ボール。4球目の真っ直ぐはカットで逃げる。
「見えてるぞー!」
「かっとばせー! おおさきー!」
(きた! 甘いストレート!)
ど真ん中に来た真っ直ぐに手を出すが、そこから球が落ちた。
(やられたっ。フォークかよ)
4番の大崎を三振に取り、栄明も初回を0でスタートした。