「ここからかなり遠い場所から来ていてね。初めて見る街並みに思わず驚いてしまったんだ。
君さえ良ければ街を紹介してくれないか。」
「それはもちろん。」
ラインハルトと名乗った男は快諾してくれた。
街並みを堪能しながら、彼の話を聞く。
この国はルグニカ王国というらしく、世界の最も東に位置するらしい。
薄々感じてはいたが、どうやら本当に自分の知る地球ではないらしい。
「人が賑わっているのはね、近々王選が始まるからなんだ。」
「王選?」
「そう。候補者たちの中から新しい王様を選ぶんだ。国中のみんなの話題は王選で持ちきりさ。」
話をしながら露店の物を軽く見て回る。やはり文字から違うのか。会話はできるのに。
「君、結構物騒なものを下げて歩いているわけだけど、騎士とかいうものなのかい?」
「ああ、そうだね。まだまだ未熟な身ではあるが、騎士の端くれをやらせてもらっているよ。」
テキトウに言っただけなのだが、本当にそうだったらしい。端くれと言ったが、騎士の集まりのようなものでもあるのだろうか。
「僕はこの街の警護を任されているんだ。
実を言うとね、君が挙動不審だったから監視目的のために行動させてもらったよ。」
急に本音らしきことを言うラインハルト。
「すまないね。君を試すようなことをしてしまったことを詫びよう。」
「いや、良いんだ。そう思われるのも無理はない。」
「立て続けに申し訳ないが、僕はこれでも仕事中だからね。ここで君とはさよならだ。」
どうやら警戒は無くなったらしい。
「こちらこそ、すまないね。君を付き合わさせてしまって。仕事、頑張ってくれ。」
「ありがとう、君も観光楽しんでくれ。」
ラインハルトと別れ、街の探索を再開する。
空を見ると、日が傾き始めている。
しかし、泊まる場所がどこにあるかわからない。というより、まずお金も持っていないのだ。今日は野宿だな。そう思いながら郊外へと歩みを進めていく。
道行く人に話を聞いてみると、貧民街というものがあるらしい。
どうせ暇なんだ。国のあらゆるところを回ろう
じゃないか。
貧民街に着いときには、もうすっかり日は暮れていた。
かなり暗いが、月明かりで少しは見える。目も慣れてきたし問題ないだろう。
夜だからか、あまり物音は聞こえない。
街と比べてはあまりに簡素な家が多いものの、住めないほどではないようだ。
歩みを進めていると、周りの家と比べて大きな建物を発見する。家、というよりは蔵のようだ。
話し声が聞こえる。人がいるのだろうか。しかし、こんな夜中に家を尋ねるのは非常識な気がする。そう考えて、その建物から離れようとして、
ガタンッ
と、大きな物音が響く。振り返ると、さらにもう1つ物音が聞こえた。
何かあったのだろうか。人様のこととはいえど、少し気になり、建物の扉を叩こうとした。
が、扉は開いたままだった。中を見てみると、
人2人を中心に赤い水たまりが広がっている。
「なっ!?」
急いで駆け寄る。
銀髪の女の子と黒髪の男が倒れている。
「しっかりしろ、君たち!」
そう呼びかけると、黒髪の男が辛そうにこちらを見る。
急いで助けようとして、
その男が自分の服の裾を掴む。
待て、なぜこの男はジャージを着ているんだ。
男は血の滲んだ目を向けながらこちらに話しかけてくる。
「ぃ、 逃げ・・・・ろ・・」
そう言われた途端、
急に喉元に鋭い痛みが走る。
鮮血がどくどくと流れ落ちる。
完全に油断していた!
いますぐにここから逃げないと。
扉へと体を向けて、
左足を切られる。
「グッッ⁉︎」
なんとか痛みに耐え、建物から出ることに成功する。
自分を切ったであろう人物が建物から出てくる。
「殺したと思ったのに。あなた、頑丈なのね。」
独特な形状のナイフを持った女性だ。
刃にはしっかりと血痕が付いている。
件の女性から目を離さずに、霊子から、
青く光る矢を弓につがえ、放とうとした瞬間、
目の前に現れた黒い手が、自身の心臓目掛けて襲いかかり、反撃の暇もなく、握りつぶした。
あまりの激痛に、矢と弓を手放してしまう。
声を上げることすらままならない。
そのまま地面に膝から崩れ落ちる。
意識が急激に薄れていく。
抗おうとなんとか目を開くと、
件の女性が自分に向かって刃を振り下ろすところだった。
トスッ
まずはここから。
感想・高評価よろしくお願いします。