どうも、常夏鳳梨です。
今回は長編アニメーション映画についての話し合いがメインの回です。
この小説を書く上でイライアさんの元ネタについて調べたけれども、彼の作り上げた作品が後々アニメという文化だけじゃなくて、日本のサブカルに大きな影響を与えたと思うとヤベェやつじゃね?と思った今日この頃。
イライア・バーバンクという白エルフは、アニメ映画という分野においては天才であった。
何しろ、彼女が率いるイライア・バーバンク・スタジオの作り上げるアニメ映画は他のアニメ映画とは違い、まるでそこに生きているかのようなキャラクターの動きや描写。
老若男女問わず惹きつけるストーリー性に、短編という短くも魅力的な物語の世界において、独自のオリジナリティを確立するということをやってのけたため、彼女の作り上げた作品はオルクセン連邦どころか世界中の人々を魅了し始めていたのである。
それに加え、イライアは映画を彩るスパイスとして音楽を重要視していた。
現に──彼女の制作した作品の中には、アニメにミュージカルなどの音楽的要素を取り込んだ上で、アニメの可能性を探究するために実験的な試みを行った短編アニメ映画シリーズもあったため、彼女はそういった意味でも少しずつではあるがその名を知らしめていた。
そして、彼女が長編アニメーション映画の制作というアイデアを思いついたのは、ちょうどこの頃のことであった。
彼女にとって、長編アニメーション映画は物語の可能性を引き出す方法の一つではないか?と思ったようで、まだ見ぬアニメの可能性を見るために動き始めたのである。
その結果、イライア・バーバンク・スタジオ本社の会議室にはイライアやロナの他、アニメーターや作曲家に脚本家達も集まる形で今まさに長編アニメーション映画に関する会議が始まろうとしていた。
「みんな、今日は私の夢のために集まってくれて感謝する」
そんな前置きとも取れる言葉を発した後、その言葉を皮切りに会議を始めるイライア。
その言葉を隣で聞いたロナは、これからイライアが語るであろう夢という名の長編アニメーションについての内容に注視していた。
それは彼女の部下である作曲家や脚本家と同じだったようで、彼女と同じようにイライアの言葉に注目していた。
イライアはイライアで、姉であるロナや部下達のその様子に気がついては居なかったものの、その場を包み込んでいた静寂の時間を変えるようにこう言った。
「知っての通り、私はこれから長編アニメーション映画を作りたいと思っている。もちろん、これが無謀な挑戦であることも分かった上でだ」
そう語る彼女の目は真剣そのものであったため、その様子を感じ取ったロナはイライアが本気であることを理解したのか、妹の挑戦に対する心配をそっちのけで部下達と共に話を聞いていた。
部下達もまた、イライアの言う無謀な挑戦の内容に耳を傾けており──中にはメモを取ろうとする者も居た。
彼ら彼女らはイライアの挑戦が現実と実るように常日頃から奮闘しているからか、多少なりの無謀な挑戦や無茶振りに慣れているようで、その顔には長編アニメーション映画について注目するような表情が浮かんでいた。
それはまるで、彼女がこれから巻き起こすであろう夢の物語とばかりに。
イライアはそんなロナと部下達の期待に応えるかのように、ニヤッと笑った後──今後の計画について語り始めた。
「そのためには、映画の題材となる物語が必要だ」
「なるほど──だからこそ、この会議を開いたというわけね」
ロナがそう言ったところ、その言葉に対してコクリと頷くイライア。
と言うのも、彼女が今の今まで制作したアニメ映画には基となった物語があり、その大半は星欧大陸の童話や童歌であった。
ただし、イライア・バーバンク・スタジオで制作された童話・童歌をベースにした短編アニメ映画のほとんどは、原作に忠実と言うわけではなく──彼女なりの改変が加えられたことにより、老若男女に愛される作品となっているである。
そのためか、後世では彼女の生み出したアニメ映画の世界観は魔法として例えられるようになっており、それが後々イライア・バーバンク・スタジオの代名詞となるのだが、それはまだ先の話なのは言うまでもないことであった。
「社長、題材と言っても具体的には何を基にするつもりですか?」
コッカー・スパニエル種のコボルトで、スタジオ内では脚本家として務めているテオドア・シアーがそう言ったところ、イライアは分かりやすく腕を組んだかとも思えば、テオドアの方を向きながらこう言った。
「そうだな──長編アニメーションに挑戦するのなら、出来ればみんなが知る物語の方が良いのかもしれない。だが」
「そうなると、権利問題や技術的なことが大きな問題になりそうですね──」
イライアがそう言った瞬間、彼女の言葉に対して納得した顔になるテオドア。
それはロナを含めた会議室に居たメンバーも同じだったようで、そっちの問題があったかとばかりの顔になっていた。
今までイライアが作ってきた作品は、童話や童歌であるがために権利等の問題は発生しなかった。
そもそもの話、童話や童歌は原作者ある人物が死去しているか、あるいはその生み出した張本人が分かっていない場合もあるため、そういった点では題材として扱いやすいものであった。
だがしかし──長編アニメーションを制作するとなると、どうしても知名度や認知度が高い作品を題材にする方が定石であるのと同時に、有名な作品であればある程に権利問題という高い壁が聳えているのに加え、その作品を愛するファンという避けられないもう一つの問題もあるためか、彼女はそのことを懸念していたのである。
更に言えば、この時点でのオルクセンでは小説などの作品に纏わる法律も出来ていたからか、権利問題で苦くも痛い経験を味わったイライアにとっては、そのことが最初の懸念事項だったのである。
更に言えば、仮に題材という難問を突破したとしても──現段階での技術力での表現には限界があるという問題も浮上しており、テオドアの話を聞いたアニメーター達もまた納得したような表情になっていた。
だからこそ、イライアはそのことを仲間達に共有した上で意見を聞きたいと思っていたからこそ、そのような話を伝えたのだと理解したロナは、確かになと思うのと同時にその懸念点をどうにかしなければなと思っていたのだった。
「私としては、【アリシアの不思議な冒険】や【小鹿物語】を題材にしたいのだが──権利等の問題で断念した場合を考えると、念のためにもう一つ案を考えたいところだ」
「なるほど、つまりは予備の案ってことね」
ロナがそう言った瞬間、正解だとばかりにニヤッと笑うイライア。
彼女が今のところの案として提案した題材、【アリシアの不思議な冒険】や【小鹿物語】はその当時の名作として数えられている小説であった。
だが、名作というだけあって厳しい権利問題やまだアニメ映画が一般的ではなかったという背景もあったため、今のところは映像化できれば運が良い方なラインナップとしてイライアは認識していたのだ。
それらの問題でイライア達が頭を悩ませていた時──徐ろに手を挙げたのは、オルクセン連邦ではまだ珍しい人間の移住者の一人で、今現在はイライア・バーバンク・スタジオの脚本家である人物こと、ピエール・アルブルであった。
「そ、それだったら、一つだけ良い案を知っているのですが──」
「──ほぅ?」
ピエールの発言に対し、分かりやすく興味を示すイライア。
そんなイライアを見たピエールは、社長が興味を示したとあって逆に緊張し始めていたものの、こうなったらどうでも良いやとばかりに覚悟を決めた後、彼女に向けてその案について説明する準備に入っていた。
「──具体的には、その案と言うのは一体どんな物語だ?」
「ぐ、グロワールに古くから伝わる物語で、故郷では知らない人は居ない物語でした!!」
イライアの言葉に対し、ピエールは緊張した面持ちで彼女や仲間達に向けてそう言った後──その覚悟を顔に映し出すと、会議室に居る彼ら彼女らに対して視線を向けていた。
それを見たイライアは良い顔だなと思いつつ、彼に対してこう尋ねた。
「──その物語の名は?」
「【林檎姫】、林檎のように真っ赤な髪を持つ姫君と七人のドワーフの騎士の物語です」
テオドア・シアー
イライアのスタジオにて、脚本家として働くコッカー・スパニエル種の雄コボルト。
主に短編アニメ映画シリーズを中心に脚本を描いており、イライア・バーバンク・スタジオには例の事件に後に入社した模様。
会社内では、ベテランの部類に入る方の脚本家とのこと。
ピエール・アルブル
イライアのスタジオにて、脚本家として働き始めてまだ一年の人間。
テオドア程ではないものの、短編アニメシリーズの脚本を担当している。
幼い頃はグロワール帝国に暮らしていたものの、アニメ関係の仕事をするためにわざわざオルクセン連邦にやって来たとか。