どうも、常夏鳳梨です。
最近、暑すぎて干物になりそうですよね。
というわけで、今回は長編アニメーション映画の題材に纏わる話です。
ちなみに──少しだけXの方でボヤきましたが、史実での長編アニメーション映画の候補に『不思議の国のアリス』、それから『バンビ』などが上がっていたものの、権利問題などで頓挫してしまったとか。
【林檎姫】と呼ばれる物語は、かつては帝国として知られていたグロワール共和国にて古くから伝わる童話であった。
ピエール曰く、グロワールの地においては老若男女に愛され語り継がれている物語として知られていた。
諸説あるものの、とある貴族が自身の娘に対して語り聞かせた物語が基になっているとされているが、研究が進んでいる今もなおその謎は明かされていないとのこと。
その物語のあらすじとしては、林檎のように真っ赤な髪を持つお姫様が自らの継母に命を狙われ、七人のドワーフの騎士達と共に逃亡生活を送り──やがて、継母の操る魔法によって深い眠りの呪いに陥ったお姫様は、王子様と七人のドワーフの活躍によって目を覚ました後、王子様と結ばれる。
それが【林檎姫】の物語らしく、彼からそのあらすじを聞いたイライアは分かりやすく興味を示していた。
第一次星欧戦争という戦いが終わり、人間・魔種族関係なく平和を享受する時代となってもなお、お姫様と王子様が結ばれるという物語は人々に愛されていた。
それは人ならざる者である魔種族も同様であり、その人気は根強いものであることをイライアは理解していたからこそ、ピエールの話に興味を持ったのである。
「なるほど、林檎のように真っ赤な髪を持つ姫君の話か──中々面白そうじゃないか!!」
元々、大人になったとしても子供心を忘れていないタイプの白エルフであるイライアは、その性分故に分かりやすくその話に食い付いており、妹のその姿を見たロナは彼女らしいなと思いつつ、一先ずはピエールからの提案を一つの案として受け止めていた。
一方、そのピエール自身は自分の提案をイライアが真摯に聞いてくれるに対し、当たり前だが嬉しく思ったようで──緊張した面持ちではあるものの、社長である彼女が興味を示したことに対し、とても嬉しそうにしていた。
「にしても、そんな話がグロワールにあったなんて──」
「まぁ、元々この物語はグロワール以外ではあまり馴染みがない部類の話でして」
ピエールが補足するようにそう説明したところ、納得したような顔になるテオドア。
その言葉を聞いたロナがだからか馴染みが無かったのか──とばかりの顔を尻目に、イライアはますます【林檎姫】という題材に興味を示していた。
と言うのも──子供心を忘れない性分なだけに、人々に夢と希望を与えることをやりがいにしているイライアにとって、【林檎姫】はロマンスやヘビーな展開が所々に差し込まれている完璧な物語であり、誰しもが受け入れやすい物語であると感じていた。
それを見たロナは妹が【林檎姫】を一つの案として考えているのだと理解したのか、だろうなという顔になっていたとか。
脚本家の一人であるテオドアはテオドアで、これもまた立派な一つの案になりそうだなと思ったのか、しばらく考え込むような表情になっていた。
「もちろん、現段階では【アリシアの不思議な冒険】や【小鹿物語】が長編アニメーション映画の最有力候補なのは理解しています。理解しているからこそ、今後の映画のネタの候補になれば良いかなって思ってまして──」
魔種族だらけのアウェーな空間にて、唯一の人間だからか緊張した面持ちでそう言うピエール。
けれども、その顔には脚本家として自分なりの意見を言うぞ!!とばかりの顔が写っていたためか、その勇気と覚悟をイライラはしっかりと受け止めていた。
彼の言う通り、この時点では【林檎姫】はあくまで長編アニメーション映画の題材の候補の一つであった。
だからこそ、その映画の題材として【林檎姫】が承認される可能性が極めて低いのもピエールは分かった上で、今後の作るであろう映画の題材になれば良いなと思ったのか、そんな言葉を言っていたのである。
更に、いくら御伽話と言えども【林檎姫】はグロワール限定で親しまれていた物語であることも考えたのか、あくまで題材の一つでヒットするかどうかは分からないとばかりにそう言っていた。
ちなみにこれは余談ではあるが──それを聞いたイライラからはよく考えた上で発言しているなと受け止められたのか、彼が後々イライア・バーバンク・スタジオの映画制作の中枢を担うようになったのも、これが要因の一つではないか?と考えられている。
「確かに──ピエールの提案した【林檎姫】は、【アリシアの不思議な冒険】や【小鹿物語】のように万人受けする内容です。もし仮に【アリシアの不思議な冒険】、もしくは【小鹿物語】が難しくなったとしても、題材として十分に良い作品かもしれません」
「えぇ、それは私も思ったわ」
テオドアとロナがそう言葉を発したところ、その言葉を真剣に聞くイライア。
その様子を見たピエールは、自身の提案が一先ずは案として纏まりかけていることに対し、ビックリしているかのような顔になっていたものの、それを見たテオドアからはよく頑張ったなとばかりに肩を叩いたため、彼はこの出来事が現実なのだと理解したようで、思わずガッチガチになっていたのだった。
「ウォルフ、君としては今回の長編アニメーション映画についてはどう思う?」
そんな会話の中──イライアが唐突に声を掛けたのは、スタジオ内で働くオークのアニメーターこと、ウォルフ・キーンウッドであった。
彼はイライラ・バーバンク・スタジオにて、いくつかの短編映画の制作に関わってきたアニメーターであり、後に伝説的なアニメーター集団こと【バーバンク・オールドメン】の一人として数えられており、それはまた別の話である。
彼女から声を掛けられたウォルフは、何かを考え込むような顔になった後──イライアに対してその言葉の返答をするかのようにこう言った。
「どうもこうも──そもそも長編アニメーション映画という概念の前提が無い以上、作るのは容易なことではないと思うぞ」
そう言った後、ウォルフはテーブルに置かれていたミルクセーキをガブガブと飲んだものの、それはあくまで前置きだとばかりの様子になった後、社長であるイライラに向けてこう言った。
「それに短時間で笑わせられる短編アニメーションはともかく、長編アニメーションとなると──今までの明るい色味だと目を痛める観客が出てきてもおかしくはないはずだ」
ウォルフの口から出たアニメーターとしての厳しい意見に対し、それを聞いたイライラはその意見もまた貴重な意見だと思ったようで、彼の意見もまた真摯に受け止めていた。
それは、イライアやウォルフがアニメという魔法の世界を生み出す魔法使いとして、長編アニメーション映画について真摯に考えていたからである。
そして、イライアはウォルフの意見を社長として受け止めた上で、それでもなお長編アニメーション映画への意欲を見せていたのか、彼に対してこう言った。
「だが、それはしっかりとしたストーリーという名の骨組みがあれば何とかなる──だろう?」
「なるほど、喜劇的な要素だけではなく悲劇的な要素も加えることで観客達を飽きさせない展開にする──か」
イライアの言葉に対し、その意図を察したのかそう呟くウォルフ。
その様子を見たロナ達は、その場に漂っていた不穏な空気が収まったことに対し、分かりやすくホッと一安心していた。
テオドアやピエールを含めた脚本家チームに至っては、これなら忙しくなるぞとばかりの反応になっており、長編アニメーション映画の制作という大きな壁をどう対処するかなを考えていた。
そんなわけで、初期の段階での会議が終わった後──イライアは長編アニメーション映画を実現させるために動き始めたのだが、当初彼ら彼女らが懸念していた通り、【アリシアの不思議な冒険】や【小鹿物語】は権利問題はもちろんのこと、アニメ制作等の技術的な問題などもあってか、結局この二つの案は頓挫することになった。
その結果、ピエールの提案した【林檎姫】が長編アニメーション映画の題材として採用されることとなり、少しずつではあるが長編アニメーション映画制作が進んで行ったのだった。
ウォルフ・キーンウッド
イライアのスタジオにて、アニメーターとして働いているオーク。
いくつかの短編映画の制作に関わっており、今回はその縁で長編アニメーション映画の製作に関わることになったとか。
後に、イライラ・バーバンク・スタジオの伝説的なアニメーターとしてその名を残すこととなる。