オルクセン漫画映画史   作:常夏鳳梨

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副題:例え、道楽と嘲笑されようとも

どうも、常夏鳳梨です。
GW、突入しましたね。
という前置きは置いておくとして──実のところ、世界で初めての長編アニメーション映画は前代未聞な挑戦だったがために、最初は身内にまで反対されていたそうな。
今でこそ超名作映画として知られているけども、そのぐらい前例の無い挑戦だったのかと思った今日この頃。


夢は大きく、そしてひそかに

短編アニメ映画でその地位を築きつつあった白エルフこと、イライア・バーバンクが世界で初めて長編アニメーション映画の制作に挑もうとしている。

この情報は瞬く間に業界内に広まり、そして人々を驚かせた。

 

それもそのはずで、何しろこの時代でのアニメは短編映画が主流であったため、彼女の挑戦のことを誰もが無謀な挑戦だと口々に言っていた。

そのためか、イライア達は業界の関係者から『バーバンクの愚行』、あるいは『バーバンクの道楽』と嘲笑した。

イライアの挑戦は、それぐらい前代未満な挑戦であったのである。

 

それらの言葉を耳にしたロナは、当然ながら妹であるイライアのことを心配したのか──彼女の自宅を訪ねていた。

ロナ自身は姉としてイライアの挑戦を応援してはいたものの、スタジオの代表として例の嘲笑が耳に届いているのではないか?と思ったようで、その顔には心配と不安が混じった表情が映っていた。

 

ただ、そんな彼女の心配とは裏腹に──当のイライアはそんなことを気にしている様子を見せることはなかった。

それどころか、自宅に設置してあるミニチュアの蒸気機関車を整備していたためか、それをみたロナはある意味で妹らしいなと思ったとか。

 

そして、彼女自身もロナが自宅に来た理由を何となく察していたのか

 

「ロナ、もしも記者達がやって来たらこう言ってくれ。私はどんなことを言われようとも──長編アニメーション映画を作るつもりだと」

 

ミニチュアの蒸気機関車の整備をしながらイライアがそう言った瞬間、ロナは彼女がもう既に覚悟を決めていることを理解したのと同時に、業界人からの嘲笑のことも知っている上でそう言ったのだと思ったようで、イライアの長編アニメーション映画に対する情熱と決意を感じ取っていた。

そして、それを妹の言葉越しに感じたロナは改めてイライアのアニメ映画に対する想いを感じ取ったのか、そのままやれやれという顔になっていた。

 

そして、ロナはそのまま彼女の作業スペース内にある椅子に座ると、ミニチュア蒸気機関車への作業がひと段落した様子のイライアに対し、お疲れ様とばかりにキンキンに冷えたコーラを手渡すロナ。

ロナからそれを受け取ったイライアは、そのコーラが入っている瓶の蓋を栓抜きを使って開けると、そのまま一気飲みしていたのだが──そのコーラが変なところに入ってしまったのか、急にむせるかのような様子を見せたため、ロナはそりゃそうなるとばかりの顔になっていた。

 

イライアはロナから貰ったコーラをある程度飲んだ後、彼女の隣に座ると──声を漏らすかのようにこう言った。

 

「──ロナ、初めて映画を観た時のことを覚えているか?」

 

イライアがそう言うと、その言葉に対して記憶を掘り起こすかのような顔になるロナ。

そして、映画に纏わるとある記憶を思い出したのか──懐かしいなとばかりの顔になった後、イライアの方を向きながらこう言った。

 

「それってもしかて──九一六年に観た長編映画のこと?」

 

ロナがそう言ったところ、正解だとばかりにニコッと笑うイライア。

その顔には、子供の時と同じような無邪気な表情が映し出されており、そんな妹の顔を見たロナは良い意味で相変わらずだなと思っていた。

 

そして、ロナの言葉を聞いたイライアは昔を思い起こすかのようにこう言葉を語り始めた。

 

「あぁ、まだ私達がアニメを作り始める前──新聞配達で生計を立てていた頃、なけなしの金を握って観に行ったあの映画のことは今でも覚えているし、今でも忘れられない」

 

そう語るイライアの瞳には、自身の原点の一つを語るかのような想いが映し出されていて、それを見たロナは妹である彼女の話を静かに聞いていて、まるで思い出に浸るかのように面持ちになっていた。

それはイライアも同じだったようで、かつての記憶を振り返るかのようにこう言葉を続けた。

 

「あの時の映画は──囚われのお姫様を王子様が助けに行くという物語だったが、共感できるキャラクターに心ときめくロマンスの他に、物語を彩るほんの僅かなヘビーな展開もあって、あの映画はまさに完璧な映画だった」

「えぇ、確かにあの映画は私達が観て来た映画の中では面白い映画だったわね」

 

星歴九一六年にて、まだアニメのことなど知らなかった頃に新聞配達などで稼いだお金を片手に観に行った映画のことを懐かしみつつ、昔の思い出に浸るかのようにそう言葉を交わす二人。

懐かしいなとばかりの様子になっているロナを尻目に、イライアはもう一口とばかりにコーラを飲むと、あの日の光景を思い起こすかのような表情になっていた。

 

それから数秒後、イライアは手に持っていたコーラを飲み干すと──姉であるロナの方を向いたかと思えば、自身の想いを吐き出すようにこう言った。

 

「ロナ、私は何を言われようとも──あの時、私達が感じたような体験をこの世界の人々に伝えたい。だからこそ、私は長編アニメーション映画を作るつもりだ」

 

イライアがそう言った瞬間、ロナは彼女が業界関係者から嘲笑されるのは覚悟の上で映画を作るのだと察したようで、さっきまで抱いていた不安な気持ちはどこはやら、今の彼女の胸には妹ならきっとやり切れるという思いを抱きつつあった。

そんな彼女を知ってか知らずか、イライアは空になったコーラ瓶をその場にあったテーブルに置くと、作業の疲れを取るかのように背伸びしていたため、ロナはそんな妹に向けてこう言った。

 

「──それなら、私もそれなりに手伝わないとね」

「あぁ、そうしてくれると助かる」

 

姉妹として長い付き合いをしているからこそ、そんな感じで言葉を交わした後、お互いにニパッとした笑顔を浮かべるイライアとロナ。

その顔には、今後映画制作をする際に出てくるであろう様々な壁に対し、出来る限り対処すると言わんばかりの表情が映し出されていたため、イライアは心強いなと思ったとか。

 

こうして、業界関係者から色々言われつつもイライア主導の下で長編アニメーション制作が進んでいき──テオドアやピエールの所属する脚本家チームの奮闘により、何とか【林檎姫】の脚本は完成した。

 

しかし、当時のイライア・バーバンク・スタジオのアニメーターの大半は新聞に掲載する漫画を描いていた者が多かったため、キャラクターの造形をどうするかという問題が発生。

そのアニメーター達は絵の技術力はあったとは言え、芸術的な技術力を持っていない者がほとんどだったためか、イライアはスタジオ内で唯一の女性の体への理解を示していたアニメーターに対し、彼に対して女性キャラクターのデザインを一任することでその問題は解決した。

ちなみに、そのアニメーターは他のアニメスタジオでとある女性キャラクターの生みの親として知られているが、それはまた別の話である。

 

そして、アニメーション制作が脚本から作画の段階に入っていく際──イライアは他のアニメスタジオで導入されたとある手法を導入し、写実的でありながらもアニメ特有の動きを取り入れようとした。

 

長編アニメーション映画制作にて、導入されたその手法の名はロトスコープ。

後に、イライア・バーバンク・スタジオの制作するアニメ映画が世界的に愛される要因の一つであり、【林檎姫】を名作映画へと押し上げるきっかけとなるのだが──それはまた別の話、というよりかはまだ先の未来の話である。




【次回予告】
イライア、ロトスコープを用いてキャラデザに動きを与えるってよ

ちなみに、ロトスコープという技法は【ポパイ】や【ベティ・ブープ】を生み出した映画会社が最初に取り入れたのだとか。
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