オルクセン漫画映画史   作:常夏鳳梨

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副題:イザベラ・ファーレンスin試写会

はい、どうも常夏鳳梨です。
今回は資金難からの融資を承認を貰うための試写会の話です。
ちなみに、史実でも資金繰りに苦戦したD氏は金融業側の人間に試写会を行った結果、無事に融資を承認してもらったそうな。


運命の試写会

イザベラ・ファーレンスはオルクセン連邦──並びに星欧大陸に多大たる影響を与えている実業家のコボルトである。

彼女は諸事情の末にファーレンス商会を一大商会へと押し上げた後、世間が不景気と呼ばれる時代に突入してもなおその影響力を誇っており、星洋の経済界においては知らぬ者は居なかった。

 

だからこそ、ロナは彼女ならば資金難とも言える状況を何とか出来ると思ったのだが──それと同時に彼女は様々な懸念を抱いていた。

まず、イザベラというコボルトが過去の出来事によって白エルフに嫌悪感があること。

いくら短編アニメ映画が人気とは言え、この時代ではまだまだアニメの可能性を信じていない存在が多いこと。

そして──イザベラが上記の通り、アニメのことになると融資を断るかもしれないということ。

 

それらの懸念点があったからか、ロナはこの無謀にも程がある一手を打つかどうかで迷っていた。

──少なくとも、長編アニメーション製作に真摯に向き合う自身の妹こと、イライアの姿を見るまでは。

 

その結果、ロナはイライアと共にこの一か八かの賭けに乗ることにしたのか、今現在の彼女達はイライア・バーバンク・スタジオにイザベラを招待し、試写会を行おうとしていたのである。

 

当のイザベラ自身は面白いことをやっているとは思いつつも、どうしても過去が過去なだけに白エルフへの忌避感を抱いていたようで、その顔に笑顔を貼り付けていたのは言うまでもない。

なお、そのことを知らないイライアとロナがガッチガチに緊張していたとか。

 

「ようこそ、夢と希望の生まれる場所──イライア・バーバンク・スタジオへ。私は当スタジオの代表を務めているイライア・バーバンクです。そして」

「姉のロナ・バーバンクです。よろしくお願いします」

 

大御所で今後の映画制作の鍵を握るイザベラに対し、緊張しながらも平然を装いつつ、そう自己紹介をするイライアとロナ。

ただし、その胸の内では心臓バクバクだったとか。

 

その二人を見たイザベラは、彼女たちに対してニコッとした笑みを顔に貼り付けたまま、イライア達に向けてこう言った。

 

「初めまして、イザベラ・ファーレンスです。今日はどんな魔法を見せてくれるのかしら?」

「それは──これからのお楽しみですよ」

 

自分達のやっていることはお見通しだとばかりにそう言うイザベラに対し、ゾクっと背筋に冷たい風が走るかのような感覚になりつつも、微笑みながらそう対応するイライア。

イライアはこの状況をユーモアを交えつつ冷静に対応していたため、社員達は流石だなと思っていたが──当の本人はそれどこではないことをロナは見抜いており、このユーモアがどこまで通じるのだろうか?と案じていた。

 

そして、ロナ自身のその考えは当たっていたようで──イライアからの対応を受けたイザベラは、その手には乗らないとばかりの心情になっていたのだった。

 

「ここは──?」

「我がスタジオにて制作したアニメを上映する試写室──と言えば分かりますか?」

 

イライアがそう言った瞬間、イザベラは彼女の言い放った言葉に込められた意味を理解したのか、すぐさま彼女達が自身に融資に頼みたいのだと察したようで、その言葉に対してピクッと反応していた。

けれども、商人としてイライア・バーバンクの真意と本性を暴こうと思ったのか、なおも笑顔を顔に貼り付けつつこう言った。

 

「と言うことは──貴方が最近力を入れているという、噂の道楽を上映するということ?」

「──まぁ、言ってみればそんなところですね」

 

イザベラの反応を見て、そこまで見抜いていたのかとイライアは動揺しつつも、こうなったら一か八かでやるしかないと思ったようで、その顔にユーモア溢れる白エルフとしての表情を浮かべつつ、【林檎姫】の上映の指示を行っていた。

ロナはロナで、この上映が【林檎姫】という映画の運命を左右するからか、その胸の中で藁にもすがるような雰囲気になっていた。

 

そんな二人を尻目に、イザベラはとりあえずはその道楽に付き合ってやろうと思ったようで、もうすぐ始まるであろう【林檎姫】の上映を静かに待っていた。

それから数分後──上映の準備が出来たことに対し、イライアは一先ずは安心したものの、まだ融資の承認が下りるまでは本格的に安心は出来ないなと思いつつ、イザベラに向けてこう言った。

 

「今回、この場で上映させてするのは──グロワールに伝わる御伽噺を基にした物語、【林檎姫】になります」

 

イライアがそう言うのと同時に、試写室のスクリーンに映し出されたのは──完成の一歩・二歩手前の長編アニメーション、もとい【林檎姫】の映像であった。

ただし、まだ本格的に完成しているとは言えない代物なため、果たしてこれが芸術面においては目が肥えているイザベラに対し、融資の承認を勝ち取るようなものなのかどうかが分からなかったのか、イライアのその顔には少しだけ不安な表情が浮かんできた。

その様子の妹に対し、ロナは大丈夫だとばかりの顔になったかと思えば、そのまま彼女の手を握っていた。

 

一方、その映像を見たイザベラはと言うと

 

「っ──!?」

 

イライア主導の下で制作された長編アニメーションである【林檎姫】に対し、稲妻を撃たれたかのように衝撃を受けたようで、その目を大きく目を見開いていた。

それもそのはずで──何しろ、イザベラが今まで観てきた短編アニメと違い、【林檎姫】のクオリティとそのレベルが桁違いの作品だったからである。

 

何故、そうなったかと言うと──イライアと脚本家チームによる綿密なストーリー構成やキャラクター設定、ロトスコープを用いた写実的とも言えるキャラクターの動き。

更に言えば、マルチブレーンカメラに使用したことによる立体感と奥行きのある背景のこともあってか、それらが緻密に一つの作品として構成されており、結果として芸術作品にまで昇華されていたため、それを自らの目で観たイザベラは自らの認識を改めざるを得なかった。

 

この【林檎姫】という作品には──融資を承認する以上の価値がある上に、歴史的にも残るであろう作品になるのだと。

 

それに伴い、【林檎姫】というアニメーションを通してイライア・バーバンクの天才っぷりを感じたイザベラは、彼女の方を向きながらこう言った。

 

「バーバンクさん──貴方は、この作品で何を伝えるつもりなのかしら?」

 

イザベラからの核心に迫る質問に対し、イライアはそう来たかと思いながらも真摯に応えようと思ったのか、彼女からの質問に答えるかのように笑顔を浮かべると、その質問に対してこう返答した。

 

「夢と希望──それから、どんな状況でも夢見ることへの意義、ですかね?」

 

イライアが堂々とした様子でそう言った瞬間、イザベラはその目を大きく見開いていた。

その目には、今は亡き愛する夫への思い出が──夢と希望を抱き、妻である自分と共に小さいながらも商店を切り盛りしていたあの頃のことを、今は懐かしくも愛おしい記憶を思い出したのか、その目には涙を浮かべていた。

 

あぁ、そうか。

例え、白エルフだとしても──この気持ちを共有できる存在が居るのか。

そう思ったイザベラは、その涙に対して困惑している様子のイライアとロアに対し、本来の優しい笑顔を浮かべると一言

 

「この映画は──必ず売れるわ」

「「──え?」」

「言ったでしょう?この映画は必ず売れる。その意味は──分かるわよね?」

 

イザベラはそう言うと、続けて素敵なモノを見せてくれてありがとうと声を漏らすかのようにそう言ったため、イライアとロナは一瞬ポカーンとした後、やがてその言葉の意味を理解したのか──分かりやすく驚いていた。

それを見たイザベラはクスッと笑った後、未だに信じられないとばかりの顔になっている彼女達に対し、こう言った。

 

「あ、そうそう。もし、映画が公開されたら──その時はお願いね」

 

こうして、大商人であるイザベラからの融資の承認が降りたことにより、映画制作の資金難問題は無事に解決。

その結果、当初は頓挫すると思われていた長編アニメーション制作は順調に進んでいき、無事に完成するに至ったのである。

 

なお、この出来事がきっかけでイライアとロナはイザベラ・ファーレンスと接した数少ない白エルフとして知られているようになったのは、また別の話である。




イライア&ロナ、最大の難関を突破するの巻。

今回の話に登場したイザベラさんは、時代的にはベレリアンド戦争の後なので白エルフに対する複雑な感情を持っています。
ただし、今回のように真摯に対応できる白エルフがいれば交流をするかもしれないなぁと思いつつ、カキカキしました。
どうぞお手柔らかにお願いします!!(切実)
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