どうも、毎度お馴染み常夏鳳梨です。
今回はいよいよ完成したアニメこと、【林檎姫】の上映回です。
果たして、【林檎姫】を観た観客達の反応は如何に!?
なお、日本での公開は第二次世界大戦後の1950年だったそうな。
星歴九三七年十二月二十一日。
冬の寒さが一段と強くなりつつあった頃、とある映画がオルクセン連邦内の映画館で公開された。
公開されたと言っても、その映画は長編アニメーション映画という当時としては前代未聞な映画だった為、制作が始まった当時は『イライア・バーバンクの道楽』と嘲笑されていたが、当のイライア・バーバンクはそんな意見を気にすることなく、映画の制作を着々と進めていった。
時には様々な問題にぶつかり、時には制作費を確保するためにイザベラ・ファーレンスと接触することはあったものの、それでも何とか映画を完成したことにより、今日に至るのである。
そして、先行上映という形でその映画は、長編アニメーション映画【林檎姫】は公開された。
【林檎姫】という映画は、まず実写パートから──宝石で装飾された本が開くシーンから始まった。
そして、そのシーンと共にナレーションが入りつつも映画の幕が上がったのだが、観客達はスクリーンに映し出された【林檎姫】という物語に夢中になっていたのか、その顔にはワクワクとした表情が浮かんでいた。
そして、物語の主役である林檎姫に主人公の命を狙う女王、彼女を守る七人のドワーフの騎士達や運命の王子様などの魅力的で生き生きとしたキャラクター達や、ロマンスやコメディの他にシリアスな場面もあるストーリーに対し、最初は物珍しさでやって来た観客達もいつしかどっぷりとハマっていたようで、いつの間にやら【林檎姫】の世界観に浸っていた。
女王に命を狙われた末に七人のドワーフ達と旅をしていた林檎姫は、老婆に化けた女王によって死よりも深い眠りに陥る形で息絶えており、それを見たドワーフ達は敵討ちとばかりに竜に変身した女王と戦い、そして討ち取ることに成功。
その後、林檎姫は王子様のキスによって目覚め、物語は大円団を迎える形で幕を閉じるのだが──【林檎姫】という映画が終わった瞬間、そのまま観客達は立ち上がったかと思えば、溢れんばかりのスタンディングオベーションを送っていた。
それをスタッフ経由で知ったイライアはアニメの可能性を改めて実感したようで、改めてこれからは長編アニメーションの時代だと思ったとか。
ロナはロナでこれは良い封切りだと思ったようで、何だかんだありつつもここまで頑張って良かったなと思っていた。
そして、【林檎姫】の制作に関わっていたスタッフ達もまたそのことに対して大喜びしたようで、死ぬ気で頑張って良かったなと思った模様。
そういうわけで、スタンディングオベーションで溢れかえった先行上映を皮切りに、オルクセン連邦内で上映が始まった【林檎姫】は瞬く間に評判を呼び、それに伴って観客達は日に日に増えていき──やがて、【林檎姫】は大ヒット作として人気を博すようになっていた。
それに加え、映画評論家が"子供や大人でも観れるお勧めの映画"だと評価したことにより、更に観客達が増えていったのだった。
その観客達の中には、試写会という形で【林檎姫】を観たイザベラの姿もあり、それを聞いた人々はあの白エルフ嫌いで有名な彼女が!?とばかりに驚いていたが、その際にイライアがイザベラをエスコートとしたというエピソードもあってか、人々は更に驚いていたとか。
なお、そのイザベラは完成した【林檎姫】を心の底から楽しんで観ていたようで、イライアに対して"素晴らしい作品ね"と評価していた。
やがて、【林檎姫】の評判は国を越える形で様々な国へと伝わり──キャメロットやグロワールでも上映された結果、オルクセン連邦と同じようなムーブメントが起きたようで、【林檎姫】は名実ともに名作映画の仲間入りをしたのだった。
ちなみに、秋津洲で【林檎姫】が上映されたのは第二次星欧大戦後──星歴九五〇年だった模様。
そういうわけで、イライア達が制作した【林檎姫】が世間を席巻していたのだが──今現在のとある映画館では、一人の闇エルフが【林檎姫】を鑑賞していた。
【林檎姫】を鑑賞していたその人物の名は、ディネルース・アンダリエル。
かつては王妃であったものの、今現在はオルクセン連邦の象徴たる女王として君臨している存在であった。
彼女自身は、アニメというモノは巷の噂で聞いていた。
けれども、女王という立場上の関係でそういった類いのモノは観ていなかったのだが──ひょんなことから巷で流行りのアニメ映画である【林檎姫】の評判を聞いたことにより、彼女は興味を示した末にその映画を観ることにしたのである。
そして、その映画を観た彼女は近くに居たイライアに向けてひと言
「これは──素晴らしい映画だな」
少しだけ微笑みながらそう言った。
ディネルースのその言葉を聞いたイライア、そして姉であるロナは目を大きく見開いたかと思えば、その顔にこれでもかと喜びかのような表情を浮かべていた。
それはまるで、今にも飛び跳ねてしまってもおかしくはないとばかりに。
そして、彼女のその言葉は白エルフと闇エルフの間にあった隔たりを少しだけ溶かしたようで、その場に穏やかな空気が流れたのは言うまでもない。
「この映画は今まで観てきた映画の中でも、とても素晴らしいモノだった。ただ、こんなにも素晴らしい作品を作り上げるとなると──それ相当の苦労があったのではないか?」
ディネルースがそう言うと、イライアはその顔にフッと笑うかのような表情を浮かべると、【林檎姫】を完成させるまでの今までの道のりを思い出したようで、あの長くて短いような期間のことを脳裏に思い浮かべながら、女王であるディネルースに向けてこう言った。
「人々に夢と希望、それから感動を与えると言うことはそれなりに骨が折れることです。ですが──観客達の笑顔のためならば、そんなことは些細なことですからね」
胸を張った様子のイライアがそう言うと、ディネルースは一瞬だけポカーンとした方になったかと思えば、彼女は確かになとばかりの顔になった後、素晴らしい作品を作るのに種族も何も関係ないのだと理解したようで、その顔にはイライアが今後どんな作品を作るのかを楽しみだとばかりの表情に映し出されていた。
そのイライアの言葉の聞いたロナは、妹らしいなと思いながらも同じく堂々とした様子で胸を張っていて、それを見たディネルースは傲慢で差別的だった白エルフにも少しずつではあるが変化の時が訪れたと思ったのか、時代の流れというものを感じていた。
こうして、無事に公開された長編アニメーション映画【林檎姫】は制作時の嘲笑を跳ね除ける形でのヒットを飛ばし、その人気のあまりに度々再上映されては高い興行収入を記録し、この世界における伝説的な作品としてその名を残すこととなった。
それから数十年後の星歴九八七年になると、【林檎姫】という映画はその業界においては殿堂入りを果たしたが、後にバーバンク・プリンセスと呼ばれるキャラクターが登場する作品においては唯一の殿堂入りであった。
更に言えば、星歴九八九年にはその文化的・歴史的・芸術的に極めて高い価値を持つと判断されたことにより、【林檎姫】のフィルムはオルクセン国立フィルム登録簿に登録されたのだった。
「──イライア」
「ん?」
「あなたって本当に──色んな意味で子供心を忘れない性分よね」
そんなことが起こるとは思ってはいないロナは、女王であるディネルースへの【林檎姫】の上映会を終えた後、ホッと一安心しながら妹に向けてそう言ったところ、当のイライア自身は姉からのその言葉に対し、ニコッと笑うと──まるで悪戯っ子のような様子になると姉であるロナに向け、微笑みながらこう言った。
「今も昔も、そして今後も──私はそういう白エルフさ」
その言葉を聞いたロナは、そりゃそうだとばかりに納得した反応になった後、姉としてイライアらしい答えだなと感じたのか、クスッと笑うかのような表情になっていた。
その後──この映画を機に、イライア・バーバンク・スタジオは短編アニメーション映画の他、長編アニメーション映画にも着手し始めたことにより、アニメ業界における地位を不動のものとした。
それにより、この世界のアニメ業界に新たなる革新という名の風を巻き起こし、世界のイライア・バーバンク・スタジオとして名を馳せることになるのだが、それはまだほんの少し先の話である。
かくして、世界で初めてとなる長編アニメーション映画を成功させたイライア・バーバンクは、世界屈指のアニメスタジオの社長として有名となっていったのだが
「ロナ!!今度は大人も子供も楽しめる遊園地を作るぞ!!」
彼女の子ども心とイマジネーション力は会社が一大企業となっても潰えることはなく、最後まで光り輝いていたのだった。
というわけで、これにてオルクセン漫画映画史は一旦完結となります!!
ここまで読んでくださった皆さん!!ありがとうございます!!
個人的にオルクセン王国史の世界での映画はどんな感じなんだろうと思い始めた結果、書き始めたのがこの作品だったので完結できてとても嬉しいです!!
今後は番外編という形でまた新しい話を書くかもしれませんが、その時はまたよろしくお願いします!!