STARWARS クローン戦役 第422大隊 兄弟達 作:バケツ頭 小説もどき家
新兵達はガンシップの機内で心臓を高鳴らせていた。恐怖心からではない。訓練の成果を発揮できる機会に恵まれた喜びと興奮からだ。第422大隊。彼らは他の兄弟達と同様、初陣を迎えようとしていた。装甲越しに聞こえるエンジンの振動。機体が母艦から飛び立つと、わずかな揺れが全身に伝わる。
「コマンダー、着陸地点の再確認を」
「はい、将軍。我々の降下予定ポイントは──」
機内に少佐とジェダイの話し声が微かに響く。
信頼できる大隊長と、トワイレックの女性ジェダイ。CT-4332は二人の姿を見つめながら、ブリーフィングの内容を思い出していた。全体の作戦目標、地表データ、各チェックポイントの名称とその座標。彼は頭でそれらを復唱し、高まる気分を抑える。彼が気がついた時には、隊長が目の前に立っていた。
「4332、準備はできてるか?」
「は、はい、コマンダー」
「よし」
コマンダーは4332の肩を叩いた。彼が部下から信頼されているのは、クローン達がそうせよと教え込まれているからだけではない。日頃の訓練でリーダーシップを発揮し、部下達にその価値を示してきたからだ。
「急に分隊を任されて不安だろうが、訓練通りにやれば大丈夫だ。戦場に着いたら俺と中尉の指示に従え。そうすればうまくいく」
真新しい赤いペイントを施された傷一つないアーマー。これを着るはずだった兄弟は訓練での不慮の事故が原因で、配置転換になった。ほんの二週間前の話だ。
「いいな?」
「はい……!」
「頑張れよ、期待してるぞ」
コマンダーはもう一度4332の肩を叩き、その場を後にする。
「今でもわからん。どうしてアイツが分隊長なんだ?」
「さぁな。お前よりも成長ポットから出るのが早かったからじゃないか?」
「微々たる差だろうが……」
CT-5323は3511を睨みつけるように見た後、頼りない分隊長に視線を戻した。
「あんなやつの指揮で戦場に放り出されたら、俺達は死んじまうぜ」
「心配すんな。戦場に降りたら、俺達はひとまとめで動くんだ。コマンダーがしっかり指揮してくれるさ」
「だといいけどよ」
「俺は分隊長がどうこうよりも、お前がメディックだという事実のほうがおぞましいね。医療訓練は真面目に受けたんだろうな?」
「受けてない。だから精々撃たれないように頑張ってくれ」
「ハッ、これだもんな」
爆音が外から響き、機体が揺れ始めた。
敵の対空砲火だ。
「やられた!」
ガンシップのパイロットは右砲座の反応が消えた事を認識すると、兵員室に顔を向けた。
「現コースからの着陸地点侵入は不可! 迂回して接近します!」
パイロットの叫びと同時に、機体が大きく傾いた。
遠心力で体が引きずられる。
ジェダイもクローンも手すりを握る腕に力を入れる。
「ノヴァ3墜落する! 墜落する!」
「ノヴァ4エンジンに火災発生! 離脱許可を──ああ!!」
「まずい……!」
炎に包まれて墜落していく味方機。キャノピーを振動させる敵の対空砲火。パイロットは息を荒くし、操縦桿を握る。
赤い荒野から打ち上げられる対空砲火は激しく、迎撃機は高速で突っ込んでくる。
「無理だ」パイロットは判断した。「将軍、着陸地点の変更を。敵の対空砲火が激しく、このままでは降りられません」
「だめよ!」ジェダイは叫んだ。「このまま着陸して!」
「……イエッサー」パイロットは操縦桿を強く握る。「全機、コース変更! 高度を下げろ! 低空から侵入する!」
機体が急降下する。赤いランプが点灯し、ジェダイはライトセーバーを起動する。
「地上まで後少しよ! クローンの諸君! 戦う──」
ガコン!
おぞましい音がし、機体が激しく揺れる。青いライトセーバーは使用者の手から離れて宙を舞う。力なく倒れるジェダイ、彼女とクローン達はゴロンゴロンと揺らされ、激しく機体に打ち付けられる。
「墜落する! 墜落する!」
ドン! 激しい衝撃。
機内は揺さぶられ、そして静かになった。
「うぅ……」
うめき声をあげながらCT-4332は何とか起き上がった。
ハッチは開かれ、外からブラスターの銃声が聞こえてくる。
4332は朦朧とする意識の中、武器を手にして歩く。
倒れている者は八人、クローンとジェダイだ。死体の中には尊敬するコマンダーもいた。ジェダイは首がなく、コマンダーは腹から胸を裂かれていた。ライトセーバーが二人の命を奪ったのだろう。なんとも酷い悲劇だ。二人の指揮官はその能力を発揮する前に儚く散ってしまった。
機体から這い出る4332。
「おい、見ろよ」
5323に肩を叩かれ、3511はDC-15を撃つのを中断し、後ろを振り返る。
「なんだ?──」
3511は、ガンシップから這い出て立ち上がる4332を見ると、急いで彼のもとに駆け寄る。
「軍曹! 無事でしたか!」
「ああ……3511」
トルーパーの頭上に表示されたCT-3511という表記。ヘルメットのHUDは乱れてはいるものの壊れてはいないようだ。
「中隊の指揮は誰が引き継いでる?」
「私です。コマンダー達も戦死したので、仕方なく。ですが、あなたが復帰された今、部隊の指揮権はあなたのものです」
「……そうか。他の小隊は?」
「対空砲火が激しく彼らは近づけないようです。我々は敵地で孤立しました」と、3511。「ご覧ください。我々は墜落地点正面に防御線を展開中です」
3511は前方を指差した。その方向では生き残ったクローン達が岩場で遮蔽を取り、ジオノージアンと銃撃戦を繰り広げている。
「負傷は6名。残弾は残り僅か。なんとか持ちこたえてはいますが長くは持たないでしょう」
「医療品も残り少ないです」と、5323が言った。彼は3511の後ろから4332を見つめている。「あなたが使えば殆ど在庫切れです」
「俺はいい」4332は答えた。
「勇敢なことで」
3511の態度を咎めるように、彼を見る5323。「……これからどうします?」4332に顔を向ける。
「……分からない」
それが新任軍曹、暫定指揮官の率直な言葉だった。
◇
「ですが、味方が孤立しているんです!」
ブロンドの髪に青い瞳。若い女性ジェダイ──ケラン・ペラントは投影機に浮かび上がるホログラムに向けて声を荒げた。
「彼らを見殺しにはできません!」
「気持ちは分かる、ナイトよ。師も彼女の部隊の安否も分からず、さぞかし不安じゃろう……」
クローン・コマンダーと小さきジェダイのホログラム。マスターヨーダとのホログラム通信は電波干渉が酷く、ホログラムは左右に揺れたり、途切れたりしている。
「じゃが、お主を行かせるわけにはいかん。無謀な行動は死を招……それはお主の師マスター・ベミルも望んではいな……じゃ……──」
「マスター・ヨーダ?」
地上との通信が途切れ、ケランはクローンを見る。
「通信障害です。回線の逼迫が原因かと」
クローン──7223はナイトの目を見る。ヘルメットの下の素顔は失望と無力感で無表情だ。戦うために生まれてきたのに、アクラメーター級にカンヅメ、仲間の危機を助ける事もできない。何のために生まれてきたのかと彼は自問していた。
「再接続を試みますか?」
「……いえ」
ケランはしばらく沈黙した後、そう答えた。
「……武器を持って、7223」
ケランの青い瞳が7223を捉える。
「味方を救出しにいくわよ」
7223の琥珀色の瞳が大きくなる。そして彼は息を吐いた。
「サーイエッサ……!」