火遊びはよくない   作:竹藪焼けた

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こんな拗らせた人物達が出て来る作品でも、見てくれる人はいるんですね。
皆様の応援や評価、とても励みになっております。




六話

 

二人の少女達との歪な関係は、男の行動にひずみを齎す。

だが、それでも日常と時間は進んでいく。

 

脅迫されていようが、自分の人生の危機だろうが。

首が繋がっている限りは日常は続き、生きるためには働かねばならない。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

皐と一緒に眠ったあの日が終わり、二人はさっさと解散した。

 

皐にも翌日予定があったのが幸いだった。

もしも彼女に翌日予定が無ければ、間違いなく一日中拘束されていただろう。

それはどうにも耐えられそうにない。男は内心、ほっとしながら彼女を送り届けていた。

 

そうして、何とかやり過ごし。

一人で家に戻りながら、男は逡巡する。

 

…皐に家を知られるというあまりに手痛すぎる代価は支払ったが、それでも何とか乗り切った。

この調子で何とかこらえながら。

二人との縁に穏便に片を付け、あの素晴らしき自由を取り戻す方法を見つけ出そう。

 

出来ることなら、後腐れが無いように。

あの二人と誠実に向き合って、彼女達との関係に決着をつけれればいいのだが…。

 

あの子達と誠実に向き合うって、どうすればいいのだ?

そもそも、男は現時点でなんで執着されているのか気付いていない。

 

イロは彼にとって、昔面倒を見ていた子供に過ぎず、皐に至っては…男の子だと思っていたし、そもそもあの時の子供と現在の皐が同じ人間だと気付いていない。

 

 

男は、彼女達の本質と過去に気づいていないが故に、どうすればいいのか見当もつけられない。

なので、必死に思考をするけれど。直ぐに考えるのをやめてしまう。

 

…まぁ、いいや。取り敢えず考えるのやーめた。

疲れた頭ではいい考えも浮かばないし。

消臭剤を買って帰ろ。

 

 

そんな事を思いながら、彼はそのまま家へと戻る。

独りでソファーに身体を投げ出し、携帯を操作する。

SNSからは忌々しい二人からの連絡。

 

男は複雑な気持ちでその連絡を返すのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そして、数日後。

 

新学期が始まる。

 

担任として挨拶をして、決まった時間割で学園は動き出す。

男が担当するクラスは新入生だったが、イロの姿が見えなくて心底安心した。

 

が、どれほど逃げようとしたところで。ここは閉鎖空間で。

どうしても魔の手は迫ってくる。己が犯した過去からは、逃れることなど出来はしない。

 

 

 

それから2.3日ほど経ち。放課後、男が職員室で作業をしていると。

同僚から名を呼ばれる。

なんでも、部活動の加入申請だとか。

 

数秒考え、男は自分が顧問をやっていた部活を思い出す。

【科学実験部】

男が顧問を押し付けられた部活である。

 

名称からすると、部員数はそれなりに居そうに見えるかもしれないが、この学園では似たような部活動がたくさんある。

化学・物理・数学研究、その他もろもろ。

名称はもっととっつきやすいものだが、そちらの方が部員数も多いし、勧誘活動も盛んだ。

 

なので大体興味がある人はそちらに流れていく。

 

事実として【化学実験部】は、大体が幽霊部員の部活でここ3か月程度、まともに活動をした記録がない。

まさか殆ど告知もしてないのに入部希望者が来るとは。

物好きな奴もいるなぁ。そんな事を思いながら、男が入部希望者に会いに行くと。

 

「こんにちは、先生!」

 

張り付いた笑顔で、イロが一人で立っていた。

 

うわ、お前かよ。

 

男は内心そう思う。だが拒否するわけにはいかないので。

必要事項の記入された紙を受け取り、直ぐ傍の教室に入り、幾つかの説明事項を説明することにした。

 

 

イロは男の目をじっと見つめ、話を聞いているそぶりは見られない。

…話聞いてます?

 

男がそう問いかけると、少女は微笑みながら首を縦に振る。

 

「えぇ、勿論聞いてますよ。先生」

「この部活、幽霊部員ばっかりなんですってね。…で、私が実験をする時…先生が監督をする必要があるんですよね?」

 

…そうですね。

男は苦々しく答える。

 

彼女は男が顧問で、かつほとんど機能していないこの部活を目ざとく見つけた。

部活動の建前を以て、より強い圧力をかけようとしてきているらしい。

 

今からでも心変わりしてくれないかな。

 

そう考えた男は、彼女に揺さぶりをかけてみることにした。

学園の教師としてではなく、彼女の元家庭教師として。

 

 

…あー…その、本当にいいのか?

この部活、殆ど部員いないし、友達とかも出来ないけど…

 

「大丈夫ですよ先生。お友達ならクラスの中でも数人出来ましたし。別の部活と兼部する予定なので」

 

あぁそうなの…因みにどの部活に入ろうとしているんだい?

 

「バドミントンをやろうと思ってます、中学時代、県大会までいったんです」

「惜しくも決勝で負けちゃいましたけどね」

 

それはすごいじゃないか。何か打ち込む理由があったりするのかい?

俺の知ってる君は、あんまりそういうイメージはなかったからな。

 

 

その言葉を、男が放った瞬間。

イロの持つ雰囲気が、少しだけピリつく。

 

「理由、理由ですか?」

「私が。バドミントンに興味を持った理由を聞いてるんですか?」

 

男は目の前の少女の口調が少し片言になり、張り付いた笑顔がより不気味になるのを感じ取った。

なんか変なこと言ったかな?

 

「…ねぇ、先生。どうしてだと思います?胸に手を当てて考えてみてください」

 

えぇ…知らないですけど。

中学時代に何かあったとかじゃないの?

男は思ったことを正直に答える。中学時代になにかあったんじゃないのか?と。

 

イロは何も言わず、ただ冷たい目で男を見つめる。

なんだよ、怖いからやめてよ。

 

男は冷えた目をした少女に、黙って見つめられることしか出来ない。

何か溜まったものを吐き出すように、イロは小さく息を吐いて。ぽつぽつと呟く。

 

「…先生。貴方って本当に、私に対する興味がないんですね」

「私がバドミントン部に入ったのは、貴方が教えてくれたからですよ。貴方と一緒にやったスポーツの中でも、バドミントンが一番回数が多かったですから」

「…それで、認めてもらおうと思って。貴方と話が弾んだらと思って、頑張ったんですよ?」

 

「結局…貴方は、中学時代。私に一度も会いに来てくれませんでしたけど」

 

どこか男を見透かすような眼で、少女は男を見る。

怒るでもなく、激情を見せる訳でもなく。少女は静かに、男に言った。

 

 

…重。

重い。空気と目の前の子供が。

いや…だって、唯のスポーツだよ、そんな…重くなるとは思わないだろうが。

別にそんなに熱心に教えたわけでもないし。

ただ、彼女が楽しそうだと思って、色々手ほどきをしてあげただけだ。

 

こんな酷いねじれ方をしてるなんて想定できるはずがない。

 

 

それに一度も会いに来なかったって…連絡くれなかったじゃん。

連絡を貰ったら行ったさ、でも一度も連絡くれなかったし、正直もう関係はそこで終わったものだと思っていた。

 

 

男はそんな思考を展開する。

だが、ここでそれを直接目の前の子供に言う度胸は彼になかった。

その反論をして、余計に苛立たれると困るから。

 

彼女との関係が学校にバレる訳にはいかない。

ここで変に地雷を踏み続けて、事態が大事になっては大変だ。

 

…もうやめておこう。

これ以上話過ぎると、さらに燃料を投下しそうだ。

 

男はそう思い、話の流れを変えるため。

軽口を言う。

 

そ、そうか。それはすまなかったな、その…昔より、明るくなったみたいで何より。

いい先生や友人に恵まれたようで、俺も安心したよ…。

は…はは…。

 

男はそう、笑ってごまかすけれど。

 

「……誰のせいで、こうなったと思って…

イロは小さく何かを呟く。

 

男にはよく聞き取れなかった。

 

なんだって?

 

男が聞き返せば、少女は苛立つような視線のまま男に言葉を吐き捨てる。

鈍い男にも、彼女の機嫌がものすごく悪い事だけは分かった。

 

「…何でもありませんよ。…先生は、ずっと変わりませんね」

「私の事を置いて、去って行ったあの時から。そうやって笑ってごまかそうとするところも、都合が悪くなったら逃げようとするところも」

「何にも、変わってない」

 

急なチクチク言葉やめてね。他の生徒にやると嫌われるよ。俺先生だからいいけど。

男は少しの理不尽さを感じながら、自分が何か失言をしたらしいことを認識する。

意図せず、さらにイロを刺激してしまったらしい。

 

その失言は、更なる地雷を呼び込んでしまう。

 

「…ねぇ、先生。そう言えば、聞きそびれていたんですが」

「再会した時、私が言った約束の内容を、覚えてますよね?」

「あの、大切な。どうしても守って欲しい約束を、貴方はちゃんと、記憶していますよね?」

 

男はその言葉を受け取り、一瞬沈黙する。

そして、一つの言葉が脳裏に浮かんだ。

 

…覚えてない。

 

…すいません。いつの約束のことですか?

何か約束しましたっけ?

 

日時と場所が分からないので何とも言えませんが、多分覚えてないです。

会いに行くみたいなことは、確か…約束した。でも、もう破っちゃったから違うし…。なんだ?どんな内容だ?

 

男は必死に思い返そうとする。

だが、思い出せない。約束をした事実は覚えてる。ただ、何の約束をしたのかが全く思い出せない。

…え、なんだっけ?小学生とするような約束?

 

時間をかければかけるほど。

忘れましたなんて言い出せないような空気が部屋に充満していく。

 

というか。目の前の人物がそんなふざけた回答を許してくれそうにない。

 

ここで覚えてないのでなかったことに出来ませんか?どうせ口約束でしょ?

 

なんて言おうものなら、首にボールペンを突き刺してきて殺してきそうな気配が…いやこれ絶対やるわ。

なんか視線が殺人犯の目をしている。ちょっとダメそうですね。

記憶にない、だが。覚えていないなんて言い出せない。

 

 

そう、なので、仕方がないんです。

覚えてないけど、そうするしかないんです。

 

男はそう自分に言い聞かせ。

 

 

勿論、覚えているよ。

 

 

流れるように嘘を吐きだした。

 

その言葉を聞いた途端。少女の目の色が変わる。…素直に喜んでいるようには見えない。

ただ。その言葉を聞いて、少女は微笑みながら言う。

 

 

「そうですか、覚えているんですね。それならよかったです」

「なら、先生。守ってくれますよね?」

 

イロの瞳孔が開き、男をじっと見つながら、一つ一つ確認する。

そこからは、昔の約束を懐かしむような姿勢は感じ取れない。ただ、何とも言えない狂気のような物が滲み出てているような気がして。

自分の方が年上で、教師という立場があるはずなのに。

 

なんだか、とても恐ろしい物を相手にしているような不快感に襲われる。

男が何も言えずにいれば、彼女は少しづつ語気を強めていく。

 

「その約束。覚えてるのなら、守る義務が貴方にあると思いませんか?」

「たとえ口約束でも。他の約束を破り、私を大人にしたんですから。遵守してもらえますよね?」

「…約束を覚えてるのに、すいません守れません、なんて言わないですよね」

 

 

やだこの子怖い!

張り付けられたような笑みに、僅かながらに開いた瞳孔。

彼女の美貌が一周回って、その圧を引き立たせる。

 

ただ、こんな風に追い詰められて。

ごめんなさい嘘です、忘れちゃいました、なんて言い出せるわけがない。

ないので。仕方なく。

 

 

 

あぁ。約束は守るよ、と。

 

男は嘘に嘘を重ねることしか出来なかった。

すると一転、イロは楽しそうに笑顔になる。それはまるで、一凛の花が急に咲いたようでもあり。

どうしても手に入れたかったものを手に入れた、小さな子供のようでもあった。

その変わり身の早さが、酷く男には怖かった。

 

「ふ、ふふっ。…ねぇ、せーんせ、覚えましたよ、今の言葉」

「私、覚えましたからね。あの約束、大事な約束」

「…絶対、守ってくださいね。貴方が、自分で言ったんですから」

 

そんな、可愛らしい。けれどどこか不安になる影を纏った笑顔を見ながら。

男は何かとんでもない事をやらかしてしまったのではないかと、内心不安になるのだった。

 

そう考えていると、他の学生が入ってくる。

どうやらこの教室を使う人々が来たらしい。

 

あぁ、ようやく終わった。

そんな事を男が思うと、楽しそうな様子のイロは、男に加入届を押し付ける。

 

「それじゃ、先生。よろしくお願いしますね」

「…貴方が、自分で言ったことですから…守ってくださいね

 

そう小さく囁き、彼女はさっさと部屋から出ていった。

 

 

そして、二人は分かれ。男は職員室の自分の席に戻る。

 

あぁ…助かった。大きく体を伸ばし、ため息をつきながら。

今回も生き残ったことを実感する。

 

 

 

ところで…あの約束って。結局なんなんだろうか。

まぁいつか思い出せばいいや、仕事しよ。

 

そんな事を思いながら、彼は机に置いてあったコーヒーを飲みこんだ。

これからの教師生活、色々と面倒なことになりそうだと感じながら。

 

 

 

――――――――――

 

一方、イロの視点。

 

 

 

私の新学期が始まる。

色々と準備をしていた新生活が始まる。

 

両親の元を離れて、学生マンションに暮らしながら学園に通う。

あの学園は補助を出してくれるから、生活をする分には困らなかった。

 

入学式であの人を見つけ、連絡先も手に入れたし。

これからは外でも接触できる。

 

……でも。

せっかく同じ学園にいるのだから、学校の中でも話したい。

 

そんなことを考えながら、私は教室に入った。

 

新しいクラス。

初対面の人たち。

少しずつ始まる会話。

 

気の合いそうな子も、それなりにいる。

少しだけ安心した。

 

私は、ちゃんとここで生きていかなきゃいけない。

あの人のことだけを考えて、自分の人生まで壊したくはない。

 

幸せになりたいのなら。

きっと、破滅的じゃ駄目だから。

 

私は、あなたみたいにはならない。

 

欲望のままに逃げたりしない。

約束から目を逸らしたりもしない。

 

貴方に責任を取らせ、私は私の幸せを、ちゃんと掴みとるよ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

イロはイロで、新学期が始まってやるべきことに追われている。

時折、見かけた男にちょっかいをかけようとしたこともあったが、この過渡期では誰も彼もが忙しそうで。当然それは男も例外ではない。

彼女に残った僅かな優しさや配慮が、嗜虐趣味を抑えさせた。

 

SNSで相手に連絡を飛ばすこともあるけれど、この時期は忙しいの一点張りで電話程度しか相手にしてもらえない。

そもそも自分も友人作りなどに忙しく、相手に近づく余裕もさしてない。

 

フラストレーションがたまり、少し不愉快な気持ちになっていた彼女は、ある日の放課後。

ある部活動のビラを見つける。

そのビラは勧誘の物であったが、去年の物だった。

 

「…この部活、あの人が顧問なんだ」

 

興味を持った彼女は、その部活について調べる。

そして、一枚の紙を書き上げると。職員室に向かって歩き始めた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

職員室をノックして、出てきた先生に用件を伝える。

暫くすれば、あの人は出て来る。

 

今、露骨に嫌そうな顔をしたね。

そういうところ、私は見てるよ。自分の立場、ちゃんとわかってるんだろうか?

 

…まぁ、いいや。寛大であるべきだよね。

此方が有利だと分かっていれば、自ずと心も広くなるという物だ。

 

 

そうして、面と向かって話を聞いていれば。

 

…やっぱり、この人はクズだと改めて思う。

 

彼にとって、あのバドミントンの記憶はさして覚えるべきでもなかった娯楽に過ぎなくて。

あろうことか、いい先生と友人に出会えてよかったねとか言ってきた。

 

…思わず舌打ちが出そうになる。

誰のせいで、こうなったと思ってるのだろう。

 

そう言いたくはなるし、なんならもっと強い言葉で非難してやりたい。

けれど、グッと口を噤む。無駄な怒りを発露するより、今を見据えるべきだから。

 

…そして、どうしても聞きたかった質問を投げかける。

 

…貴方は、あの約束を覚えているかどうかを。

 

観覧車での約束を、貴方はちゃんと覚えているのだろうか。

どうしてもそれが気になっていた。

 

もしかしたら、覚えていて。私とちゃんと向き合ってくれるかもしれないと。淡い期待をするけれど。

…貴方から帰ってきた答えは、分かりきった、誤魔化しだけだった。

 

 

…は。はは。ははは!!

あのさぁ、そんな右往左往する眼で、本当のこと言ってるわけないじゃん。

嘘をついてるのがバレバレだよ、貴方。本当は覚えてないんでしょ?

 

やんわりと目を逸らしてるし、そもそも回答が遅すぎるし。

何が勿論なのかさっぱり分からないんだけど…!

本当に…その口を剥ぎ取ってやりたい…。

 

 

……ねぇ、先生。

私の人生をぐちゃぐちゃにしておいて。

そんな軽い感じで、誤魔化せると思ってるんですか?

私、そんなに軽くも浅くもないですよ。

 

そんな本音が、思わず口から洩れそうになったのを。

必死に吞み込んだ。

 

 

 

ふぅ…不愉快で、怒りが湧き出してくる。

私にとっては大事な約束だったのに、貴方にとっては忘却してしまう程度の朧げな物でしかなかったという事実に反吐が出る。

 

だけど、そんな気はしていた。貴方が覚えているはずがない事くらい、私にだって予想は出来てた。

…そっと怒りを押さえつけ。私はあの人に問い続ける。

 

 

本当に覚えているかどうかはもはやどうでもいい。

私は、貴方にその約束を守って欲しいだけ。

その約束を、過去だけの物にするわけにはいかないから。

 

そんな約束、知らないなんて言わせない。

 

 

だから、さぁ。

答えてよ、その約束を守ると。その一言でいいから言って!

私を狂わせた貴方自身の口で、今すぐに!

 

 

そして、問い詰めて。追いつめれば。

彼は確かに言った。私に言った。

あの約束を、守ると。

 

 

私は聞いたよ。確かに、その答えを。

…今さら、撤回なんてさせない。

これからは、自分の発言に責任を持ってもらいますから。

 

 

 

ねぇ、先生。

今日の事も、前の事も。

貴方が忘れてしまったほとんどの事を。

 

私はちゃんと覚えてるからね。

だから、逃れられるなんて思わないで。

 

 

 

 

 

 

言質を手にした少女は、満足げな表情でその部屋を後にする。

また一歩、目標に近づいたことを確信しながら。

そうして、逃げ場を消していった先に、何があるかもわからぬまま。

 

 

 

 






クズ主人公、割と好きなんですよね。好みがあるでしょうけれど。

これを人間っぽいと称するのはあれかもしれませんが、多少の欠落があった方が、少しだけリアリティがでていいと思いませんか?

…まぁ、この男は「多少の欠落」ですんでないような気もしますが。
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