ポケットモンスター マッドサイエンティストな俺が、禁じられた並行世界の数式を解き明かして、伝説の神を論破する話   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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P2ラボ、3億年の残響

「……クハハハハ! よろしい! 実に見事な、そして完璧に狂った『創世の再演』だ!」

 

私は今、イッシュ地方の最果て、P2ラボの廃墟で、己の脳細胞が沸騰するような歓喜に身を委ねている。

目の前では、私が改造を施したゲノセクトが、もはや生物としての限界を超え、空間そのものを「捕食」し始めていた。背中のキャノンから放射されているのは破壊光線ではない。それは、物理法則という名の牢獄をドリルで穿つ、剥き出しの「次元貫通パルス」だ。

 

「アクロマ様! 警告です! ゲノセクトの遺伝子コードが……3億年前の化石データから、見たこともないバイナリに書き換えられています! これじゃあポケモンじゃない、ただの『異次元の受信機』だ! ラボの空間安定指数がゼロになります、世界が……世界が裏返るッ!」

 

通信端末から、助手君の断末魔のような悲鳴が響く。

 

「裏返る? 素晴らしい! それこそが私が求めていた『真実』の姿ですよ! いいですか助手君、今のゲノセクトはイッシュの個体ではない。彼の神経回路を流れているのは、アローラの深海……太陽の光すら届かない絶望の底で、光を喰らう獣ネクロズマが発する『飢餓の拍動』なのだから!」

 

私は狂ったようにキーボードを叩き、暴走するデータを脳に直接叩き込む。

モニターには、ゲノセクトの複眼が捉えた、歪んだ次元の地獄絵図。

そこには、重力が反転した「やぶれたせかい」の虚無と、眩い光を放ちながら崩壊していくアローラの「ウルトラスペース」が、無理やり一つの空間に縫い合わされたかのような、冒涜的な絶景が広がっていた。

 

「……見なさい! 3億年前の鋼鉄の虫が、次元の壁を食い破り、アローラの神と『共鳴』を始めた! 時間も空間も、私の前ではもはや紙クズ同然だ! ……おや、ゲノセクト。君の意識は今、どこの地獄へ接続されましたか?」

 

「ゲノ……ゲノオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

ゲノセクトが咆哮した瞬間、ラボ内の全計器が爆発し、真っ白な閃光が世界を塗り潰した。

火花が散る暗闇の中、私の視界には、これから訪れるはずの「破滅の記録」が濁流となって流れ込んでくる。

第2話で直面するミアレの3000年前の血の跡。第6話でアカギが指をかけた虚無の王座。第22話で相まみえる、あの男の怨念。

全地方の『裏側』が、今、この一点に大津波となって押し寄せているのだ!

 

「……あ、アクロマ様……。鼻血が……。あんた、笑いながら、目から血を流して……。もうやめろ! このラボが、イッシュ地方そのものが、地図から消滅するぞッ!」

 

「消滅? とんでもない! 拡張されるのだ! 私の脳が、この宇宙の全データを吸い込み、世界を定義し直そうとしている……。よろしい、実によろしい! ゲノセクト、もっとだ! 君の3億年の沈黙を、異次元の絶叫で塗り潰しなさい!」

 

空間がガラスのようにひび割れ、そこから「こちら側」ではない極寒の風が吹き込んできた。

その風は、伝説のポケモンたちの断末魔の匂いがした。

 

「……さて。どうやらイッシュの空は、私の知的好奇心を収めるには少々、狭すぎたようだ」

 

私は沈黙し、赤く焼け付いたゲノセクトの装甲を、恋人の肌を撫でるように愛おしげに指でなぞった。

データはすべて、私の脳と、このオーバーロード寸前のアクロママシーン17号に刻まれた。

次はカロス地方……ミアレ。

あそこの路地裏には、3000年前に狂王が穿った「次元の膿」が、今もドロドロと溢れ出しているはずだ。

 

「助手君、移動の準備を。荷物は不要だ。私の脳内に、宇宙の半分が詰まっているのだから。……ワクワクしないか? 神が隠蔽した『世界の裏側』を、一人の科学者が暴き尽くし、その喉元に指をかけるその瞬間が!」

 

「……ちくしょう、ついていけるのは俺くらいのもんだぜ、本当に!」

 

「ええ。科学ですから!」

 

私は不敵に笑い、たった今始まった「世界の解体ショー」の第一歩を踏み出した。

科学の力は、神すらもデータへと堕とす。

それを今から、私自らが証明して差し上げよう。

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