ポケットモンスター マッドサイエンティストな俺が、禁じられた並行世界の数式を解き明かして、伝説の神を論破する話   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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マボロシじま、レジギガスの足跡

「……よろしい。実に見事な、そして無慈悲なまでの『矛盾』だ」

 

私は今、ホウエン地方の海上に浮かぶ、伝説の「マボロシじま」の砂浜に立っている。

ここは特定の条件下でしか姿を現さない、観測不能の不確定領域。だが、私のアクロママシーン17号が捉えているのは、そんなロマンチックな噂話ではない。

 

「アクロマ様……。通信が波の音でかき消されそうです。それに、足元がさっきからずっと光っているように見えるのですが、それも異変の一部なんですか?」

 

端末のモニターから、助手君の困惑した声が漏れる。

 

「異変? 助手君、これは『答え合わせ』ですよ。……見てください。砂浜に深く刻まれた、この巨大な轍(わだち)を。左右の幅は20メートル。深さは1メートル。……シンオウ地方のキッサキ神殿に眠るはずの、あの巨大な王――レジギガスが、かつて大陸を曳いた際に残したとされる伝説の痕跡と、その加重指数が完全に一致しています」

 

「レジギガス? でも、ここはホウエンの海ですよ。シンオウからはるばる歩いてきたって言うんですか?」

 

「歩いてきたのではない。……この島ごと、あちら側を通って『スライド』してきたのですよ」

 

私は屈み込み、砂浜に刻まれた轍の底を特殊なライトで照らした。そこには、第2話で見つけたミアレの路地裏や、第6話のやぶれたせかいで見られた「次元の摩耗」と同じスペクトル反応があった。

 

「いいですか、このマボロシじまは、現実世界の座標に固定されていません。この島そのものが、裏側世界という巨大な海の表面に浮かぶ、一枚の落ち葉のようなものだ。レジギガスが大陸を動かすという途方もないエネルギーを放った際、その衝撃は空間を貫通し、裏側世界を介してこの島をホウエンの海まで押し流してしまった」

 

「……じゃあ、この轍は3000年とか、もっと前のものなんですか?」

 

「いいえ。轍の熱残留を測定したところ、形成されたのはわずか数日前です。……つまり、あちら側では今もなお、レジギガスが大陸を牽引し続けている可能性がある。時間の流れが現実と乖離した『永遠の労働領域』が、そこには存在しているのですよ」

 

その時、砂浜から地鳴りのような重低音が響き渡った。

空間が歪み、轍の奥底から、無機質で、それでいて圧倒的な重圧を伴った「視線」を感じる。

 

「……おっと。どうやら観測者の存在が、次元の平衡を崩してしまったようだ。……ゲノセクト、準備を。この『次元の轍』から漏れ出す重力子(グラビトン)を、君の通信システムで逆位相に変換しなさい!」

 

「ゲノ……セッ!!」

 

ゲノセクトが轍に向かってパルスを放射する。すると、砂浜に刻まれた巨大な溝が、まるで生き物のように蠢き、青白い光を放って閉じ始めた。島が再び、現実の海から切り離されようとしている。

 

「アクロマ様! 島が消え始めてます! 早く戻ってきてください!」

 

「消える? いいえ、潜るのですよ。……ワクワクしませんか、助手君。シンオウで生まれた傷跡が、ホウエンの海にまで顔を出す。……この世界は、私たちが想像するよりもはるかに脆く、そして密接に裏側で手を取り合っている。……ええ、科学ですから!」

 

私は笑いながら、消えゆく島の砂を一握りだけ採取し、転移用の装置を起動させた。

足元から感覚が消えていく中、私は確信した。この轍の先には、宇宙から落ちてきた「記憶の破片」が待っているはずだ。

 

次は、国際警察の友人が隠し持っている、星のデブリを見せてもらいに行くとしましょうか。ハンサム君。君の持っているその青い輝きは、科学の光によって暴かれるのを待っているはずですよ。

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