ポケットモンスター マッドサイエンティストな俺が、禁じられた並行世界の数式を解き明かして、伝説の神を論破する話   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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ハードマウンテン、バクと灼熱の鼓動

「……ふむ。よろしい。実に見事な、そして暴力的なまでの熱量だ」

 

私は今、シンオウ地方の北端、絶え間なく火の粉が舞い踊るハードマウンテンの深部に立っている。周囲の酸素は薄く、防護服越しでも肌を刺すような熱気が伝わってくるが、私の心はこれまでにない冷徹な興奮に満たされていた。

 

「おい、あんた! さっきから独り言ばっかりで不気味だぞ。本当にここの異変を止められるんだろうな?」

 

背後から声を荒らげたのは、赤い髪を逆立てた少年トレーナー、バクだ。彼は相棒のネンドールを従え、この山の宝とされる「かざんのおきいし」を守るべく、私に同行している。

 

「異変を止める? バク君、語弊がありますね。私はただ、この現象を『正しい形』で観測したいだけですよ」

 

私はアクロママシーン17号のセンサーを、山の中央に鎮座する巨大な伝説のポケモン、ヒードランへと向けた。ヒードランが足を踏み鳴らすたび、空間が陽炎のように歪み、マグマが意志を持つかのように逆巻く。

 

「……見てください。ヒードランが守護しているあの『かざんのおきいし』。君たちはこれをこの山の心臓だと思っているようですが、私の解析データは別の結論を示しています。これは、この惑星で形成された岩石ではありません」

 

「何だって? 石が宇宙から来たってのか?」

 

「より正確に言えば、『裏側』から運ばれてきた核です」

 

私は端末のモニターをバクに見えるように反転させた。そこには、アローラ地方で観測される流れ星のポケモン、メテノの核と酷似したエネルギー波形が表示されている。

 

「遥か昔、空に開いた亀裂からメテノの大群がこの世界に降り注いだ。その中でも、圧倒的な質量と密度を持った個体の成れの果てが、あのおきいしなのです。それは異次元のエネルギーを熱に変換し続ける永久機関。……つまり、このハードマウンテンの噴火活動は、裏側世界から漏れ出したエネルギーの排熱処理に過ぎないのですよ」

 

「……難しくてよくわかんねえけど、とにかくその石がヤバいってことはわかった。ヒードランが怒ってるのも、そのエネルギーが暴走してるからなんだな?」

 

「ええ。ですが、解決策は至ってシンプルです。……ゲノセクト、準備を」

 

私はボールを投げ、改造を施したゲノセクトを呼び出した。その背中の砲台には、第6話で試作した「あかい鎖」とダークボールを融合させたデバイスが装着されている。

 

「ゲノ……セ……ッ!!」

 

「ヒードランの怒りを、おきいしの核に再接続(リリンク)します。高次元の重力干渉を行えば、暴走する熱量は再び裏側世界へと吸収されるはずです」

 

「おい、そんなことして大丈夫なのかよ! 山ごと吹き飛んだりしねえだろうな!」

 

「ハハハ! 確率は50%といったところでしょうか。……ですが、この熱き鼓動の正体を暴くためなら、安い賭けだと思いませんか?」

 

私はスイッチを入れた。

デバイスから放たれた不気味な赤い閃光が、ヒードランと「かざんのおきいし」を包み込む。空間が激しく軋み、マグマの噴出がピタリと止まった。代わりに、山全体を包み込むような、重厚な「脈動」が響き渡る。

 

「……よろしい。接続完了です。見てください、バク君。ヒードランの体温が安定し、おきいしのノイズが、アローラの星空と同じ周波数に収束しました」

 

「……すげえ。本当に静まりやがった。あんた、性格は最悪だけど、腕だけは確かみたいだな」

 

バクが呆れたように、しかし安堵した表情でネンドールを撫でる。

私はその様子を一瞥し、再び端末に記録された膨大なデータを見つめた。

 

「……ワクワクしませんか? シンオウの火山の底で、アローラの星の声が聞こえる。この世界を動かしているのは、神の意志などではない。あちら側から流れ込んでくる、無機質で合理的な情報の奔流なのですよ。……ええ、科学ですから!」

 

私は笑った。

足元を流れるマグマが、今や異次元への導熱線にしか見えない。

次は、この情報を神話として解釈し続けてきた知性に会いに行くとしましょうか。シンオウの歴史を背負う、あの麗しき神話学者に。

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